説明

定着装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】分離部材と、分離部材を取り付ける筐体とが複雑な構成にならず、分離部材を筐体に簡単に取り付けられる定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置13は、記録媒体を加熱ローラー31の表面から分離させる分離爪部41と、該分離爪部41を加熱ローラー31の表面に対して接離可能に回動させる回動部42とを有する分離部材40と、回動部42を回動可能に支持するとともに加熱ローラー31を回転可能に支持する筐体50と、分離爪部41を加熱ローラー31の表面側に向けて付勢するバネ部材65と、を備える。分離部材40を筐体50に仮止めした後、加熱ローラー31を筐体50に取り付け、さらにバネ部材65を分離部材40と筐体50に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、定着処理後の記録媒体を加熱部材の表面から分離させる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いる定着装置では、加熱部材と加圧部材との間のニップ部に未定着トナー像を担持した記録媒体が送り込まれ、加熱部材による加熱作用によって記録媒体上のトナーが溶融されると同時に、溶融したトナー像に対して加圧部材から加圧作用が付与されることによって記録媒体上にトナー像が定着される。
【0003】
この定着装置では、トナー像が定着された記録媒体が加熱部材に巻き付くのを防ぐために分離爪等からなる分離部材を設けることがある。分離部材は加熱部材の表面に当接或いは所定の間隔を隔てて対向させて定着装置の筐体に取り付けられる。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の定着装置は、第1筐体と第2筐体とを備え、第1筐体には加熱ローラー及び加圧ローラーが回転可能に取り付けられ、第2筐体には分離部材が回動可能に取り付けられる。分離部材は分離爪と回動軸とを有し、分離部材と第2筐体との間には分離爪を加熱ローラー表面側に付勢するバネ部材が設けられる。第2筐体にはスリットとスリットの奥側に配置される軸受部とが形成される一方、分離部材の回動軸には平坦部と円弧部とを有する小判状軸が形成される。また回動軸の外周部には曲率を有する突起状の凸部が形成される一方、第2筐体には凸部に対向して斜行リブが形成され、回動軸をバネ部材の付勢力に抗して回動させたときに凸部が斜行リブに接触しながら乗り超えるように構成される。分離部材を第2筐体に取り付けるには、小判状軸の円弧部が第2筐体の軸受部に到着するまで小判状軸の平坦部を第2筐体のスリットに対向させて挿入する。次に、小判状軸の円弧部が第2筐体の軸受部に到着した状態で、回動軸の凸部が第2筐体の斜行リブを乗り越えるまで回動軸を回動させる。これによって、回動軸は、凸部が斜行リブを乗り越えた所定の範囲で回動可能となるが、バネ部材によって斜行リブ側に付勢された状態で保持され、この状態にて分離部材は第2筐体に支持される。そして、バネ部材の付勢力に抗して回動軸の凸部が斜行リブから所定の範囲で離れる側に回動させて、分離部材を取り付けた第2筐体を第1筐体に装着すると、分離部材はバネ部材によって加熱ローラーの表面に付勢され加熱ローラーの表面に当接するように取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−116653号公報(段落[0020]〜[0025]、第8図、第9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の定着装置では、分離部材の回動軸には凸部を形成することが必要であり、また第2筐体には斜行リブを形成する必要があり、分離部材及び第2筐体の構成が複雑になる。さらに回動軸の凸部が第2筐体の斜行リブを乗り越えるまで分離部材の回動軸を強制的に回動させなくてはならず、また、加熱ローラーを取り付けた第1筐体に、分離部材を取り付けた第2筐体を装着する際に、加熱ローラーの表面に対して分離部材の位置が不安定となり、分離部材が取り付け難いという不都合があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、分離部材と、分離部材を取り付ける筐体とが複雑な構成にならず、分離部材を筐体に簡単に取り付けられる定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1の発明は、加熱手段により加熱される加熱部材と、該加熱部材に圧接される加圧部材と、該加圧部材及び前記加熱部材を回転可能に支持する筐体と、を有し、前記加熱部材及び前記加圧部材により形成されるニップ部で未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持して、記録媒体上の未定着トナー像を溶融定着する定着装置において、前記加熱部材の表面に当接した状態にて定着処理後の記録媒体を前記加熱部材の表面から分離させる分離爪部と、前記筐体に形成された支持部に回動可能に支持され、前記分離爪部を前記加熱部材の表面に対して接離可能に回動させる回動部と、を有する分離部材と、該分離部材に一端部が係止されるとともに前記筐体に他端部が係止され前記分離爪部を前記加熱部材の表面側に向けて付勢するバネ部材と、を備え、前記回動部は、係合部と、該係合部より小さい間隔で互いに対向する案内面とを有し、前記支持部は、前記係合部を回動可能に係合させる係合支持部と、前記係合部よりも小さく、前記案内面の間隔よりも大きい間隔で前記係合支持部に向かって延びる挿入開口部とを有してなり、前記案内面を前記挿入開口部の内壁面に対向させた状態で前記挿入開口部に挿入して前記係合部を前記係合支持部に到達させた後、前記加熱部材を前記筐体に装着することにより、前記分離部材が所定角度だけ回動して前記案内面が前記挿入開口部の内壁面に対向する位置から退避することを特徴としている。
【0009】
また、第2の発明では、上記の定着装置において、前記回動部は、円筒状をなす第1軸部と、該第1軸部の両端部に延設され、互いに対向する一対の円弧部と前記第1軸部の直径より小さい間隔で互いに対向する一対の平坦部とを有する第2軸部とからなり、前記平坦部を前記案内面として前記第1軸部及び前記第2軸部を前記挿入開口部に挿入するとき、前記第1軸部は前記挿入開口部を形成する一方の内壁面に当接しながら前記係合支持部に到達し、前記加熱部材を前記筐体に装着したとき、前記分離部材が所定角度だけ回動して前記第1軸部の外周面の一部と前記第2軸部の一方の円弧部とが前記係合部として前記係合支持部に係合することを特徴としている。
【0010】
また、第3の発明では、前記構成の定着装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、分離部材を定着装置に取り付けるとき、分離部材の係合部が筐体の係合支持部に到着するまで、分離部材の案内面を筐体の挿入開口部に挿入する。その後、加熱部材を筐体に装着し、さらにバネ部材を筐体と分離部材とに取り付ける。このような工程順で分離部材を取り付けることで、加熱部材によって分離部材の回動が規制され、加熱部材が分離部材の抜け止めとしての役割を果たすため、分離部材及び筐体に特別な形状や部材を付設することなく簡単な構成にて、分離部材を定着装置に簡単に取り付けられる。さらに組み立て作業中における分離部材の脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る定着装置を備える画像形成装置の全体構成を概略的に示す図
【図2】実施形態に係る定着装置の内部構成を示す側面図
【図3】実施形態に係る分離部材の回動部を筐体の支持部に支持する構成を示す斜視図
【図4】実施形態に係る分離部材を示す斜視図
【図5】実施形態に係る筐体の支持部を示す斜視図
【図6】実施形態に係る分離部材を筐体に取り付ける第1の工程を示す側面図
【図7】実施形態に係る分離部材を筐体に取り付ける第2の工程を示す側面図
【図8】実施形態に係る分離部材を筐体に取り付ける第3の工程を示す側面図
【図9】実施形態に係る分離部材を筐体に取り付ける第4の工程を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1は、胴内排紙方式の画像形成装置の全体構成を示す図である。画像形成装置1の下部には、カセットタイプの用紙給紙部10が配設されている。用紙給紙部10は上下2段の給紙カセット10a、10bを有し、給紙カセット10a、10bには印刷前の用紙が積載して収容されている。給紙カセット10a、10bに収容された用紙は、選択された給紙カセット10a(10b)から用紙ピックアップローラー10d(10e)により1枚ずつ繰り出され、繰り出された用紙は用紙搬送路11へと送り出される。
【0015】
画像形成装置1の右側面には、手差しトレイ10cが配設されている。手差しトレイ10cは、給紙カセット10a、10bと異なるサイズの用紙を載置可能である。手差しトレイ10cに載置された用紙は用紙搬送路11へと送り出される。
【0016】
用紙搬送路11は、用紙給紙部10の左方にて装置本体2の上下方向に延設される。用紙給紙部10から送り出された用紙が、用紙搬送路11上方のレジストローラー対12に搬送される。レジストローラー対12は、用紙にトナー像を転写するタイミングと同期をとって、画像形成部3に向けて用紙を送り出す。
【0017】
画像形成装置1の上部には原稿読取装置6が配設され、原稿読取装置6の上面には、プラテン(原稿押さえ)24が開閉可能に設けられ、さらに、プラテン24上には原稿搬送装置27が付設されている。原稿のコピーを行う場合、原稿搬送装置27に載置された原稿が1枚ずつ分離されて原稿読取部に送り出され、原稿読取装置6によって原稿の画像データが読み取られる。
【0018】
画像形成装置1の略中央部には、画像形成部3が配設されている。画像形成部3は、像担持体である感光体5を備え、さらに感光体5の周辺にその回転方向(図中の矢印A方向)に沿って順に、帯電部4と、露光ユニット7と、現像部8と、転写ローラー19、及びクリーニング部18を備える。現像部8へのトナーの供給はトナーコンテナ9から行われる。クリーニング部18は、ブレードやブラシ或いは研磨ローラー等のクリーニング部材を有し、クリーニング部材によって感光体5の表面に残留するトナーを剥ぎ取り、回収する。
【0019】
感光体5の表面が帯電部4によって所定の極性および電位で一様に帯電されると、 露光ユニット7は、原稿読取装置6によって読み取られた原稿の画像データに基づいて、感光体5上に原稿画像の静電潜像を形成する。
【0020】
現像部8は、帯電したトナーを感光体5の表面に供給し、感光体5上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。感光体5上のトナー像は転写ローラー19によって用紙上に転写される。トナー像が転写された用紙は、用紙搬送路11の上方に配設される定着装置13へと搬送される。用紙にトナー像が転写された後、感光体5の表面に残留するトナーがクリーニング部18によってクリーニングされて回収され、さらに図示しない除電部によって感光体5の表面の残留電荷が除去される。
【0021】
定着装置13は、加熱ローラー31と加圧ローラー32とを有し、トナー像が転写された用紙を加熱ローラー31及び加圧ローラー32によって加圧加熱し、用紙上のトナー像を溶融定着させる。トナー像が定着された用紙は、用紙搬送路11において右上方に搬送され排出ローラー対20によって排出部である胴内排紙部17に排出される。
【0022】
定着装置13と排出ローラー対20との間の用紙搬送路11から分岐して反転搬送路16が設けられる。反転搬送路16は、用紙の一方の面にトナー像が定着された後、必要に応じて用紙の他方の面にもトナー像を形成するときに用いられるものであり、定着装置13の上方から定着装置13の周りを覆い、さらに用紙搬送路11と装置本体2の側面2aとの間を下方に延設され、レジストローラー対12の近傍の用紙搬送路11に合流している。
【0023】
両面印刷を行う場合には、一方の面にトナー像が定着された用紙は、胴内排紙部17に排出させる途中において、用紙搬送路11と反転搬送路16との分岐部を用紙の後端が通過したタイミングで排出ローラー対20を逆回転させる。これによって、用紙がスイッチバックされ、用紙の印刷面が表裏逆向きにされた状態で反転搬送路16に送られ、反転搬送路16から再び用紙搬送路11のレジストローラー対12に搬送される。その後、画像形成部3にて用紙の他方の面にもトナー像が転写されると、用紙は定着装置13によって定着処理され胴内排紙部17に排出される。
【0024】
図2は、上述の画像形成装置1に用いられる定着装置13の内部構成を示す側面図である。定着装置13は、ローラー定着方式であり、加熱部材である加熱ローラー31と、加圧部材である加圧ローラー32と、分離部材40と、筐体50とを備える。加熱ローラー31と加圧ローラー32及び分離部材40は筐体50に支持される。
【0025】
加熱ローラー31は、熱伝導性に優れたアルミや鉄等の金属からなる円筒形状の芯金上に、フッ素樹脂のコーティングやチューブを被覆したものが用いられる。加熱ローラー31の芯金内部にハロゲンランプやキセノンランプ等のヒーター(図略)が設けられ、加熱ローラー31はヒーターによって所定の温度に加熱される。
【0026】
また、加熱ローラー31は筐体50に回転可能に支持される。加熱ローラー31の軸方向の両端部には一対の回転軸31aが設けられ、回転軸31aは筐体50に形成した軸受部に回転可能に係合している。
【0027】
加圧ローラー32は、合成樹脂、金属その他材料から構成される円筒形状の基材上にシリコンゴム等の弾性層が形成され、この弾性層の表面がフッ素樹脂等の離形性に優れた樹脂で覆われたものが用いられる。
【0028】
また、加圧ローラー32は筐体50に回転可能に支持される。加圧ローラー32の軸方向の両端部には一対の回転軸32aが設けられ、回転軸32aは筐体50に形成した軸受部に回転可能に係合している。さらに、加圧ローラー32は加熱ローラー31に所定の圧力で圧接されて、加圧ローラー32がモーター等の駆動源によって回転駆動させられると、加熱ローラー31は従動回転する。尚、加熱ローラー31が駆動源によって回転駆動させられ、加熱ローラー31の回転により加圧ローラー32が従動回転する構成にしてもよい。
【0029】
加熱ローラー31と加圧ローラー32とが互いに逆回転しながら当接する部分には、ニップ部Nが形成される。用紙が用紙搬送方向の上流側(図2の下側)からニップ部Nに搬送され、ニップ部Nにおいて、加熱ローラー31と加圧ローラー32によって加熱及び加圧されることにより、用紙上の粉体状態のトナーが熱溶融して定着される。
【0030】
分離部材40は、定着処理後の用紙を加熱ローラー31の表面から分離するものであり、加熱ローラー31の軸方向に複数個並べて設けられ、分離爪部41と、回動部42と、バネ掛け部43とを有する。
【0031】
分離爪部41は、加熱ローラー31の回転方向(図2の時計回り方向)に対してニップ部Nの下流側に配設され、また、分離爪部41の先端部は加熱ローラー31の表面に当接して配置される。ニップ部Nにて定着処理された用紙は、分離爪部41によって加熱ローラー31の表面から分離された後、用紙搬送方向の下流側(図2の上側)に搬送される。
【0032】
回動部42は、分離爪部41を加熱ローラー31の表面に対して接離可能に回動し、筐体50に形成された支持部52に回動可能に支持される。
【0033】
バネ掛け部43は、回動部42に対して分離爪部41の反対側に形成され、バネ部材65の一端のフック部を係止する。バネ部材65は引張コイルスプリングからなり、バネ部材65の他端のフック部は筐体50に形成した突片部53に係止される。分離部材40は、バネ部材65によって回動部42の回りを図2の反時計回り方向に付勢され、これによって分離爪部41は加熱ローラー31の表面に当接しており、加熱ローラー31の表面に付着した用紙を加熱ローラー31の表面から分離させることができる。
【0034】
図3〜図5を用いて分離部材40の回動部42を筐体50の支持部52に支持する構成について説明する。図3は、回動部42を支持部52に支持する構成を示す斜視図であり、図4は分離部材40の構成を示す斜視図であり、図5は支持部52の構成を示す斜視図である。
【0035】
図3に示すように、分離部材40は、回動部42の軸方向の略中央部に分離爪部41とバネ掛け部43が設けられ、軸方向の両端部側に一対の回動部42が設けられる。
【0036】
筐体50には、回動部42及びバネ掛け部43を収容する空間が形成され、その空間内には、回動部42に対向して一対の支持部52が形成される。図3の紙面の表面側から分離部材40を筐体50の該空間に挿入し、回動部42を支持部52に回動可能に取り付けることが可能である。
【0037】
図4に示すように、回動部42は、第1軸部である円筒軸42aと第2軸部である小判状軸42bとを有して構成される。円筒軸42aは、分離爪部41を形成した基部から軸方向の端部側に延びる丸棒で構成される。小判状軸42bは、円筒軸42aからさらに軸方向の端部側に延び、互いに対向する一対の平坦部42cと、互いに対向する一対の円弧部42d、42eとを有して構成される。
【0038】
一対の平坦部42cは、円筒軸42aの直径より小さいサイズの幅を有する平面で形成される。一対の円弧部42d、42eは、円筒軸42aの直径より小さいサイズの円弧面で形成される。一対の平坦部42c、42cは、バネ部材65(図2参照)によって分離爪部41が付勢される方向と略同じ方向に互いに平行となるように配置される。一対の円弧部42d、42eは、バネ部材65によって分離爪部41が付勢される方向に対して略直交する方向に互いに平行となるように配置される。また円弧部42dは分離爪部41の先端側を向くように小判状軸42bに配置される一方、円弧部42eは分離爪部41の先端と反対側を向くように小判状軸42bに配置される。尚、一対の円弧部42d、42eは、円筒軸42aの直径と同じサイズの円弧面であってもよい。
【0039】
小判状軸42bの円弧部42dと、円筒軸42aの外周面の一部とは係合部を構成し、分離部材40が筐体50に取り付けられると、この係合部は筐体50の支持部52(図2参照)に回動可能に係合する。また、小判状軸42bの一対の平坦部42c、42cは案内面を構成し、分離部材40を筐体50に取り付ける際に、回動部42を支持部52に向けて案内することになる。
【0040】
図5に示すように、筐体50の支持部52は、一対の第1係合支持部52aと、一対の第2係合支持部52b(図5の右側の第2係合支持部52bは不可視)とを有して構成される。第1係合支持部52a及び第2係合支持部52bは回動部42を回動可能に係合させる係合支持部を構成する。第1係合支持部52aは入口側から奥側に向かって下側に傾斜した斜面で形成される。第2係合支持部52bは、支持部52において第1係合支持部52aよりも外側(回動部42の収容空間の両端側)に配置され、小判状軸42bの円弧部42d、42eとほぼ同じサイズの半径を有する円弧状に形成される。
【0041】
分離部材40を筐体50に取り付けると、回動部42の円筒軸42a(図4参照)は第1係合支持部52aに係合するとともに、回動部42(小判状軸42b)の円弧部42d(図4参照)は第2係合支持部52bに係合し、回動部42は支持される。
【0042】
従って、第1係合支持部52aと第2係合支持部52bと(係合支持部)は、回動部42の軸方向からの断面視では図5に示す距離Dだけ離間していることになり、この距離Dは、小判状軸42bの円弧部42dと円筒軸42aの外周面の一部(係合部、図4参照)との間の距離Dに対して略同じ(係合部が回動可能な程度で略同じ)サイズに設定されている。
【0043】
第2係合支持部52bの近傍には、壁面52eが形成される。壁面52eは、支持部52の側方から見て第1係合支持部52aに平行に形成され、第1係合支持部52aの入り口側の壁面とともに挿入開口部52cとなる空隙を形成する。挿入開口部52cは、第1係合支持部52a及び第2係合支持部52b(係合支持部)に向かって延び距離Dより小さい幅にて形成され、小判状軸42bの二つの平坦部42c(図4参照)を挿入開口部52cの内壁面(案内面)に対向させた状態で小判状軸42bを挿入可能に案内するものである。
【0044】
第1係合支持部52aの下方には当接面52gが形成される。当接面52gは第1係合支持部52aから下側に延長して配置される垂直面である。分離部材40が筐体50に取り付けられたとき、円筒軸42a(図4参照)の外周面が第1係合支持部52aとともに当接面52gに当接する。
【0045】
一対の第1係合支持部52a、52aの間には、下側を開放した開口52fが形成される。この開口52fは、分離部材40が回動したとき、分離部材40のバネ掛け部43(図4参照)と筐体50との接触を回避するものである。
【0046】
分離部材40は図6〜図9の工程順で筐体50に取り付けられる。図6〜図9は分離部材40を筐体50に取り付けるための各工程を示す側面図である。
【0047】
図6に示すように、筐体50に加熱ローラー31(図2参照)を取り付けていない状態にて、分離部材40の分離爪部41を下側にして回動部42を挿入開口部52cの入り口に対向させると、小判状軸42bの二つの平坦部42cが挿入開口部52cの内壁面に対向する方向に配置される。この状態から回動部42を挿入開口部52cに挿入する。回動部42を挿入すると、小判状軸42bの平坦部42cは挿入開口部52c内を第1及び第2係合支持部52a、52bに向かって移動するとともに、円筒軸42aは、第1係合支持部52aから入口側に延長される壁面52dに当接しながら第1及び第2係合支持部52a、52bに移動する。この構成によって、円筒軸42aを壁面52dに当接させた状態にて挿入することが可能であるため、回動部42を第1及び第2係合支持部52a、52bに向けて容易に且つ確実に移動させることができる。
【0048】
図7に示すように、小判状軸42bの平坦部42cを挿入開口部52cの内壁面に対向させて、円筒軸42aが当接面52gに当接するまで、回動部42を挿入すると、回動部42が第1及び第2係合支持部52a、52bに到達する。次に、回動部42が第1及び第2係合支持部52a、52bに到達した状態にて、図8に示すように、分離部材40を時計回り方向に略90度回動させる。
【0049】
図8に示す状態では、円筒軸42aが第1係合支持部52aに支持されるとともに、小判状軸42bの円弧部42dが第2係合支持部52bに支持される。分離部材40をこの状態に保持し、加熱ローラー31の回転軸31aを筐体50の軸受部に係合させ、加熱ローラー31を筐体50に取り付ける。
【0050】
次に図9に示すように、バネ部材65を分離部材40及び筐体50との間で作用させるために、バネ部材65の一方のフックを分離部材40のバネ掛け部43に掛けて、バネ部材65の他方のフックを筐体50の突片部53に掛ける。バネ部材65が分離部材40及び筐体50に係止されると、分離部材40はバネ部材65によって回動部42の回りを図9の反時計回り方向に付勢される。これによって分離爪部41は加熱ローラー31の表面に当接する(図2参照)。このとき、回動部42は、図9の状態から分離爪部41が加熱ローラー31の表面に当接まで、反時計回り方向に回動するが、円筒軸42aは第1係合支持部52aに支持され、また小判状軸42bの円弧部42dが第2係合支持部52bに支持された状態にある(図8の状態)。次に、加圧ローラー32(図2参照)を筐体50に取り付けることで定着装置13の組立が完了する。従って、加熱ローラー31によって分離部材40の反時計回り方向の回動が規制され、加熱ローラー31が分離部材40の抜け止めとしての役割を果たすため、分離部材40と筐体50に特別な形状や部材を付設することなく簡単な構成にて、分離部材40を筐体50に簡単に取り付けることができ、さらに組み立て作業中における分離部材40の脱落を防止することができる。
【0051】
尚、上記実施形態では、ローラー定着方式に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、ベルト定着方式、また電磁誘導により加熱ローラー或いはベルトを加熱する方式に適用してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、係合部は円筒軸42aの外周面の一部と小判状軸42bの円弧部42dとで構成したが、本発明はこれに限らず、回動部42を小判状軸42bで構成し、また案内面を小判状軸42bの二つの平坦部42cで構成し、さらに係合部を小判状軸42bの円弧部42d、42eで構成してもよい。回動部42が上記のように構成される場合、第1係合支持部52aと第2係合支持部52bを小判状軸42bの円弧部42d、42eに係合させるために、第2係合支持部52bは、回動部42の軸方向に第1係合支持部52aに対向する位置まで延ばした構成にするとよい。或いは第1係合支持部52aを軸方向に第2係合支持部52bまで延ばした構成にするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、定着処理後の記録媒体を加熱部材の表面から分離させる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 画像形成装置
13 定着装置
31 加熱ローラー(加熱部材)
32 加圧ローラー(加圧部材)
40 分離部材
41 分離爪部
42 回動部
42a 円筒軸(第1軸部、係合部)
42b 小判状軸(第2軸部)
42c 平坦部(案内面)
42d 円弧部(係合部)
42e 円弧部
43 バネ掛け部
50 筐体
52 支持部
52a 第1係合支持部(係合支持部)
52b 第2係合支持部(係合支持部)
52c 挿入開口部
52d、52e 壁面
52f 開口
52g 当接面
53 突片部
65 バネ部材
N ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段により加熱される加熱部材と、該加熱部材に圧接される加圧部材と、該加圧部材及び前記加熱部材を回転可能に支持する筐体と、を有し、
前記加熱部材及び前記加圧部材により形成されるニップ部で未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持して、記録媒体上の未定着トナー像を溶融定着する定着装置において、
前記加熱部材の表面に当接した状態にて定着処理後の記録媒体を前記加熱部材の表面から分離させる分離爪部と、前記筐体に形成された支持部に回動可能に支持され、前記分離爪部を前記加熱部材の表面に対して接離可能に回動させる回動部と、を有する分離部材と、
該分離部材に一端部が係止されるとともに前記筐体に他端部が係止され前記分離爪部を前記加熱部材の表面側に向けて付勢するバネ部材と、を備え、
前記回動部は、係合部と、該係合部より小さい間隔で互いに対向する案内面とを有し、
前記支持部は、前記係合部を回動可能に係合させる係合支持部と、前記係合部よりも小さく、前記案内面の間隔よりも大きい間隔で前記係合支持部に向かって延びる挿入開口部とを有してなり、
前記案内面を前記挿入開口部の内壁面に対向させた状態で前記挿入開口部に挿入して前記係合部を前記係合支持部に到達させた後、前記加熱部材を前記筐体に装着することにより、前記分離部材が所定角度だけ回動して前記案内面が前記挿入開口部の内壁面に対向する位置から退避することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記回動部は、円筒状をなす第1軸部と、該第1軸部の両端部に延設され、互いに対向する一対の円弧部と前記第1軸部の直径より小さい間隔で互いに対向する一対の平坦部とを有する第2軸部とからなり、
前記平坦部を前記案内面として前記第1軸部及び前記第2軸部を前記挿入開口部に挿入するとき、前記第1軸部は前記挿入開口部を形成する一方の内壁面に当接しながら前記係合支持部に到達し、前記加熱部材を前記筐体に装着したとき、前記分離部材が所定角度だけ回動して前記第1軸部の外周面の一部と前記第2軸部の一方の円弧部とが前記係合部として前記係合支持部に係合することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114099(P2013−114099A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261199(P2011−261199)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】