説明

容器の蓋体

【課題】本体厚さを薄くし、本体側壁上縁に形成された蓋体が係合される本体係合縁の高さを低くしても、蓋割れの発生率を抑制する技術を提供する。
【解決手段】容器は、本体1と該本体の開口を覆うように構成された蓋体2とを有し、本体は底部10と該底部の縁に沿って周状に延びて上縁に本体係合縁21等が形成された本体側壁11等とを有し、蓋体は天部40と該天部の縁に沿って周状に延びて下縁に蓋体係合縁51等が形成された蓋体側壁41等とを有し、本体係合縁には本体切欠き部221,241が形成され、蓋体係合縁には本体係合縁を係合したときに本体切欠き部と対向する蓋体切欠き部522が形成可能な厚さが100〜350μmの一対の薄肉切込み部523が蓋体係合縁に沿って蓋体切欠き部の幅の間隔で形成され、蓋体の天部における薄肉切込み部の周辺部位401は、肉厚に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バター、マーガリン等の食品を収納する樹脂製の容器の蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの食品は、樹脂容器に封入されて販売されている。例えば、特許第3457230号、実用新案登録3093848号、実開平7−40489号、実開平7−17746号には、バター、マーガリン等の食品の容器の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3457230号
【特許文献2】実用新案登録3093848号
【特許文献3】実開平7−40489号
【特許文献4】実開平7−17746号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境負荷の軽減化の要請が高まっている、それに答えるために、樹脂容器の減量化、即ち、軽量化が求められている。蓋体と本体との組み合わせの容器の場合、容器重量は本体の比率が高く、本体の軽量化を行うことで容器を軽量化できる。
しかしながら、本体の軽量化を行うために、本体の厚さを薄くし、本体側壁の上縁に形成された蓋体が係合される本体係合縁の高さを低くすると、蓋体と本体係合縁とのクリアランスが大きくなり、市場において特に蓋体のバターナイフ口を形成するための薄肉切込み部の天部側において蓋割れの発生率が上昇する。
【0005】
本発明の目的は、本体の厚さを薄くし、本体側壁の上縁に形成された蓋体が係合される本体係合縁の高さを低くしても、蓋割れの発生率を抑えることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を含む。
(1)本体の開口を覆うように構成された蓋体において、
天部と、
前記天部の縁に沿って周状に延びた蓋体側壁と、
前記蓋体側壁の下縁に形成され、前記本体と係合する蓋体係合縁と
前記蓋体係合縁と前記蓋体側壁に設けられ、切欠き部が形成可能な、前記天部に達する切込み部とを有し、
前記天部の前記切込み部近傍が、前記近傍の周囲よりも肉厚に構成されている蓋体。
(2)前記本体と前記蓋体を係合させた場合において、前記本体の上端との距離が0.1mm以上0.7mm未満となる前記天部及び/または前記蓋体側壁に設けられたリブ
を有する上記(1)に記載の蓋体。
(3)前記本体と前記蓋体を係合させた場合において、前記リブの下端が前記本体の上端の内側で、かつ下側に位置することを特徴とする上記(2)に記載の蓋体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、本体の厚さを薄くし、本体側壁の上縁に形成された蓋体が係合される本体係合縁の高さを低くしても、蓋割れの発生率を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(A),(B)は、本発明による容器の本体と蓋体を示す斜視図および蓋体の裏側の要部の斜視図である。
【図2】(A),(B)は、本発明による容器の蓋体の平面図および要部の断面図である。
【図3】(A),(B)は、従来の容器の蓋体の平面図および要部の断面図である。
【図4】本発明による容器の蓋体の形状変化による割れ発生率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の蓋体と本体を示す斜視図である。本例の容器は、本体1と蓋体2を有する。本体1は、底部10と本体側壁を有し、略矩形の開口3を有する。本体側壁は、比較的長い第1及び第3の本体側壁11、13と、比較的短い第2及び第4の本体側壁12、14と、4つの湾曲状の角部15、16、17、18を有する。第1及び第3の本体側壁11、13を、以下に、長辺側の本体側壁11、13と称し、第2及び第4の本体側壁12、14を、以下に、短辺側の本体側壁12、14と称する。湾曲状の角部15、16、17、18を、以下に、角部の本体側壁15、16、17、18と称することとする。
【0010】
本体側壁の上部には開口3の外側に向けて段差32が、本体の全周にわたって設けられている。段差32の端部には、段差32の上側に全周にわたって本体係合縁が上方に向かって突出している。本体係合縁は、本体側壁と同様に、比較的長い第1及び第3の本体係合縁21、23と、比較的短い第2及び第4の本体係合縁22、24と、4つの湾曲状の角部25、26、27、28を有する。比較的長い第1及び第3の本体係合縁21、23を、以下に、長辺側の本体係合縁21、23と称し、比較的短い第2及び第4の本体係合縁22、24を、以下に、短辺側の本体係合縁22、24と称する。湾曲状の角部25、26、27、28を、以下に、角部の本体係合縁25、26、27、28と称することとする。係合縁には鍔(つば)部31が形成されている。鍔部31は、段差32と同じ高さとなるように、又は段差32より低い位置となるように形成されている。
【0011】
短辺側の本体係合縁22、24には本体切欠き部221、241がそれぞれ形成されている。この本体切欠き部221、241は、バターナイフを保持するために設けられている。4つの角部の本体係合縁25〜28の外面には、それぞれ嵌合リブ251〜281が形成されている。嵌合リブ251〜281は、角部の本体係合縁25〜28のそれぞれの外面上を、周方向に沿って延びる突起である。
ここで、例えば本体1の上面の開口3の長手方向の寸法は、120〜150mm、縦方向の寸法は、90〜120mmである。開口3の長手方向寸法/縦方向寸法=1.2〜1.4である。本体1の高さは、25〜55mmである。
【0012】
蓋体2は、天部40と蓋体側壁を有し、略矩形の開口4を有する。蓋体側壁は、比較的長い第1及び第3の蓋体側壁41、43と、比較的短い第2及び第4の蓋体側壁42、44と、4つの湾曲状の角部45、46、47、48を有する。第1及び第3の蓋体側壁41、43を、以下に、長辺側の蓋体側壁41、43と称し、第2及び第4の蓋体側壁42、44を、以下に、短辺側の蓋体側壁42、44と称する。湾曲状の角部45、46、47、48を、以下に、角部の蓋体側壁45、46、47、48と称することとする。
【0013】
蓋体側壁の下縁には蓋体係合縁が形成されている。蓋体係合縁は、蓋体側壁と同様に、比較的長い第1及び第3の蓋体係合縁51、53と、比較的短い第2及び第4の蓋体係合縁52、54と、4つの湾曲状の角部55、56、57、58を有する。比較的長い第1及び第3の蓋体係合縁51、53を、以下に、長辺側の蓋体係合縁51、53と称し、比較的短い第2及び第4の蓋体係合縁52、54を、以下に、短辺側の蓋体係合縁52、54と称する。湾曲状の角部55、56、57、58を、以下に、角部の蓋体係合縁55、56、57、58と称することとする。
【0014】
一方の短辺側の蓋体係合縁52には本体係合縁を係合したときに本体切欠き部221、241と対向する蓋体切欠き部522が形成可能な厚さが100〜350μmの一対の薄肉切込み部523が蓋体係合縁52に沿って蓋体切欠き部522の幅の間隔で形成されている。この蓋体切欠き部522は、バターナイフを保持するために設けられている。容器を使用するときに薄肉切込み部523を破断することによりバターナイフを挿通して保持することができる。薄肉切込み部523を蓋体2の天部40側に延長した部分は、肉厚に形成されている。
【0015】
すなわち、図2に示すように、薄肉切込み部523を蓋体2の天部40側に延長した部分401(以下、「天部における薄肉切込み部の周辺部位」という)は、この天部における薄肉切込み部の周辺部位401の周囲よりも、肉厚に形成されている。天部における薄肉切込み部の周辺部位401は、図2(A)においては斜線部分であり、図2(B)においては、斜線部分と白色部分の双方を含む部分であり、蓋体側壁42と接続する天部40の縁まで達する。図2(B)において、天部における薄肉切込み部の周辺部位401のうち、斜線部分を除く白色部分が従来の容器の蓋体の形状であり、従来の容器の蓋体を示す図3の天部における薄肉切込み部の周辺部位701に相当する。従来の容器の蓋体において、薄肉切込み部の周辺部位701のうち、最も薄いところが0.6mmである。これに対して、図2(B)において、本発明の天部における薄肉切込み部の周辺部位401の厚さは、最も薄いところでも0.7〜1.5mmの範囲内にある。これにより、容器が落下したときに容器に落下衝撃が掛かっても、薄肉切込み部523から発生し、天部40側に広がることによって発生する天部40側の蓋割れの発生率を低減させることができる。
【0016】
長辺側の蓋体係合縁51、53および短辺側の蓋体係合縁52、54の内周には、内側に突出する一対のズレ矯正リブ511、531、521、541が設けられている。ズレ矯正リブ511、531、521、541は、蓋体の製造時や当該蓋体を用いた容器を使用した製品の製造時などにおいて、蓋体のみを積載しておく場合に、積載された下部の蓋体2の天部40と接触して上部の蓋体2のズレを矯正する。即ち、このようなズレ矯正リブ511、531、521、541を設けることにより、複数の蓋体2を積載したときに、上部の蓋体2のズレ矯正リブ511、531、521、541の下面と、下部の蓋体2の天部上面が接触することにより、上部の蓋体2の天部40と下部の蓋体2の天部40が平行に保たれるので、上部の蓋体2の天部40と下部の蓋体2の天部40が平行にならず斜めになることに起因するズレを防止できる。
【0017】
図2(B)に示すように、従来の容器においては、蓋体係合縁52と本体係合縁22とを係合したときに、天部40と蓋体側壁42との接続部分で水平な部分の内側表面と、本体係合縁22の上端との間隙が2mmであった(図3(B)も参照)。他の蓋体係合縁と本体係合縁の係合部分についても同様である。
これに対して、本発明の容器の蓋体では、ズレ矯正リブ511、531、521、541の下端(斜線部分)512を延長形成した。この結果、ズレ矯正リブ511、531、521、541は、蓋体係合縁と本体係合縁とを係合したときにズレ矯正リブ511、531、521、541の下端と本体係合縁の上端との間隙が0.1mm以上0.7mm未満、好ましくは0.3mm以上0.7mm未満となるように形成されている。
これにより、容器を落下させたときに容器に落下衝撃が掛かっても、ズレ矯正リブ511、531、521、541の下端と本体係合縁の上端とが接触して蓋体2の変形を抑えることができ、薄肉切込み部523の天部40側において蓋割れの発生率を低減させることができる。
【0018】
さらに、以下のように構成することもできる。すなわち、蓋体2と本体1とを係合させたときに、ズレ矯正リブ511、531、521、541の内側下端が、本体係合縁の上端よりも下側に位置するように突出形成されている。すなわち、蓋体2と本体1とを係合させると、図2に示すズレ矯正リブ511、531、521、541の内側下端(斜線部分)513は、本体係合縁22の上端よりも下側に位置する。これにより、容器を落下させたときに容器に落下衝撃が掛かっても、ズレ矯正リブ511、531、521、541の下端と本体係合縁の内面とが接触して蓋体2の変形をさらに抑えることができ、薄肉切込み部523の天部40側において蓋割れの発生率をより低減させることができる。
なお、蓋体2の開口の長手方向の寸法は、120〜150mm、縦方向の寸法は、90〜120mm、長手方向寸法/縦方向寸法=1.2〜1.4、蓋体2の高さは、10〜16mmである。
【0019】
図4は、本発明による容器の形状変化による割れ発生率を示す図であり、容器の輸送梱包形態にて5°Cにて管理された冷蔵庫内にて24時間以上保管し、高さ50cm以上から落下させたときの蓋体の割れの有無を確認した結果を示す。図において、比較品は天部40の薄肉切込み部523周辺において肉厚部分を設けず、かつ蓋体と本体とを係合させたとき、天部と蓋体側壁との接続部分で水平な部分の内側表面と、本体係合縁の上端との間隙を2mmとしたときの容器の割れ発生率、ステップ1は図2に示すズレ矯正リブ511、531、521、541の下端(斜線部分)512のみを延長形成した容器の割れ発生率、ステップ2はステップ1に加えて図2に示すズレ矯正リブ511、531、521、541の内側下端(斜線部分)513を突出形成した容器の割れ発生率、ステップ3はステップ2に加えて図2に示す蓋体2の天部40における薄肉切込み部523の周辺部位401を肉厚に形成した容器の割れ発生率を示す。
【0020】
図から明らかなように、比較品では容器の割れ発生率は17%であったものが、ステップ1では容器の割れ発生率は13%に低下し、ステップ2では容器の割れ発生率は4%に大幅に低下し、ステップ3では容器の割れ発生率は全く認められなかった。よって、少なくともズレ矯正リブ511、531、521、541の下端(斜線部分)512を延長形成すること、及び/または内側下端(斜線部分)513を突出形成すること、及び/または蓋体2の天部40における薄肉切込み部523の周辺部位401を肉厚に形成することにより、容器の蓋体2の割れを防止するこができる。
また、ズレ矯正リブ511の下端(斜線部分)512が蓋体側壁42に接続しており、さらに蓋体2の天部40における薄肉切込み部523の周辺部位401が厚くなったことにより、蓋体2は曲がり難くなるので、手で蓋体切欠き部522を蓋体の外側に引っ張ったとき、薄肉切込み部523が破断し易くなった。
【0021】
以上本発明の実施形態を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、様々な変更が可能であることは当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0022】
1…本体、2,62…蓋体、3…本体の開口、4…蓋体の開口、10…底部、11、12、13、14、15、16、17、18…本体側壁、21、22、23、24…本体係合縁、221、241…本体切欠き部、25、26、27、28…本体係合縁、251〜281…嵌合リブ、31…鍔部、32…段差、40,70…天部、401,701…天部における薄肉切込み部の周辺部位、41、42、43、44、45、46、47、48…蓋体側壁、51、52、53、54…蓋体係合縁、522…蓋体切欠き部、523,821…薄肉切込み部、55、56、57、58…蓋体係合縁、511、531、521、541…ズレ矯正リブ、512…ズレ矯正リブの下端、513…ズレ矯正リブの内側下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の開口を覆うように構成された蓋体において、
天部と、
前記天部の縁に沿って周状に延びた蓋体側壁と、
前記蓋体側壁の下縁に形成され、前記本体と係合する蓋体係合縁と
前記蓋体係合縁と前記蓋体側壁に設けられ、切欠き部が形成可能な、前記天部に達する切込み部とを有し、
前記天部の前記切込み部近傍が、前記近傍の周囲よりも肉厚に構成されている蓋体。
【請求項2】
前記本体と前記蓋体を係合させた場合において、前記本体の上端との距離が0.1mm以上0.7mm未満となる前記天部及び/または前記蓋体側壁に設けられたリブ
を有する請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記本体と前記蓋体を係合させた場合において、前記リブの下端が前記本体の上端の内側で、かつ下側に位置することを特徴とする請求項2に記載の蓋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−91837(P2012−91837A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241602(P2010−241602)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000222565)東洋科学株式会社 (13)
【出願人】(711002926)雪印メグミルク株式会社 (65)
【Fターム(参考)】