説明

定着装置

【課題】ステイを覆うカバー部材の変形を抑制することができる定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置は、可撓性の定着ベルト110と、定着ベルト110の内部に配置されるハロゲンランプ120と、定着ベルト110の内周面に摺接するニップ板130と、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟む加圧ローラ140と、定着ベルト110の内部においてニップ板130を支持するステイ160と、定着ベルト110の内部においてステイ160を覆うカバー部材200と、を備え、ステイ160は、カバー部材200に設けられている係合部(第1係合部241)に係止するように構成されたフック部(第1フック部164)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シートに転写された現像剤像を熱定着する定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として、回転する筒状の定着ベルトと、定着ベルトの内部に配置されたニップ部材と、ニップ部材を加圧する剛性の高いステイと、定着ベルトの内部においてステイを覆うように配置されたカバー部材とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的に、カバー部材は、外周面の一部が定着ベルトと接触することで、定着ベルトの回転を案内している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−247026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したカバー部材は、熱膨張したり別の部材からの力を受けたりすることで、定着ベルトの径方向側に変形することがある。このようにカバー部材が変形すると、定着ベルトに強く接触したり、通常時には接触しない部分が定着ベルトに接触してしまったりすることで、定着ベルトの回転が不安定になったり、定着ベルトが破損したりするおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ステイを覆うカバー部材の変形を抑制することができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)前記した目的を達成するため、本発明の定着装置は、可撓性の筒状部材と、筒状部材の内部に配置される発熱体と、筒状部材の内周面に摺接するニップ部材と、ニップ部材との間で筒状部材を挟むバックアップ部材と、筒状部材の内部においてニップ部材を支持するステイと、筒状部材の内部においてステイを覆うカバー部材とを備えている。
そして、ステイとカバー部材の一方は、他方に設けられている係合部に係止するように構成されたフック部が設けられている。
【0007】
このように構成された定着装置によれば、カバー部材が熱などによって筒状部材の径方向に変形しようとしても、フック部が係合部に引っ掛かるため、カバー部材が大きく変形するのを防止することができる。これにより、カバー部材の変形により、カバー部材が筒状部材に不適切に接触することで筒状部材の回転が不安定になったり、筒状部材が破損したりするのを防止することができる。
【0008】
(2)そして、本発明の定着装置は、ニップ部材の筒状部材と摺接する面とは反対側の面に接触する温度検知部材と、カバー部材に支持されるとともに、温度検知部材をバックアップ部材側へ向けて付勢する弾性部材と、をさらに備えており、フック部は、弾性部材の付勢力を支持する向きで係合部に係止しているのが望ましい。
【0009】
このように構成された定着装置によれば、フック部が弾性部材の付勢力を支持するので、カバー部材が弾性部材の付勢力によって変形するのを低減することができる。
【0010】
(3)また、本発明の定着装置は、カバー部材が、筒状部材の軸線方向において、弾性部材に対応した位置に係合部またはフック部が設けられているのが望ましい。
【0011】
このように構成された定着装置によれば、カバー部材の弾性部材から付勢力を受けている部分の変形を確実に低減することができる。
【0012】
(4)そして、本発明の定着装置は、フック部が、カバー部材の記録シート搬送方向への移動を規制する向きで前記係合部に係止しているのが望ましい。
【0013】
このように構成された定着装置によれば、フック部がカバー部材の記録シート搬送方向への移動を規制するため、カバー部材が熱により変形し、記録シート搬送方向へ広がろうとするのを低減することができる。
【0014】
(5)また、本発明の定着装置は、フック部が、筒状部材の軸線方向における略中央部と両端部に設けられているのが望ましい。
【0015】
このように構成された定着装置によれば、フック部をひとつだけ設ける場合に比べて、確実にカバー部材の変形を抑制することができる。
【0016】
(6)そして、本発明の定着装置は、ステイが、ニップ部材側に開口を有しており、フック部が、ステイのニップ部材側の端部に形成されているのが望ましい。
【0017】
このように構成された定着装置によれば、カバー部材が変形したときに筒状部材の径方向に最も広がりやすいカバー部材の端部の変形を確実に低減することができる。
【0018】
(7)また、本発明の定着装置は、係合部が、フックであるのが望ましい。
このように構成された定着装置によれば、フック部と係合部が係合しやすい。
【0019】
(8)また、本発明の定着装置は、係合部が、ステイまたはカバー部材に開口を形成することで設けられていてもよい。
このように構成された定着装置によれば、係合部を形成するのが容易である。
【0020】
(9)そして、本発明の定着装置は、ステイが、金属板から形成され、フック部はステイの一部を切り起こすことで形成されているのが望ましい。
このように構成された定着装置によれば、フック部をステイに設けるのが容易である。
【0021】
(10)また、本発明の定着装置は、ステイの内側に、発熱体からの輻射熱をニップ部材に向けて反射する反射部材が設けられているのが望ましい。
【0022】
このように構成されていた定着装置によれば、ステイの内側に反射部材が設けられているので、ステイにフック部を設けたことで孔が形成されていても、発熱体からの輻射熱が逃げない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ステイとカバー部材の一方が、他方に設けられている係合部に係止するように構成されたフック部を有しているので、カバー部材が熱などにより筒状部材の径方向に変形しようとしても、フック部が係合部に引っ掛かるため、カバー部材が大きく変形するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】定着装置の断面図である。
【図3】ニップ板、ハロゲンランプ、反射部材、ステイ、カバー部材、サーモスタットおよびサーミスタを示す斜視図である。
【図4】ステイの斜視図である。
【図5】第1カバー部材が組み付けられたステイを示す斜視図である。
【図6】第1カバー部材が組み付けられたステイを示す斜視図である。
【図7】第1カバー部材および第2カバー部材が組み付けられたステイを示す斜視図である。
【図8】変形例に係る定着装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の一実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成を簡単に説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0026】
また、以下の説明において、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0027】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Sを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙S上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙S上に転写されたトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0028】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によってプロセスカートリッジ5(感光体ドラム61と転写ローラ63との間)に向けて供給される。
【0029】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ発光部や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。この露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0030】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0031】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナー(現像剤)を収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0032】
このプロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0033】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Sが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙S上に転写される。
【0034】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙S上に転写されたトナー像(トナー)は、定着装置100を通過することで用紙S上に熱定着される。トナー像が熱定着された用紙Sは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0035】
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、筒状部材の一例としての定着ベルト110と、ヒータの一例としてのハロゲンランプ120と、ニップ板(ニップ部材)130と、バックアップ部材の一例としての加圧ローラ140と、反射部材150と、ステイ160と、温度検出部材の一例としてのサーモスタット170および2つのサーミスタ180(図3参照)と、カバー部材200とを主に備えている。
【0036】
定着ベルト110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のベルトであり、符号を省略して示すガイド部材および後述する案内部213により回転が案内されている。なお、本発明において、定着ベルト110の材質は特に限定されず、例えば、ステンレス鋼などの金属から形成されていても良いし、ポリイミド樹脂などの樹脂から形成されていてもよい。さらに、定着ベルト110は、外周面にゴム状の弾性層が被覆されていてもよいし、定着ベルト110自体が弾性のあるゴム状の樹脂から形成されていてもよい。
【0037】
ハロゲンランプ120は、輻射熱を発してニップ板130および定着ベルト110を加熱することで用紙S上のトナーを加熱するヒータであり、定着ベルト110の内側において定着ベルト110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0038】
ニップ板130は、ハロゲンランプ120からの輻射熱を受ける板状の部材であり、その下面が筒状の定着ベルト110の内周面に摺接するように、定着ベルト110の内部に配置されている。本実施形態において、ニップ板130は、例えば、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、アルミニウム板などを加工することで形成されている。
【0039】
図3に示すように、ニップ板130は、ベース部131と、第1突出部132と、第2突出部133とを有している。
ベース部131は、その下面が定着ベルト110の内周面と摺接する部分であり、ハロゲンランプ120からの熱を、定着ベルト110を介して用紙S上のトナーに伝達する。
【0040】
第1突出部132および第2突出部133は、用紙搬送方向におけるベース部131の後端から用紙搬送方向に沿って後方に延びて略平板状に形成されている。第1突出部132は、ベース部131後端の左右方向における中央付近に1つ形成されており、その上面にサーモスタット170が対面して配置されている。また、第2突出部133は、ベース部131後端の左右方向における中央付近と右端付近にそれぞれ1つずつ形成されており、それぞれの上面にサーミスタ180が対面して配置されている。
【0041】
図2に示すように、加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟む部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。本実施形態においては、ニップ板130および加圧ローラ140は、一方が他方に向けて付勢されることで互いに圧接するように構成されている。
【0042】
加圧ローラ140は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することで定着ベルト110(または用紙S)との摩擦力により定着ベルト110を従動回転させる。トナー像が転写された用紙Sは、加圧ローラ140と加熱された定着ベルト110の間を搬送されることでトナー像(トナー)が熱定着されることとなる。
【0043】
反射部材150は、ハロゲンランプ120からの輻射熱(主に前後方向や上方向に向けて放射された輻射熱)をニップ板130に向けて反射する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120を取り囲む(覆う)ように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0044】
このような反射部材150によってハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に集めることで、ハロゲンランプ120からの輻射熱を効率よく利用することができ、ニップ板130および定着ベルト110を迅速に加熱することができる。
【0045】
反射部材150は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい金属板、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に屈曲させることにより形成されている。より詳細に、反射部材150は、湾曲形状(断面視略U形状)をなす反射部151と、反射部151の前後方向における両端部から前後方向外側に向けて延びるフランジ部152とを主に有している。
【0046】
ステイ160は、前後方向におけるニップ板130の両端部を支持する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120および反射部材150を覆うように配置されている。このステイ160は、比較的剛性が高い、例えば、鋼板などを、ニップ板130側に開口を有するとともに反射部材150(反射部151)に沿った形状(断面視略U形状)で屈曲させることにより形成されている。
【0047】
より詳細に、断面視略U形状のステイ160は、上壁161と、上壁161の前後端から下方へ延びる前壁162および後壁163を有している(図4参照)。そして、前壁162の下端部が、反射部材150の前側のフランジ部152を介してニップ板130の前端部を上から支持しており、後壁163の下端部が、反射部材150の後側のフランジ部152を介してニップ板130の後端を上から支持している。
【0048】
このようなステイ160は、ニップ板130に対し下方(加圧ローラ140側)から力が作用したときにその力を受け止めてニップ板130を支持する。なお、ここでいう力は、主に、加圧ローラ140からの付勢力を指す。
【0049】
また、ステイ160の上壁161の後端には、左右2箇所に、後方へ延びて形成された固定部(符号なし)が設けられている。この固定部には、ネジ251,252が螺合するネジ孔160A,160Bがそれぞれ形成されており、このネジ孔160A,160Bを利用して、後述するカバー部材200がネジ251,252により固定されている。
【0050】
そして、ステイ160は、図4に示すように、後述するカバー部材200の係合部の一例としての第1係合部241、第2係合部232および第3係合部235にそれぞれ係合するように構成された、フック部の一例としての第1フック部164、3つの第2フック部165および第3フック部166を有している。
【0051】
第1フック部164は、ステイ160の上壁161の左右方向略中央部を上側に突出するように切り起こすことで形成されている。そして、第1フック部164は、上壁161から上方へ向かって延びる第1延出部164Aと、第1延出部164Aの先端が上斜め後方に向かって延びる第1係止部164Bを有している(図2も参照)。
【0052】
第2フック部165は、ステイ160の前壁162の左右方向の略中央部と両端において、下端(ニップ板130側の端部)を前側に突出するように切り起こすことで形成されている。この第2フック部165は、前壁162から前方に向かって延びる第2延出部165Aと、第2延出部165Aの先端から右方に向かって延びる第2係止部165Bを有している。
【0053】
第3フック部166は、ステイ160の後壁163の左端において、下端を後側に突出するように切り起こすことで形成されている。この第3フック部166は、後壁163から後方に向かって延びる第3延出部166Aと、第3延出部166Aの先端が右方に向かって延びる第3係止部166Bを有している。つまり、第2フック部165の先端と第3フック部166の先端は、すべて同じ方向(右)を向いている。
【0054】
図2,3に示すように、サーモスタット170は、ニップ板130の温度を検知する部材であり、温度検知面(下面)が、第1突出部132の上面(定着ベルト110と摺接する面とは反対側の面)に対向して配置されている。また、サーモスタット170は、カバー部材200の第1カバー部材210に設けられた第1位置決め部211に嵌合することで、前後方向および左右方向に位置決めされており、さらに、コイルバネ191によって第1突出部132(加圧ローラ140側)に付勢されている。これにより、サーモスタット170とニップ板130の位置関係が安定するので、ニップ板130の温度をより精度良く検知することができるようになっている。
【0055】
サーミスタ180は、ニップ板130の温度を検知する温度センサであり、温度検知面(下面)が、第2突出部133の上面に対向して配置されている。また、サーミスタ180は、カバー部材200の第1カバー部材210に設けられた第2位置決め部212に嵌合することで、前後方向および左右方向に位置決めされており、さらに、コイルバネ192によって第2突出部133(加圧ローラ140側)に付勢されている。これにより、ニップ板130の温度をより精度良く検知することができるようになっている。
【0056】
カバー部材200は、サーモスタット170やサーミスタ180、コイルバネ191,192などを支持する部材であり、定着ベルト110の内部においてステイ160を覆うように配置されている。このカバー部材200は、第1カバー部材210と、第2カバー部材220とを主に備えて構成されている。
【0057】
第1カバー部材210は、断面視略U形状をなしており、ステイ160に設けられている各フック部164,165,166に対応した位置に形成される第1開口部231、3つの第2係合部232(図5参照)および第3係合部235と、定着ベルト110の回転を案内する案内部213と、サーモスタット170およびサーミスタ180が嵌合する第1位置決め部211および第2位置決め部212と、上壁に形成され、ネジ251が通る孔210Aを有している。
【0058】
第1開口部231は、第1カバー部材210の上壁の左右方向略中央部、より詳細には、左右方向において第1フック部164に対応する位置に、上下方向に貫通して形成されている。
【0059】
第2係合部232は、図5に示すように、第1カバー部材210の前壁の左右方向略中央部と両端部、より詳細には、左右方向の第2フック部165に対応した位置に、内面が凹むように形成され、第2フック部165を収容する凹部(符号省略)と、当該凹部の右側端部において、第1カバー部材210の前壁の内面から内側に突出するとともに左方に延び、第2フック部165と係合する3つのフック233を有している。このフック233は、先端が左を向いている。
【0060】
第3係合部235は、図6に示すように、第3フック部166が係合する部分であり、第1カバー部材210の後壁の左端部、より詳細には、左右方向の第3フック部166に対応した位置において、前後に貫通した開口234を形成することで設けられている。
【0061】
案内部213は、図2に示すように、第1カバー部材210の前壁の下端において、前側から後側へ向かうにつれて、ニップ板130と加圧ローラ140の間に近づくような曲面を有し、用紙Sの全幅に渡って形成されている。このように案内部213が形成されることで、定着ベルト110の内周面が案内部213に接触し、ニップ板130と加圧ローラ140の間に向けて案内される。
【0062】
第2カバー部材220は、図2,3に示すように、断面視略L形状をなし、第1フック部164に対応した位置に形成される第1係合部241と、上壁の内面に設けられ、コイルバネ191,192を支持するボス状の支持部221(1つのみ図示)と、上壁に形成され、ネジ251,252が通る孔220A,220Bを有している。
【0063】
第1係合部241は、左右方向の略中央部において、上面の前部が凹むようにして形成され、前端が左右両端に渡って上方に突出する突出部242を有している(図2参照)。第1係合部241は、左右方向(定着ベルト110の軸線方向)において、コイルバネ191に対応した位置に形成されている。なお、ここでの位置が対応するというのは、係合部またはフック部の中心と弾性部材の中心とが完全に一致している場合だけでなく、係合部(例えば、第1係合部241)またはフック部と弾性部材(例えば、コイルばね191)とが、筒状部材の軸線方向において部分的に重なるように配置されている場合も含む。このような配置であれば、係合部とフック部の係止により、カバー部材200の変形を効果的に抑制できるからである。
【0064】
以上のように構成されたカバー部材200にステイ160を組み付けるときには、まず、ステイ160を、下側から第1カバー部材210に入れ、図5に示すように、第1カバー部材210に収容させる。このとき、ステイ160を第1カバー部材210に近づけて入れていく操作のときに第2フック部165と第2係合部232を係合させるとともに第3フック部166と第3係合部235を係合させてもよいし、まずステイ160を図5の組付完了状態よりもやや左へずれた位置で第1カバー部材210に入れ、その後、第1カバー部材210に対しステイ160を右へスライドさせて、各フック部165,166をそれぞれ各係合部232,235に係合させてもよい。ここで、第2フック部165と第3フック部166が外側(前後)に開いた形状であると、ステイ160の左右方向へのスライドにより各フック部165,166と各係合部232,235を係合させやすくなる。なお、フック233と第3係合部235を、先端に向かうにつれて内側に狭まる形状としておいても同様の効果を得ることができる。
【0065】
次に、ステイ160が組み付けられた第1カバー部材210に対して、図7に示すように、第2カバー部材220を前側から装着する。このとき、第1係合部241を第1フック部164に係合させる。そして、図3に示すように、ネジ251を孔220A、孔210Aに通してネジ孔160Aに螺合させ、ネジ252を、孔220Bを通してネジ孔160Bに螺合させることで、カバー部材200をステイ160に固定する。
【0066】
このようにステイ160がカバー部材200(第1カバー部材210および第2カバー部材220)に組み付けられると、図5に示すように、3つの第2フック部165が、3つの第2係合部232に収容され、第2係止部165Bとフック233が前後方向(用紙搬送方向)で対向する。これにより、第1カバー部材210の前壁が熱により定着ベルト110の径方向に広がるように変形して、第1カバー部材210の前壁の下端が前側に移動しようとしても、第2係止部165Bがフック233と接触して、第1カバー部材210の前壁の下端の移動を規制し、第1カバー部材210の前壁が変形するのを抑制することができる。
【0067】
また、第1カバー部材210の前壁の下端には、定着ベルト110の回転を案内する案内部213が設けられているので、仮に、案内部213が変形した場合、定着ベルト110に大きな力が加わる。そこで、第2フック部165を左右方向の略中央部と両端部の計3箇所に設けることで、確実に第1カバー部材210の前壁の変形を抑制することができる。これにより、定着ベルト110の回転が不安定になったり、定着ベルト110が破損したりするのを抑制することができる。
【0068】
そして、図6に示すように、第3フック部166は、開口234から第1カバー部材210の外側へ回り込み、第3係止部166Bが第3係合部235と対向する。これにより、第1カバー部材210の後壁が熱により定着ベルト110の径方向に広がるように変形して、第1カバー部材210の後壁の下端が後側に移動しようとしても、第3係止部166Bが第3係合部235と接触するので、第1カバー部材210の後壁の下端の移動を規制し、第1カバー部材210の後壁が変形するのを抑制することができる。
【0069】
また、第1フック部164は、第1開口部231を通じて第1カバー部材210から外側へ突出する。そして、図7に示すように、第1カバー部材210から突出していた第1フック部164が第2カバー部材220に設けられている第1係合部241と係合する。具体的に、第1フック部164は、図2に示すように、第1係止部164Bの下面が突出部242に接触している。このように第1フック部164と第1係合部241が係合することで、コイルバネ191,192の付勢力を支持することができるので、第2カバー部材220の上方向への変形が抑制することができる。また、第1フック部164と第1係合部241は、左右方向においてコイルバネ191と同じ位置に設けられているので、第2カバー部材220がコイルバネ191から付勢力を受けて変形するのを確実に抑制することができる。
【0070】
以上によれば、本実施形態において以下のような作用効果を得ることができる。
ステイ160に設けられている第1フック部164、第2フック部165および第3フック部166が、カバー部材200に設けられている第1係合部241、第2係合部232および第3係合部235にそれぞれ係止されるように構成されているので、カバー部材200が熱により定着ベルト110の径方向へ変形しようとしても、第1フック部164、第2フック部165および第3フック部166が、それぞれ第1係合部241、フック233および第3係合部235に引っ掛かるので、カバー部材200が大きく変形するのを防止することができる。これにより、カバー部材200が大きく変形し、カバー部材200が定着ベルト110に不適切に接触する(例えば、案内部213が前側へ移動することで、定着ベルト110に強く接触したり、通常時、カバー部材200の定着ベルト110と接触していない部分が定着ベルト110に接触したりする)ことで、定着ベルト110の回転が不安定になったり、定着ベルト110が破損したりするのを防止することができる。
【0071】
そして、第1フック部164は、コイルバネ191,192の付勢力を支持する向きで第1係合部241に係止しているので、当該付勢力によって第2カバー部材220が変形するのを抑制することができる。
【0072】
また、第1フック部164は、第2カバー部材220の第1係合部241は、左右方向において、コイルバネ191に対応した位置に設けられているので、第2カバー部材220のコイルバネ191を支持している部分の変形をより低減することができる。
【0073】
そして、第2フック部165および第3フック部166は、それぞれ第1カバー部材210の前後方向への移動を規制する向きで第2係合部232と第3係合部235に係止しているため、第1カバー部材210が熱によって変形し、前後方向へ広がろうとするのを低減することができる。
【0074】
また、第2フック部165は、左右方向における略中央部と両端部に設けられているので、第2フック部165を1つだけ設けた場合に比べて、確実に第1カバー部材210の変形を抑制することができる。
【0075】
そして、第2フック部165および第3フック部166は、ステイ160の下端部に形成されているので、第1カバー部材210が変形したときに定着ベルト110の径方向に最も広がりやすい第1カバー部材210の端部の変形を低減することができる。
【0076】
また、第1フック部164、第2フック部165および第3フック部166は、金属板からなるステイ160の一部を切り起こすことで形成されているので、第1フック部164、第2フック部165および第3フック部166をステイ160に設けるのが容易である。
【0077】
そして、ステイ160の内側には、反射部材150が設けられているので、ステイ160の一部を切り起こすことで形成されている孔からハロゲンランプ120の輻射熱がもれない。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0079】
前記実施形態では、フック部の一例としての第1フック部164、第2フック部165および第3フック部166が、ステイ160に設けられ、係合部の一例としての第1係合部241、第2係合部232および第3係合部235がカバー部材200に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フック部はカバー部材200に設けられており、係合部はステイに設けられていてもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、第1フック部164の第1係止部164Bは、第1延出部164Aの先端が上斜め後方に向かって延びて形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1係止部164Bは、図8に示すように、第1延出部164Aの先端が後方に向かって略水平に延びていてもよい。このように第1係止部164Bを形成することで、第1フック部164が第1係合部241に確実に係止され、ステイ160や第2カバー部材220が移動するのを防止することができる。
【0081】
そして、前記実施形態では、ニップ部材と発熱体を別部品としていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ニップ部材と発熱体の両方の役割を果たす部材として、板状のセラミックヒータを採用してもよい。
【0082】
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ140を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【0083】
前記実施形態では、記録シートとして、普通紙やはがきなどの用紙Sを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 レーザプリンタ
100 定着装置
110 定着ベルト
120 ハロゲンランプ
130 ニップ板
140 加圧ローラ
150 反射部材
160 ステイ
164 第1フック部
165 第2フック部
166 第3フック部
170 サーモスタット
180 サーミスタ
191,192 コイルバネ
200 カバー部材
210 第1カバー部材
213 案内部
220 第2カバー部材
221 支持部
231 第1開口部
232 第2係合部
234 第3係合部
241 第1係合部
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートに転写された現像剤像を熱定着する定着装置であって、
可撓性の筒状部材と、
前記筒状部材の内部に配置される発熱体と、
前記筒状部材の内周面に摺接するニップ部材と、
前記ニップ部材との間で前記筒状部材を挟むバックアップ部材と、
前記筒状部材の内部において前記ニップ部材を支持するステイと、
前記筒状部材の内部において前記ステイを覆うカバー部材と、を備え、
前記ステイと前記カバー部材の一方は、他方に設けられている係合部に係止するように構成されたフック部が設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ニップ部材の前記筒状部材と摺接する面とは反対側の面に接触する温度検知部材と、
前記カバー部材に支持されるとともに、前記温度検知部材を前記バックアップ部材側へ向けて付勢する弾性部材と、をさらに備え、
前記フック部は、前記弾性部材の付勢力を支持する向きで前記係合部に係止していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記筒状部材の軸線方向において、前記弾性部材に対応した位置に前記係合部または前記フック部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記フック部は、前記カバー部材の記録シート搬送方向への移動を規制する向きで前記係合部に係止していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記フック部は、前記筒状部材の軸線方向における略中央部と両端部に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記ステイは、前記ニップ部材側に開放しており、
前記フック部は、前記ステイの前記ニップ部材側の端部に形成されていることを特徴とする請求項1、請求項4および請求項5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記係合部は、フックであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記係合部は、前記他方に開口を形成することで設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記ステイは、金属板から形成され、
前記フック部は、前記ステイの一部を切り起こすことで形成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記ステイの内側には、前記発熱体からの輻射熱を前記ニップ部材に向けて反射する反射部材が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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