説明

定着装置

【課題】筒状部材の端縁が傷付くのを抑えることができる定着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】定着装置は、可撓性を有する筒状部材(定着ベルト110)と、筒状部材の内周面に摺接するニップ部材(ニップ板130)と、ニップ部材との間で筒状部材を挟むことで筒状部材との間にニップ部を形成するとともに、筒状部材とともに回転するバックアップ部材(加圧ローラ140)と、ニップ部の筒状部材の回転方向上流側に設けられ、筒状部材をニップ部に向けて案内する上流ガイド310と、筒状部材の端縁111の位置を規制する規制面401を有する端縁規制部材400を備える。そして、上流ガイド310は、規制面401よりも筒状部材の軸方向外側へ突出するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する筒状部材と、筒状部材の内周面に摺接するニップ部材と、ニップ部材との間で筒状部材を挟むことで筒状部材との間にニップ部を形成するバックアップ部材とを備える定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状部材、ニップ部材およびバックアップ部材を備える定着装置として、筒状部材の内周面に摺接して筒状部材をニップ部へ向けて案内するガイド部材と、筒状部材の端縁の位置を規制する端縁規制部材とを備えるものが知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術では、ガイド部材の端縁に隣接するように端縁規制部材をガイド部材に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−44075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、ガイド部材の端縁に端縁規制部材を隣接させる構造であるため、誤差等によりガイド部材の端縁と端縁規制部材との間に隙間が生じた場合には、その隙間に筒状部材が入り込むように変形して、筒状部材の端縁が傷付くことがあった。より詳しくは、ガイド部材のうちニップ部の上流側の部位には、ニップ部に向けて筒状部材が引っ張り込まれることによって、筒状部材が強く押し当てられるので、当該部位と端縁規制部材との間に隙間が生じることにより、前述した問題が生じるようになっている。
【0005】
そこで、本発明は、筒状部材の端縁が傷付くのを抑えることができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、記録シート上に現像剤像を熱定着するための定着装置であって、可撓性を有する筒状部材と、前記筒状部材の内周面に摺接するニップ部材と、前記ニップ部材との間で前記筒状部材を挟むことで前記筒状部材との間にニップ部を形成するとともに、前記筒状部材とともに回転するバックアップ部材と、前記ニップ部の前記筒状部材の回転方向上流側に設けられ、前記筒状部材を前記ニップ部に向けて案内する上流ガイドと、前記筒状部材の端縁の位置を規制する規制面を有する端縁規制部材と、を備える。
そして、前記上流ガイドは、前記規制面よりも前記筒状部材の軸方向外側へ突出するように形成されている。
【0007】
この構成によれば、上流ガイドが規制面よりも軸方向外側に突出することで、軸方向において上流ガイドと規制面との間に隙間が生じるのを防ぐことができるので、筒状部材の端縁が規制面と上流ガイドとの隙間に入り込むように変形して傷付くのを抑えることができる。
【0008】
また、前記した構成において、前記上流ガイドの前記筒状部材との摺接面は、前記筒状部材の内周面に沿った面状に形成されているのが望ましい。
【0009】
これによれば、上流ガイドにリブ等が形成されるものに比べ、筒状部材の変形を抑えることができる。
【0010】
また、前記した構成において、前記上流ガイドの前記回転方向下流側の端部は、直線状に形成されているのが望ましい。
【0011】
これによれば、上流ガイドの回転方向下流側の端部が凸凹に形成されるものに比べ、筒状部材をニップ部にスムーズに案内することができる。
【0012】
また、前記した構成において、前記上流ガイドの前記回転方向上流側に、前記筒状部材の両端部の内周面に摺接することで前記筒状部材を前記上流ガイドへ向けてガイドする一対の端部ガイドを設けてもよい。
【0013】
なお、この場合には、前記上流ガイドの前記回転方向上流側の端部は、前記一対の端部ガイドの前記回転方向下流側の端部よりも前記筒状部材の径方向内側に配置されているのが望ましい。
【0014】
これによれば、筒状部材が上流ガイドの回転方向上流側の端部に引っ掛かるのを抑えることができる。
【0015】
また、前記した構成において、前記筒状部材は、金属製の基材と、前記基材の外周に被覆された樹脂とを有する金属ベルトであってもよいし、前記上流ガイドは、樹脂製であってもよい。さらに、前記筒状部材は、径方向に移動可能となるように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、筒状部材の端縁が傷付くのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る定着装置を備えたレーザプリンタを示す断面図である。
【図2】定着装置を示す断面図である。
【図3】第1カバー部材から端縁規制部材と第3カバー部材を外した状態を示す分解斜視図である。
【図4】第1カバー部材から第2カバー部材と第4カバー部材をさらに外した状態を示す分解斜視図である。
【図5】上流ガイドの両端部と端縁規制部材の規制面との関係を拡大して示す正面図である。
【図6】第1カバー部材を下から見た状態を示す斜視図である。
【図7】ステイを上から見た斜視図(a)と、係合突起と押圧用突起との関係を示す斜視図である。
【図8】ステイに第1カバー部材を組み付けたものを略真上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成を簡単に説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0019】
また、以下の説明において、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における左側を「前」、右側を「後」とし、奥側を「左」、手前側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0020】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Sを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙S上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙S上に転写されたトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0021】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によってプロセスカートリッジ5(感光体ドラム61と転写ローラ63との間)に向けて供給される。
【0022】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ発光部や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。この露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0023】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0024】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0025】
このプロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0026】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Sが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙S上に転写される。
【0027】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙S上に転写されたトナー像は、定着装置100を通過することで用紙S上に熱定着される。その後、用紙Sは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、筒状部材の一例としての定着ベルト110と、ハロゲンランプ120(発熱体)と、ニップ部材の一例としてのニップ板130と、バックアップ部材の一例としての加圧ローラ140と、反射板150と、ステイ160と、カバー部材200とを主に備えている。
【0028】
定着ベルト110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のベルトであり、カバー部材200に形成されたガイド部(上流ガイド310、下流ガイド320および端部ガイド330)により回転が案内されている。具体的に、本実施形態においては、定着ベルト110は、金属製の基材と、基材の外周に被覆された樹脂とを有する金属ベルトとして構成されている。
【0029】
また、定着ベルト110は、カバー部材200に設けられた線バネ201によって弱めの付勢力で径方向外側に付勢されており、これにより、定着ベルト110は、線バネ201によってテンションがかけられるとともに径方向に移動可能となるように構成されている。
【0030】
なお、定着ベルト110にテンションをかける部材としては、線バネ201に限定されず、例えば板バネなどであってもよい。また、線バネ201は必ずしも必要ではなく、線バネ201を排除することで定着ベルト110を径方向に移動可能となるように構成してもよい。
【0031】
ハロゲンランプ120は、輻射熱を発してニップ板130および定着ベルト110(ニップ部N)を加熱することで用紙S上のトナーを加熱する部材であり、定着ベルト110の内側において定着ベルト110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0032】
ニップ板130は、定着ベルト110の内側に配置され、ハロゲンランプ120からの輻射熱を受ける板状の部材であり、その下面が定着ベルト110の内周面に摺接するように配置されている。本実施形態において、ニップ板130は、金属製であり、例えば、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、アルミニウム板などを折り曲げることで形成されている。なお、ニップ板130をアルミニウム製とした場合には、ニップ板130の熱伝導性を向上させることが可能となっている。
【0033】
加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟むことで定着ベルト110との間にニップ部Nを形成する部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。本実施形態においては、ニップ部Nを形成するために、ニップ板130および加圧ローラ140の一方を他方に向けて付勢している。そして、この加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟んだ状態で回転することで、当該定着ベルト110とともに回転して用紙Sを後方に搬送するようになっている。
【0034】
加圧ローラ140は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することで定着ベルト110(または用紙S)との摩擦力により定着ベルト110を従動回転させる。トナー像が転写された用紙Sは、加圧ローラ140と加熱された定着ベルト110の間(ニップ部N)を搬送されることでトナー像(トナー)が熱定着されることとなる。
【0035】
反射板150は、ハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に向けて反射する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120を囲うように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0036】
この反射板150は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視U字状に湾曲させて形成されている。より詳細に、反射板150は、U字形状をなす反射部151と、反射部151の前後方向における両端縁(ニップ板130側の各端縁)から前後方向外側に向けて延びるフランジ152とを有している。
【0037】
そして、各フランジ152は、ステイ160とニップ板130とで挟まれている。
【0038】
ステイ160は、ニップ板130を反射板150を介して支持することで加圧ローラ140からの荷重を受ける部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120や反射板150を囲うように配置されている。なお、ここでいう荷重は、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する構成においては、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する力の反力をいうものとする。
【0039】
詳しくは、ステイ160は、上壁161と、上壁161の前端から下方に延びる前壁162と、上壁161の後端から下方に延びる後壁163とによって断面視U字状に形成されている。そして、前壁162の下端部には、前側に延びるフランジ164が形成されている。
【0040】
このようなステイ160は、比較的剛性が高い、例えば、鋼板などを折り曲げることで形成されている。
【0041】
カバー部材200は、樹脂製の第1カバー部材210と、樹脂製の第2カバー部材220とを主に備えて構成されている。
【0042】
第1カバー部材210は、断面視U字状をなして左右方向に長く延びるように形成されており、ステイ160を挟んでハロゲンランプ120とは反対側でステイ160を覆うように配置されている。言い換えると、第1カバー部材210は、ステイ160に対してニップ板130とは反対側に配置されている。
【0043】
第1カバー部材210は、後側壁211と、前側壁212と、後側壁211および前側壁212の上端同士を連結するように延びる上壁213と、後側壁211の下端から後方に向けて延びる延出壁214とを主に有している。
【0044】
そして、前側壁212の下端部には、定着ベルト110の前側下部を案内する上流ガイド310が形成されている。また、延出壁214の後端には、定着ベルト110の後側下部を案内する下流ガイド320が形成されている。
【0045】
上流ガイド310は、ニップ部Nよりも定着ベルト110の回転方向上流側に設けられ、定着ベルト110をニップ部Nに向けて案内している。そして、この上流ガイド310は、反射板150のフランジ152よりも下側(ニップ板130側)に突出している。
【0046】
これにより、定着ベルト110が反射板150のフランジ152に引っ掛かるのを上流ガイド310によって抑えることが可能となっている。
【0047】
また、図3および図4に示すように、上流ガイド310は、左右方向に延びる長尺状に形成されている。上流ガイド310の左右方向における両端部311,312の上側(定着ベルト110の回転方向上流側)には、定着ベルト110の端縁111の位置を規制する規制面401を有する2つの端縁規制部材400がそれぞれ両端部311,312に隣接するように設けられている。
【0048】
そして、上流ガイド310は、図5に示すように、その両端部311,312が、各端縁規制部材400の規制面401よりも左右方向外側(定着ベルト110の軸方向外側)に突出するように形成されている。このように上流ガイド310が規制面401よりも左右方向外側に突出することで、左右方向において上流ガイド310と規制面401との間に隙間が生じるのを防ぐことができるので、定着ベルト110の端縁111が規制面401と上流ガイド310との隙間に入り込むように変形して傷付くのを抑えることが可能となっている。
【0049】
また、上流ガイド310の下側(回転方向下流側)の端部313は、左右方向に沿って直線状に形成されている。これにより、例えば上流ガイドの下側の端部が凸凹に形成されるものに比べ、定着ベルト110の変形を抑えて、定着ベルト110をニップ部Nにスムーズに案内することが可能となっている。
【0050】
また、図2に示すように、上流ガイド310の定着ベルト110との摺接面314は、定着ベルト110の内周面に沿った面(凹凸のない面)状に形成されている。これにより、例えば上流ガイドの摺接面にリブ等の凹凸が形成されるものに比べ、定着ベルト110の変形を抑えることが可能となっている。
【0051】
また、図2〜図4に示すように、上流ガイド310の両端部311,312の上側(回転方向上流側)には、定着ベルト110の両端部の内周面に摺接することで定着ベルト110を上流ガイド310へ向けてガイドする一対の端部ガイド330が隣接して設けられている。そして、図2に示すように、上流ガイド310の上側(回転方向上流側)の端部315は、一対の端部ガイド330の下側(回転方向下流側)の端部331よりも後側(定着ベルト110の径方向内側)に配置されている。
【0052】
これにより、定着ベルト110が上流ガイド310の上側の端部315に引っ掛かるのを抑えることが可能となっている。
【0053】
第2カバー部材220は、左右方向に長く延びるように形成されており、第1カバー部材210の一部を覆うように、第1カバー部材210に対して上側(ステイ160とは反対側)に配置されている。第2カバー部材220は、上壁221と、上壁221の後端から下方に向けて延びる後壁222と、後壁222の下端から後方に向けて延びる延出壁223とを主に有している。そして、図4に示すように、上壁221の左右方向両端部には、定着ベルト110の上部を案内する前述した一対の端部ガイド330が一体に形成されている。
【0054】
そして、第1カバー部材210と第2カバー部材220の間には、ケーブルC(配線)が設けられている。ケーブルCは、図示せぬサーモスタットを介してハロゲンランプ120に電気を供給する導線であり、左右方向(定着ベルト110の軸方向)に延びるように主に第1カバー部材210の上壁213上に配置されている。
【0055】
また、第1カバー部材210の上壁213には、ステイ160の左右方向両端側の部位160L,160Rを露出させる2つの左側開口部213Lおよび2つの右側開口部213R(図6参照)が設けられている。言い換えると、左右一対の左側開口部213Lと右側開口部213Rとが、前後方向に間隔を空けて、合計二対設けられている。
【0056】
また、第2カバー部材220は、ケーブルCの中間部(左右の開口部213L,213Rよりも左右方向内側の部位)を覆うように構成されている。そして、第2カバー部材220の左右方向両側には、第3カバー部材230が設けられている。
【0057】
第3カバー部材230は、ケーブルCのうち第1カバー部材210の左右方向両端側に配置される部位を覆う部材であり、端縁規制部材400や端部ガイド330とは別に設けられている。第3カバー部材230は、定着装置100の筐体101(図3参照)によって、前後左右方向への移動が規制された状態で上下に移動可能に支持されている。
【0058】
第3カバー部材230は、下側に開口する断面視U字状に形成されており、その底部231には、下方に突出する2つの押圧用突起232が前後に間隔を空けて形成されている。2つの押圧用突起232は、2つの左側開口部213L(または2つの右側開口部213R)に対応した位置に設けられ、左右の各開口部213L,213Rを通してステイ160を直接押圧するようになっている。
【0059】
このように第3カバー部材230の押圧用突起232によってステイ160を直接押圧することで、例えば2つのカバーを介してステイを押圧する構造に比べ、部品の誤差の影響を少なくすることができ、ステイ160をバランスよく押圧することができるので、定着性能を向上させることが可能となっている。
【0060】
ここで、押圧用突起232は、バネ等の弾性部材によって第3カバー部材230、ステイ160および反射板150を介してニップ板130を加圧ローラ140に向けて付勢する場合はもちろんのこと、弾性部材によって加圧ローラ140をニップ板130に向けて付勢する場合においても、ステイ160を押圧している。つまり、加圧ローラ140をニップ板130に向けて付勢する場合においては、ステイ160が押圧用突起232に向けて付勢されるが、この場合であっても、押圧用突起232は、ステイ160から加わる力に抗する反力によってステイ160を押圧する。
【0061】
また、第2カバー部材220と第3カバー部材230との間には、第4カバー部材240が設けられている。第4カバー部材240は、第2カバー部材220と第3カバー部材230の隙間から露出するケーブルCを覆う部材であり、上下方向から見て第2カバー部材220と第3カバー部材230とに重なるように設けられている。
【0062】
このように第4カバー部材240を第2カバー部材220と第3カバー部材230とに重なるように設けることで、各カバー部材220,230,240間でのケーブルCの露出をより確実に抑えることが可能となっている。
【0063】
図7(a)に示すように、ステイ160の上壁161の左右方向の両端側には、各第3カバー部材230に形成された係合突起233が嵌り込む2つの左側貫通孔161Lと2つの右側貫通孔161Rが形成されている。ここで、図7(a)では、便宜上、第3カバー部材230のうち係合突起233のみを図示している。
【0064】
具体的に、係合突起233は、図7(b)に示すように、円柱状の突起であり、前述した各押圧用突起232の下面から下方に突出するようにそれぞれ1つずつ形成されている。図7(a)に示すように、左側貫通孔161Lは、前後に間隔を空けて配置された左側の2つの係合突起233に対応した位置にそれぞれ配置されており、係合突起233の外径と略同じ大きさの内径で形成されている。
【0065】
右側貫通孔161Rは、前後に間隔を空けて配置された右側の2つの係合突起233に対応した位置にそれぞれ配置されており、左右方向に沿った長孔として形成されている。すなわち、左側貫通孔161Lが係合突起233と左右方向で係合する形状に形成されるとともに、右側貫通孔161Rが係合突起233よりも左右方向に大きくなるように形成されている。
【0066】
そして、図8に示すように、各貫通孔161L,161Rは、第1カバー部材210に形成された各開口部213L,213Rよりも小さく形成されており、各開口部213L,213Rを介して露出するようになっている。
【0067】
これにより、各貫通孔161L,161Rに各係合突起233が係合した状態において、左右方向に動かない一対の第3カバー部材230に対してステイ160が熱により左右方向に膨張しても、右側貫通孔161Rが長孔であることによって、右側貫通孔161Rの縁が係合突起233に干渉するのを防止することができるので、ステイ160や第3カバー部材230に応力が加わるのを抑えることが可能となっている。
【0068】
また、各開口部213L,213Rは、左右方向に長い矩形の長孔として形成されている。詳しくは、左側開口部213Lの左右の長さは、左側の押圧用突起232の左右の長さと同じ大きさに設定され、右側開口部213Rの左右の長さは、右側の押圧用突起232の左右の長さよりも大きくなるように設定されている。
【0069】
言い換えると、左側開口部213Lが押圧用突起232と左右方向で係合する形状に形成されるとともに、右側開口部213Rが押圧用突起232よりも左右方向に大きくなるように形成されている。これにより、第1カバー部材210が熱により左右方向に膨張しても、右側開口部213Rが押圧用突起232よりも左右方向に大きく形成されているので、第1カバー部材210の熱膨張を吸収することができ、第1カバー部材210や第3カバー部材230に応力が加わるのを抑えることが可能となっている。
【0070】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0071】
前記実施形態では、記録シートの一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Sを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートであってもよい。
【0072】
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ140を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【0073】
前記実施形態では、ニップ部材の一例としてニップ板130を例示したが、本発明はこれに限定されず、板状でない厚めの部材であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
100 定着装置
110 定着ベルト
111 端縁
130 ニップ板
140 加圧ローラ
310 上流ガイド
311 両端部
400 端縁規制部材
401 規制面
N ニップ部
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シート上に現像剤像を熱定着するための定着装置であって、
可撓性を有する筒状部材と、
前記筒状部材の内周面に摺接するニップ部材と、
前記ニップ部材との間で前記筒状部材を挟むことで前記筒状部材との間にニップ部を形成するとともに、前記筒状部材とともに回転するバックアップ部材と、
前記ニップ部の前記筒状部材の回転方向上流側に設けられ、前記筒状部材を前記ニップ部に向けて案内する上流ガイドと、
前記筒状部材の端縁の位置を規制する規制面を有する端縁規制部材と、を備え、
前記上流ガイドは、前記規制面よりも前記筒状部材の軸方向外側へ突出するように形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記上流ガイドの前記筒状部材との摺接面が、前記筒状部材の内周面に沿った面状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記上流ガイドの前記回転方向下流側の端部が、直線状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記上流ガイドの前記回転方向上流側には、前記筒状部材の両端部の内周面に摺接することで前記筒状部材を前記上流ガイドへ向けてガイドする一対の端部ガイドが設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記上流ガイドの前記回転方向上流側の端部は、前記一対の端部ガイドの前記回転方向下流側の端部よりも前記筒状部材の径方向内側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記筒状部材は、金属製の基材と、前記基材の外周に被覆された樹脂とを有する金属ベルトであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記上流ガイドは、樹脂製であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記筒状部材は、径方向に移動可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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