説明

定量給液器を使用した自動給液装置

【課題】水耕栽培や屋上緑化に使用される多数の植栽容器などに液肥や液体薬品や水を供給する方法として、レベル計と電磁弁を個々の2段容器に使用した高価な自動給液装置や、配管を分岐して給液するとき給液源に近い容器には多く給液され、配管が長く遠い容器には少量しか給液出来ないタイマーで給液時間を制御する装置や、また湿度を検知して給液をする自動給液装置では湿度センサーに付着するカビや藻類により湿度の検知精度に誤差を生じ易く、センサーの修理や交換にも多大のコストが掛かる。
【解決手段】気体と約50倍の粘度を持つ液体の性質を利用して体積で計量する定量給液器を多数設置配管して、定量給液器が満杯になって圧力が上昇したのを検知して電磁弁を閉じる電気信号を出す接点付き圧力計を利用した自動給液装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多数の植栽容器を並べる野菜の水耕栽培、屋上緑化などにおいて、液肥、水を所定の量だけ精度良く給液するための定量給液器を使用して、自動給液装置1式で多数の植栽容器への給液量を制御可能とし、給液設備全体のコストを下げることの出来る自動給液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の水耕栽培において多用されている植栽容器の一つは上下2段式とし、下部室に液を溜め、液面センサーで液の不足を検知すると電磁弁が開いて一定時間だけ給液するシステムになっているが、植栽容器が2段になっているので高価なだけでなく、液面センサー外面に発生、繁殖するかびや藻類が液を吸い上げて誤動作する。また各植栽容器毎に液面センサーと電磁弁と制御回路が必要なので、水耕栽培施設全体の設備費はコスト高になってしまう(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
家庭における植物に効果的に自動給水する装置を提供することを目的としたタイマーと電磁弁とを使用した自動給水装置が有るが多数の植木鉢を並べたときには、個々の植木鉢までの距離に応じた配管抵抗により給水量のバラつきが出てしまう(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献】
【特許文献1】 実用新案公開平5−53453 公報
【特許文献2】 特許公開平7−95828 公報(代表図面)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多数の植栽容器を並べた水耕栽培や屋上緑化などの施設において、タイマーや電磁弁などで構成される高価なシステム1式当たりに多数の植栽容器を接続することにより給液設備のコストを下げ、水道などの給液源に近くても、配管抵抗で圧力の下がる給液源から遠い植栽容器にも所定の給液量を供給出来る自動給液装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
給液配管より直接植栽容器に給液する場合には給液される量は配管内の圧力にほぼ比例するため、給液源からの配管の太さ、長さに応じた圧力降下により流量が変わり、給液時間が同じでも給液量に差が生じてしまう。この圧力の差による給液量の差を無くすため体積で液量を規定する定量給液器を使用して複数の植栽容器に所定の体積の液量を供給する。
【0007】
給液源1からの給液が停止したときに、貯液室8から給液配管13に液が逆流して貯液量が減少するのを防ぐため、給液配管13と貯液室8の間に逆止弁7を構成する。
【0008】
貯液室8から植栽容器5への給水のために隙間の通路12A及び小穴の通路12Bを設けるが、この通路12A及び12Bは配管内で発生する気体や貯液室8に侵入してきた空気は容易に通過排出できるが、粘度が空気に比べて約50倍の液体は少しずつしか通過漏出できない形状、寸法にする。
【0009】
貯液室8には移動可能な弁9を設け、この弁はスプリング10で軽く押えられ、給液時には給液の圧力で弁9と共に押戻されるが、給液が停止した後はスプリング10の力で弁9を押して貯液室8に内圧を掛け通路12A及び12Bから植栽容器5に液を漏出供給する。
【0010】
一般の水耕栽培や屋上緑化においては、給液は一日に1回乃至数回であり、一回の植栽容器への液の漏出供給に例えば10分掛かっても問題は生じない。
【0011】
図2に示す定量給液器は給液口6と逆止弁7と貯液室8と弁9とスプリング10とで構成され、空気は容易に通過排出されるが、液体は少しずつしか漏出しない通路12Aを貯液室8と弁9との隙間により、また貯液室8の給液口側に小穴の通路12Bを形成している。図3は弁9の移動量調節ボルト11を構成に加えた定量給液器の例を示し、図4は移動量調節ボルト11をA視した図である。
【0012】
電磁弁2を開いて給液源1より給液配管13を通して複数の定量給液器4に給液を始めると、液は配管内で発生した気泡と共に逆止弁7を通って貯液室8が満たされてくるが、給液配管13からの気泡と貯液室8に有った空気は貯液室8と弁9の隙間などの通路12A及び12Bから容易に排出されので、給液源1から遠い位置に有る定量給液器4から気泡や空気が排出されるまでの僅かな時間だけ、配管抵抗による圧力差分だけの僅かな液の漏出が生じるが貯液室8の容量に比較して無視出来る量である。
【0013】
さらに貯液室8に給液を続けると弁9がスプリング10を押しながら移動し、圧力の高い給液源に近い定量給液器から、給液源から遠い圧力の低い定量給液器まで、内部の弁9が移動端まで順次行き着くと配管内の圧力は上昇し、給液源の圧力と略同じになる。
【0014】
その時の圧力を接点付き圧力計3で感知し、電気信号を出して電磁弁2を閉じて給液を止める。この時逆止弁7は自らを構成するスプリングで弁を閉じる。
【0015】
貯液室内の液はスプリング10により押される弁9が発生させる圧力により、隙間などの通路12A及び12Bから徐々に漏出し、植栽容器5に給液する。
【0016】
以上に説明した逆止弁7と、空気などの気体は通過し易いが水などの液体は通しにくい通路を設けた定量給液器4と、複数の定量給液器4が液で満たされた時の圧力上昇を検知して給液を止める接点付き圧力計と電気回路により構成された自動給液装置を使用して、複数の植栽容器5などに液を供給する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、請求項2及び請求項3の発明による給液量が体積で決定される定量給液器4を使用することにより、給液源1に近い植栽容器5にも遠い植栽容器5にも、所定の液を供給できるので、2段構成の高価な植栽容器を安価な1段容器に置き換えることが可能となり、請求項4の発明による高価な電磁弁2や接点付き圧力計3と電気回路で構成される自動給液装置一式で多数の植栽容器5の給液量を制御出来るようになり、結果として水耕栽培や屋上緑化などに使用されている自動給液設備のコストを下げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図2及び図3により説明する。逆止弁7は小型のものが市販されているので給液口6に組み込み、給液口6はプラスチックで射出成形し、貯液室8は細菌やカビ、藻類の生育を抑制する金属イオンを発生し加工もし易い真鍮などの銅系合金をプレス成形し、弁9は金属製の貯液室8とのカジリを防止するためプラスチック製にし、スプリング10及び弁9の移動量調節ボルト11は腐食しにくいステンレス製にする。
【0019】
通路12Aを形成する貯液室8と弁9との隙間は空気などの気体は簡単に通過出来るが液体は粘度が高いので通過しにくい0.02ミリから0.04ミリにする。また貯液室8の給液口側には、0.02ミリの穴を明けて通路12Bを形成し、定量給液器4が立てて設置された時に上部に溜まる気泡や空気を排出する。
【0020】
図5により説明する。給液時間を一日に1回以上数回設定出来る24時間タイマーT1を使用し、電磁弁2を開く電気信号を手動で遮断出来る切替スイッチSSを組み込んで梅雨や台風などの自然雨により給水過多となった時は給水を停止出来、また乾燥時期や植物の成長に合わせて液を追加する時の為に臨時に給液するためのスイッチPBを組み込む。
【0021】
電磁弁2は市販されている水用のステンレス製ものを使用するが、液に酸などの腐食性が有る場合にはその酸などに合った材質を選定する。
【0022】
屋上緑化などには安価なブルドン管式圧力計に接点を組み込んだ接点付き圧力計を使用するが、水耕栽培を大規模に行い集中管理をする時はセンサーと圧力を電気信号に変える変換器のみ給液配管に接続して集中管理室に置いた接点付き圧力表示計の出力信号を利用する方が好ましい。
【0023】
配管材の剛性が高く長い場合には、ウォーターハンマー現象により、定量給液器に液が行き渡っていないのに給液源の方に圧力が跳ね返ってくることがあるので、電磁弁を開いた後短時間での圧力上昇は無視できるようにタイマーT2を組み込み、多数の貯液室5がまだ十分に貯液されていないのに接点付き圧力計3が圧力を感知しても電磁弁2が閉じないように電気回路を組む。
【0024】
給液源1に接続した電磁弁2と接点付き圧力計3の下流で配管を分岐し、複数の追加電磁弁とそれに接続された配管と定量給液器で構成される複数のセットを接続し、それらの追加電磁弁を順次開閉する電気回路を組み込むことにより、さらに複数倍の植栽容器に給液が出来る。
【0025】
植栽容器5の大きさや植栽物により給液量を変える必要が有れば、定量給液器4の弁9の移動距離を調節するための移動量調節ボルト11を調節することにより貯液量を変えられる定量給液器を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 複数の定量給液器を使用した自動給液装置の全体図である。
【図2】 定量給液器の断面図である。
【図3】 移動量調節ボルトを有する定量給液器の断面図である。
【図4】 図3におけるA視図である。
【図5】 自動給液装置の制御回路図である。
【符号の説明】
【0027】
1 給液源
2 電磁弁
3 接点付き圧力計
4 定量給液器
5 植栽容器
6 給液口
7 逆止弁
8 貯液室
9 弁
10 スプリング
11 移動量調節ボルト
12A 隙間の通路
12B 小穴の通路
13 給液配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給液口より逆止弁を通った液は、スプリングで軽く保持された弁を押しのけて貯液室に供給されるが、貯液室に残っていた空気は貯液室と弁との小さな隙間から容易に排出されるが、液体はほんの少量ずつしか漏出しないように隙間が設定され、給液口からの給液が停止されると、スプリングの押圧で弁が押されて徐々に隙間から漏出するが、逆止弁のために給液口側には漏出しないので、弁の外径と移動距離によって決められた容積だけの液体を漏出して、給液する構造の定量給液器。
【請求項2】
上記請求項1に記載された定量給液器において、貯液室及び弁の両方又はどちらかに空気は容易に排出されるが液体は徐々に漏出する小径の穴を明けた定量給液器。
【請求項3】
上記請求項1及び請求項2に記載された定量給液器において、弁の移動距離を調節して貯液量を変えられる定量給液器。
【請求項4】
タイマー、液面センサーや湿度センサーの電気信号により開く電磁弁を有し、複数の定量給液器に液が行き渡って圧力が上昇した時にその圧力を検知して電気信号を出す接点付き圧力計を有し、その電気信号により電磁弁を閉じる電気回路を有する自動給液装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−173096(P2008−173096A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31253(P2007−31253)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(507044321)合同会社T.S&C (4)
【Fターム(参考)】