説明

完全ヒト型VEGFモノクローナル抗体、その調製方法および用途

【課題】
本発明は、バイオテクノロジー分野に関わる。詳しくは、本発明は、完全ヒト型抗VEGFモノクローナル抗体、その調製方法および用途を開示する。
【解決手段】
本発明は、大容量のファージディスプレイナイーブヒト抗体ライブラリーを構築し、その中から完全ヒト型抗VEGF抗体11A7を選別し、取得する。本発明に係る抗体は、SEQ ID NO:6に示す重鎖可変領域のアミノ酸配列を有し、SEQ ID NO:8に示す軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する。また、本発明は、11A7抗体の調製方法、11A7抗体をコードする塩基配列、該抗体の核酸配列を含む発現ベクターと宿主細胞を開示する。本発明の11A7抗体は、ヒト型抗体bevacizumabと比べ、より高い抗体親和性、より強い腫瘍細胞増殖抑制能力を有するため、腫瘍の増殖を明らかに抑制でき、抗腫瘍薬の調製に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー分野に関する。詳しくは、完全ヒト型モノクローナル抗体、その調製方法および用途を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍、とりわけ悪性腫瘍は、今や世界中で人類の健康を脅かし、各種疾病による死因で第二位となっており、その罹患率は近年著しい上昇傾向を呈している。該疾病は治療効果が低い上、末期における転移率が高く、予後がよくない。目下、臨床の場において通常適用される治療方法である放射線・化学療法、手術治療は、症状をかなりの程度まで和らげ、生存期間を延ばせたものの、これらの方法の効果は非常に限られており、治療効果のさらなる改善を難しくしている。
【0003】
腫瘍は、明らかに異なる二つの段階を経て成長する。それは、血管のない緩やかな成長期から血管が出来る速い成長期への移り変わりである。血管の生成により、腫瘍は十分な栄養を取得できるようになり、血管新生のスイッチが入る。もし、血管の生成がなければ、原発腫瘍は1-2mmを超えて成長することはありえず、転移も起こりえない。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、一種の成長因子で、内皮細胞の分裂増殖、新生血管の形成を促し、血管透過性を向上させる。該因子は、細胞表面の血管内皮細胞増殖因子受容体と結合し、チロシンキナーゼシグナル伝達経路を活性化させることで、その機能を発揮する。腫瘍組織のうち、腫瘍細胞、浸潤性腫瘍のマクロファージおよび肥満細胞は、高レベルのVEGFを分泌する。そして、パラクリン(傍分泌)の形で腫瘍の血管内皮細胞を刺激し、内皮細胞の増殖と移行を促進することで、血管の形成を誘導し、腫瘍の持続的成長を促す。また、血管透過性を高める。これらは、周囲組織の繊維状タンパク質沈着を引き起こすほか、単核細胞、線維芽細胞・内皮細胞への攻撃を促すため、腫瘍基質の形成および腫瘍細胞の新生血管への侵入に有利に働き、腫瘍の転移を促す。したがって、腫瘍の血管生成を阻止することが、目下、最も将来性のある腫瘍の治療方法の一つと考えられている。
【0004】
ベバシズマブ(Bevacizumab (Avastin))は、抗VEGFヒト型抗体(Cancer Res 1997;57:4593-9)で、2004年に米国食品医薬品局から転移性結腸・直腸がんの第一選択薬として認定された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、Bevacizumabはヒト型抗体として、マウス由来のCDR領域とFR領域の少量のマウス由来残基とを残しているため、完全ヒト型を達成しておらず、親和性が高くないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、大容量の自然なファージディスプレイヒト抗体ライブラリーを構築し、その中から完全ヒト型抗VEGF抗体11A7を選別し、取得するものである。
【0007】
詳しくは、本発明は、SEQ ID NO:6に示す重鎖可変領域のアミノ酸配列を有し、SEQ ID NO:8に示す軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する完全ヒト型抗VEGF抗体を提供するものである。
【0008】
また、本発明にかかる完全ヒト型抗VEGF抗体は、SEQ ID NO:10に示す重鎖アミノ酸配列を有し、SEQ ID NO:12に示す軽鎖アミノ酸配列を有するものである。
【0009】
また、本発明は、上記の完全ヒト型抗VEGF抗体をコードする、単離されたヌクレオチドを提供する。
【0010】
本発明にかかるヌクレオチドは、SEQ ID NO:5に示す完全ヒト型抗VEGF抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を有し、SEQ ID NO:7に示す完全ヒト型抗VEGF抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を有するものである。
【0011】
本発明にかかるヌクレオチドは、SEQ ID NO:9に示す完全ヒト型抗VEGF抗体の重鎖をコードする塩基配列を有し、SEQ ID NO:11に示す完全ヒト型抗VEGF抗体の軽鎖をコードする塩基配列を有するものである。
【0012】
また、本発明は、pcDNA3.1/ZEO(+)又はpcDNA3.1 (+)であり、上記ヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0013】
また、本発明は、CHO-K1細胞であり、上記発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、上記完全ヒト型抗VEGF抗体の調製方法を提供する。該調整方法は、ファージディスプレイヒト抗体ライブラリーからの高親和性完全ヒト型抗VEGF単鎖抗体の選別・取得と、完全ヒト型抗VEGF完全抗体分子の真核細胞発現ベクターの構築と、完全ヒト型抗VEGF完全抗体分子のCHO細胞における発現と、完全ヒト型抗VEGF完全抗体分子の精製とを含む。
【0015】
本発明は、上記完全ヒト型抗VEGF抗体について、腫瘍治療薬の調製における用途を提供する。この腫瘍とは、結腸・直腸がんである。
【発明の効果】
【0016】
本発明において、得られた抗体を利用し、一連の実験を行った。実験の結果、ヒト型抗体bevacizumabとヒト型抗VEGF抗体6A6(中国の特許出願番号02111093.X、出願日2002年3月20日、発明の名称『ヒト型抗血管内皮細胞増殖因子モノクローナル抗体、その調製法および医薬組成物』の中で開示された方法によって調製し、得られた)に比べ、本発明によって得られた抗体は、より高い抗体親和性を有し、より強い腫瘍細胞増殖の抑制能力を有することが判明した。また、生体内抗腫瘍効果試験の結果、該抗体は、腫瘍の増殖を著しく抑えることができることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】細胞増殖実験の結果を示すグラフである。
【図2】腫瘍増殖曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
下記の実施例、実験例は、本発明に対する説明にすぎず、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0019】
抗体の調製
(1)ヒト抗体軽鎖・重鎖定常領域コードする遺伝子のクローニング
リンパ球分離液(鼎国生物技術発展公司の製品)を用いて健康なヒトのリンパ球を分離し、TRIzol試薬(Invitrogen社の製品)を用いて総RNAを抽出した。文献(Cell,1980,22:197-207)と文献(Nucleic Acids Research,1982,10:4071-4079)の中で報告されている配列をもとにして、それぞれプライマーを設計し、RT-PCR反応により抗体重鎖・軽鎖定常領域コードする遺伝子を増幅した。PCR産物を、アガロースゲル電気泳動による精製・回収を経て、pGEM-Tベクター(Promega社の製品)の中にクローニングした。そして、シーケンス解析によって、正確なクローンの取得を確認した。SEQ ID NO:1とSEQ ID NO:2に、重鎖定常領域(CH)の塩基配列とアミノ酸配列をそれぞれ示す。SEQ ID NO:3とSEQ ID NO:4に、軽鎖定常領域(CL)の塩基配列とアミノ酸配列をそれぞれ示す。本実施例では、正確なクローンをpGEM-T/CH、pGEM-T/CLと記す。
【0020】
(2)DNAの調製
健康なヒト50人の末梢血を各20ml集め、リンパ球分離液(医科院天津血研所により製造)を用いて単核細胞を分離した。そして、TRIzol試薬(Invitrogen社)を用いて分離されたヒトの末梢血リンパ球から細胞の総RNAを抽出した。cDNA逆転写試薬キット(上海申能博彩生物科技有限公司)を使用し、cDNAの逆転写を行った。上記のステップについて、メーカーが提供する説明書に従って行った。
【0021】
(3)プライマー設計
文献(Immunotechnology,1998,3:271-278)を参考にし、ヒト抗体重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)遺伝子をクローニングするためのプライマーであるVHBack、VHFor、VLBack、VLForを設計し、合成した。VHBack、VHFor、VLBack、VLForの配列はImmunotechnology,1998,3:271-278を参照されたい。VHBackプライマーの5' 末端に、制限酵素Sfi Iの認識配列を含む配列atg gcc cag ccg gcc atg gcc、VHForプライマーの5'末端に、配列gcc aga acc acc gcc gcc gga gcc acc acc gcc、VLBackプライマーの5'末端に、配列tcc ggc ggc ggt ggt tct ggc gga ggc gga tct、VLForプライマーの5'末端に、制限酵素Not Iの認識配列を含む配列atg cgg ccg cをそれぞれ加えた。
【0022】
(4)ファージディスプレイ抗体ライブラリーの構築および選別
(2)のcDNAおよび (3)のプライマーを用い、recombinant Phage antibody system試薬キット(Amersham Biosciences社)を利用してファージディスプレイ単鎖抗体ライブラリーを構築した後、特異抗原を使い、ライブラリーに対するパニング(選別)を行った。抗体ライブラリーの構築およびパニングの方法は、recombinant Phage antibody system試薬キットの説明書を参考にした。パニングに用いる特異抗原「遺伝子組換えヒトVEGF165タンパク質」は、R&D社から購入した。数回の抗体ライブラリーのパニングを経て、抗ヒトVEGF単鎖抗体11A7ScFvを取得し、シークエンシングにより、その遺伝子配列を得た。SEQ ID NO:5とSEQ ID NO:6はそれぞれ11A7 ScFv重鎖可変領域VHの塩基配列とアミノ酸配列を示している。SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8はそれぞれ11A7 ScFv軽鎖可変領域VLの塩基配列とアミノ酸配列を示している。
【0023】
(5)完全ヒト型抗体の真核細胞における発現
11A7ScFv遺伝子及びpGEM-T/CHをテンプレートとし、PCRの繰り返すことにより完全ヒト型抗体重鎖遺伝子を合成した。反応条件は、95℃15分、94℃50秒→58℃50秒→72℃50秒(30サイクル)、72℃10分である。また、この完全ヒト型抗体重鎖遺伝子の5'末端に制限酵素HindIIIの認識配列及びシグナルペプチド遺伝子配列を含み、3 '末端に翻訳終止コドンTAA及び制限酵素EcoRIの認識配列を含む。シグナルペプチドの遺伝子配列は、 (ATGGATTTTCAGGTGCAGATTTTCAGCTTCCTGCTAATCAGTGCCTCAGTCATAATATCCAGAGGA)である。最後に、アガロースゲル電気泳動によりPCR増幅物を分離して目的バンドを回収し、pGEM-T ベクター(Promega社の製品)の中にクローニングし、さらに陽性クローンをスクリーニングし、それらをシークエンス解析した。配列が正確なクローンを選んでHindIIIおよびEcoRIで切断し、アガロースゲル電気泳動により完全ヒト型抗体重鎖断片11A7VHCHを精製・回収し、HindIIIおよびEcoRIで切断したプラスミドpcDNA3.1(+)(Invitrogen社)と連結させて、完全ヒト型重鎖真核細胞発現ベクターpcDNA3.1 (+) (11A7VHCH)を構築した。
【0024】
11A7ScFv遺伝子とpGEM-T/CLベクターをテンプレートとし、PCRの繰り返によりにより、完全ヒト型抗体軽鎖遺伝子を合成した。反応条件は、95℃15分、94℃50秒→58℃50秒→72℃50秒(30サイクル)、72℃10分である。この完全ヒト型抗体軽鎖遺伝子5'末端に制限酵素HindIIIの認識配列及びシグナルペプチド遺伝子配列を含み、3 '末端に翻訳終止コドンTAA及び制限酵素EcoRIの認識配列を含む。シグナルペプチドの遺伝子配列は、 (ATGGATTTTCAGGTGCAGATTTTCAGCTTCCTGCTAATCAGTGCCTCAGTCATAATATCCAGAGGA)である。配列が正確なクローンを選んでHindIIIおよびEcoRIで切断し、アガロースゲル電気泳動により完全ヒト型抗体軽鎖断片11A7VLCLを精製・回収し、HindIIIおよびEcoRIで切断したプラスミドpcDNA3.1/ZEO(+)(Invitrogen社)と連結し、完全ヒト型軽鎖真核細胞発現ベクターpcDNA3.1/ZEO(+) (11A7VLCL)を構築した。
【0025】
3.5cm 組織培養用ディッシュに3 × 105 個のCHO-K1細胞(ATCC CRL-9618)を植え付けた。培養細胞が培養面の90%-95%に広がるまで培養させた時点で、トランスフェクションを行った。プラスミド10μg(プラスミドpcDNA3.1(+)(11A7VHCH)4μg、プラスミドpcDNA3.1/ZEO(+) (11A7VLCL)6μg)、20μl Lipofectamine2000 Reagent(Invitrogen社の製品)を用いて、Lipofectamine2000 Reagent試薬キットの説明書に従い、トランスフェクションを行った。トランスフェクションを24時間行った後、培養細胞を 600μg/ml G418 (Invitrogen社の製品)と 250μg/ml Zeocin(Invitrogen社の製品)を含むDMEM培地に移し、抵抗性クローンを選別した。細胞の培養上清を抽出し、ELISA法により高発現クローンを検出・選別した。ELISA法では、まず、ヤギ抗ヒトIgG (Fc) (KPL社)をELISAプレートにコーティングし、4℃で一晩放置した後、2%のBSA-PBSを加え、37℃、2時間でブロックした。次に、抵抗性クローンの培養上清もしくは標準品Human myeloma IgG1,κ(Sigma)を加え、37℃で2時間インキュベートした。次に、HRP−ヤギ抗ヒトIgG(κ)((Southern Biotechnology Associates社)に加え、37℃で1時間インキュベートすることによって結合反応を行い、TMB発色液を加えて、37℃で5分間反応させ、最後に、H2SO4を加えて反応を停止させ、A450値を測定した。無血清培地を用いて、選別により得られた高発現クローンを増幅培養し、Protein Aアフィニティーカラム(GE社の製品)を使用して完全ヒト型抗体11A7を分離・精製した。精製された抗体にPBSを用いて透析を行い、最後に紫外吸収法で定量した。SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10はそれぞれ完全ヒト型抗体11A7の重鎖塩基配列、アミノ酸配列を示している。SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12はそれぞれ完全ヒト型抗体11A7の軽鎖塩基配列、アミノ酸配列を示している。
【実験例】
【0026】
ヒト型抗体6A6は、中国の特許出願番号02111093.X、出願日2002年2月30日、発明の名称『ヒト型抗血管内皮細胞増殖因子モノクローナル抗体、その調製法および医薬組成物』の中で開示された方法に従って調製し、得られた。
【実験例1】
【0027】
<VEGF抗体の親和性測定>
Biacore T100(Biacore AB, Uppsala, Sweden)を使用し、VEGF抗体の親和定数を測定する。VEGF165(R&D社の製品)を、アミノカップリング(アミド結合)により、CM5バイオセンサーチップ (GE Healthcare)と共有結合させた。(1)完全ヒト型抗体11A7、(2)Bevacizumab、(3)ヒト型抗体6A6(中国の特許出願番号02111093.X、出願日2002年2月30日、発明の名称『ヒト型抗血管内皮細胞増殖因子モノクローナル抗体、その調製法および医薬組成物』の中で開示された方法に従って調製し、得られた)、(4)陰性対照として抗体(Rituximab市販品)のそれぞれを、洗浄剤としての0.05% PBS TWEEN-20(ICI Americas)を処方して、異なる濃度(2倍希釈)の溶解液に調製し、50μl/minの流速でチップを通過させた。その後、50mM塩酸水溶液5μlを用いて、3μl/minの流速でそれぞれのチップを洗浄し、残留する抗体を固定化リガンドから溶出させた。BIAevalutionソフトウェア(T100 evalution 2.0バージョン、GE Healthcare社)を用い、非線形回帰法を使って結合曲線を分析した分析結果を、表1に示す。実験の結果、完全ヒト型抗体11A7のKD値は、Bevacizumabとヒト型抗体6A6よりも著しく低く、これは、完全ヒト型抗体11A7のVEGFに対する親和性が、Bevacizumabとヒト型抗体6A6よりも高いことが判明した。
親和性実験の結果
【表1】

【実験例2】
【0028】
<VEGF抗体のHUVEC細胞増殖抑制実験>
実験は次のステップを踏む。
1.成長状態の良好なHUVEC細胞(Cascade Biologics)を細胞濃度を2.5×104/mlに調整した。
2.これを、96ウェルの細胞培養プレートに、1ウェルあたり200μl毎植え付け、37℃で5%のCO2インキュベーターの中で24 時間培養させた後、無血清培地に取り替え、引き続き72 時間培養し、様々な濃度のVEGF抗体を加え、37℃で1 時間インキュベートした。また、陰性対照としては、抗CD20抗体Rituximabを加えた。なお、それぞれの濃度毎に、平行に3つのウェルを使用した。
3.終濃度が25 ng/mlとなるように、VEGF165(R&D)を加え、24 時間培養した。
4. [3 H].TdRをl0μl(1ウェルあたり18.5 kBq)加え、37℃のインキュベーターの中で7 時間インキュベートした。
5.セルコレクターにより、細胞をグラスファイバーフィルターの上に集め、[3H]液体シンチレーションカウンタを使って測定を行った。
実験結果を図1に示す。
【0029】
実験の結果、陰性対照である抗体(Rituximab)は、VEGFによるHUVEC細胞増殖をそれほど抑制できず、一方、完全ヒト型抗体11A7、Bevacizumab、ヒト型抗体6A6はいずれもVEGFによるHUVEC細胞増殖を抑制できることが示された。完全ヒト型抗体11A7のVEGFによるHUVEC細胞増殖抑制効果の活性化は、Bevacizumabおよびヒト型抗体6A6よりも明らかに強いことが判明した(t検定においてP<0.05、抗体濃度の範囲は0.4-3.2 nM)。
【実験例3】
【0030】
<VEGF抗体の生体内での腫瘍成長抑制実験>
実験は次のステップを踏む。
1.VEGF抗体の生体内抗腫瘍活性を調べるため、LM3細胞(ヒト肝癌細胞、復旦大学医学院肝癌研究所、中国・上海)をメスの重症免疫不全マウス(第二軍医大学実験動物センター)の右脇の皮下に植え付けた。腫瘍を植え付けた当日、各VEGF抗体25mg/kgおよび無関係の対照蛋白質Rituximabを与えた。
2.その後、1日おきに、連続4週間皮下注射を行い、6週間後、3日毎に腫瘍の長さ・幅を測り、腫瘍の体積を算出する。
実験結果を図2に示す。
【0031】
実験の結果、陰性対照抗体(Rituximab)は、腫瘍の成長を効果的に抑制できず、一方、完全ヒト型抗体11A7、Bevacizumab、ヒト型抗体6A6はいずれも重症免疫不全マウスに植え付けた腫瘍の成長をうまく抑制でることが示された。さらに第十八日目から、完全ヒト型抗体11A7の腫瘍の成長に対する抑制効果が、Bevacizumabとヒト型抗体6A6よりも強く、際立った差異が現れることが判明した(Mann-Whitney検定においてP<0.05、観察期間が35日を超えた場合)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:6に示す重鎖可変領域のアミノ酸配列と、SEQ ID NO:8に示す軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する完全ヒト型抗VEGFモノクローナル抗体。
【請求項2】
SEQ ID NO:10に示す重鎖アミノ酸配列と、SEQ ID NO:12に示す軽鎖アミノ酸配列を有する請求項1に記載の完全ヒト型VEGF抗モノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項1に記載の完全ヒト型抗VEGFモノクローナル抗体をコードするヌクレオチドであって、SEQ ID NO:5に示す重鎖可変領域の塩基配列およびSEQ ID NO:7に示す軽鎖可変領域の塩基配列を有することを特徴とするヌクレオチド。
【請求項4】
SEQ ID NO:9に示す重鎖塩基配列およびSEQ ID NO:11に示す軽鎖塩基配列を有する請求項3に記載のヌクレオチド。
【請求項5】
pcDNA3.1/ZEO(+)又はpcDNA3.1 (+)であり、請求項3又は4に記載のヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項6】
CHO-K1細胞であり、請求項5に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の完全ヒト型抗VEGFモノクローナル抗体の調製方法であって、ファージディスプレイヒト抗体ライブラリーからの高親和性完全ヒト型抗VEGF単鎖抗体の選別・取得と、完全ヒト型抗VEGF抗体の完全分子の真核細胞発現ベクターの構築と、完全ヒト型抗VEGF抗体の完全分子のCHO細胞における発現と、完全ヒト型抗VEGF抗体の完全分子の精製の4つのステップを含むことを特徴とする調整方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の完全ヒト型抗VEGFモノクローナル抗体の腫瘍治療薬の調製における用途。
【請求項9】
腫瘍は、結腸・直腸がんである請求項8に記載の用途。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−520182(P2013−520182A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554187(P2012−554187)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000513
【国際公開番号】WO2011/103702
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512221175)上海百▲邁▼博制▲薬▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】