説明

室外機、およびこれを備えた空気調和機

【課題】室外機が落下等により衝撃を受けた場合であっても、衝撃力により蓄熱槽が圧縮機から分離するのを防止でき、圧縮機と蓄熱槽との間の密着性の低下を抑制でき、圧縮機が運転時に発生する熱を蓄熱槽に十分に吸収させることができる室外機を提供すること。
【解決手段】筐体5と、筐体5の内部に収容され、筐体5に固定されている圧縮機1と、筐体5の内部に収容され、圧縮機1の外周表面に対して取り囲むように接する蓄熱装置2と、を備える室外機6であって、筐体5に固定され、蓄熱装置2の蓄熱槽23の上面に当接する飛び出し防止具3を備えたことで、衝撃を受けた場合であっても、衝撃力により蓄熱槽が圧縮機から分離するのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機と蓄熱装置を備えた室外機およびこれを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の空気調和機では、圧縮機およびこの圧縮機から放熱される熱を蓄熱する蓄熱槽を備えた蓄熱装置を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。様々な考案がなされている。
【0003】
図4は従来の蓄熱装置を示しており、蓄熱装置101を構成する蓄熱槽として、少なくとも圧縮機102の外周表面の一部と接する形状とした金属製容器を配設し、圧縮機102と金属製容器との隙間にはシリコン系樹脂104を充填している。さらに、金属製容器の中には蓄熱材103を充填し、金属製容器の外表面で、少なくとも圧縮機102と接していない部分の一部には、断熱材105を配設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−8376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の圧縮機および蓄熱装置を組み込んだ室外機は、運搬や設置の際に、例えば落下等による衝撃を受けると、圧縮機と金属製容器との隙間に充填されたシリコン系樹脂に負荷が掛かり、シリコン系樹脂と圧縮機の間で、または、シリコン系樹脂と金属製容器との間で、剥離が生じる。この場合、圧縮機と蓄熱槽との密着性が低下し、その結果として、圧縮機が運転時に発生する熱を蓄熱槽が十分に吸収できなくなるおそれがあった。
【0006】
また、圧縮機と金属製容器との隙間にシリコン系樹脂等を充填せず、金属製容器を圧縮機に対し着脱自在の構成とする場合には、室外機が落下等による衝撃を受けると、衝撃力により蓄熱槽が圧縮機から分離することがあり、その結果として、圧縮機が運転時に発生する熱を蓄熱槽が十分に吸収できなくなるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、室外機が落下等により衝撃を受けた場合であっても、衝撃力により蓄熱槽が圧縮機から分離するのを防止でき、圧縮機と蓄熱槽との間の密着性の低下を抑制でき、圧縮機が運転時に発生する熱を蓄熱槽に十分に吸収させることができる室外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の室外機は、筐体と、筐体の内部に収容され、筐体に固定されている圧縮機と、圧縮機の外周表面を取り囲むように接する蓄熱槽を具備した蓄熱装置と、を備えた室外機であって、筐体に固定され、かつ、蓄熱槽の上面に当接することで、蓄熱槽が圧縮機から離脱するのを防止する飛び出し防止具を備える。
【0009】
これによって、室外機が落下等により衝撃を受けた場合であっても、飛び出し防止具が蓄熱槽の上面に当接しているので、圧縮機と蓄熱槽との分離を防止でき、圧縮機と蓄熱槽との間の密着性の低下を抑制できる。このことにより、室外機が落下等により衝撃を受けた場合であっても、圧縮機が運転時に発生する熱を蓄熱槽が十分に吸収させることができ
る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の室外機は、室外機が落下等により衝撃を受けた場合であっても、衝撃力により蓄熱槽が圧縮機から分離するのを防止でき、圧縮機と蓄熱槽との間の密着性の低下を抑制でき、圧縮機が運転時に発生する熱を蓄熱槽に十分に吸収させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1における室外機の透視斜視図
【図2】本発明の実施形態1における室外機の要部拡大図(a)蓄熱装置の固定を示す図、(b)圧縮機の固定を示す図
【図3】本発明の実施形態1における室外機の上面視透視図
【図4】従来の蓄熱装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、筐体に固定され、蓄熱槽の上面に当接する飛び出し防止具を備えることを特徴とする室外機とするもので、室外機が落下等により衝撃を受けた場合であっても、衝撃力により蓄熱槽が圧縮機から分離するのを、飛び出し防止具が防止するので、圧縮機と蓄熱槽との間の密着性の低下を抑制でき、圧縮機が運転時に発生する熱を蓄熱槽に十分に吸収させることができる。
【0013】
第2の発明は、蓄熱槽は、圧縮機の外周方向の一部を切り欠いた形状であり、飛び出し防止具は、蓄熱槽の内壁に当接する係止片を備える室外機とするもので、振動等により圧縮機が蓄熱槽の開口部から外側に向けて転倒するのを有効に防止することができる。
【0014】
第3の発明は、かかる室外機を備える空気調和機とすることで、信頼性に優れた空気調和機を得ることができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本実施形態における室外機を示す図である。
【0017】
室外機6は、筐体5、圧縮機1、蓄熱槽23を備えた蓄熱装置2室外機ファン(図示せず)、蓄熱装置2を備えている。なお、図1では、理解を容易するため、筐体5の天板、筐体5の側壁の一部、ならびに室外機ファンの図示を省略している。
【0018】
筐体5は、底板51と図示しない側壁および天板とを備え、筐体5の内部には仕切り板4、圧縮機1、蓄熱装置2、室外機ファンが収容されている。
【0019】
筐体5に収容される圧縮機1には従来公知の円柱形状のものを用いることができる。設置面積の効率化の観点から圧縮機1は長手方向が鉛直となるよう設置されている。
【0020】
圧縮機1には圧縮機1の軸方向に断面視して半円筒状である蓄熱装置2が圧縮機1の外周表面に対してその一部を取り囲むように取り付けられ、圧縮機1の外周表面の一部に蓄熱装置2の内周表面の一部が密着している。圧縮機1が運転することで発熱した熱は蓄熱装置2に伝搬し、蓄熱装置2はこの熱を吸収し蓄熱する。
【0021】
設置面積の効率化の観点から圧縮機1と同様に蓄熱装置2は長手方向が鉛直となるよう
設置されている。
【0022】
この蓄熱装置は、樹脂等からなる容器体を組み立てた後、エチレングリコール水溶液等の蓄熱材を充填することにより製作することができる。
【0023】
また、この圧縮機1は、不図示の吸込管と吐出管を備えており、吸込管から冷媒を吸い込み、冷媒を所定の圧力まで圧縮し、圧縮した冷媒を吐出管から吐出する。圧縮機1は、冷媒を圧縮する工程で温度が上昇し、周囲に熱を放出する。
【0024】
圧縮機1の暖房能力を向上させるには、冷媒の温度は高い方が良い。また、圧縮機1の温度は運転のために所定の範囲の値である必要があるが、圧縮機1の運転を停止して放置すると、圧縮機1の温度が機能を果たすのに必要な温度以下にまで低下してしまい、再度運転する場合、圧縮機1の温度を圧縮機1が運転可能となる温度に再度上昇させるまで時間を要する。
【0025】
暖房能力の向上、および運転停止後に再度運転するまでの時間を短縮するために、圧縮機1から放出された熱を蓄熱装置2で蓄熱し、圧縮機1の温度低下を緩やかなものとする。そのため圧縮機1からの放熱を蓄熱装置2で吸収・蓄熱している。 図2は、図1の要部拡大図であり、図2(a)は蓄熱装置2の固定を示す図、(b)圧縮機1の固定を示す図である。
【0026】
図2(b)に示すように、圧縮機1は固定具7を介して筐体5の底板51に固定されている。固定具7は支持板71と、振動吸収ゴム72と、ボルト73と、ナット74とからなる。
圧縮機1と固定具7とは、圧縮機1の底面と固定具7の支持板71の上面とを例えば溶接するなどして、固定している。固定具7の支持板71には挿通孔が設けられている。また一方、筐体5の底板51にも、固定具7の支持板71の挿通孔に対応する位置に、挿通孔が設けられている。固定具7の支持板71の挿通孔と筐体5の底板51の挿通孔とには、円筒形状の振動吸収ゴム72が挿通され、さらに、円筒形状の振動吸収ゴムの貫通孔にはボルト73が挿通され、固定具7の支持板71と筐体5の底板51とは緩やかに固定されている。
【0027】
仕切り板4は、例えば樹脂からなり、筐体5の底板51や側壁にビス留め等により確実に分離しないよう固定されており、室外機ファンによる風の流れを規制すると同時に、室外機ファンや圧縮機1が発生する音の伝搬を遮断する防音板としても機能する。
【0028】
ここで、仕切り板4と、例えば金属製の飛び出し防止具3は、確実に分離しないよう固定される。
【0029】
そのためには、例えば図2(a)に示すように、飛び出し防止具3の取り付け片31を仕切り板4の圧縮機1側の表面にビス等で留めればよい。
【0030】
なお、このように本実施形態では、飛び出し防止具3は仕切り板4を介して筐体5に固定されているが、飛び出し防止具3を仕切り板4を介さずに筐体5に直接ビス留め等により確実に固定するようにしてもよい。
【0031】
飛び出し防止具3の当接片32は、蓄熱装置2の上面21に当接している。このため、室外機6が落下等による衝撃を受けた場合であっても、衝撃力により蓄熱装置2が圧縮機1から分離するのを、飛び出し防止具3が防止する。従って、圧縮機1と蓄熱装置2との間の密着性の低下を抑制でき、圧縮機1が運転時に発生する熱を蓄熱装置2に十分に吸収
させることができる。
【0032】
なお、本実施の形態では、蓄熱装置2は、圧縮機1の軸方向に断面視して半円筒形状であるが、この他にも蓄熱装置2は、開口部を有する馬蹄形状であっても構わない。
【0033】
また、圧縮機1の外周表面は、一部が外部に露出した状態となっており、圧縮機1にアキュームレータ11が固定されている。アキュームレータ11は、圧縮機1の冷媒吸入側に通常設けられており、液相冷媒と気相冷媒を分離し、気相冷媒を圧縮機1に供給する。
【0034】
ここで、アキュームレータ11が圧縮機1に固定されていることにより、圧縮機は重心が、蓄熱装置2の開口部側に移動している。しかし、飛び出し防止具3は、蓄熱装置2の内壁22に当接する係止片33を備え、振動等により圧縮機1が蓄熱装置2の開口部から外側に向けて転倒するのを有効に防止することができる。
【0035】
アキュームレータ11、固定具7の挿通孔、ならびに飛び出し防止具3の位置関係は、例えば図3(a)、(b)に示すように配置することができるが、これに限らず、筐体の設計に応じて任意に配置することができる。なお、この図では、蓄熱装置2を透視している。
【0036】
いずれにしても、飛び出し防止具3が設けられているため、ナットをボルト3箇所すべてに留める必要がなくなり、固定性に影響を与えず、安全性を損なうことなく、組み立てを容易にし、かつ、部品点数を下げることができる。
【0037】
圧縮機1の上部には、圧縮機内部との空気のやり取りを行う配管が設けられているが、飛び出し防止具3が蓄熱装置2の内壁に当接しているので、圧縮機1の上部を跨いで圧縮機1の蓄熱装置2の開口部側の外表面を当接する必要がなく、配管やモーター駆動用の配線と干渉するのを防ぐことができる。
【0038】
なお、本実施の形態における室外機6の製造方法としては、初めに、筐体5の底板51を準備し、次に圧縮機1を固定具7を介して、筐体5の底板51に取り付ける。その後、蓄熱装置2を圧縮機1の外周表面に密着させる。さらにその後、仕切り板4を筐体5に取り付けた後、飛び出し防止具3を仕切り板4に取り付ける。
【0039】
最後に筐体5の底板51に側板を取り付け、さらにかかる側板に天板を取り付ける。
以上により室外機6を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかる室外機は、衝撃に対して蓄熱槽が飛び出すことを防止することが可能となるので、蓄熱装置を有する冷凍サイクル装置等の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 圧縮機
2 蓄熱装置
21 蓄熱装置の上面
22 蓄熱装置の内壁
23 蓄熱槽
3 飛び出し防止具
31 取り付け片
32 当接片
33 係止片
4 仕切り板
5 筐体
6 室外機
7 固定具
71 支持板
72 振動吸収ゴム
73 ボルト
74 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の内部に収容され、前記筐体に固定されている圧縮機と、前記圧縮機の外周表面を取り囲むように接する蓄熱槽を具備した蓄熱装置と、を備えた室外機であって、
前記筐体に固定され、かつ、前記蓄熱槽の上面に当接することで、前記蓄熱槽が前記圧縮機から離脱するのを防止する飛び出し防止具を備えることを特徴とする室外機。
【請求項2】
前記圧縮機は前記筐体の底板に固定され、前記蓄熱槽は前記圧縮機の外周方向の一部を切り欠いた形状であり、前記飛び出し防止具は前記蓄熱槽の内壁に当接する係止片を備えていることを特徴とする請求項1に記載の室外機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の室外機を備える空気調和機。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−77936(P2012−77936A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221128(P2010−221128)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】