説明

定着装置および画像形成装置

【課題】定着ローラーの動力源と、定着ローラーに向って加圧ローラーをばねの復元力により押圧したり、定着ローラーから加圧ローラーを前記復元力に抗して離間させたりする接離機構の動力源とを1個のモーターで共用しながら、モーターの大型化を抑制しつつ接離機構による加圧ローラーのすばやい押圧動作を実現すること。
【解決手段】モーター106から接離機構の一部であるカムシャフト102に至る動力伝達機構が、第1動力伝達経路1220と第2動力伝達経路1300に分岐していて、第1動力伝達経路1220による方が第2動力伝達経路1300によるよりも減速比を大きく設定している。板カム100を回動させ、加圧ローラーを定着ローラーから離間させる際は、第1動力伝達経路1220により、加圧ローラーを定着ローラーに向って押圧させる際は、第2動力伝達経路1330によってモーターの動力をカムシャフト102に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関し、特に、定着ローラー等の加熱回転体に対し加圧部材を押圧状態と離間状態とに切り換え可能とする構成を有する定着装置および当該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターその他の画像形成装置において、熱定着方式により記録シートにトナーを定着させる定着装置では、例えば、回転する定着ローラーの周面に対し、加圧部材である加圧ローラーを、圧縮ばね等の弾性部材の復元力により押圧して定着ニップを形成し、当該定着ニップにトナー像を担持した記録シートを通紙して定着がなされる。
加圧ローラーの最外層は、一般的に、シリコーンゴムやフッ素樹脂などで形成された弾性層となっており、当該弾性層の一部が弾性変形して上記定着ニップが形成される。このため、加圧ローラーを常時押圧することとした場合、長期間に渡って画像形成がなされないと、加圧ローラーの弾性変形部分が完全には元に復元されないおそれがあり、そうなると記録シートの円滑な通紙の妨げとなる。
【0003】
そこで、加圧ローラーと定着ローラーとを接離させ、画像形成中(定着中)以外は、前記弾性部材の復元力に抗して加圧ローラーと定着ローラーとが離間する離間状態にし、画像形成の際には、復元力の作用を受けて加圧ローラーが定着ローラーを押圧する押圧状態とすることを可能にする接離機構(接離手段)が設けられている。
当該接離機構は、例えば、板カムを含み、歯車列などを含む動力伝達機構を介して伝達されるモーターの回転動力を受けて動作する。そして、前記板カムの周面が加圧ローラーを支持するフレームなどに当接しており、当該板カムの回動により加圧ローラーを前記弾性部材の復元力に抗して定着ローラーから離間させたり、加圧ローラーを、前記定着ローラーを押圧する位置に復帰させたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−96752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、あらゆる製品についてコストダウンが求められているが、画像形成装置もその例外ではなく、特に、他の構成装置に比べて比較的コストの高い定着装置でのコストダウンが要求されている。
そこで、前記接離機構用のモーターを定着ローラーの回転駆動用モーターと共用し、モーターの個数を一つ減らすことによるコストダウンが検討されている。以下、定着ローラーと接離機構とで共用されるモーターを共用モーターと称する。
【0006】
例えば、共用モーターからカム(接離機構)に至る動力伝達機構中にクラッチを組み込み、一連の画像形成前後のタイミングで当該クラッチを断続することによりカムの回動を制御する構成が考えられる。
ところが、このような構成にすると以下に記すような問題が生じる。
加圧ローラーを離間させる際には、共用モーターには、圧縮ばねを圧縮するための負荷に加え、定着ローラーを回転駆動するための負荷が加わる。このため、共用モーターには高トルクのものを用いる必要があるが、そうすると、モーターの大型化、ひいては定着装置の大型化を招来してしまう。
【0007】
これに対処するため、前記動力伝達機構における減速比を大きく設定することにより、加圧ローラーの離間の際(圧縮ばねを圧縮する際)の共用モーターにかかる負荷(トルク)を低減することができる。しかしながら、減速比を大きく設定すると、カムの回動速度が遅くなるため、加圧ローラーを復帰させる(加圧ローラーを定着ローラーに押圧させる)のに要する時間が増大してしまい、1枚目の画像形成開始(定着開始)までの時間が延びてしまうこととなる。
【0008】
本発明は、上記した課題に鑑み、モーターの大型化を可能な限り抑制しつつ、かつ、1枚目の画像形成開始(定着開始)までの時間を徒に延ばすことなく、加熱回転体の回転駆動用と接離手段のためのモーターの共用化を図ることのできる定着装置、および当該定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る定着装置は、モーターを動力源として回転する加熱回転体に加圧部材を付勢手段により相対的に押圧してニップ部を形成し、当該ニップ部に通紙させることによって記録シート上のトナー像を当該記録シートに定着させる定着装置であって、回転動力を受けて前記加圧部材と前記加熱回転体を接離させ、前記付勢手段の付勢力に抗して前記加圧部材と前記加熱回転体が離間する第1の状態と、前記付勢力を受けて前記加圧部材が前記加熱回転体を押圧する第2の状態とに変更する接離手段と、前記モーターの回転動力を前記接離手段に伝達する動力伝達機構と、前記動力伝達機構による前記モーターの回転動力の前記接離手段への伝達を断続する断続手段と、を有し、前記動力伝達機構は、前記モーターから前記接離手段に至る間で、第1の動力伝達経路と第2の動力伝達経路に分岐していて、第1の動力伝達経路による方が第2の動力伝達経路によるよりも減速比が大きく設定されていると共に、前記加圧部材と前記加熱回転体が、前記第2の状態から前記第1の状態に変更される際は前記第1の動力伝達経路で動力を伝達し、前記第1の状態から前記第2の状態に変更される際は第2の動力伝達経路で動力を伝達する経路切換手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記動力伝達機構は、同軸上に取着された第1外歯車および、これよりも径の大きい第2外歯車と、前記第1外歯車に歯合して、動力を下流側に伝達する第3歯車と、前記第2外歯車に歯合して、動力を下流側に伝達する第4歯車と、を含み、前記第1外歯車と前記第3歯車とが、前記第1の動力伝達経路の一部を構成し、前記第2外歯車と前記第4歯車とが前記第2の動力伝達経路の一部を構成していて、前記減速比の違いが前記第1外歯車と前記第2外歯車の径の違いで設定されており、前記経路切換手段は、前記第1の動力伝達経路中と前記第2動力伝達経路中の各々に設けられたクラッチであることを特徴とする。
【0011】
あるいは、前記接離手段は、回転軸に取着された偏心部材を含み、回転される偏心部材の軸心からの偏心量に応じて前記加圧部材と前記加熱回転体を接離させ、前記動力伝達機構は、第1外歯車と、前記第1外歯車と同軸上に設けられ、当該第1外歯車を囲繞する内歯車と、前記第1外歯車と前記内歯車との間に設けられ、前記偏心部材と連動する第2外歯車と、を含み、前記切換手段は、前記偏心部材の回転角度に対応させ、前記第2外歯車が前記第1外歯車とのみ歯合して第1の動力伝達経路を構成し、前記第2外歯車が前記内歯車とのみ歯合して第2の動力伝達経路を構成するように、前記第1外歯車と前記内歯車とを一定の角度範囲で歯が形成されていない欠歯歯車構造としたものであることを特徴とする。
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、電子写真方式で記録シート上に画像を形成する画像形成装置であって、記録シート上に形成されたトナー像の定着装置として、上記の定着装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成からなる定着装置によれば、付勢手段の付勢力を受けて加圧部材が加熱回転体を押圧する第2の状態から、付勢手段の付勢力に抗して加圧部材と加熱回転体が離間する第1の状態に変更される際は、モーターの回転動力が第1の動力伝達経路で接離手段に伝達され、前記第1の状態から前記第2の状態に変更される際は、モーターの回転動力が第2の動力伝達経路で接離手段に伝達される。第1の動力伝達経路による方が第2の動力伝達経路によるよりも減速比が大きく設定されている関係上、加圧部材と加熱回転体とを、すばやく第2の状態とすることが可能となり、定着開始までの時間を徒に延ばすことを防止することができる一方、加圧部材と加熱回転体を第1の状態とする際にモーターに掛かる負荷トルクを低減することが可能となるため、モーターの大型化を可能な限り抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係るタンデム型プリンターの概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る定着装置の一部を表した正面図であって、加圧ローラーを定着ベルトに押圧した状態を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る定着装置の一部を表した正面図であって、加圧ローラーを定着ベルトから離間した状態を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る定着装置における、モーターから定着ローラーおよび板カムに至る動力伝達機構の概略構成の一部を示す斜視図である。
【図5】上記動力伝達機構における動力伝達経路を示す図である。
【図6】上記プリンターの制御部において、モーターの回転制御と板カムの回動制御に関わる構成部分を示すブロック図である。
【図7】実施の形態1に係る定着装置の制御部で実行される制御プログラムのフローチャートである。
【図8】実施の形態2に係る定着装置における、モーターから定着ローラーおよび板カムに至る動力伝達機構の概略構成の一部を示す斜視図である。
【図9】上記動力伝達機構における動力伝達経路を示す図である。
【図10】上記動力伝達機構の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る定着装置およびこれを備えた画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係るタンデム型プリンター10(以下、単に「プリンター10」と言う。)の概略構成を示す図である。なお、ここでは、プリンターを例に取り上げているが、本発明は複写機やファクシミリ等の画像形成装置にも適用できる。
【0016】
図1に示すように、プリンター10は、筐体12内部に水平に架設され、矢印Aの方向に走行する転写ベルト14、転写ベルト14の走行方向に列設された4つの作像ユニット16C,16M,16Y,16K、各作像ユニットに対応して設けられた1次転写ローラー18C,18M,18Y,18K、および2次転写ユニット20を含み、各作像ユニット16C,16M,16Y,16Kによって形成された各色成分のトナー像を、一旦転写ベルト14に重ね合わせて転写した後、記録シートSに転写してカラー画像を形成する、いわゆる中間転写方式の画像形成装置である。
【0017】
作像ユニット16C,16M,16Y,16Kの各々は、像担持体である感光体ドラム22C,22M,22Y,22Kを中心としてその周囲に配された帯電ユニット24C,24M,24Y,24K、現像ユニット26C,26M,26Y,26Kを有している。作像ユニット16C,…,16Kの下方には、露光ユニット28が配されており、各感光体ドラム22C,…,22Kに向けて、光変調されたレーザー光LBが出射される。矢印Bの向きに回転される感光体ドラム22C,…,22Kの表面は、帯電ユニット24C,…,24Kによって一様に帯電された後、前記レーザー光LBによって露光されて、その表面に静電潜像が形成され、当該静電潜像は現像ユニット26C,…,26Kによってトナー像に現像される。なお、各現像ユニット16C,…,16Kは、レーザー光の光変調色成分に対応して、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のトナーを現像剤として感光体ドラム22C,…,22Kに供給する。
【0018】
各感光体ドラム22C,…,22Kに形成されたトナー像は、1次転写ローラー18C,…,18Kと感光体ドラム22C,…,22Kとの間に発生する電界の作用を受けて、走行する転写ベルト14上に順次転写される。
一方、給紙カセット30からピックアップローラー32によって繰り出された記録シートSは、転写ベルト14上のトナー像が2次転写ユニット20に到達するタイミングに合わせて、レジストローラー34によって2次転写ユニット20へと搬送される。2次転写ユニット20は、転写ベルト14上に重ね合わされたトナー像を、記録シートS上へ転写する。
【0019】
記録シートS上のトナー像は、定着装置36によって定着された後、排出ローラー38によって、排紙トレイ40へ排出される。
なお、プリンター10は、制御部42を有しており、制御部42はCPU44にROM46、RAM48が接続された構成を有している。CPU44は、ROM46に格納された各種制御プログラムを実行することにより、上記した各ユニット、装置を統括的に制御して円滑な画像形成動作を実現する。
【0020】
図2に定着装置36の構成の一部を表した正面図を示す。
定着装置36は、熱ベルト定着方式の定着装置であって、定着ローラー50、加熱ローラー52、および定着ローラー50と加熱ローラー52の間に張架された定着ベルト54、並びに、加圧ローラー56を有する。
加熱ローラー52は、金属製の円筒部材からなり、その中空部には、熱源であるヒーターランプ58が内蔵されている。定着ローラー50と加熱ローラー52の両端は、不図示の軸受を介して、不図示の保持部材に回転自在に保持されている。
【0021】
定着ローラー50の芯金60には、後述するように平歯車120(図4)が取着されており(図2では不図示)、後述するモーター106(図5)を回転動力源として矢印Cの向きに回転される。これにより、定着ベルト54は矢印Dの方向に周回走行し、これに伴って、加熱ローラー52が矢印Eの向きに従動回転する。
加圧ローラー56は、金属製の芯金62の外周面にシリコーンゴム、フッ素樹脂からなる弾性層64が形成されてなるものである。芯金62は、全体的に円柱状をしており、弾性層64が形成されてなる中央部の両端に、当該中央部よりも縮径された縮径部66を有している。加圧ローラー56は、縮径部66が軸受68を介して、加圧ローラー56の保持部材である揺動板70に軸支されている。
【0022】
揺動板70は、図2において紙面に垂直な方向に一様な厚みを有する金属製の板材である。揺動板70は、長手方向が紙面に垂直な方向に配されたシャフト72に取り付けられており、揺動板70は、シャフト72の軸心回りに揺動可能になっている。なお、シャフト72は、不図示の筐体に固定されている。
揺動板70は、軸受68を挟んでシャフト72と反対側に、L字状をしたレバー部74を有している。
【0023】
レバー部72の第1ストレート部76には、スプリングユニット78の一端部側が取り付けられている。スプリングユニット78は、対向配置された一対のホルダー80,82を有し、ホルダー80,82間に付勢手段となる弾性部材である圧縮コイルばね84(以下、「圧縮ばね84」という。)が設けられた構成をしている。ホルダー80とホルダー82とは、この両者を直動案内する直動案内機構86で連結されている。直動案内機構86は、ピストン88およびシリンダー90からなる。
【0024】
ホルダー80は、ピン92を介して第1ストレート部76に取り付けられている。これにより、ホルダー80は、ピン92の軸心回りに第1ストレート部76(揺動板70)に対し、回転自在に取り付けられている。
スプリングユニット78の他端部側のホルダー82は、長手方向が紙面に垂直な方向に配されたピン94に取り付けられており、ホルダー82は、ピン94の軸心回りに回転自在になっている。なお、ピン94は、不図示の筐体に固定されている。
【0025】
レバー部74の第2ストレート部96の上側半分は、図2中の局部断面図に示すように、紙面の手前側に略直角方向に延出されており、その延出部分の下面が、後述するバー104先端の当接面98になっている。
なお、加圧ローラー56の紙面奥側の端部部分は、レバー部74を有しない以外は揺動板70と同様な揺動板(不図示)に、軸受(不図示)を介して軸支されている。
【0026】
図2は、付勢手段である圧縮ばね84がその付勢力である復元力で、揺動板70(第1ストレート部76)を押圧している状態を表している。揺動板70に取り付けられた加圧ローラー56は、前記復元力を受けて、定着ローラー52に向って押圧されており、加圧ローラー56の弾性層64が弾性変形して、定着ニップNが形成されている。画像形成中(定着動作中)は、このように、加圧ローラー56は、定着ローラー50を(定着ベルト54を介して)押圧しており、加圧ローラー56は矢印Gの向きに従動回転する。
【0027】
このように、加圧ローラー56は、画像形成中は、図2に示すように定着ベルト54に押圧されているが、画像形成中以外は、定着ベルト54から離間される。常時押圧することとした場合、長期間に渡って画像形成がなされないと、加圧ローラー56の弾性変形部分が完全に元に復元されないおそれがあり、そうなると記録シートの円滑な通紙の妨げとなるからである。
【0028】
続いて、加圧ローラー56を定着ベルト54から離間させるための機構について説明する。
揺動板70の第2ストレート部96の当接面98の下方に、偏心部材である板カム100が設けられている。板カム100は、長手方向が紙面に垂直方向に設けられたカムシャフト102に取着されている。カムシャフト102は、後述するモーター106から後述する動力伝達機構を介して、矢印Hの向きに回動される。これにより、カムシャフト102に一体的に固定されている板カム100もカムシャフト102の軸心回りに回動する。
【0029】
板カム100の上方には、円形断面を有するバー104が、直動軸受105によって上下方向にスライド自在に保持されている。バー104は、自重により下がり、その下端が板カム100の周面に常に当接している。なお、直動軸受105は、不図示の筐体に取り付けられている。
上記の構成において、図2に示すように板カム100の回動位置が下死点にある状態から、板カム100が回動されると、バー104は、その下端が板カム100の外周面に倣い、上方へスライドし、やがて、バー104の上端が当接面98に当接する。さらに、板カム100が回動されると、バー104は、当接面98を押し上げ、圧縮ばね84の復元力に抗して揺動板70をシャフト72の軸心回り反時計方向に回動させる。
【0030】
そして、図3に示すように、板カム100の回動位置が上死点にある状態では、揺動板70が最も左に回動していて、加圧ローラー56が定着ローラー50から離間している。またこの状態で、圧縮ばね84は最も縮んだ状態に圧縮されていて、圧縮ばね84には、弾性エネルギーが最も蓄積されている。
なお、板カム100側面のカムシャフト102の軸心から最も遠くなる位置の近傍に、板カム100が上死点にあるか下死点にあるかを検出するための、反射シール101が貼着されている。また、板カム100が図2に示すように下死点にあるときの反射シール101を検出するための下死点センサ142(図2、図3では不図示)が設けられており、板カム100が図3に示すように上死点にあるときの反射シール101を検出するための上死点センサ144(図2、図3では不図示)が設けられている(図6)。下死点センサ142と上死点センサ144には、反射型ホトセンサが用いられる。
【0031】
以上、カムシャフト102、板カム100、バー104、直動軸受105、揺動板70、シャフト72、および軸受68によって、加圧ローラー56と定着ベルト54とを接離させ、加圧ローラー56と定着ベルト54とが離間する離間状態(図3)と、圧縮ばね84の復元力を受けて加圧ローラー56が定着ベルト54を押圧する押圧状体(図2)とに変更する接離手段が構成されている。
【0032】
次に、定着ローラー50、ひいては定着ベルト54を回転させるための機構、および板カム100(カムシャフト102)を回動させるための機構について、図4、図5を参照しながら説明する。
図4は、モーター106(図4では不図示、図5参照)から、定着ローラー50に至る動力伝達機構、およびモーター106から板カム100(カムシャフト102)に至る動力伝達機構の概略構成を示す斜視図である。図5は、上記両動力伝達機構における動力伝達経路を示す図である。
【0033】
なお、図4、図5において平歯車などは、便宜上、その歯の図示は省略して、円柱状に作図している。また、図4においては、煩雑さを避けるため、歯車付きマイクロ電磁クラッチ(いわゆるマイクロ電磁クラッチであり、以下単に「電磁クラッチ」と称することとする。)のクラッチ部分の図示は省略している。また、図5において、歯車などが取着されたシャフト(軸)は、便宜上、直線で表している。
【0034】
先ず、モーター106から定着ローラー50に至る動力伝達機構について説明する。
モーター106の出力軸108の先端部分には、平歯車110が取着されている。平歯車110は、上記両動力伝達機構において、最も径が小さく、最も歯数の少ない歯車である。
出力軸108の軸心方向と平行にシャフト112が設けられている。シャフト112の一端部側には、平歯車114と平歯車116とが直列に取着されている。そして、平歯車114が、モーター106の出力軸108に取着された平歯車110と噛み合っている。平歯車114の径は平歯車116の径よりも大きく、また歯数も平歯車114の方が多く、両平歯車114,116で同軸(シャフト112)上に取着された二段歯車を構成している。
【0035】
シャフト112の他端部側には、平歯車118が取着されており、定着ローラー50の芯金60の端部部分には平歯車120が取着されていて、両平歯車118,120が噛み合っている。
ここまで説明した構成により、モーター106が起動され出力軸108が回転して平歯車110が、図4に示すように矢印Jの向きに回転すると、これと噛み合っている平歯車114、平歯車114が取着されたシャフト112、およびシャフト112に取着された平歯車118が矢印Kの向きに回転する。そして、平歯車118と噛み合った平歯車120、平歯車120が芯金60に取着されている定着ローラー50が矢印Cの向きに回転する。定着ローラー50の回転開始、回転停止は、モーター106のオン、オフによる。
【0036】
続いて、モーター106から板カム100(カムシャフト102)に至る動力伝達機構について説明する。
シャフト112と平行にシャフト122が設けられており、シャフト122の一端部側には、電磁クラッチ124が取着されている。電磁クラッチ124の平歯車124Gは、平歯車116と噛み合っている。電磁クラッチ124は、クラッチ124Cにより平歯車124Gとシャフト122間の動力の伝達を断続する。
【0037】
シャフト122の他端部側には、平歯車126が取着されている。平歯車126は、カムシャフト102の板カム100とは反対側に取着された平歯車128と噛み合っている。
シャフト112と平行にもう一本シャフト130が設けられており、シャフト130の一端部側には、電磁クラッチ132が取着されている。電磁クラッチ132の平歯車132Gは、平歯車114と噛み合っている。電磁クラッチ132は、クラッチ132Cにより平歯車132Gとシャフト130間の動力の伝達を断続する。
【0038】
シャフト130の他端部側には、平歯車134が取着されていて、平歯車134は、カムシャフト102に取着された平歯車128と噛み合っている。
なお、2本のシャフト122,130の各端部部分に設けられた平歯車124G,126,132G,134の径および歯数は、いずれも同じである。
上記の構成において、クラッチ124Cとクラッチ132Cのいずれか一方が選択的にオンされることにより、シャフト122とシャフト130のいずれか一方の経路を経てモーター106の動力が伝達され、板カム100が回動されることとなる。
【0039】
たとえば、モーター106の回転中にクラッチ124Cがオンされると、平歯車116と噛み合って矢印Lの向きに回転している平歯車124Gの動力がシャフト122に伝達され、シャフト122に取着されている平歯車126も矢印Lの向きに回転する。そして、平歯車126と噛み合っている平歯車128が矢印Hの向きに回転して、板カム100も矢印Hの向きに回動する。
【0040】
一方、クラッチ132Cがオンされると、平歯車114と噛み合って矢印Mの向きに回転している平歯車132Gの動力がシャフト130に伝達され、シャフト130に取着されている平歯車134も矢印Mの向きに回転する。そして、平歯車134と噛み合っている平歯車128が矢印Hの向きに回転して、板カム100も矢印Hの向きに回動する。
上記したように、モーター106の出力軸108からカムシャフト102に至る動力伝達機構は、途中で二つの動力伝達経路に分岐している。
【0041】
ここで、モーター106の出力軸108からカムシャフト102に至る動力伝達機構において、クラッチ124Cがオンされ、平歯車116、平歯車124G、シャフト122、平歯車126により動力が伝達される経路を第1動力伝達経路1220と称し、クラッチ132Cがオンされ、平歯車114、平歯車132G、シャフト130、平歯車134により動力が伝達される経路を第2動力伝達経路1300と称する。
【0042】
上記の場合、モーター106の出力軸108に取着された平歯車110からカムシャフト102に取着された平歯車128に至る減速比は、平歯車114と平歯車116の歯数の違いから、第2動力伝達経路1300による方が、第1動力伝達経路1220によるよりも小さい。
よって、板カム100は、第2動力伝達経路1300を介して回動される方が、第1動力伝達経路1220を介して回動されるよりも、速く回動する。一方、第1動力伝達経路1220による方が、第2動力伝達経路1300によるよりも、板カム100を大きなトルクで回動することができる。
【0043】
ここで、モーター106の出力軸108からカムシャフト102に至る動力伝達機構において(i)第1動力伝達経路1220による場合の減速比をRa1、第2動力伝達経路1300による場合の減速比をRa2とし、(ii)モーター106の回転数が等しいとした場合に、第1動力伝達経路1220によった場合の板カム100の回転速度をSa1、第2動力伝達経路1300によった場合の板カム100の回転速度をSa2とし、(iii)第1動力伝達経路1220によった場合のカムシャフト102に加わるトルクをTa1、第2動力伝達経路1300によった場合のカムシャフト102に加わるトルクをTa2として、各々の大小関係を整理すると以下のようになる。
【0044】
Ra1>Ra2、Sa1<Sa2、Ta1>Ta2
本実施の形態では、加圧ローラー56を定着ベルト54に押圧させる際、すなわち、板カム100を図3に示す上死点から図2に示す下死点まで回動させる際は、第2動力伝達経路1300を用いることとしている。これは、板カム100を速く回動させて、押圧動作を早く完了させ、1枚目の画像形成をすばやく実行する必要がある一方、この場合、圧縮ばね84は伸びようとするため、揺動板70を回動させるための負荷(トルク)が板カム100にほとんどかからないからである。
【0045】
一方、加圧ローラー56を定着ローラー50から離間させる際、すなわち、板カム100を図2に示す下死点から図3に示す上死点まで回動させる際は、第1動力伝達経路1220を用いることとしている。これは、揺動板70を圧縮ばね84の弾性力に抗して回動するため大きなトルクが必要となる一方、当該離間動作は、一連の画像形成の終了後になされるため、少々時間を要しても不都合が生じないためである。
【0046】
モーター106の回転制御と板カム100の回動制御は、制御部42のCPU44によってなされる。当該両制御に関わる構成部分のブロック図を図6に示す。
図6に示すように、CPU44には、モーター106(図5)の駆動制御するモーター駆動部136、電磁クラッチ124C(図5)のオン・オフ制御をするクラッチ制御部138、電磁クラッチ132C(図5)のオン・オフ制御をするクラッチ制御部140、下死点センサ142、上死点センサ144が接続されている。
【0047】
CPU44が実行するモーターとクラッチの制御プログラムについて、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、本プログラムの起動前は、モーター106は停止され、電磁クラッチ132C,124Cは共にオフの状態である。また、板カム100は、上死点位置にある。
外部機器から送信されたプリントジョブを受信してプリント処理(画像形成処理)が開始されると(ステップS1でYES)、モーター106を起動する(ステップS2)と共に、電磁クラッチ132Cをオンする(ステップS3)。これにより、定着ローラー50が回転すると共に、第2動力伝達経路1300を介して板カム100が回動されて、上述したように、加圧ローラー56の定着ローラー50への押圧動作が開始される。
【0048】
下死点センサがオンにならない間は(ステップS4でNO)、電磁クラッチ132Cのオン状態を継続して板カム100を回動させる。下死点センサが反射シール101を検出してオンになると(ステップS4でYES)、加圧ローラー56の定着ローラー50への押圧動作が完了したとみなして、電磁クラッチ132Cをオフし(ステップS5)、板カム100の回動を停止させる。
【0049】
プリント中(画像形成中)(ステップS6でNO)は、現状、すなわち、モーター106の運転および両電磁クラッチ132C,124Cのオフ状態を継続し、一連のプリントが終了すると(ステップS6でYES)、電磁クラッチ124Cをオンし(ステップS7)、第1動力伝達経路1220を介して板カム100を回動させ、加圧ローラー56の定着ローラー50からの離間動作を開始させる。
【0050】
上死点センサがオンにならない間は(ステップS8でNO)、電磁クラッチ124Cのオン状態を継続して板カム100を回動させる。上死点センサが反射シール101を検出してオンになると(ステップS8でYES)、加圧ローラー56の定着ローラー50からの離間動作が完了したとみなして、電磁クラッチ124Cをオフし(ステップS9)、板カム100の回動を停止させると共に、モーター106を停止させて(ステップS10)、本プログラムを終了する。
【0051】
以上、実施の形態1に係る定着装置10によれば、定着ローラー50の回転と加圧ローラー56の定着ベルト54への押圧・離間とを一つのモーター106で実現できる。しかも、加圧ローラー56の定着ベルト54への押圧の際は、減速比の小さい第2動力伝達経路1300を介して板カム100(カムシャフト102)を回動させるため、前記押圧完了までに要する時間を短縮することができる。また、加圧ローラー56の定着ベルト54からの離間の際は、減速比の大きな第1動力伝達経路1220を介して板カム100を回動させるため、圧縮ばね84を圧縮させる(弾性エネルギーを蓄積させる)ために必要なトルクが得られるので、モーターが徒に大型化するのを防止することができる。
<実施の形態2>
実施の形態1では、モーター106から板カム100(カムシャフト102)に至る動力伝達機構中に2個の電磁クラッチ124C,132Cを用いたが、実施の形態2では、当該動力伝達機構中に用いる電磁クラッチを減らして1個としている。
【0052】
実施の形態2に係る定着装置は、モーター106からカムシャフトに至る動力伝達機構の構成が異なる以外は、実質的に実施の形態1に係る定着装置10と同様の構成である。よって、共通する部分には、実施の形態1と同じ符号を付してその説明は省略するか簡単に言及するに止め、以下、異なる部分を中心に説明する。
図8は、実施の形態2に係る定着装置200において、モーター106(図8では不図示、図9参照)から、定着ローラー50に至る動力伝達機構、およびモーター106から板カム100(カムシャフト102)に至る動力伝達機構の概略構成を示す斜視図であり、図9は、上記両動力伝達機構における動力伝達経路を示す図である。図8、図9は、それぞれ図4、図5と同様に描いた図である。
【0053】
先ず、モーター106から定着ローラー50に至る動力伝達機構について説明するが、これは実施の形態1の場合と同様である。
すなわち、モーター106の出力軸108の軸心方向と平行にシャフト112が設けられており、シャフト112の一端部側には、平歯車114が取着されている。そして、平歯車114が、モーター106の出力軸108に取着された平歯車110と噛み合っている。
【0054】
シャフト112の他端部側には、平歯車118が取着されており、定着ローラー50の芯金60の端部部分には平歯車120が取着されていて、両平歯車118,120が噛み合っている。
ここまで説明した構成により、モーター106が起動され出力軸108が回転して平歯車110が、図8に示すように矢印Jの向きに回転すると、これと噛み合っている平歯車114、平歯車114が取着されたシャフト112、およびシャフト112に取着された平歯車118が矢印Kの向きに回転する。そして、平歯車118と噛み合った平歯車120、平歯車120が芯金60に取着されている定着ローラー50が矢印Cの向きに回転する。定着ローラー50の回転開始、回転停止は、モーター106のオン、オフによる。
【0055】
続いて、モーター106から板カム100に至る動力伝達機構について説明する。
出力軸108の軸心方向と平行にシャフト202が設けられている(図9)。シャフト202の一端部側には、平歯車204が取着されている。平歯車204は、モーター106の出力軸108に取着された平歯車110と噛み合っている。
シャフト202の他端部側には、電磁クラッチ206が取り付けられている。電磁クラッチ206は、クラッチ206Cにより平歯車206Gとシャフト202間の動力の伝達を断続する。
【0056】
さらに、出力軸108の軸心方向と平行にシャフト208が設けられている。シャフト208の一端部側には、平歯車210が取着されている。平歯車210は、平歯車206Gと噛み合っている。
シャフト208の他端部側には、偏平なカップ状をした内歯車である第2欠歯歯車214が取着されており、第2欠歯歯車214の内側のシャフト208部分には第1欠歯歯車212が取着されている。すなわち、第1欠歯歯車212と第2欠歯歯車214とは、同軸(シャフト208)上に取着されている。
【0057】
図8は、偏平なカップ状をした第2欠歯歯車214の底部を切断して図示したものであるが、これを、第2欠歯歯車214の開口部側から視た斜視図(すなわち、図8におけるのとは反対側から視た斜視図)を図10に示す。
第1欠歯歯車212は、平歯車の周方向において一定の周長に渡り歯を形成しない欠歯部を設けた歯車である。第1欠歯歯車212には、第1欠歯歯車212が1回転する間に、カムシャフト102に取着された平歯車128を少なくとも半回転させるだけの個数分の歯が形成されている。また、第1欠歯歯車212の歯は、板カム100を下死点から上死点まで回動させることができる範囲に設けられている。
【0058】
第2欠歯歯車214は、内歯車の周方向において一定の周長に渡り歯を形成しない欠歯部を設けた歯車である。第2欠歯歯車214には、第2欠歯歯車214が1回転する間に、カムシャフト102に取着された平歯車128を少なくとも半回転させるだけの個数分の歯が形成されている。また、第2欠歯歯車214の歯は、平歯車128に対して第1欠歯歯車212と同時に歯合しない範囲に形成されている。
【0059】
図8、図9に戻り、モーター106(図9)の回転中に電磁クラッチ206のクラッチ206Cをオンすると矢印Nの向きに回転する平歯車204が取着されたシャフト108と平歯車206Gが連結されて、平歯車206Gも矢印Nの向きに回転する。
平歯車206Gと噛み合っている平歯車210は矢印Pの向きに回転し、平歯車210が取着されているシャフト208も矢印Pの向きに回転する。
【0060】
図10に戻り、シャフト208が矢印Pに向きに回転すると、これに取着されている第1欠歯歯車212および第2欠歯歯車214も矢印Pの向きに回転する。
そして、カムシャフト102に取着された平歯車128が第1欠歯歯車212と歯合している間に、板カム100は下死点から上死点まで矢印Hの向きに回動することとなる。また、平歯車128が第2欠歯歯車214と歯合している間に、板カム100は上死点から下死点まで矢印Hの向きとは逆の向きに回動することとなる。
【0061】
上記したように、モーター106の出力軸108からカムシャフト102に至る動力伝達機構は、途中で二つの動力伝達経路に分岐している。
ここで、モーター106の出力軸108からカムシャフト102に至る動力伝達機構において、第1欠歯歯車212を経由して動力が伝達される経路を第1動力伝達経路2120と称し、第2欠歯歯車214を経由して動力が伝達される経路を第2動力伝達経路2140と称することとする。
【0062】
上記の場合、モーター106の出力軸108に取着された平歯車110からカムシャフト102に取着された平歯車128に至る減速比は、第1欠歯歯車212と第2欠歯歯車214の径の大きさの違いから、第2動力伝達経路2140による方が、第1動力伝達経路2120によるよりも小さい。
よって、板カム100は、第2動力伝達経路2140を介して回動される方が、第1動力伝達経路2120を介して回動されるよりも、速く回動する。一方、第1動力伝達経路2120による方が、第2動力伝達経路2140によるよりも、板カム100を大きなトルクで回動することができる。
【0063】
ここで、モーター106の出力軸108からカムシャフト102に至る動力伝達機構において(i)第1動力伝達経路2120による場合の減速比をRb1、第2動力伝達経路2140による場合の減速比をRb2とし、(ii)モーター106の回転数が等しいとした場合に、第1動力伝達経路2120によった場合の板カム100の回転速度をSb1、第2動力伝達経路2140によった場合の板カム100の回転速度をSb2とし、(iii)第1動力伝達経路2120によった場合のカムシャフト102に加わるトルクをTb1、第2動力伝達経路2140によった場合のカムシャフト102に加わるトルクをTb2として、各々の大小関係を整理すると以下のようになる。
【0064】
Rb1>Rb2、Sb1<Sb2、Tb1>Tb2
実施の形態2では、加圧ローラー56を定着ローラー50に押圧させる際、すなわち、板カム100を図3に示す上死点から図2に示す下死点まで回動させる際は、第2動力伝達経路2140による。これは、実施の形態1と同様、板カム100を速く回動させて、押圧動作を早く完了させ、1枚目の画像形成をすばやく実行する必要がある一方、この場合、圧縮ばね84は伸びようとするため、揺動板70を回動させるための負荷(トルク)が板カム100にほとんどかからないからである。
【0065】
一方、加圧ローラー56を定着ベルト54から離間させる際、すなわち、板カム100を図2に示す下死点から図3に示す上死点まで回動させる際は、第1動力伝達経路2120による。これは、実施の形態1と同様、揺動板70を圧縮ばね84の弾性力に抗して回動するため大きなトルクが必要となる一方、当該離間動作は、一連の画像形成の終了後になされるため、少々時間を要しても不都合が生じないためである。
【0066】
モーター106の回転制御と板カム100の回動制御は、制御部42のCPU44(図1)によってなされる。
図示は省略するが、CPU44には、実施の形態1(図6)と同様、モーター106の駆動制御するモーター駆動部136、下死点センサ142、上死点センサ144が接続されており、また、電磁クラッチ206C(図9)のオン・オフ制御をするクラッチ制御部が接続されている。
【0067】
CPU44が実行するモーターとクラッチの制御プログラムであるが、実施の形態1の図7に示すフローチャートにおいて、ステップS3、S5における電磁クラッチ132Cのオン・オフ制御およびステップS7、S9に電磁クラッチ124Cのオン・オフ制御が、電磁クラッチ206Cのオン・オフ制御に代わる他は基本的に同様であるので、説明については省略する。
【0068】
以上、実施の形態2に係る定着装置200によれば、定着ベルト54の回転と加圧ローラー56の定着ベルト54への押圧・離間とを一つのモーター106で実現できる。しかも、加圧ローラー56の定着ベルト54への押圧の際は、減速比の小さい第2動力伝達経路2140を介して板カム100を回動させるため、前記押圧完了までに要する時間を短縮することができる。また、加圧ローラー56の定着ベルト54からの離間の際は、減速比の大きな第1動力伝達経路2120を介して板カム100を回動させるため、圧縮ばね84を圧縮させる(弾性エネルギーを蓄積させる)ために必要なトルクが得られるので、モーターが徒に大型化するのを防止することができる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
(1)上記実施の形態では、本発明を熱ベルト定着方式の定着装置、すなわち、熱源が内蔵された加熱ローラーと、定着ローラーと、前記加熱ローラーと定着ローラーとの間に巻架された加熱回転体である定着ベルトと、定着ベルトを介して定着ローラーを押圧し、定着ニップを形成する加圧ローラーとを有する定着装置に適用した例を示したが、これに限らず、例えば、熱ローラー定着方式の定着装置にも本発明は、適用可能である。熱ローラー定着方式の定着装置は、熱源を内蔵する定着ローラー(加熱回転体)に加圧部材である加圧ローラーを直接押圧して定着ニップを形成する定着装置である。
(2)上記実施の形態では、加圧部材として加圧ローラーを用いたが、これに限らず、加圧パッドを用いても構わない。
(3)上記実施の形態では、加圧部材(加圧ローラー)を移動させて(変位させて)、加熱回転体(定着ベルト)との相対位置を変更したが、これに限らず、加熱回転体の方を移動させて、加圧部材の加熱回転体に対する相対位置を変更することとしても構わない。
(4)上記実施の形態では、付勢手段として圧縮コイルばねを用いたが、これに限らず、板ばね、スポンジその他の弾性部材を用いても構わない。また、圧縮ばねに限らず、引張りばねを用いても構わない。
(5)上記実施の形態では、接離手段として偏心部材であるカムを含む機構を用いたが、接離手段は、当該機構に限らす、他の公知の機構を用いても構わない。すなわち、モーターからの回転運動を加圧ローラーの保持部材である揺動板の揺動運動に変換する機構であれば構わない。当該機構として、クランクと揺動梃を含むものを用いることができる。この場合、揺動梃自体を揺動板とすることができる。あるいは、モーターからの回転運動を直線運動に変換して、加圧ローラーの保持部材を定着ベルト(定着ローラー)に対して直線往復運動させる機構を用いることもできる。当該機構として、例えば、滑子クランク機構を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る定着装置は、例えば、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真方式で画像を形成する画像形成装置において、記録シート上のトナー像を当該記録シートに定着させる定着装置として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
36 定着装置
54 定着ベルト
56 加圧ローラー
70 揺動板
84 圧縮コイルばね
106 モーター
124C,132C,206C クラッチ
1220,2120 第1動力伝達経路
1300,2140 第2動力伝達経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターを動力源として回転する加熱回転体に加圧部材を付勢手段により相対的に押圧してニップ部を形成し、当該ニップ部に通紙させることによって記録シート上のトナー像を当該記録シートに定着させる定着装置であって、
回転動力を受けて前記加圧部材と前記加熱回転体を接離させ、前記付勢手段の付勢力に抗して前記加圧部材と前記加熱回転体が離間する第1の状態と、前記付勢力を受けて前記加圧部材が前記加熱回転体を押圧する第2の状態とに変更する接離手段と、
前記モーターの回転動力を前記接離手段に伝達する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構による前記モーターの回転動力の前記接離手段への伝達を断続する断続手段と、
を有し、
前記動力伝達機構は、前記モーターから前記接離手段に至る間で、第1の動力伝達経路と第2の動力伝達経路に分岐していて、第1の動力伝達経路による方が第2の動力伝達経路によるよりも減速比が大きく設定されていると共に、
前記加圧部材と前記加熱回転体が、前記第2の状態から前記第1の状態に変更される際は前記第1の動力伝達経路で動力を伝達し、前記第1の状態から前記第2の状態に変更される際は第2の動力伝達経路で動力を伝達する経路切換手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記動力伝達機構は、
同軸上に取着された第1外歯車および、これよりも径の大きい第2外歯車と、
前記第1外歯車に歯合して、動力を下流側に伝達する第3歯車と、
前記第2外歯車に歯合して、動力を下流側に伝達する第4歯車と、
を含み、
前記第1外歯車と前記第3歯車とが、前記第1の動力伝達経路の一部を構成し、前記第2外歯車と前記第4歯車とが前記第2の動力伝達経路の一部を構成していて、前記減速比の違いが前記第1外歯車と前記第2外歯車の径の違いで設定されており、
前記経路切換手段は、前記第1の動力伝達経路中と前記第2動力伝達経路中の各々に設けられたクラッチであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記接離手段は、
回転軸に取着された偏心部材を含み、回転される偏心部材の軸心からの偏心量に応じて前記加圧部材と前記加熱回転体を接離させ、
前記動力伝達機構は、
第1外歯車と、
前記第1外歯車と同軸上に設けられ、当該第1外歯車を囲繞する内歯車と、
前記第1外歯車と前記内歯車との間に設けられ、前記偏心部材と連動する第2外歯車と、
を含み、
前記切換手段は、
前記偏心部材の回転角度に対応させ、前記第2外歯車が前記第1外歯車とのみ歯合して第1の動力伝達経路を構成し、前記第2外歯車が前記内歯車とのみ歯合して第2の動力伝達経路を構成するように、前記第1外歯車と前記内歯車とを一定の角度範囲で歯が形成されていない欠歯歯車構造としたものであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
電子写真方式で記録シート上に画像を形成する画像形成装置であって、
記録シート上に形成されたトナー像の定着装置として、請求項1〜3のいずれか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−64932(P2013−64932A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204485(P2011−204485)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】