説明

家庭用薄葉紙

【課題】嵩高さ、意匠性に優れる家庭用衛生薄葉紙製品を提供する。
【解決手段】坪量10〜60g/m2、紙厚80〜350μの薄葉紙の少なくとも一方の面に発泡インキによる嵩高部を有し、その嵩高部の高さ50〜200μmであり、前記嵩高部の平面視における総面積が、薄葉紙の一方面の面積の5〜20%である家庭用薄葉紙により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用薄葉紙に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンペーパー、ティシュペーパー、トイレットペーパー、紙ナプキンなど家庭用薄葉紙は、クレープを有し、板紙等と比較して、柔らかさ、しなやかさがあり吸液性にも優れることから水分、油分、汚れ、塵等を拭き取る用途を主としつつ、安価で使い捨てにできる等の利点とも相まって、例えば、物や食品の破損等の防止のためにそれらの物品を包むための用途、ランチョンマットやコースターのように食器の下敷きとする用途、揚げ物の余剰な油等を吸収するための用途、さらには紙おむつや生理用ナプキン等の使い捨て吸収性物品の部材の一部にも使用されたりもする。
このように家庭用薄葉紙は、汎用性に優れ、需用者におけるその使用の用途は極めて多岐にわたる。
【0003】
しかし、汎用性に優れる一方、上述の物や食品の破損等の防止のためにそれらの物品を包むための用途においては、専用の梱包紙等と比較するとクッション性に劣り数枚を重ねて使用する必要があったり、ランチョンマットやコースターのように食器の下敷きとする用途においては、食器を置く際に十分なクッション性や滑り防止性がなく意匠性もない等、それぞれの用途において不十分な点も多い。
この各種用途において十分とはいえない点は、薄葉紙自体の低坪量や紙厚が薄いという特質に起因する嵩の低さによるところが大きい。
【0004】
家庭用薄葉紙においては、嵩高さ、意匠性を改善する技術として、エンボス加工を施す技術が知られるものの、薄葉紙自体の紙厚、地色に束縛されるエンボス加工による嵩高さの向上、意匠性の向上には限界がある。
そこで、本発明者らは、薄葉紙の利点を生かしつつ上記問題点の嵩高さ、意匠性を改善すべく、下記特許文献1〜5に示される発泡インキのメカニズムに着目した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−237974号公報
【特許文献2】特開平5−16288号公報
【特許文献3】特開平10−180945号公報
【特許文献4】特開平10−157022号公報
【特許文献5】特表2005−516816号公報
【特許文献6】特表2000−25136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、柔らかさ、しなやかさ及び吸液性に優れ、しかも安価という家庭用薄葉紙の特質を生かしつつも、エンボス技術では達成しえない、嵩高さ、意匠性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明及び作用効果は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
坪量10〜60g/m2、紙厚80〜350μmの薄葉紙の少なくとも一方の面に発泡インキによる嵩高部を有し、その嵩高部の高さ50〜200μmであり、前記嵩高部の平面視における総面積が、薄葉紙の一方面の面積の5〜20%であることを特徴とする家庭用薄葉紙。
【0008】
<請求項2記載の発明>
前記薄葉紙は、エンボスを有さないものである請求項1記載の家庭用薄葉紙。
【0009】
<請求項3記載の発明>
薄葉紙の両面に発泡インキによる印刷がなされ、かつ一方面がノンスリップタイプの発泡インキによる滑り防止性を有する嵩高部とされている請求項1又は2記載の家庭用薄葉紙。
【0010】
<請求項4記載の発明>
ドレープ性(ソフトネス/厚み)が0.04〜0.1m2/μmである請求項1〜3の何れか1項に記載の家庭用薄葉紙。
【0011】
<請求項5記載の発明>
前記嵩高部は、薄葉紙の地色と異なる色である請求項1〜4の何れか1項に記載の家庭用薄葉紙。
【0012】
<請求項6記載の発明>
帯状であり、長手方向に所定間隔で幅方向にわたる切り取り用ミシン目線が配されている請求項1〜5の何れか1項に記載の家庭用薄様紙。
【発明の効果】
【0013】
以上の本発明によれば、柔らかさ、しなやかさ及び吸液性に優れ、しかも安価という家庭用薄葉紙の特質が生かされ、しかもエンボス技術だけでは達成しえない、嵩高さ、意匠性を有する家庭用薄葉紙が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の家庭用薄葉紙を説明するための斜視図である。
【図2】本発明の家庭用薄葉紙を説明するための他の斜視図である。
【図3】本発明の家庭用薄葉紙を説明するための断面図である。
【図4】本発明の家庭用薄葉紙を説明するための他の断面図である。
【図5】本発明の家庭用薄葉紙のロール形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次いで、本発明の実施の形態について、図1〜5を参照しながら以下に詳述する。
『家庭用薄葉紙』
本発明は、基材となる薄葉紙1の少なくとも一方の面に発泡インキによって印刷を施して嵩高部2を形成し、家庭用薄葉紙X1全体としての嵩高さを発現させたものである。
この家庭用薄葉紙X1は、種々の家庭用薄葉紙製品の原紙として使用することができ、例えば、後述の薄葉紙1の設計等によりティシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、ワイプ、紙ナプキン、ランチョンマットなどの製品とすることができる。
【0016】
但し、発泡インキは、薄葉紙自体と比較して水解性に劣り、また、表面に凹凸を形成することから肌触りに対する影響も大きいので、トイレットペーパー、ティシュペーパーといった肌に触れる用途に使用する製品とするよりは、物品等の肌以外の汚れなどを拭き取る用途等が主である、ワイプ、キッチンペーパー、紙ナプキン等としての製品に適する。
【0017】
特にキッチン周辺での使用態様において利便性が高く、キッチンペーパー、使い捨てのランチョンマットとするに適する。もちろん、キッチンペーパー、使い捨てのランチョンマットなど以外の新たな家庭用薄葉紙製品として利用してもよい。
【0018】
他方、この嵩高部2の平面視における総面積は、薄葉紙1の一方面の面積の5〜20%であるのが望ましい。嵩高部2に係る部分は、薄葉紙1自体の吸液性及びしなやかさを低下させるため20%を超えるとすると、吸液性、しなやかさの点で薄葉紙1の利点が十分に発揮されなくなる。他方、嵩高部2が5%未満であると、紙面の凹凸によって、例えば、敷物のように使用する場合に、載せた物品がぐらつくなどの問題が生じやすくなる。
【0019】
ここで、発泡インキによる印刷パターン、すなわち嵩高部2の配置パターンは、特に限定されるものではないが、例示すれば、丸、点、二重丸、三角形、四角形などの適宜の単位形状を点在的に配置したパターン、直線、波線などの線を並列或いは格子状に配したパターン、直線、波線、曲線などにより任意の図形、図柄を描くように配するパターンなどが挙げられる。
【0020】
ここで、嵩高部2の配置パターンとして、図1に示すように一つの四角形等のドットの嵩高部2を散点在に配置するパターンであれば、一つの嵩高部2の面積は、1.0〜4.0mm2であるのが望ましく、この場合において、隣り合う嵩高部2間の距離L1が1.0〜5.0mmであるのが望ましい。なお、この隣り合う嵩高部2間の距離L1とは、隣合う嵩高部間のうち最も近い距離を意味する。上記範囲であると、嵩高部2が適度に散在され、優れた意匠性を有するとともに敷物のように使用する場合に、載せた物品がぐらつくなどの問題が生じない。また、薄葉紙1のしなやかさ、吸液性等も十分に発揮される。
【0021】
また、嵩高部2の配置パターンとして、図2に示される格子状のように、嵩高部2を線状に配して、その線状に配された嵩高部2により囲まれた区画を複有する配置パターンとするのであれば、線幅L2は、0.25〜2.00mmであり、囲まれる一区画Pの面積が25〜100mm2とするのが望ましい。上記範囲であると、嵩高部2が適度に散在され、優れた意匠性を有するとともに敷物のように使用する場合に、載せた物品がぐらつくなどの問題が生じない。また、薄葉紙1のしなやかさ、吸液性等も十分に発揮される。
【0022】
他方、特に図3から理解されるように、本発明における家庭用薄葉紙X1では、発泡インキによる嵩高部2の高さL3は、50〜200μmであるのが望ましい。ここで嵩高部2の高さL3とは、基材となる薄葉紙面から発泡インキの印刷部分である膨らみの頂点までの高さである。なお、発泡インキによる発泡印刷部分の高さは一定ではないので、嵩高部2の高さは、5箇所の平均値とする。
【0023】
嵩高部2の高さ200μmを超えると薄葉紙1の紙面との高低差が有りすぎて、ざらついた感じになり、薄葉紙1のしなやかさが発現し難くなるとともに、発泡インキの脱落が生じるおそれが高まる。また、例えば、敷物として利用したときに置いたものの安定性がなくなる。また、50μm未満であると得られる嵩高さに比して、発泡インキを用いることのコストが高いものとなる。
【0024】
他方、本発明の家庭用薄葉紙X1は、ドレープ性(ソフトネス/厚み)が0.04〜0.1m2/μmであるのが望ましい。ドレープ性が上記範囲であると、弾力性があり、ふっくらやわらかな仕様となる。厚み感とやわらかさのバランスが極めて優れたとものとなる。ここで、ソフトネスの測定は、JAPAN TAPPI No.34に準じ、クリアランスを20mmとして測定したものとする。
【0025】
他方、本発明の嵩高部2は、発泡インキにより形成される凸部であるが、その形状はエンボスによる凸部と比較すると、紙面から急激に立ち上がる凸部であり、エンボス付与では達成しえない、意匠性を有するものとなる。さらに、本発明の嵩高部は、薄葉紙の地色と異なる色とすることにより、その凹凸による意匠性に加えて色による意匠性が加わり、これまでにない極めて優れた意匠性を有するものとなる。
【0026】
他方、本発明の家庭用薄葉紙X1において、薄葉紙1の両面に発泡インキによる印刷を施す場合には、図4に示すように、一方面はノンスリップタイプの発泡インキによって印刷し、滑り防止性を有する嵩高部3とすることができる。この場合、例えば、敷物として使用するに適するため、例えば、薄葉紙1の設計をキッチン周辺で使用するキッチンペーパーに適するものとして、ランチョンマット、コースター等としての利用性が向上する。
【0027】
嵩高部3については滑り防止性を有する以外、例えば配置パターンや、面積率等については、上記通常の嵩高部2と変わりない。
【0028】
『薄葉紙』
本発明の基材となる薄葉紙1は、クレープを有するものであり、坪量10〜60g/m2、厚さは、80〜350μmの範囲とする。この範囲で、キッチンペーパー、ティシュペーパー、トイレットペーパー、ワイプ、紙ナプキン、その他の家庭用薄葉紙製品のそれぞれに適するように設計することができる。
【0029】
例えば、キッチンペーパー、ワイプであれば、坪量20〜50g/m2、厚さ108〜270μm、紙ナプキンであれば、坪量20〜40g/m2、厚さ120〜216μm、ティシュペーパーであれば、坪量10〜15g/m2、厚さ100〜250μm、トイレットペーパーであれば、坪量15〜40g/m2、厚さ100〜250μmである。
【0030】
なお、薄葉紙1のプライ数は限定されず、適宜のプライ数とすることができる。但し、好適には、1〜3プライである。また、プライ構造とする場合、上記坪量、厚さは、プライ構造とした状態での坪量、厚さである。
なお、本発明及び明細書中における坪量とは、JIS P 8113に基づいて測定した値を言う。
【0031】
また、薄葉紙1の厚さL1の測定方法としては、JIS P 8111の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。なお、厚さは測定を10回行って得られる平均値とする。もちろん、嵩高部2、3にかからない部分を測定する。
【0032】
他方、薄葉紙1は、ドライクレープ紙、ウェットクレープ紙のいずれのクレープ紙であってもよい。ドライクレープ紙の場合は、シワが高く緩衝性に優れ柔らかく伸びがあるのが利点であり、ウェットクレープ紙の場合は、シワが低く同じ重さの一般の紙などに比べて紙が厚く、緩衝性に優れ柔らかいという利点がある。
【0033】
なお、キッチンペーパーにおいて優れるのはウェットクレープ紙であり、上述の本発明の家庭用薄葉紙X1の使用態様としてキッチンペーパー、ランチョンマット等キッチン周辺での使用に適することなどを総合的に勘案すれば、本発明における薄葉紙1は、ウェットクレープ紙であるのが望ましい。
【0034】
ここで、本発明に係る薄葉紙1の原料パルプは、既知のものが使用できる、特には、原料パルプは、NBKPとLBKPとを配合したものが好ましい。適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよく、その場合配合としては、NBKP:LBKP=10:90〜50:50がよく、特に、NBKP:LBKP=40:60が望ましい。
【0035】
なお、薄葉紙1は、エンボス加工を施したものであってもよいが、エンボス加工を施すと発泡インキが脱落しやすくなり、また、発泡インキの印刷もし難く製造も煩雑となるため、薄葉紙1はエンボス加工が施されていないもののほうが望ましい。
【0036】
<発泡インキ>
嵩高部2、3を形成するための発泡インキは、既知のものが利用できるが、好ましい例としては、バインダー中に発泡性硬化物質を含有するものである。バインダーとしては、既知の接着基材を用いることができ、具体例としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。
【0037】
発泡性硬化物質は、具体的には、熱によって膨張する特性を有する芯物質を熱可塑性高分子材料の被膜あるいは殻に内包させたマイクロカプセルが例示できる。マイクロカプセルの粒子径等は、マイクロカプセルの発泡性、用いる印刷機等により適宜選択することができ、特に限定されないが、概ね10〜50μmの粒径である。
この種の発泡性硬化物質は、適当な温度となると芯物質が膨張するとともに被膜又は殻が拡張することで膨張状態が維持される。なお、本発明における硬化とは弾性、剛性、剛弾性の状態を含む意味である。
【0038】
なお、マイクロカプセルの被膜あるいは殻を形成する熱可塑性高分子材料の具体例としては、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル等のアクリル系樹脂、塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリブタジエン、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂などから選ばれる熱可塑性高分子材料、あるいはこれらを混合した熱可塑性高分子材料などが挙げられ、また、熱によって膨張硬化する特性を有する芯物質の具体例としては、ブタンやイソブタン等の炭化水素系化合物、その他の有機溶剤や重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アジド化合物、ヒドラジド化合物等の炭酸ガス、窒素ガス等の分解ガスを発生する有機物質、無機物質が挙げられる。
【0039】
なお、発泡性硬化物質の配合は、発泡性硬化物質の発泡性、バインダーの接着性を考慮して適宜調整できる。概ね接着剤基材20〜60重量部に対して3〜20重量部である。
【0040】
なお、発泡インキ中には、嵩高部形成にあたって必要な増粘剤、消泡剤、溶媒など製造上必要な薬剤を含有させることができる。
より具体的な発泡性硬化物質を例示すれば、Expancel社製 のExpancelシリーズ等が例示できる。
【0041】
また、滑り防止性を有する嵩高部3を形成するにあたっては、少なくとも発泡後にマイクロカプセルの殻、被膜が粘性を示す発泡性硬化物質を含有する発泡インキを選択したり、バインダー、発泡性硬化物質に加えて、ジエン系ゴム(例えばスチレンブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴムなど)、オレフィン系ゴム(エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム)、アクリルゴム、シリコーンゴムなどの滑り防止成分を含有する発泡インキにより達成することができる。
【0042】
他方、薄葉紙1の地色と異なる嵩高部を形成するために、既知の染料、顔料を配合させることができる。
【0043】
<製造方法例>
本発明の家庭用薄葉紙X1は、抄造された薄葉紙1に対して発泡インキをグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の薄葉紙1に対する既知の印刷方法を用いて適宜のパターン印刷を施した後、この発泡インキが印刷された薄葉紙1をドライヤー等によって加熱して、発泡インキを熱により発泡させることで製造することができる。
【0044】
ドライヤーの温度は、用いる発泡インキの発泡温度に応じて適宜定めることができるが、薄葉紙の抄造からオンラインで行なう場合90〜130℃とするのが製造上望ましい。
【0045】
オンラインで行なう場合とは、プリンタ(印刷機)にて発泡インキを印刷した後、連続的にドライヤー等で乾燥させるときの温度である。
【0046】
<ロール形態>
他方、本発明の家庭用薄葉紙X1は、帯状として長手方向に所定間隔で幅方向にわたる切り取り用ミシン目線を配し、さらにそれをロール状にした、キッチンロール或いは使い捨てランチョンマットロール等とするのに適する。以下、この形態について、特に図5を参照しながら説明する(なお、図5中において嵩高部は省略する)。ただし、本発明にかかる家庭用薄葉紙X1は、かかるロール形態に限定されるわけではない。
【0047】
このロール形態は、帯状の上記説明の家庭用薄葉紙(以下、この家庭用薄葉紙を単にシート12ともいう)が、これと実質的に同幅の紙管などからなる管芯2に巻かれてロール形態とされたものである。前記管芯5は、この種のキッチンペーパー等に用いられている既知のものが利用できる。一般例を示せば、その外径(巻き直径)L4は30〜50mm、幅Hは100〜250mm程度である。
【0048】
本形態においてはシート12の巻長さは8〜15m程度がよく、上記管芯5を用いた場合には、キッチンペーパーX1の外径は70〜130mmとなる。この範囲であると使い勝手がよい。
【0049】
他方、図5に示すように、本形態のシート12は、シート長手方向の所定間隔L5おきにシート幅方向に亘るミシン目線6を設けるのが望ましい。このミシン目線6,6の間隔によって、シート12が切断し易くなる。所定間隔L5は、48〜350mm程度とするのがよい。48mm未満であると、実使用には小さすぎることとなり、350mmを超えると食器などと比べて大きくなることから使い勝手が゛悪くなる。
【0050】
前記ミシン目線L5は、既知のパーフォレーションロール(ミシン刃ロール)設備によって形成することができる。すなわち、管芯5に巻き取る前段において、シート12の幅より幅広のロール上に、多数の刃を幅方向に沿って配設して刃列を形成し、この刃列を所定間隔L5と同じピッチでロールの円周方向に複数設けたパーフォレーションロールを回転させつつ、走行するシート12に当接させることにより、シート12の幅方向に亘るミシン目線6を、長手方向の所定間隔L5おきに形成することができる。
【0051】
なお、ミシン目線の形成は、発泡インキ印刷前の薄葉紙、発泡インキ印刷後未発泡の状態の際、発泡インキ印刷後に発泡して嵩高部を形成した後のいずれにおいて行なってもよい。好ましくは、嵩高部2,3にもミシン目線が入ることから、嵩高部2,3を形成した後である。
【0052】
なお、本形態の家庭用薄葉紙X1は、図示例の如くミシン目線6が二重線以上であるのが好適である。複数重のミシン目線を形成するにあたっては、複数重の適宜の刃列のパーフォレーションロールを備えるパーフォレーションロール設備により形成すればよい。なお、この場合のミシン目線6は、シート幅方向全体にわたって二重に形成されている必要はなく、例えば、シート12の幅方向側部のみが二重に形成されていてもよい。
【0053】
さらに、ミシン目線12を二重とする場合において、特開2003−276936号公報などを参考に、例えば、カット部分を千鳥状としたり、あるいは一方のミシン目線のカット部分の端部とこのカット部分の端部に最も近接した他方のミシン目線のカット部分の端部とを結ぶ直線に対する、ミシン目線のなす角を直角又は鋭角としたりして、切断の容易化などを図ることもできる。
【0054】
ここで、本形態のキッチンペーパーX1は、好適にはミシン目線6におけるシート長手方向の引張り強さが100〜500cNであるのがよい。特には、トイレットロールであれば、100〜200cN、キッチンペーパー、ランチョンマットであれば300〜400cNが適する。ミシン目線6におけるシート長手方向の引張り強さが100cN以上であると、シート巻出し時におけるミシン目線6での不本意な分断が確実に防止される。他方、ミシン目線6におけるシート長手方向の引張り強さが500cN以下であると、切断したい所望のミシン目線6にて確実かつ容易にシート12を切断することができる。
【0055】
ここで「引張り強さ」とは、JIS P 8113に規定される引張り特性試験方法に準拠して測定される乾燥時引張り強さを意味する。シート12自体、つまりミシン目線12のないシート12の引張り強さではなく、ミシン目線6のあるシート12を対象とし、ミシン目線6を跨いで測定した引張り強度を意味する。
【0056】
このミシン目線6における長手方向の引張り強さの調節は、ミシン目線6における接続部であるタイ長さと、同分断部であるカット長さとを調節することにより、あるいはこのタイ長さとカット長さとの比であるタイカット比を調節することにより、行うことができる。より具体的には、所望のタイカット長さ及びタイカット比の刃列を具備するパーフォレーションロールに交換することにより調節することができる。また、この引張り強さの調節は、パーフォレーションロールのシート12への押付け線圧(シート単位幅当たりのシート12への押付け力(kgf/cm))の調節や、ワインダー速度(シート1aの巻取り速度)の調節によっても調節することができる。
【0057】
他方、本形態のキッチンペーパーX1は、シート12自体のシート長手方向の引張り強さに対する、ミシン目線6におけるシート長手方向の引張り強さの比率が、1.0〜50%(好ましくは2.0〜10%)であると好適である。引張り強さの比率が50%以下であると、ミシン目線6のないシート部分の引張り強さが相対的に高くなるので、シート12の切断時に、ミシン目線6以外のシート部分で、シート12が分断されてしまうことが抑制され、ミシン目線6にて確実に切断することができる。他方、引張り強さの比率が1.0%以上であると、相対的にミシン目線6の引張り強さが高くなるので、ミシン目線6の間隔を短くしたことにより、ミシン目線6が増えたとしても、シート巻出し時におけるミシン目線6での不本意な分断を確実に防ぐことができる。
【0058】
ここでシート12自体の長手方向の引張り強さも、前述JIS P 8113に規定される引張り特性試験方法に準拠して測定されるものである。もちろんミシン目線6のないシート部分の乾燥時引張り強さである。
【0059】
なお、ミシン目線6におけるシート長手方向の引張り強さを100〜500cNに設定し、引張り強さの比率を、1.0〜50%に設定するためには、ミシン目線6のタイ長さを0.9〜2.5mmに、カット長さを0.9〜37.5mmにするとともに、タイカット比(タイ:カット)を1:15〜1:1に設定すればよい。
【符号の説明】
【0060】
X1…家庭用薄葉紙、1…薄葉紙、2…嵩高部(発泡インキ印刷部分)、5…管芯、6…ミシン目線、12…シート、L1…嵩高部の高さ、L2,L3…嵩高部間の距離、L4…外径(ロール直径)、L5…ミシン目線間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坪量10〜60g/m2、紙厚80〜350μの薄葉紙の少なくとも一方の面に発泡インキによる嵩高部を有し、その嵩高部の高さ50〜200μmであり、前記嵩高部の平面視における総面積が、薄葉紙の一方面の面積の5〜20%であることを特徴とする家庭用薄葉紙。
【請求項2】
前記薄葉紙は、エンボスを有さないものである請求項1記載の家庭用薄葉紙。
【請求項3】
薄葉紙の両面に発泡インキによる印刷がなされ、かつ一方面がノンスリップタイプの発泡インキによる滑り防止性を有する嵩高部とされている請求項1又は2記載の家庭用薄葉紙。
【請求項4】
ドレープ性(ソフトネス/厚み)が0.04〜0.1m2/μmである請求項1〜3の何れか1項に記載の家庭用薄葉紙。
【請求項5】
前記嵩高部は、薄葉紙の地色と異なる色である請求項1〜4の何れか1項に記載の家庭用薄葉紙。
【請求項6】
帯状であり、長手方向に所定間隔で幅方向にわたる切り取り用ミシン目線が配されている請求項1〜5の何れか1項に記載の家庭用薄様紙。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−74518(P2011−74518A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226283(P2009−226283)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】