説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】定着ローラとニップを形成する加圧ローラの温度の上昇を抑えることが可能な定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着ローラと、定着ローラに接触することでニップを形成する加圧ローラと、定着ローラを加熱するヒータとを有し、トナー像が載った記録媒体をニップに通して搬送しつつ、トナー像を記録媒体に融着させる定着装置において、加圧ローラは複数備えられており、ニップを形成している加圧ローラの温度が、トナーブリスタが発生しうる温度に達する前に、ニップを形成している加圧ローラを、ニップを形成していない別の加圧ローラに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱及び圧力により未定着画像を記録材に定着させる定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを採用した画像形成装置には、定着ローラと、この定着ローラとの間でニップを形成する加圧ローラとを有する定着装置が備えられている。この定着装置は、未定着画像を担持した記録材(例えば用紙)を、上記ニップで狭持することで定着を行う(加熱定着方式)。このような画像形成装置及び定着装置の一例について、図9及び図10を用いて以下に説明する。
【0003】
図9は、上記画像形成装置の一例としての、電子写真方式の印刷装置の概略図である。図9において、41は用紙給紙部、42は用紙搬送部、43は作像部、44は定着機(定着装置)を示している。用紙給紙部41に装填された用紙は、印刷開始信号によって適切な用紙が給紙され、用紙搬送部42へと送られる。それと並行して、作像部43で形成(詳細は省略)される電子写真方式による未定着画像は、用紙搬送部42から送られてくる用紙に転写され、用紙上に未定着画像が形成される。そして、その用紙は、定着機44へ搬送され、熱及び圧力により未定着画像が定着させられる。
【0004】
図10を用いて従来の定着装置の一例の概略を説明する。図10において、1は定着ローラ、2はヒータランプ、10は用紙、23は加圧ローラを示している。対向して存在する定着ローラ1と加圧ローラ23は、図示しないバネ等により押し付けられて、ニップが形成される。そのニップには、ヒータランプ2によって熱が供給される。未定着トナーが載った用紙10が上記ニップを通過すると、圧力と熱により未定着トナーが用紙10に定着する。なお、通常、ヒータランプ2は定着ローラ1内に存在するが、他のローラを熱源に持ちベルトで熱を搬送するベルト方式や、IHを使用した方式もある。
【0005】
通常、熱源(ヒータランプ)を、未定着トナーが載った用紙面に接触する定着ローラ側に備えるため、用紙が搬送されて来るまでの時間、定着ローラに対向してニップを形成する加圧ローラの温度も定着ローラにつられて上がる。その後、用紙がニップを通過すると、用紙に熱を奪われて加圧ローラの温度は下がる。連続した印刷が行われると、加圧ローラの温度は安定する。現在では、加圧ローラが定着ローラの熱につられて温度上昇することが、トナーブリスタを発生させる原因となり、画像表面を荒らしてしまうことがわかっている。
【0006】
そのため、加圧ローラの温度はなるべく低い温度を保ちたいが、定着ローラとニップすると一時的に比較的高い温度となってしまう。ニップするタイミングを変えて、ニップ時間を短くする制御を実施することで、加圧ローラの温度上昇を押さえるように対策しているが、ニップしたことを確認してから用紙を搬送させないとニップエラー時は用紙ジャムになってしまい、印刷装置内部を汚してしまう結果となるため、ニップ時間の短縮には限界がある。
【0007】
そこで、加圧ローラを冷却するという手段がある。従来の技術として、例えば特許文献1に開示されているものがある。これは、定着ローラの温度をモニタして、規定値に対して高温になった場合は、冷却ファンを駆動して常に最適なローラ温度を維持するものである。しかし、高速印刷に対応する印刷装置に関して言えば、ローラ径が大きくなり芯金厚やゴム厚も厚くなるためローラ自体の熱容量が大きくなり、簡単に温度を上げ下げできるものではなくなってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上述した従来技術の欠点を解消し、定着ローラとニップを形成する加圧ローラの温度の上昇を抑えることが可能な定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の定着装置は、定着ローラと、定着ローラに接触することでニップを形成する加圧ローラと、定着ローラを加熱するヒータとを有し、トナー像が載った記録媒体をニップに通して搬送しつつ、トナー像を記録媒体に融着させる定着装置において、加圧ローラは複数備えられており、ニップを形成している加圧ローラの温度が、トナーブリスタが発生しうる温度に達する前に、ニップを形成している加圧ローラを、ニップを形成していない別の加圧ローラに切り替えることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成装置は、上記本発明の定着装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、定着ローラとニップを形成する加圧ローラの温度の上昇を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る定着装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態の変形例1に係る定着装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態の変形例2に係る定着装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態の変形例3に係る定着装置の構成例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の変形例4に係る定着装置の構成例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の変形例5に係る定着装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態の変形例1〜4における冷却効果の一例を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係る定着装置における加圧ローラの温度変化の一例を示すグラフである。
【図9】従来の画像形成装置の構成例を示す図である。
【図10】従来の定着装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本実施形態の定着装置の構成例について図1を使用して説明する。図1に示す本実施形態の定着装置において、1は定着ローラ、2はヒータランプ、10は用紙、20は加圧ローラユニット、21は加圧ローラA、22は加圧ローラB、30は冷却装置である。定着ローラ1と、加圧ローラA21又は加圧ローラB22は、バネ(図示せず)などにより押し付けられることでニップが形成される。また、熱源であるヒータランプ2は定着ローラ1内部にあり、定着に必要な熱量を供給している。未定着のトナーを載せた状態の用紙10が上記ニップを通ると、熱と圧力により未定着のトナーが用紙10に定着する。なお、図1に示す本実施形態の定着装置は、例えば図2に示す画像形成装置(電子写真方式の印刷装置)に搭載される。
【0015】
本実施形態では、図1に示すように、定着ローラ1に対してニップを形成できる加圧ローラを複数備える。図1の例では、加圧ローラA21と加圧ローラB22の2つが備えられている。これら複数の加圧ローラを、本実施形態では加圧ローラユニット20と呼んでいる。
【0016】
加圧ローラユニット20は、回転することによって、2つの加圧ローラA21、B22の位置を変化させることが可能である。すなわち、加圧ローラユニット20の回転により、定着ローラ1とニップする加圧ローラとして、加圧ローラA21、B22のいずれかが選択される。
【0017】
例えば、図1(a)に示すように加圧ローラA21が定着ローラ1とニップしている状態のときに、回転中心を基準として加圧ローラユニット20が180度回転すると、図1(b)に示すように加圧ローラB22が定着ローラ1とニップするようになり、先ほどまでニップしていた加圧ローラA21は定着ローラ1から離れた位置に移動するようになる。すなわち図1(b)に示すように、加圧ローラA21に代わって加圧ローラB22が定着ローラ1と接触してニップを形成するようになると、先ほどまで定着ローラ1の熱で温まっていた加圧ローラA21は定着ローラ1から離れることになる。よって、加圧ローラA21は、定着ローラ1からの熱を受けること無く自然放熱でき、昇温してしまった温度を下げることができる。その後、再び加圧ローラユニット20が180度回転し、図1(a)に示す状態となる。今度は、先ほどまで定着ローラ1の熱で温まっていた加圧ローラB22が定着ローラ1から離れることになり、加圧ローラB22は、定着ローラ1からの熱を受けること無く自然放熱でき、昇温してしまった温度を下げることができる。このように本実施形態の定着装置では、図1の(a)と(b)に示す状態を繰り返すようにする。これにより、本実施形態の定着装置では、2つの加圧ローラA21とB22とが交互に切り替わって定着ローラ1とニップを形成することになり、ニップを形成していないもう一つの加圧ローラでは自然放熱が行われるようになる。
【0018】
上記加圧ローラユニット20を180度回転するタイミング(ニップを形成する加圧ローラを切り替えるタイミング)としては、以下の例が挙げられる。例えば、定着装置又は画像形成装置において、時間を計測するタイマ手段と、加圧ローラユニットの回転を制御する制御手段とを備えるようにし、タイマ手段が予め定められた時間(例えば、ニップ形成後に上昇する加圧ローラの温度が、トナーブリスタが発生しうる温度に到達しない時間)の経過を計測したら、制御手段は加圧ローラユニットの回転を行うように制御してもよい。あるいは、例えば、定着装置又は画像形成装置において、ニップを形成している加圧ローラの温度を計測する温度計測手段と、加圧ローラユニットの回転を制御する制御手段とを備えるようにし、温度計測手段が予め定められた温度(例えば、トナーブリスタが発生しうる温度よりも低い所定の温度)への到達を計測したら、制御手段は加圧ローラユニットの回転を行うように制御してもよい。
【0019】
ここで、本実施形態のように、ニップを形成する加圧ローラを切り替える場合と、従来のように、ニップを形成する加圧ローラを切り替えない場合とにおける、加圧ローラの温度変化について図8に示す。図8の例では、加圧ローラ温度が120℃を超えると、トナーブリスタが許容できないレベルになるとする。図8に示すように、加圧ローラを切り替えない従来の場合では、印刷を行うことにより加圧ローラの温度が120℃を越えてしまい、トナーブリスタが発生してしまう。これに対し、図8に示すように、加圧ローラを切り替える本実施形態の場合では、120℃を越える前に、上述したタイミングにて加圧ローラユニットの回転が行われ、ニップを形成する加圧ローラが切り替えられる。この後、ニップを形成していない方の加圧ローラは冷却され、次の切り替えのときにニップを形成することになる。このようにして、本実施形態の場合では、常時、冷却された加圧ローラでニップを形成できるため、加圧ローラの温度が120℃に到達することなく、トナーブリスタが発生しない。
【0020】
以上説明したように本実施形態によれば、定着ローラとニップを形成する加圧ローラを複数用意しておき、それらの加圧ローラを切り替えることにより、加圧ローラの温度の上昇を抑えることができる。よって、加圧ローラの温度が定着ローラの熱により上昇してしまい、トナーブリスタを発生させてしまうという従来の問題を解消できる。
【0021】
以下、上記本実施形態の変形例について説明する。
【0022】
〔変形例1〕
図2に示すように、加圧ローラユニット20の下方に、冷却装置30Aを備えるようにしてもよい。冷却装置30Aは、加圧ローラと接触せずに冷却を行う装置であり、例えば冷却ファンが挙げられる。図2の例では、冷却装置30Aは、定着ローラ1から離れた位置にある(定着ローラ1とニップを形成していない)加圧ローラB22に対し、非接触の方法(例えば送風など)で、加圧ローラB22の冷却を行う。よって、加圧ローラB22は、自然放熱に加え、冷却装置30Aの非接触による冷却も加わるので、効率的に温度を下げることができる。なお、加圧ローラA21が定着ローラ1から離れた位置(図2に示す加圧ローラB22の位置)に移動して来たときには、上記同様に、自然放熱と冷却装置30Aの非接触による冷却とが行われる。
【0023】
〔変形例2〕
図3に示すように、加圧ローラユニット20の下方に、冷却装置30Bを備えるようにしてもよい。冷却装置30Bは、加圧ローラと接触して冷却を行う装置であり、例えば冷却ローラが挙げられる。図3の例では、冷却装置30Bは、定着ローラ1から離れた位置にある(定着ローラ1とニップを形成していない)加圧ローラB22に接触することで、加圧ローラB22から熱を吸収して冷却する。よって、加圧ローラB22は、自然放熱に加え、冷却装置30Bの接触による冷却も加わるので、効率的に温度を下げることができる。なお、加圧ローラA21が定着ローラ1から離れた位置(図3に示す加圧ローラB22の位置)に移動して来たときには、上記同様に、自然放熱と冷却装置30Bの接触による冷却とが行われる。
【0024】
〔変形例3〕
図4に示すように、上述した変形例2において、冷却装置30B(例えば冷却ローラ)を効率的に使用するために、冷却装置30B内にヒートパイプ31を備えるようにしてもよい。図4の例では、ヒートパイプ31は4本としているが、本数はこれに限定されない。このように、接触式の冷却装置にヒートパイプを使用することにより、効率的に加圧ローラの温度を低温に抑えることができる。
【0025】
〔変形例4〕
図5に示すように、上述した変形例3において、冷却装置30B(例えば冷却ローラ)内のヒートパイプ31の端部をヒートシンク41として構成し、さらに、ヒートシンク41の下方に、冷却ファン40を備えるように構成してもよい。冷却ファン40(ヒートパイプ用冷却ファン)は、ヒートシンク41に対し空冷(送風)を行う。このように、接触式の冷却装置にヒートパイプを使用するだけでなく、ヒートパイプの端部を冷却ファンによる空冷で冷却することにより、効率的に加圧ローラの温度を低温に抑えることができる。
【0026】
〔変形例5〕
図6に示すように、上述した変形例2において、加圧ローラB22と冷却装置30B(例えば冷却ローラ)が接触しながら回転するようにしてもよい。図6の例では、加圧ローラB22は時計回り方向に回転し、冷却装置30Bは反時計回り方向に回転する。これにより、ローラの周方向の温度ムラをなくし、均一に冷却することができる。なお、加圧ローラA21が定着ローラ1から離れた位置(図6に示す加圧ローラB22の位置)に移動して来たときには、上記同様に、加圧ローラA21と冷却装置30Bが接触しながら回転する(加圧ローラA21は時計回り方向に回転し、冷却装置30Bは反時計回り方向に回転する)。また、各ローラの回転方向は、上記に限定されない。
【0027】
以上説明した変形例1〜4における加圧ローラの冷却効果を図7に示す。図7に示すように、非接触式の冷却(空冷)よりも接触式の冷却の方が、冷却効果が高いことがわかる。また、接触式の冷却の中でも、ヒートパイプを使用した上でヒートパイプ端部を冷却する方法(変形例4)が最も冷却効果が高いことがわかる。
【0028】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、上記説明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 定着ローラ
2 ヒータランプ
10 用紙
20 加圧ローラユニット
21 加圧ローラA
22 加圧ローラB
23 加圧ローラ
30A 非接触式の冷却装置
30B 接触式の冷却装置
31 ヒートパイプ
40 ヒートパイプ冷却用冷却ファン
41 ヒートシンク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2009−075374号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ローラと、前記定着ローラに接触することでニップを形成する加圧ローラと、前記定着ローラを加熱するヒータとを有し、トナー像が載った記録媒体を前記ニップに通して搬送しつつ、前記トナー像を前記記録媒体に融着させる定着装置において、
前記加圧ローラは複数備えられており、
前記ニップを形成している加圧ローラの温度が、トナーブリスタが発生しうる温度に達する前に、前記ニップを形成している加圧ローラを、前記ニップを形成していない別の加圧ローラに切り替えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ニップを形成していない別の加圧ローラは、自然放熱により冷却されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記ニップを形成していない別の加圧ローラは、自然放熱に加え、当該加圧ローラの近傍に備えられた冷却装置により冷却されることを特徴とする請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記冷却装置は、
前記ニップを形成していない別の加圧ローラに接触して冷却を行う冷却ローラ、又は、前記ニップを形成していない別の加圧ローラに接触しないで冷却を行う冷却ファンのいずれかであることを特徴とする請求項3記載の定着装置。
【請求項5】
前記冷却装置が前記冷却ローラである場合、前記ニップを形成していない別の加圧ローラと前記冷却ローラとが、互いに接触しながら所定方向に回転することを特徴とする請求項4記載の定着装置。
【請求項6】
前記冷却ローラには、ヒートパイプが内蔵されていることを特徴とする請求項4又は5記載の定着装置。
【請求項7】
前記ヒートパイプの端部は、当該ヒートパイプの端部に対して空冷を行うヒートパイプ用冷却ファンによって冷却されることを特徴とする請求項6記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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