説明

実時間時計を有する手動制御ガス圧工具

本発明の工具はガスカートリッジから燃焼室内へガス空気混合気を噴射した後、安全上の理由から工具を緊締対象物に押し当ててヘッドスイッチを後退させ、燃焼室を閉鎖した後、点火プラグを制御するためのトリガースイッチを作動させ、燃焼室(3)内でのガス/空気混合物爆発の作用下に締結具を駆動するピストンをシリンダ内に摺動自在に内蔵する。工具は操作、制御モジュール(25)のマイクロコントローラ(40)と協働するように設計された実時間時計(41)を含む発射速度検知手段をも有する。本発明は締結工具に最適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釘打機またはステープル打機のような締結工具タイプの手動制御ガス圧工具に係わる。
【背景技術】
【0002】
この工具はシリンダを具備し、該シリンダ内には釘やステープルのような締結具を駆動するためのピストンが摺動自在に取付けられている。ガスカートリッジから噴射されたガスと空気の混合気は、安全上の理由から、緊締対象物に押し当てて締結具ガイドを後退させ、燃焼室を閉鎖した後、点火プラグを制御するためのトリガー機構を作動させてた後に燃焼室内で爆発する。
【0003】
工具は、カートリッジから燃焼室内へガスを送る装置、通常は電磁弁のほかに、バッテリ、燃焼室の空気とガスを混合するファン、ファンを駆動するモーター、温度制御モジュール、および工具を操作、制御するモジュールを収容したハウジングを含む。
【0004】
操作、制御モジュールは空気−ガスの混合、ガスの制御、点火、発射の制御、冷却、給電の制御、安全管理および故障検知のような種々の機能を行なう。
【0005】
また、工具の耐用寿命は多様な事象によって決定され、故障原因も多様であるだけに、この種のガス圧式工具の使用には細心の注意が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出願人は、これらのガス圧式工具にできる限りの改良を加えることによって、オペレータが気軽に工具を使用できるように研究を重ねた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述したタイプの工具において、発射速度を検知するための手段であって、発射速度が、工具を適正に機能させるには高過ぎて有害である場合に工具の作用を停止するための手段を起動させることができる手段を具備することを特徴とする上記タイプの工具に係わる。
【0008】
停止手段は、点火停止手段、燃焼室へのガス噴射停止手段、および、噴射/点火制御スイッチ(ヘッドスイッチ−締結具ガイド/トリガースイッチ−トリガー機構)停止手段を含むことができる。
【0009】
発射速度検知手段は操作、制御モジュールのためのマイクロコントローラと協働するように設計された実時間時計を含むことが好ましい。
【0010】
この時計は、各発射を記録して履歴を作成し、発射間隔を算定する手段である。
即ち、実時間時計を組み込むことによって、工具の使用歴における種々の事象および発射を刻時的に記録するだけでなく、種々の故障が発生した瞬間を刻時的に記録することができる。これにより、数回の発射ごとに定期的に或いは一層多くの発射回数ごとに適時利用すれば、工具の使用状態を正確に知ることができる。間歇的に起こる故障の検出にも役立つ。
【0011】
マイクロコントローラおよび時計と協働して停止手段を制御する、工具の動作データのための補助メモリーを設けることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示すように、本発明の工具は公知技術と同様にハウジング1内に、後端部2、燃焼室3、燃焼室スリーブ4、シリンダ5、ピストン6、ヘッドスイッチ(締結具ガイド)8および締結具支持部7を含む。ヘッドスイッチ8は支持重量と燃焼室3の閉鎖を感知する。
【0013】
燃焼室スリーブ4はシリンダ5に摺動自在に設けられ、ピストン6およびシリンダ5とともに燃焼室3の前後を閉鎖する。後方ヘッド6′を有するピストン6がハウジング1内にこれと一体に設けられたシリンダ5内を摺動自在である。ハウジング1から前方へ突出するヘッドスイッチ8はハウジング1内にこれと一体に設けられた締結具支持部7内を摺動自在である。
【0014】
シリンダ5はその前部に、発射時に前方へ推進するピストン6の後方ヘッド6′と当接するようにシリンダ5と一体に設けた反動緩衝部材18を内蔵し、後部に混合用ファン16を内蔵する。
【0015】
工具のこれらの部分はすべて共通の軸を中心に形成されている。
ばね35、36は、工具の締結具支持部材に作用する重量が無くなると、スリーブ4を常態位置へ前進させる。工具が常態位置に来ると、スリーブ4およびヘッドスイッチ8がばね35、36の作用下に前進し、燃焼室3の後部が開く。
【0016】
この場合、図示しないが工具の前ハンドル11内に延びている釘マガジンは、ヘッドスイッチ8へ釘10を装填するためヘッドスイッチ8と協働する。
工具はシリンダ5の前方横隔底22と反動緩衝部材18との間、詳しくは後者の前方に圧電センサー23を含む。
【0017】
センサー23は、図示例の場合、工具のバックハンドル12内に設けられ、実質的には工具の操作/制御回路から成る電子黒板25に含まれる演算モジュールと電気的に接続している。センサー23は衝撃/発射検知器である。
【0018】
最後に、2つのハンドルの間にブリッジを形成するブランチ部15内にバッテリ16が収納されている。図示しないが、トリガー装置17によって制御される点火プラグと点火装置が燃焼室3内に設けられている。
【0019】
操作/制御カードは具体的にはマイクロコントローラ40、実時間時計41、メモリー42、警報装置43および停止回路44から成り、いずれもマイクロコントローラ40と接続している。
【0020】
既に述べたように、時計41はマイクロコントローラ40と協働することによって工具の使用歴における種々の事象、発射回数、および工具の種々の部品の故障を刻時的に記録するものであり、これらの記録は販売側によるアフターサービス担当者にとっても、故障修理のためにも重要な記録である。
【0021】
この場合、水晶振動子に加えて時計41を組み込む必要上、バックアップ・バッテリまたは大容量コンデンサによる緊急用電源を補足することになる。
【0022】
この場合、情報はE2PROMメモリー42に記憶される。メモリー42はここでもI2プロトコルに従って通信する。このメモリー42を設けることによって、供給電圧が存しなくても取得された情報を保存することができ、もし記憶スペースが足りなくなったら、FIFO原則に従ってマイクロコントローラ40によってデータを電気的に消去することができる。
【0023】
時計41がメモリー42およびマイクロコントローラ40と協働して過去の発射を刻時的に記録することにより、履歴を作成し、2回の発射の間隔を求めることができる。この情報をマイクロコントローラ40に処理することによって、ユーザーによって選択された発射速度が高過ぎず、従って、長期に亘る使用で工具を損傷させる恐れがないかどうかを確認することができる。
【0024】
発射速度が高過ぎことが検知され、これが警報装置43によってユーザーに知らされると、停止回路44により工具の動作停止が制御されるが、この制御には下記の3通りの態様が考えられる。
【0025】
点火を停止する45:点火プラグが火花を発生させず、空気−ガス混合物は爆発せず、従って発射されない。
【0026】
ガス噴射を停止する46:電磁弁14によって燃焼室3へガスが噴射されず、爆発は起こらず、従って、発射は起こらない。
【0027】
噴射8/点火17制御スイッチの動作を停止する47:この停止動作によってガスの噴射を阻止し、点火プラグの火花発生を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の好ましい実施態様の軸方向断面図である。
【図2】ハウジングの半体を外して図1の工具の簡略化した側面図である。
【図3】本発明の工具の回路、特に保持回路および操作/制御カードのフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 ハウジング
2 後端部
3 燃焼室
4 燃焼室スリーブ
5 シリンダ
6 ピストン
7 締結具支持部
8 ヘッドスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全上の理由から工具を緊締対象物に当接させ、締結具ガイド(8)を後退させ、燃焼室(3)を閉鎖した後、点火プラグを制御するためのトリガー機構(17)を作動させて、燃焼室(3)内でのガスカートリッジ(13)から噴射されたガスと空気の混合物の爆発の作用下に締結具(10)を駆動するピストン(6)がシリンダ(5)内に摺動自在に設けられている手動制御ガス圧式工具であって、発射速度を求めるための手段(40−42)を含むことを特徴とする前記手動制御ガス圧式工具。
【請求項2】
工具の作用を停止する手段(44)を設けた請求項1に記載の工具。
【請求項3】
点火を停止する手段(45)を設けた請求項2に記載の工具。
【請求項4】
燃焼室(3)へのガス噴射を停止する手段(46)を設けた請求項2または請求項3に記載の工具。
【請求項5】
噴射/点火制御スイッチ(8、17)を停止する手段(47)を設けた請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の工具。
【請求項6】
発射速度を決定する手段が操作、制御モジュール(25)のマイクロコントローラ(40)と協働するように設計された実時間時計(41)を含む請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の工具。
【請求項7】
工具の操作データを記憶し、マイクロコントローラ(40)および時計(41)と協働して停止手段(44)を制御するメモリー(42)を設けた請求項6に記載の工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−511285(P2009−511285A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535122(P2008−535122)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002852
【国際公開番号】WO2007/042922
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(506380787)ソシエテ ドゥ プロスペクティオン エ ディンベンティオン テクニク スピ (14)
【Fターム(参考)】