説明

定着装置及び記録装置

【課題】記録媒体がカールした場合に、記録媒体と定着手段との接触を簡単な構成で回避することが可能な定着装置及び記録装置を提供する。
【解決手段】加熱乾燥部15は、ロール紙を上流側から下流側へ搬送するための搬送経路の一部を構成するとともにロール紙を支持可能な離間斜面26a及び接近斜面27aと、両斜面26a,27aと対向するように配置され、両斜面26a,27aよりも上流側で画像が記録されたロール紙が両斜面26a,27aに支持された際に画像をロール紙に定着させる加熱乾燥処理を施すヒーターユニット24とを備える。そして、両斜面26a,27aは、両斜面26a,27aとヒーターユニット24とが対向する上下方向において、両斜面26a,27aよりも上流側の平坦面25aに比べてヒーターユニット24から遠い位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの記録装置及び該記録装置に備えられて画像が記録された用紙などに該画像を定着させるための定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体に画像を記録する記録装置としてインクジェット式プリンターが広く知られている。インクジェット式プリンターでは、記録ヘッド(記録手段)からインクを用紙(記録媒体)に向けて噴射することで印刷がなされる。こうしたプリンターでは、通常、印刷後の用紙を加熱して乾燥させることで、用紙に画像を定着させるようにしている。
【0003】
そして、このように印刷後の用紙を加熱して乾燥させるプリンターとしては、従来、特許文献1に示すものが知られている。この特許文献1のプリンターでは、用紙の搬送経路を挟んで対峙するように配置された一対のヒーター(定着手段)によって印刷後の用紙を加熱して乾燥させるようにしている。
【0004】
しかしながら、用紙がロール紙などの湾曲(カール)する性質を持つ場合には、湾曲した用紙が各ヒーターに接触してしまうおそれがある。このため、特許文献1のプリンターでは、用紙が湾曲する性質を持つ場合に、用紙の湾曲状態を見越して、各ヒーター間の距離が長くなるように各ヒーターを移動させることで、各ヒーターと用紙との接触を回避するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−212949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のプリンターでは、用紙が湾曲した場合であっても該用紙の各ヒーターへの接触を回避することはできるものの、各ヒーター間の距離を調整するためのヒーター移動機構を必要とするため、構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、記録媒体がカールした場合に、記録媒体と定着手段との接触を簡単な構成で回避することが可能な定着装置及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の定着装置は、記録媒体を上流側から下流側へ搬送するための搬送経路の一部を構成するとともに前記記録媒体を支持可能な支持面と、前記支持面と対向するように配置され、前記支持面よりも上流側で画像が記録された前記記録媒体が前記支持面に支持された際に前記画像を前記記録媒体に定着させる定着処理を施す定着手段とを備えた定着装置であって、前記支持面は、前記支持面と前記定着手段とが対向する方向において、前記支持面よりも上流側の前記搬送経路に比べて前記定着手段から遠い位置にある。
【0009】
この発明によれば、支持面よりも上流側で画像が記録された記録媒体がカールして盛り上がった場合でも、この記録媒体におけるカールで盛り上がった分が、支持面よりも上流側の搬送経路と支持面との定着手段からの距離の差によって吸収される。したがって記録媒体がカールした場合に、記録媒体と定着手段との接触を簡単な構成で回避することが可能となる。
【0010】
本発明の定着装置において、前記支持面は、前記記録媒体の搬送経路における下流側に向かうほど、前記支持面と前記定着手段とが対向する方向において前記定着手段から遠ざかるように傾斜した離間斜面を有している。
【0011】
この発明によれば、支持面よりも上流側で画像が記録された記録媒体がカールして盛り上がった場合でも、該記録媒体が離間斜面によって定着手段から徐々に遠ざけられる。したがって、記録媒体を定着手段に接触させることなく支持面に沿って円滑に搬送することが可能となる。
【0012】
本発明の定着装置において、前記支持面は、前記離間斜面よりも前記搬送経路の下流側に、前記記録媒体の搬送経路における下流側に向かうほど、前記支持面と前記定着手段とが対向する方向において前記定着手段へ近づくように傾斜した接近斜面を有している。
【0013】
この発明によれば、離間斜面により定着手段に対して傾けられた記録媒体の傾きが、接近斜面によって緩和される。このため、定着手段の記録媒体に対する定着処理が不均一になることを抑制することが可能となる。
【0014】
本発明の定着装置において、前記搬送経路における前記離間斜面の下流端と前記接近斜面の上流端とは、連続するように接続されており、前記離間斜面の下流端と前記接近斜面の上流端との接続部分は、前記記録媒体の搬送方向における前記定着手段の中央部と対応している。
【0015】
この発明によれば、定着手段と記録媒体との距離が好適に確保されるため、記録媒体が定着手段に接触することを効果的に抑制することが可能となる。
本発明の定着装置において、前記離間斜面の上流端及び前記接近斜面の下流端は、前記支持面と前記定着手段とが対向する方向において、前記定着手段からの距離が同じになっている。
【0016】
例えば、記録媒体が巻き癖のついた長尺のロール紙であった場合、記録媒体は、その先端部分が特にカールする。この点、この発明によれば、記録媒体の先端部分が支持面を通過した後は、記録媒体が離間斜面の上流端及び接近斜面の下流端によって支持されるため、該記録媒体が定着手段に対して平行になる。したがって、定着手段による記録媒体に対する定着処理を均一に行うことが可能となる。
【0017】
本発明の定着装置において、前記支持面よりも上流側の前記搬送経路に対する前記離間斜面の傾斜角度は、前記支持面よりも上流側の前記搬送経路に対する前記接近斜面の傾斜角度よりも大きい。
【0018】
この発明によれば、支持面よりも上流側で画像が記録された記録媒体がカールして盛り上がった場合でも、該記録媒体が接近斜面よりも傾斜角度の大きい離間斜面によって定着手段から迅速に遠ざけられる。このため、記録媒体と定着手段との接触を効果的に回避することが可能となる。
【0019】
本発明の記録装置は、前記記録媒体に前記画像を記録する記録手段と、上記構成の定着装置とを備えた。
この発明によれば、上記定着装置と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンターの断面模式図。
【図2】同プリンターの加熱乾燥部の拡大断面模式図。
【図3】同加熱乾燥部においてロール紙のカールした先端部分が離間斜面上を搬送されるときの状態を示す拡大断面模式図。
【図4】同加熱乾燥部においてロール紙のカールした先端部分が接近斜面上を搬送されるときの状態を示す拡大断面模式図。
【図5】同加熱乾燥部においてロール紙のカールした先端部分が接近斜面よりも下流側へ搬送されたときの状態を示す拡大断面模式図。
【図6】変更例の加熱乾燥部を示す拡大断面模式図。
【図7】変更例の加熱乾燥部を示す拡大断面模式図。
【図8】変更例の加熱乾燥部を示す拡大断面模式図。
【図9】変更例の加熱乾燥部を示す拡大断面模式図。
【図10】変更例の加熱乾燥部を示す拡大断面模式図。
【図11】変更例の加熱乾燥部を示す拡大断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の記録装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態について、図面に従って説明する。
図1に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンター11は、その外郭を形成する略矩形箱状の本体ケース12を備えている。本体ケース12内には、記録媒体としての長尺状のロール紙(連続紙)RPを巻き解きながら繰り出す繰り出し部13と、該繰り出し部13から繰り出されたロール紙RPに画像を記録する記録処理を施す記録部14とが設けられている。
【0022】
さらに、本体ケース12内には、記録部14で画像が記録されたロール紙RPに画像を定着させる定着処理としての加熱乾燥処理を施す定着装置としての加熱乾燥部15と、該加熱乾燥部15で加熱乾燥されたロール紙RPを連続して蛇行状に重ねて支持する排紙トレイ16とが設けられている。
【0023】
すなわち、本体ケース12内において、ロール紙RPの搬送経路の上流側となる後寄りの位置には繰り出し部13が配置される一方、ロール紙RPの搬送経路の下流側となる前寄りの位置には排紙トレイ16が配置されている。そして、繰り出し部13から排紙トレイ16までの間のロール紙RPの搬送経路の途中位置に、記録部14及び加熱乾燥部15がそれぞれ配置されている。
【0024】
図1に示すように、繰り出し部13には、左右方向(紙面と直交する方向)に延びる巻き軸17が回転可能に設けられている。巻き軸17には、ロール紙RPが該巻き軸17と一体回転可能に支持されている。そして、巻き軸17が図1における反時計方向に回転することで、ロール紙RPが巻き解かれながら搬送経路の下流側に向かって繰り出される。
【0025】
繰り出し部13の上方には、巻き軸17から繰り出されたロール紙RPを巻き掛けて記録部14側に向けて導くための中継ローラー18が左右方向に延びるように回転可能に設けられている。そして、中継ローラー18には、巻き軸17から繰り出されたロール紙RPの搬送方向が上方から水平前方向に変更されるように、巻き軸17から繰り出されたロール紙RPが後側から巻き掛けられている。
【0026】
記録部14は、上流側から搬送されるロール紙RPを下側から支持する支持台19と、該支持台19とロール紙RPを挟んで対向するように配置された記録手段としての記録ヘッド20とを備えている。ロール紙RPの搬送経路における記録部14と中継ローラー18との間には、中継ローラー18から搬送されるロール紙RPを挟持しながら支持台19上へ導く給紙ローラー対21が設けられている。一方、ロール紙RPの搬送経路における記録部14の下流側には、支持台19上のロール紙RPを下流側へ導く排紙ローラー対22が設けられている。
【0027】
また、記録ヘッド20の下面は、液体としてのインクを噴射する複数のノズル(図示略)が開口する水平なノズル形成面になっている。そして、記録ヘッド20は、支持台19上を搬送されるロール紙RPに対して各ノズル(図示略)からインクを噴射して画像を記録する。なお、ロール紙RPの搬送経路における排紙ローラー対22の下流側には、加熱乾燥部15が配置されている。
【0028】
次に、加熱乾燥部15の構成について詳述する。
図1及び図2に示すように、加熱乾燥部15は、ロール紙RPの搬送経路の一部を形成するとともにロール紙RPを下側から支持する経路形成板23と、該経路形成板23とロール紙RPを挟んで対向するように配置されるとともに画像が記録されたロール紙RPに加熱乾燥処理を施す定着手段としてのヒーターユニット24とを備えている。
【0029】
経路形成板23は、水平な水平部25と、該水平部25の前端から前斜め下方に向かって延びる第1傾斜部26と、該第1傾斜部26の前端から前斜め上方に向かって延びる第2傾斜部27とを備えている。第1傾斜部26と第2傾斜部27とは、これらの境界を含む鉛直面について前後に面対称になっている。したがって、第1傾斜部26と第2傾斜部27とにより、水平部25に対して左右方向から見てV字状をなすように凹んだ凹部が形成されている。
【0030】
第1傾斜部26の上面は、ロール紙RPの搬送経路における下流側に向かうほど、上下方向においてヒーターユニット24から遠ざかるように傾斜した離間斜面26aとされている。一方、第2傾斜部27は、ロール紙RPの搬送経路における下流側に向かうほど、上下方向においてヒーターユニット24へ近づくように傾斜した接近斜面27aとされている。
【0031】
したがって、離間斜面26aと接近斜面27aとは、前後方向において連続するように隣接して接続されている。そして、本実施形態では、離間斜面26aと接近斜面27aとにより、搬送されるロール紙RPを支持可能な支持面が構成されている。さらに、水平部25の上面は平坦面25aとされるとともに、平坦面25aは支持面(離間斜面26a及び接近斜面27a)の直ぐ上流側の搬送経路を形成している。
【0032】
したがって、支持面(離間斜面26a及び接近斜面27a)は、上下方向において、平坦面25aよりもヒーターユニット24から遠い位置にある。なお、平坦面25aは、支持台19の上面を含む水平面に含まれている。
【0033】
ヒーターユニット24は、離間斜面26aと接近斜面27aとを前後方向において跨ぐように配置されている。すなわち、ヒーターユニット24は、離間斜面26a及び接近斜面27aの両方と上下方向において対向している。したがって、本実施形態では、上下方向と、ヒーターユニット24と支持面(離間斜面26a及び接近斜面27a)とが対向する方向とが一致している。
【0034】
ヒーターユニット24は、下側が開口した矩形箱状をなすヒーターケース28と、該ヒーターケース28内に配置された左右方向に延びるヒーター29と、該ヒーターケース28内に配置されてヒーター29の熱を下側に向かって反射させる反射板30とを備えている。前後方向において、ヒーターケース28の幅は離間斜面26aの上流端26bと接近斜面27aの下流端27bとの間の距離よりも小さくなるように設定されている。
【0035】
ヒーター29は、ヒーターケース28内における前後方向の中央部に配置されている。反射板30は、ヒーターケース28の上壁とヒーター29との間に配置されている。反射板30は、ヒーター29の上側及び前後両側をカバーするように、左右方向から見て略逆U字状をなしている。
【0036】
すなわち、反射板30は、下側及び左右両側が開口している。そして、反射板30は、その前端及び後端間の領域である加熱乾燥領域Hにおいて、ヒーター29から放出される熱を、支持面(離間斜面26a及び接近斜面27a)上を搬送されるロール紙RPに向けてほぼ均一に反射する。
【0037】
また、離間斜面26aの上流端26bと接近斜面27aの下流端27bとは、上下方向において、ヒーターユニット24からの距離が同じになっている。すなわち、離間斜面26aの上流端26bと接近斜面27aの下流端27bとは、同じ高さになっている。
【0038】
さらに、離間斜面26aと接近斜面27aとの接続部分Rは、離間斜面26a及び接近斜面27a上を搬送されるロール紙RPの搬送方向である前後方向におけるヒーターユニット24の中央部と対応している。すなわち、接続部分Rは、加熱乾燥領域Hにおける前後方向の中央部と対応している。
【0039】
次に、インクジェット式プリンター11の作用について説明する。
さて、巻き軸17が回転されると、ロール紙RPは、その先端部分から順次に巻き解かれながら搬送経路の下流側に向かって繰り出される。この繰り出されたロール紙RPは、搬送経路に沿って支持台19上を搬送される過程で、記録ヘッド20から噴射されるインクを受けて画像が記録される。引き続き、画像が記録されたロール紙RPは、その先端部分から順次に搬送経路に沿って下流側の加熱乾燥部15へと搬送される。
【0040】
そして、加熱乾燥部15へと搬送されたロール紙RPの先端部分は、図3に示すように、平坦面25aから離間斜面26aへと搬送される。このとき、ロール紙RPの先端部分には、巻き軸17に巻かれていたときの巻き癖が特に強く残っているため、上側に膨らむようにカール(湾曲)している。しかしながら、ロール紙RPの先端部分は、離間斜面26aを下流側へ向かって搬送されることで、ヒーターユニット24から離れる。このため、ロール紙RPのカールした先端部分がヒーターユニット24に接触することが回避される。
【0041】
引き続き、ロール紙RPのカールした先端部分は、図4に示すように、離間斜面26aから接近斜面27aへと搬送される。このとき、ロール紙RPのカールした先端部分は、接近斜面27aを下流側へ向かって搬送される際に、自重によりカールが緩和される。このため、ロール紙RPのカールした先端部分は、ヒーターユニット24と平行な状態(水平状態)に近づくようになる。
【0042】
したがって、ロール紙RPのカールした先端部分は、離間斜面26aから接近斜面27aにかけて下流側へ搬送される過程で、ヒーターユニット24からほぼ均一に熱を受ける。この結果、ロール紙RPに記録された画像がほぼ均一に加熱乾燥されるので、該画像が該ロール紙RPに対して精度よく定着される。
【0043】
引き続き、ロール紙RPのカールした先端部分は、接近斜面27aの下流端27bを過ぎると、重力により搬送方向が前方向から下方向に変更されて、排紙トレイ16に向かって搬送される。そして、これ以後、ロール紙RPにおける離間斜面26a上及び接近斜面27a上の部分は、ロール紙RPにおける接近斜面27aの下流端27bよりも下流側に位置する部分の重さによって下流側に引っ張られる。
【0044】
これにより、ロール紙RPにおける離間斜面26a上及び接近斜面27a上の部分は、図5に示すように、離間斜面26aの上流端26bと接近斜面27aの下流端27bとの2箇所で支持されて、水平に張った状態になる。このため、ロール紙RPにおける離間斜面26a上及び接近斜面27a上の部分は、ヒーターユニット24に対して平行な状態が維持されながら下流側へ搬送されるようになる。
【0045】
この結果、ロール紙RPと経路形成板23との接触面積が安定するため、ロール紙RP上の温度が安定する。したがって、記録ヘッド20によって画像が記録されたロール紙RPが、離間斜面26a上及び接近斜面27a上において均一に加熱乾燥されるので、該画像が該ロール紙RPに対して精度よく定着される。よって、ロール紙RPの安定した印刷品質が確保される。
【0046】
なお、ロール紙RPは、加熱乾燥部15で加熱乾燥された後、排紙トレイ16によって連続して蛇行状に重ねられて支持される。
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0047】
(1)支持面(離間斜面26a及び接近斜面27a)は、上下方向において、平坦面25aよりもヒーターユニット24から遠い位置にある。このため、支持面よりも上流側で画像が記録されたロール紙RPの先端部分がカールして盛り上がっても、このロール紙RPにおけるカールで盛り上がった分を、ヒーターユニット24からの平坦面25aと支持面との距離の差によって吸収することができる。したがって、ロール紙RPの先端部分がカールして盛り上がった場合に、ロール紙RPとヒーターユニット24との接触を、支持面を平坦面25aよりもヒーターユニット24から遠い位置に配置するという簡単な構成で容易に回避することができる。
【0048】
(2)支持面は、ロール紙RPの搬送経路における下流側に向かうほど、上下方向においてヒーターユニット24から遠ざかるように傾斜した離間斜面26aを有している。このため、支持面よりも上流側で画像が記録されたロール紙RPの先端部分がカールして盛り上がっても、このロール紙RPのカールで盛り上がった先端部分が離間斜面26aを搬送される際にヒーターユニット24から徐々に遠ざかるようにすることができる。したがって、ロール紙RPのカールで盛り上がった先端部分をヒーターユニット24に接触させることなく支持面に沿って円滑に下流側へ搬送することができる。
【0049】
(3)支持面は、離間斜面26aよりもロール紙RPの搬送経路の下流側に、ロール紙RPの搬送経路における下流側に向かうほど、上下方向においてヒーターユニット24へ近づくように傾斜した接近斜面27aを有している。このため、ロール紙RPのカールした先端部分が支持面上を搬送される際に、離間斜面26aによりヒーターユニット24に対して傾けられたロール紙RPのカールした先端部分の傾きを、接近斜面27aによって緩和することができる。したがって、ヒーターユニット24のロール紙RPのカールした先端部分に対する加熱乾燥処理が不均一になることを抑制することができる。
【0050】
(4)離間斜面26aの下流端と接近斜面27aの上流端との接続部分Rは、ロール紙RPの搬送方向である前後方向におけるヒーターユニット24の中央部と対応している。このため、ヒーターユニット24とロール紙RPのカールで盛り上がった先端部分との距離をバランスよく好適に確保することができるので、このロール紙RPのカールで盛り上がった先端部分がヒーターユニット24に接触することを効果的に抑制することができる。
【0051】
(5)離間斜面26aの上流端26b及び接近斜面27aの下流端27bは、上下方向におけるヒーターユニット24からの距離が同じになっている。このため、ロール紙RPのカールで盛り上がった先端部分が支持面(離間斜面26a及び接近斜面27a)を通過した後は、ロール紙RPが離間斜面26aの上流端26b及び接近斜面27aの下流端27bによって2箇所で支持されるので、ロール紙RPがヒーターユニット24に対して平行になる。したがって、ヒーターユニット24によるロール紙RPに対する加熱乾燥処理を均一に行うことができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0052】
・図6に示すように、加熱乾燥部15において、水平な平坦面25aに対する離間斜面26aの傾斜角度を、平坦面25aに対する接近斜面27aの傾斜角度よりも大きくするようにしてもよい。この場合、離間斜面26aの上流端26bと接近斜面27aの下流端27bとの上下方向におけるヒーターユニット24からの距離を同じにすると、接近斜面27aの左右方向の長さが離間斜面26aの左右方向の長さよりも長くなる。このようにすれば、ロール紙RPのカールで盛り上がった先端部分が接近斜面27aに比べて平坦面25aに対する傾斜角度の大きい離間斜面26aに沿って下流側へ搬送されることで、該先端部分をヒーターユニット24から迅速に遠ざけることができる。このため、ロール紙RPのカールで盛り上がった先端部分とヒーターユニット24との接触を効果的に回避することができる。
【0053】
・図7に示すように、加熱乾燥部15において、接近斜面27aを水平面Sに変更してもよい。
・図8に示すように、加熱乾燥部15において、支持面(離間斜面26a及び接近斜面27a)を水平面Sに変更するとともに、該水平面Sと平坦面25aとの間に水平面Sが平坦面25aよりも低くなるように段差Dを設けるようにしてもよい。
【0054】
・図9に示すように、加熱乾燥部15において、離間斜面26aを水平面Sに変更するとともに、該水平面Sと平坦面25aとの間に水平面Sが平坦面25aよりも低くなるように段差Dを設けるようにしてもよい。
【0055】
・図10に示すように、加熱乾燥部15において、離間斜面26aの下流端と接近斜面の上流端との間に水平面Sを設けるようにしてもよい。この場合、水平面Sがヒーターユニット24と上下方向において対向する。
【0056】
・図11に示すように、加熱乾燥部15において、加熱乾燥部15において、支持面(離間斜面26a及び接近斜面27a)を左右方向から見て下側に膨らむ円弧状に湾曲した曲面Kに変更するようにしてもよい。
【0057】
・加熱乾燥部15において、離間斜面26aの上流端26b及び接近斜面27aの下流端27bは、上下方向におけるヒーターユニット24からの距離が必ずしも同じである必要はない。
【0058】
・加熱乾燥部15において、離間斜面26aの下流端と接近斜面27aの上流端との接続部分Rは、必ずしもロール紙RPの搬送方向である前後方向におけるヒーターユニット24の中央部と対応させる必要はない。
【0059】
・加熱乾燥部15において、接近斜面27aを省略してもよい。
・インクジェット式プリンター11において、紫外線硬化型のインクを用いてもよい。この場合、加熱乾燥部15の代わりに、記録部14で画像が記録されたロール紙RPに画像を定着させる定着処理としての紫外線照射処理を施す定着装置として紫外線照射装置が用いられる。
【0060】
・ロール紙RPの代わりに、ロール状のプラスチックフィルムや金属箔などを記録媒体として用いてもよい。
・ロール紙(連続紙)RPの代わりに、単票紙(枚葉紙)を記録媒体として用いてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
11…記録装置としてのインクジェット式プリンター、15…定着装置としての加熱乾燥部、20…記録手段としての記録ヘッド、24…定着手段としてのヒーターユニット、26a…支持面を構成する離間斜面、26b…離間斜面の上流端、27a…支持面を構成する接近斜面、27b…接近斜面の下流端、R…接続部分、RP…記録媒体としてのロール紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を上流側から下流側へ搬送するための搬送経路の一部を構成するとともに前記記録媒体を支持可能な支持面と、
前記支持面と対向するように配置され、前記支持面よりも上流側で画像が記録された前記記録媒体が前記支持面に支持された際に前記画像を前記記録媒体に定着させる定着処理を施す定着手段とを備えた定着装置であって、
前記支持面は、前記支持面と前記定着手段とが対向する方向において、前記支持面よりも上流側の前記搬送経路に比べて前記定着手段から遠い位置にあることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記支持面は、前記記録媒体の搬送経路における下流側に向かうほど、前記支持面と前記定着手段とが対向する方向において前記定着手段から遠ざかるように傾斜した離間斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記支持面は、前記離間斜面よりも前記搬送経路の下流側に、前記記録媒体の搬送経路における下流側に向かうほど、前記支持面と前記定着手段とが対向する方向において前記定着手段へ近づくように傾斜した接近斜面を有していることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記搬送経路における前記離間斜面の下流端と前記接近斜面の上流端とは、連続するように接続されており、
前記離間斜面の下流端と前記接近斜面の上流端との接続部分は、前記記録媒体の搬送方向における前記定着手段の中央部と対応していることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記離間斜面の上流端及び前記接近斜面の下流端は、前記支持面と前記定着手段とが対向する方向において、前記定着手段からの距離が同じになっていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記支持面よりも上流側の前記搬送経路に対する前記離間斜面の傾斜角度は、前記支持面よりも上流側の前記搬送経路に対する前記接近斜面の傾斜角度よりも大きいことを特徴とする請求項3〜請求項5のうちいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記記録媒体に前記画像を記録する記録手段と、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の定着装置とを備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−56492(P2013−56492A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196894(P2011−196894)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】