説明

定着装置、画像形成装置

【課題】分離部材とローラーとの間のギャップを適切に確保する。
【解決手段】定着ニップ部Nを通過するシートに形成されたトナー像を定着させるための第1及び第2ローラー100、101と、第1ローラー100に巻き付いたシートを分離させる分離部材102と、分離部材102の先端102Aが第1ローラー100の周面に近づく第1姿勢と、先端102Aが第1ローラー100の周面から離間する第2姿勢との間で姿勢変更するように、分離部材102を回動自在に支持する支持手段と、を備える。分離部材102には、定着ローラー100周面のうちシートが通過しない非通過領域と当接して、分離部材102と第1ローラー100との間に所定距離のギャップを設ける当接部104が備えられている。支持手段は、分離部材102が回転する支点となる支点部材103Aと、分離部材102に設けられ、支点部材103Aが挿入される長孔102Gと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に設けられる定着装置では、定着ローラーと加圧ローラーとが圧接されることにより定着ニップ部が形成されている。定着ニップ部をシートが通過したとき、シートが加圧及び加熱されてシート上のトナー像が定着する。
【0003】
ところで、シートは、定着ニップ部を通過する際に熱を加えられることで、定着ローラーの周面に接着してしまうことがある。この場合、シートは、定着ニップ部を通過した後、定着ローラーに巻き付くこととなる。
【0004】
このような定着ローラーへの巻き付きを防止するために、定着ローラーに巻き付いたシートを定着ローラーから分離させる分離部材が、定着ローラーの回転方向下流側であって定着ローラーに近接する位置に配置されている。特許文献1には、分離部材が配置された定着装置が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−195039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、分離部材は、定着ローラーの軸方向に延びる平板である。当該平板の先端と定着ローラー周面とが常時接していると、定着ローラー周面が傷付くおそれがある。定着ローラー周面に傷が付いた状態でシート上のトナー像を定着すると、シート上のトナー像に傷跡が残る場合がある。
【0007】
このため、平板の先端と定着ローラー周面との間には、所定距離のギャップが形成されている。このギャップは、平板先端と定着ローラーの軸方向とが平行になるように、平板先端を定着ローラーに沿わせることによって形成される。
【0008】
ギャップの距離が小さすぎると、ギャップ部分に紙粉が溜まることがある。一方、ギャップの距離が大きすぎると、シートの分離性能が低下する。そのため、ギャップの距離は、大きすぎず小さすぎない適切な距離とされる必要がある。
【0009】
ところが、平板のねじれや、平板と定着ローラーとの位置関係のアライメントの結果によっては、平板先端を定着ローラーの軸方向に平行に保持することができない場合がある。この場合、平板先端と定着ローラー周面との間の距離を均一に保つことができない。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、分離部材とローラーとの間のギャップを適切に確保することが可能な定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面に係る定着装置は、定着ニップ部を形成し、前記定着ニップ部を通過するシートに形成されたトナー像を、前記シートを加熱及び加圧することにより定着させるための第1及び第2ローラーと、前記定着ニップ部よりも前記第1ローラーの回転方向下流側に配置され、前記第1ローラーに巻き付いた状態で前記定着ニップ部を通過した前記シートを前記第1ローラーから分離させる、前記第1ローラーの軸方向に延びる板状部材からなる分離部材と、前記分離部材の先端が前記第1ローラーの周面に近づく第1姿勢と、前記先端が前記第1ローラーの周面から離間する第2姿勢との間で姿勢変更するように、前記分離部材を回動自在に支持する支持手段と、を備え、前記第1ローラーの周面には、前記シートが通過する通過領域と、前記シートが通過しない非通過領域とが設定されており、前記分離部材には、前記非通過領域と当接して、前記分離部材と前記第1ローラーとの間に所定距離のギャップを設ける当接部が備えられており、前記当接部は、少なくとも一部が前記第1ローラーの周面に向けて突出するように、前記板状部材の両端に取り付けられた当たり部材であり、前記支持手段は、前記分離部材が回転する支点となる支点部材と、前記分離部材に設けられ、前記支点部材が挿入される長孔と、を含むことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、分離部材に設けられた当接部が、第1ローラー周面に当接することにより、分離部材と第1ローラーとの間に所定距離のギャップが形成される。このため、当接部が第1ローラー周面に当接している限り、分離部材と第1ローラーとの間のギャップを適切に確保することが可能となる。
【0013】
また、当接部は、第1ローラー周面のうち、シートが通過しない非通過領域に当接するから、シート上のトナー像に傷跡を残すことがない。また、この構成によれば、分離部材である板状部材の両端には、少なくとも一部が第1ローラーの周面に向けて突出する当たり部材が、当接部として取り付けられているから、分離部材と第1ローラーとの間のギャップを適切に確保することが可能となる。
【0014】
さらに、この構成によれば、分離部材は、当該分離部材に設けられた長孔に支点部材が挿入されることにより、支持部材に支持される。これにより、分離部材の支点が固定化されず、長孔の範囲内においてシフトできるようになる。従って、もし、第1ローラーが位置ずれを起こしても、長孔内を支点部材が移動することにより、分離部材と第1ローラーの軸との平行性を維持することができ、前記ギャップを適切に確保することが可能となる。
【0015】
上記構成において、前記当接部を前記第1ローラーの前記非通過領域に向けて付勢する付勢部材を備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、付勢部材は、当接部を第1ローラー周面に向けて付勢するから、当接部を確実に第1ローラー周面に当接させることが可能となる。これにより、分離部材と第1ローラー周面との間で、所定距離のギャップをより適切に確保することが可能となる。
【0017】
また、本発明の他の局面に係る画像形成装置は、請求項1又は2に記載の定着装置と、原稿の画像データを取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された画像データをシートに形成する画像形成部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、上述の定着装置を備えるので、分離部材とローラーとの間のギャップを適切に確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、分離部材とローラーとの間のギャップを適切に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を示した断面図である。
【図2】定着ユニットの要部構成の一例を示した図である。
【図3】当たり部材と定着ローラーとの間の位置関係の一例を示した図である。
【図4】分離部材の斜視図であって、(a)は分離部材の表面側を、(b)は裏面側をそれぞれ示している。
【図5】当たり部材の斜視図であって、(a)は分離部材への取り付け面側を、(b)は定着ベルトへの当たり面側をそれぞれ示している。
【図6】定着ユニットを後方側から見たときの斜視図である。
【図7】定着ユニットを前方側から見たときの図である。
【図8】分離部材の支持部材への取付態様の一例について説明するための斜視図である。
【図9】第2姿勢の分離部材を示した図である。
【図10】第1姿勢の分離部材を示した図である。
【図11】付勢バネの取付態様の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る給紙装置を備えた画像形成装置の全体構成の一例を示した断面図である。
【0022】
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有し胴内空間を備えた装置本体2を備える。装置本体2は、シートに対して画像形成処理を行う。装置本体2は、略直方体形状の下部筐体21と、下部筐体21の上方に配設される略直方体形状の上部筐体22と、下部筐体21と上部筐体22とを連結する連結筐体23とを含む。下部筐体21には画像形成のための各種機器が収容され、上部筐体22には原稿画像を光学的に読み取るための各種機器が収容されている。下部筐体21、上部筐体22及び連結筐体23で囲まれる胴内空間が、画像形成後のシートを収容可能な胴内排紙部24とされている。連結筐体23は、装置本体2の右側面の側に配置され、胴内排紙部24へシートを排出するための排出口961が設けられている。
【0023】
胴内排紙部24として利用される前記胴内空間は、装置本体2の前面及び左側面において外部に開放されている。ユーザは、これらの開放部分から手を差し入れ、胴内排紙部24から画像形成後のシートを取り出すことが可能である。前記胴内空間の底面241は、下部筐体21の上面で区画され、排出口961から排出されたシートが積載される。
【0024】
下部筐体21には、画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット211が装着されている。給紙カセット211は、下部筐体21(装置本体2)の前面から手前方向に引出可能である。この給紙カセット211は、自動給紙用に設けられたカセットである。
【0025】
装置本体2の右側面には、ユーザに手差し給紙を行わせるためのマルチトレイユニットMが装着されている。マルチトレイユニットMは、手差しシートが載置される給紙トレイ30と、前記手差しシートを下部筐体21内の画像形成部へ搬入する給紙ユニット40とを含む。給紙トレイ30は、その下端部において下部筐体21に対して開閉自在に取り付けられており、不使用時は閉状態とされる。ユーザは、手差し給紙を行う場合、給紙トレイ30を開き、その上にシートを載置する。
【0026】
下部筐体21の内部には、上方から順に、トナーコンテナ99Y、99M、99C、99K、中間転写ユニット92、画像形成部93、露光ユニット94、及び上述の給紙カセット211が収容されている。
【0027】
画像形成部93は、フルカラーのトナー像を形成するために、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各トナー像を形成する4つの画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備える。各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、感光体ドラム11と、この感光体ドラム11の周囲に配置された、帯電器12、現像装置13、一次転写ローラー14及びクリーニング装置15とを含む。
【0028】
感光体ドラム11は、その軸回りに回転し、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。帯電器12は、感光体ドラム11の表面を均一に帯電する。帯電後の感光体ドラム11の周面は、露光ユニット94によって露光され、静電潜像が形成される。
【0029】
現像装置13は、感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム11の周面にトナーを供給する。現像装置13は、2成分現像剤用のものであり、攪拌ローラー16、17、磁気ローラー18、及び現像ローラー19を含む。攪拌ローラー16、17は、2成分現像剤を攪拌しながら循環搬送することで、トナーを帯電させる。磁気ローラー18の周面には2成分現像剤層が担持され、現像ローラー19の周面には、磁気ローラー18と現像ローラー19との間の電位差によってトナーが受け渡されることにより形成されたトナー層が担持される。現像ローラー19上のトナーは、感光体ドラム11の周面に供給され、前記静電潜像が現像される。
【0030】
一次転写ローラー14は、中間転写ユニット92に備えられている中間転写ベルト921を挟んで感光体ドラム11とニップ部を形成し、感光体ドラム11上のトナー像を中間転写ベルト921上に一次転写する。クリーニング装置15は、トナー像転写後の感光体ドラム11の周面を清掃する。
【0031】
イエロー用トナーコンテナ99Y、マゼンタ用トナーコンテナ99M、シアン用トナーコンテナ99C、及びブラック用トナーコンテナ99Kは、それぞれ各色のトナーを貯留するものであり、YMCK各色に対応する画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置13に、図略の供給経路を通して各色のトナーを供給する。
【0032】
露光ユニット94は、画像形成部93の一部を構成している。露光ユニット94は、光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有し、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの各々に設けられた感光体ドラム11の周面に、原稿画像の画像データに基づく光を照射して、静電潜像を形成する。
【0033】
中間転写ユニット92は、中間転写ベルト921、駆動ローラー922及び従動ローラー923を備える。中間転写ベルト921上には、複数の感光体ドラム11からトナー像が重ね塗りされる(一次転写)。重ね塗りされたトナー像は、給紙カセット211又は給紙トレイ30から供給されるシートに、二次転写部98において二次転写される。
【0034】
給紙カセット211は、複数のシートが積層されてなるシート束を収納する。給紙カセット211の右端側の上部には、ピックアップローラー212が配置されている。ピックアップローラー212の駆動により、給紙カセット211内のシート束の最上層のシートが1枚ずつ繰り出され、搬入搬送路26へ搬入される。一方、給紙トレイ30に載置されたシートは、給紙ユニット40の給紙ローラー41の駆動によって、搬入搬送路26へ搬入される。
【0035】
搬入搬送路26の下流側には、二次転写部98、定着ユニット(定着装置)97及び排紙ユニット96を経由して排出口961まで延びるシート搬送路28が設けられている。シート搬送路28の上流部分は、下部筐体21に形成された内壁と、反転搬送ユニット2
9の内側面を形成する内壁との間に形成されている。なお、反転搬送ユニット29の外側面は、両面印刷の際にシートを反転搬送する反転搬送路291の片面を構成している。シート搬送路28の、二次転写部98よりも上流側にはレジストローラー対27が配置されている。シートは、レジストローラー対27にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで、二次転写部98に送り出される。
【0036】
連結筐体23の内部には、定着ユニット97と排紙ユニット96とが収納されている。定着ユニット97は、二次転写部98においてトナー像が二次転写されたシートを、定着ニップ部Nにおいて加熱及び加圧することで、定着処理を施す。定着処理されたカラー画像付のシートは、定着ユニット97の下流に配置されている排紙ユニット96により、排出口961から胴内排紙部24に向けて排出される。
【0037】
上部筐体22の上面には、第1コンタクトガラス222と第2コンタクトガラス223とが嵌め込まれている。第1コンタクトガラス222は、自動原稿給送装置(ADF;図示せず)が上部筐体22上に配置される場合に、ADFから自動給送される原稿シートの読取用に設けられている。第2コンタクトガラス223は、手置きされる原稿シートの読取用に設けられている。
【0038】
上部筐体22の内部には、原稿情報を光学的に読み取るための走査機構224と撮像素子225(画像取得部)とが収容されている。走査機構224は、光源、移動キャリッジ、反射ミラー等を含み、原稿からの反射光を撮像素子225に導く。撮像素子225は、前記反射光をアナログ電気信号に光電変換することにより、原稿の画像データを取得する。
【0039】
以下、定着ユニット97の詳細構成について説明する。図2は、定着ユニット97の要部構成の一例を示した図である。定着ユニット97には、定着ローラー(第1ローラー)100及び加圧ローラー(第2ローラー)101が配置されており、これらのローラーが圧接されることにより、定着ニップ部Nが形成されている。
【0040】
トナー像が転写されたシートは、定着ユニット97を、図2における太い実線矢印方向に搬送される。シートは、定着ニップ部Nを通過したときに、定着ニップ部Nにおいて、定着ローラー100により加熱されるとともに加圧ローラー101により加圧される。かくして、シート上のトナー像が定着される。
【0041】
以上の通り構成された定着ユニット97において、定着ニップ部Nよりも搬送方向下流側に、分離部材102が配置されている。分離部材102は、定着ニップ部Nを通過したシートSが定着ローラー100の周面に貼着して巻き付いてしまうことを防止するための部材である。すなわち、定着ニップ部Nを通過する際に熱を加えられることで、シートS上のトナー像Tが溶融して定着ローラー100の周面に接着し、定着ローラー100に巻き付くことがある。この巻き付きを防止するために、分離部材102は定着ローラー100からシートSを分離させるものである。
【0042】
分離部材102は、その基端部の側において、定着ローラー100の両端近傍に配置された一対の支持部材103によって支持されている。分離部材102は、定着ローラー100の軸方向に延びる薄い板状部材である。分離部材102の定着ローラー100の周面と対向する先端部102Aと、定着ローラー100の周面との間には、所定距離のギャップGが確保されている。
【0043】
定着ニップ部Nを通過したシートが定着ローラー100に巻き付いた状態でギャップGに到達すると、そのシート先端が分離部材102の先端部102Aに当接する。これにより、当該シートが定着ローラー100から分離される。なお、一般にシートSの搬送方向先端には、トナー像が転写されない余白領域が存在し、当該先端は定着ローラー100に接着することはない。従って、たとえシートSが定着ローラー100に巻き付いたとしても、その搬送方向先端は定着ローラー100の周面から浮き上がるので、先端部102Aが定着ローラー100の周面に当接していなくとも、上述の分離は可能である。
【0044】
分離部材102の両端には、先端部102Aと定着ローラー100周面との間でギャップGが確保されるように、一対の当たり部材(当接部)104が配置されている。図3は、当たり部材104と定着ローラー100との間の位置関係の一例を示した図である。当たり部材104は分離部材102の先端部102Aよりも前方に突出して配置される部材であり、定着ローラー100の周面に当接することで、前記ギャップGを形成する。
【0045】
定着ローラー100周面には、シートが通過する通過領域100Aが設定されている。通過領域100Aの両端には、シートが通過しない非通過領域100Bが設定されている。当たり部材104は、非通過領域100Bと当接することにより、先端部102Aと定着ローラー100周面との間でギャップGを形成する。
【0046】
図2に戻り、分離部材102よりも搬送方向下流側には、定着ニップ部Nを通過したシートを後段の部材(例えば排出口961)に向けて搬送するための搬送ローラー105が配置されている。搬送ローラー105は、後述する搬送コロ107(図6及び図7参照)と当接することにより、排紙ニップ部を構成する。
【0047】
図4は、分離部材102の構成の一例を示した斜視図である。図4(a)は、分離部材102の表側を示しており、図4(b)は、分離部材102の裏側(定着ローラー100に面する側)を示している。図5は、当たり部材104の構成の一例を示した斜視図である。図5(a)は、当たり部材104の表側を示しており、図5(b)は、当たり部材104の裏側を示している。
【0048】
図4に示すように、分離部材102は、定着ローラー100の軸方向に向けて延びる薄い平板状の本体部102Cと、この本体部102Cを保持する保持板金102Sとを備える。本体部102Cの下端縁が上述の先端部102Aである。保持板金102Sは、定着ローラー100の軸方向に向けて延びる保持平坦面を有する。本体部102Cは、前記保持平坦面に密着する態様で保持され、先端部102Aが保持板金102Sの下端から突出している(図9及び図10も参照)。
【0049】
保持板金102Sの両端には、当たり部材104を分離部材102に取り付けるため、並びに保持板金102Sを本体部102Cに取り付けるための、ねじ孔102E及び貫通孔102Fが設けられている(本体部102Cにも、貫通孔102F及び後述のネジ孔104Eに対応する孔が穿孔されている)。また、保持板金102Sの両端には、支持部材103によって支持される一対の端板102Bが備えられている。各端板102Bは、保持板金102Sの前記保持平坦面に対して直角に折り曲げられた部分であって、各々には長孔102Gが設けられている。長孔102Gは、分離部材102の基端側に配置され、分離部材102を定着ローラー100の軸方向と平行な軸回りに回動自在に軸支させるために穿孔されている。
【0050】
図5に示すように、当たり部材104は、分離部材102の保持板金102Sの両端に取り付けられる取付部104Aを備える。取付部104Aには、当たり部材104Aを分離部材102の保持板金102Sに取り付けるためのねじ孔104Eが設けられている。また、取付部104Aの側縁には、当たり部材104を分離部材102の保持板金102Sに位置決めして取り付けるための一対の位置決めピン104Dが、ねじ孔104Eを挟んで突設されている。
【0051】
取付部104Aには、屈曲形状の本体部104Bが連設されている。本体部104Bの先端には、定着ローラー100周面と当接する当たり部104Cが突設されている。
【0052】
当たり部材104の分離部材102への取付に際しては、まず、当たり部材104の取付部104Aの表側(図5(a)で露出している側)が、分離部材102の保持板金102Sの裏側(図4(b)で露出している側)の両端と当接させられる。
【0053】
そして、当たり部材104の位置決めピン104Dが保持板金102Sの貫通孔102Fに挿入されるとともに、分離部材102の裏側から、取付ネジ109(図9及び図10参照)が、当たり部材104のねじ孔104E、及び、分離部材102のねじ孔102Eに螺入される。以上のようにして、当たり部材104が分離部材102に取り付けられる。
【0054】
図6は、定着ユニット97を後方側から見たときの斜視図である。図7は、定着ユニット97を前方側から見たときの図である。尚、図6及び図7において、前方側とは、定着ローラー100が配置された側を意味し、後方側とは、定着ローラー100が配置された側とは反対側を意味する。
【0055】
定着ユニット97は、定着ハウジングHを備える。定着ハウジングHには、定着ローラー100、加圧ローラー101、分離部材102、支持部材103、当たり部材104、
及び搬送ローラー105が収容されている。
【0056】
また、定着ユニット97には、回動支点106を支点として回動するカバー部材108が配置されている。カバー部材108は、回動支点106を支点として回動することにより、定着ハウジングHに対して開閉可能とされている。尚、図6及び図7では、カバー部材108は、定着ハウジングHに対して開状態とされている。
【0057】
カバー部材108には、搬送コロ107が配置されている。搬送コロ107は、カバー部材108が定着ハウジングHに対して閉状態とされたときに、搬送ローラー105と接触して、排紙ニップ部を形成する。
【0058】
図8は、分離部材102の支持部材103への取付態様の一例について説明するための斜視図である。
【0059】
定着ユニット97において、支持部材103には、支点部材103Aが立設されている。支点部材103Aは円柱状の部材である。尚、図8では、定着ローラー100の一端側の支持部材103のみが示されており、定着ローラー100の他端側の支持部材103については図示が省略されている。
【0060】
支点部材103Aは、分離部材102の端板102Bに穿孔された長孔102Gに挿入されている。これにより、分離部材102は、支点部材103Aの軸回りに回動することができる。その結果、分離部材102は、分離部材102の先端部102Aが定着ベルト50の周面に近づく第1姿勢と、先端部102Aが定着ベルト50の周面から離間する第2姿勢との間で姿勢変更が可能である。
【0061】
分離部材102は、長孔102Gに円柱状の支点部材103Aが挿入される形態で軸支されている。従って、分離部材102は、長孔102Gのストロークの範囲でシフト移動することができる。このため、分離部材102の先端部102Aと定着ローラー100の軸との平行性にズレが生じていても、当たり部104Cと定着ベルト50の周面とが当接することで、前記ズレを補正するように、長孔102G内で分離部材102の支点位置がシフトする。従って、先端部102Aと定着ローラー100の周面との平行性を維持することができる。
【0062】
以上のように、支持部材103の支点部材103Aに、端板102Bに穿孔された長孔102Gが挿入されることにより、分離部材102が支持部材103に対して回動自在に取り付けられるから、端板102B及び支持部材103は、分離部材102の支持手段を構成する。
【0063】
図9は、定着ユニット97の要部断面図であって、当たり部材104の先端(当たり部104C)が定着ローラー100の周面から離間した状態(上記第2姿勢)を、図10は、当たり部材104の先端が定着ローラー100の周面に接した状態(上記第1姿勢)を示す図である。図9及び図10においては、当たり部材104を分離部材102に取り付けるための取り付けネジ109が示されている。
【0064】
図9において、定着ローラー100が反時計回り方向に回転し、加圧ローラー101が時計回り方向に回転する。定着ローラー100周面は加圧ローラー101周面よりも固い材質で形成されているから、定着ニップ部Nでは、加圧ローラー101周面が定着ローラー100周面に押されている。分離部材102は、定着ニップ部Nよりも、定着ローラー100の回転方向下流側に配置されている。
【0065】
図9に示す第2姿勢では、当たり部材104の当たり部104Cが定着ローラー100周面と当接していないが、図10に示す第1姿勢では、当たり部104Cが定着ローラー100周面と当接する。当たり部材104が定着ローラー100周面と当接した状態では、分離部材102の先端部102Aと定着ローラー100周面との間で、距離dのギャップGが形成される。
【0066】
尚、図10において、支点部材103Aは、長孔102Gの定着ローラー100から離間した端と当接しているが、このような当接は、分離部材102に取り付けられた当たり部材104を定着ローラー100周面に向けて付勢する付勢バネ(付勢部材)を設けることにより実現することができる。
【0067】
図11は、付勢バネの取付態様の一例について説明するための図である。尚、図11には、定着ローラー100の一端側の付勢バネが示されているが、定着ローラー100の他端側でも同様の構成であるため、説明及び図示を省略する。付勢バネ110は、円筒状のコイル部110Cと、このコイル部110Cに続く棒状の係止部110Eとを備えた捻りコイルバネである。
【0068】
支持部材103には、定着ローラー100と軸方向と平行な方向に円筒部111が立設されている。付勢バネ110のコイル部110Cが、この円筒部111に嵌合されている。係止部110Eは、分離部材102の本体部102Cの表側に、付勢力をもって当接している。これにより、分離部材102は、その本体部102Cの先端部102Aが、定着ローラー100周面に向かう方向に、上述の支点部材103Aの軸回りに回動するよう付勢力が与えられている。そして、当該付勢力によって、分離部材102に取り付けられた当たり部材104が定着ローラー100周面に向けて圧接され、当たり部材104が確実に定着ベルト50の周面に当接されるものである。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る定着ユニット97によれば、分離部材102に設けられた当たり部材104が、定着ローラー100周面に当接することにより、分離部材102と定着ローラー100との間に所定距離のギャップGを設けるから、当たり部材104が定着ローラー100周面に当接している限り、ギャップGを適切に確保することが可能となる。
【0070】
また、分離部材102は、分離部材102に設けられた長孔102Gに支点部材103Aが挿入されることにより、支持部材103に支持されているから、分離部材102の支点が固定化されず、長孔102Gの範囲内においてシフトできるようになる。従って、もし、定着ローラー100が位置ずれを起こしても、長孔102G内を支点部材103Aが移動することにより、分離部材102と定着ローラー100の軸との平行性を維持することができ、ギャップGを適切に確保することが可能となる。
【0071】
さらにまた、付勢バネ110は、当たり部材104を確実に定着ローラー100周面に当接させることが可能となるから、ギャップGをより適切に確保することが可能となる。
【0072】
尚、本実施形態では、当接部は、当たり部材104が分離部材102に取り付けられることにより構成されているが、この例には限られず、本体部102Cの一部を定着ローラー100周面に向けて折り曲げることにより当接部を構成するなど、分離部材102の一部を用いて当接部を構成してもよい。
【符号の説明】
【0073】
G ギャップ
N 定着ニップ部
1 画像形成装置
93 画像形成部
97 定着ユニット
100 定着ローラー
100A 通過領域
100B 非通過領域
101 加圧ローラー
102 分離部材
102A 先端部
102G 長孔
103 支持部材
103A 支点部材
104 当たり部材
110 付勢バネ
225 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ニップ部を形成し、前記定着ニップ部を通過するシートに形成されたトナー像を、前記シートを加熱及び加圧することにより定着させるための第1及び第2ローラーと、
前記定着ニップ部よりも前記第1ローラーの回転方向下流側に配置され、前記第1ローラーに巻き付いた状態で前記定着ニップ部を通過した前記シートを前記第1ローラーから分離させる、前記第1ローラーの軸方向に延びる板状部材からなる分離部材と、
前記分離部材の先端が前記第1ローラーの周面に近づく第1姿勢と、前記先端が前記第1ローラーの周面から離間する第2姿勢との間で姿勢変更するように、前記分離部材を回動自在に支持する支持手段と、を備え、
前記第1ローラーの周面には、前記シートが通過する通過領域と、前記シートが通過しない非通過領域とが設定されており、
前記分離部材には、前記非通過領域と当接して、前記分離部材と前記第1ローラーとの間に所定距離のギャップを設ける当接部が備えられており、
前記当接部は、少なくとも一部が前記第1ローラーの周面に向けて突出するように、前記板状部材の両端に取り付けられた当たり部材であり、
前記支持手段は、前記分離部材が回転する支点となる支点部材と、前記分離部材に設けられ、前記支点部材が挿入される長孔と、を含む
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記当接部を前記第1ローラーの前記非通過領域に向けて付勢する付勢部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定着装置と、
原稿の画像データを取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された画像データをシートに形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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