説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】画像形成装置の定着装置において、加熱ローラの温度を検出するサーミスタの応答性低下時に、異常高温への温度上昇を防止する。
【解決手段】加熱ローラ1の内部に加熱ヒータ3(中央配光ヒータ31、端部配光ヒータ32)を配設する。加熱ローラ1の記録用紙通紙部1aの中央部と片側端部に、接触式のサーミスタ4,5を配設する。制御部(16)により、サーミスタ4で加熱ローラ1の中央部の表面温度を検出し、サーミスタ5で加熱ローラ1の端部の表面温度を検出する。制御部(16)により加熱ヒータ3への通電を制御する。サーミスタ4とサーミスタ5のうち、いずれかがウォームアップ完了温度に達したら加熱ヒータ3の加熱を停止し、両サーミスタで検出される検出温度の温度差を取得し、記憶手段に格納する。温度差により検出温度の低い方のサーミスタの検出温度を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、または、それらの複合機等の画像形成装置に設置され、転写用紙に付着している未定着トナーを加熱溶融して定着する熱ローラ方式の定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ装置等の画像形成装置に使用される定着装置は、その加熱ローラ内側にハロゲンヒータ等の発熱装置を内装し、この加熱ローラを加圧ローラと圧接してニップ部を形成している。このような定着装置は、ニップ部での圧力と発熱装置からの輻射熱により、上記ニップ部に送り込まれた転写用紙上のトナー像を溶融し、定着させるものである。一方、転写紙に定着されることなく加熱ローラに付着したトナーはクリーニング部材により除去される。
【0003】
また、高速、省電力の画像形成装置においては、速やかに定着装置の温度を上昇させ転写を可能にするために加熱ローラの肉厚は薄く、加熱ローラの温度を検出するためのサーミスタは、加熱ローラの用紙通紙部分の中央部と、用紙通紙部分の端部とに、それぞれ接触させて配置させている。前記サーミスタにより加熱ローラの表面温度を測定し、その測定結果に基づいて加熱ローラ中央部、端部の熱源(発熱装置の各熱源)の制御が行われる。このような定着装置の温度制御を行う技術が、例えば、特開平11−2993号公報(特許文献1)、特開平11−2992号公報(特許文献2)に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭酸カルシウム含有量が多い用紙での定着時においては、用紙紙粉、トナーが上記サーミスタの温度検知部に堆積する事により、加熱ローラから温度検知部が浮き、サーミスタの応答性が低下する。そのため加熱ローラ表面の実温度が制御温度(目標温度)より高くなり、定着時の画像異常、異常高温による加圧ローラの変形などの不具合が発生してしまう。
【0005】
本発明は、加熱ローラの温度を検出するサーミスタの応答性低下時において、異常高温への温度上昇を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の定着装置は、トナー像を記録用紙に定着するための薄肉の加熱ローラの記録用紙通紙部の中央部及び端部に接触式のサーミスタを有し、前記加熱ローラ内の軸方向中央に発光部を持つ中央配光ヒータと、前記加熱ローラの軸方向端部に発光部を持つ端部配光ヒータと、中央配光ヒータ及び端部配光ヒータにより加熱ローラの温度を制御する制御手段とを有する定着装置であって、前記制御手段は、当該定着装置のウォームアップ中に前記サーミスタで検出される検出温度のいずれかがウォームアップ完了温度に達したら、前記中央配光ヒータ及び端部配光ヒータの加熱を停止するとともに、前記両サーミスタで検出される検出温度の温度差を取得し、記憶手段に格納することを特徴とする。
【0007】
請求項2の定着装置は、請求項1に記載の定着装置であって、前記制御手段は、前記両サーミスタの検出温度の前記温度差が、所定温度以上の場合、直ちに加熱ローラのウォームアップを完了させる制御を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3の定着装置は、請求項1または2に記載の定着装置であって、前記制御手段は、前記ウォームアップ完了後の前記両サーミスタの検出温度における低温側の通紙温度制御を、前記ウォームアップ完了時の両サーミスタの前記温度差で補正する制御を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4の画像形成装置は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の定着装置によれば、ウォームアップ完了前に両サーミスタによる検出温度の温度差を取得しているため、異常検出の防止ができ、記憶手段に格納することにより応答性が低下したサーミスタを制御させる補正値を取得することができる。
【0011】
請求項2の定着装置によれば、請求項1の効果に加え、強制的にウォームアップ完了をさせることにより、加熱ローラが異常高温となるのを防止することができる。
ができる。
【0012】
請求項3の定着装置によれば、請求項1または2の効果に加え、当該サーミスタの制御温度を補正することにより、定着時の画像異常の不具合を起こさず、かつ、生産性を落とすことなく通紙可能とすることができる。
【0013】
請求項4の画像形成装置によれば、請求項1乃至3のいずれか一項の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の定着装置の用紙搬送方向に対して横から見た要部断面図である。
【図2】図1のA−A断面図及びB−B断面図である。
【図3】実施形態の定着装置の加熱制御回路の回路図である。
【図4】実施形態の定着装置を備えた実施形態の画像形成装置の模式図である。
【図5】実施形態における初期の加熱ローラのウォームアップ時のサーミスタの検知温度及び、加熱ローラの表面実測温度の関係を示すグラフである。
【図6】実施形態におけるサーミスタの応答性低下時の温度差を示す図である。
【図7】実施形態における初期のウォームアップ時の2つのサーミスタの検知温度を示すグラフである。
【図8】実施形態における通常応答をしているサーミスタと応答性低下サーミスタの検知温度を比較して示すグラフである。
【図9】実施形態における2つのサーミスタの検知温度に基づくウォームアップ完了の制御時の温度変換を示すグラフである。
【図10】実施形態における低温側のサーミスタの検知温度を温度差で補正する例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、本発明は以下述べるものに限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。図1は本発明の実施形態の定着装置の用紙搬送方向に対して横から見た要部断面図、図2は図1のA−A断面図(図2(A) )及びB−B断面図(図2(B) )、図3は同定着装置の加熱制御回路の回路図、図4は同定着装置を備えた実施形態の画像形成装置の模式図である。
【0016】
図4に示す実施形態の画像形成装置は、実施形態の定着装置10、自動原稿送り装置20、読み取りユニット30、書込ユニット40、画像形成部50、用紙送り出しユニット60、給紙装置70及び後処理ユニット80を備えて構成されている。
【0017】
自動原稿送り装置20は、ベルト送り装置により原稿載置板20a上の原稿Mを読み取りユニット30のコンタクトガラス30a上に送り出すとともに、画像読み取りユニット30により反射像が読み取られた原稿Mをコンタクトガラス30a上から排出する。読み取りユニット30はコンタクトガラス30a上の原稿Mを照明して画像読取ユニット30bによって読み取り、光信号から電気信号に変換して図示しない画像処理部に出力する。
【0018】
給紙装置70は複数の用紙Sを収容しており、指定された一つの給紙装置70から用紙Sが給紙コロ70aにより用紙送り出しユニット60に送り出される。用紙送り出しユニット60は用紙Sを画像形成部50側のレジストローラ60aに送り出す。そして、用紙Sはレジストローラ60aを介して画像形成部50に向けて送り出される。
【0019】
書込ユニット40は、図示しな画像処理部からの画像信号により、レーザ出力ユニット40aから照射したレーザ光をポリゴンミラー等の光学系を介して、画像形成部50の感光体ドラム50aの外周面上に集光結像し、感光体ドラム50aに対して露光走査する。これにより、書込ユニット40は、感光体ドラム50aの外周面上に静電潜像を形成する。画像形成部50は、現像装置50bがトナーを感光体ドラム50aの外周面に付着させて静電潜像を現像し、レジストローラ60aから送り出された用紙Sに対して、感光体ドラム50aのトナーを転写する。そして、用紙Sは定着装置10によりトナー像が定着され、定着が完了した用紙Sは後処理ユニット80でソートやステープルなどの所望の後処理が行われる。
【0020】
図1及び図2に示すように、定着装置10は、定着部材としての薄肉の加熱ローラ1と、加圧部材としての加圧ローラ2とを有し、加圧ローラ2は加熱ローラ1に圧接される。加熱ローラ1の内部には、例えば2本のハロゲンヒータからなる加熱ヒータ3が配設されている。この加熱ヒータ3の2本のハロゲンヒータのうち、一本は、加熱ローラ1の軸方向の略中央部における発光パワーが大きな発光部を持つ中央配光ヒータ31であり、他の1本は、加熱ローラ1の軸方向の両端部における発光パワーが大きな発光部を持つ端部配光ヒータ32である。このように配光された中央配光ヒータ31と端部配光ヒータ32が用いられるので、熱輻射の効率が良く、加熱ローラ1の昇温時間を短縮させることが可能になる。そして、加熱ヒータ3への通電制御により、加熱ローラ1の表面温度を所定の温度にし、図1に示すように、加熱ローラ1と加圧ローラ2とで形成するニップ部に、未定着トナーTが載った用紙Sを通過させて、加圧及び加熱を行って用紙SにトナーTを定着する。
【0021】
加熱ローラ1の記録用紙通紙部1aの中央部と片側端部には、接触式のサーミスタ4,5が配設されている。サーミスタ4は加熱ローラ1の中央部の表面温度を検出し、サーミスタ5は加熱ローラ1の端部の表面温度を検出する。このサーミスタ4,5の温度検出信号は、図3に示す加熱制御回路の制御部16に入力され、制御部16はこの温度検出信号に基づいて、加熱ヒータ3の通電制御を行う。
【0022】
図3に示す加熱制御回路は、スイッチ回路11a,11b、主電源12、キャパシタ13、蓄電検知部14、切替スイッチ15a,15b、加熱ローラ1の表面温度を検知する前記サーミスタ4,5,「制御手段」としての制御部16を有する。なお、加熱ローラ1は前記加熱ヒータ3の他に主発熱体17を有する。主発熱体17は、主電源12から供給される電力により発熱し、加熱ヒータ3(中央配光ヒータ31,端部配光ヒータ32)は、切替スイッチ15a,15bを介してキャパシタ13から供給される電力により発熱する。なお、主電源12は、コンセント等の商用電源から電力が供給される。
【0023】
制御部16はCPU16aや記憶手段としてのEEPROM16b等からなるコンピュータとして構成されている。制御部16は、切替スイッチ15a,15bの切替制御を行い、加熱ローラ1のウォームアップ時の加熱ヒータ3の加熱の制御を行う。なお、この場合、スイッチ回路11aは導通されている。切替スイッチ15a,15bが主電源12をキャパシタ13側に切替接続した場合にはキャパシタ13が主電源12から供給される電力により切替スイッチ15a,15bを介して充電される。切替スイッチ15a,15bがスイッチ回路11a,11b側(加熱ヒータ3側)に切替接続した場合にはキャパシタ13から切替スイッチ15a,15hを介して加熱ヒータ3へ放電されることにより加熱ヒータ3が発熱して加熱ローラ1を加熱する。
【0024】
また、制御部16は、サーミスタ4,5からの温度検出信号を取り込み、この温度検出信号により測定される温度が、EEPROM16bに予め記憶されている目標温度(例えばウォームアップ完了温度)になると、スイッチ回路11aをオフにして、加熱を停止する。このように、制御部16は、サーミスタ4,5の温度検出信号に基づいて、加熱ローラ1の表面温度が定着可能な設定温度になるように通電のオン/オフを制御する。
【0025】
図5は初期の加熱ローラのウォームアップ時のサーミスタの検知温度及び、加熱ローラの表面実測温度の関係を示すグラフであり、横軸に時間(秒)、縦軸に温度をとっている。実線はサーミスタ検知温度、点線は加熱ローラの表面実測温度を示している。サーミスタ検知温度と加熱ローラの表面実測温度の差Δ1は一定である。サーミスタの応答性低下時には図6に示すように温度差Δ1は大きくなる。
【0026】
図7は初期のウォームアップ時のサーミスタ4,5の検知温度を示すグラフであり、横軸に時間(秒)、縦軸にサーミスタの検知温度をとっている。この時、ウォームアップ完了温度到達時間は、ヒータ電力による。
【0027】
図8は通常応答をしているサーミスタと応答性低下サーミスタを比較して示すグラフである。実線は通常応答をしているサーミスタ(例えば図2に示すサーミスタ4)、点線は応答性低下時のサーミスタ(例えば図2に示すサーミスタ5)の検知温度を示している。
【0028】
図9はサーミスタ4,5の検知温度に基づくウォームアップ完了の制御時の温度変化を示すグラフである。図2に示す加熱ローラの中央部に配置したサーミスタ4、加熱ローラの端部に配置したサーミスタ5のいずれかが、ウォームアップ完了温度に達した時点で、両サーミスタの温度差Δ2を取得し、温度差Δ2をEEPROM16bに記憶する。そして、この時、温度差Δ2が、EEPROM16bに予め記憶している所定の温度差を超える場合、制御部16は直ちにウォームアップを完了させる。この所定の温度差は、加熱ローラ1の長手方向の温度分布により決定される。制御部16により、強制ウォームアップ完了後のサーミスタの温度制御を、EEPROM16bに記憶した温度差Δ2により補正する。例えば図10に示すように、低温側のサーミスタの検知温度S2に対して、検出温度S2+Δ2と見なして補正し、通紙時の定着温度制御を行う。
【符号の説明】
【0029】
1 加熱ローラ
2 加圧ローラ
3 加熱ヒータ
31 中央配光ヒータ
32 端部配光ヒータ
4,5 サーミスタ
10 定着装置
16 制御部(制御手段)
16a CPU
16b EEPROM(記憶手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開平11−2993号公報
【特許文献2】特開平11−2992号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を記録用紙に定着するための薄肉の加熱ローラの記録用紙通紙部の中央部及び端部に接触式のサーミスタを有し、前記加熱ローラ内の軸方向中央に発光部を持つ中央配光ヒータと、前記加熱ローラの軸方向端部に発光部を持つ端部配光ヒータと、中央配光ヒータ及び端部配光ヒータにより加熱ローラの温度を制御する制御手段とを有する定着装置であって、
前記制御手段は、当該定着装置のウォームアップ中に前記サーミスタで検出される検出温度のいずれかがウォームアップ完了温度に達したら、前記中央配光ヒータ及び端部配光ヒータの加熱を停止するとともに、前記両サーミスタで検出される検出温度の温度差を取得し、記憶手段に格納することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記両サーミスタの検出温度の前記温度差が、所定温度以上の場合、直ちに加熱ローラのウォームアップを完了させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ウォームアップ完了後の前記両サーミスタの検出温度における低温側の通紙温度制御を、前記ウォームアップ完了時の両サーミスタの前記温度差で補正する制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−198271(P2012−198271A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60507(P2011−60507)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】