説明

定着装置

【課題】
定着性の悪化による画像ムラを防止しつつ、定着ニップ部における非通紙部の温度が過剰に上昇することに起因する加熱ローラおよび加圧ローラ等の劣化を抑制することができる定着装置および該定着装置を備える画像形成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
被定着体上のトナー画像を定着する定着装置であって、熱源によって加熱される第1定着部材と、第1定着部材に対して圧接することで一方向に伸びた定着部を形成する第2定着部材と、一方向に伸びた形状であり、第1定着部材または第2定着部材の何れか一方である被接触定着部材に接触する均熱部材を有しており、均熱部材は、被接触定着部材に対して、被接触定着部材の長手方向の中心軸と均熱部材の長手方向の中心軸とが略平行になるように接触する第1状態と、被接触定着部材に接触する面積が第1状態より小さい第2状態とを取り得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にトナー等の転写材を熱によって定着させるための被加熱体を備えた定着装置、及び、該定着装置を備えた、複写機、ファクシミリ、各種プリンター等、の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式あるいは静電記録方式の画像形成装置に用いられる定着装置としては、定着用の被加熱体としてゴムローラを用いた熱ローラ定着方式の定着装置がある。このような定着装置では、ゴムローラとゴムローラに圧接配置される定着ローラとによって形成される定着ニップ部に記録媒体が搬送され、記録媒体上のトナー画像が定着される。
【0003】
しかしながら、熱ローラ定着方式の定着装置に用いられるゴムローラは熱容量が大きいため、定着に際して、大きな電力を消費するという問題があった。また、画像形成に際してゴムローラの昇温に時間がかかり、画像形成開始までのウォーミングアップ時間が長くなるという問題もあった。
【0004】
このような問題を解決するために、定着用の被加熱体として低熱容量の熱定着フィルムを有する定着ベルトを用いることで、熱伝導効率を大幅に向上させたフィルム定着方式の定着装置が実用化されている。フィルム定着方式の定着装置は、定着時の電力消費量が小さく、また、ウォーミングアップ時間を短縮することができる。
【0005】
さらに、定着ベルトを加熱する加熱部として、発熱効率に優れた電磁誘導加熱方式を採用した定着装置が実用化されている。また、このような定着装置を備えることによって、ウォーミングアップ時間を大幅に短縮するとともに画像形成の生産性を高めた画像形成装置が実用化されている。
【0006】
しかしながら、このような定着装置を用いて、比較的小さいサイズの記録媒体上のトナー画像を連続して定着する場合には、定着ニップ部における非通紙部の温度が過剰に上昇し、定着ベルト等が早期に劣化するという問題があった。
【0007】
そのような課題を解決するものとして、特許文献1には、被加熱体であるヒートローラの非通紙部の温度が設定温度以上である場合に、ヒートローラの長手方向に対して全体的に当接する熱移動ローラを有する定着装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、被加熱体である加熱ローラの非通紙部の温度が所定温度以上である場合に、加熱ローラの非通紙部にのみ当接する冷却ローラを有する定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-333463号公報
【特許文献2】特開平11-174897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の定着装置は、熱容量が比較的高く温度の低下した熱移動ローラがヒートローラの長手方向に対して全体的に当接するため、定着ニップ部における通紙部の温度が急激に低下し、画像ムラや定着不良が発生するという問題があった。
【0011】
また、特許文献2記載の定着装置の構成では、冷却ローラを加熱ローラの非通紙部にのみ当接させるため、多量の記録媒体を連続して定着する場合には、放熱される熱が少なく非通紙部を十分に冷却できないという問題があった。このような定着装置において非通紙部を十分に冷却するためには、冷却ローラの内径を大きくする必要があり、装置全体が大型化するという問題もあった。
【0012】
本願発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、定着性の悪化による画像ムラを防止しつつ、非通紙部の温度が過剰に上昇することに起因する加熱ローラおよび加圧ローラ等の劣化を抑制することができる定着装置および該定着装置を備える画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願発明の一態様である定着装置は、熱源によって加熱される第1定着部材と、前記第1定着部材に対して圧接配置される第2定着部材と、を備えており、被定着体上のトナー画像を定着する定着装置であって、前記第1定着部材と前記第2定着部材とは、前記第1定着部材と前記第2定着部材とが圧接する部分であって、前記被定着体上の前記トナー画像を定着する部分である一方向に伸びた定着部を形成し、一方向に伸びた形状であり、前記第1定着部材または前記第2定着部材の何れか一方である被接触定着部材に接触して、前記定着部の温度分布を均一に近づける均熱部材を有しており、前記均熱部材は、前記被接触定着部材に対して、前記被接触定着部材の長手方向の中心軸と前記均熱部材の長手方向の中心軸とが略平行になるように接触する第1状態と、前記被接触定着部材に接触する面積が前記第1状態より小さい第2状態と、を取り得る。
【0014】
さらに、上記定着装置は、前記定着部は、前記被定着体が通過する通過部と、前記被定着体が通過しない非通過部と、から形成され、前記第1状態は、前記均熱部材が、前記被接触定着部材の前記非通過部を形成しうる外周面領域である非過領域に接触する状態であり、前記第2状態は、前記均熱部材が、前記被接触定着部材の前記通過部を形成しうる外周面領域に接触しない状態であってもよい。
【0015】
さらに、本願発明の一態様である定着装置において、前記被接触定着部材は、前記被定着体が通過する方向に、回転可能な筒状の回転体であって、前記定着部は、前記被定着体が通過する通過部と、前記被定着体が通過しない非通過部と、から形成され、前記第1状態は、前記均熱部材が、前記被接触定着部材の前記非通過部を形成しうる外周面領域に対応する内周面上の領域である非通過領域に接触する状態であり、前記第2状態は、前記均熱部材が、前記被接触定着部材の前記通過部を形成しうる外周面領域に対応する内周面領域に接触しない状態であってもよい。
【0016】
さらに、本願発明の一態様である定着装置は、前記均熱部材は、前記第1状態である場合に第1の位置に配置され、前記第2状態である場合に第2の位置に配置されており、前記均熱部材を前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動可能に支持する均熱部材移動手段を有してもよい。
【0017】
さらに、本願発明の一態様である定着装置において、前記第1状態および前記第2状態において、前記均熱部材の一端部側の外周面が前記非通過領域に対して接触するように、前記均熱部材を保持する均熱部材保持手段を有しており、前記均熱部材移動手段は、前記第2状態において前記均熱部材の他端部側の外周面が前記被接触定着部材に対して離隔するように、前記均熱部材を移動させ、前記第1状態において前記均熱部材の他端部側の外周面が前記被接触定着部材に対して接触するように、前記均熱部材を移動させてもよい。
【0018】
さらに、本願発明の一態様である定着装置は、前記定着部の伸びる方向における前記通過部の端部側の温度を検出する温度検出手段と、前記温度が所定の温度に達した場合に、前記均熱部材を前記第1の位置に移動させるように、前記均熱部材移動手段を制御する制御手段と、を有してもよい。
【0019】
また、上記目的を達成するために、本願発明の一態様である画像形成装置は、上記定着装置を備える。
【0020】
また、本願発明の一態様である画像形成装置は、本願発明の一態様である定着装置を備え、画像情報を含むプリントジョブに基づいて前記被定着体上にトナー画像を形成する画像形成装置であって、前記定着部を通過する前記被定着体のサイズを検知するサイズ検知手段と、前記サイズ検知手段により検知された被定着体のサイズに基づいて、前記均熱部材移動手段が前記均熱部材を前記第1の位置に移動させるタイミングを設定し、該タイミングで前記均熱部材を前記第1の位置に移動させるように前記均熱部材移動手段を制御する制御手段と、を有する。
【0021】
さらに、本願発明の一態様である画像形成装置において、前記制御手段は、前記熱源が連続して作動した時間に基づいて、前記タイミングを変更してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の定着装置および画像形成装置によれば、均熱部材が第1状態となった場合には、定着部の通過部に相当する第1定着部材および第2定着部材の表面から奪う熱を抑えることで、通過部の温度低下を抑制しつつ、定着部の非通過部に相当する第1定着部材および第2定着部材の温度上昇を抑制することができる。したがって、定着性の悪化による画像ムラを防止しつつ非通過部の温度が過剰に上昇することに起因する加圧ローラ等の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明に係る画像形成装置GS1の一例を示す概略構成図である。
【図2】本願発明に係る画像形成装置GS1に設けられる定着装置TS1の一例を示す概略図である。
【図3】本願発明に係る定着装置TS1の一例を示す概略図である。
【図4】本願発明に係る定着装置TS1に設けられる均熱化ローラ移動装置の配置の一例を示す概略図である。
【図5】本願発明に係る定着装置TS1に設けられる均熱化ローラ移動装置の配置の一例を示す概略図である。
【図6】本願発明に係る定着装置TS1に設けられる均熱化ローラ移動装置の配置の一例を示す概略図である。
【図7】本願発明に係る定着装置TS1に設けられる均熱化ローラ移動装置の配置の一例を示す概略図である。
【図8】本願発明に係る定着装置TS1において定着することができる最大サイズの記録媒体を連続して定着した場合における温度推移の一例を示すグラフである。
【図9】均熱化ローラが加圧ローラから完全に離間している定着装置において、記録媒体を連続して定着した場合における定着時の温度推移の一例を示すグラフである。
【図10】本願発明に係る定着装置TS1における加熱ローラの発熱分布の一例を示すグラフである。
【図11】本願発明に係る定着装置TS1において、均熱化ローラ移動動作1を行った場合における温度推移の一例を示すグラフである。
【図12】均熱化ローラが加圧ローラから完全に離間している定着装置において、小サイズ記録媒体を連続して定着した場合における定着時の温度推移の一例を示すグラフである。
【図13】本願発明に係る定着装置TS1における均熱化ローラ移動動作1の一例を示すフローチャートである。
【図14】記録媒体の通紙サイズと、第1所定時間との関係の一例を示すテーブルである。
【図15】熱源の通電時間と、第2所定時間との関係の一例を示すテーブルである。
【図16】熱源が一時停止した状態からウォームアップを再開した際の第1センサの温度と、第3所定時間との関係の一例を示すテーブルである。
【図17】本願発明に係る定着装置TS1において、均熱化ローラ移動動作2を行った場合における温度推移の一例を示すグラフである。
【図18】本願発明に係る定着装置TS1において、均熱化ローラ移動動作2を行った場合における温度推移の一例を示すグラフである。
【図19】本願発明に係る定着装置TS1における均熱化ローラ移動動作2の一例を示すフローチャートである。
【図20】本願発明に係る定着装置TS1の一例を示す概略図である。
【図21】本願発明に係る定着装置TS1における均熱化ローラと加圧ローラの配置の一例を示す概略図である。
【図22】本願発明に係る定着装置TS1における加圧ローラの弾性層2022が熱膨張したときの均熱化ローラと加圧ローラとの接触状態を示す概略図である。
【図23】本願発明に係る定着装置TS1における加圧ローラの弾性層2022が熱膨張したときの均熱化ローラと加圧ローラとの接触状態を示す概略図である。
【図24】本願発明に係る定着装置TS1におけるウォームアップ開始からウォームアップ完了後の温度推移の一例を示すグラフである。
【図25】本願発明に係る定着装置TS1において小サイズ記録媒体を連続して定着した場合における定着時の温度推移の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら本願発明の実施形態を説明する。
(1)実施の形態1
図1は、本願発明の一例である実施の形態1に係る画像形成装置であるタンデム形カラーデジタル画像形成装置(以下、「画像形成装置GS1」という)を示す概略構成図である。画像形成装置GS1は、本願発明の一例である実施の形態1に係る定着装置(以下、「定着装置TS1」)を備える。まず、図1を参照して、画像形成装置GS1について説明する。
【0025】
<画像形成装置GS1>
画像形成装置GS1は、カラー画像を形成する画像形成装置であって、いわゆる中間転写方式のものである。すなわち複数の像担持体に形成される互いに異なる色のトナー像を、共通の中間転写ベルトに順次に1次転写することにより当該中間転写ベルト上で単色のトナー像を重ね合わせ、この中間転写ベルト上に形成されたカラートナー像を記録媒体に一括して2次転写することにより記録媒体上においてカラートナー像を形成する。
【0026】
画像形成装置GS1は、図1に示されるように、中間転写ベルト17を備えており、中間転写ベルト17の外周面に対して設けられた画像形成ユニット配置領域には、中間転写ベルト17の移動方向に沿って、各々、イエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像およびブラックトナー像を形成する4つの画像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kが並ぶよう設けられている。さらに、中間転写ベルト17の移動方向における最下流位置の画像形成ユニット30Kより下流側の位置には、2次転写手段14が設けられており、さらに下流側の位置には、中間転写ベルト17上の未転写トナーを除去する中間転写ベルトクリーニング手段18Tが設けられている。また、2次転写手段14における記録媒体Pの搬送方向下流側(図1中上方側)の位置には、定着装置TS1が設けられている。また、画像形成装置GS1は、各画像形成工程を制御する制御部50と、各画像形成工程において必要なデータを記憶するメモリ501と、各画像形成工程の実行時間等をカウントする第1タイマー502および第2タイマー503とを有する。
【0027】
画像形成ユニットは、例えば、イエロートナー像に係る画像形成ユニット30Yにおいては、回転されるドラム状の感光体よりなる像担持体10Yと、像担持体10Yを帯電させる帯電装置11Yと、画像形成ユニット外部の露光装置12Yによって露光された像担持体10Y上にイエロートナーを含む現像剤により現像を行う画像形成部13Yとを備えている。像担持体10Yの外周面に対して、各々、像担持体10Yの回転方向に沿って、帯電装置11Yおよび画像形成部13Yがこの順に並ぶよう配設されている。さらに、像担持体10Yの回転方向において画像形成部13Yより下流の位置に備えられた1次転写手段15Yの下流の位置には、クリーニングブレードを備えた像担持体クリーニング手段18Yが設けられている。
【0028】
像担持体10Yは、ドラム状金属基体の外周面に有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層を有するものであり、図1においては紙面に垂直な方向に伸びる状態で配設されている。
【0029】
帯電装置11Yと露光装置12Yとは、像担持体10上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段を構成する。
【0030】
帯電装置11Yは、例えばグリッド電極と放電電極とを有するスコロトロン帯電器であって、像担持体10Yの表面を帯電させる。
【0031】
露光装置12Yは、例えば、レーザ照射装置よりなり、レーザ光を照射することで像担持体10Yを露光する。レーザ光は、例えば、スキャナ(図示せず)によって読み取られ、電気信号に変換された画像信号に基づいて、照射される。
【0032】
画像形成部13Yは、例えば、現像剤収容部と、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブとを有しており、画像形成時には、現像スリーブに、不図示の電圧印加手段から直流および/または交流バイアス電圧が印加される。
【0033】
1次転写手段15Yは、中間転写ベルト17を介して像担持体10Yの表面に押圧された状態で1次転写ニップ部を形成するよう配設された1次転写ローラ151Yと、この1次転写ローラ151Yに接続された、例えば、定電流電源よりなる転写電流供給装置(図示せず)とにより構成されている。
【0034】
1次転写手段15Yは、例えば、転写電流供給装置によって1次転写ローラ151Yに1次転写電流が供給されることにより、像担持体10Y上に形成されたイエロートナー像を、中間転写ベルト17に転写する、いわゆる接触転写方式とすることができる。
【0035】
像担持体クリーニング手段18Yは、クリーニングブレードを有する。クリーニングブレードは、例えば、ウレタンゴムなどの弾性体よりなり、その基端部分が支持部材によって支持されると共に、先端部分が像担持体10Yの表面に当接されるよう設けられている。クリーニングブレードの基端側から伸びる方向は、当接箇所における像担持体10Yの回転による移動方向と反対方向である、いわゆるカウンター方向とすることができる。
【0036】
他の画像形成ユニット30M、30C、30Kの各々についても、イエロートナーを含む現像剤の代わりにそれぞれマゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーを含む現像剤が用いられることの他は、イエロートナー像に係る画像形成ユニット30Yと同様の構成とされている。
【0037】
1次転写手段15M、15C、15Kの各々においても、イエロートナー像に係る画像形成ユニット30Yと同様に、1次転写電流が供給されている。像担持体10Y、10M、10C及び10K上に形成された各トナー像を、所定のタイミングで矢印T1方向に循環駆動される中間転写ベルト17上に1次転写することにより、中間転写ベルト17上に前記の単色トナー像が重なった多色トナー像が形成される。
【0038】
2次転写手段14は、中間転写ベルト17を介して駆動ローラ142を押圧して2次転写ニップ部を形成する2次転写ローラ141と、この2次転写ローラ141に接続された、転写電圧印加装置(図示せず)とにより構成されている。2次転写ローラ141は、例えば、半導電性のゴムローラとすることができる。
【0039】
2次転写手段14は、いわゆる接触転写方式であって、2次転写ローラ141と駆動ローラ142の間に転写電圧印加装置(図示せず)から転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト17上に形成されたカラートナー像を、搬送されてきた記録媒体Pに2次転写する。
【0040】
2次転写ニップ部で記録媒体P上にトナー画像が2次転写され、そして、トナー画像が2次転写された記録媒体Pは、定着装置TS1に搬送される。
【0041】
定着装置TS1は、詳細は後述するが、加熱ローラ20と加圧ローラ21とを備える電磁誘導加熱方式によるものであり、定着装置TS1に搬送された記録媒体P上のカラートナー像を加熱、加圧して、記録媒体P上に定着させる。定着後の記録媒体Pは、不図示の排出トレイ上に排出される。定着装置TS1は、詳細は後述するが、加熱ローラ20および加圧ローラ21の過剰な昇温を防止するための均熱化ローラ移動動作を行うことができる。
【0042】
なお、制御部50は、定着装置TS1に搬送された記録媒体Pの種別等に応じて適切な定着温度となるように、加熱ローラ20の温度を所定の定着温度にするためのウォームアップ制御を行う。
【0043】
また、制御部50は、記録媒体の定着する際には、誘導コイルユニット22等を制御することで、加熱ローラ20の温度を所定の定着温度に維持するプリント制御を行い、記録媒体の定着が終了した際には、加熱ローラ20の温度を定着温度より低い所定のスタンバイ温度にするためのスタンバイ制御を行う。
【0044】
中間転写ベルト17の移動方向における2次転写手段14より下流側の位置には、中間転写ベルト17上における未転写トナー等を除去するクリーニングブレード181と、クリーニングブレード181によって掻き取られた未転写トナー等を回収する回収部182とを備えた中間転写ベルトクリーニング手段18Tが設けられている。回収部182内に収容された未転写トナー等の廃トナーは、例えば、廃トナーボックス(図示せず)に搬送され画像形成装置外部に排出することができる。
【0045】
クリーニングブレード181は、中間転写ベルト17の幅方向に伸びたブレード形状をしており、例えば、ウレタンゴムなどの弾性体より構成することができる。クリーニングブレード181の基端部分は、支持部材によって支持されている。また、クリーニングブレード181の基端側から伸びる方向は、当接箇所における中間転写ベルト17の回転による移動方向と反対方向である、いわゆるカウンター方向とすることができる。
【0046】
<定着装置TS1>
次に、図2〜図7を参照して、定着装置TS1について、より詳細に説明する。
【0047】
定着装置TS1は、図2および図3に示すように、発熱体である加熱ローラ20と、加熱ローラ20に圧接配置される加圧ローラ21と、加熱ローラ20を加熱させるための誘導コイルユニット22と、加熱ローラ20の外周面における長手方向の中央部の温度を検知するための第1温度センサS1と、加熱ローラ20の外周面における長手方向の一端部側の温度を検知するための第2温度センサS2と、加圧ローラ21に当接する均熱化ローラ23と、加圧ローラ21に接触する位置と離隔する位置との間で均熱化ローラ23を移動させる均熱化ローラ移動装置24と、を備えている。記録媒体P上に転写されたトナー画像は、加熱ローラ20と加圧ローラ21とによって形成される定着ニップ部Nにおいて定着される。
【0048】
加熱ローラ20は、一方向に伸びる定着ローラ202と、定着ローラ202の外周面を覆うように設けられた定着ベルト201とを有しており、長手方向の一端部と他端部に設けられた定着側板と、断熱ブッシュ204と、ベアリング205とによって、回転可能に軸受け支持されている。加熱ローラ20は、不図示の駆動伝達機構を介して駆動モータMから駆動ギアGに回転力が伝達されることにより、図2の矢印T2方向に所定の速度で回転駆動される。ここで、加熱ローラ20に圧接配置される加圧ローラ21は、加熱ローラ20の回転に伴って、図2における矢印T3方向に従動回転する。
【0049】
定着ローラ202は、円柱上の芯金2021と、芯金2021を覆うように形成された弾性層2022とを有している。芯金2021は、SUS(ステンレス鋼)等の材料から構成され、弾性層2022は、例えば、シリコーンスポンジゴムとすることができる。
【0050】
定着ベルト201は、発熱層である導電層2011と、表層2012とを有しており、この順に、定着ローラ202の弾性層2022に積層するように構成される。導電層2011は、厚さが約0.2mmの円筒形状であり、例えば、ニッケル、SUS等の材料から構成される。表層2012は、厚さが約30μmのPFA(パーフルオロアルコキシ)チューブである。
【0051】
加圧ローラ21は、加圧ローラ21の中心軸と加熱ローラ20の中心軸とが平行となるように、不図示の加圧機構により押圧されることで、加熱ローラ20の下部(図2中下方向)に圧接配置されている。なお、ここでの平行とは略平行を含む概念である。加圧ローラ21は、定着ベルト201の外側から定着ベルト201を介して定着ローラ202を押圧することで、定着ベルト201の外周面と加圧ローラ21の外周面との間に定着ニップ部Nを形成する。
【0052】
加圧ローラ21は、円柱状の芯金211と、耐熱弾性層212と、離型層213とを有しており、芯金211の周囲に耐熱弾性層212を介して離型層213が積層されている。芯金211は、アルミニウム等の材料から構成され、耐熱弾性層212は、例えば、シリコーンゴムとすることができる。離型層213は、PFAやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)コート等からなる。加圧ローラ21の外形は、約35mmであり、長手方向の寸法は約300mmである。
【0053】
ここで、加圧ローラ21および加熱ローラ20は、それぞれ、外周面上の領域であって、定着装置TS1において定着することができる最大サイズの記録媒体P(例えば、A4またはA3Rの用紙)を挟持し、定着するための領域である第1領域L1と、外周面上の領域であって第1領域L1以外の領域である第2領域L2を有している。
【0054】
定着ニップ部Nは、記録媒体Pが通過する通過部と、通過部以外の部分である非通過部とを有している。通過部は、加圧ローラ21の第1領域L1と加熱ローラ20の第1領域L1とにより形成され、非通過部は、加圧ローラ21の第2領域L2と加熱ローラ20の第2領域L2とにより形成される。
【0055】
また、記録媒体Pは、定着ニップ部Nへ搬送される際に、搬送方向T4に直交する方向における記録媒体Pの中央部が、通過部の中央部に設定される搬送基準位置を実質的に通るように、搬送される。
【0056】
なお、以下の説明において、便宜上、定着ニップ部Nの通過部内の領域であって、所定サイズの記録媒体(以下「小サイズ記録媒体」とする)が通過する領域外の領域を、小サイズ記録媒体非通過部とする。小サイズ記録媒体は、例えば、官製はがき等であり、定着ニップ部Nの通過に際し、定着ニップ部Nの長手方向における記録媒体の幅が、定着ニップ部Nの通過部の長手方向の幅より、相対的に狭い記録媒体である。また、定着ニップ部Nへの小サイズ記録媒体の搬送について、例えば、A4の用紙を縦搬送する場合、言い換えると、長辺が搬送方向と平行になるような方向にA4の用紙を搬送する場合も、小サイズ記録媒体の搬送に該当する。
【0057】
誘導コイルユニット22は、定着ベルト201の導電層2011に磁束を作用させ発熱させるものであり、加熱ローラ20を加熱するための熱源としての役割を果たしている。誘導コイルユニット22は、加圧ローラ21とは反対側の加熱ローラ20の外側において、加熱ローラ20の外周面に対し、所定の距離だけ離間するように配置され、ブランケット221を介して、定着側板に固定されている。このように誘導コイルユニット22は、加熱ローラ20の外周面に沿った形で設けられている。
【0058】
誘導コイルユニット22は、磁性芯材223(磁性体コア)と誘導コイル224(電磁誘導加熱コイル)とを有している。磁性芯材223は、例えば、フェライトコアや積層コアより形成される。誘導コイル224は、表面に融着層と絶縁層とを有する銅線が複数回まかれることによって構成されており、例えば、銅線としてリッツ線を用いることができる。リッツ線を横長扁平のシート状渦巻きコイルに巻き回すことによって、誘導コイル224を形成し、この誘導コイル224と誘導コイル224を覆わせた磁性芯材223とを電気絶縁性の樹脂によって一体にモールドすることによって、誘導コイルユニット22を構成することができる。
【0059】
誘導コイル224は、高周波インバータ回路IK(励起回路)から高周波の交流電流が流されることによって生じる交番磁界により、加熱ローラ20を電磁誘導で発熱させ、定着ニップ部Nの温度を上昇させる。
【0060】
第1温度センサS1は、通過部を形成し得る加熱ローラ20の外周面の温度を検知するために設置されている。本実施例において、第1温度センサS1は、加熱ローラ20に対して非接触に設置されるサーミスタであり、加熱ローラ20の外周面における長手方向の中央部の温度を検知している。サーミスタは、搬送基準位置を形成しうる加熱ローラ20の外周面上の領域に対して、加熱ローラ20の径方向の外側の位置に設けられている。
【0061】
制御部50は、第1温度センサS1の検知結果に基づいて、高周波インバータから誘導コイル224への供給電力を制御することで、記録媒体Pの定着時において加熱ローラ20の表面温度が所定の定着温度となるように制御する。
【0062】
第2温度センサS2は、非通過部を形成し得る加熱ローラ20の外周面の温度を検知するために設置されている。本実施例において、第2温度センサS2は、加熱ローラ20に対して非接触に設置されるサーミスタであり、加熱ローラ20の外周面における長手方向の一端部側の温度を検知している。非通過部を形成し得る加熱ローラ20の外周面上の領域に対して、加熱ローラ20の径方向の外側の位置に設けられている。
【0063】
制御部50は、詳細は後述するが、第2温度センサS2の検知結果に基づいて、小サイズ記録媒体を連続して定着する場合において発生する小サイズ記録媒体非通過部の過剰な昇温を低減するための均熱化ローラ移動動作1および均熱化ローラ移動動作2を行うことができる。
【0064】
なお、第1温度センサS1、および第2温度センサS2は、それぞれ、通過部を形成し得る加圧ローラ21の外周面の温度、および非通過部を形成し得る加圧ローラ21の外周面の温度を検知するように、設置してもよい。また、第1温度センサS1および第2温度センサS2として、加熱ローラ20に接触することによって、加熱ローラ20の温度検知を行うセンサを用いてもよい。
【0065】
均熱化ローラ23は、均熱化ローラ23の外周面が加圧ローラ21に当接することで、加圧ローラ21の長手方向の温度分布差を低減し、定着ニップ部Nの長手方向の温度分布の均一化を図ることができる。均熱化ローラ23としては、例えば、銅やアルミニウムなどの熱伝動が良い金属のパイプに作動液を封入することで形成されるヒートパイプを用いることができる。ヒートパイプは、内部に封入された作動液の潜熱を利用することで、当接する加圧ローラ21の長手方向の温度分布差を低減することができる。なお、作動液としては水を用いることができる。
【0066】
均熱化ローラ23は、図3に示すように、一方向に延在する形状であって、加圧ローラ21の第2領域L2に相当する外周面に対して、均熱化ローラ23の外周面の一端部側が当接している。また、均熱化ローラ23は、均熱化ローラ23の中心軸回りに回転可能であるように、保持部231によって支持されており、加圧ローラ21の回転に伴って矢印T5方向に従動回転する。均熱化ローラ23の長手方向の寸法は、約300mmである。
【0067】
均熱化ローラ23は、詳細は後述するが、加圧ローラ21の回転軸(中心軸)と均熱化ローラ23の回転軸(中心軸)とが実質的に平行になった状態で、均熱化ローラ23の外周面が加圧ローラ21の外周面に接触する第1状態と、加圧ローラ21の第2領域L2に相当する外周面に対して、均熱化ローラ23の外周面の一端部側が接触する第2状態とを有する。なお、図3において、均熱化ローラは第2状態にある。
【0068】
均熱化ローラ23は、第1状態において、加圧ローラ21の第1領域L1および第2領域L2に相当する外周面に当接しており、第2状態において、加圧ローラ21の第1領域L1に相当する外周面に接触することなく、加圧ローラ21の第2領域L2に相当する外周面に当接している。なお、ここでの実質的に平行とは、略平行を含む概念である。
【0069】
また、均熱化ローラ23は、第1状態において第1の位置にあり、第2状態において第2の位置にある。均熱化ローラ23の外周面の一端部側は、均熱化ローラ23が第1の位置および第2の位置のいずれにあるときも、加圧ローラ21の第2領域L2に相当する外周面に対して接触する位置にある。一方、均熱化ローラ23の外周面の他端部側は、均熱化ローラ23が、第1の位置にあるときに、加圧ローラ21の第2領域L2に相当する外周面に対して接触する位置にあり、第2の位置にあるときに、加圧ローラ21の外周面に対して離隔する位置にある。なお、均熱化ローラが第2の位置にあるとき、均熱化ローラ23の他端部側の外周面と、加圧ローラ21の外周面とは、例えば、約30mm離間している。
【0070】
均熱化ローラ移動装置24は、図4〜図7に示すように、均熱化ローラ23を支持する第1支持部241と、第1支持部241を支持する支持軸242と、支持軸242を支持する第2支持部243と、支持軸242を加圧ローラ21に向かう方向と加圧ローラ21から離れる方向に移動させることにより均熱化ローラ23を第1の位置と第2の位置との間で移動させる均熱化ローラ配置駆動ギア244と、均熱化ローラ配置駆動ギア244を駆動するための駆動モータと、
支持軸242の位置を検知する均熱化ローラ配置センサ246とを有している。
【0071】
第1支持部241は、均熱化ローラ23の端面から突出した均熱化ローラ23の中心軸を支持している。
【0072】
支持軸242は、均熱化ローラ配置駆動ギア244と噛み合うような凹凸部が設けられており、加圧ローラ21に向かう方向と加圧ローラ21から離れる方向に移動可能であるように、第2支持部243によって支持されている。また、支持軸242と第1支持部241の間には、スプリングが設けられており、支持軸242は、スプリングを介して第1支持部241を押圧することで、均熱化ローラ23を第2の位置から第1の位置に移動させる。
【0073】
均熱化ローラ配置駆動ギア244は、時計回りの回転および反時計回りの回転の両方が可能であるように構成されており、支持軸242の凹凸部と噛み合うような突起部が設けられた係合部を有している。係合部が支持軸242と係合することによって、均熱化ローラ配置駆動ギア244が、駆動モータからの駆動力によって一方向に回転した場合には、支持軸242に対して加圧ローラ21に近接する方向に力が加えられる。一方、均熱化ローラ配置駆動ギア244が、逆方向に回転した場合には、支持軸242に対して加圧ローラ21から離間する方向に力が加えられる。
【0074】
均熱化ローラ配置センサ246は、接触式変位センサであって、均熱化ローラ23が第2の位置にある場合には、支持軸242の端面が接触するように配置され、均熱化ローラ23が第1の位置に向かって移動した場合には、支持軸242の端面が離間するように配置されている。なお、均熱化ローラ配置センサ246は、接触式変位センサに限られず、例えば、非接触にて、支持軸242の位置を検知する透過型の光電センサ等を用いてもよい。
【0075】
<均熱化ローラ移動動作1>
次に、図4から図12を参照して、定着装置TS1における均熱化ローラ移動動作1について説明する。既述したように、小サイズ記録媒体を連続して定着する場合において、均熱化ローラ移動動作を行う。
【0076】
まず、定着装置TS1において定着することができる最大サイズの記録媒体Pを連続して定着する場合の制御について、A4のサイズの用紙55枚からなる原稿を定着する場合を例に説明する。最大サイズの記録媒体Pを連続して定着する場合には、均熱化ローラ23が第1状態に維持される。
【0077】
定着装置における定着に際して、まずウォームアップ制御が行われる。そして、インバータ回路通電から30秒後には、加熱ローラ20の温度がウォームアップ完了温度に達し、プリント制御に移行する。ウォームアップ制御終了後に給紙を開始し、約3秒後に用紙が定着ニップ部Nに到達して定着が行われる。全ての用紙のプリントが終了した後、制御部50は、定着装置の温度制御をスタンバイ制御に移行する。
【0078】
ここで、通電から、全ての用紙のプリントが終了するまでの温度推移を、図8に示す。
第1温度センサS1の検知温度は、ウォームアップ完了時(T81)に185℃に達し、この時、均熱化ローラ23の温度は、28℃となる。一方、全ての用紙のプリントが終了した時(T82)には、均熱化ローラ23の温度は、47℃となる。
【0079】
比較例として、通電時から全ての用紙のプリントが終了するまでの間、均熱化ローラ23が加圧ローラ21から完全に離間している場合の温度推移を、図9に示す。第1温度センサS1の検知温度は、ウォームアップ完了時(T91)に185℃に達し、この時、均熱化ローラ23の温度は、室温である23℃からあまり変わらない温度推移を示している。全ての用紙のプリントが終了した時(T92)の均熱化ローラ23の温度は、27℃まで上昇しているが、本実施形態と比べると、相対的に均熱化ローラ23が冷えていることが示されている。
【0080】
なお、加熱ローラ20の長手方向の発熱分布について、均熱化ローラ23が加圧ローラ21に当接する位置においてより高い温度で発熱するように、構成してもよい。例えば、図10に示すように、誘導コイルユニット22の磁性体コアの厚みや位置を調節することで、均熱化ローラ23が加圧ローラ21に当接する位置について、長手方向の他の位置と比較して、3%程高くすることができる。このような構成を採用した場合、昇温時の温度ダレを抑制することができる。また、加熱ローラ20の長手方向の寸法は、例えば、約300mmである。なお、図10においては、長手方向における中心部からの距離で発熱分布を示しており、中心部から長手方向の一方向側に向かう距離をプラス、中心部から長手方向の他方向側に向かう距離をマイナスとして表現している。
【0081】
次に、小サイズ記録媒体を連続して定着する場合の制御について、A4サイズの用紙55枚からなる原稿を縦に搬送した場合の動作を、例に説明する。既述したように、小サイズ記録媒体を連続して定着する場合には、小サイズ記録媒体非通過部の過剰な昇温が発生する。なお、ウォームアップ制御、プリント制御およびスタンバイ制御の流れは、最大サイズの記録媒体Pを連続して定着する場合と同様である。
【0082】
まず、通電から全ての用紙のプリントが終了するまでの温度推移を、図11に示す。最大サイズの記録媒体Pを連続して定着する場合と同様に、第1温度センサS1の検知温度は、ウォームアップ完了時(T111)に185℃に達し、この時、均熱化ローラ23の温度は、28℃となる。
【0083】
ウォームアップ制御終了後に給紙を開始すると、第2センサの検知温度が上昇して行き、これに伴って、均熱化ローラ23に移動する熱が多くなるため、均熱化ローラ23の外周面の温度は、長手方向の全体に渡って上昇して行く。
【0084】
制御部50は、第2温度センサS2の検知温度が220℃に達した場合(T112)には、均熱化ローラ23を第2の位置(図4および図6)から第1の位置(図5および図7)に移動させるように均熱化ローラ移動装置24を制御する、すなわち、均熱化ローラ23を第2状態から第1状態とする。このとき、均熱化ローラ23の温度は、80℃に達している。
【0085】
均熱化ローラ23が第1状態となった場合には、第1温度センサS1の検知温度は、183℃となり、2℃程低下したが、定着性に大きく影響しないことが確認された。
【0086】
このように、均熱化ローラ移動動作1を行うことができる定着装置TS1においては、均熱化ローラ23の外周面の一端部側が加圧ローラ21の第2領域L2に対応する外周面に対して接触することで、均熱化ローラ23の全体が予め温まっている。このため、均熱化ローラ23が第1の位置に移動した場合に、加圧ローラ21の第1領域L1に対応する外周面に対しては、当該外周面から均熱化ローラ23への過剰な熱の移動が抑えられ、通紙部の温度低下を抑制することができる。一方、均熱化ローラ23が第1の位置に移動した場合に、加圧ローラ21の第2領域L2に相当する外周面に対しては、当該外周面から均熱化ローラ23へ適切に熱が移動することで、非通紙部の温度上昇を抑制することができる。したがって、定着性の悪化による画像ムラを防止しつつ非通紙部の温度が過剰に上昇することに起因する加圧ローラ21等の劣化を抑制することができる。
【0087】
なお、本実施例では、第2温度センサS2の検知温度が220℃に達した場合には、均熱化ローラ23を第1の位置に移動させるように均熱化ローラ移動装置24を制御したが、均熱化ローラ23を第1の位置に移動させる閾値となる第2温度センサS2の検知温度は、加圧ローラ21および加熱ローラ20の材料等に応じて、加圧ローラ21および加熱ローラ20等に劣化が生じるとみなして設定される所定の温度(以下「所定温度」)とすることができる。
【0088】
ここで、比較例として、均熱化ローラ23が加圧ローラ21に対して完全に離間した状態から、第1状態となる場合の温度推移を、図12に示す。本実施例における均熱化ローラ移動装置24の制御を行う場合と同様に、第1温度センサS1の検知温度は、ウォームアップ完了時(T121)に185℃に達し、この時、均熱化ローラ23の温度は、28℃となる。
【0089】
ウォームアップ制御終了後に給紙を開始すると、第2センサの検知温度が上昇するが、均熱化ローラ23は、加圧ローラ21からの熱によって温まらない程度に、加圧ローラ21から完全に離間しているため、均熱化ローラ23の外周面の温度は、28℃から大きく上昇していない。
【0090】
制御部50は、第2温度センサS2の検知温度が220℃に達した場合(T122)には、均熱化ローラ23を第1状態となるように制御している。この時、均熱化ローラ23の外周面の温度は、30℃となる。
【0091】
均熱化ローラ23が第1状態となった場合には、加圧ローラ21の第1領域L1に相当する外周面と、均熱化ローラ23の外周面との温度差が大きいため、第1温度センサS1の検知温度が8℃低下し、定着性の悪化が確認された。また、第1温度センサS1の検知温度が再び、185℃に復帰するために、長い時間を要した。
【0092】
このように、比較的低い温度の均熱化ローラ23を加圧ローラ21に当接させた場合には、通紙部の温度が急激に低下してしまう。また、定着に際し、電力の消費量が低く設定されている場合には、定着温度に復帰させるために、特に長い時間が必要となる。また、例えば、均熱化ローラ23の熱容量を低くした場合には、通過部の温度低下をある程度抑制することができるが、多量の小サイズ記録媒体を連続して定着する場合には、非通過部の過剰な昇温を抑制することが困難となる。
【0093】
次に、図13を用いて、定着装置TS1における均熱化ローラ移動動作1の流れについて説明する。
【0094】
制御部50は、記録媒体Pの定着に際してプリント制御を開始した場合、すなわち、記録媒体Pのプリントが開始された場合に、均熱化ローラ移動動作1を開始する。
【0095】
制御部50は、プリント制御を開始すると(ステップS1)、第2温度センサS2の検知温度が所定温度以上であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0096】
ステップS2でNOの場合には、引き続きプリントを継続し(ステップ3)、記録媒体Pのプリントが全て終了したか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4でYESの場合には、均熱化ローラ移動動作を終了し、ステップS4でNOの場合には、引き続きプリントを継続する(ステップS3に戻る)。
【0097】
ステップS2でYESの場合には、均熱化ローラ移動装置24が均熱化ローラ23を第1の位置に向かって移動させるように駆動モータKMを駆動するとともに均熱化ローラ23を第1の位置に保持し(ステップS5)、プリントを継続する(ステップS6)。なお、この時、支持軸242の端面が均熱化ローラ配置センサ246から離間するため、均熱化ローラ配置センサ246の検知状態はOFFとなる。
【0098】
次いで、制御部50は、記録媒体Pのプリントが終了したか否かを判定、すなわち、プリント制御からスタンバイ制御に移行したか否かを判定する(ステップS7)。
【0099】
ステップS7でYESの場合には、制御部50は、均熱化ローラ移動装置24が均熱化ローラ23を第2の位置に向かって移動させるように駆動モータKMを駆動する(ステップS8)。ステップS7でNOの場合には、記録媒体Pのプリントを継続する(ステップS6に戻る)。
【0100】
制御部50は、均熱化ローラ23の移動に伴い支持軸242の端面が均熱化ローラ配置センサ246に接触することで均熱化ローラ配置センサ246の検知状態がONとなったか否かを判定する(ステップS9)。
【0101】
ステップS9でYESの場合には、駆動モータKMの駆動を停止し(ステップS10)、均熱化ローラ移動動作を終了する。なお、この時、均熱化ローラ23は、第2の位置に保持されている。ステップS9でNOの場合には、引き続き、均熱化ローラ23を第2の位置に向かって移動させるように駆動モータKMを駆動する(ステップS8に戻る)。
【0102】
また、制御部50は、例えば、記録媒体Pの定着が終了した後(ステップS7においてYES)、第2温度センサS2の検知温度が所定温度以上であるか否かを判定し、第2温度センサS2の検知温度が所定温度以上である場合、均熱化ローラ23を第1の位置に保持し、第2温度センサS2の検知温度が所定温度未満である場合には、均熱化ローラ移動装置24が均熱化ローラ23を第2の位置に向かって移動させるように駆動モータKMを駆動するように制御してもよい。このような制御を行うことによって、記録媒体Pの定着終了後において、加熱ローラ20および加圧ローラ21の過剰な昇温を、素早く低下させることができる。
【0103】
<均熱化ローラ移動動作2>
次に、図14〜図18を用いて、定着装置TS1における均熱化ローラ移動動作2について、均熱化ローラ移動動作1と異なる点を説明する。
【0104】
制御部は、均熱化ローラ移動動作2において、定着装置TS1で定着される記録媒体Pのサイズに関する情報、および加熱ローラ20を加熱するための熱源の作動時間に基づいて、均熱化ローラ23の移動タイミングを設定する点で、均熱化ローラ移動動作1と異なる制御を行う。
【0105】
なお、記録媒体Pのサイズに関する情報は、例えば、画像形成装置外部のパソコン等の情報機器から制御部50に入力されたプリントジョブから取得することができる。また、画像形成装置に備えられた操作パネル51からユーザが入力してもよい。
【0106】
ここで、メモリ501には、図14に示されるように、各小サイズ記録媒体のサイズ(CD長)毎に、均熱化ローラ23を、第2の位置から第1の位置へ移動させる時間である第1所定時間がテーブル1として記憶されている。第1所定時間は、スタンバイ制御からプリント制御に移行した時刻からの経過時間として設定されている。なお、第1所定時間は、第2タイマーによって計測される。なお、記録媒体のCD長は、定着ニップ部Nを通過するときの搬送方向に直行する方向の記録媒体の幅、言い換えると、定着ニップ部Nの長手方向における記録媒体の長さである。
【0107】
ベルト規制動作2は、各プリントジョブにおいて定着される小サイズ記録媒体のサイズによって、非通過部が所定温度に達する時間が異なるため、実際に定着される小サイズ記録媒体のサイズに関する情報と、メモリ501に予め記憶された各小サイズ記録媒体の第1所定時間に基づいて、均熱化ローラ23の移動タイミングを設定するものである。
【0108】
また、メモリ501には、図15に示されるように、加熱ローラ20を加熱させるための熱源に電源を供給するインバータ回路IKへの通電時間に応じて設定される時間であって、第1所定時間を補正するための時間である第2所定時間がテーブル2として記憶されている。なお、第2所定時間は、第1タイマーによって計測される。
【0109】
定着装置TS1が比較的冷えた状態にある場合には、加熱ローラ20の温度を定着温度に維持するための電力が比較的大きくなるため、非通過部の単位時間当たりの昇温が大きくなる。また、定着装置TS1が比較的温まった状態にある場合には、加熱ローラ20の温度を定着温度に維持するための電力が比較的小さくなるため、非通過部の単位時間当たりの昇温が小さくなる。第2所定時間に基づいて第1所定時間を補正することによって、プリント制御に関する電力消費量を考慮し、均熱化ローラ23の移動タイミングを設定することができる。
【0110】
さらに、メモリ501には、図16に示されるように、プリント制御に際して、紙詰まり等の原因によってインバータ回路IKへの通電が遮断された場合に、インバータ回路IKへの通電が再開された際の第1温度センサS1の検知温度に基づいて設定される時間であって、第1所定時間を補正するための時間である第3所定時間がテーブル3として記憶されている。
【0111】
定着装置TS1が比較的温まった状態にある場合には、加熱ローラ20の温度を定着温度に維持するための電力が比較的小さくなるため、非通過部の単位時間当たりの昇温が小さくなる。第3所定時間に基づいて第1所定時間を補正することによって、プリント制御に際して、熱源の一時的な停止を考慮し、定着装置の熱量に基づいて、均熱化ローラ23の移動タイミングを設定することができる。なお、第3所定時間は、一連のプリントジョブが終了した時刻から、次のプリントジョブのプリント制御を開始するまでの経過時間に基づいて設定してもよい。
【0112】
このように、制御部50は、画像形成装置に入力された記録媒体Pのサイズに関する情報に基づいて、第1所定時間を設定し、第2所定時間および/または第3所定時間に基づいて、第1所定時間を補正することで、均熱化ローラ23の移動タイミングを制御する。
【0113】
次に、図17を用いて、均熱化ローラ移動動作2についてA4サイズの用紙55枚からなる原稿を縦に搬送した場合(A4R)の動作を例に、より具体的に説明する。なお、この場合のCD長は、約210mmである。
【0114】
画像形成装置本体の電源がONされると、ウォームアップ制御が開始される。この時、インバータ回路IKに通電され、第1タイマーのカウントがスタートする。インバータ回路IKに通電を開始した時刻から3分後には、ウォームアップ制御からスタンバイ制御に移行し、第1温度センサS1の検知温度が150℃となるようにスタンバイ制御が開始される(T171)。
【0115】
そして、画像形成装置外部のパソコン等の情報機器からプリントジョブに関する情報(A4R)を受信した場合(T172)には、メモリ501に記憶されているテーブル1に基づいて第1所定時間を45秒に決定するとともに、第1タイマーがカウントした時間およびメモリ501に記憶されているテーブル2に基づいて第2所定時間を選択し、第1所定時間を第2所定時間に基づいて補正した補正後の第1所定時間を設定する。また、第2タイマーのカウントがスタートする。
【0116】
ここでは、プリントジョブに関する情報を受信した時点で、インバータ回路IKに通電を開始した時刻から3分が経過しているため、第2所定時間として12秒が選択され、補正後の第1所定時間は、57秒に設定される。つまり、制御部50は、第2タイマーが57秒をカウントした時、すなわち、プリント開始時刻より57秒後(T173)に、均熱化ローラ23が、第2の位置から第1の位置に向かって移動するように制御する。このとき、第2温度センサS2の検知温度は210℃に達し、均熱ローラの温度は73℃に達している。
【0117】
給紙を開始すると、第2センサの検知温度が上昇して行き、これに伴って、均熱化ローラ23に移動する熱が多くなるため、均熱化ローラ23の外周面の温度は、長手方向の全体に渡って上昇して行く。
【0118】
均熱化ローラ23が第1状態となった場合には、第1温度センサS1の検知温度は、181℃となり、4℃程低下したが、均熱化ローラ23の温度が比較的高く第1温度センサS1の検知温度が素早く上昇し、定着性に大きく影響しないことが確認された。第1温度センサS1の検知温度は、再び185℃に復帰した。
【0119】
このように、均熱化ローラ移動動作2を行うことができる定着装置TS2においては、均熱化ローラ23の外周面の一端部側が加圧ローラ21の第2領域L2に対応する外周面に対して接触することで、均熱化ローラ23の全体が予め温まっている。このため、均熱化ローラ23が第1の位置に移動した場合に、加圧ローラ21の第1領域L1に対応する外周面に対しては、当該外周面から均熱化ローラ23への過剰な熱の移動が抑えられ、通紙部の温度低下を抑制することができる。一方、均熱化ローラ23が第1の位置に移動した場合に、加圧ローラ21の第2領域L2に相当する外周面に対しては、当該外周面から均熱化ローラ23へ適切に熱が移動することで、非通紙部の温度上昇を抑制することができる。したがって、定着性の悪化による画像ムラを防止しつつ非通紙部の温度が過剰に上昇することに起因する加圧ローラ21等の劣化を抑制することができる。
【0120】
加えて、画像形成装置に入力された記録媒体Pのサイズに関する情報に基づいて、第1所定時間を設定し、第2所定時間および/または第3所定時間に基づいて、第1所定時間を補正し、補正後の第1所定時間に基づいて均熱化ローラ23の移動タイミングを制御するため、第2センサの検知温度が加圧ローラ21および加熱ローラ20等に劣化が生じるとみなして設定される所定温度に達してから、均熱化ローラ23が第1の位置へ移動するまでの時間を短縮することができる。したがって、定着性の悪化による画像ムラを防止しつつ非通紙部の温度が過剰に上昇することに起因する加圧ローラ21等の劣化をより一層抑制することができる。
【0121】
次に、図18を用いて、均熱化ローラ移動動作2において、プリントジョブのプリント時に、紙詰まり等によって、インバータ回路IKの電源が一時的に遮断された場合、すなわち、一時的にプリントが停止した場合の制御の一例について説明する。
【0122】
画像形成装置本体の電源がONされると、ウォームアップ制御が開始される。この時、インバータ回路IKに通電され、第1タイマーのカウントがスタートする。インバータ回路IKに通電を開始した時刻から3分後には、ウォームアップ制御からスタンバイ制御に移行し、第1温度センサS1の検知温度が150℃となるようにスタンバイ制御が開始される(T181)。
【0123】
そして、画像形成装置外部のパソコン等の情報機器からプリントジョブに関する情報(A4R)を受信した場合(T182)には、メモリ501に記憶されているテーブル1に基づいて第1所定時間を45秒に決定するとともに、第1タイマーがカウントした時間およびメモリ501に記憶されているテーブル2に基づいて第2所定時間を選択し、第1所定時間を第2所定時間に基づいて補正した補正後の第1所定時間を設定する。また、第2タイマーのカウントがスタートする。
【0124】
ここでは、プリントジョブに関する情報を受信した時点で、インバータ回路IKに通電を開始した時刻から3分が経過しているため、第2所定時間として12秒が選択され、補正後の第1所定時間は、57秒に設定される。つまり、制御部50は、第2タイマーが57秒をカウントした時、すなわち、プリント開始時刻より57秒後に、均熱化ローラ23が、第2の位置から第1の位置に向かって移動するように制御する。
【0125】
制御部50は、給紙が開始された後、インバータ回路IKへの通電が一時的に遮断された場合には、第2タイマーについて、これまでのカウント時間を維持したまま一旦停止する。そして、インバータ回路IKへの通電が再開され、プリントジョブが再開された場合には、第2タイマーのカウントを再開するとともに、プリントジョブが再開された時点での、第2温度センサS2の検知温度、および、メモリ501に予め記憶されているテーブルに基づいて第3所定時間を決定し、決定された第3所定時間に基づいて第1所定時間を補正する。
【0126】
ここで、例えば、プリントジョブの開始から30秒後(T183)に紙詰まりが生じた場合には、インバータ回路IKの通電が遮断され、定着が一時停止する。このとき、第2タイマーは、30秒を保持した状態でカウントを停止する。
【0127】
ここで、例えば、紙詰まりが取り除かれることでインバータ回路IKへの通電が再開され、プリントジョブが再開された際(T184)の第2センサによる検知温度が130℃であった場合には、第3所定時間として10秒が決定され、第2タイマーの保持時間から10秒を減じた値(20秒)から、第2タイマーのカウントが再開される。
【0128】
そして、制御部50は、第2タイマーが57秒をカウントした時点で均熱化ローラ23を第1の位置から第2の位置に向かって移動させるように制御する。言い換えると、制御部50は、プリントジョブの開始時刻から67秒経過した時点(T185)で、均熱化ローラ23を第2の位置から第1の位置に向かって移動させるように制御する。第2タイマーが補正後の第1所定時間に達した際には、第2温度センサS2の検知温度は210℃となり、均熱化ローラ23の外周面の温度は、97℃まで達している。
【0129】
均熱化ローラ23が、第1状態となった場合には、第1温度センサS1の検知温度は、181℃となり、4℃程低下したが、均熱化ローラ23の温度が比較的高く第1温度センサS1の検知温度が素早く上昇し、定着性に大きく影響しないことが確認された。第1温度センサS1の検知温度は、再び185℃に復帰した。
【0130】
このような均熱化ローラ移動動作2を行うことができる定着装置2によれば、上述の効果に加えて、加熱ローラ20を加熱するための熱源がプリントジョブの実行時に一時的に停止した場合であっても適切に均熱化ローラ23の移動タイミングを設定することができる。したがって、非通紙部の温度が過剰に上昇することに起因する加圧ローラ21等の劣化をより一層抑制することができる。
【0131】
次に、図19を用いて、定着装置TS1における均熱化ローラ移動動作2の流れについて説明する。
制御部50は、画像形成装置本体の電源が入力に際して、均熱化ローラ移動動作2を開始することができる。
【0132】
制御部50は、画像形成装置本体の電源が入力された場合(ステップS101)、第1タイマーのカウントを開始する(ステップS102)。この時、制御部50は、ウォームアップ制御を行い、ウォームアップ完了後にスタンバイ制御を開始する。
【0133】
そして、制御部50は、画像形成装置外部のパソコン等の情報機器から画像データが入力された場合、言い換えると、プリントジョブを受信した場合に、プリントジョブ(プリント)を開始するとともに、第2タイマーのカウントを開始し(ステップS103)、プリントジョブに含まれる記録媒体Pのサイズに関する情報に基づいて第1所定時間を設定する(ステップS104)。さらに、制御部50は、第1タイマーのカウント開始時刻からプリントジョブを受信した時刻までの経過時間に基づいて、第2所定時間を決定し(ステップS105)、第1所定時間を第2所定時間で補正することで、補正後の第1所定時間を設定する(ステップS106)。なお、この時、スタンバイ制御からプリント制御に移行する。
【0134】
制御部50は、引き続き第2タイマーのカウントを継続するとともに(ステップS107)、第2タイマーのカウント時間が補正後の第1所定時間に達したか否かを判定する(ステップS108)。
【0135】
第1タイマーのカウント時間が補正後の第1所定時間に達した場合には(ステップS108でYES)、制御部50は、均熱化ローラ23を第1の位置から第2の位置へ移動させるように、均熱化ローラ移動装置24を制御する(ステップS116)。第1タイマーのカウント時間が補正後の第1所定時間に達していない場合には(ステップS108でNO)、プリントジョブが終了したか否かを判定する(ステップS109)。
【0136】
ここで、ステップS116からステップ121に係る制御は、上述した均熱化ローラ移動動作1におけるステップ4からステップ9に相当する制御と同様であるため、説明を割愛する。
【0137】
プリントジョブが終了している場合には(ステップS109でYES)、均熱化ローラ移動動作を終了する。プリントジョブが終了していない場合には(ステップS109でNO)、プリントジョブが、何らかの原因によって、一時的に停止しているか否かを判定する(ステップS110)。
プリントジョブが一時的に停止している場合には(ステップS110でYES),第2タイマーのカウントを一時的に停止する(ステップS111)。プリントジョブが一時的に停止していない場合には、第2タイマーのカウントを継続する(ステップS107へ戻る)。
【0138】
以下、ステップS111へ進んだ場合について説明する。なお、ステップS108からステップS110に係る判定の順番は、任意に設定することができる。
【0139】
制御部50は、一時的に停止していたプリントジョブが再開されたか否かを判定する(ステップS112)。
【0140】
プリントジョブが再開されていない場合には(ステップS112でNO)、第2タイマーのカウントを停止した状態で維持する(ステップS111へ戻る)。
【0141】
プリントジョブが再開された場合には(ステップS112でYES)、プリントジョブが再開された時点での第1温度センサS1の検知温度に基づいて、第3所定時間を決定し(ステップS113)、補正後の第1所定時間をさらに第3所定時間で補正した後(ステップS114)、第2タイマーのカウントを再開する(ステップS115)。そして、制御部50は、第2タイマーのカウント時間が、第3所定時間に基づいて補正された第1所定時間に達したか否かを判定する(ステップS108へ戻る)。
【0142】
第2タイマーのカウント時間が第3所定時間に基づいて補正された第1所定時間に達した場合には(ステップS108でYES)、制御部50は、均熱化ローラ23を第2の位置から第1の位置へ移動させるように、均熱化ローラ移動装置24を制御する(ステップS116)。
【0143】
そして、制御部50は、上述した均熱化ローラ移動動作1におけるステップ5からステップ9に相当する制御であるステップS117からステップS121に係る制御を行い、均熱化ローラ移動動作を終了する。
【0144】
定着装置TS1、および画像形成装置GS1は、単なる例示にすぎず、本願発明を何ら限定するものではない。したがって本願発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、均熱化ローラ23は、加熱ローラ20に当接する構成としてもよく、例えば、図20に示すように、定着ベルト201が少なくとも2つのローラ等に張架される構成である場合には、定着ベルト201の内周面に当接する構成としてもよい。
【0145】
なお、例えば、図21から図23に示すように、加圧ローラ21の弾性層2022の熱膨張を利用することで、均熱化ローラ23が加圧ローラ21に接触する状態を変化させる構成としてもよい。
【0146】
図21に示すように、常温時において、均熱化ローラ23の外周面の温度が温まる程度の多少の隙間を介して、均熱化ローラ23と加圧ローラ21を配置している。均熱化ローラ23は、図22および図23に示すように、加圧ローラ21が温度上昇に伴って膨張することで、加圧ローラ21へ接触し、次第に、接触面積が増加してゆく。そして、少なくとも加圧ローラ21の温度が所定温度に達した場合に、均熱化ローラ23が第1状態となる。
【0147】
このような構成を採用した場合、図24に示すように、ウォームアップ開始後、しばらくして均熱化ローラ23が加圧ローラ21に接触し(T241)、その後にウォームアップが完了する(T242)。言い換えると、ウォームアップ開始からウォームアップ完了するまでの途中に、均熱化ローラ23が加圧ローラ21に接触し始める。
【0148】
また、図25に示すように、ウォームアップが完了しスタンバイ制御に移行した後(T251)、プリントジョブが開始され(T252)、第2温度センサS2が210℃に達した場合には、均熱化ローラ23の温度は76℃となっており、このとき、均熱化ローラ23は、第1状態となる(T253)。均熱化ローラ23が第1状態になった際には、第1温度センサS1の検知温度が3℃低下したが、定着性に大きく影響しないことが確認できた。
【0149】
このように、加圧ローラ21の弾性層212の熱膨張を利用することで、均熱化ローラ23が加圧ローラ21に接触する状態を変化させる構成を採用した場合においても、予め均熱化ローラ23が温まっているため、均熱化ローラ23が第1の位置に移動した場合には、加圧ローラ21の第1領域L1に相当する外周面から奪う熱を抑えることで、通紙部の温度低下を抑制しつつ、加圧ローラ21の第2領域L2に相当する外周面の温度上昇を抑制することで、非通紙部の温度上昇を抑制することができる。したがって、非通紙部の温度が過剰に上昇することに起因する加圧ローラ21等の劣化を抑制することができる。なお、加圧ローラ21の非通過部に相当する外周面領域に一部分が接触した状態で均熱化ローラ23と加圧ローラ21を配置してもよい。
【0150】
さらに、定着装置TS1の誘導コイルユニット22の長手方向の端部側の位置に、誘導コイルユニット22から発生する磁束を打ち消すための消磁コイルを設けてもよい。このような構成を採用した場合、定着装置本体を大型化させることなく、非通紙部の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0151】
また、例えば、均熱化ローラ23は、一方向に延在する形状であって、加熱ローラ20の第2領域L2に相当する外周面に対して、均熱化ローラ23の外周面の一端部側が当接するように配置してもよく、加熱ローラ20の回転軸(中心軸)と均熱化ローラ23の回転軸(中心軸)とが実質的に平行になった状態で、均熱化ローラ23の外周面が加熱ローラ20の外周面に接触する第1状態と、加熱ローラ20の第2領域L2に相当する外周面に対して、均熱化ローラ23の外周面の一端部側が接触する第2状態とを有してもよい。
【0152】
また、本願発明は、タンデム方式等のカラーの複写機、モノクロの複写機、プリンタ、FAX、及びこれらの複合機等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0153】
10Y、10M、10C、10K 像担持体
11Y、11M、11C、11K 帯電装置
12Y、12M、12C、12K 露光装置
13Y、13M、13C、13K 画像形成部
14 2次転写手段
141 2次転写ローラ
142 駆動ローラ
15Y、15M、15C、15K 1次転写手段
151Y、151M、151C、151K 1次転写ローラ
17 中間転写ベルト
18Y、18M、18C、18K 像担持体クリーニング手段
18T 中間転写ベルトクリーニング手段
181 クリーニングブレード
182 回収部
19 テンションローラー
20 加熱ローラ
201 定着ベルト
2011 導電層
2012 表層
202 定着ローラ
2021 芯金(定着ローラ)
2022 弾性層
204 断熱ブッシュ
205 ベアリング
21 加圧ローラ
211 芯金(加圧ローラ)
212 耐熱弾性層
213 離型層
22 誘導コイルユニット
221 ブランケット
223 磁性芯材
224 誘導コイル
23 均熱化ローラ
231 保持部
24 均熱化ローラ移動装置
241 第1支持部
242 支持軸
243 第2支持部
244 均熱化ローラ配置駆動ギア
245 駆動モータ
246 均熱化ローラ配置センサ
30Y、30M、30C、30K 画像形成ユニット
50 制御部
501 メモリ
502 第1タイマー
503 第2タイマー
51 操作パネル
TS1 定着装置
P 記録媒体
T1 中間転写ベルトの搬送方向
T2 加熱ローラの回転方向
T3 加圧ローラの回転方向
T4 定着ニップ部への記録媒体PPの搬送方向
T5 均熱化ローラの回転方向
N 定着ニップ部
L1 第1領域
L2 第2領域
K 搬送基準位置
TB 通過部
HTB 非通過部
STB 小サイズ記録媒体非通過部
IK インバータ回路
FTS 第1温度センサ
STS 第2温度センサ
M 駆動モータ
G 駆動ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被定着体上のトナー画像を定着する定着装置であって、
熱源によって加熱される第1定着部材と、
前記第1定着部材に対して圧接することで一方向に伸びた定着部を形成する第2定着部材と、
一方向に伸びた形状であり、前記第1定着部材または前記第2定着部材の何れか一方である被接触定着部材に接触する均熱部材を有しており、
前記均熱部材は、
前記被接触定着部材に対して、前記被接触定着部材の長手方向の中心軸と前記均熱部材の長手方向の中心軸とが略平行になるように接触する第1状態と、前記被接触定着部材に接触する面積が前記第1状態より小さい第2状態と、を取り得ることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着部は、前記被定着体が通過する通過部と、前記被定着体が通過しない非通過部と、から形成され、
前記第1状態は、
前記均熱部材が、前記被接触定着部材の前記非通過部を形成しうる外周面領域である非通過領域と、前記被接触定着部材の前記通過部を形成しうる外周面領域である通過領域とに接触する状態であり、
前記第2状態は、
前記均熱部材が、前記通過領域に接触しない状態であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記被接触定着部材は、前記被定着体が通過する方向に、回転可能な筒状の回転体であって、
前記定着部は、前記被定着体が通過する通過部と、前記被定着体が通過しない非通過部と、から形成され、
前記第1状態は、
前記均熱部材が、前記被接触定着部材の前記非通過部を形成しうる外周面領域に対応する内周面上の領域である非通過領域と、前記被接触定着部材の前記通過部を形成しうる外周面領域に対応する内周面上の領域である通過領域とに接触する状態であり、
前記第2状態は、
前記均熱部材が、前記通過領域に接触しない状態であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記均熱部材は、前記第1状態である場合に第1の位置に配置され、前記第2状態である場合に第2の位置に配置されており、
前記均熱部材を前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動可能に支持する均熱部材移動手段を有することを特徴とする請求項2乃至3の何れか一つに記載の定着装置。
【請求項5】
前記第1状態および前記第2状態において、前記均熱部材の一端部側の外周面が前記非通過領域に対して接触するように、前記均熱部材を保持する均熱部材保持手段を有しており、
前記均熱部材移動手段は、
前記第2状態において前記均熱部材の他端部側の外周面が前記被接触定着部材に対して離隔するように、前記均熱部材を移動させ、
前記第1状態において前記均熱部材の他端部側の外周面が前記被接触定着部材に対して接触するように、前記均熱部材を移動させることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記定着部の伸びる方向における前記通過部の端部側の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度が所定の温度に達した場合に、前記均熱部材を前記第1の位置に移動させるように、前記均熱部材移動手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項4または5に記載の定着装置を備え、画像情報を含むプリントジョブに基づいて前記被定着体上にトナー画像を形成する画像形成装置であって、
前記定着部を通過する前記被定着体のサイズを検知するサイズ検知手段と、
前記サイズ検知手段により検知された被定着体のサイズに基づいて、前記均熱部材移動手段が前記均熱部材を前記第1の位置に移動させるタイミングを設定し、該タイミングで前記均熱部材を前記第1の位置に移動させるように前記均熱部材移動手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記熱源が連続して作動した時間に基づいて、前記タイミングを変更することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−73548(P2012−73548A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220128(P2010−220128)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】