説明

定期券の状態通知システムおよび定期券の状態通知方法

【課題】定期券が有効期限切れの状態でオートチャージ(金額の積み増し)を行なった場合、それを当該定期券の所持者に対し通知することができる定期券の状態通知システムおよび定期券の状態通知方法を提供する。
【解決手段】定期券から読取られた定期券情報に基づき当該定期券の有効期限切れを判定し、有効期限切れの場合は当該利用料金を定期券から読取られた金額情報から減算し、その減算結果が基準金額未満である場合、上記金額情報に金額の積み増し処理を行なうとともに、あらかじめ登録されたアドレスの端末装置に対し当該定期券の有効期限が切れ、かつ、金額の積み増しを行なった旨を通知する通知情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、交通機関で用いられる非接触型ICカードで構成されるSF(ストアードフェア)カード機能を備えた定期券の状態を当該定期券の所持者に対し通知する定期券の状態通知システムおよび定期券の状態通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、従来の磁気式定期券に変わるものとして、非接触型ICカードで構成される定期券(以降、単に定期券ともいう)が開発され利用されている。この種の定期券は、通常、増減が可能な金額情報が記録されたSF(ストアードフェア)カード機能をも備えていて、その金額情報が基準金額未満になると、自動的に金額の積み増し(以下、オートチャージともいう)が可能となっているものもある。
【0003】
このような定期券では、通常、定期券が有効期限切れになり、オートチャージになった場合、自動改札装置の案内表示部でその旨が表示される。しかしながら、定期券の所持者が自動改札装置の案内表示部を意識し目視する必要があるため、それを見落としてしまうことがある。そのため、定期券の有効期限切れに気づかず、オートチャージされ続け、目的外の出費が続く可能性がある。
【0004】
そこで、最近、定期券や乗車券として用いるICカードの価値情報の低下や使用期限の接近を所持者に対し未然に通知する情報通知システムが考えられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
この公知文献の技術は、改札機、発券機、改札機および発券機を制御するセンター装置とからなる情報通知システムにおいて、ICカード等を電車の切符購入用カードあるいは定期券として使用する場合、ICカードの残りの価値情報が電車の最低料金を下回ったとき、あるいは定期券としての有効期間が所定の日数を下回ったとき、あらかじめ登録したアドレスの端末装置にその旨のメッセージを送信するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−242939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
公知文献の技術では、価値情報が電車の最低料金を下回ったとき、あるいは有効期間が所定の日数を下回ったとき、定期券所有者の端末装置にその旨のメッセージを送信するシステムであるので、本発明で対象としているオートチャージ機能を備えた定期券においては、定期券が有効期限切れ、かつ、オートチャージされた場合、それを通知することはできない。したがって、オートチャージされ続け、目的外の出費が続くという問題を解決することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、定期券が有効期限切れの状態でオートチャージ(金額の積み増し)を行なった場合、それを当該定期券の所持者に対し通知することができる定期券の状態通知システムおよび定期券の状態通知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の定期券の状態通知システムは、利用者が提示する、所定の定期券情報および増減が可能な金額情報が記録された定期券から定期券情報および金額情報を読取る読取手段と、この読取手段により読取られた定期券情報に基づき当該定期券の有効期限切れを判定する第1の判定手段と、この第1の判定手段により当該定期券の有効期限切れを判定された場合、当該利用料金を前記読取手段により読取られた金額情報から減算する処理を行なう演算手段と、この演算手段の減算結果があらかじめ定められた基準金額未満か否かを判定する第2の判定手段と、この第2の判定手段により前記演算手段の減算結果が基準金額未満であると判定された場合、前記金額情報に対しあらかじめ定められた金額の積み増し処理を行なう積み増し手段と、前記第2の判定手段により前記演算手段の減算結果が基準金額未満であると判定された場合、あらかじめ登録されたアドレスの前記利用者が所持する端末装置に対し当該定期券の有効期限が切れ、かつ、金額の積み増しを行なった旨を通知する通知情報を送信する通知情報送信手段とを具備している。
【0010】
また、本発明の定期券の状態通知方法は、利用者が提示する、所定の定期券情報および増減が可能な金額情報が記録された定期券から定期券情報および金額情報を読取る読取ステップと、この読取ステップにより読取られた定期券情報に基づき当該定期券の有効期限切れを判定する第1の判定ステップと、この第1の判定ステップにより当該定期券の有効期限切れを判定された場合、当該利用料金を前記読取ステップにより読取られた金額情報から減算する処理を行なう演算ステップと、この演算ステップの減算結果があらかじめ定められた基準金額未満か否かを判定する第2の判定ステップと、この第2の判定ステップにより前記演算ステップの減算結果が基準金額未満であると判定された場合、前記金額情報に対しあらかじめ定められた金額の積み増し処理を行なう積み増しステップと、前記第2の判定ステップにより前記演算ステップの減算結果が基準金額未満であると判定された場合、あらかじめ登録されたアドレスの前記利用者が所持する端末装置に対し当該定期券の有効期限が切れ、かつ、金額の積み増しを行なった旨を通知する通知情報を送信する通知情報送信ステップとを具備している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、定期券が有効期限切れの状態でオートチャージ(金額の積み増し)を行なった場合、それを当該定期券の所持者に対し通知することができる定期券の状態通知システムおよび定期券の状態通知方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る定期券の状態通知システムの構成を概略的に示すブロック図。
【図2】通知先情報データベースの具体例を示す図。
【図3】定期券に記録される定期券情報であるエンコード情報の具体例を示す図。
【図4】定期券の状態通知システムの動作を説明するフローチャート。
【図5】定期券の状態通知システムの動作を説明するフローチャート。
【図6】定期券情報入力画面の具体例を示す図。
【図7】通知先情報入力画面の具体例を示す図。
【図8】利用者に対し通知するメール文章および電話音声の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る定期券の状態通知システムの構成を概略的に示すものである。図1において、定期券発行装置10は、交通機関の駅に設置されていて、定期券購入者が提示する定期券購入申込書に記載された定期券情報等を駅係員が入力することにより、非接触型ICカードで構成されるSF(ストアードフェア)カード機能を備えた定期券や非接触型ICカードで構成されるSFカード等を発行する。自動改札装置20は、交通機関の駅に設置されていて、利用者によってアンテナ部(図示しない)に翳される定期券21との間で無線通信を行なうことにより改札処理等を行なう。
【0014】
定期券21は、定期券発行装置10により発行されるもので、定期券21の内部に埋設されたICチップに所定の定期券情報(エンコード情報)および増減が可能な金額情報が記録されている。
【0015】
上位装置30は、定期券発行装置10および自動改札装置20を管理するもので、ホストコンピュータからなり、通信回線を介してそれらと通信可能に接続されている。上位装置30は、アドレステーブルとしての通知先情報データベース31を備えている。
【0016】
端末装置40は、定期券所持者が所持する固定電話機あるいは携帯電話機あるいはパーソナルコンピュータであって、上位装置30の通知先情報データベース31にそのアドレスがあらかじめ登録される。
【0017】
図2は、通知先情報データベース31の具体例を示している。通知先情報データベース31には、たとえば、定期券所持者の通知先情報としての電子メールアドレスおよび固定電話機(あるいは携帯電話機)の電話番号が、当該利用者の所持する定期券の固有の識別情報(ID)および氏名と対応させてあらかじめ登録されている。
【0018】
図3は、定期券21に記録される定期券情報であるエンコード情報の具体例を示している。エンコード情報は、たとえば、当該定期券固有の識別情報(ID)、当該定期券所持者の氏名、当該定期券の有効期限(年月日)、および、オートチャージの有無を示す情報(0:なし、1:あり)などから構成されている。
【0019】
次に、このような構成において、定期券の状態通知システムの動作を図4および図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0020】
まず、定期券購入者は定期券購入申込書に所定の定期券情報および通知先情報(図2参照)を記入し、駅係員に提出する。それを受取った駅係員は、定期券発行装置10において、定期券購入申込書の記入内容を参照しながら、たとえば、図6に示すような定期券情報入力画面を用いて定期券情報(発駅、着駅、有効期限、氏名等)を入力する(ステップS1)。
【0021】
定期券情報の入力後、次画面釦B1を押下することで、図7に示すような通知先情報入力画面が表示される。この通知先情報入力画面を用いて、定期券購入申込書に記入された通知先情報(図2参照)を入力する(ステップS2)。
【0022】
通知先情報の入力後、入力完了釦B2を押下することで、定期券の発行処理が開始される(ステップS3)。定期券の発行時、先に入力された通知先情報は、定期券発行装置10から上位装置30へ送信され、通知先情報データベース31に登録される(ステップS4)。
【0023】
次に、駅係員は、定期券発行装置10において、金額情報設定画面を表示することにより、SFカード機能を持たせるための金額情報およびオートチャージの有無を設定する(ステップS5)。この設定された金額情報およびオートチャージの有無は発行される定期券のICチップに記録される。その後、駅係員は発行された定期券を購入者に渡す。
【0024】
さて、自動改札装置20において、利用者が定期券21をアンテナ部に翳し出場した場合(ステップS6)、自動改札装置20は当該定期券21との間で無線通信を行なうことにより、当該定期券21から定期券情報および金額情報を読取る(ステップS7)。
【0025】
次に、自動改札装置20は、まず、当該定期券21で利用した利用経路に当該定期券21の有効区間が含まれるか否かをチェックし(ステップS8)、含まれない場合はSFカードとしての利用であるものと判断して当該処理を終了する。
【0026】
ステップS8におけるチェックの結果、利用経路に当該定期券21の有効区間が含まれる場合、自動改札装置20は、当該定期券21から読取った定期券情報内の有効期限情報を参照することで、当該定期券21は有効期限切れか否かをチェックし(ステップS9)、有効期限切れでない場合は当該処理を終了する。
【0027】
ステップS9におけるチェックの結果、有効期限切れである場合、自動改札装置20は、当該定期券21で利用した利用経路に対する利用料金を算出し、算出した利用料金を当該定期券21から読取った金額情報から減算する(ステップS10)。
【0028】
次に、自動改札装置20は、ステップS10の減算結果があらかじめ定められた基準金額未満か否かをチェックし(ステップS11)、減算結果が基準金額未満でない場合、当該減算結果を新たな金額情報として当該定期券21に書込み、当該処理を終了する。
【0029】
ステップS9におけるチェックの結果、減算結果が基準金額未満である場合、自動改札装置20は、当該定期券21から読取った定期券情報内のオートチャージ有無情報を参照することで、当該定期券21はオートチャージになっているか否かをチェックし(ステップS12)、オートチャージになっていない場合は当該処理を終了する。
【0030】
ステップS12におけるチェックの結果、オートチャージになっている場合、自動改札装置20は、オートチャージ処理を行なう(ステップS13)。すなわち、当該定期券21から読取った金額情報に対しあらかじめ定められた所定金額を積み増し、その積みました結果を新たな金額情報として当該定期券21に書込む。なお、このオートチャージ処理は、通常、当該定期券21の次の利用時(入場時)に自動的に行なわれる場合が多い。
【0031】
次に、自動改札装置20は、当該定期券21から読取った定期券から識別情報を取得し、上位装置30へ送信する(ステップS14)。上位装置30は、識別情報を受信すると、その識別情報をキーに該当する対応する識別情報を有する通知先情報を通知先情報データベース31から検索する(ステップS15)。
【0032】
次に、上位装置30は、検索した通知先情報に電子メールアドレスが登録されているか否かをチェックし(ステップS16)、登録されていればその電子メールアドレス(端末装置40)に対し、たとえば、図8に示すようなメール文章「〇〇鉄道です。定期券の有効期限が切れていましたので、オートチャージを行ないました。」を送信し(ステップS17)、当該処理を終了する。
【0033】
ステップS16におけるチェックの結果、電子メールアドレスが登録されていない場合、上位装置30は、検索した通知先情報に電話番号が登録されているか否かをチェックし(ステップS18)、登録されていなければ当該処理を終了する。
【0034】
ステップS18におけるチェックの結果、登録されている場合、上位装置30は、その電話番号(端末装置40)に対し電話を掛け、たとえば、図8に示すような電話音声「〇〇鉄道です。定期券の有効期限が切れていましたので、オートチャージを行ないました。」を流し(ステップS19)、当該処理を終了する。
【0035】
このように、定期券の有効期限切れとオートチャージを判定し、それを当該定期券の所持者に対し通知することにより、定期券所持者は、定期券が有効期限切れで、かつ、オートチャージが行われたことを直接的に知ることができる。
また、定期券所持者が有効期限切れに気づかず、オートチャージされ続けることを防止(減少)できる。さらに、定期券所持者が有効期限切れに気づかず、オートチャージされ続け、目的外の出費が続くということを防止(減少)できる。
【符号の説明】
【0036】
10…定期券発行装置、20…自動改札装置、21…定期券、30…上位装置、31…通知先情報データベース(アドレステーブル)、40…端末装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が提示する、所定の定期券情報および増減が可能な金額情報が記録された定期券から定期券情報および金額情報を読取る読取手段と、
この読取手段により読取られた定期券情報に基づき当該定期券の有効期限切れを判定する第1の判定手段と、
この第1の判定手段により当該定期券の有効期限切れを判定された場合、当該利用料金を前記読取手段により読取られた金額情報から減算する処理を行なう演算手段と、
この演算手段の減算結果があらかじめ定められた基準金額未満か否かを判定する第2の判定手段と、
この第2の判定手段により前記演算手段の減算結果が基準金額未満であると判定された場合、前記金額情報に対しあらかじめ定められた金額の積み増し処理を行なう積み増し手段と、
前記第2の判定手段により前記演算手段の減算結果が基準金額未満であると判定された場合、あらかじめ登録されたアドレスの前記利用者が所持する端末装置に対し当該定期券の有効期限が切れ、かつ、金額の積み増しを行なった旨を通知する通知情報を送信する通知情報送信手段と、
を具備したことを特徴とする定期券の状態通知システム。
【請求項2】
利用者が提示する、所定の定期券情報および増減が可能な金額情報が記録された定期券を処理する自動改札装置と、この自動改札装置と通信可能に接続され、前記利用者が所持する端末装置のアドレスが当該利用者の所持する定期券の固有の識別情報と対応させてあらかじめ登録されているアドレステーブルを備えた上位装置とから構成され、
前記自動改札装置は、
利用者が提示する前記定期券から定期券情報および金額情報を読取る読取手段と、
この読取手段により読取られた定期券情報に基づき当該定期券の有効期限切れを判定する第1の判定手段と、
この第1の判定手段により当該定期券の有効期限切れを判定された場合、当該利用料金を前記読取手段により読取られた金額情報から減算する処理を行なう演算手段と、
この演算手段の減算結果があらかじめ定められた基準金額未満か否かを判定する第2の判定手段と、
この第2の判定手段により前記演算手段の減算結果が基準金額未満であると判定された場合、前記金額情報に対しあらかじめ定められた金額の積み増し処理を行なう積み増し手段と、
前記第2の判定手段により前記演算手段の減算結果が基準金額未満であると判定された場合、前記定期券情報から取得した当該定期券固有の識別情報を前記上位装置へ送信する送信手段とを具備し、
前記上位装置は、
前記自動改札装置の前記送信手段により送信された識別情報を受信すると、当該識別情報と対応する識別情報を有するアドレスを前記アドレステーブルから取得するアドレス取得手段と、
このアドレス取得手段により取得されたアドレスの端末装置に対し当該定期券の有効期限が切れ、かつ、金額の積み増しを行なった旨を通知する通知情報を送信する通知情報送信手段とを具備したことを特徴とする定期券の状態通知システム。
【請求項3】
前記第1の判定手段は、当該利用経路に当該定期券の有効区間が含まれる場合にのみ当該定期券の有効期限切れを判定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の定期券の状態通知システム。
【請求項4】
利用者が提示する、所定の定期券情報および増減が可能な金額情報が記録された定期券から定期券情報および金額情報を読取る読取ステップと、
この読取ステップにより読取られた定期券情報に基づき当該定期券の有効期限切れを判定する第1の判定ステップと、
この第1の判定ステップにより当該定期券の有効期限切れを判定された場合、当該利用料金を前記読取ステップにより読取られた金額情報から減算する処理を行なう演算ステップと、
この演算ステップの減算結果があらかじめ定められた基準金額未満か否かを判定する第2の判定ステップと、
この第2の判定ステップにより前記演算ステップの減算結果が基準金額未満であると判定された場合、前記金額情報に対しあらかじめ定められた金額の積み増し処理を行なう積み増しステップと、
前記第2の判定ステップにより前記演算ステップの減算結果が基準金額未満であると判定された場合、あらかじめ登録されたアドレスの前記利用者が所持する端末装置に対し当該定期券の有効期限が切れ、かつ、金額の積み増しを行なった旨を通知する通知情報を送信する通知情報送信ステップと、
を具備したことを特徴とする定期券の状態通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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