説明

容器キャップのロック構造

【課題】 リップ部を有する容器の口部に確実かつ容易に着脱することができる容器キャップのロック構造を提供する。
【解決手段】 容器キャップ11は、天板12と周壁13とからなり、周壁には、容器31のリップ部33に係合する係合爪16と弾性係合部材17とが設けられている。弾性係合部材は、周壁の切欠部21から周壁内周方向に突出するローラ18と、ローラを弾性的に保持するバネ部材19と、ローラを位置規制する規制部とを有し、バネ部材によってローラをリップ部の下部に押圧するとともに規制部でローラの位置を規制することによって容器キャップを容器口部32に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器キャップのロック構造に関し、特に、科学研究用機器に試料容器を接続する際に使用する容器キャップのロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
容器口部に対して着脱可能に被着される容器キャップは、一般的にねじこみ式のキャップが多く用いられている。しかし、ねじこみ式のキャップは、容器やキャップの製作費が高く、また、キャップを着脱する際に回転させなければならないという難点がある。一方、口部外周にリップ部を設け、キャップの周壁内周に設けた突条を係合させる嵌合式のキャップも多く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
科学研究用機器に試料容器を接続する際に使用する容器キャップにも種々の被着方式が採用されているが、比較的大きな開口を有するガラス製の容器では、その口部にリップ部を設けるとともに、該リップ部に係合する突条を周壁に設けたキャップをゴムで形成し、ゴムの弾力性を利用して突条をリップ部に係合させている。
【特許文献1】特開平8−276949号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴム製のキャップは、弾力性によって十分な密閉力を得られるという利点はあるが、ゴムの周壁をめくりながら口部に強く押し付けて装着したり、周壁をめくりあげるようにして引っ張って口部から取り外したりするという、面倒で力のいる操作が必要であり、また、低温時には、ゴムが硬くなって着脱性が悪くなるという問題もあった。特に、科学研究用機器の試料容器の容器キャップは、着脱を何回も繰り返して使用されるため、一般の飲料用容器等に用いられる容器キャップとは異なり、長期間の安定した着脱性や密閉性が求められている。
【0005】
そこで本発明は、リップ部を有する容器の口部に確実かつ容易に着脱することができる容器キャップのロック構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の容器キャップのロック構造は、リップ部を有する容器の口部に着脱可能に被着される容器キャップのロック構造において、前記容器キャップは、容器の口部端面に当接して口部を密閉する天板と、該天板の外周から容器外周面に沿う方向に延出した周壁と、該周壁の内周面の一部から突出して前記リップ部の下部に係合する係合爪と、該係合爪に対向する周壁の一部に形成した切欠部に設けられた弾性係合部材とを有し、該弾性係合部材は、前記切欠部から周壁内周方向に突出するローラと、該ローラを保持するバネ部材と、該バネ部材に係合してローラの位置を規制する規制部とを有し、該バネ部材は、前記ローラを保持するローラ保持部と、該ローラ保持部を周壁内周方向に付勢する付勢力を得るための屈曲部と、該バネ部材を周壁の外周面に設けたバネ部材止着部に止着する止着部とを有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の容器キャップのロック構造によれば、まず、周壁内周面に突設した係合爪を容器のリップ部に係合させた後、係合爪に対向する部分を容器口部に押し付けることにより、弾性係合部材のローラがバネ部材の弾性変形によってリップ部を乗り越え、位置規制されたローラがリップ部の下部に係合した状態となる。これにより、係合爪がリップ部の下部に係合するとともに、ローラがリップ部の下部に弾性的に係合した状態になるので、容器キャップは、容器の口部に確実に固定された状態となる。容器キャップの着脱は、弾性係合部材のバネ部材を弾性変形させることによって容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図は本発明の容器キャップのロック構造における一形態例を示すもので、図1は容器と容器キャップとの関係を示す断面正面図、図2は容器キャップの底面図、図3は容器口部に容器キャップを被着した状態を示す断面正面図、図4は弾性係合部材側から見た側面図である。
【0009】
まず、容器キャップ11を被着する容器31は、口部32の外周にリップ部33を環状に突設したガラス製容器であって、容器31内の試料を冷却して凍結させるとともに、容器31内を減圧状態にして試料を乾燥させる凍結乾燥機の試料瓶として用いられるものである。また、容器キャップ11は、容器31の口部端面に当接して口部32を密閉する天板12と、該天板12の外周から容器31の外周面に沿う方向に延出した周壁13と、天板12の中央部に設けられた管接続部14とを有している。また、天板12の内面外周部には、容器31の口部端面に当接するパッキン15が装着されている。
【0010】
容器キャップ11は、前記天板12や管接続部14等の本体部がゴム等の弾力性を有する材料によって形成されており、前記周壁13は、天板12に連続する上部側13aが弾力性を有する材料で天板12と一体形成され、下部側13bは硬質乃至半硬質の材料で別体に形成されており、両者をネジや接着等の固着手段によって一体化している。
【0011】
前記周壁13の内径は、前記リップ部33の外径と同等乃至僅かに大きく形成されており、この周壁13に、容器キャップ11を容器31の口部32に固定するための係合爪16と弾性係合部材17とが設けられている。係合爪16は、周壁13の内周面から円弧状に突出しており、突出端の天板側角部と前記パッキン15の下面との間隔が、リップ部33の高さ寸法より僅かに小さくなるように設定されている。
【0012】
この係合爪16の大きさは任意であり、口部32の口径等に応じて設定できるが、リップ部33との係合力や容器キャップ11の着脱性を考慮すると、円弧の開き角度は45〜90度程度が適当であり、90度を超えると着脱性が損なわれることがあり、45度未満では係合力が不足するおそれがある。
【0013】
弾性係合部材17は、前記係合爪16と対向する部分の周壁13に設けられるものであって、口部32の下部に係合するローラ18と、該ローラ18を保持するバネ部材19と、該バネ部材19に係合してローラ18の位置を規制する規制部となる規制突起20とで構成されている。周壁13には、前記ローラ18を周壁内周方向に突出させるための切欠部21が設けられるとともに、該切欠部21の両側外周面には、前記バネ部材19を止着するための一対のバネ部材止着部22が設けられている。前記規制突起20は、切欠部21の開口端部分に対向して設けられており、ローラ18の両端から突出したバネ部材19の下部側に係合してローラ18が容器底部方向に移動しないように位置規制している。
【0014】
ローラ18は、ゴム等の弾力性を有する材料によって形成されたチューブであって、その内部にバネ部材19が挿入されており、バネ部材19の弾性によって周壁内周方向に付勢され、周壁内周面よりも僅かに内周側に突出した状態になるように形成されている。バネ部材19は、ピアノ線等の金属線を曲げ加工したものであって、ローラ18の長さに対応した直線状のローラ保持部23を中心とした対象形状に形成されている。
【0015】
バネ部材19は、容器キャップ11への装着時において、周壁内周方向に突出するように形成された前記ローラ保持部23と、該ローラ保持部23の両端から前記係合突起20の上方を通過するようにして周壁外周方向に屈曲し、さらに、周壁外周面に沿う方向に屈曲した屈曲部24と、該屈曲部24の先端をローラ保持部23側に屈曲させた止着部25とを有しており、容器キャップ11へは、屈曲部24を弾性変形させて止着部25を拡げた状態で、止着部25の先端を前記バネ部材止着部22の挿入孔に挿入することによって取り付けられる。
【0016】
このように形成した容器キャップ11を容器31の口部32に装着するには、まず、容器キャップ11を、係合爪16側を僅かに口部32側に斜めに傾けた状態で口部32に押し付け、前記係合爪16をリップ部33に係合させる。次に、容器キャップ11の係合爪16に対向する部分を口部32に押し付け、バネ部材19の屈曲部24を弾性変形させながらローラ18がリップ部33を乗り越えた状態とする。このとき、必要に応じて指でローラ18を回転させることにより、ローラ18がリップ部33を乗り越えた係合状態とすることが容易にできる。
【0017】
このようにして容器キャップ11を口部32に被着すると、容器キャップ11は、係合爪16とローラ18とでリップ部33に係合した状態となり、特に、弾性係合部材17のローラ18がバネ部材19の弾性復元力と、バネ部材19が係合突起23に係合することによるローラ18の位置決め作用とによってリップ部33の下部に押圧された状態となり、その反力で容器キャップ11を口部32の方向に引き寄せるので、口部32をパッキン15に強く密着させることができる。
【0018】
また、容器キャップ11を口部32から取り外すときには、装着時とは逆に、容器キャップ11の弾性係合部材17側を引き上げ、バネ部材19を弾性変形させてローラ18のリップ部33との係合状態を解除する。このときも、指でローラ18を回転させることにより、ローラ18がリップ部33を乗り越えた非係合状態とすることが容易に行える。ローラ18とリップ部33との係合状態が解除されれば、容器キャップ11を係合爪16側に僅かにスライドさせるような状態で持ち上げることにより、リップ部33との係合爪16の係合を解除して容器キャップ11を取り外すことができる。
【0019】
したがって、従来のゴム製キャップのように、周壁をめくりながら着脱するものに比べて容器キャップの着脱操作を容易に行うことができ、作業時間の短縮が図れるとともに、キャップ装着状態のばらつきもなくなる。また、バネ部材19の太さや長さ、屈曲部24の状態を適当に設定することにより、ローラ18を適度な力でリップ部23の下部に係合させることができるので、着脱性を損なうことなく十分な密封性を容易に得ることができる。
【0020】
なお、上記形態例では、容器として凍結乾燥機のガラス製試料瓶を例示したが、これに限るものではなく、口部外周にリップ部を有する種々の容器に対応することができる。また、容器キャップは、ある程度の弾力性を有していればよく、各種材料で形成することができ、天板の形状は任意である。さらに、バネ部材19の屈曲形状は、所定の弾性力が得られれば任意に形成することができ、ローラ18の位置規制は周壁外面部分で行うこともできる。また、バネ部材19の容器キャップ11への止着も任意の状態で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】容器と容器キャップとの関係を示す断面正面図である。
【図2】容器キャップの底面図である。
【図3】容器口部に容器キャップを被着した状態を示す断面正面図である。
【図4】弾性係合部材側から見た側面図である。
【符号の説明】
【0022】
11…容器キャップ、12…天板、13…周壁、14…管接続部、15…パッキン、16…係合爪、17…弾性係合部材、18…ローラ、19…バネ部材、20…規制突起、21…切欠部、22…バネ部材止着部、23…ローラ保持部、24…屈曲部、25…止着部、31…容器、32…口部、33…リップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リップ部を有する容器の口部に着脱可能に被着される容器キャップのロック構造において、前記容器キャップは、容器の口部端面に当接して口部を密閉する天板と、該天板の外周から容器外周面に沿う方向に延出した周壁と、該周壁の内周面の一部から突出して前記リップ部の下部に係合する係合爪と、該係合爪に対向する周壁の一部に形成した切欠部に設けられた弾性係合部材とを有し、該弾性係合部材は、前記切欠部から周壁内周方向に突出するローラと、該ローラを保持するバネ部材と、該バネ部材に係合してローラの位置を規制する規制部とを有し、該バネ部材は、前記ローラを保持するローラ保持部と、該ローラ保持部を周壁内周方向に付勢する付勢力を得るための屈曲部と、該バネ部材を周壁の外周面に設けたバネ部材止着部に止着する止着部とを有していることを特徴とする容器キャップのロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−321546(P2006−321546A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147809(P2005−147809)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(591245543)東京理化器械株式会社 (36)
【Fターム(参考)】