説明

容器、容器のリサイクル方法、及び容器の廃棄物削減方法

【課題】各種容器において、容器を容易に、かつ低コストでリサイクルできる容器のリサイクル方法を提供することにある。
【解決手段】容器6に充填された液体の名称を記載したセキュリティーシール、または液体の情報が記録されたICチップ8を容器6に設けておき、回収した容器6のセキュリティーシールの有効性を判断し、またはICチップ8に記録された情報を読み出す。有効と判断した容器6のセキュリティーシールに記載の液体名称と再充填される液体とに応じて、またはICチップ8に記憶された情報と再充填される液体とに基づいて、容器6を洗浄する必要性を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器、容器のリサイクル方法、及び容器の廃棄物削減方法に係り、例えば産業用液体の輸送用に用いられる小口容器の容器、容器のリサイクル方法、及び容器の廃棄物削減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
〔産業用液体〕
産業用液体とは、様々な事業所において、製造原料や生産設備の添加剤等として使用されている液体物である。可燃性産業用液体とは、消防法上の第4類(特殊引火物,第1石油類,アルコール類,第2石油類,第3石油類,第4石油類,動植物油類)に該当するものである。対して、非可燃性産業用液体とは、流動性食品類、界面活性剤、酸、アルカリ、塩溶液、酸化物質、還元物質、水溶性有機物の水溶液、無機物、アルコール水溶液、水及びそれらの混合物で可燃性産業用液体に該当しないものである。
【0003】
〔容器再利用困難液体〕
容器再利用困難液体とは、当該容器を洗浄再生する為の社会的エネルギーコストが、新品の容器を作るより多くかかるものである。ペンキ、硬化性樹脂、粘着剤等で、有機溶剤等を用いて洗浄が必要であるものや、乾燥、光、熱等の物理的変化により硬化や変質を発生するもの等が該当する場合が多い。
【0004】
〔産業用液体の製品供給形態〕
産業用液体を輸送する場合、1回のロットが500kgを超える場合には、コンテナタンク等の専用容器に詰める他、5tを超える場合には、専用ローリー等を用い、需要者と事業所間で容器の再利用が行われ、運搬車も専用のものが使われる。このため、容器に由来する廃棄物の発生が無い他、廃棄物処理法上の諸問題も発生しない。
しかし、比較的小口の使用に関しては、10kg或いは20kg等の小口容器に産業用液体を詰め、需要者へ供給する形態を取る場合が多い。なお、包装容器リサイクル法に規定する一般消費者向け容器は含まない。
【0005】
〔小口容器〕
(石油缶)
石油缶は、主にブリキ缶、ペール缶等と呼ばれ、主に可燃性液体で且つ金属に対する腐食性の無い産業用液体を移送する為に用いられる。
【0006】
(硬質プラスチック容器)
主にポリエチレン等の樹脂で成型して作られる硬質の容器で、ポリ容器と呼ばれている。一部可燃性液体(灯油等)で使用する場合もあるが、容器自体は可燃性の為、一般的には非可燃性液体に使用する。一部の極性溶剤を除き、ほぼ全ての液体に対しての耐性を持つ。
【0007】
(バッグインボックス)
プラダと呼ばれるプラスチック膜にノズルを付けた容器と、それを保護する為のダンボール箱で構成される液体輸送用容器である。
【0008】
(各種リサイクル容器(リターナブル容器))
硬質プラスチック容器を洗浄用機器で自動洗浄が行える様な様々な工夫を凝らした容器や外ケースと接液膜を別け、接液膜を簡単に交換できる事により、外ケースをリサイクルできる容器等様々な種類のケースが開発使用されている(特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2000−344224号公報
【0010】
〔セキュリティーシール〕
(偽造防止シール)
透明なプラスチックフィルムと有色の粘着剤とで構成され、粘着剤とプラスチックフィルムの間に「無効」や「VOID」等の文字が浮き出る様に、接着性の異なる部分を設けて、剥がした事がわかる事により、偽造を防止するテープである。一般にプラスチック表面に固有の文字や識別記号等を印刷して用いる
【0011】
(剥離困難シール)
紙と粘着剤で構成されるシールで、紙の素材を脆くし、粘着剤の強度を上げる事により、剥離を困難としたものである。表面に文字や記号等を印刷して用いる。
【0012】
(ホログラムシール)
印刷が困難なホログラム画像を通常のシール又は各種セキュリティーシールの文字として用いるものである。
【0013】
〔ICチップ(PFIDタグ)〕
情報記憶機能、通信機能を備えた半導体チップであり、電気磁気的方法、光学的方法等の方法により接触又は非接触で通信機能を通じて情報記憶機能に情報を書き込み、またホストから読み出せるものである。情報のやり取りの際に、情報を暗号化したり、読み出し書込を行う際に暗号を用いる場合には、暗号処理機能を含める他、時間経過等を計る計時機能や、温度、圧力、光量、加速度、静電容量等の物理的変化量を計測するセンサ機能を含める事も可能である。
【0014】
〔静電容量センサ〕
静電容量センサとは、被測定物とプローブ間に生じる静電容量を検出する装置で、 対向する導体が平行平板の場合は近似的に次のような容量検出式で表すことができる。
【0015】
C=ε×S÷D
C:静電容量、ε:電極間の誘電率、S:測定電極の面積、D:電極間の距離
【0016】
気体、液体、及び固体を含め全ての物質には、固有の誘電率εがある為、SとDの値が一定であれば、誘電率の変化から物質の有無や、物質の特定まで可能である。
一般には、真空と物質固有の誘電率を比誘電率といい、代表的な物質の比誘電率は次のとおりである。
空気:1.00059、水:81(温度により変化)、アルコール:16〜31、ポリエチレン:2.3、鉱油:2.0〜2.5。
【0017】
〔廃棄物と有価相当物〕
環整第45号の通達には、「廃棄物とは、占有者が自ら、利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい」とあり、企業においては製品及び製品に順ずる副生物を除き、産業廃棄物であるとみなされる。製品は勿論であるが、副生物に関しても一定の品質基準を満たす事により、有価相当物としての認知を受けられる。
【0018】
〔社会的エネルギーコスト〕
社会的エネルギーコストとは、当該製品を製造又は再生する上で必要なエネルギーについて、直接的に必要な電気・熱エネルギーの他、洗浄水の使用水を利用する為のエネルギーの他、精製・再生・排水処理に係わる薬品・動力・消耗材等を製造・輸送する為のコスト、洗浄溶剤にあっては消耗する溶剤のエネルギーの他、揮発した溶剤を回収処分する為のコスト、廃溶剤を再生する為のコスト、廃溶剤の処分の為のエネルギーコスト等、回収の為の輸送機関におけるエネルギーの使用量をいう。
【0019】
〔リターナブル容器〕
(財)日本環境協会等では、リターナブル容器のエコマーク認定の為のガイドラインとして、以下の点が定められている。
再使用可能:「意図され、設計された製品または包装の特性の一つ。ライフサイクルの中で意図どおりの目的のために何回かの使用ができる特性」であって、「使用済みの製品または包装を回収し、再使用する仕組みが存在する」場合に限られる。
繰り返し使用:使用済みの製品をリターナブル事業者が回収した上での再使用をいう。なお、本認定基準における「平均5回以上の繰り返し使用」は初回使用とリターナブル業者が回収した上での再使用を合わせて平均5回以上繰り返すことを指す。
リターナブル製品:「用語の定義」にいう再使用可能であって、製品または製品の内容物を提供する事業者と、提供を受ける他の事業者または消費者との間を、構築されたシステムに載って、その機能を保ったまま往復または循環する製品をいう。
【0020】
〔容器回収の採算性〕
容器回収にあたっては、経済原理上は新品の容器を使用して廃棄処分する場合と比べて、回収容器の社会的エネルギーコストと、回収の為の人的コストとの合計が上回る事は望ましく無い。しかし、実際には地球温暖化対策等への企業の社会に対する還元として人的コストは除いて採算性の評価が成される場合が多い。また、容器回収を要請する企業において、回収側の社会的エネルギーコストを無視した回収要請については、一定の考察が必要と思われる。即ち、再生やリサイクル技術は、一社が廃棄物を出さなくても、それにより他の企業がより多くの社会的エネルギーコストをかける場合には、より社会的エネルギーコストを必要としない方法を検討するか、敢えてリサイクルを考えずに必要最低限の廃棄物処理も検討する事が望ましい。
【0021】
〔通常の輸送方法〕
宅配便或いは郵パック等とも呼ばれるが、それぞれの輸送会社の配達条件に合致した輸送品の場合に、発送場所から指定場所までの輸送を行うに付き、専用車を用いた輸送等と比べ極めて安価に輸送できる方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、容器は、一般に容器メーカーにより大量に生産され、産業用液体を充填する会社の製造物では無い場合が多い。しかも充填される産業用液体は、同一の会社でも様々な種類がある為、類別が困難で、その使用後の容器の取扱い方法やリサイクル方法も明確で無く、廃棄物とみなされる事は仕方無かった。そのため、容器の回収及び送付等の特別な立法処置が無い限り、廃棄物処理業の許可を得た業者が、自己のルールに従って処理を行う必要があった。
【0023】
リターナブル容器は、特定の会社若しくは業種向けに製作される為、各社固有の容器として回収時に有価相当として合法的に回収できる事から、廃棄物処理法上の問題は無い。
しかし、固有容器を用いる事から、量産効果の上がらない小規模な企業では採用出来ない他、競争原理が働かない事から、容器自体が高価になる等問題点も少なく無い。
また、その様な特殊容器は、他社の容器との混同が無い様に配慮されるのが普通であるが、その企業において複数種類の液体を扱う場合に、種類の判別が困難である為、容器の残液の処理に高度な技術と処理工程に莫大なエネルギー(水,電気,処理剤,処理材の再生コスト等も含む)が必要な場合が少なくない。さらに輸送からリサイクルまでを含めて、単純に容器を需要者にて廃棄物相当として処理した場合の、社会的エネルギーコストが寧ろ高くなってしまう場合も少なく無い。
エコマークの認定においては、「流通および使用・消費時に、製品の付属部品などの廃棄物の排出がワンウェイ容器・包装資材の場合と比較して少ないか、または同等であること。」がリターナブル容器の基準とされているが、洗浄工程における環境負荷についての規定は無い。
【0024】
本発明の目的は、容器を容易に、かつ低コストでリサイクルできる容器のリサイクル方法、容器、及び容器の廃棄物削減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の請求項1に係る容器は、液体が充填される容器であって、充填された前記液体の名称が記載されたセキュリティーシールが貼付されているとともに、前記セキュリティーシールの有効性に応じて回収され、かつ前記セキュリティーシールに記載の液体名称と再充填される液体とに基づいて、回収時の洗浄の必要性が判断されることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項2に係る容器は、液体が充填される容器であって、充填された前記液体の情報が記録されたICチップが設けられているとともに、前記ICチップに記録された情報と再充填される液体とに基づいて、回収時の洗浄の必要性が判断されることを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項3に係る容器は、請求項2に記載の容器において、前記ICチップには、静電容量計測センサが設けられていることを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項4に係る容器のリサイクル方法は、前記容器には、当該容器の内部に充填された液体の種類別に貼付されたセキュリティーシールを設けておき、回収した前記容器のセキュリティーシールの有効性を判断し、有効と判断したセキュリティーシールが貼られた容器について、当該セキュリティーシールに記載の液体名称と再充填される液体とに応じて、前記回収された容器の洗浄の必要性を判断することを特徴とする。
【0029】
本発明の請求項5に係る容器のリサイクル方法は、前記容器には、当該容器の内部に充填された液体の情報が記録されたICチップを設けておき、前記ICチップに記憶された情報と再充填される液体とに基づいて、回収した前記容器の洗浄の必要性を判断することを特徴とする。
【0030】
本発明の請求項6に係る容器のリサイクル方法は、請求項5に記載の容器のリサイクル方法において、前記ICチップに設けられた静電容量計測センサの計測値に基づいて、前記回収した容器の洗浄の必要性を判断することを特徴とする。
【0031】
本発明の請求項7に係る容器の廃棄物削減方法は、前記容器には、当該容器の内部に充填された液体の種類別に貼付されたセキュリティーシール、または当該容器の内部に充填された液体の情報が記録されたICチップを設けておき、前記セキュリティーシール、または前記ICチップの情報に基づいて、回収した前記容器に再充填する液体の種別を判断するとともに、予め定められた使用回数に基づいて、前記回収した容器に容器再利用困難液体を充填するか否かを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
以上において、請求項1および請求項4の発明によれば、容器にセキュリティーシールが貼付され、かつセキュリティーシールには容器に充填された液体の名称が記載されているため、回収業者は、セキュリティーシールが有効であるもののみを回収でき、かつ容易に液体の種別を判別できる。従って、回収業者は、セキュリティーシールに記載の液体名称と再充填する液体名称とを比較することで、容易に洗浄の必要性の判断をできる。すなわち、全ての容器を洗浄する必要が無く、無駄な工程を省略できるため、低コストでリサイクルできる。
【0033】
請求項2および請求項5の発明によれば、容器にICチップを装着することにより、ICチップに、充填された液体の各種情報(液体の名称、充填日、物性データ(密度、pH、粘度等)、重量、製造業者名、販売先名等)を記憶させることができる。回収業者は、容器の回収時にICチップに記憶された情報を読み出すことで、充填された液体と再充填する液体とを容易に比較でき、容器の洗浄の必要性の有無を判断できる。さらに、ICチップには各種情報が記憶されているため、容器の洗浄の必要性の有無だけでなく、容器の洗浄方法についても判断できる。従って、請求項1および請求項4の発明よりも、さらに的確な洗浄方法を判断できるため、無駄な工程を省略でき、低コストでリサイクルできる。
【0034】
請求項3および請求項6の発明によれば、請求項2の発明で装着したICチップに静電容量を計測できるセンサを設けたことにより、静電容量計測センサの計測値によって容器の使用履歴を確認できる。すなわち、使用履歴に基づいて、容易に容器の洗浄の必要性を判断でき、無駄な工程を省略でき、低コストでリサイクルできる。
【0035】
請求項7の発明によれば、回収業者は、セキュリティーシール、またはICチップの情報から充填されていた液体の種別を判断でき、容器の洗浄の必要性を判断できる。また、回収業者は、容器に予め定められた使用回数を参照し、使用回数に基づいて容器再利用困難液体を充填し、使用後の容器は廃棄物として処分できる。従って、本発明によれば、新品の容器に容器再利用困難液体を充填することなく、容器の廃棄物を削減でき、大幅にコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、後述する第2実施形態以降で、以下に説明する第1実施形態での構成と同じか、または、同様な機能を有する構成には同一符号を付し、その説明を簡単にあるいは省略する。
【0037】
〔第1実施形態〕
図1から図3には、本発明に係る容器のリサイクル方法の第1実施形態が示されている。図1は、プラダ1、エンベロープ4、バッグインボックス5を示す図である。
図1において、プラダ1は、厚手のポリエチレンフィルムを袋状に加工した容器である。プラダ1の上部には、液体の注ぎ口2が一体に設けられ、また側面には偽造防止シール3が貼付されている。また、図1に示すバッグインボックス5は、外箱であるエンベロープ4のダンボールケースと、プラダ1とから構成される。エンベロープ4内にプラダ1を収納すると、バッグインボックス5の状態になる。
【0038】
図2は、偽造防止シール3の態様を示す図である。偽造防止シール3は、プラダ1に貼付されているものである。偽造防止シール3には、プラダ1に充填されている液体の種別が記載されている。プラダ1から偽造防止シール3を剥がした場合、偽造防止シール3には特殊な粘着剤が使用されているため、プラダ1に符号3Aに示すような白抜きで「VOID」の文字が表示される。
この際、剥がした偽造防止シール3には、符号3Bに示すように「VOID」の文字が表示され、さらに、粘着効果も失われるため、別の容器に偽造防止シール3Bを貼付することはできない。
【0039】
図3は、産業用液体の製品供給及びプラダ1容器回収のフローを示している。これに従って、偽造防止シール3を貼付した容器のリサイクル方法について説明する。
まず、プラダ1に産業用液体を充填し(S1)、ダンボールであるエンベロープ4へ収納する(S2)。バッグインボックス5として需要者へ出荷し(S3)、液体が利用され(S4)、プラダ1内が空になると(S5)、需要者はエンベロープ4を古紙としてマテリアルリサイクルする(S6)。空になったプラダ1については、折り畳み保管する(S7)。
【0040】
その後、回収業者は、プラダ1に貼付された偽造防止シール3が図2に示す符号3の状態であるかどうかの有効性をチェックする(S8)。そして、偽造防止シール3が有効で無い場合は、プラダ1を廃棄する(S9)。また、偽造防止シール3が有効な場合は、プラダ1を回収する(S10)。回収後、回収業者は、プラダ1に漏れや傷などがあるかについて、検品を実施する(S11)。漏れや傷がある場合には、プラダ1をポリエチレン再生原料としてマテリアルリサイクルする(S12)。漏れや傷などが無い場合には、回収業者は、回収されたプラダ1に充填する液体と過去に充填されていた液体との種別を比較して、プラダ1を洗浄するか否かの判断を行う(S13)。種別が同一である場合は、洗浄しないと判断し、再度プラダ1に液体を充填する(S1)。
反対に、種別が異なる場合は、回収業者は洗浄すると判断し、洗浄する(S14)。洗浄により偽造防止シール3の破損、また剥がれなどないかをチェックし、問題がある場合には貼り替え作業をする(S15)。その後、プラダ1に液体を充填し(S1)、この図3に示すフローを繰り返すことになる。
【0041】
以上により、偽造防止シール3を容器貼付することで、容器の回収業者は、プラダ1に充填された液体の種別を容器に基づいて判別することができ、さらに、偽造防止シール3には特殊な粘着剤を使用しているので、有効な偽造防止シール3であるかについても容易に判別できる。すなわち、回収業者は、偽造防止シール3の状態が図2に示す符号3の状態(有効な状態)のみのプラダ1を再利用、またはマテリアルリサイクルのために回収した後、回収したプラダ1に充填する液体と過去に充填されていた液体との種別が同一であるか、非同一であるかに応じて洗浄することになる。また、洗浄する際にも液体の種別を判別できるため適切な洗浄を行うことができる。従って、すべての容器を洗浄するなどの無駄な工程を必要とせず低コストで、かつ容易にプラダ1のリサイクルを行うことができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
図4から図6には、本発明に係る容器のリサイクル方法の第2実施形態が示されている。図4は、ポリエチレン製ハード容器6を示す図である。ポリエチレン製ハード容器6の上部には、液体の出入口2が設けられている。また、ポリエチレン製ハード容器6の側面には、ICチップ8を組み込んだセキュリティーカード7が、熱融着等の方法により容易に剥がすことの出来ない状態に装着されている。
【0043】
図5は、ICチップを組み込んだセキュリティーカード7を示す図である。セキュリティーカード7には、液体名が記載され、セキュリティーカード7の下部にICチップ8と、ホログラムシール9とが設けられている。
ICチップ8は、情報の読み出し、書込機能を有しており、1Mbyte程度の情報を蓄積可能である。ICチップ8には、液体の情報である液体の名称、充填日、物性データ(密度、pH、粘度等)、重量、製造業者名、販売先名等の各種情報が記録されている。
ホログラムシール9は、印刷が困難なホログラム画像をシールに用いたものである。
【0044】
図6は、産業用液体の製品供給及びポリエチレン製ハード容器6回収のフローを示している。これに従って、ICチップ付セキュリティーカード7を装着した容器のリサイクル方法について説明する。
【0045】
まず、製造業者は、ポリエチレン製ハード容器6にICチップ付セキュリティーカード7を装着し(S21)、液体を充填する際、ポリエチレン製ハード容器6が新品であるかを確認する(S22)。
ポリエチレン製ハード容器6が新品で無い場合、製造業者は、ICチップ8からポリエチレン製ハード容器6の使用履歴のデータを読み出し(S23)、過去に充填されていた液体の種別が、今回充填する液体の種別と同一であるかを調べる(S24)。液体の種別が同一である場合は、液体を充填する(S25)。液体を充填した場合には、ICチップ8に各種情報を書き込む(S26)。
反対に、S22においてポリエチレン製ハード容器6が新品の場合は、そのまま液体を充填し(S25)、ICチップ8に各種データを書き込む(S26)。
【0046】
製造業者は、ポリエチレン製ハード容器6に液体を充填すると、販売先に出荷し(S27)、需要者は液体を使用する(S28)。使用すると、回収業者は、ポリエチレン製ハード容器6を回収する(S29)。その後、ICチップ8に記録されている液体の名称等のデータを読み出し、特に製品に使用期限が設定されている場合において、前回の充填時から再充填までの期間が、その使用期限内であるかどうかを判断する(S30)。使用期限内の場合には、ICチップ8の履歴データ(ポリエチレン製ハード容器6の使用回数など)を更新する(S34)。そして、食品や空気で変質するものを除き、そのまま液体を充填する(S25)。
【0047】
S24、またはS30において、回収業者は、過去に充填されていた液体の種別が、今回充填する液体の種別と異なるとき、または使用期限を経過しているときは、ポリエチレン製ハード容器6を検品する(S31)。検品の結果、漏れや傷などがある場合には、ポリエチレン製ハード容器6をマテリアルリサイクルへの工程に送る(S32)。反対に、漏れや傷などが無い場合は、容器を洗浄する(S33)。洗浄後、ICチップ8の履歴データ(ポリエチレン製ハード容器6の使用回数など)を更新する(S34)。その後、液体を充填する(S25)。
【0048】
以上により、ICチップ8を使用し、ICチップ8に液体の各種情報のデータを記憶しておくことで、回収業者は、このデータを読み出すだけで、容器の使用履歴等の情報を知ることができる。したがって、第1実施形態での偽造防止シール3を使用するよりも回収業者は、ICチップ8からより多くの情報を取得できるため、洗浄すべきか否かの判断や、洗浄する際にも適切な洗浄をより的確に行うことができる。よって、無駄な工程を必要とせず、より低コストで、かつ容易にポリエチレン製ハード容器6のリサイクルを行うことができる。
【0049】
〔第3実施形態〕
図7、図8には、本発明に係る容器のリサイクル方法の第3実施形態が示されている。図7は、第2実施形態において用いられるICチップ8に静電容量を計測するセンサを設けた図である。図8は、使用状況に応じた静電容量の変化を示した図である。
本実施形態では、第2実施形態の構成に静電容量を計測するセンサ10を設けたことで、静電容量の変化に応じて、ポリエチレン製ハード容器6の使用状況を把握できる。
【0050】
静電容量を計測する事により、図8に示すように静電容量の値に従って、「製品充填」、「製品使用」、「容器回収」、「容器洗浄」、「不正使用」といった使用状況を把握できる。つまり、空気と水溶液等の液体物の誘電率が異なる為、静電容量の値はポリエチレン製ハード容器6に液体が充填されている間は、高い値を示す。しかし、ポリエチレン製ハード容器6が空になれば低い値を示す。液体が充填された時間が、製造業者の製造時間以外であれば、それは不正利用であると見なす事ができる。
不正利用がある場合は、どのような液体が充填されていたか不明であるため、このような危険を回避することができる。よって、不正なくポリエチレン製ハード容器6のリサイクルを行うことができる。
【0051】
〔第4実施形態〕
第4実施形態では、回収業者は、第1実施形態〜第3実施形態においてのプラダ1、またはポリエチレン製ハード容器6を回収した際に、偽造防止シール3から液体名称の情報を、ICチップ8から過去に充填されていた液体の各種情報を読み出す。プラダ1の使用回数等については、逐一回収業者によって、使用記録データとして記録されており、またポリエチレン製ハード容器6の使用回数については、ICチップ8に記録されている。したがって、回収業者はプラダ1、またはポリエチレン製ハード容器6の使用回数に応じて容器再利用困難液体を充填する時期を判断する。
【0052】
例えば、容器の使用回数の1回目では、純水やエタノール等の極めて不純物が少なく、残液の劣化も問題にならないものを充填し、2回目ではジュース類等の食品容器として使用し、3回目では工業薬品を充填した後、4回目では容器再利用困難液体を充填することにより、同一容器を4回リサイクルした後に、容器を廃棄物として処分する事になる。
【0053】
以上により、新品容器に容器再利用困難液体を用いる場合に比べて、廃棄物量を大幅に減少できる。容器の何回目の使用に容器再利用困難液体を充填するかは、その容器のリサイクルの平均寿命回数で判断すれば良く、不良品が出ない範囲で、できるだけ数多くリサイクルを行い、容器再利用困難液体容器として用いることができる。したがって、リサイクルコストを削減できるため、本発明の効果を奏する。
【0054】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成などを含み、以下に示すような変形なども本発明に含まれるものである。
第1実施形態において、偽造防止シール3に商品名の他、バーコードリーダー等の装置により読み取り可能情報を印刷することにより、回収個数の管理や誤った回収を防止することができる。
【0055】
また、第2実施形態において、ICチップ8に、製品の使用期限を経過している場合、容器を洗浄するか、またはマテリアルリサイクルの工程に送るかの情報を記録すると、回収に容易に分類できる。
【0056】
また、第3実施形態において、図8において静電容量が上昇した箇所の理由は、正規に水洗いを実施した場合も想定される。その判別を行うために、ICチップ8内に超音波発信器と受信器、または電波発信器と受信器、または赤外線発生器と受信器等を設け、受信した周波数が、その物質の特性により変化するため、液体の種別を判別できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、各種の容器に好適に利用できる。
〔一般容器リサイクル法〕
一般消費者向け商品の容器は、容器リサイクル法により、リサイクルの為のコストを商品に上乗せする形で、リサイクルが行われるケースが殆どで、良くてもマテリアルリサイクルレベルで、殆どは燃焼させる事に課題の多い廃棄物固形燃料用の原料に留まっている。
【0058】
〔産業廃棄物リサイクル〕
産業用では、コンテナタンクやタンクローリーなどは、古くから液体輸送のコストダウンの為に使われている環境負荷の少ないリサイクル方法であるが、それよりも少ない量の液体の場合には、一部の特殊なリサイクル容器を除いては、ほぼ全量廃棄物扱いとして処分されていた。
本発明は、従来廃棄物となっていたこれら汎用容器を、もっとも環境負荷の少ないリユースとして活用できる為、経済的にも環境面でも産業上有効な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラダとエンベロープとバッグインボックスとを示す図。
【図2】本発明の第1実施形態に係るセキュリティーシールの態様を示す図。
【図3】前記第1実施形態に係る製品供給及び容器回収のフローチャート。
【図4】本発明の第2実施形態〜第4実施形態に係る容器を示す図。
【図5】前記第2実施形態でのICチップを示す図。
【図6】前記第2実施形態に係る製品供給及び容器回収のフローチャート。
【図7】本発明の第3実施形態でのICチップに静電容量センサを設けた図。
【図8】前記第3実施形態での静電容量の変化を示した図。
【符号の説明】
【0060】
1…容器であるプラダ、2…注ぎ口、3…セキュリティーシールである偽造防止シール、4…エンベロープ、5…バッグインボックス、6…容器であるポリエチレン製ハード容器、7…セキュリティーカード、8…ICチップ、9…セキュリティーシールであるホログラムシール、10…静電容量計測センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填される容器であって、
充填された前記液体の名称が記載されたセキュリティーシールが貼付されているととも
に、前記セキュリティーシールの有効性に応じて回収され、かつ前記セキュリティーシー
ルに記載の液体名称と再充填される液体とに基づいて、回収時の洗浄の必要性が判断され

ことを特徴とする容器。
【請求項2】
液体が充填される容器であって、
充填された前記液体の情報が記録されたICチップが設けられているとともに、前記I
Cチップに記録された情報と再充填される液体とに基づいて、回収時の洗浄の必要性が判
断される
ことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項2に記載の容器において、
前記ICチップには、静電容量計測センサが設けられている
ことを特徴とする容器。
【請求項4】
容器のリサイクル方法であって、
前記容器には、当該容器の内部に充填された液体の種類別に貼付されたセキュリティーシールを設けておき、回収した前記容器のセキュリティーシールの有効性を判断し、有効と判断したセキュリティーシールが貼られた容器について、当該セキュリティーシールに記載の液体名称と再充填される液体とに応じて、前記回収された容器の洗浄の必要性を判断する
ことを特徴とする容器のリサイクル方法。
【請求項5】
容器のリサイクル方法であって、
前記容器には、当該容器の内部に充填された液体の情報が記録されたICチップを設けておき、前記ICチップに記憶された情報と再充填される液体とに基づいて、回収した前記容器の洗浄の必要性を判断する
ことを特徴とする容器のリサイクル方法。
【請求項6】
請求項5に記載の容器のリサイクル方法において、
前記ICチップに設けられた静電容量計測センサの計測値に基づいて、前記回収した容器の洗浄の必要性を判断する
ことを特徴とする容器のリサイクル方法。
【請求項7】
容器の廃棄物削減方法であって、
前記容器には、当該容器の内部に充填された液体の種類別に貼付されたセキュリティーシール、または当該容器の内部に充填された液体の情報が記録されたICチップを設けておき、前記セキュリティーシール、または前記ICチップの情報に基づいて、回収した前記容器に再充填する液体の種別を判断するとともに、予め定められた使用回数に基づいて、前記回収した容器に容器再利用困難液体を充填するか否かを判断する
ことを特徴とする容器の廃棄物削減方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−273611(P2008−273611A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122337(P2007−122337)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(592029289)株式会社関口 (4)
【Fターム(参考)】