説明

容器の蓋体

【課題】構造が簡単で、かつ、組立が容易な蓋体であって、蓋板をワンタッチで開閉でき、液切れのよい塗料、その他高粘度液容器の蓋体を提供すること。
【解決手段】蓋体本体4に注出口12を備え、蓋体本体の上面に蓋板部材6をスライド自在に装着した容器の蓋体2であって、蓋体本体4と蓋板部材6との間にバネ部材8を組み付け、バネ部材8は蓋板部材6を蓋体本体4の注出口12を閉鎖するように付勢し、蓋体本体4から係合片16を延設させ、蓋板部材6から係合部13を垂下させ、係合部13は係合片16と係合し蓋板部材6を係止して注出口12を開放した状態に保持させ、蓋板部材6から押圧片5を押圧可能に垂下させ、押圧片5は係合片16を押下げ該係合片16と係合部13との係合を解除可能として容器の蓋体を構成した。これにより開閉操作が容易な容器の蓋体を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の蓋体、とくに液切れと使い勝手を向上させたスライド式蓋板を備えた塗料、その他高粘度液容器用の蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料容器の蓋体には、特公平7−121351号公報に記載されている蓋体が従来より知られている。この蓋体は、注ぎ口を開閉する摺動自在な滑り板の後端に操作てこを連結し、板ばねを介して滑り板を固定用心鉄にねじ止めし、板ばねの耳と滑り板後方の切出し部分との間につる巻ばねを弾性力をもって取り付け、操作てこを回動させることにより、滑り板の前端部を注ぎ口の縁上に押さえつけながら摺動させるようにした、撹拌機を装着した塗料容器の蓋体である。
【特許文献1】特公平7−121351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来技術は、撹拌機を装着するため、設計上の制約を受けルことが多く蓋体が複雑な構成になるという問題があった。
【0004】
滑り板は、ばね板を介して固定用心鉄に取り付けられ、またその後方は、案内筒の垂直壁の上面で支持されているだけであるので、安定して確実に支持されないという問題点があった。
【0005】
板ばねの耳につる巻ばねの一端を連結し、注ぎ口に滑り板を押圧させているため、滑り板の駆動に二つのばねを必要とし、部品数が増え、構造が複雑になっていた。
【0006】
凹所を軸心として操作てこを回動させて滑り板を開閉操作しているので、折曲部、ひいては滑り板を時計方向に回転させるモーメントにより滑り板の前端部が浮き上がるよう作用してしまうことがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決することを課題として、構造が簡単で、かつ、組立が容易な蓋体であって、蓋板をワンタッチで開閉でき、液切れのよい塗料、その他高粘度液容器の蓋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、容器の蓋体を次のように構成した。
【0009】
すなわち、蓋体本体に注出口を備え、蓋体本体の上面に蓋板部材をスライド自在に装着した容器の蓋体であって、蓋体本体と蓋板部材との間にバネ部材を組み付け、バネ部材は蓋板部材を蓋体本体の注出口を閉鎖するように付勢し、蓋体本体から係合片を延設させ、蓋板部材から係合部を垂下させ、係合部は係合片と係合し蓋板部材を係止して注出口を開放した状態に保持させ、蓋板部材から押圧片を押圧可能に垂下させ、押圧片は係合片を押下げ該係合片と係合部との係合を解除可能として容器の蓋体を構成した。
【0010】
また蓋板部材に押下可能な押圧部を形成し、押圧部の揺動端に押圧片を配設し、かつ押圧片を係合部の直近に係合部と平行に設けた。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蓋体は、上記のように構成されているから、次の効果を奏する。
【0012】
前方に注出口を備えた蓋体本体の上面に、注出口を開閉するようスライドする蓋板部材を設け、蓋体本体と蓋板部材との間に注出口を閉鎖する方向に蓋板部材を付勢するバネ部材を取り付け、蓋板部材を後方に引き下げると係合片と係合部とが係合して注出口が開放された状態に保持され、蓋板部材の上面に押圧可能に設けられた押圧片を押下すると係合片と係合部との係合が解除され、バネ部材により蓋板部材が注出口を閉じるので、蓋板部材の開閉操作が極めて簡単にでき、内容液を容器内から容易に注出できる。
【0013】
また押圧片を押下げるだけでバネ部材の作用によって蓋板部材がスライドして注出口を閉じるようにしているから、閉鎖時の液切れがよくなり、注出口周辺が塗料などで汚れることがない。
【0014】
蓋板部材が蓋体本体の側面にスライド可能に噛み合わされているので、蓋板部材が注出口に圧接し、注出口の密封性が向上される。
【0015】
押圧片と係合部が直近に互いに平行に形成されているので、係合片を正確に押下して係合部との係合を解除させ、蓋板部材を確実に閉鎖できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に蓋体を示す。蓋体2は、蓋体本体4と、蓋板部材6と、ばね部材8からなり、容器30の口筒部32に取付口部10がネジ嵌合して容器30に取り付けてある。
【0017】
蓋体本体4は、取付口部10を下部に備え、取付口部10に連通した注出口12を上部に、前方に寄せて備え、箱型の握り部14が注出口12の後方に形成されている。握り部14の内部には、後方端に上方に突出した係合突部17を備えた係合片16が適度な弾性をもって後方に延びている。握り部14の後方の縦壁板20にはバネ部材8の端部を止める係合凸部9が設けてある。
【0018】
注出口12の内部には、容器30から注出された内容液と置換する空気を容器30内に導入させる空気管15が設けられている。
【0019】
蓋板部材6は左右両側に設けられた側壁板7が、蓋体本体4の上面端部に前後方向にスライド可能に組み付けられている。側壁板7の後方にはこの部分を掴んだときの指かかりをよくする凸リブ22が複数形成してある。蓋板部材6には、下方に押圧可能に弾性変形する押圧部3が切欠線18により傘状に形成してあり、押圧部3の揺動端側下面に下方に向けて押圧片5が設けられている。
【0020】
また蓋板部材6の押圧部3の後方には窓部11が形成してあり、窓部11の前端に押圧片5と平行に下方に向けて延びる係合部13が設けられている。係合部13は、蓋板部材6を後方に引き下げると係合片16の係合突部17に係合する位置にまで下端が延びており、一方押圧片5は係合部13より短く、通常の押圧しない状態では下端が係合片16の上面の直上に位置している。
【0021】
バネ部材8はつるまきバネで、握り部14の内部で一方の端部が係合凸部9にかかり、他方の端部が係合部13の側面に形成された係合凸部19にかかり、蓋板部材6を注出口12が閉鎖される方向に常に付勢している。
【0022】
次に、蓋体2の使用方法について説明する。
【0023】
蓋体2の取付口部10を容器30の口筒部32に、握り部14の下部が容器30の肩部33に当接するまで螺合させる。
【0024】
蓋板部材6はバネ部材8の付勢により前方に移動され、図1に示すように注出口12を閉鎖している。更に側壁板7が図4に示すように蓋体本体4の側面に組み付けられていることから蓋板部材6が注出口12の上部周縁に密着し、注出口12は蓋板部材6により密閉されている。
【0025】
蓋板部材6の後部を掴み蓋板部材6を後方に引き下げると、バネ部材8を縮めながら注出口12が徐々に開放される。蓋板部材6をスライド後方端まで引き下げると、係合部13の下端が係合片16の係合突部17に係合して蓋板部材6が図2の状態に保持され、注出口12が完全に開放された状態に保持される。
【0026】
この状態で容器30を傾けて開放されている注出口12から塗料などを容器30から注出させる。
【0027】
内容液の注出が終了したなら押圧部3を上面より押圧して押し下げる。すると押圧片5が係合片16を押下げ係合部13と係合片16との係合を解除し、蓋板部材6がバネ部材8のバネ力によって前方に移動して、蓋板部材6により注出口12が閉鎖される。
【0028】
以上述べたように蓋体2によれば、蓋板部材6の後部を掴みスライド後方端まで引き下げると係合部13が係合片16に係合して蓋板部材6を後方に引き下げた位置に保持されるので、注出口12が常時開放された状態になり、容器30から塗料などの内容液を容易に注出できる。
【0029】
また蓋板部材6上の押圧部3を指などで押圧すると係合部13と係合片16との係合が解除され、蓋板部材6がバネ部材8のバネ力により前方に移動し注出口12が閉鎖、密閉される。
【0030】
したがって本発明によれば、蓋板部材6を後方に引き下げて容易に注出口12を開放でき、また押圧部3を押圧して注出口12を蓋板部材6で確実に閉鎖できるので、使い勝手の良好な蓋体2を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかる蓋体の注出口が閉鎖された状態を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる蓋体の注出口が開放された状態を示す断面図である。
【図3】蓋体を示す平面図である。
【図4】図1の蓋体のA−A線断面図である。
【図5】蓋体を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
2 蓋体
3 押圧部
4 蓋体本体
5 押圧片
6 蓋板部材
7 側壁板
8 バネ部材
9 係合凸部
10 取付口部
11 窓部
12 注出口
13 係合部
14 握り部
15 空気管
16 係合片
17 係合突部
18 切欠線
19 係合凸部
20 縦壁板
22 凸リブ
30 容器
32 口筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体本体に注出口を備え、該蓋体本体の上面に蓋板部材をスライド自在に装着した容器の蓋体であって、
蓋体本体と蓋板部材との間にバネ部材を組み付け、該バネ部材は蓋板部材を蓋体本体の注出口を閉鎖するように付勢し、
蓋体本体から係合片を延設させ、
蓋板部材から係合部を垂下させ、該係合部は前記係合片と係合し蓋板部材を係止して注出口を開放した状態に保持させ、
蓋板部材から押圧片を押圧可能に垂下させ、該押圧片は前記係合片を押下げ該係合片と係合部との係合を解除可能とした容器の蓋体。
【請求項2】
蓋板部材に押下可能な押圧部を形成し、該押圧部の揺動端に押圧片を配設し、かつ該押圧片を係合部の直近に該係合部と平行に設けたことを特徴とする請求項1に記載の容器の蓋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−16031(P2006−16031A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194475(P2004−194475)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】