説明

害虫防除材

【課題】本発明は優れた性能を有する害虫防除材を提供すること。
【解決手段】25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下である害虫防除成分及び熱可塑性樹脂が含有されてなる繊維により、略均一な形状の網目が構成されてなるネット状の害虫防除材であって、該害虫防除材に対する該害虫防除成分の含有割合が0.1〜10重量%であり、該害虫防除材表面上の該害虫防除成分量が該害虫防除材1kgあたり0.03〜3gであり、各々の網目における空隙面積が2〜36mm2であり、かつ、アセトン洗浄法による害虫防除成分のブリード係数が0.3〜2.0であることを特徴とする害虫防除材は、優れた性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は害虫防除材、詳しくはネット状の害虫防除材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から人や家畜を蚊及びハエ等の衛生害虫、特に蚊から保護する方法としてネット状の害虫防除材、特にその代表として蚊帳が広く用いられている。この蚊帳に代表されるネット状の害虫防除材は、麻や木綿等の天然繊維を網目状に織ったもので、その網目を蚊等が通過できない程度の大きさとし、これによって網目からの蚊の侵入を阻止することによって、ヒトを蚊等の衛生害虫との接触を防止して防除する保護方法である。
【0003】
しかし、このような蚊帳はヒトと蚊との接触を物理的に阻止するものであるため、当然ながら蚊帳の網目は蚊が通過できない程度の粗さが要求されるため、その網目の面積は小さくならざるを得ず、そのため通気性が充分ではないという問題も存在した。
【0004】
かかる問題を解決する方法として、害虫防除成分を練り込んだ樹脂組成物を紡糸してなる樹脂製繊維をその素材とし、物理的のみならず、防虫及び殺虫等の化学的な害虫防除性能をも有する蚊帳等にして用いることも知られている。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
しかし蚊帳等においては、その使用期間が長期にわたること、また長期の使用により表面が汚れるため、繰り返し洗濯して用いられることから、かかる使用条件下にあっても十分な害虫防除性能を有する害虫防除材の提供が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−322612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は優れた性能を有する害虫防除材、詳しくはネット状の害虫防除材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決すべく検討の結果、下記の害虫防除材が優れた性能を有することを見出し本発明に至った。
即ち本発明は、以下の1.〜9.の通りである。
1. 25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下である害虫防除成分及び熱可塑性樹脂が含有されてなる繊維により、略均一な形状の網目が構成されてなるネット状の害虫防除材であって、
該害虫防除材に対する該害虫防除成分の含有割合が0.1〜10重量%であり、
該害虫防除材表面上の該害虫防除成分量が該害虫防除材1kgあたり0.03〜3gであり、
各々の網目における空隙面積が2〜36mm2であり、
かつ、アセトン洗浄法による害虫防除成分のブリード係数が0.3〜2.0であることを特徴とする害虫防除材。
2. 25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下である害虫防除成分が、25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下のピレスロイド化合物である1.記載の害虫防除材。
3. 25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下である害虫防除成分が、ペルメトリンである1.記載の害虫防除材。
4. 熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂である1.〜3.いずれか一項記載の害虫防除材。
5. 熱可塑性樹脂が、エチレン系樹脂である1.〜3.いずれか一項記載の害虫防除材。
6. 熱可塑性樹脂が、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する樹脂組成物である1.〜3.いずれか一項記載の害虫防除材。
7. 各々の網目における空隙面積が8〜25mm2である1.〜6.いずれか一項記載の害虫防除材。
8. 粒径0.01〜40μmである粉状担体が、該害虫防除材に対して0.01〜10重量%含有されてなる1.〜7.いずれか一項記載の害虫防除材。
9. 繊維が、太さ130〜230デニールのモノフィラメントである1.〜8.いずれか一項記載の害虫防除材。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、蚊等の害虫を防除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の害虫防除材は、25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下の害虫防除成分及び熱可塑性樹脂を含有する繊維(以下、本樹脂製繊維と記す場合もある。)により、略均一な形状の網目が構成されてなるネット状の編織物であって、その基本構成自体は従来から公知の形状の編織物であり、本樹脂製繊維を公知の任意の方法により織ったり、編んだり(例えば、ラッセル編み)することにより、ネット状の形状とすることにより製造することができる。
【0011】
本発明の害虫防除材に用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂をその含有成分とするものであるが、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマー等とが含有されてなる混合物を用いることもできる。かかる熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーは、それぞれ2種以上を混合して用いてもよく、用いる害虫防除成分の種類、含有量等に応じて適宜選択することができる。
【0012】
オレフィン系樹脂としては、具体的には例えばポリエチレン(低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む)、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、エチレンと炭素原子数3以上のα−オレフィンとの共重合体等のポリエチレン樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体やブロック共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン性不飽和結合を有するカルボン誘導体とエチレンとの共重合体等の単独あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0013】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、具体的には例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレンまたはプロピレンを主成分とするエラストマーが挙げられ、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレンブロックとポリイソプレンブロック及び/又はポリブタジエンブロックとのブロック共重合体及びその水素添加物が挙げられる。
【0014】
本樹脂製繊維には、熱可塑性樹脂とともに25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下の害虫防除成分(以下、本害虫防除成分と記す場合もある。)が含有されるが、本樹脂製繊維は熱可塑性樹脂に本害虫防除成分を含有させてなる熱可塑性樹脂組成物(以下、本樹脂組成物と記す場合もある。)を、公知の方法に従って、例えば溶融紡糸することにより容易に製造することができる。
【0015】
本樹脂組成物の製造方法としては、例えば所要量の熱可塑性樹脂と所要量の本害虫防除成分とを溶融混練して一度に混合して製造する方法や、所要量の熱可塑性樹脂のうちの一部と所要量の本害虫防除成分とを予め溶融混合してマスターバッチを製造し、次に該マスターバッチと熱可塑性樹脂の残部とを溶融混練して製造する方法が挙げられる。
【0016】
前記の本樹脂組成物の製造方法のうち、マスターバッチを経由する方法においては、マスターバッチの製造の工程に用いる熱可塑性樹脂と、マスターバッチから本樹脂組成物を製造する工程に用いる熱可塑性樹脂とは同一でも相異なっていてもよい。その具体例としては、マスターバッチの製造の工程には直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用い、次いでマスターバッチから本樹脂組成物を製造する工程には高密度ポリエチレンを用いる方法が挙げられる。
【0017】
本樹脂組成物には、熱可塑性樹脂及び本害虫防除成分とともに粉状担体が含有されていてもよい。かかる粉状担体としては、例えばタルク、カオリン、クレー、シリカ系微粒子、炭素、デキストリン類等の微粉末状担体が挙げられる。
【0018】
本樹脂組成物にこれらの粉状担体が含有される場合、用いられる粉状担体の平均粒径は一般的には0.01〜40μmの範囲であり、好ましくは0.03〜20μmの範囲であり、本発明の害虫防除材に対する含有割合は本害虫防除成分の適切なブリード性やその害虫防除効果等を考慮の上で決定されるものであるが、通常は0.01〜10重量%の割合、好ましくは0.5〜5重量%の割合である。
【0019】
本樹脂組成物に粉状担体を含有せしめる方法としては、前記の本樹脂組成物の製造方法の各工程において、本害虫防除成分及び熱可塑性樹脂との溶融混練時に、併せて粉状担体を混合する方法が挙げられ、また、本害虫防除成分と粉状担体とを予め混合して本害虫防除成分担持体とし、次いで、熱可塑性樹脂に本害虫防除成分担持体を溶融混合する方法が挙げられる。より詳しくは例えば、本害虫防除成分と粉状担体とを予め混合して得られる本害虫防除成分担持体と所要量の熱可塑性樹脂のうちの一部とを溶融混合してマスターバッチを製造し、次に該マスターバッチと熱可塑性樹脂の残部とを溶融混練して製造する方法が挙げられる。
【0020】
本樹脂製繊維には、粉状担体と同様、酸化防止剤、顔料、滑剤等の熱可塑性樹脂の使用に際して通常配合される一般的な配合剤が適宜配合されていてもよい。
【0021】
本発明の害虫防除材においては、本害虫防除成分が本発明の害虫防除材の表面にブリードし、害虫が該表面において本害虫防除成分と接触することにより、害虫防除効果を奏する。
かかる本害虫防除成分は、25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下と比較的蒸散性の低い物質が適用されるため、本発明の害虫防除材に含有される本害虫防除成分が該表面にブリードした後も速やかに揮散することなく留まるため、更なる本害虫防除成分のブリードを抑制し、数年間にわたり害虫防除性能を維持することを可能とするものである。
【0022】
本害虫防除成分としては、25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下の害虫防除成分であれば特に限定されるものではないが、例えば、ペルメトリン、シペルメトリン、シフェノトリン、d−フェノトリン、レスメトリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フェンプロパトリン、エトフェンプロクス、トラロメトリン、デルタメトリン、シラフルオフェン、ビフェントリン等のピレスロイド化合物やその他の害虫防除成分が挙げられる。
【0023】
本害虫防除成分の含有割合は、その種類、使用形態、使用期間等によっても異なるものであるが、使用時の害虫防除効果が発揮しうる量、具体的には本発明の害虫防除材に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の割合である。
【0024】
本発明の害虫防除材に含有される本害虫防除成分は、該表面にブリードすることにより害虫防除効果を奏するが、その使用時において本発明の害虫防除材表面に存在する本害虫防除成分量は、本発明の害虫防除材1kgあたり通常0.03〜3g程度である。本発明の害虫防除材表面に存在する本害虫防除成分量とは、本発明の害虫防除材をアセトンやキシレン等の有機溶媒で洗浄処理後、該有機溶媒中に溶出した本害虫防除成分量を測定することにより容易に求めることができる。
【0025】
また、本発明の害虫防除材は、そのブリード係数が0.3〜2.0の範囲、好ましくは0.5〜1.2の範囲となることが必要である。ブリード係数とは、本発明の害虫防除材に含有される本害虫防除成分の本発明の害虫防除材表面へのブリードし易さ(し難さ)を示す指標である。本発明の害虫防除材の表面にブリードしている本害虫防除成分をアセトン等の有機溶媒で洗浄処理した後、一定条件下で加熱することにより本害虫防除成分を十分にブリードさせた後に有機溶剤で洗浄処理して回収した有機溶剤中の本害虫防除成分量(以下、成分量Aと記す。)と、前記の操作に用いた本発明の害虫防除材を再度、一定条件下で加熱することにより本害虫防除成分を十分にブリードさせた後に有機溶剤で洗浄処理して回収した有機溶剤中の本害虫防除成分量(以下、成分量Bと記す。)との比
ブリード係数 = (成分量B)/(成分量A)
で表わされる。
【0026】
また前記の通り、本発明の害虫防除材は本樹脂製繊維により略均一な形状の網目が構成されてなるネット状の編織物であるが、害虫が本発明の害虫防除材の表面と接触することなくしてその網目を通過することができず、一方で通気性を確保するため、その網目一個あたりの空隙面積は2〜36mm2の範囲である必要があり、より好ましくは8〜25mm2の範囲である。
【0027】
本樹脂製繊維は通常はモノフィラメントとして、均一な網目が構成されてなるネット状の編織物に用いられることから、その太さは通常の蚊帳として用いられるために必要十分な強度を有するものであることが望ましく、通常は100〜350デニールの範囲であり、好ましくは130〜230デニールの範囲である。
【0028】
本発明の害虫防除材は、前記した各要件のすべて具備するものであるが、かかる要件を具備する本発明の害虫防除材は、本樹脂製繊維の製造に用いられる熱可塑性樹脂の種類、樹脂が2種以上の混合物である場合にはその混合割合、本害虫防除成分の種類やその使用量、また、本樹脂製繊維に粉状担体や酸化防止剤、顔料、滑剤等の配合剤が配合されている場合にはその種類及び使用量、さらには紡糸条件、例えば本樹脂製繊維を押出し延伸法で製造する場合には、その紡糸温度、延伸倍率、延伸速度、冷却温度、繊維の太さ等の紡糸条件について、本発明に規定する前記各要件を満たすように適宜選択し、組み合わせることにより製造することができる。
【0029】
本発明の害虫防除材は、ネット状の平編み織物としてそのまま利用することができるし、またこれを縫製加工することにより、例えば蚊帳等として利用することができる。
【0030】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明がかかる実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
尚、例中、単に部とあるのは重量部を示す。
【0031】
まず、本発明の害虫防除材の製造例を示す。
【0032】
製造例1
工程1
シリカ微粉末(多孔質シリカ、平均粒径:12μm)48.5部、ペルメトリン50部及びスミライザーBHT(住友化学社製、酸化防止剤)1.5部を混合攪拌し、害虫防除成分を含有するシリカカプセルを製造した。
【0033】
工程2
工程1で得られるシリカカプセル 31部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.912kg/m3、商品名:スミカセン−L GA807、住友化学社製)59.5部、ステアリン酸亜鉛 5部及び顔料4.5部を150℃で溶融混練した後、押出機から押出し、切断することにより、害虫防除成分を含有する樹脂ペレット(直径:3mm、長さ:3mm)を製造した。
【0034】
工程3
工程2で得られる樹脂ペレット 14部、高密度ポリエチレン(密度:0.950kg/m3、商品名:ハイゼックス5000S、三井化学社製)85.4部及びステアリン酸亜鉛 0.6部を220−240℃で溶融混練し、害虫防除成分を含有する樹脂組成物を得た。
該樹脂組成物中の各成分の組成比(重量比)は次のとおりである。
シリカ微粉末 2.0%
ペルメトリン 2.0%
直鎖状低密度ポリエチレン 7.2%
高密度ポリエチレン 87.23%
ステアリン酸亜鉛 1.3%
BHT 0.065%
顔料 0.21%
【0035】
工程4
工程3で得られる樹脂組成物を原料として、下記の条件で押出し法により溶融紡糸して、害虫防除成分を含有する繊維を製造した。
紡糸条件は次の通りである。
紡糸温度
シリンダー温度 : 130−210℃、
Head温度 : 190−200℃、
Dies温度 : 150℃
スクリュー回転速度 : 51rpm
シリンダー径(D) : 50mm
シリンダー長(L) : 1500mm
L/D比 : 30
ダイス数 : 150口
紡糸時の引き取り速度 : 13.7m/秒
延伸水槽温度 : 93℃以上
延伸倍率 : 8倍
得られた繊維 : モノフィラメント
【0036】
工程5
工程4で得られた繊維を、ラッセル法によりメッシュサイズが3mm×3mm(網目一個あたりの空隙面積は9mm2)のネット状の害虫防除材(以下、本発明害虫防除材(1)と記す。)を作成した。
本発明害虫防除材(1)中のペルメトリン含量は2.0重量%であった。
尚、工程4により害虫防除成分を含有する繊維を製造後、本発明害虫防除材(1)を製造するまでの期間は約1週間であった。
【0037】
(ブリード係数測定方法)
1.サンプルの精秤
害虫防除材の任意の場所から5×5cmの小片を切り取ってサンプルとし、精秤する。
【0038】
2.溶液の調製
(1) ジオクチルアジペート(内部標準物質、以下、DOAと記す。)約150mgを正確に秤量し、これにアセトンを加えてDOA濃度3000ppmのアセトン溶液(以下、溶液Aと記す。)を作成する。
(2) 溶液A 5mlをアセトンで50mlに希釈して、DOA濃度300ppmのアセトン溶液(以下、溶液Bと記す。)を作成する。(抽出用)
(3) 溶液A 5mlをアセトンで50mlに希釈して、DOA濃度300ppmのアセトン溶液(以下、溶液Cと記す。)を作成する。(分析用)
(4)ペルメトリン約150mgを正確に秤量し、これにアセトンを加えてペルメトリン濃度3000ppmのアセトン溶液(以下、溶液Dと記す。)を作成する。
(5) 溶液D 5mlをアセトンで50mlに希釈して、ペルメトリン濃度300ppmのアセトン溶液(以下、溶液Eと記す。)を作成する。(分析用)
(6) 溶液C及び溶液Eのそれぞれ5mlをスクリュー管(No.5、20ml)に加えて混合し、標準液とする。
【0039】
3.抽出処理
(1) スクリュー管にサンプル及び溶液B10mlを加え、1分間よく振って抽出処理を行った後、サンプルを取り出す。(第1回抽出処理)
(2) サンプルを取り出した後のスクリュー管に残った抽出液をナスフラスコに移し替え、さらにスクリュー管内をアセトン1mlで洗浄し、そのアセトン洗液を前記ナスフラスコに加えて抽出液と併せて混合液(以下、抽出液Fと記す。)を得る。
(3) ナスフラスコ中の抽出液Fを減圧下に濃縮処理し、濃縮残にアセトン2mlを加えてガスクロマト分析試料とし、抽出液F中のペルメトリン量を分析することにより、害虫防除材表面上の害虫防除成分量(表面ブリード量)を測定する。
(4) 前記(1)の操作で取り出したサンプルを23℃で20分間風乾させた後、新しいスクリュー管に入れ、70℃の恒温槽で2時間放置する。
(5) 2時間放置後のサンプルについて、前記(1)〜(4)と同様の操作を行い、第2回目の抽出における表面ブリード量を測定する。 (第2回抽出処理)
(6) 前記(5)の操作で得た2度目の2時間放置後のサンプルについて、前記(1)〜(4)と同様の操作を再度行い、第3回目の抽出における表面ブリード量を測定する。 (第3回抽出処理)
【0040】
4.ガスクロマトグラム分析条件
形式 : FID
空気 : 50kPa
水素ガス : 55kPa
カラム : SE−30(5%、1.1m)
カラム温度 : 220℃ (INJ,DEC:250℃)
キャリーガス : 窒素ガス 50ml/cm2
【0041】
5.ブリード係数
前記3.(5)及び(6)より求められる
第2回目抽出処理における表面ブリード量 : WA
第3回目抽出処理における表面ブリード量 : WB
とから、次式によりブリード係数が算出される。
ブリード係数=(WB/WA
【0042】
6.表面量測定方法
前記のブリード係数測定方法の3.抽出処理(3)までの操作により求められる供試サンプルの表面ブリード量から、害虫防除材1kgあたりの害虫防除材表面上の害虫防除成分量が求められる。
表面ブリード量:
【0043】
本発明害虫防除材(1)の表面の害虫防除成分量(ペルメトリン量)を前記の『表面量測定方法』により測定したところ、本発明害虫防除材(1) 1kgあたり0.800gであった。
また、本発明害虫防除材(1)を『ブリード係数測定方法』で測定したところ、第2回目の抽出における表面ブリード量(WA)、第3回目の抽出における表面ブリード量(WB)はそれぞれ、
A=0.620〔g/kg〕
B=0.434〔g/kg〕
であり、ブリード係数は0.70であった。
【0044】
7.デニール評価方法
(1) ボビンに巻き付けてある紡糸した糸を巻き解く(巻き応力の緩和)。
(2) (1)の操作で巻き解いた糸を約1.5メートルの長さで5本以上を切りとり、室温で24時間放置する。
(3) (2)の操作を行った糸から5本を正確に1.000メートル(SUS製直尺(JIS1級品)を用いる、誤差:±1ミリメートル未満)の長さに切りとり、それぞれを精密天秤で0.1ミリグラムの単位まで正確に秤量する。
(4) 秤量した1メートル当たりの重量からデニール(g/9000メートル)を算出する。
デニール = (1メートル当たりの糸の重量)×9000
(5) 5本の糸のそれぞれについて求められたデニールの値の平均値(小数点第1位で四捨五入する)から、供試した糸のデニールを求める。
【0045】
製造例1における工程4により得られた繊維について、デニール評価方法により測定したところ、その太さは188〔デニール〕であった。
【0046】
試験例
7cm角に切断した本発明害虫防除材(1)を、供試虫(ネッタイシマカ(Aedes aegypti))10頭ともに直径35mmのシャーレ内に入れて、3分間、供試虫と接触させた。その後、該シャーレから本発明害虫防除材(1)を取り出し、供試虫をナイロンゴースケージ(縦 30cm、横 30cm、高さ 30cm)内に放ち、経時的に供試虫の生死及び仰天落下状態(ノックダウン)を観察し、半数致死時間(KT50)及び半数仰天落下時間(KD50)を求めるとともに、試験開始24時間後の死虫頭数から死虫率を求めた。
その結果は以下の通りであった。
KT50 : 6.5分
KD50 : 2.4分
24時間後の死虫率 : 100%


【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下である害虫防除成分及び熱可塑性樹脂が含有されてなる繊維により、略均一な形状の網目が構成されてなるネット状の害虫防除材であって、
該害虫防除材に対する該害虫防除成分の含有割合が0.1〜10重量%であり、
該害虫防除材表面上の該害虫防除成分量が該害虫防除材1kgあたり0.03〜3gであり、
各々の網目における空隙面積が2〜36mm2であり、
かつ、アセトン洗浄法による害虫防除成分のブリード係数が0.3〜2.0であることを特徴とする害虫防除材。
【請求項2】
25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下である害虫防除成分が、25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下のピレスロイド化合物である請求項1記載の害虫防除材。
【請求項3】
25℃における蒸気圧が1×10-6mmHg以下である害虫防除成分が、ペルメトリンである請求項1記載の害虫防除材。
【請求項4】
熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂である請求項1〜3いずれか一項記載の害虫防除材。
【請求項5】
熱可塑性樹脂が、エチレン系樹脂である請求項1〜3いずれか一項記載の害虫防除材。
【請求項6】
熱可塑性樹脂が、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する樹脂組成物である請求項1〜3いずれか一項記載の害虫防除材。
【請求項7】
各々の網目における空隙面積が8〜25mm2である請求項1〜6いずれか一項記載の害虫防除材。
【請求項8】
粒径0.01〜40μmである粉状担体が、該害虫防除材に対して0.01〜10重量%含有されてなる請求項1〜7いずれか一項記載の害虫防除材。
【請求項9】
繊維が、太さ130〜230デニールのモノフィラメントである請求項1〜8いずれか一項記載の害虫防除材。



【公開番号】特開2008−13508(P2008−13508A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187606(P2006−187606)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】