説明

家畜用給餌器

【課題】飼料ホッパ内において飼料のブリッジが発生することを完全に防止する家畜用給餌器を提供する。
【解決手段】本発明による家畜用給餌器のブリッジ防止手段14は、飼料ホッパ10における円錐ガイド部22の傾斜に合わせて、それぞれ吊り棒12から斜め上向きに延ばし、円錐ガイド部22の内壁面22aに沿って逆かさ形に配設する複数の線状の撹拌棒30を備え、それら撹拌棒30の上端をリング31で連結して構成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仔豚等の家畜に飼料を与えるのに好適な家畜用給餌器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の家畜用給餌器は、飼料ホッパにおいて、飼料が投入される円筒部の下側に、漸次下向きに縮径した円錐ガイド部を設け、飼料供給時は、円筒部内に投入した飼料を、この円錐ガイド部を通して底皿へ自然落下させて送給している。ところが、飼料ホッパの下側を円錐ガイド部で漸次下向きに幅狭に形成するので、そのように重力で飼料を自然落下させるものにあっては、円錐ガイド部で飼料が詰まってブリッジ状になり易く、飼料ホッパの下端の排出口から飼料が排出されない虞があった。
【0003】
そこで、従来の家畜用給餌器の中には、図6および図7に示すように、飼料ホッパ1の上部側に支持棒2を懸架し、その支持棒2に吊り棒3の上端部を回転自在に連結して飼料ホッパ1内に垂下する一方、吊り棒3の下端部に棒状の起動部材4を連結して放射状に配設すると共に、吊り棒3の中途部から斜め上向きに鋼製ワイヤー製のブリッジ防止手段5を取り付けて円錐ガイド部1a内に配設するようにした構成のものがある。また、他の家畜用給餌器の中には、図8および図9に示すように、同様に飼料ホッパ1の上部側に支持棒2を懸架し、支持棒2に吊り棒3の上端部を回転自在に連結する一方、T型の下端棒部3aを底皿6上の餌量調節パイプ7の上部に連結して吊り棒3を垂下する一方、この吊り棒3の中途部から斜め上向きに丸棒のブリッジ防止手段5を取り付けて円錐ガイド部1a内に枝状に配設した構成のものがある。
【0004】
そして、これら従来の家畜用給餌器では、例えば仔豚が食餌するときに鼻や口で触って起動部材4を押すと、吊り棒3が回転し、それと一体にブリッジ防止手段5が回動するため、飼料ホッパ1内の飼料は、このブリッジ防止手段5によって円錐ガイド部1aの中心周りで撹拌され、ブリッジ状にならないように底皿6へ落下するようにしていた。
【特許文献1】登録実用新案第3019037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の家畜用給餌器では、いずれも飼料供給時、飼料ホッパ1内において、ブリッジ防止手段5で円錐ガイド部1aの中心周りにある飼料だけをかき混ぜて落す構成であるため、確かに円錐ガイド部1aの中心付近にある飼料は、流動して下方へ落下するが、円錐ガイド部1aの内壁面1b寄りにある飼料は、内壁面1bとの間の摩擦抵抗により付着したまま落下せず、依然としてブリッジ状に残留するため、結局、ブリッジの発生を確実には防止できない、という課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、飼料ホッパ内で飼料のブリッジが発生するのを完全に防止する家畜用給餌器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に図1〜図5を用いて説明する実施の形態に示すとおり、飼料ホッパ10の漸次下向きに縮径した円錐ガイド部22を通して飼料を下方の底皿18へ自然落下させると共に、その底皿18上で家畜が起動部材13を押すと、その起動部材13を下端部に連結した吊り棒12に備えるブリッジ防止手段14を一体に回動し、そのブリッジ防止手段14で前記円錐ガイド部22内の飼料を流動させながら落下させて前記底皿18へと送給する家畜用給餌器において、前記ブリッジ防止手段14は、前記円錐ガイド部22の傾斜に合わせて前記吊り棒12から斜め上向きに延び、前記円錐ガイド部22の内壁面22aに沿わせて配設してなることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の家畜用給餌器において、たとえば以下に図1〜図5を用いて説明する実施の形態に示すとおり、前記ブリッジ防止手段14は、前記円錐ガイド部22の傾斜に合わせてそれぞれ前記吊り棒12から斜め上向きに延ばし、前記円錐ガイド部22の内壁面22aに沿って逆かさ形に配設する複数の線状の撹拌棒30を備え、それら撹拌棒30の上端をリング31で連結して構成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飼料供給時、飼料ホッパ内に投入する飼料は、円錐ガイド部を通って底皿上へ自然落下して仔豚等の家畜へと送給されるが、このとき、例えば食餌中に仔豚等が鼻や口で触って起動部材を押すと、それに応じて、吊り棒が揺動すると同時に、飼料ホッパ内では、ブリッジ防止手段が円錐ガイド部の内壁面の近傍でそれに沿って揺動するため、内壁面寄りにある凝集飼料はかき混ぜられ、内壁面に摩擦で付着した飼料群も摩擦抵抗が解かれて流動し(例えば外側から円錐ガイド部の外壁面を木槌で叩いて付着飼料を叩き落とすのと同様な効果が得られる。)、その結果、飼料は、円錐ガイド部内の内壁面側から、順次、下方の底皿上へ円滑に落下する。すると、結局、飼料ホッパ内の飼料は、円錐ガイド部にブリッジ状に残留することなく、すべて、下方の底皿上へと落下し、ブリッジの発生を完全に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1〜図5には、本発明の家畜用給餌器を実施するための最良の形態を示す。図示家畜用給餌器は、図1および図2に示すように、飼料ホッパ10、餌落下パイプ11、吊り棒12、起動部材13、ブリッジ防止手段14、支持棒15、餌量調整部16、給水部17、底皿18、仕切板19などで構成されてなる。
【0012】
飼料ホッパ10は、開閉蓋20を開けて上部開口から飼料を投入する上側の円筒部21と、円筒部21の下縁から漸次下向きに縮径した円錐ガイド部22とからなり、円錐ガイド部22の下端に縦長な餌落下パイプ11を接続している。
【0013】
吊り棒12は、長尺な丸棒製で、図3でも示すように、中途部に短い丸棒を直交する向きに溶着して掛け止め軸23を付設し、下端部には、起動部材13を固着している。起動部材13は、複数の丸棒13aを用い、それら丸棒13aを吊り棒12の下端部からやや斜め下向きに放射状に突設し、それぞれ丸棒13aの先端側を飼料の排出筒25を貫通させて保持している。排出筒25は、下縁部に矩形な切欠き26…を周方向に所定間隔をあけて設けてなる。
【0014】
さて、図示ブリッジ防止手段14は、短い連結パイプ29と、それぞれ例えば2〜3mmの線状丸棒からなる複数の攪拌棒30と、丸棒製の環状リング31とからなる。連結パイプ29は、下端に、吊り棒12の掛け止め軸23に合わせて切れ込み29aを設けている。そこで、ブリッジ防止手段14は、この連結パイプ29の上部外周にそれぞれ撹拌棒30の下端を固着し、それら撹拌棒30を、特に飼料ホッパ10における円錐ガイド部22の傾斜に合わせて吊り棒22から図中斜め上向きに延ばし、それら撹拌棒30の上端をリング31で連結して逆かさ形に組み立ててなる。このブリッジ防止手段14は、連結パイプ29に吊り棒12を挿通し、連結パイプ29の切れ込み29aに掛け止め軸23を係合させて吊り棒12に同軸的に連結する。そして、ブリッジ防止手段14を、図4に示すように吊り棒12、起動部材13、排出筒25と共に一体に回動可能に組み付けて、全体を餌排出機構体Aとして構築してなる。
【0015】
餌排出機構体Aは、吊り棒12の上端部を、図1および図2に示すように、飼料ホッパ10の円筒部21内で水平に懸架した支持棒15にクランク35を介して連結し、吊り棒12を回転中心として回動可能に吊持する。そして、各撹拌棒30を内壁面22aに沿わせて円錐ガイド部22内にブリッジ防止手段14を配設し、排出筒25を底皿18上に載置する。
【0016】
支持棒15は、一端15aを、飼料ホッパ10の円筒部21を貫通させて餌量調整部16に連結している。餌量調整部16は、支持棒15の一端15aにレバー36を連結し、レバー36の上端にアイボルトの操作部材37を螺着している。そこで、餌量調整部16は、操作部材37を円弧状ガイド穴38に沿って回して支持棒15を回転すると、クランク35を介して餌排出機構体Aが適宜上下移動し、これによって、排出筒25下端の排出口40の開口量を調節して底皿18へ排出する餌量を調整するようになっている。なお、このとき、排出筒25は、飼料を矩形切欠き26…を通して排出することで、粉状・粒状など粒度の異なる飼料であっても、それに関係なくスムーズに流出させることができる。
【0017】
給水部17は、餌落下パイプ11の外周に一定間隔で給水器42を突設する一方、飼料ホッパ10の円筒部21の外壁面にウォーターコントロール43を取り付け、予め水量を調整してから給水パイプ44を通して給水器42へ送水する構成になっている。そして、仔豚が給水器42を銜えて、その作用杆42aを揺動することによって飲水できるようになっている。
【0018】
底皿18は、中央部を円錐台状に隆起させてあり、飼料が中央部から流動して周辺部へ拡散し、食餌し易いようになっている。仕切板19は、飼料ホッパ10の円錐ガイド部22、餌落下パイプ11、底皿18の内周面に固着し、各給水器42の設置間隔に合わせて周方向に所定間隔をあけて配設する。そして、仕切板19で区画した給餌空間内にて仔豚が争うことなく食餌し、又は個別に給水器42から飲水できるようになっている。
【0019】
さて、上述した構成の図示給餌器では、飼料供給時、開閉蓋20を開けて飼料ホッパ10の円筒部21内に投入する飼料は、順次、円錐ガイド部22、餌落下パイプ11を通って底皿18上へ自然落下して排出筒25の切欠き26…から仔豚へと送給される。このとき、本発明の給餌器では、例えば食餌中に仔豚が鼻や口で触って起動部材13を押すと、それに応じて、吊り棒12を中心として餌排出機構体Aが揺動する。すると同時に、飼料ホッパ10内では、ブリッジ防止手段14の撹拌棒30が、円錐ガイド部22の内壁面22aの近傍でそれに沿って揺動するため、内壁面22a寄りにある凝集飼料は撹拌棒30でかき混ぜられ、内壁面22aに摩擦で付着した飼料群も摩擦抵抗が解かれて流動し(例えば外側から円錐ガイド部22の外壁面を木槌で叩いて付着飼料を叩き落とすのと同様な効果が得られる。)、その結果、飼料は、円錐ガイド部22内の内壁面22a側から、順次、下方の餌落下パイプ11を通って底皿18上へ円滑に落下する。すると、結局、飼料ホッパ10内の飼料は、円錐ガイド部22内でブリッジ状に残留することなく、すべて、下方の底皿18上へと落下し、ブリッジの発生を完全に防止することができる。
【0020】
なお、図示給餌器では、そのように飼料ホッパ10から落下する飼料を排出筒25内から底皿18へ排出するとき、落下飼料は、排出筒25内で放射状に延びる起動部材13で再び撹拌し、流動性を更に保有させた状態で、排出筒25の切欠き26…を通して底皿18へ滞留することなく円滑に排出することができる。
【0021】
ところで、上述した図示実施の形態において、ブリッジ防止手段14を、線状丸棒からなる複数の攪拌棒を用いて逆かさ形に形成したが、本発明に係るブリッジ防止手段は、円錐ガイド部の傾斜に合わせて吊り棒から斜め上向きに延び、円錐ガイド部の内壁面に沿わせて配設し、飼料供給時、吊り棒の回動に連動して揺動すると、それに応じて内壁面寄りにある凝集飼料がかき混ぜられる形状構造のものであれば、上記図示例のものに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一例である家畜用給餌器の内部構造を示す縦断面図である。
【図2】本発明の家畜用給餌器を示す斜視図である。
【図3】本発明の家畜用給餌器に備えた餌排出機構体の分解斜視図である。
【図4】餌排出機構体の組立斜視図である。
【図5】本発明の家畜用給餌器によるブリッジ防止作用を説明する部分縦断面図である。
【図6】従来の家畜用給餌器を示す斜視図である。
【図7】従来の家畜用給餌器を示す縦断面図である。
【図8】他の従来の家畜用給餌器を示す斜視図である。
【図9】他の従来の家畜用給餌器におけるブリッジ防止作用を説明する部分縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
A 餌排出機構体
10 飼料ホッパ
11 餌落下パイプ
12 吊り棒
13 起動部材
14 ブリッジ防止手段
18 底皿
22 円錐ガイド部
30 撹拌棒
31 リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料ホッパの漸次下向きに縮径した円錐ガイド部を通して飼料を下方の底皿へ自然落下させると共に、その底皿上で家畜が起動部材を押すと、その起動部材を下端部に連結した吊り棒に備えるブリッジ防止手段を一体に回動し、そのブリッジ防止手段で前記円錐ガイド部内の飼料を流動させながら落下させて前記底皿へと送給する家畜用給餌器において、
前記ブリッジ防止手段は、
前記円錐ガイド部の傾斜に合わせて前記吊り棒から斜め上向きに延び、前記円錐ガイド部の内壁面に沿わせて配設してなることを特徴とする、家畜用給餌器。
【請求項2】
請求項1に記載の家畜用給餌器において、前記ブリッジ防止手段は、前記円錐ガイド部の傾斜に合わせてそれぞれ前記吊り棒から斜め上向きに延ばし、前記円錐ガイド部の内壁面に沿って逆かさ形に配設する複数の線状の撹拌棒を備え、それら撹拌棒の上端をリングで連結して構成してなることを特徴とする、家畜用給餌器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−167706(P2008−167706A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5256(P2007−5256)
【出願日】平成19年1月13日(2007.1.13)
【出願人】(390032263)株式会社藤井商会 (15)
【Fターム(参考)】