定着装置及びこれを用いた画像形成装置
【課題】記録材上の加熱定着可能な画像に対してレーザ光を用いて定着する際、光強度の強いレーザ光の外部への漏れを抑えながら安全性を高める。
【解決手段】記録材P上の加熱定着可能な画像に対し当該記録材Pの搬送方向に交差する方向に沿って延びる照射領域IRに向かってレーザ光Liを照射するレーザ光源1と、照射領域IRを囲うように設けられ且つレーザ光源1から照射されたレーザ光Liによる照射領域IRからの反射光Lrが照射領域IRに向かって再照射されるように反射光Lrを反射する反射面を有する反射部材2と、この反射部材2の記録材Pに向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材Pの搬送面に対向し且つ反射部材2の外方に向かって延びる部分を有してレーザ光Liが吸収可能な光吸収部材3と、を備える。
【解決手段】記録材P上の加熱定着可能な画像に対し当該記録材Pの搬送方向に交差する方向に沿って延びる照射領域IRに向かってレーザ光Liを照射するレーザ光源1と、照射領域IRを囲うように設けられ且つレーザ光源1から照射されたレーザ光Liによる照射領域IRからの反射光Lrが照射領域IRに向かって再照射されるように反射光Lrを反射する反射面を有する反射部材2と、この反射部材2の記録材Pに向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材Pの搬送面に対向し且つ反射部材2の外方に向かって延びる部分を有してレーザ光Liが吸収可能な光吸収部材3と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光を記録材の幅方向に亘って照射し、未定着トナー像を定着する構成が開示されている。
特許文献2には、転写から定着に至る間にトナーの樹脂物性を変化させるためにレーザ光等を照射する装置構成が開示され、レーザ光源と感光体との間に遮光板が設けられることが記載されている。
特許文献3には、LEDアレイから発光される光を用紙上の未定着トナー像に集光して定着するようにした定着方式が開示され、シリンドリカルレンズの近傍に反射板を設けて記録材より反射又は散乱した光を再度集光する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−191560号公報(実施例1、図3)
【特許文献2】特開平11−202653号公報(発明の実施の形態、図1)
【特許文献3】特開平6−301304号公報(第6実施例、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、記録材上の加熱定着可能な画像に対してレーザ光を用いて定着する際、光強度の強いレーザ光の外部への漏れを抑えながら安全性を高めた定着装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、記録材上の加熱定着可能な画像に対し当該記録材の搬送方向に交差する方向に沿って延びる照射領域に向かってレーザ光を照射するレーザ光源と、前記照射領域を囲うように設けられ且つ前記レーザ光源から照射されたレーザ光による当該照射領域からの反射光が前記照射領域に向かって再照射されるように前記反射光を反射する反射面を有する反射部材と、この反射部材の記録材に向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材の搬送面に対向し且つ前記反射部材の外方に向かって延びる部分を有してレーザ光が吸収可能な光吸収部材と、を備えることを特徴とする定着装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る定着装置において、前記光吸収部材は、前記照射領域における記録材表面に対し接する面と交差する面を有することを特徴とする定着装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る定着装置において、前記光吸収部材の前記記録材を挟んだ対向部位には、レーザ光が吸収可能な裏面側光吸収部材を備えることを特徴とする定着装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに係る定着装置において、前記反射部材とは記録材を挟んで対向する部位に設けられ、前記レーザ光源から照射されて記録材を透過した透過光が前記照射領域に対応する記録材の裏面側部位に向かって再照射されるように前記透過光を反射する裏面側反射部材を更に備えることを特徴とする定着装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに係る定着装置において、前記光吸収部材は、当該光吸収部材の記録材の搬送面に対向する部分のうち前記照射領域側とは異なる外方端部での当該光吸収部材と記録材との開口部から前記照射領域を見たときに、記録材の搬送面に対向する前記光吸収部材の対向面しか視認されないように配置されていることを特徴とする定着装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに係る定着装置において、前記光吸収部材を冷却する冷却手段を更に備えることを特徴とする定着装置である。
【0007】
請求項7に係る発明は、記録材上に加熱定着可能な画像を形成する画像形成部と、この画像形成部にて記録材上に形成された前記画像を定着する請求項1乃至6のいずれかに係る定着装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る画像形成装置において、搬送方向に沿って連続した記録材を用いることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、記録材上の加熱定着可能な画像に対してレーザ光を用いて定着する際、光吸収部材を有さない場合に比べて、光強度の強いレーザ光の外部への漏れを抑えながら安全性を高めることができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、光強度の強い反射光が直接外部に漏れるのを抑えることができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、レーザ光の吸収が更に効果的になされる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、レーザ光の利用効率を更に高めることができる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、レーザ光の外部への漏れをより一層抑えることができる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、光吸収部材での光吸収性能がより安定化する。
請求項7に係る発明によれば、記録材上の加熱定着可能な画像に対してレーザ光を用いて定着する際、光吸収部材を有さない場合に比べて、光強度の強いレーザ光の外部への漏れを抑えながら安全性を高めることができる画像形成装置を提供できる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、安定した定着性が維持され易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を具現化する実施の形態モデルに係る定着装置の概要を示す説明図である。
【図2】(a),(b)は光吸収部材の好ましい形状を示す説明図である。
【図3】光吸収部材の更に好ましい形状を示す説明図である。
【図4】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成の概要を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の定着装置の概要を示す斜視図である。
【図6】実施の形態1の定着装置の断面方向から見た説明図である。
【図7】光吸収部材での作用を示す説明図であり、(a)は図4の要部断面、(b)は反射光の光強度分布を示す。
【図8】実施の形態1の第一変形例としての定着装置を示す説明図である。
【図9】実施の形態1の第二変形例としての定着装置を示す説明図である。
【図10】実施の形態1の第三変形例としての定着装置を示す説明図である。
【図11】実施の形態1の第四変形例としての定着装置を示す説明図である。
【図12】実施の形態2の定着装置の概要を示す説明図である。
【図13】実施の形態3の定着装置の概要を示す説明図である。
【図14】実施の形態4の定着装置が適用された画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図15】実施の形態4の定着装置の概要を示す説明図である。
【図16】(a)は実施の形態5の定着装置の要部を示す模式図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図17】(a)は実施の形態5の変形例としての定着装置の要部を示す模式図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
先ず、本発明が適用された定着装置の実施の形態モデルの概要について説明する。
図1は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る定着装置を示す説明図である。
同図において、定着装置は、記録材P上の加熱定着可能な画像に対し当該記録材Pの搬送方向に交差する方向に沿って延びる照射領域IRに向かってレーザ光Liを照射するレーザ光源1と、照射領域IRを囲うように設けられ且つレーザ光源1から照射されたレーザ光Liによる照射領域IRからの反射光Lrが照射領域IRに向かって再照射されるように反射光Lrを反射する反射面を有する反射部材2と、この反射部材2の記録材Pに向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材Pの搬送面に対向し且つ反射部材2の外方に向かって延びる部分を有してレーザ光Liが吸収可能な光吸収部材3と、を備えている。
【0011】
ここで、記録材P上の画像を形成する代表的材料としては、電子写真方式に用いられるトナーが挙げられるが、これに限られず、例えばインクジェット方式等に用いられる加熱溶融タイプのインキであっても差し支えない。
また、使用する記録材Pとしては、代表的には連続状の態様(例えばロール紙)や枚葉状の態様(例えばカット紙)が挙げられるが、媒体としては紙媒体のみならずフィルム媒体等であってもよい。
更に、レーザ光源1の代表的態様としては、レーザ光Liの発光部位が照射領域IRの延びる方向に沿って一列に複数設けられたアレイレーザタイプのものが挙げられる。
【0012】
反射部材2は、反射面側が例えば湾曲状の鏡面であってもよいし、反射面側が再帰性反射面や、散乱面であってもよく、反射光Lrが照射領域IRに向かって再照射されるように反射する反射面を有するものであればよい。このとき、照射領域IRに向かって再照射される光は、照射領域IRを含む部位に再照射されればよく、照射領域IRに限られるものではない。
【0013】
そして、光吸収部材3は、反射部材2の記録材Pに向かう側の端部と連なるように設けられることで、反射部材2と光吸収部材3との間でレーザ光Liが漏れないようになる。また、光吸収部材3が記録材Pの搬送面に対向する部分を有することで、レーザ光Liが光吸収部材3に効果的に吸収され、光吸収部材3と記録材Pとの開口部から外部に向かって漏れるレーザ光Liの光強度は大きく低減される。更に、光吸収部材3は、記録材Pの搬送面に対向する部分を有していればよく、例えば反射部材2の反射面に沿って延びるような部分を有していても差し支えない。更に、「記録材Pの搬送面に対向する」とは、搬送面に平行であってもよいし、平行でなくてもよく、記録材Pの搬送面に対向して延びる形状であればよい。このような光吸収部材3としては、耐熱性を有し且つレーザ光Liを吸収できるものであればよく、例えばアルミ合金に黒色陽極化成膜を処理したものが挙げられる。
【0014】
また、記録材Pの裏面側には、記録材Pをレーザ光源1側に向かって保持するように対向配置される対向部材を設け、この対向部材(平板状又は曲面状部材)でレーザ光Liのうち記録材Pを透過した透過光を反射させるようにしてもよいし、記録材Pとは離間した位置に他の湾曲状の反射部材(後述する裏面側反射部材5)を設けるようにしてもよく、あるいは、何も設けなくても差し支えない。
【0015】
そして、照射領域IRに照射されたレーザ光Liの照射領域IRからの反射光(散乱光含む)の外部への漏れを防ぐ観点から、図2(a),(b)に示すように、光吸収部材3は、照射領域IRにおける記録材表面に対し接する面(接線方向に延びる面を意味するもので、以下接面と略す)CSに対して交差する面を有することが好ましい。ここで、(a)は記録材Pが平坦な部位に照射領域IRを有する場合であり、(b)は記録材Pが湾曲した部位に照射領域IRを有する場合を示しており、(a)では接面CSが一つのため、光吸収部材3は接面CSに交差する面を有するものであればよい。一方、(b)のように湾曲した部位の照射領域IRでは、複数の接面CSが想定され、これらの接面CSに交差する面を有するようにすればよい。
これにより、この接面CSに沿った方向に反射光Lrが反射されても光吸収部材3によって吸収されるようになり、レーザ光源1から照射領域IRに向かって照射されたレーザ光Liによる照射領域IRからの反射光Lrが光吸収部材3と記録材Pとの間から外部に漏れ出さないようになる。尚、光吸収部材3の形状に合わせて記録材Pの搬送経路が設定されていることは言うまでもない。
【0016】
また、図1に示すように、光吸収部材3が設けられる部位での光吸収性能をより効果的にする観点から、光吸収部材3の記録材Pを挟んだ対向部位には、レーザ光Liが吸収可能な裏面側光吸収部材4を備えることが好ましい。このように光吸収部材3と裏面側光吸収部材4とで記録材Pを挟むことで、記録材Pを透過した透過光も裏面側光吸収部材4にて有効に吸収されるようになる。
【0017】
更に、照射領域IRに照射されたレーザ光Liの記録材Pを透過した透過光を有効利用する観点から、記録材Pの裏面側に接触するような対向部材を有さない態様において、反射部材2とは記録材Pを挟んで対向する部位に設けられ、レーザ光源1から照射されて記録材Pを透過した透過光が照射領域IRに対応する記録材Pの裏面側部位に向かって再照射されるように前記透過光を反射する裏面側反射部材5を更に備えることが好ましい。
【0018】
そして、レーザ光Liの外部への漏れをより一層抑える観点から、図3に示すように、光吸収部材3は、当該光吸収部材3の記録材Pの搬送面に対向する部分のうち照射領域IR側とは異なる外方端部での当該光吸収部材3と記録材Pとの開口部αから照射領域IRを見たときに、記録材Pの搬送面に対向する光吸収部材3の対向面3aしか視認されないように配置されていることが好ましい。これによれば、光吸収部材3の照射領域IRとは異なる外方端部と記録材Pとの開口部αから、照射領域IRや反射部材2の反射面が視認されなくなり、レーザ光Liの外部への漏れが抑えられる。
【0019】
このような場合、光吸収部材3の形状は特に限定されず、次のように構成されていればよい。つまり、光吸収部材3のうち記録材Pの搬送面に対向する部分にて、記録材Pに対向する対向面3aの記録材搬送方向で異なる二点間を結ぶ直線(図中点線部分)を引いたときに、光吸収部材3の対向面3aがこの直線より記録材Pから遠ざかる部分を有し且つこの部分に記録材Pの搬送経路が設けられるように、光吸収部材3及び記録材Pの搬送経路が構成されていればよい。また、このような二点間は特に限定されず、光吸収部材3の両端部であってもよいし、それ以外の二点であっても差し支えない。
【0020】
また、光吸収部材3での光吸収性能を安定化させる観点から、図1に示すように、光吸収部材3を冷却する冷却手段6を更に備えることが好ましい。このような冷却手段6の代表的態様としては、放熱部材が挙げられる。また、冷却手段6は、光吸収部材3に設けられることが好ましく、また、例えば裏面側光吸収部材4を備える態様にあっては、裏面側光吸収部材4にも冷却手段6を設けることが好ましいが、裏面側光吸収部材4には記録材Pを透過した透過光のみ吸収されるため、光吸収部材3よりも温度上昇は低い。そのため、裏面側光吸収部材4に冷却手段6を設けなくても差し支えない。
【0021】
このような定着装置を画像形成装置に適用するには、記録材P上に加熱定着可能な画像を形成する画像形成部と、この画像形成部にて記録材P上に形成された前記画像を定着する定着装置と、を備え、この定着装置として上述の定着装置を用いるようにすればよい。
また、このような画像形成装置では、使用する記録材Pとしては、搬送方向に沿って連続した記録材Pを用いる方が好適である。
【0022】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図4は、前述の実施の形態モデルの定着装置が適用された実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【0023】
本実施の形態の画像形成装置は、記録材として連続状の記録材Pを用いた構成で、記録材P上に画像を形成する画像形成本体装置10Aと、この画像形成本体装置10Aの両側に記録材Pを供給する供給装置10Bと画像が形成された記録材Pを収容する収容装置10Cとで構成されている。尚、記録材Pとしては、ロール形状のものでもよいし、例えば折り畳まれた形状のものであってもよいが、本実施の形態ではロール形状のもので説明する。
【0024】
本実施の形態の画像形成本体装置10Aは、例えば電子写真方式を用いるものであり、記録材P上に例えば四色のトナーを用いて複数色のトナー像を形成する各色の画像形成部20(具体的にはイエロー画像形成部20Y、マゼンタ画像形成部20M、シアン画像形成部20C、ブラック画像形成部20K)と、これら各色の画像形成部20にて記録材P上に多重化された状態で形成されたトナー像を定着する定着装置40と、複数の適宜設けられたロール部材16〜19等で構成されている。
ここで、ロール部材16は画像形成部20へ記録材Pを導く際に位置調整を行う位置調整ロール、ロール部材17は記録材Pを定着装置40に向かって導く張架ロール、ロール部材18,19は定着後の記録材Pを収容装置10Cに向かって搬送するに際し、適宜張力を付与する張力付与ロールである。
【0025】
また、各色の画像形成部20は使用するトナーを除き略同様の構成となっているため、代表的にブラック画像形成部20Kを例に説明を行う。ブラック画像形成部20Kは、表面に図示しない感光層を有して矢印E方向に回転する円筒状の感光体ドラム21を有している。感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21の感光層を予め定めた電位に帯電する帯電装置22、帯電装置22にて帯電された感光層を例えばレーザ光を用いて選択照射し、感光体ドラム21に静電潜像を形成する露光装置23、露光装置23によって形成された静電潜像をトナーにて現像することで可視像化する現像装置24、感光体ドラム21上のトナー像を記録材P上に転写する転写装置25、転写後の感光体ドラム21上の残留トナーを清掃する清掃装置26等が配置されている。
尚、画像形成部20のトナー色の配列はこれに限らず、他の配列を用いるようにしてもよく、また画像形成部20が一つだけで構成されてもよいことは言うまでもない。
【0026】
また、供給装置10Bは、芯材にロール状に巻かれた記録材Pを保持する供給ロール12と、画像形成本体装置10A側へ記録材Pを供給するために搬送しながら張力を付与する張力付与ロール14,15等で構成されている。一方、収容装置10Cは、記録材Pを芯材に巻き取り収容する巻き取りロール13等で構成されている。
【0027】
このような画像形成装置において、供給装置10Bから供給された記録材Pには、画像形成本体装置10Aの各色の画像形成部20にて各色トナー像が転写され、記録材P上で多重化される。この未定着の多重化されたトナー像が形成された記録材Pは、定着装置40にて定着された後、収容装置10Cにて巻き取り収容される。
【0028】
次に、このような画像形成装置における定着装置40について図5を基に説明する。
同図において、本実施の形態の定着装置40は、記録材P上の直線状に延びる照射領域IRに向かってレーザ光Liを照射するレーザ光源としてのアレイレーザ41と、照射領域IRを囲うように設けられ且つアレイレーザ41から照射されたレーザ光Liによる照射領域IRからの反射光が照射領域IRに向かって再照射されるように反射光を反射する反射面を有する半円筒型の反射部材42と、この反射部材42とは記録材Pを挟んで設けられ、アレイレーザ41から照射されて記録材Pを透過した透過光が記録材Pの裏面側部位に向かって再照射されるように透過光を反射する半円筒型の裏面側反射部材43と、反射部材42の記録材Pに向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材Pの搬送面に対向し且つ反射部材42の外方に向かって延びる部分を有してレーザ光Liが吸収可能な光吸収部材44(44a,44b)と、この光吸収部材44の記録材Pを挟んだ対向部位に設けられ且つレーザ光Liが吸収可能な裏面側光吸収部材45(45a,45b)と、を備えている。
【0029】
アレイレーザ41は、本例では5個の高出力半導体レーザを用いたものを示すが、この数量等は限定されず、幾つあっても差し支えないが、記録材Pの幅方向における画像幅をカバーできる長さが必要である。また、アレイレーザ41は、例えば記録材P上の照射領域IRにレーザ光Liを集束させるような光学系を含んでいる。そして、照射領域IRでは、隣り合う高出力半導体レーザからのレーザ光Liが互いの端部でオーバーラップすることで、照射領域IRの延びる方向に沿ってのレーザ光Liの照射強度が略等しくなるように設定されている。
【0030】
また、反射部材42は、半円筒の略中央部分に照射領域IRに向かってアレイレーザ41からのレーザ光Liが照射できるような長穴の開口42aが設けられている。尚、アレイレーザ41から反射部材42までのレーザ光Liに対しては、レーザ光Liが外に漏れないように図示外の遮蔽部材等で遮蔽されていることは言うまでもない。
【0031】
図6は、本実施の形態の定着装置40を横方向からみた断面を示す。
同図において、アレイレーザ41から照射されたレーザ光Liは、反射部材42の開口42aから記録材P上の照射領域IRに向かって進む。照射領域IRに照射されたレーザ光Liの照射領域IRからの反射光Lrは、反射部材42の反射面42bで反射され、照射領域IRに向かって再照射される。
一方、レーザ光Liのうち記録材Pを透過した透過光Ltは、裏面側反射部材43の反射面43bによって、記録材Pの裏面側で照射領域IRに対応する部位に再照射される。
【0032】
このような反射光Lrは、記録材P上の照射領域IRからほぼ全方位に亘って反射されるが、その殆どは反射部材42の反射面42bにて反射され、このような反射を繰り返すことでその強度は減衰する。
しかしながら、反射部材42と記録材Pとの間には、記録材Pを搬送させるための間隙が保たれる必要から、開口部αが形成され、照射領域IRから記録材Pの表面に近い方向で反射した反射光Lrは反射部材42にて反射されずにそのまま開口部α側へ進む。
【0033】
図7(a)は、図6の部分拡大図であり、光吸収部材44bと記録材Pとの関係を示すものである。
反射部材42と記録材Pとの間に向かう反射光Lr(Lr1〜Lr3)は、図のようになるが、この場合、Lr2及びLr3は光吸収部材44bに向かうため、ここでほぼ吸収される。そのため、光吸収部材44bと記録材Pとの開口部αを通って外部に漏れる光としては、ほぼ反射光Lr1となる。更に、例えば反射光Lr’が記録材Pに当たって反射されることを想定しても、これらは光吸収部材44bで吸収される。
【0034】
通常、記録材Pに照射された光の反射光の光強度分布は、(b)のように表される。つまり、記録材Pの表面に多少の凹凸がある分、やや記録材Pの表面に沿う方向に拡がる分布となるが、記録材Pに平行な成分の光強度は平行に向かうに従って弱くなる。
そのため、(a)に示すLr1の光強度も弱く、光吸収部材44bと記録材Pとの開口部αを通って外部に漏れる光としてはその光強度が低く抑えられる。
仮に、光吸収部材44bが設けられていない場合には、例えばLr1〜Lr3の光が漏れるようになり、開口部αから漏れる光の光強度はやや強くなる。
【0035】
ここでは、一方の光吸収部材44b側について説明したが、図6に示すように、もう一方の光吸収部材44a側も同様であり、このことは、裏面側光吸収部材45(45a,45b)においても同様である。
【0036】
一般に、レーザ光を用いる製品は、JIS C 6802「レーザ製品の安全基準」によりクラス分けや基準レベルが規定されている。
そのため、本実施の形態においては、定着装置40の開口部位(ここでは、記録材Pと光吸収部材44との開口部αに相当)から外部に放出されるレーザ光がJIS C 6802で定義されるクラス1のAEL(Accessible Emission Limit:被ばく放出限界)を満たす必要がある。具体的には、開口部αから100mmの位置に設けた直径7mmの検出装置で測定した漏れ光が、いずれの場所においてもAEL内にあることが必要である。つまり、使用するレーザ光の波長が近赤外では、連続発振時に例えば2.3×10−4W以下になるようにする必要がある。
【0037】
本実施の形態によれば、反射部材42及び裏面側反射部材43を用いると共に、光吸収部材44及び裏面側光吸収部材45を用いているため、定着に際してレーザ光Liの利用効率が高められると共に、漏れ光(開口部αから漏れる光)の安全性も高まる。尚、漏れ光の光強度が上述の規格を満足していることは言うまでもない。
【0038】
また、本実施の形態では、裏面側反射部材43及び裏面側光吸収部材45を用いる態様を示したが、これらを用いないようにしても差し支えない。この場合、裏面側反射部材43を設ける場合に比べ、レーザ出力を少し大きくする方がよいが、漏れ光の光強度が上述の規格を満足していることは言うまでもない。
【0039】
図8は、本実施の形態の定着装置40の第一変形例を示すもので、光吸収部材44(44a,44b)及び裏面側光吸収部材45(45a,45b)に冷却手段としての放熱フィン46を取り付けたものとなっている。
光吸収部材44及び裏面側光吸収部材45は、レーザ光Liを吸収するため、部材温度が上昇するがこのような放熱フィン46を設けることで部材温度の上昇による熱膨張による変形が抑えられ、光吸収性能が安定に維持される。
ここでは、冷却手段として放熱フィン46を設ける態様を示したが、放熱フィン46に送風を付加するようにしてもよいし、例えば放熱フィン46を設けずに送風によって光吸収部材44を冷却するようにしても差し支えない。尚、送風を行う場合、照射領域IRへの送風は抑える方が定着効率の点で望ましい。
【0040】
また、図9は、本実施の形態の定着装置40の第二変形例を示すもので、図6と略同様に構成されるが、ここでは、反射部材42及び裏面側反射部材43の夫々に、記録材P側に対向して設けられた防護部材47を取り付けた構成となっている。
防護部材47は、レーザ光Liが透過可能な素材で構成され、レーザ光Li、反射光Lr、透過光Lt(図6参照)に対する減衰は小さく、これらの光を有効に利用できると共に、定着時の耐熱性も兼ね備えたものである。
【0041】
通常、記録材P上のトナーを加熱溶融させて定着する方式にあっては、トナーが加熱溶融される際に、トナーを構成する添加剤等の蒸発を生じ、これらの蒸発物が例えば反射部材42の反射面42bに付着すると反射面42bでの反射効率の低下を招く。また、記録材P自体も加熱されることで水分の蒸発等が生じ、これらの水分も相俟って反射面42bでの反射効率は一層低下する。また、このことは、裏面側反射部材43についても同様である。
【0042】
このような場合、防護部材47を設けることで、反射部材42の反射面42bや裏面側反射部材43の反射面43bでの反射効率が維持され、定着効率が安定した状態で維持される。尚、蒸発物は、防護部材47にも付着するが、適宜清掃するようにしてもよいし、防護部材47への付着によるレーザ光Liの減衰は非常に小さく、反射面42b,43bでの反射効率の低減に比べてその影響は小さい。
ここでは、防護部材47を反射部材42や裏面側反射部材43に直接設ける態様を示したが、反射部材42や裏面側反射部材43とは別に設けるようにしても差し支えない。
【0043】
更に、図10は、本実施の形態の第三変形例を示すもので、反射部材42の開口42aの位置がこれまでとは異なるものとなっている。
この例では、反射部材42の開口42aが、反射面42bに沿って記録材Pの搬送方向における下流側に偏倚した位置に設けられている。
このような配置を採用することで、アレイレーザ41からのレーザ光Liによる照射領域IRからの反射光Lrは、反射部材42の開口42aより記録材Pの搬送方向における上流側に向かって多く反射されるようになるが、この部位には広い反射面42bが存在するため、反射光Lrを照射領域IRに向かって再照射させやすくなる。そのため、定着効率の向上が図られる。また、このような場合、反射部材42の開口42aを記録材Pの搬送方向における上流側に偏倚させるようにしても同様である。
【0044】
また、本実施の形態では、アレイレーザ41を、反射部材42より記録材Pから遠ざかる位置に設ける態様を示したが、例えばアレイレーザ41を記録材P側に近付け、反射部材42の反射面42bと同じような位置からレーザ光Liを照射させるようにしてもよいし、更には、反射部材42の内側(反射面42より更に記録材P側)に配置するようにしてもよい。
そして、本実施の形態では、記録材Pとして連続状の態様を用いる構成を示したが、枚葉状のものを用いるようにしても差し支えなく、この場合、例えば定着装置40に向かって記録材Pを案内する案内機構や、記録材Pを搬送させるための搬送機構を別途設けるようにすればよい。
【0045】
更に、上述の実施の形態では、照射領域IRを一つとする態様を示したが、例えばアレイレーザ41を記録材Pの搬送方向に複数設けるようにしても差し支えない。
図11は、本実施の形態の第四変形例を示すもので、一つの反射部材42の記録材Pの搬送方向に沿って二つの円筒曲面を設け、夫々の開口42aを通して二つのアレイレーザ41(41A,41B)からのレーザ光Liを照射することで、二箇所の照射領域IR(IRA,IRB)を設けたものとなっている。また、裏面側反射部材43も同様の構成となっている。そして、光吸収部材44(44a,44b)や裏面側光吸収部材45(45a,45b)は反射部材42及び裏面側反射部材43の記録材Pの搬送方向に沿った上流側と下流側の部分に設けられている。
【0046】
このような構成では、記録材P上の画像に対し先ず上流側のアレイレーザ41Aによる照射領域IRAにてレーザ光Liの照射がなされ、ある時間経過後に、更に下流側のアレイレーザ41Bによる照射領域IRBにてレーザ光Liの照射がなされる。
このように照射されると、記録材P上の画像密度の高い部分(例えばベタ画像部分)では上流側の照射領域IRAでトナーと記録材Pとの界面温度が少し上昇する。その後、照射がない部分では前記界面温度が徐々に下降するものの、画像密度が高い分表面積が小さく、放熱量が少なく、温度低下は少しの量で抑えられる。
次に、下流側の照射領域IRBでもう一度加熱されることで、界面温度も十分上昇し、十分な密着性が確保されるようになる。
【0047】
一方、画像密度の低い部分(例えばハイライト画像部分)では一旦界面温度が十分上昇するが、この温度は急激に低下する。そして、下流側の照射領域IRBにてもう一度加熱がなされ、界面温度の上昇がもう一度なされる。つまり、画像密度の高い部分では二度の照射によって界面温度が確保されるのに対し、画像密度の低い部分では一度の照射によって界面温度が確保され、これを繰り返すことになる。
したがって、記録材P上の画像密度によらず、いずれも十分な密着性の確保がなされるようになる。また、光吸収部材44及び裏面側光吸収部材45によって、外部への漏れ光は抑えられる。
【0048】
また、このような二箇所の照射領域IRを備える場合、次のようにしてもよい。
上流側の照射領域IRAでのレーザ出力を下流側の照射領域IRBでのレーザ出力より小さくし、その分、記録材Pの搬送方向に沿った照射域長さを長くすることで、下流側の照射領域IRBでの照射時間が長くなる。このとき画像密度の高い部分に合わせて、上流側の照射領域IRAにて画像が十分加熱溶融できる照射強度や照射域長さになっていることは言うまでもない。
【0049】
このように照射すると、画像密度の高い部分では上流側の照射領域IRAにて十分な密着性が確保され、下流側の照射領域IRBで短時間の照射になっても問題はない。一方、画像密度の低い部分では、上流側の照射領域IRAによる照射ではトナー粒子と外気との接触面積が広い分、放熱量が増大してトナーを十分加熱溶融させることがなされないが、下流側の照射領域IRBにて照射強度が高められるために、十分に溶融が図られて密着性が確保されるようになる。つまり、記録材P上の画像密度によらず、トナーの十分な加熱溶融が図られる。
尚、照射領域IRを複数設ける場合、例えば図10のように、反射部材42の開口42aを記録材Pの搬送方向における下流側又は上流側に偏倚させるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0050】
◎実施の形態2
図12は、実施の形態2の定着装置40の概要を示す説明図である。
本実施の形態の定着装置40は、実施の形態1の定着装置40(例えば図6参照)と異なり、裏面側反射部材を有さず、また、光吸収部材44及び裏面側光吸収部材45の配置が異なるものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0051】
同図において、反射部材42と記録材Pを挟んで対向する位置には、記録材Pをアレイレーザ41側に向かって保持するように対向配置される湾曲状の対向部材48を有している。この対向部材48は、表面が例えばフッ素樹脂等によって低摩擦処理された白色で耐熱製の湾曲形状のもので構成されている。
【0052】
このような構成の定着装置40では、搬送される記録材Pは常に対向部材48上を滑りながら搬送されるため、照射領域IRでの記録材Pのばたつきも抑えられ、照射領域IR内での記録材Pに向かうレーザ出力は均一化されやすい。
また、対向部材48を用いることで、照射領域IRに照射されたレーザ光Liが記録材Pを透過した透過光は対向部材48の表面によって反射されるため、裏面側反射部材がない態様であっても、照射領域IRの近くに透過光からの反射光が再照射され、定着効率の向上がなされる。
【0053】
更に、本実施の形態では、裏面側光吸収部材45が対向部材48の湾曲形状に沿って設けられる一方、光吸収部材44も反射部材42側の端部より裏面側光吸収部材45側へ向かうように設けられている。つまり、光吸収部材44は、照射領域IRにおける記録材Pの表面に対し接する接面(接線方向に延びる面)と交差する面を有していることから、照射領域IRからの反射光Lrのうち照射領域IRでの記録材表面に略平行な反射光Lr4(上述の接面に相当する方向)は光吸収部材44にて吸収されるようになり、外部への漏れ光がより一層抑えられる。このとき、記録材Pの搬送方向に沿った照射領域IRの長さが狭いことから、照射領域IRから反射される反射光Lrのうち、記録材Pに近い反射光Lrとしては、ほぼ反射光Lr4と一致する。
【0054】
尚、本実施の形態における対向部材48としては、湾曲形状の曲率は特に限定されず、搬送される記録材Pを変形させるものでなければよく、例えば照射領域IRでは平坦であっても差し支えない。また、対向部材48としては、耐熱性を有するものであれば金属製の部材であっても差し支えないが、照射領域IRでの透過光を吸収しにくいよう、反射率の高い方が好適である。
【0055】
◎実施の形態3
図13は、実施の形態3の定着装置40の概要を示す説明図である。本実施の形態の定着装置40は、図12の定着装置40と同様に、裏面側反射部材を有さず、更に、裏面側吸収部材を備えていない構成のものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0056】
同図において、本実施の形態の定着装置40は、照射領域IRと対向する記録材Pの裏面側に回転部材49が設けられると共に、この回転部材49の記録材搬送方向における上流側及び下流側の記録材Pの裏面側には、記録材Pを案内する案内部材491,492が設けられている。
【0057】
また、本実施の形態では、反射部材42が照射領域IRでの記録材Pの接面と交差する位置まで延びた状態で照射領域IRを囲うように設けられ、その端部からは記録材Pの表面側に向かって延びる湾曲部分と記録材Pの搬送面に対向し且つ反射部材42の外方に向かう直線部分を有した光吸収部材44’(44a’,44b’)が設けられている。
【0058】
本実施の形態の定着装置40は、記録材Pを略直線方向に搬送する態様の定着装置40(例えば図6参照)に比べ、照射領域IRからの反射光Lrが光吸収部材44’側に向かうことが少ないが、反射部材42の反射面42bで反射される光が光吸収部材44’側に向かうようになる。このような場合も、光吸収部材44’で吸収されることから、定着装置40からの漏れ光が抑えられる。
【0059】
本実施の形態では、光吸収部材44’として、反射部材42に連なる湾曲部分を有する態様を示したが、この湾曲部分を反射部材42とすることも可能で、この場合、反射面42bがより大きくなり、レーザ光Liの利用効率が更に向上する。
【0060】
◎実施の形態4
図14は、実施の形態4の定着装置40が適用された画像形成装置の概要を示す。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1の画像形成装置(図4参照)と異なり、記録材として枚葉状の記録材を用いた構成のものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここでは詳細な説明は省略する。
【0061】
同図において、画像形成装置は、例えば電子写真方式を用いたものであり、記録材(枚葉状)P上に例えば四色のトナーを用いて複数色のトナー像を形成する各色の画像形成部20(具体的にはブラック画像形成部20K、シアン画像形成部20C、マゼンタ画像形成部20M、イエロー画像形成部20Y)と、これら各色の画像形成部20にて形成された各色トナー像を多重化された状態で搬送するベルト状の中間転写体30と、中間転写体30上の多重化トナー像を例えば記録材Pに一括転写する一括転写装置(二次転写装置)56と、この二次転写装置56にて記録材P上に転写された未定着トナー像を定着する定着装置40等で構成されている。
【0062】
ここで、各色の画像形成部20は使用するトナーを除き略同様の構成であり、また、実施の形態1の画像形成部20(図4参照)と同様に構成されるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0063】
本実施の形態の中間転写体30は、複数の張架ロール31〜36に掛け渡され、例えば張架ロール31を駆動ロール、張架ロール34をテンションロールとして回転する。
また、張架ロール35をバックアップロールとして二次転写装置56が配置され、張架ロール31と中間転写体30を挟んで対向する位置に中間転写体30上の残留トナーを清掃するベルト清掃装置37が設けられている。
【0064】
更に、画像形成装置内の中間転写体30の下方には記録材Pが収容される記録材収容部52が設けられ、記録材収容部52から搬送される記録材Pの搬送経路には、記録材収容部52から二次転写装置56までに複数の搬送ロール53〜55が設けられると共に、二次転写を終えた記録材Pを定着装置40に向かって搬送する搬送ベルト57、定着装置40によって定着された記録材Pを装置外に排出する排出ロール58が設けられている。
【0065】
そのため、本実施の形態では、各色の画像形成部20にて図中F方向に回転する感光体ドラム21上に形成された各色トナー像が転写装置(一次転写装置)25にて中間転写体30上に転写されることで、中間転写体30上に多重化トナー像が形成される。一方、記録材Pは記録材収容部52から搬送ロール53〜55によって二次転写位置に搬送され、中間転写体30上で多重化されたトナー像が二次転写装置56にて記録材P上に一括転写される。二次転写装置56にて多重化トナー像が一括転写された記録材Pは、そのまま搬送ベルト57にて搬送され、定着装置40にて定着される。定着を終えた記録材Pは排出ロール58にて画像形成装置外に排出されるようになる。
【0066】
図15は、本実施の形態における定着装置40の概要を示すもので、反射部材42と記録材Pを挟んで対向する位置に、記録材Pを保持して搬送する例えば静電吸着型の吸着搬送装置60が設けられている。
吸着搬送装置60は、二つのロール部材62,63と、これら二つのロール部材62,63に掛け渡されて循環回転するベルト部材61と、このベルト部材61に対して帯電を付与する帯電部材64とで構成されている。
【0067】
本実施の形態の定着装置40では、未定着トナー像が転写された記録材Pが定着装置40に達すると、吸着搬送装置60のベルト部材61が帯電部材64によって帯電されているため、記録材Pをベルト部材61側に静電吸着し、ベルト部材61の回転に伴ってそのまま搬送する。ベルト部材61の回転により搬送された記録材Pは、照射領域IRにてアレイレーザ41からのレーザ光Liが照射された後、そのままベルト部材61の回転に伴って更に下流側に搬送される。尚、吸着搬送装置60から定着後の記録材Pを剥離し易くするための剥離部材を設けることで、ベルト部材61からの記録材Pの剥離も容易になされる。
【0068】
また、本実施の形態では、反射部材42の記録材Pに向かう側の端部に連なるように設けられ且つ記録材Pの搬送面に対向し且つ反射部材42の外方に向かって延びる部分を有する光吸収部材44(44a,44b)が設けられている。
このような態様にあっても、実施の形態1と同様に、定着装置40からの漏れ光が抑えられる。
【0069】
また、本実施の形態では、吸着搬送装置60を用いることで、記録材Pが枚葉状であっても、照射領域IRでの記録材Pの姿勢が安定に保たれ、照射領域IR内でのレーザ光Liの照射強度も均一化される。また、このような吸着搬送装置60に用いられるベルト部材61としては、照射領域IRでのレーザ光Liにより記録材Pを透過した透過光を記録材Pの裏面側に反射できるような表面が好ましく、例えば白色系の顔料を添加するような方式がよい。
【0070】
ここでは、帯電部材64としてベルト部材61に接触する態様を示したが、例えばコロナ帯電器等を用いてベルト部材61から離間した状態でベルト部材61を帯電させるようにしてもよい。また、吸着搬送装置60として静電吸着する態様を示したが、ベルト部材61の裏面側から記録材Pをエアー吸引するようにしてもよい。更には、ベルト部材61を二つのロール部材62,63で張架する方式を示したが、例えば照射領域IRに対応して対向部材(例えばロール状部材)を設け、照射領域IR付近をアレイレーザ41側に向けて突出させる構成としてもよい。
【0071】
◎実施の形態5
以上の実施の形態では、記録材Pと光吸収部材44との開口部α(図6参照)から反射部材42の反射面42bを望むことも可能であったが、漏れ光をより低減するには、前記開口部αから照射領域IRを見たときに、記録材Pの搬送面に対向する光吸収部材44の対向面しか視認されないようにすることが望ましく、これにより、実質的な漏れ光が抑えられる。
【0072】
そのため、本実施の形態では、光吸収部材44の形状及び記録材Pの搬送経路を工夫することで、実質的な漏れ光が抑えられるものとなっている。
図16(a)は、反射部材42と記録材Pの搬送経路(図中一点鎖線で示す)との関係の一例を示す模式図であり、反射部材42で囲う部分では記録材Pが平坦に搬送されるものとなっている。また、(b)は(a)の部分拡大図となっている。
【0073】
同図において、光吸収部材44のうち記録材Pの搬送面に対向する部分にて、記録材Pに対向する対向面44cの記録材搬送方向で異なる二点間(本例では両端部44x,44y)を結ぶ直線lを引いたときに、光吸収部材44の対向面44cがこの直線lより記録材Pから遠ざかる部分を有し且つこの部分に記録材Pの搬送経路が設けられるように、光吸収部材44及び記録材Pの搬送経路が構成されている。
そのため、開口部αから照射領域IRを眺めようとしても、光吸収部材44の対向面44cが視認されるようになり、照射領域IR方向が視認されない。
【0074】
このため、開口部αから照射領域IRや反射部材42の反射面42bが視認されなくなり、例えば反射部材42の反射面42bからの漏れ光も開口部αから外部へ向かうことがなく、安全性が更に高まることになる。
ここでは、光吸収部材44が曲折する形状のものとして示したが、光吸収部材44が湾曲状に形成されても差し支えない。更に、光吸収部材44の形状としては、例えば蛇行するような形状でも差し支えなく、要は、光吸収部材44のうち記録材Pの搬送面に対向する部分にて、記録材Pの搬送面に対向する対向面44cの記録材搬送方向で異なる二点間を結ぶ直線と、前記対向面44cのうち直線lより記録材Pから遠ざかる面との間に記録材Pの搬送経路が設けられていればよい。
【0075】
また、図17は、本実施の形態の変形例を示すもので、(a)は模式図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
同図において、本変形例では、記録材Pが回転ロール49の周りを回って搬送される構成のものとなっている。このような場合にあっても、光吸収部材44の両端部44x,44yを結ぶ直線lと光吸収部材44との間に記録材Pが搬送される搬送経路が設けられることで、開口部αから照射領域IRや反射部材42の反射面42bが視認されない分、漏れ光も開口部αから外部へ向かうことがなくなり、安全性が更に高まることになる。
【符号の説明】
【0076】
1…レーザ光源,2…反射部材,3…光吸収部材,4…裏面側光吸収部材,5…裏面側反射部材,6…冷却手段,P…記録材,IR…照射領域,Li…レーザ光,Lr…反射光
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光を記録材の幅方向に亘って照射し、未定着トナー像を定着する構成が開示されている。
特許文献2には、転写から定着に至る間にトナーの樹脂物性を変化させるためにレーザ光等を照射する装置構成が開示され、レーザ光源と感光体との間に遮光板が設けられることが記載されている。
特許文献3には、LEDアレイから発光される光を用紙上の未定着トナー像に集光して定着するようにした定着方式が開示され、シリンドリカルレンズの近傍に反射板を設けて記録材より反射又は散乱した光を再度集光する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−191560号公報(実施例1、図3)
【特許文献2】特開平11−202653号公報(発明の実施の形態、図1)
【特許文献3】特開平6−301304号公報(第6実施例、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、記録材上の加熱定着可能な画像に対してレーザ光を用いて定着する際、光強度の強いレーザ光の外部への漏れを抑えながら安全性を高めた定着装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、記録材上の加熱定着可能な画像に対し当該記録材の搬送方向に交差する方向に沿って延びる照射領域に向かってレーザ光を照射するレーザ光源と、前記照射領域を囲うように設けられ且つ前記レーザ光源から照射されたレーザ光による当該照射領域からの反射光が前記照射領域に向かって再照射されるように前記反射光を反射する反射面を有する反射部材と、この反射部材の記録材に向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材の搬送面に対向し且つ前記反射部材の外方に向かって延びる部分を有してレーザ光が吸収可能な光吸収部材と、を備えることを特徴とする定着装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る定着装置において、前記光吸収部材は、前記照射領域における記録材表面に対し接する面と交差する面を有することを特徴とする定着装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る定着装置において、前記光吸収部材の前記記録材を挟んだ対向部位には、レーザ光が吸収可能な裏面側光吸収部材を備えることを特徴とする定着装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに係る定着装置において、前記反射部材とは記録材を挟んで対向する部位に設けられ、前記レーザ光源から照射されて記録材を透過した透過光が前記照射領域に対応する記録材の裏面側部位に向かって再照射されるように前記透過光を反射する裏面側反射部材を更に備えることを特徴とする定着装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに係る定着装置において、前記光吸収部材は、当該光吸収部材の記録材の搬送面に対向する部分のうち前記照射領域側とは異なる外方端部での当該光吸収部材と記録材との開口部から前記照射領域を見たときに、記録材の搬送面に対向する前記光吸収部材の対向面しか視認されないように配置されていることを特徴とする定着装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに係る定着装置において、前記光吸収部材を冷却する冷却手段を更に備えることを特徴とする定着装置である。
【0007】
請求項7に係る発明は、記録材上に加熱定着可能な画像を形成する画像形成部と、この画像形成部にて記録材上に形成された前記画像を定着する請求項1乃至6のいずれかに係る定着装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る画像形成装置において、搬送方向に沿って連続した記録材を用いることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、記録材上の加熱定着可能な画像に対してレーザ光を用いて定着する際、光吸収部材を有さない場合に比べて、光強度の強いレーザ光の外部への漏れを抑えながら安全性を高めることができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、光強度の強い反射光が直接外部に漏れるのを抑えることができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、レーザ光の吸収が更に効果的になされる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、レーザ光の利用効率を更に高めることができる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、レーザ光の外部への漏れをより一層抑えることができる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、光吸収部材での光吸収性能がより安定化する。
請求項7に係る発明によれば、記録材上の加熱定着可能な画像に対してレーザ光を用いて定着する際、光吸収部材を有さない場合に比べて、光強度の強いレーザ光の外部への漏れを抑えながら安全性を高めることができる画像形成装置を提供できる。
請求項8に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、安定した定着性が維持され易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を具現化する実施の形態モデルに係る定着装置の概要を示す説明図である。
【図2】(a),(b)は光吸収部材の好ましい形状を示す説明図である。
【図3】光吸収部材の更に好ましい形状を示す説明図である。
【図4】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成の概要を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の定着装置の概要を示す斜視図である。
【図6】実施の形態1の定着装置の断面方向から見た説明図である。
【図7】光吸収部材での作用を示す説明図であり、(a)は図4の要部断面、(b)は反射光の光強度分布を示す。
【図8】実施の形態1の第一変形例としての定着装置を示す説明図である。
【図9】実施の形態1の第二変形例としての定着装置を示す説明図である。
【図10】実施の形態1の第三変形例としての定着装置を示す説明図である。
【図11】実施の形態1の第四変形例としての定着装置を示す説明図である。
【図12】実施の形態2の定着装置の概要を示す説明図である。
【図13】実施の形態3の定着装置の概要を示す説明図である。
【図14】実施の形態4の定着装置が適用された画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図15】実施の形態4の定着装置の概要を示す説明図である。
【図16】(a)は実施の形態5の定着装置の要部を示す模式図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図17】(a)は実施の形態5の変形例としての定着装置の要部を示す模式図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
先ず、本発明が適用された定着装置の実施の形態モデルの概要について説明する。
図1は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る定着装置を示す説明図である。
同図において、定着装置は、記録材P上の加熱定着可能な画像に対し当該記録材Pの搬送方向に交差する方向に沿って延びる照射領域IRに向かってレーザ光Liを照射するレーザ光源1と、照射領域IRを囲うように設けられ且つレーザ光源1から照射されたレーザ光Liによる照射領域IRからの反射光Lrが照射領域IRに向かって再照射されるように反射光Lrを反射する反射面を有する反射部材2と、この反射部材2の記録材Pに向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材Pの搬送面に対向し且つ反射部材2の外方に向かって延びる部分を有してレーザ光Liが吸収可能な光吸収部材3と、を備えている。
【0011】
ここで、記録材P上の画像を形成する代表的材料としては、電子写真方式に用いられるトナーが挙げられるが、これに限られず、例えばインクジェット方式等に用いられる加熱溶融タイプのインキであっても差し支えない。
また、使用する記録材Pとしては、代表的には連続状の態様(例えばロール紙)や枚葉状の態様(例えばカット紙)が挙げられるが、媒体としては紙媒体のみならずフィルム媒体等であってもよい。
更に、レーザ光源1の代表的態様としては、レーザ光Liの発光部位が照射領域IRの延びる方向に沿って一列に複数設けられたアレイレーザタイプのものが挙げられる。
【0012】
反射部材2は、反射面側が例えば湾曲状の鏡面であってもよいし、反射面側が再帰性反射面や、散乱面であってもよく、反射光Lrが照射領域IRに向かって再照射されるように反射する反射面を有するものであればよい。このとき、照射領域IRに向かって再照射される光は、照射領域IRを含む部位に再照射されればよく、照射領域IRに限られるものではない。
【0013】
そして、光吸収部材3は、反射部材2の記録材Pに向かう側の端部と連なるように設けられることで、反射部材2と光吸収部材3との間でレーザ光Liが漏れないようになる。また、光吸収部材3が記録材Pの搬送面に対向する部分を有することで、レーザ光Liが光吸収部材3に効果的に吸収され、光吸収部材3と記録材Pとの開口部から外部に向かって漏れるレーザ光Liの光強度は大きく低減される。更に、光吸収部材3は、記録材Pの搬送面に対向する部分を有していればよく、例えば反射部材2の反射面に沿って延びるような部分を有していても差し支えない。更に、「記録材Pの搬送面に対向する」とは、搬送面に平行であってもよいし、平行でなくてもよく、記録材Pの搬送面に対向して延びる形状であればよい。このような光吸収部材3としては、耐熱性を有し且つレーザ光Liを吸収できるものであればよく、例えばアルミ合金に黒色陽極化成膜を処理したものが挙げられる。
【0014】
また、記録材Pの裏面側には、記録材Pをレーザ光源1側に向かって保持するように対向配置される対向部材を設け、この対向部材(平板状又は曲面状部材)でレーザ光Liのうち記録材Pを透過した透過光を反射させるようにしてもよいし、記録材Pとは離間した位置に他の湾曲状の反射部材(後述する裏面側反射部材5)を設けるようにしてもよく、あるいは、何も設けなくても差し支えない。
【0015】
そして、照射領域IRに照射されたレーザ光Liの照射領域IRからの反射光(散乱光含む)の外部への漏れを防ぐ観点から、図2(a),(b)に示すように、光吸収部材3は、照射領域IRにおける記録材表面に対し接する面(接線方向に延びる面を意味するもので、以下接面と略す)CSに対して交差する面を有することが好ましい。ここで、(a)は記録材Pが平坦な部位に照射領域IRを有する場合であり、(b)は記録材Pが湾曲した部位に照射領域IRを有する場合を示しており、(a)では接面CSが一つのため、光吸収部材3は接面CSに交差する面を有するものであればよい。一方、(b)のように湾曲した部位の照射領域IRでは、複数の接面CSが想定され、これらの接面CSに交差する面を有するようにすればよい。
これにより、この接面CSに沿った方向に反射光Lrが反射されても光吸収部材3によって吸収されるようになり、レーザ光源1から照射領域IRに向かって照射されたレーザ光Liによる照射領域IRからの反射光Lrが光吸収部材3と記録材Pとの間から外部に漏れ出さないようになる。尚、光吸収部材3の形状に合わせて記録材Pの搬送経路が設定されていることは言うまでもない。
【0016】
また、図1に示すように、光吸収部材3が設けられる部位での光吸収性能をより効果的にする観点から、光吸収部材3の記録材Pを挟んだ対向部位には、レーザ光Liが吸収可能な裏面側光吸収部材4を備えることが好ましい。このように光吸収部材3と裏面側光吸収部材4とで記録材Pを挟むことで、記録材Pを透過した透過光も裏面側光吸収部材4にて有効に吸収されるようになる。
【0017】
更に、照射領域IRに照射されたレーザ光Liの記録材Pを透過した透過光を有効利用する観点から、記録材Pの裏面側に接触するような対向部材を有さない態様において、反射部材2とは記録材Pを挟んで対向する部位に設けられ、レーザ光源1から照射されて記録材Pを透過した透過光が照射領域IRに対応する記録材Pの裏面側部位に向かって再照射されるように前記透過光を反射する裏面側反射部材5を更に備えることが好ましい。
【0018】
そして、レーザ光Liの外部への漏れをより一層抑える観点から、図3に示すように、光吸収部材3は、当該光吸収部材3の記録材Pの搬送面に対向する部分のうち照射領域IR側とは異なる外方端部での当該光吸収部材3と記録材Pとの開口部αから照射領域IRを見たときに、記録材Pの搬送面に対向する光吸収部材3の対向面3aしか視認されないように配置されていることが好ましい。これによれば、光吸収部材3の照射領域IRとは異なる外方端部と記録材Pとの開口部αから、照射領域IRや反射部材2の反射面が視認されなくなり、レーザ光Liの外部への漏れが抑えられる。
【0019】
このような場合、光吸収部材3の形状は特に限定されず、次のように構成されていればよい。つまり、光吸収部材3のうち記録材Pの搬送面に対向する部分にて、記録材Pに対向する対向面3aの記録材搬送方向で異なる二点間を結ぶ直線(図中点線部分)を引いたときに、光吸収部材3の対向面3aがこの直線より記録材Pから遠ざかる部分を有し且つこの部分に記録材Pの搬送経路が設けられるように、光吸収部材3及び記録材Pの搬送経路が構成されていればよい。また、このような二点間は特に限定されず、光吸収部材3の両端部であってもよいし、それ以外の二点であっても差し支えない。
【0020】
また、光吸収部材3での光吸収性能を安定化させる観点から、図1に示すように、光吸収部材3を冷却する冷却手段6を更に備えることが好ましい。このような冷却手段6の代表的態様としては、放熱部材が挙げられる。また、冷却手段6は、光吸収部材3に設けられることが好ましく、また、例えば裏面側光吸収部材4を備える態様にあっては、裏面側光吸収部材4にも冷却手段6を設けることが好ましいが、裏面側光吸収部材4には記録材Pを透過した透過光のみ吸収されるため、光吸収部材3よりも温度上昇は低い。そのため、裏面側光吸収部材4に冷却手段6を設けなくても差し支えない。
【0021】
このような定着装置を画像形成装置に適用するには、記録材P上に加熱定着可能な画像を形成する画像形成部と、この画像形成部にて記録材P上に形成された前記画像を定着する定着装置と、を備え、この定着装置として上述の定着装置を用いるようにすればよい。
また、このような画像形成装置では、使用する記録材Pとしては、搬送方向に沿って連続した記録材Pを用いる方が好適である。
【0022】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図4は、前述の実施の形態モデルの定着装置が適用された実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【0023】
本実施の形態の画像形成装置は、記録材として連続状の記録材Pを用いた構成で、記録材P上に画像を形成する画像形成本体装置10Aと、この画像形成本体装置10Aの両側に記録材Pを供給する供給装置10Bと画像が形成された記録材Pを収容する収容装置10Cとで構成されている。尚、記録材Pとしては、ロール形状のものでもよいし、例えば折り畳まれた形状のものであってもよいが、本実施の形態ではロール形状のもので説明する。
【0024】
本実施の形態の画像形成本体装置10Aは、例えば電子写真方式を用いるものであり、記録材P上に例えば四色のトナーを用いて複数色のトナー像を形成する各色の画像形成部20(具体的にはイエロー画像形成部20Y、マゼンタ画像形成部20M、シアン画像形成部20C、ブラック画像形成部20K)と、これら各色の画像形成部20にて記録材P上に多重化された状態で形成されたトナー像を定着する定着装置40と、複数の適宜設けられたロール部材16〜19等で構成されている。
ここで、ロール部材16は画像形成部20へ記録材Pを導く際に位置調整を行う位置調整ロール、ロール部材17は記録材Pを定着装置40に向かって導く張架ロール、ロール部材18,19は定着後の記録材Pを収容装置10Cに向かって搬送するに際し、適宜張力を付与する張力付与ロールである。
【0025】
また、各色の画像形成部20は使用するトナーを除き略同様の構成となっているため、代表的にブラック画像形成部20Kを例に説明を行う。ブラック画像形成部20Kは、表面に図示しない感光層を有して矢印E方向に回転する円筒状の感光体ドラム21を有している。感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21の感光層を予め定めた電位に帯電する帯電装置22、帯電装置22にて帯電された感光層を例えばレーザ光を用いて選択照射し、感光体ドラム21に静電潜像を形成する露光装置23、露光装置23によって形成された静電潜像をトナーにて現像することで可視像化する現像装置24、感光体ドラム21上のトナー像を記録材P上に転写する転写装置25、転写後の感光体ドラム21上の残留トナーを清掃する清掃装置26等が配置されている。
尚、画像形成部20のトナー色の配列はこれに限らず、他の配列を用いるようにしてもよく、また画像形成部20が一つだけで構成されてもよいことは言うまでもない。
【0026】
また、供給装置10Bは、芯材にロール状に巻かれた記録材Pを保持する供給ロール12と、画像形成本体装置10A側へ記録材Pを供給するために搬送しながら張力を付与する張力付与ロール14,15等で構成されている。一方、収容装置10Cは、記録材Pを芯材に巻き取り収容する巻き取りロール13等で構成されている。
【0027】
このような画像形成装置において、供給装置10Bから供給された記録材Pには、画像形成本体装置10Aの各色の画像形成部20にて各色トナー像が転写され、記録材P上で多重化される。この未定着の多重化されたトナー像が形成された記録材Pは、定着装置40にて定着された後、収容装置10Cにて巻き取り収容される。
【0028】
次に、このような画像形成装置における定着装置40について図5を基に説明する。
同図において、本実施の形態の定着装置40は、記録材P上の直線状に延びる照射領域IRに向かってレーザ光Liを照射するレーザ光源としてのアレイレーザ41と、照射領域IRを囲うように設けられ且つアレイレーザ41から照射されたレーザ光Liによる照射領域IRからの反射光が照射領域IRに向かって再照射されるように反射光を反射する反射面を有する半円筒型の反射部材42と、この反射部材42とは記録材Pを挟んで設けられ、アレイレーザ41から照射されて記録材Pを透過した透過光が記録材Pの裏面側部位に向かって再照射されるように透過光を反射する半円筒型の裏面側反射部材43と、反射部材42の記録材Pに向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材Pの搬送面に対向し且つ反射部材42の外方に向かって延びる部分を有してレーザ光Liが吸収可能な光吸収部材44(44a,44b)と、この光吸収部材44の記録材Pを挟んだ対向部位に設けられ且つレーザ光Liが吸収可能な裏面側光吸収部材45(45a,45b)と、を備えている。
【0029】
アレイレーザ41は、本例では5個の高出力半導体レーザを用いたものを示すが、この数量等は限定されず、幾つあっても差し支えないが、記録材Pの幅方向における画像幅をカバーできる長さが必要である。また、アレイレーザ41は、例えば記録材P上の照射領域IRにレーザ光Liを集束させるような光学系を含んでいる。そして、照射領域IRでは、隣り合う高出力半導体レーザからのレーザ光Liが互いの端部でオーバーラップすることで、照射領域IRの延びる方向に沿ってのレーザ光Liの照射強度が略等しくなるように設定されている。
【0030】
また、反射部材42は、半円筒の略中央部分に照射領域IRに向かってアレイレーザ41からのレーザ光Liが照射できるような長穴の開口42aが設けられている。尚、アレイレーザ41から反射部材42までのレーザ光Liに対しては、レーザ光Liが外に漏れないように図示外の遮蔽部材等で遮蔽されていることは言うまでもない。
【0031】
図6は、本実施の形態の定着装置40を横方向からみた断面を示す。
同図において、アレイレーザ41から照射されたレーザ光Liは、反射部材42の開口42aから記録材P上の照射領域IRに向かって進む。照射領域IRに照射されたレーザ光Liの照射領域IRからの反射光Lrは、反射部材42の反射面42bで反射され、照射領域IRに向かって再照射される。
一方、レーザ光Liのうち記録材Pを透過した透過光Ltは、裏面側反射部材43の反射面43bによって、記録材Pの裏面側で照射領域IRに対応する部位に再照射される。
【0032】
このような反射光Lrは、記録材P上の照射領域IRからほぼ全方位に亘って反射されるが、その殆どは反射部材42の反射面42bにて反射され、このような反射を繰り返すことでその強度は減衰する。
しかしながら、反射部材42と記録材Pとの間には、記録材Pを搬送させるための間隙が保たれる必要から、開口部αが形成され、照射領域IRから記録材Pの表面に近い方向で反射した反射光Lrは反射部材42にて反射されずにそのまま開口部α側へ進む。
【0033】
図7(a)は、図6の部分拡大図であり、光吸収部材44bと記録材Pとの関係を示すものである。
反射部材42と記録材Pとの間に向かう反射光Lr(Lr1〜Lr3)は、図のようになるが、この場合、Lr2及びLr3は光吸収部材44bに向かうため、ここでほぼ吸収される。そのため、光吸収部材44bと記録材Pとの開口部αを通って外部に漏れる光としては、ほぼ反射光Lr1となる。更に、例えば反射光Lr’が記録材Pに当たって反射されることを想定しても、これらは光吸収部材44bで吸収される。
【0034】
通常、記録材Pに照射された光の反射光の光強度分布は、(b)のように表される。つまり、記録材Pの表面に多少の凹凸がある分、やや記録材Pの表面に沿う方向に拡がる分布となるが、記録材Pに平行な成分の光強度は平行に向かうに従って弱くなる。
そのため、(a)に示すLr1の光強度も弱く、光吸収部材44bと記録材Pとの開口部αを通って外部に漏れる光としてはその光強度が低く抑えられる。
仮に、光吸収部材44bが設けられていない場合には、例えばLr1〜Lr3の光が漏れるようになり、開口部αから漏れる光の光強度はやや強くなる。
【0035】
ここでは、一方の光吸収部材44b側について説明したが、図6に示すように、もう一方の光吸収部材44a側も同様であり、このことは、裏面側光吸収部材45(45a,45b)においても同様である。
【0036】
一般に、レーザ光を用いる製品は、JIS C 6802「レーザ製品の安全基準」によりクラス分けや基準レベルが規定されている。
そのため、本実施の形態においては、定着装置40の開口部位(ここでは、記録材Pと光吸収部材44との開口部αに相当)から外部に放出されるレーザ光がJIS C 6802で定義されるクラス1のAEL(Accessible Emission Limit:被ばく放出限界)を満たす必要がある。具体的には、開口部αから100mmの位置に設けた直径7mmの検出装置で測定した漏れ光が、いずれの場所においてもAEL内にあることが必要である。つまり、使用するレーザ光の波長が近赤外では、連続発振時に例えば2.3×10−4W以下になるようにする必要がある。
【0037】
本実施の形態によれば、反射部材42及び裏面側反射部材43を用いると共に、光吸収部材44及び裏面側光吸収部材45を用いているため、定着に際してレーザ光Liの利用効率が高められると共に、漏れ光(開口部αから漏れる光)の安全性も高まる。尚、漏れ光の光強度が上述の規格を満足していることは言うまでもない。
【0038】
また、本実施の形態では、裏面側反射部材43及び裏面側光吸収部材45を用いる態様を示したが、これらを用いないようにしても差し支えない。この場合、裏面側反射部材43を設ける場合に比べ、レーザ出力を少し大きくする方がよいが、漏れ光の光強度が上述の規格を満足していることは言うまでもない。
【0039】
図8は、本実施の形態の定着装置40の第一変形例を示すもので、光吸収部材44(44a,44b)及び裏面側光吸収部材45(45a,45b)に冷却手段としての放熱フィン46を取り付けたものとなっている。
光吸収部材44及び裏面側光吸収部材45は、レーザ光Liを吸収するため、部材温度が上昇するがこのような放熱フィン46を設けることで部材温度の上昇による熱膨張による変形が抑えられ、光吸収性能が安定に維持される。
ここでは、冷却手段として放熱フィン46を設ける態様を示したが、放熱フィン46に送風を付加するようにしてもよいし、例えば放熱フィン46を設けずに送風によって光吸収部材44を冷却するようにしても差し支えない。尚、送風を行う場合、照射領域IRへの送風は抑える方が定着効率の点で望ましい。
【0040】
また、図9は、本実施の形態の定着装置40の第二変形例を示すもので、図6と略同様に構成されるが、ここでは、反射部材42及び裏面側反射部材43の夫々に、記録材P側に対向して設けられた防護部材47を取り付けた構成となっている。
防護部材47は、レーザ光Liが透過可能な素材で構成され、レーザ光Li、反射光Lr、透過光Lt(図6参照)に対する減衰は小さく、これらの光を有効に利用できると共に、定着時の耐熱性も兼ね備えたものである。
【0041】
通常、記録材P上のトナーを加熱溶融させて定着する方式にあっては、トナーが加熱溶融される際に、トナーを構成する添加剤等の蒸発を生じ、これらの蒸発物が例えば反射部材42の反射面42bに付着すると反射面42bでの反射効率の低下を招く。また、記録材P自体も加熱されることで水分の蒸発等が生じ、これらの水分も相俟って反射面42bでの反射効率は一層低下する。また、このことは、裏面側反射部材43についても同様である。
【0042】
このような場合、防護部材47を設けることで、反射部材42の反射面42bや裏面側反射部材43の反射面43bでの反射効率が維持され、定着効率が安定した状態で維持される。尚、蒸発物は、防護部材47にも付着するが、適宜清掃するようにしてもよいし、防護部材47への付着によるレーザ光Liの減衰は非常に小さく、反射面42b,43bでの反射効率の低減に比べてその影響は小さい。
ここでは、防護部材47を反射部材42や裏面側反射部材43に直接設ける態様を示したが、反射部材42や裏面側反射部材43とは別に設けるようにしても差し支えない。
【0043】
更に、図10は、本実施の形態の第三変形例を示すもので、反射部材42の開口42aの位置がこれまでとは異なるものとなっている。
この例では、反射部材42の開口42aが、反射面42bに沿って記録材Pの搬送方向における下流側に偏倚した位置に設けられている。
このような配置を採用することで、アレイレーザ41からのレーザ光Liによる照射領域IRからの反射光Lrは、反射部材42の開口42aより記録材Pの搬送方向における上流側に向かって多く反射されるようになるが、この部位には広い反射面42bが存在するため、反射光Lrを照射領域IRに向かって再照射させやすくなる。そのため、定着効率の向上が図られる。また、このような場合、反射部材42の開口42aを記録材Pの搬送方向における上流側に偏倚させるようにしても同様である。
【0044】
また、本実施の形態では、アレイレーザ41を、反射部材42より記録材Pから遠ざかる位置に設ける態様を示したが、例えばアレイレーザ41を記録材P側に近付け、反射部材42の反射面42bと同じような位置からレーザ光Liを照射させるようにしてもよいし、更には、反射部材42の内側(反射面42より更に記録材P側)に配置するようにしてもよい。
そして、本実施の形態では、記録材Pとして連続状の態様を用いる構成を示したが、枚葉状のものを用いるようにしても差し支えなく、この場合、例えば定着装置40に向かって記録材Pを案内する案内機構や、記録材Pを搬送させるための搬送機構を別途設けるようにすればよい。
【0045】
更に、上述の実施の形態では、照射領域IRを一つとする態様を示したが、例えばアレイレーザ41を記録材Pの搬送方向に複数設けるようにしても差し支えない。
図11は、本実施の形態の第四変形例を示すもので、一つの反射部材42の記録材Pの搬送方向に沿って二つの円筒曲面を設け、夫々の開口42aを通して二つのアレイレーザ41(41A,41B)からのレーザ光Liを照射することで、二箇所の照射領域IR(IRA,IRB)を設けたものとなっている。また、裏面側反射部材43も同様の構成となっている。そして、光吸収部材44(44a,44b)や裏面側光吸収部材45(45a,45b)は反射部材42及び裏面側反射部材43の記録材Pの搬送方向に沿った上流側と下流側の部分に設けられている。
【0046】
このような構成では、記録材P上の画像に対し先ず上流側のアレイレーザ41Aによる照射領域IRAにてレーザ光Liの照射がなされ、ある時間経過後に、更に下流側のアレイレーザ41Bによる照射領域IRBにてレーザ光Liの照射がなされる。
このように照射されると、記録材P上の画像密度の高い部分(例えばベタ画像部分)では上流側の照射領域IRAでトナーと記録材Pとの界面温度が少し上昇する。その後、照射がない部分では前記界面温度が徐々に下降するものの、画像密度が高い分表面積が小さく、放熱量が少なく、温度低下は少しの量で抑えられる。
次に、下流側の照射領域IRBでもう一度加熱されることで、界面温度も十分上昇し、十分な密着性が確保されるようになる。
【0047】
一方、画像密度の低い部分(例えばハイライト画像部分)では一旦界面温度が十分上昇するが、この温度は急激に低下する。そして、下流側の照射領域IRBにてもう一度加熱がなされ、界面温度の上昇がもう一度なされる。つまり、画像密度の高い部分では二度の照射によって界面温度が確保されるのに対し、画像密度の低い部分では一度の照射によって界面温度が確保され、これを繰り返すことになる。
したがって、記録材P上の画像密度によらず、いずれも十分な密着性の確保がなされるようになる。また、光吸収部材44及び裏面側光吸収部材45によって、外部への漏れ光は抑えられる。
【0048】
また、このような二箇所の照射領域IRを備える場合、次のようにしてもよい。
上流側の照射領域IRAでのレーザ出力を下流側の照射領域IRBでのレーザ出力より小さくし、その分、記録材Pの搬送方向に沿った照射域長さを長くすることで、下流側の照射領域IRBでの照射時間が長くなる。このとき画像密度の高い部分に合わせて、上流側の照射領域IRAにて画像が十分加熱溶融できる照射強度や照射域長さになっていることは言うまでもない。
【0049】
このように照射すると、画像密度の高い部分では上流側の照射領域IRAにて十分な密着性が確保され、下流側の照射領域IRBで短時間の照射になっても問題はない。一方、画像密度の低い部分では、上流側の照射領域IRAによる照射ではトナー粒子と外気との接触面積が広い分、放熱量が増大してトナーを十分加熱溶融させることがなされないが、下流側の照射領域IRBにて照射強度が高められるために、十分に溶融が図られて密着性が確保されるようになる。つまり、記録材P上の画像密度によらず、トナーの十分な加熱溶融が図られる。
尚、照射領域IRを複数設ける場合、例えば図10のように、反射部材42の開口42aを記録材Pの搬送方向における下流側又は上流側に偏倚させるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0050】
◎実施の形態2
図12は、実施の形態2の定着装置40の概要を示す説明図である。
本実施の形態の定着装置40は、実施の形態1の定着装置40(例えば図6参照)と異なり、裏面側反射部材を有さず、また、光吸収部材44及び裏面側光吸収部材45の配置が異なるものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0051】
同図において、反射部材42と記録材Pを挟んで対向する位置には、記録材Pをアレイレーザ41側に向かって保持するように対向配置される湾曲状の対向部材48を有している。この対向部材48は、表面が例えばフッ素樹脂等によって低摩擦処理された白色で耐熱製の湾曲形状のもので構成されている。
【0052】
このような構成の定着装置40では、搬送される記録材Pは常に対向部材48上を滑りながら搬送されるため、照射領域IRでの記録材Pのばたつきも抑えられ、照射領域IR内での記録材Pに向かうレーザ出力は均一化されやすい。
また、対向部材48を用いることで、照射領域IRに照射されたレーザ光Liが記録材Pを透過した透過光は対向部材48の表面によって反射されるため、裏面側反射部材がない態様であっても、照射領域IRの近くに透過光からの反射光が再照射され、定着効率の向上がなされる。
【0053】
更に、本実施の形態では、裏面側光吸収部材45が対向部材48の湾曲形状に沿って設けられる一方、光吸収部材44も反射部材42側の端部より裏面側光吸収部材45側へ向かうように設けられている。つまり、光吸収部材44は、照射領域IRにおける記録材Pの表面に対し接する接面(接線方向に延びる面)と交差する面を有していることから、照射領域IRからの反射光Lrのうち照射領域IRでの記録材表面に略平行な反射光Lr4(上述の接面に相当する方向)は光吸収部材44にて吸収されるようになり、外部への漏れ光がより一層抑えられる。このとき、記録材Pの搬送方向に沿った照射領域IRの長さが狭いことから、照射領域IRから反射される反射光Lrのうち、記録材Pに近い反射光Lrとしては、ほぼ反射光Lr4と一致する。
【0054】
尚、本実施の形態における対向部材48としては、湾曲形状の曲率は特に限定されず、搬送される記録材Pを変形させるものでなければよく、例えば照射領域IRでは平坦であっても差し支えない。また、対向部材48としては、耐熱性を有するものであれば金属製の部材であっても差し支えないが、照射領域IRでの透過光を吸収しにくいよう、反射率の高い方が好適である。
【0055】
◎実施の形態3
図13は、実施の形態3の定着装置40の概要を示す説明図である。本実施の形態の定着装置40は、図12の定着装置40と同様に、裏面側反射部材を有さず、更に、裏面側吸収部材を備えていない構成のものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0056】
同図において、本実施の形態の定着装置40は、照射領域IRと対向する記録材Pの裏面側に回転部材49が設けられると共に、この回転部材49の記録材搬送方向における上流側及び下流側の記録材Pの裏面側には、記録材Pを案内する案内部材491,492が設けられている。
【0057】
また、本実施の形態では、反射部材42が照射領域IRでの記録材Pの接面と交差する位置まで延びた状態で照射領域IRを囲うように設けられ、その端部からは記録材Pの表面側に向かって延びる湾曲部分と記録材Pの搬送面に対向し且つ反射部材42の外方に向かう直線部分を有した光吸収部材44’(44a’,44b’)が設けられている。
【0058】
本実施の形態の定着装置40は、記録材Pを略直線方向に搬送する態様の定着装置40(例えば図6参照)に比べ、照射領域IRからの反射光Lrが光吸収部材44’側に向かうことが少ないが、反射部材42の反射面42bで反射される光が光吸収部材44’側に向かうようになる。このような場合も、光吸収部材44’で吸収されることから、定着装置40からの漏れ光が抑えられる。
【0059】
本実施の形態では、光吸収部材44’として、反射部材42に連なる湾曲部分を有する態様を示したが、この湾曲部分を反射部材42とすることも可能で、この場合、反射面42bがより大きくなり、レーザ光Liの利用効率が更に向上する。
【0060】
◎実施の形態4
図14は、実施の形態4の定着装置40が適用された画像形成装置の概要を示す。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1の画像形成装置(図4参照)と異なり、記録材として枚葉状の記録材を用いた構成のものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここでは詳細な説明は省略する。
【0061】
同図において、画像形成装置は、例えば電子写真方式を用いたものであり、記録材(枚葉状)P上に例えば四色のトナーを用いて複数色のトナー像を形成する各色の画像形成部20(具体的にはブラック画像形成部20K、シアン画像形成部20C、マゼンタ画像形成部20M、イエロー画像形成部20Y)と、これら各色の画像形成部20にて形成された各色トナー像を多重化された状態で搬送するベルト状の中間転写体30と、中間転写体30上の多重化トナー像を例えば記録材Pに一括転写する一括転写装置(二次転写装置)56と、この二次転写装置56にて記録材P上に転写された未定着トナー像を定着する定着装置40等で構成されている。
【0062】
ここで、各色の画像形成部20は使用するトナーを除き略同様の構成であり、また、実施の形態1の画像形成部20(図4参照)と同様に構成されるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0063】
本実施の形態の中間転写体30は、複数の張架ロール31〜36に掛け渡され、例えば張架ロール31を駆動ロール、張架ロール34をテンションロールとして回転する。
また、張架ロール35をバックアップロールとして二次転写装置56が配置され、張架ロール31と中間転写体30を挟んで対向する位置に中間転写体30上の残留トナーを清掃するベルト清掃装置37が設けられている。
【0064】
更に、画像形成装置内の中間転写体30の下方には記録材Pが収容される記録材収容部52が設けられ、記録材収容部52から搬送される記録材Pの搬送経路には、記録材収容部52から二次転写装置56までに複数の搬送ロール53〜55が設けられると共に、二次転写を終えた記録材Pを定着装置40に向かって搬送する搬送ベルト57、定着装置40によって定着された記録材Pを装置外に排出する排出ロール58が設けられている。
【0065】
そのため、本実施の形態では、各色の画像形成部20にて図中F方向に回転する感光体ドラム21上に形成された各色トナー像が転写装置(一次転写装置)25にて中間転写体30上に転写されることで、中間転写体30上に多重化トナー像が形成される。一方、記録材Pは記録材収容部52から搬送ロール53〜55によって二次転写位置に搬送され、中間転写体30上で多重化されたトナー像が二次転写装置56にて記録材P上に一括転写される。二次転写装置56にて多重化トナー像が一括転写された記録材Pは、そのまま搬送ベルト57にて搬送され、定着装置40にて定着される。定着を終えた記録材Pは排出ロール58にて画像形成装置外に排出されるようになる。
【0066】
図15は、本実施の形態における定着装置40の概要を示すもので、反射部材42と記録材Pを挟んで対向する位置に、記録材Pを保持して搬送する例えば静電吸着型の吸着搬送装置60が設けられている。
吸着搬送装置60は、二つのロール部材62,63と、これら二つのロール部材62,63に掛け渡されて循環回転するベルト部材61と、このベルト部材61に対して帯電を付与する帯電部材64とで構成されている。
【0067】
本実施の形態の定着装置40では、未定着トナー像が転写された記録材Pが定着装置40に達すると、吸着搬送装置60のベルト部材61が帯電部材64によって帯電されているため、記録材Pをベルト部材61側に静電吸着し、ベルト部材61の回転に伴ってそのまま搬送する。ベルト部材61の回転により搬送された記録材Pは、照射領域IRにてアレイレーザ41からのレーザ光Liが照射された後、そのままベルト部材61の回転に伴って更に下流側に搬送される。尚、吸着搬送装置60から定着後の記録材Pを剥離し易くするための剥離部材を設けることで、ベルト部材61からの記録材Pの剥離も容易になされる。
【0068】
また、本実施の形態では、反射部材42の記録材Pに向かう側の端部に連なるように設けられ且つ記録材Pの搬送面に対向し且つ反射部材42の外方に向かって延びる部分を有する光吸収部材44(44a,44b)が設けられている。
このような態様にあっても、実施の形態1と同様に、定着装置40からの漏れ光が抑えられる。
【0069】
また、本実施の形態では、吸着搬送装置60を用いることで、記録材Pが枚葉状であっても、照射領域IRでの記録材Pの姿勢が安定に保たれ、照射領域IR内でのレーザ光Liの照射強度も均一化される。また、このような吸着搬送装置60に用いられるベルト部材61としては、照射領域IRでのレーザ光Liにより記録材Pを透過した透過光を記録材Pの裏面側に反射できるような表面が好ましく、例えば白色系の顔料を添加するような方式がよい。
【0070】
ここでは、帯電部材64としてベルト部材61に接触する態様を示したが、例えばコロナ帯電器等を用いてベルト部材61から離間した状態でベルト部材61を帯電させるようにしてもよい。また、吸着搬送装置60として静電吸着する態様を示したが、ベルト部材61の裏面側から記録材Pをエアー吸引するようにしてもよい。更には、ベルト部材61を二つのロール部材62,63で張架する方式を示したが、例えば照射領域IRに対応して対向部材(例えばロール状部材)を設け、照射領域IR付近をアレイレーザ41側に向けて突出させる構成としてもよい。
【0071】
◎実施の形態5
以上の実施の形態では、記録材Pと光吸収部材44との開口部α(図6参照)から反射部材42の反射面42bを望むことも可能であったが、漏れ光をより低減するには、前記開口部αから照射領域IRを見たときに、記録材Pの搬送面に対向する光吸収部材44の対向面しか視認されないようにすることが望ましく、これにより、実質的な漏れ光が抑えられる。
【0072】
そのため、本実施の形態では、光吸収部材44の形状及び記録材Pの搬送経路を工夫することで、実質的な漏れ光が抑えられるものとなっている。
図16(a)は、反射部材42と記録材Pの搬送経路(図中一点鎖線で示す)との関係の一例を示す模式図であり、反射部材42で囲う部分では記録材Pが平坦に搬送されるものとなっている。また、(b)は(a)の部分拡大図となっている。
【0073】
同図において、光吸収部材44のうち記録材Pの搬送面に対向する部分にて、記録材Pに対向する対向面44cの記録材搬送方向で異なる二点間(本例では両端部44x,44y)を結ぶ直線lを引いたときに、光吸収部材44の対向面44cがこの直線lより記録材Pから遠ざかる部分を有し且つこの部分に記録材Pの搬送経路が設けられるように、光吸収部材44及び記録材Pの搬送経路が構成されている。
そのため、開口部αから照射領域IRを眺めようとしても、光吸収部材44の対向面44cが視認されるようになり、照射領域IR方向が視認されない。
【0074】
このため、開口部αから照射領域IRや反射部材42の反射面42bが視認されなくなり、例えば反射部材42の反射面42bからの漏れ光も開口部αから外部へ向かうことがなく、安全性が更に高まることになる。
ここでは、光吸収部材44が曲折する形状のものとして示したが、光吸収部材44が湾曲状に形成されても差し支えない。更に、光吸収部材44の形状としては、例えば蛇行するような形状でも差し支えなく、要は、光吸収部材44のうち記録材Pの搬送面に対向する部分にて、記録材Pの搬送面に対向する対向面44cの記録材搬送方向で異なる二点間を結ぶ直線と、前記対向面44cのうち直線lより記録材Pから遠ざかる面との間に記録材Pの搬送経路が設けられていればよい。
【0075】
また、図17は、本実施の形態の変形例を示すもので、(a)は模式図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
同図において、本変形例では、記録材Pが回転ロール49の周りを回って搬送される構成のものとなっている。このような場合にあっても、光吸収部材44の両端部44x,44yを結ぶ直線lと光吸収部材44との間に記録材Pが搬送される搬送経路が設けられることで、開口部αから照射領域IRや反射部材42の反射面42bが視認されない分、漏れ光も開口部αから外部へ向かうことがなくなり、安全性が更に高まることになる。
【符号の説明】
【0076】
1…レーザ光源,2…反射部材,3…光吸収部材,4…裏面側光吸収部材,5…裏面側反射部材,6…冷却手段,P…記録材,IR…照射領域,Li…レーザ光,Lr…反射光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材上の加熱定着可能な画像に対し当該記録材の搬送方向に交差する方向に沿って延びる照射領域に向かってレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記照射領域を囲うように設けられ且つ前記レーザ光源から照射されたレーザ光による当該照射領域からの反射光が前記照射領域に向かって再照射されるように前記反射光を反射する反射面を有する反射部材と、
この反射部材の記録材に向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材の搬送面に対向し且つ前記反射部材の外方に向かって延びる部分を有してレーザ光が吸収可能な光吸収部材と、
を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記光吸収部材は、前記照射領域における記録材表面に対し接する面と交差する面を有することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定着装置において、
前記光吸収部材の前記記録材を挟んだ対向部位には、レーザ光が吸収可能な裏面側光吸収部材を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の定着装置において、
前記反射部材とは記録材を挟んで対向する部位に設けられ、前記レーザ光源から照射されて記録材を透過した透過光が前記照射領域に対応する記録材の裏面側部位に向かって再照射されるように前記透過光を反射する裏面側反射部材を更に備えることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の定着装置おいて、
前記光吸収部材は、当該光吸収部材の記録材の搬送面に対向する部分のうち前記照射領域側とは異なる外方端部での当該光吸収部材と記録材との開口部から前記照射領域を見たときに、記録材の搬送面に対向する前記光吸収部材の対向面しか視認されないように配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の定着装置において、
前記光吸収部材を冷却する冷却手段を更に備えることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
記録材上に加熱定着可能な画像を形成する画像形成部と、
この画像形成部にて記録材上に形成された前記画像を定着する請求項1乃至6のいずれかに記載の定着装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成装置において、
搬送方向に沿って連続した記録材を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
記録材上の加熱定着可能な画像に対し当該記録材の搬送方向に交差する方向に沿って延びる照射領域に向かってレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記照射領域を囲うように設けられ且つ前記レーザ光源から照射されたレーザ光による当該照射領域からの反射光が前記照射領域に向かって再照射されるように前記反射光を反射する反射面を有する反射部材と、
この反射部材の記録材に向かう側の端部に連なるように設けられ、記録材の搬送面に対向し且つ前記反射部材の外方に向かって延びる部分を有してレーザ光が吸収可能な光吸収部材と、
を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記光吸収部材は、前記照射領域における記録材表面に対し接する面と交差する面を有することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定着装置において、
前記光吸収部材の前記記録材を挟んだ対向部位には、レーザ光が吸収可能な裏面側光吸収部材を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の定着装置において、
前記反射部材とは記録材を挟んで対向する部位に設けられ、前記レーザ光源から照射されて記録材を透過した透過光が前記照射領域に対応する記録材の裏面側部位に向かって再照射されるように前記透過光を反射する裏面側反射部材を更に備えることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の定着装置おいて、
前記光吸収部材は、当該光吸収部材の記録材の搬送面に対向する部分のうち前記照射領域側とは異なる外方端部での当該光吸収部材と記録材との開口部から前記照射領域を見たときに、記録材の搬送面に対向する前記光吸収部材の対向面しか視認されないように配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の定着装置において、
前記光吸収部材を冷却する冷却手段を更に備えることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
記録材上に加熱定着可能な画像を形成する画像形成部と、
この画像形成部にて記録材上に形成された前記画像を定着する請求項1乃至6のいずれかに記載の定着装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成装置において、
搬送方向に沿って連続した記録材を用いることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−88372(P2012−88372A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232531(P2010−232531)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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