説明

害獣侵入防止用フェンス構造体

【課題】敷地内への害獣の侵入を、地上のみならず地下においても防止せんとする。
【解決手段】害獣の侵入を防ぐべき境界に沿って設置される地上フェンスと、その地上フェンスの下側に沿って地中に埋設される侵入防止板とを備えたことを特徴とする。侵入防止板はコンクリート板、プラスチック板、金属板のいずれか1種又はそれらの組合せとすることが可能である。侵入防止板の地中埋設深さは、150mm以上、1000mm以下とすることが望ましい。前記侵入防止板の上端から所定幅の領域を地上に露出させた状態とし、その地上露出領域と前記地上フェンスの下端から所定幅の領域とを重ね合わせるように構成することが望ましい。前記地上フェンスの最上部に通電線を張り巡らしたり、地上フェンスの一部領域に開閉可能な開閉扉を設けることも推奨される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の敷地内に各種害獣が侵入するのを防止するための害獣侵入防止用フェンス構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特定の敷地内に、他人の犬や猫が侵入したり、地域によっては、モグラ、キツネ、タヌキ、イタチ、サル、イノシシ、シカ、クマ、等々の野生動物が侵入したりすることがあり、これらの害獣によって、敷地内の衛生状態が損なわれたり、当該敷地内に飼育されている保護動物や保護鳥類、或は住人に危害が加えられたり、農作物や樹木等が荒らされたり、等々の被害を受けることが少なく、近年、野生動物が増えたことにより、これらの被害が増大している。とくに近年は、野生動物が増えたせいで、境界の敷地に沿って設けたフェンスの下側に穴を掘って侵入する害獣が増えており、上述したような被害が増大しているのが実情である。そこで、地中に穴を掘って敷地内へ侵入する害獣を防止するために、下記特許文献1に記載された防獣フェンスが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−272354号公報
【0004】
上記特許文献1に記載された防獣フェンスは、境界に沿って設けた複数の支柱間に張設した線材で作ったフェンスパネルの下端部に同じく線材で作った特注品の下部パネルを取り付け、この下部パネルを地中に埋めて穴を掘って侵入する害獣の侵入を排除する構成となっている。
【0005】
しかしながら、このような特注品のフェンスパネルは高価であり、防獣フェンスの製作コストが高くなる上に、長年経つと下部パネルの線材が腐食したり、材質が劣化して脆くなってしまったり、穴を掘って侵入する害獣によって曲げられてしまったり、或はモグラのような小型の動物に対しては線材の間を通って侵入することから、十分な防御ができないという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記点に鑑み開発されたもので、その目的とするところは、製作コストが安価、かつ堅固であり、長年経過しても腐食してしまったり、品質が劣化してしまったり、曲げられてしまったりする心配のない、侵入防止帯状体を有する害獣侵入防止用フェンス構造体を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る害獣侵入防止用フェンス構造体は、敷地内への害獣の侵入を防ぐべく境界に沿って設置されるものであって、前記境界に沿って適宜間隔で地上に立設された複数の支柱と、この各支柱間に張設された地上フェンスと、この地上フェンスの下側に沿って設けられると共に、その全部或は一部を地中を介して害獣が侵入しない程度に当該地中に埋没させた複数の侵入防止板から成る侵入防止帯状体と、を有し、この侵入防止帯状体の上側と前記地上フェンスの下端部側との間を害獣の侵入を防止できる程度接しさせて成ることを特徴とする。
【0008】
前記侵入防止板としては、コンクリート板或はプラスチック板のいずれか1種又はそれらの組合せが好適に用いられる。
【0009】
前記侵入防止帯状体の地中埋設深さは、好適には150mm以上、1000mm以下とされるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0010】
また、前記地上フェンスの最上部に通電線を張り巡らせたり、前記地上フェンスの一部領域に該地上フェンスとの間に害獣が侵入できない程度の間隙を空けて開閉可能な開閉扉を設け、この開閉扉の下側には害獣が侵入できない程度の間隙を空けてコンクリート敷居を打設することも推奨される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る害獣侵入防止用フェンス構造体においては、地上フェンスのみならず、この地上フェンスの下側に沿って、当該地上フェンスに接して地中に埋設された複数枚の侵入防止板から成る侵入防止帯状体を設けたため、この侵入防止帯状体によって地上フェンスの下側を掘って敷地内へ侵入して来る害獣も排除できるものであり、従って、敷地内への害獣の侵入を、地上のみならず地下についても有効に防止し得るものである。
【0012】
前記侵入防止板として、コンクリート板或はプラスチック板のいずれかを選択的に若しくはそれらを組み合せて用いることにより、安価で、設置コストが低コストですむ、堅固で経年変化のない侵入防止帯状体を有する害獣侵入防止用フェンス構造体を提供することができる。
【0013】
侵入防止帯状体や、その地中埋設深さを、150mm以上、1000mm以下とすることによって、殆どの害獣の地中からの侵入を防止することができる。
【0014】
また、前記地上フェンスの最上部に通電線を張り巡らせることにより、害獣が地上フェンスを乗り越えての侵入するのを防止できる。
【0015】
更にまた、前記地上フェンスの一部領域に出入口として開閉可能な開閉扉を設けても、この開閉扉の下側には害獣が侵入できない程度の間隔を空けてコンクリート敷居を打設したことにより、開閉扉の下側や地中から敷地内へ害獣が侵入するのを防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る害獣侵入防止用フェンス構造体の一実施例を示す説明図であり、(a)図はその一部正面図、(b)図は(a)図のA−A線断面図である。
【図2】図1に示した害獣侵入防止用フェンス構造体の開閉扉設置部分の構成を示す説明図であり、(a)図はその正面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【図3】侵入防止帯状体の地上露出領域と地上フェンスの下端近くの領域とを重ね合わせた部分の状態を示す縦断面図(図1(a)中のC−C線に沿った断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る害獣侵入防止用フェンス構造体の好ましい実施形態を図面に基いて具体的に説明するが、本発明はこの実施形態に限らず、本発明の技術的範囲内で、例えば、侵入を防止すべき害獣の種類、設置環境、コスト、等々の条件によりさまざまな設計変更を行うことが可能である。
【0018】
図1において、本発明に係る害獣侵入防止用フェンス構造体1は、害獣の侵入を防ぐべき敷地の境界線に沿って地面6上に所定間隔を空けて立てた複数本の支柱22、22、・・・と、この各支柱22、22、・・・間に張設させた一般にフェンス用として市販されている金網21から成る地上フェンス2と、この地上フェンス2の下側に沿ってその下端部側をオーバーラップさせてその一部を地中に埋設されたところの、矩形状を呈した複数枚の侵入防止板3aを隣接並置させた侵入防止帯状体3とを備えている。
【0019】
図示した実施例における地上フェンス2は、敷地の境界線の地面6に実施例では2.5m間隔で立てた長さ3.5m程度の例えば鋼管からなる支柱22、22・・・の間に、例えば亀甲金網等の金網21を張設したものであり、金網21は例えば公知構成のU字バンド27を用いて支柱22、22、・・・に取り付けられている。尚、支柱22の材料、形状、及び構成は、実施例のものに限定されず、断面凸型を呈したものを含め、公知のさまざまなものに代えることができる。支柱22には図示してないが、基礎コンクリート部分を取りつけたものを使用することができる。
【0020】
地上フェンス2に対する補強のため、図示した実施例においては、要所ごとに侵入防止帯状体3の外側に鋼管からなる根枷柱24、24・・・を地面6に立て、これを基礎として、同じく鋼管からなる補強柱25、25・・・を根枷柱24と支柱22の間に斜め差し渡し、取付バンドで根枷柱24と支柱22へ各両端部を固定させ、補強柱25に金網21を固定させるか、或は金網21を外側から押さえるように構成してある。補強柱25の上端は公知構成の支柱バンド28により支柱22に固定されている。尚、この補強柱25の設置箇所は図示のものは1例であって、このものに限定されず、必要に応じて適宜設置されるものである。
【0021】
また、地上フェンス2の上桟23より上には、複数の通電線26が張り巡らされ、地上フェンス2をよじ登って敷地内へ侵入しようとするサル等の害獣を電気ショックにより退散させるようになっている。
【0022】
尚、図示した実施例における地上フェンス2の各部の寸法は、金網21を張った部分の高さa=2200mm、通電線26を張った部分の高さb=400mm、これらを合わせた地上フェンス2の地上の高さc=2600mm、各支柱22、22・・・間のそれぞれの間隔d=2500mmである。然しながら、これらの仕様は、害獣の種類、設置環境、コスト、等々の諸条件により適宜変更されることは前記の通りである。
【0023】
本発明の害獣侵入防止用フェンス構造体1においては、図示する如く、前記地上フェンス2の下側に沿って矩形状を呈した複数枚の侵入防止板3aを横一列に並設することにより、全体として帯状を呈した侵入防止帯状体3が設けられている。各侵入防止板3aは、互いの両端部を隙間なく当接させ、その大部分を地中に埋設させているが、各侵入防止板3aの隣接部は単に突き合わせるか、或はコンクリートで接続させても良い。尚、各侵入防止板3aの埋没幅は、図示のものに限定されない。
【0024】
図示した例における侵入防止板3aは、一般に市販されている矩形状を呈したコンクリート板であり、このようなコンクリート板を用いることから、害獣侵入防止用としてとくに開発した特殊なフェンスを用いるより、安価に害獣侵入防止用フェンス構造体を構築でき、その構築作業も容易である。この侵入防止板3aに用いるコンクリート板1枚の寸法例は、市販されている例えば横長e=600mm、高さf=300mm、厚さg=60mmのものであるが、当然のことながらこのものに限定されない。
【0025】
侵入防止板3aは、上記コンクリート板の他、害獣の種類や設置環境等に応じて、プラスチック板を用いることができる。一般的にはコンクリート板が用いられるが、プラスチック板であると軽量で安価に製造でき、厚さがある程度あると堅固であり、かつ、コンクリート板と同じように材質が経年変化しにくいという利点がある。
【0026】
各侵入防止板3a、而して侵入防止帯状体3を地中に埋設する深さi(図3参照)は、150mm以上、1000mm以下とすることによって、殆どの害獣の地下からの侵入を防止することができる。150mm未満であると、深さが不十分で、侵入防止板3aより更に深い位置に穴を明けて侵入してくる害獣もおり、他方、1000mmを超えると、それより深い穴を掘って侵入してくる害獣は稀であること、また、侵入防止板3aの製造コストや設置工事のコストも嵩むこと、等により非現実的であるとの理由による。ただし、状況に応じて1000mmを超える深さとすることを排除するものではない。
【0027】
図3に示した実施例においては、前記侵入防止板3a而して侵入防止帯状体3の上端から所定幅h(例えばh=100mm)の領域を地面6より上に露出させた状態とし、その地上露出領域と前記地上フェンスの下端から所定幅j(例えばj=70mm)の領域とを重ね合わせるようにして設置してある。即ち、図3に示す如く、例えば、侵入防止板3aの全高f=300mmのうち、下側の深さi=200mmまでは地中に埋設し、それより上側の幅h=100mmの領域は、地面6より上に露出させた状態としておく。一方、地上フェンスについては、その金網21の下端から所定幅j(例えばj=70mm)の領域を、前記侵入防止帯状体3の地上露出領域と重ね合わせるようにして設置する。このように、地上フェンス2の下端と侵入防止帯状体3の上端との間に隙間ができないようにすることによって、害獣の侵入防止効果を一層確実なものとすることができる上に、地盤沈下、或は施工後の侵入防止板3aの自然沈下に対しても、地上フェンス2の下側と侵入防止板3aとの間に間隙が生じてしまうのを有効に防止できる。
【0028】
尚、その他の実施例として、地上フェンス2の下端部側を侵入防止帯状体3の内側(敷地側)に重ねて設けることは任意である。また、地上フェンス2の下端部側に、ワイヤーロープを通して害獣によって持ち上げられて隙間が生じないようにすることも可能である。
【0029】
図2には、図1に示した前記地上フェンス2の一部領域に設けた出入口7に、開閉可能な開閉扉4を設けた例が示されている。
【0030】
この開閉扉4は、図中左側の扉4aと右側の扉4bとからなる両開き形式の扉であり、左右の扉4aと4bとは左右対称で同一の構成を有するものであるので、ここでは左側の扉4aについてのみ説明し、右側の扉4bについての説明は省略する。
【0031】
扉4aは、両側の縦フレーム42a、42bと、上下の横フレーム42c、42dとからなる枠体に、金網41を張ったものであり、金網41は、多数本の太めの縦ワイヤと横ワイヤを溶接によって接合したものである。扉4aは、その左側の縦フレーム42aが、蝶番43によって地上フェンス2の支柱22に連結されることにより、支柱22との間に害獣が侵入できない程度の間隙を空けて、揺動可能(即ち、開閉可能)なように構成されると共に、もう一方の縦フレーム42bに取り付けたロック金具44によって、右側の扉4bとのロック及びその解除が可能なように構成されている。
【0032】
扉4aの上側の横フレーム42cより上部には、碍子46を介して複数の通電線45が張架され、扉4aをよじ登って敷地内へ侵入しようとする害獣を電気ショックにより退散させるようになっている。また、扉4aの上側の横フレーム42cには、複数本のグラス支柱47が立てられ、通電線45の安定した張架状態が保持されるようになっている。
【0033】
また、図示した実施例においては、開閉扉4の下部には侵入防止板3aは設けず、出入口の部分を掘り下げて幅広のコンクリート敷居5を打設し、このコンクリート敷居5の上面と、開閉扉を構成する左右の扉の下端部側との間に害獣が侵入できるような隙間を設けないように構成してある。実施例では、このコンクリート敷居は侵入防止板のように地中に深く埋設されていないが、幅が広いので害獣がコンクリート敷居5の下側に穴を掘って敷地内部へ侵入しにくいようになっている。
【0034】
尚、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば、地上フェンス2の金網21については、合成繊維製ネットや、害獣が侵入できない程度の隙間を有する格子等でもよく、侵入防止板3aのサイズや形状も害獣の種類や使用環境に応じて設計変更され得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る害獣侵入防止用フェンス構造体においては、地上フェンスの下側に沿って地中にその全部或は一部を埋設させた複数の侵入防止板を接続してなる侵入防止帯状体を埋設したため、土を掘って敷地内へ侵入して来る害獣も永年に渡って排除できるものであり、従って、害獣の侵入を、地上のみならず地下についても有効に防止し得る害獣侵入防止用フェンス構造体を提供し得るものである。
【符号の説明】
【0036】
1 害獣侵入防止用フェンス構造体
2 地上フェンス
21 金網
22 支柱
23 上桟
24 根枷柱
25 補強柱
26 通電線
27 U字バンド
28 支柱バンド
3 侵入防止帯状体
3a 侵入防止板
4 開閉扉
41 金網
42a、42b 縦フレーム
42c、42d 横フレーム
43 蝶番
44 ロック金具
45 通電線
46 碍子
47 グラス支柱
5 コンクリート敷居
6 地面
7 出入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷地内への害獣の侵入を防ぐべく境界に沿って設置されるものであって、前記境界に沿って適宜間隔で地上に立設された複数の支柱と、この各支柱間に張設された地上フェンスと、この地上フェンスの下側に沿って設けられると共に、その全部或は一部を地中を介して害獣が侵入しない程度に当該地中に埋没させた複数の侵入防止板から成る侵入防止帯状体と、を有し、この侵入防止帯状体の上側と前記地上フェンスの下側とを害獣の侵入を防止できる程度重ね合わせたことを特徴とする、害獣侵入防止用フェンス構造体。
【請求項2】
前記侵入防止板が、互いに隙間なく隣接させた複数のコンクリート板或はプラスチック板のいずれか1種又はそれらの組合せから構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の害獣侵入防止用フェンス構造体。
【請求項3】
前記侵入防止帯状体の地中埋没深さが、150mm以上、1000mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の害獣侵入防止用フェンス構造体。
【請求項4】
前記地上フェンスの最上部に通電線を張り巡らせたことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の害獣侵入防止用フェンス構造体。
【請求項5】
前記地上フェンスの一部領域に開閉可能な開閉扉を当該地上フェンスとの間に害獣が侵入できない程度の間隙を空けて設け、この開閉扉の下側には害獣が侵入できない程度の間隙を空けてコンクリート敷居を打設したことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の害獣侵入防止用フェンス構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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