説明

容器の蓋体と、それを使用する包装容器

【課題】処理能率を向上させる。
【解決手段】キャップ20と、リング状のスペーサ30と、円形のインナシール41とを組み合わせ、インナシール41は、スペーサ30とともにキャップ20を容器10の口部12に装着して容器の口部12上にセットし、口部12の上端面、スペーサ30の下面の双方に接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気密性に優れている上、開封保証機能を有するインナシール付きの容器の蓋体と、それを使用する包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の薬剤や、インスタントコーヒーなどの乾燥を要する商品は、気密性の容器に収納し、インナシールを介して容器の口部をシールする。インナシールは、たとえばアルミニウム箔とプラスチックフィルムとのラミネート材であって、表面のシーラント層を介して容器の口部に接着することにより、良好な気密性を実現することができる上、開封時に容器の口部から剥離して除去する必要があるから、開封保証機能をも併せて実現可能である。
【0003】
一方、このようなインナシールは、容器の口部から剥離すると、容器の口部にシーラント層が部分的に残留し、口部の上端面が十分な平滑面に復帰しないため、キャップを再装着しても、気密性が不十分になることが少なくない。そこで、容器の口部に嵌め込んでシールするインナリングをキャップの天面に形成し、インナリングによる再封止を採用することが知られている(特許文献1)。
【0004】
すなわち、容器の口部にインナシールを接着した上、キャップのインナリングの手前側にダミーシールを内装して容器の口部に装着する。キャップを外すと、キャップ側のダミーシールが容器の口部のインナシール上に移行するので、ダミーシールとインナシールとを容器の口部から一挙に剥離して容器を開封する。開封後は、キャップのインナリングを利用して容器を再封止する。ダミーシールは、キャップを装着する際に、キャップ側のインナリングが容器側のインナシールを損傷させないように保護する他、インナリングをバージンに保つとともに、インナシールの気密性を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−56319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来技術によるときは、容器の口部は、容器側のインナシール、キャップ側のダミーシールを介して2重にシールされるから、生産工程において、キャップの装着に先き立ってインナシールの接着工程が別の間欠工程として必要であり、高い処理能率が実現し難いという問題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、リング状のスペーサを介してインナシールをキャップ側に保持することによって、キャップの装着工程につづくインナシールの接着工程以降を連続工程として処理能率を向上させることができる容器の蓋体と、それを使用する包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためのこの出願に係る第1発明(請求項1に係る発明をいう、以下同じ)の構成は、容器の口部に嵌め込んでシールするインナリング付きのキャップと、キャップに着脱可能に内装するリング状のスペーサと、容器の口部の上端面の外径より大径であり、スペーサの下面側に保持するインナシールとを備えてなり、インナシールは、キャップを容器の口部に装着してスペーサとともに容器の口部上にセットし、容器の口部の上端面、スペーサの下面に接着してスペーサ側の接着力を容器側の接着力より大きくすることをその要旨とする。
【0009】
なお、スペーサは、外周に沿って垂設する保持部を介してインナシールを保持することができる。
【0010】
また、スペーサは、内周に沿って配列する複数の上向きの係合片をインナリングの外周に着脱可能に係合させることができ、キャップは、スペーサ、インナシールとともに容器の口部に装着するとき、係合片の上端とスペーサの外周部とを下向きに押圧することができる。
【0011】
第2発明(請求項5に係る発明をいう、以下同じ)の構成は、容器と、容器の口部に装着する第1発明に係る容器の蓋体とからなることをその要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
かかる第1発明の構成によるときは、インナシールは、スペーサを介してキャップに内装され、キャップを容器の口部に装着して口部上にセットし、容器の口部の上端面とスペーサの下面との双方に接着して容器の口部を気密にシールすることができる。容器を開封するときは、キャップを容器の口部から外してスペーサとインナシールとを容器の口部上に露出させ、スペーサとともにインナシールを口部から剥離して除去する。なお、インナシールは、容器の口部、スペーサの下面の双方に接着されており、スペーサは、キャップに対して着脱可能であるため、開封のためにキャップを外すと、スペーサは、インナシールとともに容器の口部側に残る。また、インナシールは、スペーサ側の接着力が容器側の接着力より大きいため、スペーサの外周部を摘み代として、容器の口部から容易に剥離することができる。開封後の容器の口部は、キャップのインナリングを嵌め込むことにより、キャップを介して再封止可能である。
【0013】
インナシールは、たとえば電磁誘導加熱により容器の口部とスペーサとの双方に一挙に熱接着する。そこで、インナシールは、たとえばアルミニウム箔の両面にそれぞれ補強用のPET層とLDPEなどの熱可塑性のシーラント層とを積層して形成する。キャップの装着工程につづくインナシールの接着工程以降は、完全な連続工程とすることができ、処理能率の向上を図ることができる。ただし、インナシールは、あらかじめスペーサの下面側に接着した状態でキャップに内装してもよく、最終的に、スペーサ側、容器側の双方に接着して容器の口部をシールできればよい。
【0014】
スペーサは、外周に垂設する保持部を介してインナシールを保持することにより、インナシールを容器の口部上に正しく確実にセットすることができる。また、スペーサは、内周に沿って配列する係合片をインナリングの外周に弾発的に係合させることにより、キャップに対して着脱可能に連結して内装することができる。さらに、キャップは、スペーサの内周の係合片の上端と外周部とを同時に下向きに押圧することにより、スペーサの傾きを防止し、スペーサの下面側のインナシールを容器の口部の上端面に正しく均一に密着させることができる。
【0015】
第2発明の構成によるときは、容器と、容器の口部に装着する第1発明に係る蓋体とを組み合わせることにより、第1発明の効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】全体構成分解斜視図
【図2】全体構成縦半断面図
【図3】図2の要部拡大図
【図4】スペーサの構成説明図
【図5】使用状態説明図
【図6】使用状態を示す図2相当図
【図7】使用状態を示す図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0018】
包装容器は、容器10に対し、キャップ20、リング状のスペーサ30、円形のインナシール41を備える容器の蓋体を組み合わせてなる(図1、図2)。
【0019】
容器10は、胴部11に上向きの口部12を形成するプラスチック容器である。口部12の外周には、キャップ20用の雄ねじ13が形成されており、口部12の上端には、口部12の上端面を形成する外フランジ14が形成されている。外フランジ14の下側は、斜面16を介し、雄ねじ13を形成する大径の円筒部分に連続している。また、雄ねじ13の下側は、キャップ20の最大外径とほぼ同径の環状リブ15を介して胴部11に連続している。
【0020】
キャップ20の外周には、滑り止め用のローレット21、21…が形成されている。キャップ20の内周には、容器10側の雄ねじ13に適合する雌ねじ22が形成されている。また、キャップ20の天面には、小径のインナリング23、大径のシールリング24が同心円状に形成されている。インナリング23は、シールリング24よりも長く垂下し、中間部において外側に滑らかに湾曲するとともに下半部が滑らかに薄くなっている(図3)。インナリング23の中間部外周には、外向きに膨出する環状の係合突条23aが形成されている。なお、係合突条23aを含むインナリング23の最大外径は、容器10の口部12の内径に適合している。シールリング24は、単純な断面二等辺三角形に形成されている。
【0021】
スペーサ30は、輪形のフランジ板31の内周に沿って上向きの係合片32、32…を配列し(図1、図4)、フランジ板31の外周に沿ってリング状の保持部33を垂設して形成されている。ただし、図4(A)、(B)は、それぞれスペーサ30の上面図、図4(A)のX−X線矢視相当拡大断面図である。
【0022】
係合片32、32…は、それぞれフランジ板31の内周に沿って円弧状に湾曲しており、全体として円形に配列されている。また、各係合片32の内側上部には、横長の係合突部32aが形成されている。一方、保持部33の内周には、内側に膨出する環状の係合突条33aが形成されている。なお、保持部33は、リング状に連続させるに代えて、係合片32、32…に倣って複数に分割してもよい。
【0023】
円形のインナシール41は、容器10の口部12の上端面の外径より大径に形成されている(図1、図3)。また、スペーサ30の外周の保持部33の内径は、インナシール41の径に適合しており、したがって、インナシール41は、保持部33の係合突条33aを介し、保持部33の上部に収納してスペーサ30の下面側に保持することができる。
【0024】
一方、スペーサ30の内周の係合片32、32…は、キャップ20のインナリング23の外径に適合するように配列されている。そこで、スペーサ30は、係合片32、32…をインナリング23の外側に嵌合させ、係合片32、32…の係合突部32a、32a…をインナリング23の係合突条23aに弾発的に係合させることにより、キャップ20に着脱可能に内装することができる。なお、キャップ20内のスペーサ30は、各係合片32の上端がインナリング23、シールリング24の間に進入してキャップ20の天面に当接するとともに、フランジ板31の外周部がキャップ20の内周上部の下向きの段部25に対して下側から係合することにより、キャップ20内に正しく位置決めされる。そこで、インナシール41を保持しているスペーサ30をキャップ20に内装し、キャップ20、スペーサ30、インナシール41を一体に組み立てて容器の蓋体とする。
【0025】
容器10に図示しない内容物を収納し、スペーサ30、インナシール41とともにキャップ20を口部12に装着すると、インナシール41を口部12上に正しくセットすることができる(図2、図3)。このときのキャップ20は、スペーサ30の上向きの係合片32、32…の上端を天面により下向きに押圧し、段部25によりスペーサ30の外周部を下向きに押圧することにより、雄ねじ13、雌ねじ22によるねじ込み限が規制され、インナシール41を口部12の上端面とスペーサ30の下面との間に挟み込んで両者に均一に密着させる。なお、キャップ20のインナリング23は、口部12上のインナシール41に接触しない長さに形成されている。
【0026】
つづいて、図示しない電磁誘導加熱機の加熱領域内に容器10を通過させて電磁誘導加熱すると、インナシール41内のアルミニウム箔が加熱され、インナシール41を容器10の口部12の上端面、スペーサ30の下面の双方に熱接着して容器10を完全な気密状態にシールすることができる。また、このとき、インナシール41は、口部12の上端面に対する接触面積よりスペーサ30の下面に対する接触面積が大きいため、容器10側の接着力よりスペーサ30側の接着力を大きくすることができる。
【0027】
容器10を開封するときは、容器10の口部12からキャップ20を取り外す。このとき、キャップ20のインナリング23とスペーサ30の係合片32、32…との係合が外れ、スペーサ30、インナシール41が容器10側に残留する。そこで、口部12の上端において、外フランジ14の外側に垂下するスペーサ30の外周の保持部33に手指を掛けてスペーサ30を上方にめくり上げると(図5)、口部12の上端面からインナシール41を円滑に剥離して口部12を開封することができる。インナシール41は、容器10側よりスペーサ30側に大きな接着力で接着されているからである。なお、このようにして口部12から剥離したインナシール41、スペーサ30は、口部12から除去し、そのまま廃棄すればよい。
【0028】
容器10内の内容物を取り出したら、キャップ20を口部12に装着して容器10を再封止する(図6、図7)。このとき、キャップ20のインナリング23は、容器10の口部12に嵌め込まれて口部12を気密にシールし、キャップ20のシールリング24は、口部12の上端面に当接し、キャップ20のねじ込み限を規制するとともに、口部12の気密性を補助する。その後、容器10は、キャップ20を取り外し、再装着することにより、開封、再封止を繰り返すことができる。
【0029】
なお、容器10の口部12は、上端内面側に面取り12aが施されている(図3)。そこで、インナシール41を口部12の上端面から剥離するとき、インナシール41のシーラント層が口部12の上端面に残留しても、口部12の内径に影響を及ぼすおそれがない。したがって、キャップ20のインナリング23は、口部12の内面に常に正しく密着し(図7)、キャップ20による再封止時の気密性も十分良好である。
【0030】
以上の説明において、容器10はHDPEまたはPP、PEの混合材など、キャップ20はPPまたはHDPEなど、スペーサ30はLDPEなどのプラスチック材料により、それぞれ一体成形する。また、インナシール41は、スペーサ30に対する接着力を容器10に対する接着力より大きくするために、それぞれに対する接触面積を異ならせるだけでなく、それぞれに接触するシーラント層の材質を調節することも可能である。
【0031】
なお、インナシール41は、保持部33を介して保持するに代えて、スペーサ30の下面にあらかじめ接着して保持した上、スペーサ30とともにキャップ20に内装してもよい。すなわち、インナシール41は、容器10側、スペーサ30側を同時に接着してもよく、スペーサ30側を先きに接着し、容器10側を後に接着してもよい。また、インナシール41の接着は、電磁誘導加熱に代えて、誘電加熱、マイクロ波加熱などの高周波加熱によってもよく、各種の接着剤によってもよい。さらに、インナシール41は、気密性、接着性が必要十分である限り、任意の構成を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、錠剤やカプセル剤などの医薬品や医薬部外品などの他、保健機能食品などを含む任意の商品を気密に収納する用途に広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10…容器
12…口部
20…キャップ
23…インナリング
30…スペーサ
32…係合片
33…保持部
41…インナシール

特許出願人 伸晃化学株式会社

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に嵌め込んでシールするインナリング付きのキャップと、該キャップに着脱可能に内装するリング状のスペーサと、容器の口部の上端面の外径より大径であり、前記スペーサの下面側に保持するインナシールとを備えてなり、該インナシールは、前記キャップを容器の口部に装着して前記スペーサとともに容器の口部上にセットし、容器の口部の上端面、前記スペーサの下面に接着して前記スペーサ側の接着力を容器側の接着力より大きくすることを特徴とする容器の蓋体。
【請求項2】
前記スペーサは、外周に沿って垂設する保持部を介して前記インナシールを保持することを特徴とする請求項1記載の容器の蓋体。
【請求項3】
前記スペーサは、内周に沿って配列する複数の上向きの係合片を前記インナリングの外周に着脱可能に係合させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の容器の蓋体。
【請求項4】
前記キャップは、前記スペーサ、インナシールとともに容器の口部に装着するとき、前記係合片の上端と前記スペーサの外周部とを下向きに押圧することを特徴とする請求項3記載の容器の蓋体。
【請求項5】
容器と、該容器の口部に装着する請求項1ないし請求項4のいずれか記載の容器の蓋体とからなる包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−246007(P2012−246007A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118757(P2011−118757)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】