説明

害虫忌避エアゾール組成物

【課題】皮膚に影響を与えることなく、激しい動作でも有効成分が取れることなく、また繊維に塗布してもシミなどの影響がない害虫忌避エアゾール組成物の提供を図る。
【解決手段】精油からなる害虫忌避成分0.05〜40重量%と、初留点200℃以下の溶剤5〜60重量%と、噴射剤30〜90重量%とが配合され、衣服に噴射されることにより、当該衣服に付着した害虫忌避成分によって、当該衣服から露出した衣服着用者の肌に対する害虫を忌避することができることを特徴とする害虫忌避エアゾール組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫忌避エアゾール組成物に関する。さらに詳しくは、衣類や繊維製品に噴霧して害虫を忌避するエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、従来害虫を寄せ付けなくする方法として、特許文献1、2のような、皮膚に直接噴霧して害虫を寄せ付けなくするエアゾール組成物が提案されている。また、特許文献3〜6のような、害虫忌避成分を含浸させたシートであって、このシートを接着成分により衣類などに貼り付けるシールとしたものなどが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3969760号公報
【特許文献2】特許第4189047号公報
【特許文献3】特開平9−40508号公報
【特許文献4】特開2000−128720号公報
【特許文献5】特開2004−210689号公報
【特許文献6】特開2008−100932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1、2のように皮膚に直接塗布するものにあっては、皮膚が炎症を起こしたり、汗などで有効成分が取れて効果が持続しないという問題があった。また、特許文献3〜6のようにシートに含浸させて衣類に貼り付けるタイプにあっては、保管中に害虫忌避成分が気散して効果がなくなったり、衣類につけた場合は人の動作により剥がれ落ちるおそれがあるといった課題がある。
そこで本発明は、皮膚に影響を与えることなく、激しい動作でも有効成分が取れることなく、さらにまた繊維に塗布してもシミなどの影響がない害虫忌避エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に係る発明は、精油からなる害虫忌避成分0.05〜40重量%と、初留点200℃以下の溶剤5〜60重量%と、噴射剤30〜90重量%とが配合され、衣服に噴射されることにより、当該衣服に付着した害虫忌避成分によって、当該衣服から露出した衣服着用者の肌に対する害虫を忌避することができることを特徴とする害虫忌避エアゾール組成物を提供する。
本願の請求項2に係る発明は、上記初留点200℃以下の溶剤が炭素数1〜3の低級アルコールであることを特徴とする請求項1記載の害虫忌避エアゾール組成物を提供する。
本願の請求項3に係る発明は、上記害虫忌避成分が、リナロール、ゲラニオール、ボルネオール、ネロリドール、α−テルピネオール、ぺリラアルデヒド、シトラール、α−ヨノン、1,8−シネオール、リナロール、オキサイド及びシトラールジエチルアセタールからなる群から選択された少なくとも一種を含有するものであることこを特徴とする請求項1又は2記載の害虫忌避エアゾール組成物を提供する。
本願の請求項4に係る発明は、上記害虫忌避成分が、ゼラニウム、ネロリドール、ラベンダー油及びレモンユーカリ油からなる群から選択された少なくとも一種であることこを特徴とする請求項1又は2記載の害虫忌避エアゾール組成物を提供する。
本願の請求項5に係る発明は、上記害虫忌避成分が、セスキテルペンアルコールを主成分とするものであることを特徴とする請求項1又は2記載の害虫忌避エアゾール組成物を提供する。
【0006】
本願発明に用いることができる精油からなる害虫忌避成分としては、リナロール、ゲラニオール、ボルネオール、ネロリドール、α−テルピネオール、ぺリラアルデヒド、シトラール、α−ヨノン、1,8−シネオール、リナロール、オキサイド、シトラールジエチルアセタール等が挙げられ、これらは精油または香料成分として知られるものである。これらを含む精油、例えばラベンダー油、ローズマリー油、パルマローザ油、セージ油、イリス油、レモングラス油も有効である。特に、ゼラニウム、ネロリドール、ラベンダー油、レモンユーカリ油は、衣服に対してシミを残さないと同時に刺激臭等の嫌な匂いがしない点で極めて良好な結果を残すものである。とりわけ、ゼラニウムは、セスキテルペンアルコールを主成分とするものであり、本願発明の目的の達成のために最も適当であると考えられる。
【0007】
本願発明に用いることができる初留点200℃以下の溶剤としては、ナフテン系、イソパラフィン系、パラフィン−ナフテン混合系、ノルマルパラフィン系の炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤などを示すことができる。中でもメタノール(初留点64.5℃)、エタノール(初留点78.3℃)、イソプロパノール(初留点82.3℃)、ノルマルプロパノール(初留点97.1℃)などの初留点が100℃以下の炭素数1〜3個の低級アルコールが好ましい。初留点が200℃を超える溶剤であれば、揮発が遅く繊維に残留したままでシミになったり、衣服に付着した場合は皮膚が炎症を起こすことがあり好ましくない。
【0008】
なお具体的に配合の一例を示せば、ゼラニウム100重量部に対して上記の溶剤を0.1〜1000重量部配合し、ネロリドール100重量部に対して上記の溶剤を0.1〜1000重量部配合し、ラベンダー油100重量部に対して上記の溶剤を0.1〜500重量部配合し、レモンユーカリ油100重量部に対して上記の溶剤を0.1〜1000重量部配合することが望ましい。
【0009】
噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)、プロパン、ブタン、フロンガス、ジメチルエーテル、窒素、炭酸ガスなど従来公知の噴射剤を単独で又は2種以上組み合わせて、通常の量的割合で配合することができる。
【0010】
これらの内容物を封入するエアゾール容器は、バルブステムを揺動又は垂直移動等させることにより、内部のバルブが開いて霧状に内容物が噴射されるもの等を用いることができる。その具体的構造は特に限定されるものではなく、上記の害虫忌避成分を溶剤とが上記の噴射剤と共に封入され、霧状に吐出されるものであればよい。また噴射動作は、噴射ボタンの押し下げ等によって連続して噴射されるものであってもよいが、一回の噴射動作によって一定量のみが噴射される定量型のエアゾール容器であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、精油からなる害虫忌避成分0.05〜40重量%を含有するものであり、衣服に噴射されることにより、当該衣服に付着した害虫忌避成分によって、当該衣服から露出した衣服着用者の肌に対する害虫を忌避することができる害虫忌避エアゾール組成物を提供することができたものである。このように衣服から露出した肌に直接塗布せずとも、露出した肌に対する害虫忌避効果を発揮するため、エアゾール成分による皮膚への悪影響を抑えることができる。しかも、噴射によって衣服に塗布するものであるため、激しい動作でも有効成分が取れることない。さらにまた、繊維に塗布してもシミなどの影響を抑えることができ、極めて安全性且つ実用性が高い害虫忌避エアゾール組成物を提供し得たものである。
【実施例】
【0012】
以下、本願発明の実施例を示すが、本願発明はこれらの実施例に限定して理解されるべきではなく、特許請求の範囲の記載に基づき適宜変更して実施できるものである。
【0013】
実施例1〜16
表1の実施例1〜16に示す精油10重量%を、エタノール40重量%と、噴射剤としてのLPG50重量%と共に、エアゾール容器に封入して、それぞれの実施例を製造した。
【0014】
【表1】

【0015】
シミの確認試験
7cm×5cmの綿布に各実施例のサンプル0.2gをスプレーし、下記の条件で光照射後、シミがあるか目視で確認し、シミがないものは「○」、シミがあるものは「×」を表1に示した。
なお、繊維試料には、JIS添付白布綿布を用いて、キセノンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験JISL0843-1998を、下記条件で行なった。
照射条件
・装置 Atlas Ci35A xenon fade-ometer
・フィルタ(内側および外側)ほうけい酸ガラス
・照射方法 連続法
・ブラックパネル温度 63℃
・相対湿度 50%
・温度 40℃
・放射露光量(420nm) 40kJ/m2
【0016】
官能試験
表1の実施例1〜16に示す精油を0.1g測り、市販の臭気確認のにおい袋(アズワン社製)に封入し、20〜50代の男女40名に評価をしてもらい、「好ましい臭いがする、又は、においを感じない」ものについては「○」、「好ましくない臭いがする」ものについては「×」を表1に示した。
【0017】
実施例17〜22及び比較例1〜5
表2の実施例17〜22及び比較例1〜5に示す配合の内容物を、エアゾール容器に封入して、それぞれの実施例及び比較例を製造した。
【0018】
【表2】

【0019】
忌避試験1
試験方法:30cm×40cm×30cmの透明アクリル板容器(2箇所に両手を入れる穴を開ける、手を入れた後は蚊が逃げ出さないようにゴムで栓をする)を準備し、室温25±2℃、湿度70〜80%の条件を整えて、ヒトスジシマカ(雌成虫)を30匹放す。被験者は右手に実施例及び比較例のサンプルを腕に2.0gスプレーし、アクリル板容器内に両手を入れ3分間暴露する。この間、両手に止まった蚊の数を計数し、忌避率を求めた。
その結果を表3に示す。
【0020】
【表3】

【0021】
実施例17と18は右手にスプレーするだけで、同じ空間にスプレーしない左手にも同等の忌避効果が認められたが、比較例1はスプレーした右手だけ忌避効果が確認され、スプレーしない左手は忌避効果が認められなかった。よって、実施例17と18は空間内に高い忌避効果が認められることが判った。
【0022】
忌避試験2
試験方法:30cm×30cm×30cmの透明アクリル板容器を準備し、室温25±2℃、湿度70〜80%の条件を整えて、ヒトスジシマカ(雌成虫)を30匹放す。被験者はビニール手袋をはめ、腕に包帯を巻き、実施例及び比較例のサンプルを腕に0.5gをスプレーし、容器内に手を入れ暴露する。この間に腕に止まった蚊の数を計測し、ブランクを0として忌避率を求めた。その結果を表4に示す。
【0023】
シミ試験
10cm×10cmの綿布に実施例及び比較例のサンプル0.2gをスプレーし、25℃の屋内に保管して、各時間においてシミがあるか目視(○:シミがない、×:シミがある)で確認する。その結果を表4に示す。
【0024】
官能試験
20〜50代の男女20名に実施例及び比較例のサンプルを衣服(長袖の裾付近)にスプレーしてもらい、スプレー直後にむせを感じる程度を被験者によって4段階(4点:まったくむせない(気にならない)、3点:少しむせる(許容範囲内)、2点:むせる、1点:非常にむせる)に評価してもらい、3点以上の評価をした人を下記の基準に基づいて、その結果を表4に示した。
◎:80%以上
○:60%以上80%未満
△:40%以上60%未満
×:40%未満
【0025】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
精油からなる害虫忌避成分0.05〜40重量%と、初留点200℃以下の溶剤5〜60重量%と、噴射剤30〜90重量%とが配合され、衣服に噴射されることにより、当該衣服に付着した害虫忌避成分によって、当該衣服から露出した衣服着用者の肌に対する害虫を忌避することができることを特徴とする害虫忌避エアゾール組成物。
【請求項2】
上記初留点200℃以下の溶剤が炭素数1〜3の低級アルコールであることを特徴とする請求項1記載の害虫忌避エアゾール組成物。
【請求項3】
上記害虫忌避成分が、リナロール、ゲラニオール、ボルネオール、ネロリドール、α−テルピネオール、ぺリラアルデヒド、シトラール、α−ヨノン、1,8−シネオール、リナロール、オキサイド及びシトラールジエチルアセタールからなる群から選択された少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2記載の害虫忌避エアゾール組成物。
【請求項4】
上記害虫忌避成分が、ゼラニウム、ネロリドール、ラベンダー油及びレモンユーカリ油からなる群から選択された少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2記載の害虫忌避エアゾール組成物。
【請求項5】
上記害虫忌避成分が、セスキテルペンアルコールを主成分とするものであることを特徴とする請求項1又は2記載の害虫忌避エアゾール組成物。

【公開番号】特開2010−222278(P2010−222278A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69740(P2009−69740)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(393008821)日進化学株式会社 (16)
【出願人】(596067571)大保香料株式会社 (3)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【出願人】(507226916)
【Fターム(参考)】