説明

室内換気システム

【課題】使用に伴って空気汚染を引き起こす機器を配備した室内の換気を効果的に行うことができる室内換気システムを提供する。
【解決手段】モータの動作によって換気を行う換気装置に対して、商用給電を行う商用給電部と、インバータ給電を行うインバータ給電部とが用意され、使用に伴って空気汚染を引き起こす機器の使用状態又は換気装置の動作状態あるいはその両方に基づいて、制御ユニットは、商用給電部を換気装置に接続する第1モードとインバータ給電部を換気装置に接続する第2モードとを選択的に作り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨房や台所など空気汚染が起こりやすい室内を換気する室内換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているような室内換気システムでは、被加熱物を加熱する加熱手段とこの加熱手段の作動状態を制御する制御手段とを有する加熱調理器と、その加熱調理器にて発生する調理排気を外部に排出して換気を行う換気装置と、制御手段から換気装置に対して換気運転の実行及び停止を指令するための通信手段とが備えられている。その際、制御手段は、加熱手段の作動状態に基づいて換気が必要な状態であるか否かを判別して、換気が必要な状態であると判別すると換気運転の実行を、かつ、換気が必要でないと判別すると換気運転の停止を通信手段を介して換気装置に指令する。また、この室内換気システムでは、さらに別な加熱調理器が備えられている場合、その加熱調理機器の運転に伴って排出される調理排気の温度を検出する温度検出手段が設けられ、制御手段はこの温度検出手段の検出情報に基づいても、換気装置による換気運転の実行及び停止を指令できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−128495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1による室内換気システムでは、一方の調理機器の作動状態又は他方の調理機器の調理排気温度状態に応じて換気装置の換気運転を制御しているが、換気装置に対する制御に関しては、その換気風量の大きさを予め設定されている段階別で変更するだけである。従って、調理の種類等によってある時点で急激に空気汚染が悪化する場合や、空気汚染が緩やかに変化する場合、あるいは急速な換気要求の場合などに対して適切な換気制御が効果的にできないという問題点がある。
上記実情に鑑み、本発明の目的は、使用に伴って空気汚染を引き起こす機器を配備した室内の換気を効果的に行うことができる室内換気システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る室内換気システムの特徴は、使用に伴って空気汚染を引き起こす機器と、モータの動作によって換気を行う換気装置と、前記換気装置に対して、商用給電を行う商用給電部と、インバータ給電を行うインバータ給電部とを有する給電手段と、前記機器の使用状態を検出する使用状態検出器と、前記換気装置の動作状態を検出する動作状態検出器と、前記使用状態又は前記動作状態あるいはその両方に基づいて、前記商用給電部を前記換気装置に接続する第1モードと前記インバータ給電部を前記換気装置に接続する第2モードとを選択的に作り出す制御ユニットとからなる点にある。
【0006】
この構成によると、換気装置の動作状態又は、使用に伴って空気汚染を引き起こす機器の使用状態、あるいは当該動作状態と使用状態とに基づいて、室内の空気汚染状況を推測できるので、この室内にとって要求される換気を算定することができる。そして、その算定された室内換気を適時にかつ適切に実現すべく、制御ユニットは、換気装置、つまりはモータの動作制御のためにインバータ給電と商用給電のいずれかを選択することができる。頻繁に変動する換気の要求はインバータ給電により無駄なく正確に実現することができるとともに、緊急に全負荷でモータを動作させる必要があるときには商用給電によって商用電源から直接電力を供給することで効率的な動作が可能となる。
【0007】
特に、室内換気の緊急性ないしは重要性は、室内に人が存在するかどうかでも異なる。その際、室内の広さから予め最低換気量を算定し、この算定された最低換気量を最低限維持するように換気装置を動作制御することが好ましい。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、室内における人の存在を検知する人感知器が備えられ、この人感知器が人の存在を検知している間、前記制御ユニットは少なくとも設定されている最低換気量が維持されるように前記モータを動作させる。
【0008】
また、使用に伴って空気汚染を引き起こす機器として、保温機器、保冷機器、調理機器などがあるが、特に加熱調理機器の場合、調理対象に対する加熱を通じてその調理対象からも空気汚染を引き起こす煙等が放出される。従って、加熱調理機器が使用されている場合、前記使用状態検出器として前記調理機器による調理中に生じる煙等の調理排気を検出する調理排気検出器が備えられていることが好適である。これにより、機器のみの使用状態だけから換気の必要度を算定するより正確な算定が可能となる。
さらに、加熱調理機器がガス調理機器である場合、ガス燃焼による換気の必要性も考慮されることが好ましいので、前記使用状態検出器としてガス使用量検出器も備えられることで、さらに正確な換気の必要度を算定が可能となる。このような正確な換気必要度の算定を所定時間間隔で繰り返し行い、その算定結果に基づいて、例えばインバータ給電部に対するインバータ制御を行うことで、使用に伴って空気汚染を引き起こす機器を配備した室内の効果的な換気が実現する。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つとして、前記制御ユニットと、前記使用状態検出器と、前記動作状態検出器とは、無線通信ネットワークによって接続される場合、配置の自由度が高くなるだけでなく、既設の機器をこの室内換気システムに組み込むことが容易となる。また、この無線通信ネットワークを通じて室外の安全・省エネシステムと連係することにより、部屋のみならず、この部屋を含む施設全体の換気制御に組み込むことも容易である。
【0010】
本発明の特に好適な実施形態の1つでは、前記制御ユニットは、前記第1モードで起動した後に前記第2モードに移行し、前記使用状態検出器又は前記動作状態検出器あるいはその両方の検出器の異常が検知された場合には強制的に第1モードに移行するように構成されている。この構成では、起動時には第1モードでフルパワーの換気を行い、その後は各種検出器からの情報に基づいて精度の高い第2モードでの換気を行い、安全性と経済性の両方を得ることを意図している。但し、第2モードによる制御は検出器からの正確な情報が必須となるので、この情報が検出器の不良や検出器との間の通信不良が生じた場合には第1モードに強制移行することで、この室内換気システムの信頼性を高めている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による室内換気システムの基本原理を示す模式図である。
【図2】本発明による室内換気システムの実施形態の1つを示す機能ブロック図である。
【図3】図2による室内換気システムの制御ユニットの機能を示す機能ブロック図である。
【図4】図2による室内換気システムの制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、図1の模式図を用いて本発明による室内換気システムの基本原理を説明する。この室内換気システムは、使用に伴って空気汚染を引き起こす2つの機器(機器Aと機器B)と、モータの動作によって換気を行う換気装置3と、換気装置3のモータを制御する制御ユニット4とを配置した厨房等の調理室内に適用されている。換気装置3のモータへの給電のために、商用給電を行う商用給電部11とインバータ給電を行うインバータ給電部12とを備えた給電手段1が用意されている。
【0013】
換気装置には、図示はされていないが、この換気装置の動作状態を検出するための動作状態検出器が備えられている。ここでの動作状態検出器としては、モータに流れる電流を検出する電流計や、モータの回転数を検出する回転検出器などが利用される。その検出値が動作状態情報として制御ユニットに送られる。
【0014】
図1では、単に点線枠で示されているだけであるが、この例においては、機器Aはガスレンジ等のガス燃焼を利用するガス加熱調理機器であり、機器Bは電気オーブン等の電気加熱調理機器である。ガス加熱調理機器である機器Aの使用状態を検出するために、使用ガス量を検出するガス使用量検知器8と、このガス加熱調理機器での調理の際に生じるゆげや煙などの調理排気を検出する調理排気検出器7とが、図1では模式的に示されているだけであるが、備えられている。また、機器Bの使用状態を検出するために、この電気加熱調理器での調理の際に生じるゆげや煙などの調理排気を検出する調理排気検出器7が備えられている。
【0015】
制御ユニット4には、機器Aや機器Bからの使用状態情報と、換気装置3からの動作状態情報が入力される。その際、ガス加熱調理機器である機器Aに割り当てられた使用状態検出器7、8からは使用ガス量と調理排気量が入力され、電気加熱調理機器である機器Bに割り当てられた使用状態検出器7からと調理排気量が入力される。制御ユニット4は、受け取った使用状態情報や動作状態情報を用いて、商用給電部11と換気装置3のモータに接続する第1モードと、インバータ給電部12を換気装置3のモータに接続する第2モードとを選択的に作り出す機能を有する。
【0016】
ここでいう商用給電とは、電力会社から送られてくる、一般的には100vないしは200vの電力を直接モータに供給する給電を意味しており、この商用給電ではモータは定格電力で駆動することになる。また、インバータ給電は、商用電源からの電力を一旦直流に変換しさらに可変周波数交流電力を作り出すインバータ駆動回路を仲介させた給電を意味しており、モータは負荷状況に応じた最適な周波数交流電力で駆動する。インバータ給電によるモータ駆動は、負荷に応じて最適に行われるので、省エネルギー駆動が可能となる。これに対して、インバータ駆動回路における損失がない商用給電による駆動は、全負荷運転時においては効率的である。従って、制御ユニット4は、換気装置3のフルパワーの換気能力が必要な状況では、つまり全負荷時では、商用給電部11を換気装置3のモータに接続する第1モードを選択し、部分負荷時では、インバータ給電部12を換気装置3のモータに接続する第2モードを選択する。さらに、第2モードを選択した場合には、必要とされる換気量を算定し、その算定量に応じたインバータ制御が行われる。換気量の算定には、使用状態情報や動作状態情報を入力パラメータとして換気量が出力値として導出されるテーブルやルール群を用いると好都合である。
【0017】
図1に、この室内換気システムの全体的なデータの流れが模式的に示されている。主スイッチがONされて、システムが起動すると、換気装置3のモータには、商用給電部11を通じて商用電源の電力が供給される。これは、制御ユニット4からの指令が未着の場合や制御ユニット4等が故障している場合には、商用給電部11が換気装置3のモータと接続するようにデフォルト設定されているからである。従って、システムの起動時には、換気装置3は基本的に全負荷運転することになる。
【0018】
主スイッチのONにより、制御ユニット4が起動すると、使用ガス量を表す使用状態情報と、機器Aによる調理排気状態を表す使用状態情報とを機器Aから取得し、機器Bによる調理排気状態を表す使用状態情報を機器Bから取得する。さらに、制御ユニット4は、換気装置3からは、換気装置3の動作状態として、ここではモータに流された電流量を表す動作状態情報を取得する。制御ユニット4は、取得した使用状態情報や動作状態情報から必要換気量を算定するための入力パラメータを生成し、この入力パラメータに基づいて第1モード制御ないしは第2モード制御のどちらを選択するかの選択結果、ないしは必要換気量を導出する。この導出結果に基づいて、1モード制御ないしは第2モード制御が選択され、その選択結果に応じた制御指令が給電手段1に与える。なお、選択した制御モードがインバータ給電によるモータ制御であれば、同時にインバータ駆動回路に対する制御量も導出結果に基づいて算定して、インバータ給電部12に与える。
【0019】
このように、この換気システムでは、まず、使用に伴って空気汚染を引き起こす機器の使用状態、具体的には、機器が燃焼を伴う場合にはその燃焼による空気汚染に対応する検出量及びその機器の使用を通じて付加的に生じる空気汚染(調理排気による匂いや二酸化炭素の発生など)に対応する検出量が求められる。そして、その検出量から算定された最適な換気量を効率的に実現するように換気装置3の運転を制御する。これにより、使用に伴って空気汚染を引き起こす機器を配備した室内の換気が効果的に行われる。
【0020】
次に、上述した原理を採用した換気システムの実施の形態を図面に基づいて説明する。図2は、そのような室内換気システムの機能ブロック図である。ここでは、換気装置3は、交流モータ30と、交流モータ30によって回転するファン31と、この換気装置3の動作状態を検出する動作状態検出器として交流モータ30を流れる電流を検出する電流計32とを備えている。この交流モータ30への給電は、商用電源に接続している分電盤からこの換気システムの給電手段1を介して行われる。この給電手段1には、商用給電部11とインバータ給電部12とが並列配置されており、給電切替器2によって、交流モータ30には商用給電部11を通じて給電される方式とインバータ給電部12を通じて給電される方式とを選択することができる。
【0021】
商用給電部11は、実質的には200vまたは100vの商用電源を直接交流モータに接続する給電線を構築しているだけである。従って、商用給電部11に切り替えられている場合には、交流モータ31を、定格交流電力に基づく回転数で交流モータ30を、つまりファン31を駆動することができる。これに対して、インバータ給電部12は、それ自体は公知である全波整流回路やインバータ回路を備えており、入力された商用電源の交流を所定周波数の交流に変換出力して交流モータ30に供給する。従って、インバータ給電部12に切り替えられている場合には、インバータ給電部12への指令信号(制御量)に応じた所定の回転数で交流モータ30を駆動することができる。
【0022】
商用給電部11は定格で、つまりフルパワーでモータを回転させるので、換気のスタート時にはデフォルトとして選択される。また、インバータ給電部12に比べてその構成が簡素であり、ほとんど故障等の異常動作が生じないことから、インバータ給電部12に異常が発生した場合には、直ちに商用給電部11に切り替えられる。さらに、この実施形態では、非常用として、非常用スイッチを操作することで給電手段1とは独立して、つまり制御ユニット4の制御から独立して換気装置3を動作させる、全く別系統の給電線が非常用給電部として形成されている。なお、給電切替器2に対する切替信号やインバータ給電部12に対する制御量は、後で詳しく説明する制御ユニット4で生成される。
【0023】
この実施形態では、使用に伴って空気汚染を引き起こす機器として、ガス燃焼を利用した調理機器であるガスレンジ5と、電気ヒータを利用した調理機器であるオーブントースター6とが取り扱われている。ガスレンジ5及びオーブントースター6を用いた調理の際に食材等の調理物を通じて発生する調理排熱を機器の使用状態を示す量として検出するため、排熱検出器7が設けられている。この排熱検出器には、赤外線センサや焦電センサなどが用いられる。さらに、ガスレンジ5の周辺には、このガスレンジ5の使用状態を示すガス燃焼量を把握するためガスレンジ5に供給されるガス量を検出するガス流量検出器8が設けられている。さらに、この厨房に人が存在しているかどうかをチェックする人感センサ90を備えた人検出器9が備えられている。使用状態検出器としての排熱検出器7、ガス流量検出器8、それに換気装置3の動作状態検出器としての電流計32からの検出データ、及び人検出器9からの人検出データは、無線通信を通じて制御ユニット4に送られる。
【0024】
制御ユニット4は、図3に示すように、無線通信処理部41と、入力パラメータ算出部42と、換気量算定部43と、入力パラメータから換気量を導出するための演算テーブル44と、インバータ制御部45と、給電切替部46とを含んでいる。無線通信処理部41は、無線通信処理部5aを通じて、ガスレンジ5の使用状態検出器である排熱検出器7及びガス流量検出器8からの検出データを受け取る。同様に、無線通信処理部6aを通じてオーブントースター6の使用状態検出器である排熱検出器7からの検出データを受け取り、無線通信処理部3aを通じて換気装置3の動作状態検出器である電流計32からの検出データを受け取る。さらに、無線通信処理部41は、無線通信処理部9aを通じて人検出器9からの人検出データを取得する。入力パラメータ算出部42と換気量算定部43と演算テーブル44とで、ガスレンジ5やオーブントースター6などの調理機器の使用状態又は換気装置3の動作状態あるいはその両方に基づいてこの厨房における換気量を推定する推定エンジンを構築している。つまり、入力パラメータ算出部42は、無線通信処理部41を介して取得した検出データから、調理排熱に関係する排熱量パラメータと、ガス消費が空気汚染に関係する値であるガス量パラメータと、現状の換気装置の動作状態に関係する値である動作状態パラメータと、人の存在が換気量に関係する値である人存在パラメータを作成して、換気量算定部43に入力する。換気量算定部43は、入力されたパラメータに基づいて演算テーブル44を用いて換気量を算定する。つまり、ここでは、演算テーブル44は、入力パラメータから換気量を導出する関数テーブルないしは推測ルールベースとして構築されている。なお、厨房に人が存在する場合には、安全性のために、予め設定された下限を下回らない換気量が算定される。
【0025】
換気量算定部43は、算定した換気量に基づいて、商用給電による換気装置3の駆動を行う第1モード制御か、インバータ給電による換気装置3の駆動を行う第2モード制御かを決定する。その際、所定以上の換気量が要求される場合は、第1モード制御が選択される。第2モード制御が選択された場合は、インバータ制御部45は、算定された換気量が達成できるように換気装置3の交流モータ30を駆動するための、インバータ制御量(制御信号)を生成する。給電切替部46は、換気量算定部43に要求に応じて、給電手段1に商用給電を実行するための第1モード制御指令又はインバータ給電を実行するための第2モード制御指令を与える。その際、第2モード制御指令には、インバータ制御部45によって生成されたインバータ制御量が付随する。
【0026】
上述したように構築された室内換気システムにおける制御の流れの一例を図4のフローチャートを用いて以下に説明する。
室内換気システムは主スイッチをONすることで起動する(#02)。この室内換気システムでは、商用給電による換気装置3の駆動がデフォルト設定されているので、制御ユニット4から商用給電のための第1モード制御指令(商用給電指令)が出力される(#04)。これにより、給電切替器2が動作して、交流モータ30は商用給電部11を通じて給電される。さらに、異常検知処理が行われる(#06)。この異常検知処理では、インバータ給電部12が正常に動作可能であるかどうか、各種検出器が正常に動作しているかどうか、無線通信がダウンしていないかどうかなどが所定のチェックプログラムを通じてチェックされる。この異常検知処理は、この換気制御中に所定間隔で行われるもので、この室内換気システムにおいて特に異常が起こる可能性がある機能、インバータ制御やセンサ不良や無線通信不良などに対するチェック処理である。この異常検知処理で異常が検知されたとしても、商用給電による換気装置3の駆動は可能であるとみなしている。従って、異常有りと判定された場合には(#08Yes分岐)、現状の制御モードが第1モード(インバータ給電)であるか又は第2モード(商用給電)であるかがチェックされ、第2モードであれば(#10Yes分岐)、第1モード制御指令(商用給電指令)が出力され、交流モータ30は商用給電部11を通じて給電される(#12)。すなわち、商用給電はインバータ給電のバックアップ給電の役割も果たしている。また、各種センサが機能しない場合にも、とりあえず商用給電で換気装置3を駆動することで、室内換気が確保される。図4のフローチャートでは示されていないが、この異常検知処理で、換気装置3の交流モータ30自体が故障しているような異常が検出された場合には、警報が報知されるように構成されている。
【0027】
異常検知処理に付随するステップが完了すると、制御ユニット4は各種検出器からの検出データを取得する。例えば、電流計32から無線送信される検出データから交流モータ30の動作状態を取得する(#14)。ガス流量検出器8から無線送信される検出データからガスレンジ5の使用状態を取得し、排熱検出器7から無線送信される検出データからガスレンジ5やオーブントースター6で調理している際に発生する排熱や煙やゆげなどの状態を含む使用状態を取得する(#16)。さらに、人検出器9から無線送信される検出データから厨房に人が存在しているかどうかを示す人検出データを取得する(#18)。次に必要換気量を求める処理が行われる。まず、取得された検出データから、入力パラメータ算出部42が、必要換気量を求めるための入力パラメータとして、排熱量パラメータ、ガス量パラメータ、動作状態パラメータ、人存在パラメータを算出する(#20)。次に算出された入力パラメータから換気量算定部43が演算テーブル44を用いて必要換気量を算定する(#22)。算定された必要換気量から、換気装置3をインバータ給電または商用給電のいずれの制御モードで駆動するかが決定される(#24)。制御モードとして第2モード(インバータ給電)が決定された場合(#26Yes分岐)、インバータ回路を調整して要求する回転数で交流モータ30を駆動するためのインバータ制御量を算定し(#28)、制御ユニット4からインバータ給電のための第2モード制御指令(インバータ給電指令)がインバータ制御量とともに出力される(#30)。制御モードとして第1モード(商用給電)が決定された場合(#26No分岐)、制御ユニット4から商用給電のための第1モード制御指令(商用給電指令)が出力される(#32)。最後に、この換気制御が終了要求されたかどうかチェックされ、例えば主スイッチがOFFされたかどうかチェックし(#34)、終了要求がない限り、ステップ#06に戻って、第1モード(商用給電駆動)または第2モード(インバータ給電駆動)のいずれで換気装置3を駆動するかどうかを決定しながら、換気装置3を最適制御して、厨房の換気を経済的にかつ効果的に行う。
【0028】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施の形態では、各種検出器と制御ユニット4との間の検出データの伝送に無線通信が用いられていたが、無線通信規格としては、IEEE 802.11シリーズの無線LAN規格やIEEE 802.15.1などの近距離無線通信規格を用いることができる。もちろん本発明では、IrDA規格に準拠した赤外線通信や有線通信を排除しているわけではない。
(2)上述した実施の形態では、説明の都合上、この室内換気ユニットを構成する各種機能部を適当に区分けしたが、本発明はこの機能区分けに限定されるわけでなく、例えば、制御ユニット4に給電手段1の全て又は一部を組み込んでもよい。
(3)換気装置3の動作状態を交流モータ30を流れる電流の検出値で表していたが、交流モータ30によって回転するファンやタービンが作り出す換気流の風量や風速の検出値で表すようにしてもよい。つまり、換気装置3の動作状態を検出する動作状態検出器として種々の検出方法が利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、厨房のみならず、種々の施設の換気装置を用いた室内換気システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1:給電手段
2:給電切替部
11:商用給電部
12:インバータ給電部
3:換気装置
30:交流モータ
31:ファン
32:電流計(動作状態検出器)
4:制御ユニット
41:無線通信処理部
42:入力パラメータ算出部
43:換気量算定部
44:演算テーブル
45:インバータ制御部
46:給電切替部
5:ガスレンジ(機器A)
6:オーブントースター(機器B)
7:排熱検出器(使用状態検出器)
8:ガス流量検出器(使用状態検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用に伴って空気汚染を引き起こす機器と、
モータの動作によって換気を行う換気装置と、
前記換気装置に対して、商用給電を行う商用給電部と、インバータ給電を行うインバータ給電部とを有する給電手段と、
前記機器の使用状態を検出する使用状態検出器と、
前記換気装置の動作状態を検出する動作状態検出器と、
前記使用状態又は前記動作状態あるいはその両方に基づいて、前記商用給電部を前記換気装置に接続する第1モードと前記インバータ給電部を前記換気装置に接続する第2モードとを選択的に作り出す制御ユニットと、
からなる室内換気システム。
【請求項2】
室内における人の存在を検知する人感知器が備えられ、前記人感知器が人の存在を検知している間、前記制御ユニットは少なくとも設定されている最低換気量が維持されるように前記モータを動作させる請求項1に記載の室内換気システム。
【請求項3】
前記機器が加熱調理機器であり、前記使用状態検出器として前記加熱調理機器による調理中に生じる調理排気を検出する調理排気検出器が備えられている請求項1又は2に記載の室内換気システム。
【請求項4】
前記加熱調理機器がガス調理機器であり、前記使用状態検出器としてガス使用量検出器が備えられている請求項3に記載の室内換気システム。
【請求項5】
前記制御ユニットと、前記使用状態検出器と、前記動作状態検出器とは、無線通信ネットワークによって接続されている請求項1から4のいずれか一項に記載の室内換気システム。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記第1モードで起動した後に前記第2モードに移行し、前記使用状態検出器又は前記動作状態検出器あるいはその両方の検出器の異常が検知された場合には強制的に第1モードに移行する請求項1から5のいずれか一項に記載の室内換気システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate