説明

室圧制御システム

【課題】室圧調整ダンパの開度を速やかに設定適正開度範囲側に復帰させる。
【解決手段】対象室1の給気側に定風量装置qCを装備し、対象室1の排気側に装備した室圧調整ダンパVpの開度bを調整して対象室1の室圧pを設定室圧psに調整する室圧制御手段pCを設けた室圧制御システムにおいて、室圧調整ダンパVpの検出開度bに基づいて定風量装置qCの設定風量qssを変更することで、室圧制御手段pCによる開度調整において室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲内に調整される状態にする開度状態制御手段bCを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給気路及び排気路に接続した対象室の室圧を設定室圧に調整する室圧制御システムに関する。
【0002】
詳しくは、対象室への給気風量を設定風量に調整する定風量装置を設けるとともに、対象室からの排気路に装備した室圧調整ダンパの開度を調整して対象室からの排気風量を調整することで対象室の室圧を設定室圧に調整する室圧制御手段を設けた室圧制御システムに関する。
【0003】
また、これとは給気側と排気側とを入れ換えて、対象室からの排気風量を設定風量に調整する定風量装置を設けるとともに、対象室への給気路に装備した室圧調整ダンパの開度を調整して対象室への給気風量を調整することで対象室の室圧を設定室圧に調整する室圧制御手段を設けた室圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0004】
この種の室圧制御システムとして、特許文献1に代表されるように(図1参照)、室圧制御手段pCによる室圧調整ダンパVpの開度調整で対象室1の室圧pを設定室圧psに調整するのに併行して、室圧調整ダンパVpの検出開度bに基づきファンFrの出力を調整して室圧調整ダンパ介装側風路3の風路圧frを調整することで、室圧制御手段pCによる開度調整において室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるようにしたものがある。
【0005】
即ち、このように室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるようにすることで、室圧調整ダンパVpの開度調整による室圧調整が良好に行なわれるようにし、これにより、対象室1の室圧pが精度良く安定的に設定室圧psに調整されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−314545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の従来システムの如く(図1参照)、ファンFrの出力調整による風路圧frの調整で室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるようにするのでは、何らかの原因による室圧変動で室圧調整ダンパVpの開度bが室圧制御手段pCにより大きく調整されて設定適正開度範囲Yを逸脱することに対して迅速に応答良く対応することができず、室圧調整ダンパVpが一時的にせよ100%開度(全開)又は0%開度(全閉)に振り切った状態や、設定適正開度範囲Yから大きく外れた開度領域で動作する状態になり、そのことで、室圧調整ダンパVpの開度調整によるそれ以上の室圧調整が不能ないし不良になって、室圧差を維持すべき対象室1と他室との間において室圧逆転を招くなどの問題があった。
【0008】
また、給気路2及び排気路3に対して複数の対象室1が並列的に接続される場合では、1つの対象室1での室圧変動で室圧調整ダンパVpの開度bが大きく調整されて設定適正開度範囲Yを逸脱することに対しファンFrの出力が調整されて風路圧frが調整されることが他の対象室1での新たな室圧変動の原因になるなど、ファンFrの出力調整による風路圧調整の影響が複数の対象室1に対して直接的に及び、そのことで各対象室1の室圧pが却って不安定になるなどの問題もあった。
【0009】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な方式をもって室圧調整ダンパの開度が設定適正開度範囲内に調整されるようにすることで、上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は室圧制御システムに係り、その特徴は、
対象室への給気風量を設定風量に調整する定風量装置を設けるとともに、
対象室からの排気路に装備した室圧調整ダンパの開度を調整して対象室からの排気風量を調整することで対象室の室圧を設定室圧に調整する室圧制御手段を設けた室圧制御システムであって、
前記室圧調整ダンパの検出開度に基づいて前記定風量装置の設定風量を変更することで、前記室圧制御手段による開度調整において前記室圧調整ダンパの開度が設定適正開度範囲内に調整される状態にする開度状態制御手段を設けてある点にある。
【0011】
つまり(図1参照)、上記定風量装置qCの設定風量qssを増大側に変更して対象室1に対する給気風量qsを増大側(即ち、室圧上昇側)に変化させれば、室圧制御手段pCは対象室1からの排気風量qrも増大させて対象室1の室圧pを設定室圧psに調整しようと、室圧調整ダンパVpの開度bを速やかに増大側(即ち、室圧低下側)へ変更する。
【0012】
また逆に、上記定風量装置qCの設定風量qssを減少側に変更して対象室1に対する給気風量qsを減少側(即ち、室圧低下側)に変化させれば、室圧制御手段pCは対象室1からの排気風量qrも減少させて対象室1の室圧pを設定室圧psに調整しようと、室圧調整ダンパVpの開度bを速やかに減少側(即ち、室圧上昇側)へ変更する。
【0013】
このことを利用して、上記開度状態制御手段bCは、室圧制御手段pCによる開度調整において室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるように、室圧調整ダンパVpの検出開度bに基づいて定風量装置qCの設定風量qssを変更する。
【0014】
即ち、このように定風量装置qCの設定風量qssを変更して室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるようにすることで、先述した従来システムの如くファンFrの出力調整による風路圧frの調整で室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるようにするのに比べ、何らかの原因による室圧変動で室圧調整ダンパVpの開度bが室圧制御手段pCにより大きく調整されて設定適正開度範囲Yを逸脱することに対しても、遅れなく応答良く対応して室圧調整ダンパVpの開度bを速やかに設定適正開度範囲Y側に復帰させることができる。
【0015】
そして、この速やかな復帰により、室圧調整ダンパVpが100%開度(全開)又は0%開度(全閉)に振り切った状態や、設定適正開度範囲Yから大きく外れた開度領域で動作する状態に陥ることを効果的に回避することができ、これにより、先述の如き室圧逆転などの問題を一層効果的に防止することができる。
【0016】
また、定風量装置qCの設定風量qssを変更することの直接的な影響は対応の対象室1に対してのみ及ぶから、給気路2及び排気路3に対して並列的に複数の対象室1を接続する場合において、1つの対象室1に対する定風量装置qCの設定風量qssを変更することが他の対象室1での新たな室圧変動の原因になることもなく、この点からも、先述の従来システムに比べ各対象室1の室圧pを一層安定的に設定室圧psに保つことができる。
【0017】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施において、
前記室圧調整ダンパの検出開度に基づき対象室に対する排気ファンの出力を調整して前記排気路の風路圧を調整することで、前記室圧制御手段による開度調整において前記室圧調整ダンパの開度が設定適正開度範囲内に調整される状態にする風路圧制御手段を、前記開度状態制御手段とともに設けてある点にある。
【0018】
この構成によれば(図1参照)、前記した開度状態制御手段bCの調整機能(即ち、定風量装置qCの設定風量qssを変更することで室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるようにする機能)と、上記の風路圧制御手段frCの調整機能(即ち、排気ファンFrの出力調整により排気路3の風路圧frを調整することで室圧調整ダンパVpの開度b(特に複数の室圧調整ダンパVp全ての開度b)が設定適正開度範囲Y内に調整されるようにする機能)との相乗機能により、室圧変動で設定適正開度範囲Yから逸脱した室圧調整ダンパVpの開度bを一層速やかに設定適正開度範囲Y側に復帰させることができる。
【0019】
そしてまた、風路圧制御手段frCが排気ファンFrの出力調整により排気路3の風路圧frを調整するにしても、開度状態制御手段bCを併用する分、風路圧制御手段frCによる風路圧調整の調整幅を小さくすることができて、風路圧制御手段frCによる排気路3の風路圧調整が他の対象室1での新たな室圧変動の原因になることも効果的に抑止することができる。
【0020】
なお、この構成の実施においては、室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Yを逸脱することに対する開度状態制御手段bCの動作タイミングと風路圧制御手段frCの動作タイミングとの関係を最適化するように、開度状態制御手段bCの動作特性と風路圧制御手段frCの動作特性とを予め設定しおくようにしてもよい。
【0021】
本発明の第3特徴構成は室圧制御システムに係り、その特徴は、
対象室からの排気風量を設定風量に調整する定風量装置を設けるとともに、
対象室への給気路に装備した室圧調整ダンパの開度を調整して対象室への給気風量を調整することで対象室の室圧を設定室圧に調整する室圧制御手段を設けた室圧制御システムであって、
前記室圧調整ダンパの検出開度に基づいて前記定風量装置の設定風量を変更することで、前記室圧制御手段による開度調整において前記室圧調整ダンパの開度が設定適正開度範囲内に調整される状態にする開度状態制御手段を設けてある点にある。
【0022】
この構成は、第1特徴構成において給気側に装備していた定風量装置qCを排気側に装備するとともに、第1特徴構成において排気側に装備していた室圧調整ダンパVpを給気側に装備したものであり、実質的には第1特徴構成と同様の機能を得ることができる。
【0023】
つまり(図7参照)、上記定風量装置qCの設定風量qrsを増大側に変更して対象室1からの排気風量qrを増大側(即ち、室圧低下側)に変化させれば、室圧制御手段pCは対象室1への給気風量qsも増大させて対象室1の室圧pを設定室圧psに調整しようと、室圧調整ダンパVpの開度bを速やかに増大側(即ち、室圧上昇側)へ変更する。
【0024】
また逆に、上記定風量装置qCの設定風量qrsを減少側に変更して対象室1からの排気風量qrを減少側(即ち、室圧上昇側)に変化させれば、室圧制御手段pCは対象室1への給気風量qsも減少させて対象室1の室圧pを設定室圧psに調整しようと、室圧調整ダンパVpの開度bを速やかに減少側(即ち、室圧低下側)へ変更する。
【0025】
このことを利用して、上記開度状態制御手段bCは、室圧制御手段pCによる開度調整において室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるように、室圧調整ダンパVpの検出開度bに基づいて定風量装置qCの設定風量qrsを変更する。
【0026】
即ち、このように定風量装置qCの設定風量qrsを変更して室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるようにすることで、先述した従来システムの如くファンFs(この場合は給気ファン)の出力調整による風路圧fsの調整で室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるようにするのに比べ、何らかの原因による室圧変動で室圧調整ダンパVpの開度bが室圧制御手段pCにより大きく調整されて設定適正開度範囲Yを逸脱することに対しても、遅れなく応答良く対応して室圧調整ダンパVpの開度bを速やかに設定適正開度範囲Y側に復帰させることができる。
【0027】
そして、この速やかな復帰により、室圧調整ダンパVpが100%開度(全開)又は0%開度(全閉)に振り切った状態や、設定適正開度範囲Yから大きく外れた開度領域で動作する状態に陥ることを効果的に回避することができ、これにより、先述の如き室圧逆転などの問題を一層効果的に防止することができる。
【0028】
また、定風量装置qCの設定風量qrsを変更することの直接的な影響は対応の対象室1に対してのみ及ぶから、給気路2及び排気路3に対して並列的に複数の対象室1を接続する場合において、1つの対象室1に対する定風量装置qCの設定風量qrsを変更することが他の対象室1での新たな室圧変動の原因になることもなく、この点からも、先述の従来システムに比べ各対象室1の室圧pを一層安定的に設定室圧psに保つことができる。
【0029】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成の実施において、
前記室圧調整ダンパの検出開度に基づき対象室に対する給気ファンの出力を調整して前記給気路の風路圧を調整することで、前記室圧制御手段による開度調整において前記室圧調整ダンパの開度が設定適正開度範囲内に調整される状態にする風路圧制御手段を、前記開度状態制御手段とともに設けてある点にある。
【0030】
この構成によれば(図7参照)、前記した開度状態制御手段bCの調整機能(即ち、定風量装置qCの設定風量qrsを変更することで室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるようにする機能)と、上記の風路圧制御手段fsCの調整機能(即ち、給気ファンFsの出力調整により給気路2の風路圧fsを調整することで室圧調整ダンパVpの開度b(特に複数の室圧調整ダンパVp全ての開度b)が設定適正開度範囲Y内に調整されるようにする機能)との相乗機能により、室圧変動で設定適正開度範囲Yから逸脱した室圧調整ダンパVpの開度bを一層速やかに設定適正開度範囲Y側に復帰させることができる。
【0031】
そしてまた、風路圧制御手段fsCが給気ファンFsの出力調整により給気路2の風路圧fsを調整するにしても、開度状態制御手段bCを併用する分、風路圧制御手段fsCによる風路圧調整の調整幅を小さくすることができて、風路圧制御手段fsCによる給気路2の風路圧調整が他の対象室1での新たな室圧変動の原因になることも効果的に抑止することができる。
【0032】
なお、この構成の実施においては、室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Yを逸脱することに対する開度状態制御手段bCの動作タイミングと風路圧制御手段fsCの動作タイミングとの関係を最適化するように、開度状態制御手段bCの動作特性と風路圧制御手段fsCの動作特性とを予め設定しおくようにしてもよい。
【0033】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施において、
前記定風量装置及び前記室圧調整ダンパにより風量調整される対象室への給気及び対象室からの排気とは別に、
対象室へ所定風量を給気する副給気手段、及び、この副給気手段による給気風量と同風量だけ対象室から排気する副排気手段を設け、
これら副給気手段と副排気手段とを同期させて運転及び停止する連動手段を設けてある点にある。
【0034】
この構成によれば(図1参照)、給排気風量qs′,qr′が互いに等しい副給気手段ksと副排気手段krとが連動手段10により同期して運転及び停止されることで、それら副給気手段ksや副排気手段krの運転に原因する対象室1での室圧変動が防止される。
【0035】
従って、このような連動手段10による室圧変動防止機能と、前記した開度状態制御手段bCの調整機能(即ち、定風量装置qCの設定風量qss,qrsを変更することで室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整されるようにする機能)との協働により、対象室1の室圧pを一層安定的に設定室圧psに保つことができる。
【0036】
そしてまた、製作誤差などに原因して副給気手段ksによる給気風量qs′と副排気手段krによる排気風量qr′とに誤差Δqsr′がある場合や、停止状態にある副給気手段ksでの漏洩給気風量qs″と停止状態にある副排気手段krでの漏洩排気風量qr″とに誤差Δqsr″がある場合において、それらの誤差Δqsr′、Δqsr″が原因で副給気手段ks及び副排気手段krの運転時や停止時に室圧変動が生じて室圧調整ダンパVpが設定適正開度範囲Yを逸脱する状態が生じるとしても、それら誤差Δqsr′、Δqsr″を開度状態制御手段bCによる定風量装置qCの設定風量変更をもって吸収する形態で、開度状態制御手段bCの調整機能により室圧調整ダンパVpを設定適正開度範囲Y側へ速やかに復帰させることができ、この点からも、対象室1の室圧pを一層安定的に設定室圧psに保つことができる。
【0037】
なお、この構成の実施において、副給気手段ksによる給気風量qs′や副排気手段krによる排気風量qr′を変更可能にする場合、それら副給気手段ksによる給気風量qs′と副排気手段krによる排気風量qr′とを、それらが等しい関係を保つように連動手段10により同期させて変更させるようにすればよい。
【0038】
また、この構成の実施において、副給気手段ksと副排気手段krと連動手段10とからなる副給排システムKは、1つの対象室1に対して1つの副給排システムKだけを装備するのに限らず、1つの対象室1に対して複数の副給排システムKを装備するようにしてもよい。
【0039】
各副給排システムKは、所謂ドラフトチャンバ、クリーンブース、クリーンベンチなどの局所換気装置を初め、どのような用途のものであってもよい。
【0040】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施において、
前記開度状態制御手段は、
前記室圧調整ダンパの検出開度が設定適正開度範囲の上限値より大きいとき、前記定風量装置の設定風量を設定変更風量だけ減少側へ変更し、かつ、前記室圧調整ダンパの検出開度が設定適正開度範囲の下限値より小さいとき、前記定風量装置の設定風量を設定変更風量だけ増大側へ変更する設定変更制御を、設定インターバル時間ごとに繰り返して実行する構成にしてある点にある。
【0041】
この構成によれば(図1参照)、何らかの原因で室圧変動が生じて室圧制御手段pCによる開度調整で室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Yを逸脱することに対し、上記設定変更制御の繰り返しにより、室圧調整ダンパVpの開度bを上記設定変更風量Δqssに相当する開度分ずつ復帰側へ変化させる形態で、最終的に室圧調整ダンパVpの開度bを室圧制御手段Cpによる開度調整において設定適正開度範囲Y内に復帰させることができる。
【0042】
そして、この設定変更制御の繰り返し間隔である設定インターバル時間Ts及び各回の設定変更制御での変更幅である設定変更風量Δqssとして適当な時間及び風量を設定しておくことで、室圧変動に対する開度状態制御手段bCの動作遅れ(機能遅れ)を確実に防止して、室圧変動による室圧調整ダンパVpの開度変化に対し開度状態制御手段bCを遅滞なく良好に調整機能させることができる。
【0043】
また、この設定において設定変更風量Δqssを適当な小風量に制限して設定することで、その設定変更風量Δqssだけ定風量装置qCの設定風量qssを変更することが原因で生じる副次的な室圧変動を効果的に防止することができ、これらのことで、室圧変動で設定適正開度範囲Yから逸脱した室圧調整ダンパVpの開度bを遅れなくかつ安定的な状態で円滑に設定適正開度範囲Y内に復帰させることができる。
【0044】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施において、
前記開度状態制御手段は、
前記室圧調整ダンパの検出開度が設定適正開度範囲の上限値より大きいとき、それら検出開度と上限値との差に応じた変更風量だけ前記定風量装置の設定風量を減少側へ連続的に変更し、
かつ、前記室圧調整ダンパの検出開度が設定適正開度範囲の下限値より小さいとき、それら検出開度と下限値との差に応じた変更風量だけ前記定風量装置の設定風量を増大側へ連続的に変更する構成にしてある点にある。
【0045】
この構成によれば(図1参照)、何らかの原因で室圧変動が生じて室圧制御手段pCによる開度調整で室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Yを逸脱することに対し、その逸脱量に応じた変更風量Δqss′だけ定風量装置qCの設定風量qssをダンパ開度復帰側へ連続的に変更するから、設定適正開度範囲Yから逸脱した室圧調整ダンパVpの開度bを室圧制御手段pCによる開度調整において一層速やかかつ的確に設定適正開度範囲Y内に復帰させることができる。
【0046】
そして、このように定風量装置qCの設定風量qssを連続的に変更する際の変更速度(即ち、設定風量qssの単位時間当たりの変更量)を適当な緩速度に制限して設定しておくことで、その設定風量qssの変更が原因で生じる副次的な室圧変動も効果的に防止することができる。
【0047】
本発明の第8特徴構成は、第7特徴構成の実施において、
対象室における総給排気風量差と前記室圧調整ダンパの開度との相関を記憶する記憶手段を装備し、
前記開度状態調整手段は、この記憶手段が記憶する前記相関において前記室圧調整ダンパの検出開度に対応する前記総給排気風量差と等しい風量を前記変更風量とする構成にしてある点にある。
【0048】
この構成によれば(図1参照)、何らかの原因で室圧変動が生じて室圧制御手段pCによる開度調整で室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Yを逸脱することに対し、対象室における総給排気風量差ΔQsrと室圧調整ダンパVpの開度bの相関Lにおいて室圧調整ダンパVpの検出開度bに対応する総給排気風量差ΔQsrと等しい変更風量Δqss′だけ定風量装置qCの設定風量qssをダンパ開度復帰側(即ち、総給排気風量差ΔQsrの解消側)へ変更するから、設定適正開度範囲Yから逸脱した室圧調整ダンパVpの開度bを室圧制御手段pCによる開度調整においてさらに速やかかつ的確に設定適正開度範囲Y内に復帰させることができる。
【0049】
なお、対象室1における総給排気風量差ΔQsrとは、前記の副給気手段ksや副排気手段krがある場合(図1参照)、それら副給気手段ksによる給気風量qs′や副排気手段krによる排気風量qr′を含む対象室全体としての給気風量Qsと排気風量Qrとの差であり、また、この場合、副給気手段ksによる給気風量qs′と副排気手段krによる排気風量qr′とは互いに異なる風量であってもよく、さらにまた、副給気手段ksと副排気手段krとのいずれか一方のみを対象室1に装備するシステム構成であってもよい。
【0050】
本発明の第9特徴構成は第8特徴構成の室圧制御システムの運転方法に係り、その特徴は、
前記定風量装置及び前記室圧調整ダンパにより風量調整される対象室への給気及び対象室からの排気とは別に、対象室へ所定風量を給気する副給気手段又は対象室から所定風量を排気する副排気手段を備えるシステム構成において、
これら副給気手段又は副排気手段を運転したときに対象室で生じる総給排気風量差及びその時の前記室圧調整ダンパの開度を測定し、
その測定結果に基づき求めた対象室における総給排気風量差と前記室圧調整ダンパの開度との相関を前記記憶手段に記憶させておく点にある。
【0051】
つまり、この構成によれば(図1参照)、副給気手段ks又は副排気手段krの運転により対象室全体としての給気風量Qsと排気風量Qrとに差ΔQsrを生じさせて、その差ΔQsrの測定値とその時の室圧調整ダンパVpの測定開度bとに基づき、それら総給排気風量差ΔQsrとダンパ開度bとの相関Lを求めるから、対象室全体としての給気風量Qsと排気風量Qrとに差を生じさせる専用手段の装備を不要にすることができ、また、副給気手段ksによる給気風量qs′の測定や副排気手段krによる排気風量qr′の測定だけで対象室1における総給排気風量差ΔQsrを知ることもでき、これらのことから、上記相関Lを容易に求めることができて第8特徴構成の実施を容易にすることができる。
【0052】
なお、給排気風量qs′,qr′を等しくした副給気手段ksと副排気手段krとを連動手段10により同期させて運転する場合でも、それら給気風量qs′と排気風量qr′との間には一般に誤差Δqsr′があることが多い、従って、上記構成の実施においては、給排気風量qs′,qr′を等しくした副給気手段ksと副排気手段krとを連動手段10により同期させて運転することで上記総給排気風量差ΔQsrを生じさせる実施形態を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】空調設備の設備構成図
【図2】給気ダンパ開度の説明図
【図3】室圧調整ダンパ開度の説明図
【図4】設定変更制御のフローチャート
【図5】別実施形態における室圧調整ダンパ開度の説明図
【図6】別実施形態における設定変更制御のフローチャート
【図7】その他の別実施形態を示す室圧制御システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は空調設備を示し、1はクリーンルームなどの対象室、2は給気ファンFsの吐出側に接続した給気路、3は排気ファンFrの吸入側に接続した排気路であり、対象室1は分岐給気路2aを介して給気路2に接続するとともに、分岐排気路3aを介して排気路3に接続してある。
【0055】
また、給気ファンFsの吸入側には、給気路2を通じて対象室1に供給する空気を温湿度調整する空調機4を装備してある。
【0056】
なお、図1では1つの対象室1のみを示すが、給気路2及び排気路3には、複数の対象室1を夫々、分岐給気路2a及び分岐排気路3aを介して並列的に接続してあり、以下の機器装備は各対象室1についてほぼ共通する。
【0057】
Vqは分岐給気路2aに介装した給気風量調整用の給気ダンパ、5は給気ダンパVqにおける通風量qs(即ち、対象室1に対する給気風量)を検出する風量センサ、6は給気ダンパVqを制御する給気側ダンパ制御器であり、これらは対象室1への給気風量qsを設定風量qssに調整する定風量装置qCを構成する。
【0058】
即ち、給気側ダンパ制御器6は、風量センサ5による検出風量qsと中央制御器CCから指定される設定風量qssとの偏差Δqsに応じ給気ダンパVqの開度aを調整して対象室1に対する給気風量qsを対象室毎の設定風量qssに調整する定風量制御を実行する。
【0059】
Vpは分岐排気路3aに介装した室圧調整ダンパ、7は対象室1の室圧p(具体的には基準圧力と室内圧力との差圧)を検出する室圧センサ、8は室圧調整ダンパVpを制御する排気側ダンパ制御器であり、この排気側ダンパ制御器8は、室圧調整ダンパVpの開度bを調整して対象室1からの排気風量qrを調整することで対象室1の室圧pを設定室圧pに調整する室圧制御手段pCを構成する。
【0060】
即ち、排気側ダンパ制御器8は、室圧センサ7による検出室圧pと中央制御器CCから指定される設定室圧psとの偏差Δpに応じ室圧調整ダンパVpの開度bを調整して対象室1の室圧pを対象室毎の設定室圧psに調整する室圧調整制御を実行する。
【0061】
対象室1には、ドラフトチャンバやクリーンベンチなどの局所換気装置に代表される副給排システムK1,K2を装備してあり、これら副給排システムK1,K2は夫々、副給気手段ksと副排気手段krとを備える構成にしてある。
【0062】
副給排システムK1,K2夫々の副給気手段ksは、定風量装置qCにより風量調整される対象室1への基本的な給気とは別に、専用給気路9aに装備の給気弁Vaを開弁することで専用給気路9aを通じて対象室1における所定の一部箇所に対して給気作用する。
【0063】
また、副給排システムK1,K2夫々の副排気手段krは、室圧調整ダンパVpにより風量調整される対象室1からの基本的な排気とは別に、専用排気路9bに装備の排気弁Vbを開弁することで専用排気路9bを通じて対象室1における同一部箇所に対して排気作用する。
【0064】
10は副給排システムK1,K2の夫々に装備した連動制御器であり、この連動制御器10は副給気手段ksと副排気手段krとを同期させて運転及び停止する連動手段として機能する。
【0065】
具体的には、この連動制御器10は、対応の副給排システムK1,K2に対する運転指令を受けると、対応システムにおける副給気手段ksの給気弁Vaと対応システムにおける副排気手段ksの排気弁Vbとを同期させて所定開度まで開弁させ、これにより、対応システムの副給気手段ksを設定給気風量qs′で対象室1における所定の一部箇所に対して給気作用させるとともに、それに併行して、その設定給気風量qsと等しい設定排気風量qr′で対応システムの副排気手段krを同じ一部箇所に対して排気作用させる。
【0066】
また、この連動制御器10は、対応の副給排システムK1,K2に対する停止指令を受けると、対応システムにおける副給気手段ksの給気弁Vaと対応システムにおける副排気手段ksの排気弁Vbとを同期させて閉弁させ、これにより、対応システムにおける副給気手段ksの給気作用及び副排気手段krの排気作用を同時に停止させる。
【0067】
つまり、副給排システムK1,K2の夫々における副給気手段ksと副排気手段krとを互いに同じ風量で給排気作用させることで、それら副給排システムK1,K2夫々の運転及び停止にかかわらず、対象室1の給排気風量バランスが保たれて室圧変動が生じないようにしてある。
【0068】
11aは給気路2の風路圧fs(給気路2の内部気圧)を検出する給気側圧力センサ、12aは給気ファンFsを制御する給気ファン制御器であり、この給気ファン制御器12aは、給気側圧力センサ11aによる検出風路圧fsと中央制御器CCから指定される給気側設定風路圧fssとの偏差Δfsに応じインバータ制御により給気ファンFsの出力を調整して給気路2の風路圧fsを給気側設定風路圧fssに調整する給気ファン制御を実行する。
【0069】
また、11bは排気路3の風路圧fr(排気路3の内部気圧)を検出する排気側圧力センサ、12bは排気ファンFrを制御する排気ファン制御器であり、この排気ファン制御器12bは、排気側圧力センサ11bによる検出風路圧frと中央制御器CCから指定される排気側設定風路圧frsとの偏差Δfrに応じインバータ制御により排気ファンFrの出力を調整して排気路3の風路圧frを排気側設定風路圧frsに調整する排気ファン制御を実行する。
【0070】
13a,13bは中央制御器CCにおける給気側及び排気側の風路圧調整部であり、給気側の風路圧調整部13aは、給気路2及び排気路3に対して並列的に接続した複数の対象室1の夫々において、給気側ダンパ制御器6による定風量制御でのダンパ開度調整で給気ダンパVqの開度aが給気側の設定適正開度範囲X(本例では図2に示す如く上限値xmaxが100%開度(全開)より小さく下限値xminが0%開度(全閉)より大きい所定の中間開度範囲、例えば25%〜75%開度範囲)の範囲内に入るように、各対象室1に対する給気ダンパVqの検出開度a(第1〜第n対象室の給気ダンパ開度a1〜an)に応じて給気側設定風路圧fssを変更する給気側の風路圧調整制御を実行する。
【0071】
即ち、この給気側風路圧調整部13aと給気ファン制御器12aとは、給気ダンパVqの検出開度aに基づき給気ファンFsの出力を調整して給気路2の風路圧fsを調整することで、給気側ダンパ制御器6による定風量制御でのダンパ開度調整において給気ダンパVqの開度aが給気側の設定適正開度範囲X内に調整される状態にする給気側の風路圧制御手段fsCを構成する。
【0072】
排気側の風路圧調整部13bは、給気側と同様、給気路2及び排気路3に対して並列的に接続した複数の対象室1の夫々において、排気側ダンパ制御器8による室圧調整制御でのダンパ開度調整において室圧調整ダンパVpの開度bが排気側の設定適正開度範囲Y(本例では図3に示す如く上限値ymaxが100%開度(全開)より小さく下限値yminが0%開度(全閉)より大きい所定の中間開度範囲、例えば25%〜75%開度範囲)の範囲内に入るように、各対象室1に対する室圧調整ダンパVpの検出開度b(第1〜第n対象室の給気ダンパ開度b1〜bn)に応じて排気側設定風路圧frsを変更する排気側の風路圧調整制御を実行する。
【0073】
即ち、この排気側風路圧調整部13bと排気ファン制御器12bとは、室圧調整ダンパVpの検出開度bに基づき排気ファンFrの出力を調整して排気路3の風路圧frを調整することで、排気側ダンパ制御器8による室圧調整御でのダンパ開度調整において室圧調整ダンパVpの開度bが排気側の設定適正開度範囲Y内に調整される状態にする排気側の風路圧制御手段frCを構成する。
【0074】
つまり、これら風路圧調整制御により複数の対象室1の夫々において給気ダンパVqの開度a及び室圧調整ダンパVpの開度bが定風量制御上や室圧調整制御上で上記の如き設定適正開度範囲X,Y内に入るようにすることで、各対象室1に対する定風量制御及び室圧調整制御を感度面、精度面並びに安定性の面で良好に行なわれるようにする。
【0075】
給気側の風路圧調整制御において給気側の風路圧調整部13aは、具体的には、各対象室1に対する給気ダンパVqの検出開度a(a1〜an)のうち最大のものが給気側の設定適正開度範囲Xを大開度側に逸脱しているとき給気側設定風路圧fssを上昇側に変更し、また、各対象室1に対する給気ダンパVqの検出開度a(a1〜an)のうち最小のものが給気側の設定適正開度範囲Xを小開度側に逸脱しているとき給気側設定風路圧fssを低下側に変更し、そしてまた、各対象室1に対する給気ダンパVqの検出開度a(a1〜an)が全て給気側の設定適正開度範囲Xの範囲内にあるときには給気側設定風路圧fssを現状値に維持する。
【0076】
即ち、各対象室1に対する給気ダンパVqの検出開度a(a1〜an)のうち最大のものが給気側の設定適正間開度範囲Xを大開度側に逸脱しているときは、給気側設定風路圧fssを上昇側へ変更することにより、給気ファン制御上で給気ファンFsの出力を上昇側に調整させ、この上昇側へのファン出力調整に対して定風量風制御上で給気ダンパVqの夫々が閉じ側に開度調整されるようにする。
【0077】
また逆に、各対象室1に対する給気ダンパVqの検出開度a(a1〜an)のうち最小のものが給気側の設定適正開度範囲Xを小開度側に逸脱しているときは、給気側設定風路圧fssを低下側へ変更することにより、給気ファン制御上で給気ファンFsの出力を低下側に調整させ、この低下側へのファン出力調整に対して定風量制御上で給気ダンパVqの夫々が開き側に開度調整されるようにし、これにより、各対象室1に対する給気ダンパVqの開度a(a1〜an)が全て給気側の設定適正開度範囲Xに入るようにする。
【0078】
これと同様、排気側の風路圧調整制御において排気側の風路圧調整部13bは、具体的には、各対象室1に対する室圧調整ダンパVpの検出開度b(b1〜bn)のうち最大のものが排気側の設定適正開度範囲Yを大開度側に逸脱しているとき排気側設定風路圧frsを低下側に変更し、また、各対象室1に対する室圧調整ダンパVpの検出開度b(b1〜bn)のうち最小のものが排気側の設定適正開度範囲Yを小開度側に逸脱しているとき排気側設定風路圧frsを上昇側に変更し、そしてまた、各対象室1に対する室圧調整ダンパVpの検出開度b(b1〜bn)が全て排気側の設定適正開度範囲Yの範囲内にあるときには排気側設定風路圧frsを現状値に維持する。
【0079】
即ち、各対象室1に対する室圧調整ダンパVpの検出開度b(b1〜bn)のうち最大のものが排気側の設定適正開度範囲Yを大開度側に逸脱しているときは、排気側設定風路圧frsを低下側へ変更することにより、排気ファン制御上で排気ファンFrの出力を上昇側に調整させ、この上昇側へのファン出力調整に対して室圧調整制御上で室圧調整ダンパVpの夫々が閉じ側に開度調整されるようにする。
【0080】
また逆に、各対象室1に対する室圧調整ダンパVpの検出開度b(b1〜bn)のうち最小のものが排気側の設定適正開度範囲Yを小開度側に逸脱しているときは、排気側設定風路圧frsを上昇側へ変更することにより、排気ファン制御上で排気ファンFrの出力を低下側に調整させ、この低下側へのファン出力調整に対して室圧調整制御上で室圧調整ダンパVpの夫々が開き側に開度調整されるようにし、これにより、各対象室1に対する室圧調整ダンパVpの開度b(b1〜bn)が全て排気側の設定適正開度範囲Yに入るようにする。
【0081】
これら給気側の風路圧制御手段fsC及び排気側の風路圧制御手段frCは、いずれも、給気路2及び排気路3に並列接続された複数の対象室1に対して包括的かつ連係的に機能させるものであるが、この空気設備の室圧制御システムでは、これら風路圧制御手段fsC,frCに加えて、各対象室1に対する室圧調整ダンパVpの開度状態を室圧制御手段pCによる開度調整上で個別に調整する開度状態調整手段bCを中央制御器CCに装備してある。
【0082】
この開度状態調整手段bCは、対象室1毎に、室圧調整ダンパVpの検出開度bに基づいて定風量装置qCの設定風量qssを補正的に変更することで室圧制御手段pC(排気側ダンパ制御器8)によるダンパ開度調整において室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整される状態にするものであり、具体的には、各対象室1の定風量装置qCに対して個別に次の(♯1)〜(♯3)の設定変更制御を設定インターバル時間Tsごとに繰り返して実行する(図3,図4参照)。
【0083】
(♯1)室圧調整ダンパVpの検出開度bが設定適正開度範囲Yの上限値ymaxより大きい(b>ymax)とき、その対象室1に対する定風量装置qCの設定風量qssを設定変更風量Δqssだけ減少側へ変更(qss=qss−Δqss)する。
【0084】
(♯2)室圧調整ダンパVpの検出開度bが設定適正開度範囲Yの下限値yminより小さい(b<ymin)とき、その対象室1に対する定風量装置qCの設定風量qssを設定変更風量Δqssだけ増大側へ変更(qss=qss+Δqss)する。
【0085】
(♯3)室圧調整ダンパVpの検出開度bが設定適正開度範囲Y内にあるとき、その対象室1に対する定風量装置qCの設定風量qssを現状値に維持する。
【0086】
つまり、いずれかの対象室1において室圧調整ダンパVpの検出開度bが設定適正開度範囲Yを大開度側に逸脱(b>ymax)したときには、その対象室1に対する定風量装置qCの設定風量qssを設定インターバル時間Tsごと設定変更風量Δqssずつ減少側(即ち、室圧低下側)へ変更して、その対象室1に対する給気風量qsを漸次的に減少させることで、その対象室1の室圧制御手段pC(排気側ダンパ制御器8)による室圧調整制御において、その対象室1の室圧調整ダンパVpが閉じ側へ漸次的に開度調整されるようにする。
【0087】
また、いずれかの対象室1において室圧調整ダンパVpの検出開度bが設定適正開度範囲Yを小開度側に逸脱(b<ymin)したときには、その対象室1に対する定風量装置qCの設定風量qssを設定インターバル時間Tsごと設定変更風量Δqssずつ増大側(即ち、室圧上昇側)へ変更して、その対象室1に対する給気風量qsを漸次的に増大させることで、その対象室1の室圧制御手段pC(排気側ダンパ制御器8)による室圧調整制御において、その対象室1の室圧調整ダンパVpが開き側へ漸次的に開度調整されるようにし、これらのことで、排気側の風路圧制御手段frCのみにより室圧調整ダンパVpの開度状態を調整するのに比べ、設定適正開度範囲Yを逸脱した室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に速やかに復帰するようにしてある。
【0088】
なお、設定インターバル時間Tsは、室圧変動による室圧調整ダンパVpの開度変化に対し開度状態制御手段bCを遅滞なく調整機能させるのに十分な短い時間(例えば10秒〜60秒)を試験運転などに基づいて設定してあり、また、設定変更風量Δqssとしては、その設定変更風量Δqssだけ定風量装置qCの設定風量qssを変更することが原因で生じる副次的な室圧変動を防止するのに十分な小風量を同じく試験運転などに基づいて設定してある。
【0089】
〔別実施形態〕
次に本発明の別実施形態を列記する。
上述の実施形態において開度状態調整手段bCは、室圧調整ダンパVpの検出開度bが設定適正開度範囲Yから逸脱しているとき、定風量装置qCの設定風量qssを設定変更風量Δqssだけ変更する設定変更制御を設定インターバル時間Tsごとに繰り返す構成にしたが、これに代え、開度状態調整手段bCは、室圧調整ダンパVpの検出開度bが設定適正開度範囲Yの上限値ymaxより大きいとき、それら検出開度bと上限値ymaxとの差に応じた変更風量Δqss′だけ定風量装置qCの設定風量qssを減少側へ連続的に変更し、かつ、室圧調整ダンパVpの検出開度bが設定適正開度範囲Yの下限値ymixより小さいとき、それら検出開度bと下限値ymixとの差に応じた変更風量Δqss′だけ定風量装置qCの設定風量qssを増大側へ連続的に変更する構成にしてもよい。
【0090】
この場合、図5に示す如く、室圧調整ダンパVpの開度調整範囲(0%開度〜100%開度)のうち設定適正開度範囲Yを除く部分を複数の開度領域Y1〜Y6に区分して、それら開度領域Y1〜Y6ごとに変更風量Δqss1〜Δqss6を設定しておき、これにより、室圧変動で室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Yから逸脱していずれかの開度領域Y1〜Y6に位置する状態になったとき(図6参照)、室圧調整ダンパVpの開度bが位置する状態になった開度領域Y1〜Y6を判定して、該当する開度領域Y1〜Y6の設定変更風量Δqss1〜Δqss6だけ定風量装置qCの設定風量qssをダンパ開度復帰側へ連続的に変更するようにしてもよい。
【0091】
あるいはまた、室圧調整ダンパVpの単位開度あたりの変更風量Δqss″を設定しておき、これにより、室圧変動で室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Yから逸脱したとき、その設定適正開度範囲Yの上下限値ymax、yminと室圧調整ダンパVpの開度bとの差分(又は、設定適正開度範囲Yの中心値ycと室圧調整ダンパVpの開度bとの差分)に上記単位開度あたりの設定変更風量Δqss″を乗じた風量だけ定風量装置qCの設定風量qssを変更するようにしてもよい。
【0092】
室圧調整ダンパVpの検出開度bと設定適正開度範囲Yの上下限値ymax,yminとの差に応じた変更風量Δqss′だけ定風量装置qCの設定風量qssをダンパ開度復帰側へ連続的に変更する構成を採用する場合、対象室1における総給排気風量差ΔQsrと室圧調整ダンパVpの開度bとの相関Lを記憶する記憶手段を装備し、開度状態調整手段bCは、この記憶手段が記憶する相関Lにおいて室圧調整ダンパVpの検出開度bに対応する総給排気風量差ΔQsrと等しい風量を上記変更風量Δqss′とする構成にしてもよい。
【0093】
また、この場合、副給排システムK1、K2の両方の同時運転及び同時停止、副給排システムK1だけの運転及び停止、副給排システムK2だけの運転及び停止など、副給排システムK1、K2夫々の副給気手段ksや副排気手段krを各種パターンで運転及び停止ときに対象室1で生じる総給排気風量差ΔQsrとその時の室圧調整ダンパVpの開度bを測定し、その測定結果に基づき求めた対象室1における総給排気風量差ΔQsrと室圧調整ダンパVpの開度bとの相関Lを記憶手段に記憶させておくようにしてもよい。
【0094】
前述の実施形態では、給気側に定風量装置qCを装備し、排気側に室圧調整ダンパVpを装備する例を示したが、これに代え、図7示す如く、排気側に定風量装置qCを装備し、給気側に室圧調整ダンパVpを装備するシステム構成、即ち、対象室1からの排気風量qrを設定風量qrsに調整する定風量装置qCを設けるとともに、対象室1への給気路2に装備した室圧調整ダンパVpの開度を調整して対象室1への給気風量qsを調整することで対象室1の室圧pを設定室圧psに調整する室圧制御手段pCを設けるシステム構成にし、この構成において、室圧調整ダンパVpの検出開度bに基づいて定風量装置qCの設定風量qrsを変更することで、室圧制御手段pCによる開度調整において室圧調整ダンパVpの開度bが設定適正開度範囲Y内に調整される状態にする開度状態制御手段bCを設けるようにしてもよい。
【0095】
本発明の実施において対象室1は複数室に限らず一室のであってもよい。
【0096】
対象室1に装備する副給排システムKは単数あるいは複数のいずれであってもよく、また、副給気手段ksや副排気手段krの装備がない対象室1であってもよい。
【0097】
前述の実施形態では、副給気手段ksの専用給気路9aを定風量装置qCの介装系統である給気路2から分岐し、また、副排気手段krの専用排気路9bを室圧調整ダンパVpの介装系統である排気路3から分岐する例を示したが、これに代え、副給気手段ksの専用給気路9aや副排気手段krの専用排気路9bは、定風量装置qCの介装系統や室圧調整ダンパVpの介装系統以外の風路系から延設してもよい。
【0098】
排気側や給気側の風路圧制御手段fsC,frCを省略したシステム構成を採用してもよい。
【0099】
室圧調整ダンパVpの設定適正開度範囲Yは、室圧調整ダンパVpの特性に応じて適宜決定すればよく、その設定適正開度範囲Yは、室圧調整ダンパVpの開度調整範囲のうちの一部範囲であれば、100%開度や0%開度を含む範囲であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、室圧調整を要する各種分野における種々の用途の室空間に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 対象室
qs 給気風量
qr 排気風量
qss 設定風量
qrs 設定風量
qC 定風量装置
2 給気路
3 排気路
Vp 室圧調整ダンパ
b 開度
p 室圧
ps 設定室圧
pC 室圧制御手段
Y 設定適正開度範囲
bC 開度状態制御手段
Fs 給気ファン
Fr 排気ファン
fs 風路圧
fr 風路圧
fsC 風路圧制御手段
frC 風路圧制御手段
qs′ 所定風量
qr′ 所定風量
ks 副給気手段
kr 副排気手段
10 連動手段
ymax 上限値
Δqss 設定変更風量だ
ymin 下限値
Ts 設定インターバル時間
Δqss′ 変更風量
ΔQsr 総給排気風量差
L 相関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象室への給気風量を設定風量に調整する定風量装置を設けるとともに、
対象室からの排気路に装備した室圧調整ダンパの開度を調整して対象室からの排気風量を調整することで対象室の室圧を設定室圧に調整する室圧制御手段を設けた室圧制御システムであって、
前記室圧調整ダンパの検出開度に基づいて前記定風量装置の設定風量を変更することで、前記室圧制御手段による開度調整において前記室圧調整ダンパの開度が設定適正開度範囲内に調整される状態にする開度状態制御手段を設けてある室圧制御システム。
【請求項2】
前記室圧調整ダンパの検出開度に基づき対象室に対する排気ファンの出力を調整して前記排気路の風路圧を調整することで、前記室圧制御手段による開度調整において前記室圧調整ダンパの開度が設定適正開度範囲内に調整される状態にする風路圧制御手段を、前記開度状態制御手段とともに設けてある請求項1記載の室圧制御システム。
【請求項3】
対象室からの排気風量を設定風量に調整する定風量装置を設けるとともに、
対象室への給気路に装備した室圧調整ダンパの開度を調整して対象室への給気風量を調整することで対象室の室圧を設定室圧に調整する室圧制御手段を設けた室圧制御システムであって、
前記室圧調整ダンパの検出開度に基づいて前記定風量装置の設定風量を変更することで、前記室圧制御手段による開度調整において前記室圧調整ダンパの開度が設定適正開度範囲内に調整される状態にする開度状態制御手段を設けてある室圧制御システム。
【請求項4】
前記室圧調整ダンパの検出開度に基づき対象室に対する給気ファンの出力を調整して前記給気路の風路圧を調整することで、前記室圧制御手段による開度調整において前記室圧調整ダンパの開度が設定適正開度範囲内に調整される状態にする風路圧制御手段を、前記開度状態制御手段とともに設けてある請求項3記載の室圧制御システム。
【請求項5】
前記定風量装置及び前記室圧調整ダンパにより風量調整される対象室への給気及び対象室からの排気とは別に、
対象室へ所定風量を給気する副給気手段、及び、この副給気手段による給気風量と同風量だけ対象室から排気する副排気手段を設け、
これら副給気手段と副排気手段とを同期させて運転及び停止する連動手段を設けてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の室圧制御システム。
【請求項6】
前記開度状態制御手段は、
前記室圧調整ダンパの検出開度が設定適正開度範囲の上限値より大きいとき、前記定風量装置の設定風量を設定変更風量だけ減少側へ変更し、かつ、前記室圧調整ダンパの検出開度が設定適正開度範囲の下限値より小さいとき、前記定風量装置の設定風量を設定変更風量だけ増大側へ変更する設定変更制御を、設定インターバル時間ごとに繰り返して実行する構成にしてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の室圧制御システム。
【請求項7】
前記開度状態制御手段は、
前記室圧調整ダンパの検出開度が設定適正開度範囲の上限値より大きいとき、それら検出開度と上限値との差に応じた変更風量だけ前記定風量装置の設定風量を減少側へ連続的に変更し、
かつ、前記室圧調整ダンパの検出開度が設定適正開度範囲の下限値より小さいとき、それら検出開度と下限値との差に応じた変更風量だけ前記定風量装置の設定風量を増大側へ連続的に変更する構成にしてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の室圧制御システム。
【請求項8】
対象室における総給排気風量差と前記室圧調整ダンパの開度との相関を記憶する記憶手段を装備し、
前記開度状態調整手段は、この記憶手段が記憶する前記相関において前記室圧調整ダンパの検出開度に対応する前記総給排気風量差と等しい風量を前記変更風量とする構成にしてある請求項7記載の室圧制御システム。
【請求項9】
請求項8に記載した室圧制御システムの運転方法であって、
前記定風量装置及び前記室圧調整ダンパにより風量調整される対象室への給気及び対象室からの排気とは別に、対象室へ所定風量を給気する副給気手段又は対象室から所定風量を排気する副排気手段を備えるシステム構成において、
これら副給気手段又は副排気手段を運転したときに対象室で生じる総給排気風量差及びその時の前記室圧調整ダンパの開度を測定し、
その測定結果に基づき求めた対象室における総給排気風量差と前記室圧調整ダンパの開度との相関を前記記憶手段に記憶させておく室圧制御システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−7534(P2013−7534A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140891(P2011−140891)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】