説明

害鳥忌避材

【課題】従来の害鳥忌避材に比較して、忌避範囲が広く鳥による学習効果の少ない害鳥忌避材の提供を目的とする。
【解決手段】ヒ素を0.1〜15質量%を含有する銅合金材の表面にラジウム含有鉱石の粉末を含むコーティング層を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラス等の害鳥による被害を防止するのに効果的な害鳥忌避材に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明者はカラス、スズメ、ヒヨドリ、ムクドリ、カモ類、ハト類等が嫌がり、近づくのを回避できる害鳥忌避性資材を先に提案した(特許文献1)。
この特許文献1に開示する資材は、カラス等の忌避効果が高いものの、ヒ素を比較的多く含有せざるを得なかった。
また、害鳥が害鳥忌避性銅合金に近づかない範囲が比較的狭いという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−218085
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の害鳥忌避材に比較して、忌避範囲が広く鳥による学習効果の少ない害鳥忌避材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る害鳥忌避材は、ヒ素を0.1〜15質量%を含有する銅合金材の表面にラジウム含有鉱石の粉末を含むコーティング層を形成したことを特徴とする。
ここでコーティング層は銅合金材の全面である必要はなく、部分的であってもよい。
【0006】
本発明に係る害鳥忌避材は、ラジウムと組み合せたことにより銅合金は特許文献1(特開2004−218085号)に記載するヒ素の含有量よりも少ない量で忌避効果がある。
ヒ素以外の成分としては、特許文献1記載の成分のみならず、用途及び要求される特性、機能に基づいた各種銅基合金が適用される。
例えば、鉛3〜15質量%、スズ5〜10質量%の一方又は両方を含有する合金のみならず、Cu−Zn系の黄銅、快削黄銅、すず入り黄銅、Cu−Sn−P系のりん青銅、Cu−Ni−Fe−Mn系の白銅、Cu−Zn−Ni系の洋白が例として挙げられる。
本発明に係る銅基合金は、ヒ素が0.1%以上含有すればラジウムが放射するα線、β線、γ線の効果により高い害鳥忌避効果を有し、0.1%以上から5%未満の範囲で充分である。
なお、ヒ素を5〜15%、鉛を5〜15%を含む銅合金とラジウム鉱石を組み合せると特許文献1記載の忌避材の忌避範囲が大きく広がる。
【0007】
ラジウム含有鉱石とは、ラジウムが含まれている鉱石をいい、天然鉱石としては玉川温泉、三朝温泉等に産出するものがある。
玉川温泉のものは北投石と称され、(Ba,Pb)SO(Ba:Pb=4:1)の組成の他に放射性のラジウムを含む。
このようにラジウムを含む鉱石をラジウム鉱石といい、オーストリアのバドガシュタイン鉱石等もこれに該当する。
日本の法律による放射線の安全基準は、1mSv/年間以下、国際放射線防護委員会は5.0μSv/1日以下と規定しているが、玉川温泉で約1.8μSv/1日であるから、人体に対する影響はない。
ラジウム含有鉱石は粉末状に粉砕し、塗料やインク中に分散させ、銅基合金材の表面にコーティングするとよい。
【0008】
本発明に係る害鳥忌避材は、ヒ素を0.1〜15質量%を含有する銅合金の粉末とラジウム含有鉱石の粉末とを混合することでも製造できる。
ヒ素を含有する銅基合金は前述した各種合金系を適用することが可能である。
また、混合した粉末状態のままでも焼結にて成形してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ヒ素含有銅合金とラジウム含有鉱石とを組み合せたことにより、従来よりも少ないヒ素の含有量にて、従来よりも広い範囲にて害鳥の忌避効果を有する。
その理由は本発明に係る忌避材から放射される微量のα線、β線及びγ線がカラス等に刺激を与え、ヒ素により何らかの生理学的刺激を与えることで従来と比較して広い範囲の忌避効果があるものと思料される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る忌避材の忌避効果を実験にて確認したので、以下説明する。
電気銅を溶解し、これに鉛(三菱コミンコ精練)及びヒ素(古河機械金属)を加え、Cu:95%、Pb:4%、As:1%の溶湯を調整した。
この溶湯を用いて鋳塊を鋳造し、その後切削加工により100φ×3mmの円盤状のベース材を製作した。
ラジウム鉱石は市販されている粉末状の鉱石をアクリル塗料に50〜100g/l、分散させた。
本発明の実施例品は上記分散塗料をベース材の表面に塗布し、乾燥させた。
一方、比較品としてベース材のみとした。
高さ1m×長さ1.8mmのボードを2枚準備し、1枚のボードに発明品を5枚上部横方向に等間隔に取り付け、立設した。
2枚のボードの周囲を高さ5mのネットで囲み、カラスを3羽、3ヶ月飼育観察した。
ボードの下部には餌を置いてカラスの様子を観察した。
実験開始後、しばらくはどちらのボートにもカラスが近づかなかったが、比較品の方は約1ヶ月にてボードの上部を避けるようにして餌を食べにくるものが現れたが、本発明品は3ヶ月間最後までそのようなカラスが見られなかった。
以上のことから、本発明に係る忌避材の方が広い範囲にて長期間忌避効果があることが確認できた。
また、発明品の放射線量を測定したら、0.15〜0.20μSv/hであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒ素を0.1〜15質量%を含有する銅合金材の表面にラジウム含有鉱石の粉末を含むコーティング層を形成したことを特徴とする害鳥忌避材。
【請求項2】
ヒ素を0.1〜15質量%を含有する銅合金の粉末とラジウム含有鉱石の粉末とを混合したことを特徴とする害鳥忌避材。
【請求項3】
前記銅合金は鉛3〜15質量%含有していることを特徴とする請求項1又は2記載の害鳥忌避材。

【公開番号】特開2012−167071(P2012−167071A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30722(P2011−30722)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(594079349)
【Fターム(参考)】