説明

定着装置及びこれを用いる画像形成装置

【課題】装置を大型化することなく省スペースで、トナー画像の品質低下を生じることなく記録媒体上にレンチキュラーレンズ構造を形成できる定着装置及びこれを用いる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体ドラム3と、帯電器5と、露光ユニット1と、現像装置2と、中間転写ベルトユニット8と、トナー像を記録媒体に定着させる定着ユニット12とを備える画像形成装置100において、透明の記録媒体を用いて、加圧ローラ12bに透明樹脂層を形成する樹脂層形成装置120と、制御部140とを備え、加圧ローラ12bの表面にレンチキュラーレンズを形成する溝12b1が複数列並んで形成され、記録媒体を介して定着ローラ12aと加圧ローラ12bとを圧接することにより、記録媒体82の表面にレンチキュラーレンズを形成し、反対面に未定着トナー画像を定着させることを特徴とするものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びこれを用いる画像形成装置に係り、特に、電子写真方式によりトナーを用いて画像形成を行なう静電複写機、レーザープリンタ及びファクシミリ等の画像形成装置に採用される定着装置及びこれを用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置は、安価に生産性が高く、高画質画像を再現性及び操作性よく形成できることから、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの2種以上の機能を有する複合機などとして利用されている。
【0003】
これら電子写真方式の画像形成装置に用いられる記録媒体としては、紙、プラスチックフィルムやシート等がある。これら記録媒体の一つとして光透過性基材表面にレンズのような凸凹を形成したレンチキュラーレンズシートがある。
【0004】
レンチキュラーレンズとは、特別な装置なしに立体視が可能な「レンチキュラー方式」と呼ばれる方式である。このようなレンチキュラーレンズシートを用いると、特別な装置を使用することなく、3D画像の表示や2Dではあるが見る角度を変えることで複数の画像を切り換えることが可能となる。画像にレンズを組み合わせたものは、大量印刷の分野においては、一般的に、紙やフィルムに出力された画像と、レンズが形成された光透過性のシートとを貼り付ける方式によって作られている。
【0005】
従来技術として、電子写真方式において、従来のレンズシート(凸凹形状を有するシート)を用いてトナー画像を形成する技術が開示されている(特許文献1を参照。)。
しかしながら、上記従来技術では、レンズシートの凸凹形状の影響で異常放電が生じ、また、凸凹形状の段差によって形成される画像にスジ状のムラが発生するという問題がある。
【0006】
そこで、上記問題を解消するために、光透過性を有する透明基材の片側面にレンズ層を形成するための熱可塑性樹脂層、もう一方側の面にはトナー像を形成するための熱可塑性の受像層を設けた記録媒体を用いて、記録媒体にトナー像を形成した後、レンズ層を形成するための樹脂層にレンズ形成を行なうことで表面にレンズ層を有する画像を得るようにしたものが開示されている(特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−22091号公報
【特許文献2】特開2008−26477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の技術では、レンズ形成層と基材と受容層からなる記録媒体において、受容層にトナー画像を形成し、その後、成形型を用いてレンズ形成層を熱プレスすることで、レンズ層を有するレンチキュラー画像を得るため、定着工程後に、定着工程では熱変形しないが熱プレスで凸凹が形成できるような高温処理工程を有している。従って、トナー画像は定着工程後の熱プレスによる高温加熱加圧されるため、トナー画像に乱れが生じる可能性が高く、レンチキュラー画像の品質低下が考えられる。また、装置の消費電力が増大するだけでなく、装置が大型化するという問題がある。
【0009】
また、電子写真方式において、透明トナーを用いてレンズ層を形成することも考えられるが、この場合、透明トナー用の現像槽を別途搭載する必要があり、装置が大型化するという問題がある。さらに、透明トナーは、高い光透過性だけでなく良好な熱加工性が要求される。しかし粉末状の透明トナーの熱加工性と保存安定性との両立は難しい。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、装置を大型化することなく省スペースで、トナー画像の品質低下を生じることなく記録媒体上にレンチキュラーレンズ構造を形成できる定着装置及びこれを用いる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するための本発明に係る定着装置及びこれを用いる画像形成装置は、次の通りである。
【0012】
本発明は、記録媒体上の未定着トナー画像を溶融して前記記録媒体上に定着させる定着部材と、前記記録媒体を前記定着部材に押し当てながら搬送する加圧部材とを備え、前記定着部材と前記加圧部材とを圧接することにより定着ニップ部を形成し、前記定着部材と前記加圧部材とを回転させることで前記記録媒体を搬送しながら前記定着ニップ部で未定着トナー画像を定着させる定着装置において、前記記録媒体として光透過性を有する記録媒体を用いて、前記加圧部材に近接配置され前記加圧部材の表面に光透過性樹脂材料を塗出して透明樹脂層を形成する樹脂層形成手段(例えば、噴射ノズル)と、前記樹脂層形成手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記加圧部材の表面には、前記樹脂層形成手段により形成された透明樹脂層の加圧部材側がレンチキュラーレンズ構造となるように凹状に湾曲した断面を有する溝を周方向または回転軸に沿った方向に複数列並んで形成し、前記記録媒体を介して前記定着部材と前記加圧部材とを圧接することにより、前記定着ニップ部において、前記記録媒体の未定着トナー画像が形成された表面とは反対の面に前記加圧部材から透明樹脂層を転写定着させてレンチキュラーレンズ構造を形成するとともに、前記未定着トナー画像を前記記録媒体の表面に定着させることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、前記加圧部材を、芯金部とその外周に離型層を有するローラ部材、または無端状のベルト部材で構成し、前記定着部材を、ローラ部材または無端状のベルト部材で構成することが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記光透過性樹脂材料として、常温では固体である樹脂材料を使用し、前記樹脂層形成手段として、前記光透過性樹脂材料を加熱溶融する工程と、溶融した前記光透過性樹脂材料を前記加圧部材の表面に向けて塗出して前記加圧部材表面上に光透過性樹脂層を形成する工程とを備えたホットメルトインクジェット方式により前記透明樹脂層を形成するものとすることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記加圧部材の外周部において、前記定着ニップ部よりも記録媒体搬送方向上流側で、且つ、前記樹脂層形成手段よりも記録媒体搬送方向下流側で、前記加圧部材に近接して、前記光透過性樹脂層の厚さを規制する層厚規制部材を配置し、前記制御手段の構成として、前記記録媒体の厚さに対応して前記樹脂層形成手段による前記光透過性樹脂材料の吐出量を制御する機能と、前記記録媒体の厚さに対応して前記加圧部材と前記層厚規制部材との間隙を制御する機能と、前記記録媒体の厚さに対応して前記定着ニップ部の温度を制御する機能とを備えることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記ホットメルトインクジェット方式により吐出される光透過性樹脂材料を、相変化温度が60℃以上である光透過性樹脂及びワックスからなるものとすることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記加圧部材の構成として、内部に加熱源を有し、表面に塗出された光透過性樹脂材料を溶融させるようにすることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、前記定着装置の構成として、前記加圧部材と前記定着部材とを接離する接離手段を備え、前記接離手段を、前記加圧部材と前記定着部材とによる定着処理が終了した後、前記加圧部材と前記定着部材とを離間するように構成することが好ましい。
【0019】
また、本発明は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、像担持体表面を帯電させる帯電装置と、前記像担持体表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、前記像担持体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを備え、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、前記定着装置として請求項1から7のうちの何れか一項に記載の定着装置を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、記録媒体上の未定着トナー画像を溶融して前記記録媒体上に定着させる定着部材と、前記記録媒体を前記定着部材に押し当てながら搬送する加圧部材とを備え、前記定着部材と前記加圧部材とを圧接することにより定着ニップ部を形成し、前記定着部材と前記加圧部材とを回転させることで前記記録媒体を搬送しながら前記定着ニップ部で未定着トナー画像を定着させる定着装置において、前記記録媒体として光透過性を有する記録媒体を用いて、前記加圧部材に近接配置され前記加圧部材の表面に光透過性樹脂材料を塗出して透明樹脂層を形成する樹脂層形成手段(例えば、噴射ノズル)と、前記樹脂層形成手段の動作を制御する制御手段とを備え、前記加圧部材の表面には、前記樹脂層形成手段により形成された透明樹脂層の加圧部材側がレンチキュラーレンズ構造となるように凹状に湾曲した断面を有する溝を周方向または回転軸に沿った方向に複数列並んで形成し、前記記録媒体を介して前記定着部材と前記加圧部材とを圧接することにより、前記定着ニップ部において、前記記録媒体の未定着トナー画像が形成された表面とは反対の面に前記加圧部材から透明樹脂層を転写定着させてレンチキュラーレンズ構造を形成するとともに、前記未定着トナー画像を前記記録媒体の表面に定着させることで、電子写真技術とノズル塗出技術を用いて、装置を大型化することなく省スペースで、トナー画像の品質低下を生じることなく記録媒体上にレンチキュラーレンズ構造を形成できる。
また、本発明によれば、レンチキュラーレンズ構造を記録媒体上に均一なフィルムとして付着させることができるため、記録媒体の表面に直接塗出するよりもきれいなレンチキュラー画像を形成することができる。
【0021】
また、本発明によれば、前記加圧部材を、芯金部とその外周に離型層を有するローラ部材、または無端状のベルト部材で構成し、前記定着部材を、ローラ部材または無端状のベルト部材で構成することで、記録媒体のオフセットを防止でき、高品位なレンチキュラー画像を提供できる。なお、前記加圧部材や前記定着部材にベルト部材を用いる場合は、ウオームアップを速くできるので、印字しない時間はスリープモードに即入ることが可能となるので省エネ運転が可能となる。
【0022】
また、本発明によれば、前記光透過性樹脂材料として、常温では固体である樹脂材料を使用し、前記樹脂層形成手段として、前記光透過性樹脂材料を加熱溶融する工程と、溶融した前記光透過性樹脂材料を前記加圧部材の表面に向けて塗出して前記加圧部材表面上に光透過性樹脂層を形成する工程とを備えたホットメルトインクジェット方式により前記透明樹脂層を形成することで、例えば、スプレーノズル、ガンノズルなどの噴射ノズルを用いた場合に、不要な部分に樹脂が付着したり、透明樹脂層の層厚が不均一となったりするとことがなく、狙った部分のみに安定した量の光透過性樹脂材料を付着させることができる。
【0023】
また、本発明によれば、前記加圧部材の外周部において、前記定着ニップ部よりも記録媒体搬送方向上流側で、且つ、前記樹脂層形成手段よりも記録媒体搬送方向下流側で、前記加圧部材に近接して、前記光透過性樹脂層の厚さを規制する層厚規制部材を配置し、前記制御手段の構成として、前記記録媒体の厚さに対応して前記樹脂層形成手段による前記光透過性樹脂材料の吐出量を制御する機能と、前記記録媒体の厚さに対応して前記加圧部材と前記層厚規制部材との間隙を制御する機能と、前記記録媒体の厚さに対応して前記定着ニップ部の温度を制御する機能とを備えることで、記録媒体の厚さに対応してレンチキュラーレンズを作成することができるので、レンチキュラーレンズを形成する自由度が広がる。
【0024】
記録媒体の厚さが変われば画像焦点距離が変わるため、レンズ形状(凸凹の大きさ)を変える必要があるが、レンズ形状(凸凹の大きさ)を変えずにレンチキュラーレンズの厚さを光透過性樹脂材料の吐出量を変えて対応することができる。
【0025】
すなわち、前記樹脂層形成手段による前記光透過性樹脂材料の吐出量と前記層厚規制部材による層厚規制により、記録媒体への転写定着前の加圧部材表面の光透過性樹脂材料の厚さと密度を制御し、さらに前記定着ニップ部の温度を制御することで、均一な層形成とオフセットを防止し、レンチキュラーレンズの厚さを記録媒体の厚さに対応して調整することができるので、簡易に高品位なレンチキュラー画像を提供できる。
【0026】
また、本発明によれば、ホットメルトインクジェット方式により吐出される光透過性樹脂材料を、相変化温度が60℃以上である光透過性樹脂及びワックスからなるものとすることで、加熱により所定温度(レンチキュラーレンズシートが重ねられた場合に融着しない温度よりも高温)で急峻に溶融するので、溶融性が均一となり省エネとなる。また、加圧部材表面に形成された透明樹脂層(レンチキュラーレンズとなる)が加圧部材表面から容易に離型することが可能となるため、オフセットの発生を抑制することが可能となり、レンチキュラーレンズを形成するシート表面の基本的な凸凹を良好に形成し、余分な凸凹を形成することなく、それによる光散乱を抑制して高品位なレンチキュラー画像を提供できる。
【0027】
また、本発明によれば、前記加圧部材の構成として、内部に加熱源を有し、表面に塗出された光透過性樹脂材料を溶融させることで、光透過性樹脂材料の溶融性を向上させ、均一なレンチキュラーレンズを形成するシートとすることで、記録媒体への転写定着が均一となり、高品位なレンチキュラー画像を提供できる。
【0028】
また、本発明によれば、前記定着装置の構成として、前記加圧部材と前記定着部材とを接離する接離手段を備え、前記接離手段を、前記加圧部材と前記定着部材とによる定着処理が終了した後、前記加圧部材と前記定着部材とを離間するように構成することで、凹状の溝が形成されることにより凸凹形状となった前記加圧部材の表面により前記定着部材の表面の劣化損傷を防止することができるので、ロングライフ化を図ることができる。
【0029】
また、本発明によれば、表面に静電潜像が形成される像担持体と、像担持体表面を帯電させる帯電装置と、前記像担持体表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、前記像担持体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを備え、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、前記定着装置として請求項1から7のうちの何れか一項に記載の定着装置を用いることで、電子写真技術とノズル塗出技術を用いて、装置を大型化することなく省スペースで、トナー画像の品質低下を生じることなく記録媒体上にレンチキュラーレンズ構造を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を示す説明図である。
【図2】前記画像形成装置を構成する定着装置の構成を示す説明図である。
【図3】前記画像形成装置の特徴的な定着ユニットの構成を示す説明図である。
【図4】図3のA部の詳細を示す拡大図である。
【図5】前記定着ユニットにより形成されたレンチキュラー画像の構成を示す説明図である。
【図6】前記画像形成装置における定着ユニットの制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】本実施形態の定着ユニットの変形例の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は発明を実施する形態の一例であって、本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体の構成を示す説明図、図2は、前記画像形成装置を構成する定着装置の構成を示す説明図である。
【0032】
本実施形態は、図1に示すように、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム3と、感光体ドラム3表面を帯電させる帯電器(帯電装置)5と、感光体ドラム3表面に静電潜像を形成する露光ユニット(露光装置)1と、感光体ドラム3表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置2と、感光体ドラム3表面のトナー像を記録媒体に転写する中間転写ベルトユニット(転写装置)8と、トナー像を記録媒体に定着させる定着ユニット(定着装置)12とを備え、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置100において、記録媒体として光透過性を有する記録媒体を用いて、定着ユニット12として、本発明に係る特徴的な定着装置の構成を採用して、記録媒体の未定着トナー画像が形成された表面とは反対の面に透明樹脂層を転写定着させてレンチキュラーレンズ構造を形成するとともに、未定着トナー画像を記録媒体の表面に定着させることを特徴とするものである。
【0033】
画像形成装置100は、読み取った原稿の画像データやネットワーク等を介して送信された画像データに基づいて記録媒体に対して多色及び単色の画像を形成する装置である。
【0034】
まず、画像形成装置100の全体構成について説明する。
画像形成装置100は、図1に示すように、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の色成分毎の画像データが取り扱われ、黒画像、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像が形成され、各々の色成分の画像を重畳することによってカラー画像が形成されるようになっている。
【0035】
従って、画像形成装置100においては、図1に示すように、各色成分の画像が形成されるように、現像装置2(2a,2b,2c,2d)、感光体ドラム3(3a,3b,3c,3d)、帯電器5(5a,5b,5c,5d)、クリーナユニット4(4a,4b,4c,4d)がそれぞれ4個ずつ設けられている。言い換えると、現像装置2と感光体ドラム3と帯電器5とクリーナユニット4とを1つずつ含む画像形成ステーション(画像形成部)が4つ設けられることになる。
【0036】
なお、上記a〜dの符号は、aが黒画像形成用の部材、bがシアン画像形成用の部材、cがマゼンタ画像形成用の部材、dがイエロー画像形成用の部材であることを示したものである。また、画像形成装置100には、露光ユニット1、定着ユニット12、シート搬送路(用紙搬送経路)P1,P2,P3、給紙カセット10及び排紙トレイ15が備えられている。
【0037】
感光体ドラム3は、図示しない駆動部によって軸船周りに回転駆動可能に支持されるローラ状部材である。感光体ドラム3は、感光層を含み、該感光層の表面において、静電潜像ひいてはトナー像を担持する像担持体である。
【0038】
感光体ドラム3には、たとえば、アルミニウムなどからなる導電性基材と、該導電性基材表面に形成される感光層とからなるものを使用できる。導電性基材には、円筒状、円柱状、シート状などの導電性着体を好ましく使用できる。感光層としては、有機感光層、無機感光層などが挙げられる。有機感光層としては、電化発生物質を含む樹脂層である電荷発生層と、電荷輸送物質を含む樹脂層である電荷輸送層との積層体、または、1つの樹脂層中に電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む樹脂層などが挙げられる1種又は2種以上を含む樹脂層が挙げられる。導電性着体と感光層との間には、下地層が介在しても良い。また、感光層の表面には感光層を保護するための表面層(保護層)が設けられても良い。
【0039】
帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の極性及び電位に帯電させる部材である。
この帯電器5は、感光体ドラム3に臨む位置に、感光体ドラム3の長手方向に沿って設置される。接触帯電方式の帯電装置の場合、帯電器5は、感光体ドラム3の表面に接するように設置される。非接触帯電方式の帯電装置の場合、帯電器5は、感光体ドラム3の表面から離隔するように設置される。
【0040】
帯電器5としては、ブラシ型帯電装置、ローラ型帯電装置、コロナ放電装置、イオン発生装置などを使用できる。
ブラシ型帯電装置及びローラ型帯電装置は、接触帯電方式の帯電装置である。ブラシ型帯電装置には、帯電ブラシを用いるもの、磁気ブラシを用いるものなどがある。
コロナ放電装置及びイオン発生装置は、非接触帯電方式の帯電装置である。コロナ放電装置には、ワイヤ上の放電電極を用いるもの、鋸歯上の放電電極を用いるもの、針状の放電電極を用いるものなどがある。
【0041】
露光ユニット1は、帯電状態にある感光体ドラム3の表面に、デジタル信号からなる画像情報に対応するレーザ光を照射して、感光体ドラム3の表面に該画像情報に対応する静電潜像を形成する。露光ユニット1には、半導体レーザ装置などを使用できる。レーザスキャニングユニット以外に、発光素子をアレイ状に並べたEL(エレクトロルミネッセンス)やLED書込みヘッドを露光ユニット1とすることもできる。
【0042】
現像装置2は、現像ローラ114と、攪拌ローラ112とを含む。現像ローラ114は、軸船周りに回転可能に支持されるローラ状部材である。現像ローラ114は、感光体ドラム3に臨む面に形成される開口部から、その一部が外方向に向けて突出して感光体ドラム3の表面に近接するように設けられている。
【0043】
現像ローラ114は、図示しない固定磁極を内包しており、該固定磁極により、現像ローラ114の表面に現像剤を担持する。また、現像ローラ114は、現像ローラ114と感光体ドラム3との近接部(現像ニップ部)において、担持した現像剤を感光体ドラム3の表面の静電潜像に供給し、感光体ドラム3の表面にトナー像を形成する。さらに、現像ローラ114は、感光体ドラム3と逆方向に回転駆動する。したがって、現像ニップ部においては、現像ローラ114の表面と感光体ドラム3の表面とが同じ方向に移動する。
【0044】
また、現像ローラ114は、図示しない電源と接続され、該電源から直流電圧(現像電圧)が印加される。これによって、現像ローラ114の表面の現像剤は、静電潜像に円滑に供給される。電圧印加は交流を重畳しても良い。
【0045】
現像装置2は、感光体ドラム3に臨む面に開口部が形成され、内部空間を有する容器状部材である。また、現像装置2は、その内部空間に撹拌ローラ112を備え、現像剤を貯留する。現像剤としては、この分野で常用されるものを使用できる。また、現像剤は、トナーのみからなる1成分現像剤であってもよく、トナーとキャリアからなる2成分現像剤であってもよい。
【0046】
撹拌ローラ112は、現像装置2の内部空間において軸線周りに回転可能に指示されるスクリュー状部材である。撹拌ローラ112は、回転駆動によって、現像装置2内の現像剤を現像ローラ114の表面周辺に送給する。
【0047】
現像剤補給容器115は、その内部空間に現像剤を貯留する容器状部材である。現像剤補給容器115は、現像剤における現像剤の消費状況に応じて、現像装置2に現像剤を補給する。
【0048】
クリーナユニット4は、感光体ドラム3の表面のトナー像が記録媒体に転写された後に、感光体ドラム3の表面に残存する現像剤を除去、回収する。
【0049】
感光体除電部(図示省略)は、ドラムクリーナによって現像剤が回収された後の感光体ドラム3を除電する。感光体除電部にはランプ、LEDなどの照明を用いることができる。
【0050】
中間転写ベルト7は、感光体ドラム3の上方に配置されており、駆動ローラ71と従動ローラ72との間に張架されてループ状の移動経路を形成している。中間転写ベルト7の外周面は、感光体ドラム3d、感光体ドラム3c、感光体ドラム3b及び感光体ドラム3aにこの順に対向する。この中間転写ベルト7を挟んで各感光体ドラム3a〜3dに対向する位置に、1次転写ローラ6a〜6dが配置されている。中間転写ベルト7が感光体ドラム3a〜3dに対向する位置のそれぞれが1次転写位置である。また、中間転写ベルト7は、厚さ100〜150μm程度のフィルムで形成されている。
【0051】
1次転写ローラ6a〜6dには、感光体ドラム3a〜3dの表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト7上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の1次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム3a〜3dに形成された各色相のトナー像は、中間転写ベルト7の外周面に順次重ねて転写され、中間転写ベルト7の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
ただし、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の色相の一部のみの画像データが入力された場合には、4つの感光体ドラム3a〜3dのうち、入力された画像データの色相に対応する一部の感光体ドラム3のみにおいて静電潜像及びトナー像の形成が行なわれる。たとえば、モノクロ画像形成時には、ブラックの色相に対応した感光体ドラム3aのみにおいて静電潜像の形成及びトナー像の形成が行なわれ、中間転写ベルト7の外周面にはブラックのトナー像のみが転写される。
【0052】
各1次転写ローラ6a〜6dは、直径8〜10mmのステンレスなどの金属を基材とする軸の表面を導電性の弾性材(たとえばEPDM、発泡ウレタン等)によって被覆して構成されており、導電性の弾性材によって中間転写ベルト7に均一に高電圧を印加する。
【0053】
各1次転写位置において中間転写ベルト7の外周面に転写されたトナー像は、中間転写ベルト7の回転によって、2次転写ローラ11との対向位置である2次転写位置に搬送される。2次転写ローラ11は、画像形成時において、内周面が駆動ローラ71の周面に接触する中間転写ベルト7の外周面に所定のニップ圧で圧接されている。給紙カセット10または手差し給紙トレイ20から給紙された記録媒体が、2次転写ローラ11と中間転写ベルト7との間を通過する際に、2次転写ローラ11にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト7の外周面から記録媒体の表面にトナー像が転写される。
【0054】
なお、感光体ドラム3から中間転写ベルト7に付着したトナーのうち、記録媒体上に転写されずに中間転写ベルト7上に残存したトナーは、次工程での混色を防止するために、転写クリーニングユニット9によって回収される。
【0055】
トナー像が転写された記録媒体は、定着ユニット12に導かれ、定着ローラ12a及び加熱ローラ60の間に張架された定着ベルト64と、加圧ローラ12bとの間に形成される定着ニップ部12cを通過して加熱及び加圧を受ける。これによって、トナー像が、記録媒体の表面に堅牢に定着する。トナー像が定着した記録媒体は、排紙ローラ253によって排紙トレイ15上に排出される。
【0056】
また、画像形成装置100には、給紙カセット10に収納されている記録媒体を、2次転写ローラ11と中間転写ベルト7との間、定着ユニット12を経由して、排紙トレイ15に送るための略垂直方向に延びる用紙搬送路P1が設けられている。
【0057】
用紙搬送路P1には、給紙カセット10内のシート状の記録媒体を1枚ずつ用紙搬送路P1内に繰り出すピックアップローラ161、繰り出された記録媒体を上方に向けて搬送する搬送ローラ251、搬送されてきた記録媒体を所定のタイミングで2次転写ローラ11と中間転写ベルト7との間に導くレジストローラ14、記録媒体を排紙トレイ15に排出する排紙ローラ253が配置されている。
【0058】
また、画像形成装置100の内部には、手差し給紙トレイ20からレジストローラ14に至る間に、ピックアップローラ162及び搬送ローラ254,255,256を配置した用紙搬送路P2が形成されている。さらに、排紙ローラ253から用紙搬送路P1におけるレジストローラ14の上流側に至る間には、用紙搬送路P3が形成されている。
【0059】
排紙ローラ253は、正逆両方向に回転自在にされており、記録媒体の片面に画像を形成する片面画像形成時、及び、記録媒体の両面に画像を形成する両面画像形成における第2面画像形成時に正転方向に駆動されて記録媒体を排紙トレイ15に排出する。一方、両面画像形成における第1面画像形成時には、排紙ローラ253は、記録媒体の後端が定着ユニット12を通過するまで正転方向に駆動された後、記録媒体の後端部を挟持した状態で逆転方向に駆動されて記録媒体を用紙搬送路P3内に導く。これによって、両面画像形成時に片面のみに画像が形成された記録媒体は、表裏面及び前後端を反転した状態で用紙搬送路P1に導かれる。
【0060】
レジストローラ14は、給紙カセット10または手差し給紙トレイ20から給紙され、または、用紙搬送路P3を経由して搬送された記録媒体を、中間転写ベルト7の回転に同期したタイミングで2次転写ローラ11と中間転写ベルト7との間に導く。このため、レジストローラ14は、感光体ドラム3や中間転写ベルト7の動作開始時には回転を停止しており、中間転写ベルト7の回転に先立って給紙または搬送された記録媒体は、前端をレジストローラ14に当接させた状態で用紙搬送路P1内における移動を停止する。この後、レジストローラ14は、2次転写ローラ11と中間転写ベルト7とが圧接する位置で、記録媒体の前端部と中間転写ベルト7上に形成されたトナー像の前端部とが対向するタイミングで回転を開始する。
【0061】
なお、画像形成部Pa〜Pdの全てにおいて画像形成が行なわれるフルカラー画像形成時には、1次転写ローラ6a〜6dが中間転写ベルト7を感光体ドラム3a〜3dの全てに圧接させる。一方、画像形成部Paのみにおいて画像形成が行なわれるモノクロ画像形成時には、1次転写ローラ6aのみを中間転写ベルト7を感光体ドラム3aに圧接させる。
【0062】
定着ユニット12は、図2に示すように、定着ローラ12aと、加圧ローラ12bと、定着ベルト64と、加熱部材として加熱ローラ60とを含んで構成される。加熱ローラ60の内部には、加熱ローラ60を加熱するヒータランプ66が配置されている。定着ベルト64は、定着ローラ12aと加熱ローラ60との間に張架され、加圧ローラ12bが定着ベルト64を介して定着ローラ12aに対向するように配置されている。
符号12dは、加圧ローラ12bに貼付いた記録媒体を剥がす剥離爪である。
【0063】
定着ローラ12aと加熱ローラ60とは、定着ローラ12aの軸線方向において、略平行となるように配置されている。そのため、定着ローラ12aと加熱ローラ60との間に張架される定着ベルト64が摺動するとき、蛇行するのを防止して、定着ベルト64の耐久性を高く維持することができる。
【0064】
定着ユニット12は、加熱ローラ60が定着ベルト64と接触して定着ベルト64を加熱し、定着ベルト64と加圧ローラ12bとで形成する定着ニップ部12cを、所定の定着速度及び複写速度で記録媒体である記録媒体82が通過したとき、記録媒体82上に担持されている未定着トナー画像81を記録媒体82上に加熱加圧して定着する装置である。
なお、未定着トナー画像81は、たとえば、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナー及びキャリア)、磁性現像剤(磁性トナー)などの現像剤(トナー)によって形成される。また、定着速度とは所謂プロセス速度であり、複写速度とは1分あたりのコピー枚数のことである。
また、記録媒体82が定着ニップ部12cを通過するときには、定着ベルト64は、記録媒体82のトナー像担持面に当接するようになっている。
【0065】
定着ローラ12aは、定着ベルト64を介して加圧ローラ12bに圧接することで定着ニップ部12cを形成すると同時に、定着ベルト64を介して加圧ローラ12bに対向しかつ圧接し、回転軸線まわりに回転自在に設けられている。加圧ローラ12bは、定着ローラ12aの回転に従動して回転方向Y1方向に回転する。
【0066】
詳しくは、定着ローラ12aは、直径が30mmで、その内側から順に芯金、弾性層が形成された2層構造からなり、芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適している。なお、本実施の形態では、定着ローラ12aが定着ベルト64を介して加圧ローラ12bに圧接するときの力は、216N程度である。
【0067】
加圧ローラ12bは、図示しない駆動モーター(駆動手段)により回転軸線まわりに回転方向Y2方向に回転駆動することによって、定着ベルト64を搬送する。
【0068】
詳しくは、加圧ローラ12bは、その内側から順に芯金、離型層が形成された2層構造からなっている。芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、離型層にはPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が適している。また、加圧ローラ12bの内部には、加圧ローラ12bを加熱するヒータランプ66が配置されている。
【0069】
また、加圧ローラ12bの外周部には、加圧ローラ12bに付着したトナーを除去するクリーニング機構13が設けられている。
【0070】
画像形成装置100の動作を制御する主制御部(図示省略)により電源回路からヒータランプ66に電力を供給(通電)させることによって、ヒータランプ66が発光し、ヒータランプ66から赤外線が放射される。これによって、加圧ローラ12bの内周面が赤外線を吸収して加熱され、加圧ローラ12b全体が加熱される。
【0071】
定着ベルト64は、直径50mmの無端状のベルトで、加熱ローラ60と定着ローラ12aによって懸架され、定着ローラ12aに所定の角度で巻き付けられている。
詳しくは、定着ベルト64は、ポリイミド等の耐熱性樹脂あるいはステンレスやニッケル等の金属材料からなる中空円筒状の基材の表面に、弾性層として耐熱性及び弾性に優れたエラストマー材料(たとえばシリコンゴム)が形成され、さらにその表面に離型層として耐熱性及び離型性に優れた合成樹脂材料(たとえばPFAやPTFE等のフッ素樹脂)が形成された3層構造となっている。また、基材のポリイミドにフッ素樹脂を内添してもよい。これによって、加熱ローラ60との摺動負荷を低減することができる。
【0072】
定着ベルト64は、定着ローラ12aの回転時には、定着ローラ12aに従動して回転方向Y1方向に回転するようになっている。そして、定着ベルト64は、加熱ローラ60によって所定の温度に加熱され、定着ニップ部12cを通過する未定着トナー画像81及び記録媒体82を加熱する。
【0073】
定着ユニット12においては、温度検出手段として、定着ベルト64の周面には発熱体側サーミスタ63、加圧ローラ12bの周面には加圧ローラ側サーミスタ65が配設されており、それぞれの表面温度を検出するようになっている。発熱体側サーミスタ63によって検出された定着ベルト64の表面温度に基づいて、加熱源(ヒータランプ)に対する通電が制御される。
【0074】
本実施形態における発熱体側サーミスタ63は、非接触式温度検出手段であり、赤外線検知型の温度センサである。
【0075】
なお、接触式温度検出手段を定着ベルト64に接触して配置する構成では、定着ベルト64と接触する界面において、接触式温度検出手段が定着ベルト64の表面離型層を摩耗させる場合がある。このようにして定着ベルト64の表面離型層が損傷、劣化した場合には、画像にその影響を及ぼし、劣悪な画像となる。
【0076】
また、加圧ローラ側サーミスタ65によって検出された加圧ローラ12bの表面温度に基づいて、ヒータランプ66に対する通電が制御される。加圧ローラ側サーミスタ65は、非接触式温度検出手段を用いてもよい。
【0077】
ここで、本実施形態の画像形成装置100に使用するトナーについて説明する。
画像形成装置100に使用するトナーとして、ポリスチレン樹脂、スチレンの置換体の単独重合体からなる樹脂、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーから重合される共重合体樹脂、アクリル系共重合体樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ノルボルネンとエチレンを共重合体であるシクロオレフィンコポリマー、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0078】
これらの樹脂材料の中でも、トナー用結着樹脂は、保存性、耐久性などに優れることが要求されるため、軟化点が100〜150℃、ガラス転移点が50〜80℃である結着樹脂が好ましく、前記軟化点及び前記ガラス転移点を有するポリエステル樹脂が好ましい。透明性という観点ではシクロオレフィンコポリマーも好適である。
【0079】
離型剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ワックスを用いることができる。ワックスとしては、通常の電子写真方式による画像形成に関する分野で常用されるものを用いることができる。例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、エステルワックス等が挙げられる。
離型剤の含有量は、通常用いられる範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0080】
結着樹脂、離型剤の他に、帯電制御剤等の一般的なトナー用添加材を含有できる。
帯電制御剤としては、トナーを帯電させるまたはその帯電をコントロールできるものであれば特に限定されるものではない。しかし、トナーの透明性に影響を及ぼさないものであることが好ましい。このような帯電制御材としては、一般的には、例えば、ニグロシン染料、四級アンモニオウム塩、トリフェニルメタン誘導体、サリチル酸亜鉛錯体、ナフトール酸亜鉛錯体、ベンジル酸誘導体の金属酸化物等が挙げられる。これらの帯電制御剤は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上の帯電制御材を併用しても良い。
【0081】
帯電制御剤の含有量は、通常用いられる範囲であれば、特に限定されるものではない。
トナーは従来公知のトナー簿粒子の方法に従って製造することができる。例えば、粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法などを挙げることができる。
【0082】
トナーの体積平均粒子径は、特に限定されるものではないが、2μm〜10μmであることが好ましい。体積平均粒子径が2μmよりも小さい場合、得られたトナーの流動性が低下する。これによって、現像動作に、トナー補給、撹拌及び帯電不十分になり、トナー量不足、逆帯電トナーの増加等が生じる。この結果、良好なトナーの像形成ができないなどの問題が発生する場合がある。一方、トナーの体積平均粒子径が10μmより大きい場合は、出力画像の高解像度化を阻害するなどの問題が発生する。
【0083】
外添剤は、トナーに対して、粉黛流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性向上、長期保存性向上、クリーニング性改善、及び感光体表面の摩耗特性制御などの機能を付与する目的で添加される。具体的には、この分野で通常用いられる外添剤、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、アクリル樹脂微粒子、金属石鹸微粒子などが用いられる。添加量としても通常用いられる範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0084】
なお、このようにして製造されたトナーは、そのまま一成分現像剤としても通ることも可能であり、キャリア粒子と混合撹拌することで2成分現像剤として用いることができる。
【0085】
2成分現像剤に用いられるキャリア粒子としては、特に限定されるものではなく、この分野で通常用いられるキャリア粒子を用いることができる。例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性材料;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等からなるキャリア粒子を用いることが好ましい。さらに、これらのキャリア粒子として表面を樹脂材料でコートしたものを用いることもできる。いずれも、トナー成分に応じて適宜選択することが好ましく、1種を単独で用いても良く、また2種以上を併用して用いても良い。キャリア粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、均一な帯電と画像を得るには、粒子径が30μm〜100μmであることが好ましい。
【0086】
また2成分現像剤の製造方法としては、特限定されるものではなく、従来公知の方法によって製造することができる。本実施形態のトナーは、2成分現像剤全量に対して、3重量%〜20重量%の濃度となるように含まれていることが好ましい。
【0087】
次に、本実施形態に係る特徴的な定着ユニット12の構成について図面を参照して詳細に説明する。
図3は本実施形態に係る画像形成装置の特徴的な定着ユニットの構成を示す説明図、図4は図3のA部の詳細を示す拡大図、図5は前記定着ユニットにより形成されたレンチキュラー画像の構成を示す説明図である。
【0088】
本実施形態の定着ユニット12は、透明な記録媒体(光透過性基材、例えばPETシートなど)の表面にレンチキュラーレンズを形成するとともに、トナー像の記録媒体への定着を同時に行なう構成となっている。
【0089】
具体的には、定着ユニット12は、図3に示すように、定着ベルト64と、加熱源としての加熱ローラ60(図2を参照)と、定着ローラ12aと、加圧ローラ12bと、樹脂層形成装置(樹脂層形成手段)120と、層厚規制装置(層厚規制部材)130と、定着ローラ12aと加圧ローラ12bとを接離する接離手段70を含んで構成されている。
【0090】
そして、定着ユニット12は、加熱ローラ60が定着ベルト64を加熱し、定着ローラ12aと加圧ローラ12bとを圧接することで形成される定着ニップ部12cを、記録媒体が所定の定着速度及び複写速度で通過したとき、記録媒体上に担持されている未定着のトナー像を記録媒体上に加熱加圧して定着するとともに、同時に加圧ローラ12b上に定着ニップ部12cよりも回転方向上流側で樹脂層形成装置120より溶融したレンズ材料(光透過性樹脂材料)が吐出され、レンズ材料層(透明樹脂層)を形成し、該レンズ材料層を定着ニップ部12cで記録媒体に転写定着することにより、記録媒体上にレンチキュラーレンズを形成するようにされている。
【0091】
加圧ローラ12bは、軸線方向両端を支持され、図示しない駆動源によって回転可能なように設けられている。また、加圧ローラ12bは、内部に加熱源としてヒータランプ66を有し、表面に塗出された光透過性樹脂材料を溶融させるように構成されている。
【0092】
そして、加圧ローラ12bは、芯金と離型層とを含む構造となっている。
芯金を構成する材料としては、たとえば、アルミニウム、鉄、ステンレスなどを使用することができる。芯金の形状は直円筒形状であり、芯金の軸線方向両端部には、絞り構造があっても良く、また無くてもよい。
【0093】
離型層を構成する材料としては、たとえば、PFA(ポリテトラフルオロエチレとペルフルオロアルキルビニルエーテルンとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、などのフッ素系樹脂材料が挙げられる。あるいはこれらフッ素を含むDLC(ダイヤモンドライクカーボン)材料などを用いても良い。なお、これらの厚みは、10μm〜50μm程度であることが好ましい。10μmよりも薄いと耐久性が問題になり、逆に50μmよりも厚くなると、凸凹形状の溝が浅くなり、レンズ形状がうまくできないという問題がある。
【0094】
また、離型層の離型性を確保するために、シリコーンオイル等の離型剤を塗布する構成としてもよい。シリコーンオイルとしては粘度が1,000csから10,000cs程度のオイルを使用することができる。
【0095】
そして、加圧ローラ12bは、レンズ形成ローラであり、その外周面には、図4に示すように、凹状に湾曲した断面を有する溝12b1が回転軸に沿った方向に複数列並んで形成されている。この溝12b1に樹脂層形成装置120から光透過性樹脂材料が塗出されて形成された透明樹脂層110が記録媒体82に転写されると、図5に示すように、記録媒体の表面に透明樹脂層の加圧ローラ12b側(溝12b1側)が突出したレンチキュラーレンズ110が構成される。
【0096】
レンチキュラーレンズ110において、符号aは突出したレンズ部が形成されるピッチ寸法、符号tはレンズ部の高さ、符号taはレンズ部の基部の高さ、符号tbは記録媒体の厚さ、をそれぞれ示す。
【0097】
溝12b1の加工方法としては、金属製のバイトなどによる機械加工、レーザによる加工、エッチング等が挙げられる。そして、本発明は、溝の加工方法に限定されるものではない。また、この溝12b1の形成方向は、本実施形態のように加圧ローラ12bの軸線方向(長手方向)に沿って形成されたものであってもよく、また、加圧ローラ12bの周方向に沿って形成されたものであってもよい。
【0098】
なお、本実施形態では、加圧ローラ12bをレンズ形成ローラとしているが、レンズ形成部材の構成は、ローラ形状に限定されるものではない。
例えば、加圧部材の構成として、ベルト部材を介して加圧ローラにより加圧するような構成としたときに、レンズ形成部材としてベルト部材を用いても良い。ベルト部材を用いることで熱容量を小さくすることでき、ウオームアップ時間の短縮が可能となる。
【0099】
樹脂層形成装置120は、光透過性樹脂材料を収容したレンズ成型材料ボトル121と、溶融した光透過性樹脂材料を塗出するノズル122を備えている。ノズル122は、加圧ローラ12bの外周部に近接して配置されている。
【0100】
そして、樹脂層形成装置120は、光透過性樹脂材料を加熱溶融する工程と、溶融した光透過性樹脂材料を加圧ローラ12bの表面に向けて塗出して加圧ローラ12b表面上に光透過性樹脂層を形成する工程とを備えたホットメルトインクジェット方式により透明樹脂層を形成する。
【0101】
ホットメルトインクジェット方式は、室温でレンズを形成する光透過性樹脂材料を固体状として扱うため、トナーのような粉末状にして扱うことで生じる貯蔵安定性の確保という、レンズ形成材料に要求される熱加工性との両立という課題を解決できる。
【0102】
ノズル122は、通常に使用されるホットメルトインクジェット方式に用いられるノズルを備えたヘッドを用いることができる。なお、ノズルから吐出される光透過性樹脂材料の吐出量を加圧ローラ12b及び定着ローラ12aの回転速度に対応するには、回転軸線方向に沿って広い範囲で塗出可能なラインヘッドを用いるのが好ましい。
【0103】
ホットメルトインクジェット方式により樹脂層形成装置120から吐出される光透過性樹脂材料(光透過性樹脂組成物)は、光透過性樹脂及びワックスからなり、常温では固体であり、相変化温度が60℃以上であることが好ましい。
【0104】
光透過性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などを使用できる。
ポリアミド樹脂として、バーサミド711、バーサミド725、バーサミド930、バーサミド940、バーサロン1117、バーサロン1138、バーサロン1300、トーマイド391、トーマイド393、トーマイド394、トーマイド395、トーマイド397、トーマイド509、トーマイド535、トーマイド558、トーマイド560、トーマイド1310、トーマイド1396、トーマイド90、トーマイド92、ポリエステル樹脂としてKTR2150、トナー用ポリエステル樹脂などから選ばれる。
【0105】
また、光透過性樹脂材料として、加熱溶融性を補助し、離型性を確保するために、ワックスを添加することが好ましい。ワックスとしては、例えば、石油ワックス類から選ばれたパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスあるいはカルナウバワックス、モンタンワックス等が選ばれる少なくても1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0106】
さらに、上記の樹脂、ワックスの他にレンズを構成する成分と適応性がある限り、脂肪酸類、各種の表面調整剤、界面活性剤、粘度低下剤、酸化防止剤、防腐剤等の他の成分を添加混合して使用することができる。相変化温度が60℃よりも低いと、レンズシートを重ねた場合、高温での重ねあわせが問題となる。吐出温度よりも高温すぎると加熱に高エネルギーを要し、またトナーの定着を同時に行なうが、トナー定着温度が高くなりすぎてオフセットまたは定着ローラへの記録材の巻きつきなどのトナー定着に問題が生じる。
【0107】
層厚規制装置130は、光透過性樹脂層の厚さを規制する層厚規制体131と、該層厚規制体131を動作させて層厚規制体131と加圧ローラ12bとの隙間を設定する押圧部材132とを有して構成され、加圧ローラ12bの外周部において、定着ニップ部12cよりも記録媒体搬送方向上流側で、且つ、樹脂層形成装置120よりも記録媒体搬送方向下流側で、加圧ローラ12bに近接して配置されている。
【0108】
接離手段70は、定着ローラ12aと加圧ローラ12bとによる定着処理が終了した後、加圧ローラ12bを定着ローラ12aから離間するように構成される。
【0109】
接離手段70により、レンチキュラーレンズの形成及びトナー定着が終了した後、加圧ローラ12bを定着ローラ12aから離間することで、定着ニップ部12cが開放されて、加圧ローラ12bに形成された溝12b1が高温で加圧された状態から開放されるため、加圧ローラ12bの溝12b1及びこれに対向する定着ベルト64の表面を損傷することなく、定着ユニット12のロングライフ化を図ることができる。
【0110】
なお、本実施形態では、定着ユニット12において、定着部材として定着ベルト64を用いて、この定着ベルト64を介在させて定着ローラ12aと加圧ローラ12bとを圧接するようにしているが、定着ユニット12の構成は、これに限定されるものではない。
【0111】
以下に、本実施形態の定着ユニット12の構成の変形例を示す。
図7は本実施形態の定着ユニットの変形例の構成を示す説明図である。
変形例は、定着ユニット212の構成として、図7に示すように、定着部材としてローラ形状の定着ローラ212aを用いて、この定着ローラ212aと加圧ローラ12bとを図示しない加圧機構によって押圧された状態で回転自在に設けたものである。
【0112】
定着ローラ212aは、芯金と弾性層と離型層を含む構造となっている。
芯金を構成する材料としては、たとえば、アルミニウム、鉄、ステンレスなどを使用することができる。芯金の形状は直円筒状であり、芯金の軸線方向両端部には、絞り構造があっても無く、また無くてもよい。
【0113】
弾性層は、加圧ローラ12bと定着ローラ212aとで形成される定着ニップ部212cを大きくすることが可能で、芯金の外周面状に設けられる。弾性層を構成する材料としては、ゴム弾性を有するもので、好ましくは、ゴム弾性を有し、耐熱性に優れるものを用いることができる。具体例としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、またはフッ素変性シリコンゴムなどが挙げられる。また、これらの材料の発泡体であってもよいが、特にゴム弾性に優れるシリコンゴムが好ましい。
【0114】
離型層は、弾性層の外周面上に設けられる。剥離層を構成する材料としては、耐熱性及び耐久性に優れ、トナーとの付着力が弱いものを用いることができる。この離型層を構成する材料は、上述した加圧ローラ12bの剥離層を構成する材料と同様なものを挙げることができる。PFA,PTFEを用いる場合は、これらの材料からなるチューブを被覆しても、あるいはコーティングしてもよい。なお、離型層の厚さは10〜50μmであることが好ましい。10μmよりも薄いと耐久性が問題になり、逆に50μmよりも厚くなると、凸凹形状の溝が浅くなり、レンズ形状がうまくできないという問題がある。
【0115】
次に、本実施形態の特徴的な画像形成装置100の定着ユニット12に係る制御系の構成についてブロック図に基づき説明する。
図6は本実施形態の画像形成装置における定着ユニットの制御系の構成を示すブロック図である。
【0116】
画像形成装置100定着ユニット12は、図6に示すように、制御部140により樹脂層形成装置120や層厚規制装置130の動作制御、定着ローラ12aや加圧ローラ12bの温度制御が行なわれる。
【0117】
制御部140は、記録媒体の厚さに対応して樹脂層形成装置120による光透過性樹脂材料の吐出量を制御する吐出量制御機能141と、記録媒体の厚さに対応して押圧部材132の動き量を制御して加圧ローラ12bと層厚規制体131との間隙を制御する隙間量制御機能142と、記録媒体の厚さに対応して定着ニップ部12cの温度を制御する定着ニップ温度制御機能143とを備えている。
【0118】
吐出量制御機能141は、記録媒体の厚さに対応して樹脂層形成装置120によりノズル122から吐出される光透過性樹脂材料の吐出量を制御するものである。
【0119】
隙間量制御機能142は、記録媒体の厚さに対応して加圧ローラ12bと層厚規制体131との間隙を調整して光透過性樹脂材料により形成される光透過性樹脂層の厚さを制御するものである。
【0120】
定着ニップ温度制御機能143は、発熱体側サーミスタ63、加圧ローラ側サーミスタ65により検出される定着ベルトの温度と加圧ローラ12bの温度に対応してヒータランプ66のON/OFF(照射)を制御して定着ニップ部12cの温度を制御するものである。
【0121】
本実施形態では、定着ユニット12における動作を制御する制御手段として制御部140を設けているが、画像形成装置100の動作を制御する主制御部(図示省略)に樹脂層形成装置120や層厚規制装置130などの動作を制御する機能を持たせたものであっても良い。
【0122】
次に、本実施形態の定着ユニット12を用いて、シート状の透明の記録媒体上にレンチキュラーレンズを形成したレンチキュラー画像を形成する実施例について説明する。
【0123】
(実施例1)
実施例1は、定着装置として、図3に示す定着ユニット12を複合機(シャープ製、型式:MX4500FN)に搭載し、レンチキュラー画像を作製した。
【0124】
使用したトナーの構成は、
結着樹脂:ポリエステル樹脂(94.5部)、
帯電制御剤:ベンジル酸誘導体の金属酸化物(0.5部)、
ワックス:ポリエチレンワックス(5.0部)、
外添剤:小粒子径シリカをトナーに対して1.0部、及び酸化チタンをトナーに対して1.5部、としたものである。
【0125】
現像剤は、2成分現像剤で現像剤に対するトナー比率が8%の現像剤を作成したものである。
【0126】
レンズ形成ローラとして、加圧ローラ12bの構成は、外径30mm、内径0.5mm、胴部長さ315mmで、両端部を絞ったアルミ製の芯金を用い、その表面をレーザにて加工によりローラ周方向にピッチ約120μm、深さ40μmの凹状に湾曲した断面を有する溝を約300mmの幅で形成した。
加圧ローラ12bの表面には、レンズ用樹脂組成物である光透過性樹脂材料の離型性を確保するために、フッ素樹脂を厚さ約10μmにコートした。
【0127】
定着ベルト64は、外径50mmの定着ローラ12aに巻回されて、基層にポリイミド70μm、弾性層にシリコンゴム150μm、表層にPFAコート20μmを用いて構成した。
【0128】
定着ローラ12a及び加圧ローラ(レンズ形成ローラ)12bの内部には、それぞれのローラを内部から加熱するためにヒータランプ66にハロゲンランプを用いた。
【0129】
レンズ形成材料として光透過性樹脂材料の構成は、
樹脂:ポリエステル樹脂(ガラス転移点60℃)(57部)、
ワックス:カルナバワックス(融点60℃)(43部)、
としたものである。
【0130】
透明の記録媒体として、厚さ約130μmのA4サイズのPETシートを用いた。
光透過性基材上に厚さ約20μmのトナー層を形成した後、加圧ローラ12bに対向したノズル122としてラインヘッドノズルから、吐出温度130℃で加圧ローラ12b表面に光透過性樹脂材料を吐出し、定着ベルト64の表面温度を約170℃、加圧ローラ12bの表面温度を約120℃として、搬送速度(回転速度)を50mm/secの速度で搬送しながら、PETシートの表面にレンチキュラーレンズを形成するとともに、その裏面にトナー像の定着を行った。
【0131】
その結果、120μmピッチで高さが約30μmのレンズ部が全面に形成されたA4サイズのレンチキュラー画像を容易に形成することができた。
【0132】
(実施例2)
実施例2は、定着装置として、図7に示す定着ユニット212を用いて、レンチキュラー画像を作製した。
使用したトナーと現像剤の構成は実施例1と同様なものとした。
【0133】
レンズ形成ローラとして、加圧ローラ12bの構成は、外径40mm、肉厚2mm、胴部長さ315mmのアルミニウム製のローラに対して、その表面を機械的に加工して、ローラ周方向にピッチ約250μm、深さ約30μmの凹状に湾曲した断面を有する溝を約300mmの幅で形成した。
加圧ローラ12bの表面には、レンズ用樹脂組成物である光透過性樹脂材料の離型性を確保するために、フッ素樹脂を厚さ約10μmにコートした。
【0134】
定着ローラ212aは、外径29.8mm、内径23.8mm、肉厚3mmの中空構造のアルミ製の芯金上に、弾性体として3mmのシリコンゴム層を設け、表層には離型層として50μmのPFAチューブ層として構成したものである。
【0135】
加圧ローラ12b及び定着ローラ212aの内部、そして、定着ローラ212aの表層を加熱する外部加熱ベルト164を懸架する加熱ローラ160内部にヒータランプ66としてハロゲンランプを設けた。
それ以外の構成は実施例1と同様として、PETシートの表面にレンチキュラーレンズを形成するとともに、その裏面にトナー像の定着を行った。
【0136】
その結果、250μmピッチで高さが約30μmのレンズ部が全面に形成されたA4サイズのレンチキュラー画像を容易に形成することができた。
【0137】
以上のように構成したので、本実施形態によれば、画像形成装置100の定着ユニット12の構成として、加圧ローラ12bの表面に凹状に湾曲した断面を有する溝12b1を回転軸に沿った方向に複数列並んで形成し、加圧ローラ12bに近接して樹脂層形成装置120と層厚規制装置130とを配置して、加圧ローラ12bの表面に樹脂層形成装置120により光透過性樹脂材料を塗出して透明樹脂層を形成し、層厚規制装置130により透明樹脂層の層厚を調整するようにしたので、記録媒体82を介して定着ベルト64と加圧ローラ12bとを圧接することにより、記録媒体82の未定着トナー画像81が形成された表面とは反対の面に加圧ローラ12bから透明樹脂層を転写定着させてレンチキュラーレンズ構造を形成するとともに、未定着トナー画像81を記録媒体82の表面に定着させることができる。これにより、装置を大型化することなく省スペースで、トナー画像の品位低下を生じることなく、容易にレンチキュラー画像を形成することができる。
【0138】
また、本実施形態によれば、定着ユニット12の動作を制御する制御部140の構成として、記録媒体の厚さに対応して樹脂層形成装置120による光透過性樹脂材料の吐出量を制御する吐出量制御機能141と、記録媒体の厚さに対応して押圧部材132の動き量を制御して加圧ローラ12bと層厚規制体131との間隙を制御する隙間量制御機能142と、記録媒体の厚さに対応して定着ニップ部12cの温度を制御する定着ニップ温度制御機能143とを備えることで、記録媒体82の厚さに応じて最適な厚さのレンチキュラーレンズ110を形成することができる。
【0139】
尚、上述した実施形態では、本発明に係る画像形成装置の構成を図1に示すような画像形成装置100に適用した例について説明したが、定着装置を備える画像形成装置であれば、上述したような構成の画像形成装置や複写機に限定されるものではなく、その他の画像形成装置等に展開が可能である。
【0140】
以上のように、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
1 露光ユニット(露光装置)
2 現像装置
3 感光体ドラム(像担持体)
5 帯電器(帯電装置)
8 中間転写ベルトユニット(転写装置)
12,212 定着ユニット(定着装置)
12a,212a 定着ローラ(定着部材)
12b 加圧ローラ(加圧部材)
12b1 溝(レンチキュラーレンズ用の溝)
12c,212c 定着ニップ部
60 加熱ローラ
63 発熱体側サーミスタ
64 定着ベルト
65 加圧ローラ側サーミスタ
66 ヒータランプ
70 接離手段
81 未定着トナー画像
82 記録媒体
100 画像形成装置
110 透明樹脂層(レンチキュラーレンズ)
120 樹脂層形成装置(樹脂層形成手段)
121 レンズ成型材料ボトル(樹脂層形成手段)
122 ノズル(樹脂層形成手段)
130 層厚規制装置(層厚規制部材)
131 層厚規制体(層厚規制部材)
132 押圧部材(層厚規制部材)
140 制御部
141 吐出量制御機能
142 隙間量制御機能
143 定着ニップ温度制御機能
160 加熱ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上の未定着トナー画像を溶融して前記記録媒体上に定着させる定着部材と、前記記録媒体を前記定着部材に押し当てながら搬送する加圧部材とを備え、前記定着部材と前記加圧部材とを圧接することにより定着ニップ部を形成し、前記定着部材と前記加圧部材とを回転させることで前記記録媒体を搬送しながら前記定着ニップ部で未定着トナー画像を定着させる定着装置において、
前記記録媒体として光透過性を有する記録媒体を用いて、
前記加圧部材に近接配置され前記加圧部材の表面に光透過性樹脂材料を塗出して透明樹脂層を形成する樹脂層形成手段と、前記樹脂層形成手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記加圧部材の表面には、前記樹脂層形成手段により形成された透明樹脂層の加圧部材側がレンチキュラーレンズ構造となるように凹状に湾曲した断面を有する溝が周方向または回転軸に沿った方向に複数列並んで形成され、
前記記録媒体を介して前記定着部材と前記加圧部材とを圧接することにより、前記定着ニップ部において、前記記録媒体の未定着トナー画像が形成された表面とは反対の面に前記加圧部材から透明樹脂層を転写定着させてレンチキュラーレンズ構造を形成するとともに、前記未定着トナー画像を前記記録媒体の表面に定着させることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加圧部材は、芯金部とその外周に離型層を有するローラ部材、または無端状のベルト部材で構成され、
前記定着部材は、ローラ部材または無端状のベルト部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記光透過性樹脂材料は、常温では固体であって、
前記樹脂層形成手段は、前記光透過性樹脂材料を加熱溶融する工程と、溶融した前記光透過性樹脂材料を前記加圧部材の表面に向けて塗出して前記加圧部材表面上に光透過性樹脂層を形成する工程とを備えたホットメルトインクジェット方式により前記透明樹脂層を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加圧部材の外周部において、前記定着ニップ部よりも記録媒体搬送方向上流側で、且つ、前記樹脂層形成手段よりも記録媒体搬送方向下流側で、前記加圧部材に近接して、前記光透過性樹脂層の厚さを規制する層厚規制部材を配置し、
前記制御手段は、前記記録媒体の厚さに対応して前記樹脂層形成手段による前記光透過性樹脂材料の吐出量を制御する機能と、前記記録媒体の厚さに対応して前記加圧部材と前記層厚規制部材との間隙を制御する機能と、前記記録媒体の厚さに対応して前記定着ニップ部の温度を制御する機能とを備えることを特徴とする請求項1から3のうちの何れか一項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ホットメルトインクジェット方式により吐出される光透過性樹脂材料は、相変化温度が60℃以上である光透過性樹脂及びワックスからなることを特徴とする請求項3または4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記加圧部材は、内部に加熱源を有し、表面に塗出された光透過性樹脂材料を溶融させることを特徴とする請求項1から5のうちの何れか一項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記定着装置は、前記加圧部材と前記定着部材とを接離する接離手段を備え、
前記接離手段は、前記加圧部材と前記定着部材とによる定着処理が終了した後、前記加圧部材と前記定着部材とを離間するように構成されることを特徴とする請求項1から6のうちの何れか一項に記載の定着装置。
【請求項8】
表面に静電潜像が形成される像担持体と、像担持体表面を帯電させる帯電装置と、前記像担持体表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記像担持体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像装置と、前記像担持体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記転写されたトナー像を記録媒体に定着させる定着装置とを備え、電子写真方式によりトナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、
前記定着装置として請求項1から7のうちの何れか一項に記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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