説明

容器ホルダー

【課題】容器の表面に打痕、キズを付けないで、容器を保持する容器ホルダー
【解決手段】ホルダーの内周面に形成される収納部と、該収納部に装着される容器保持体と、該容器保持体によって保持される容器とから成り、(a)前記収納部には、容器胴部の半径方向外側に容器保持体が収納され、(b)前記容器保持体は、エアーの供給により膨張する空洞部が形成されると共に、該容器保持体を膨張せしめて、その内周面で容器胴部を押圧して容器を保持し、(c)前記容器は、インパクト加工、しぼり加工又はしぼりしごき加工により口部、胴部及び底部が成形される有底筒状の容器であることを特徴とする容器ホルダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器ホルダーに関し、さらに詳しくは、容器を加工する際に、エアーの圧力で容器胴部を保持する容器ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属容器の口部にネッキング加工、ねじ加工、トリミング加工等を施す場合、ネッキングマシンに複数の容器ホルダーが設けられ、この容器ホルダーに保持された容器が、各加工ステーションを間欠的に回転しながら回り、口部に加工が施されるものである。図6図〜図8は、従来のネッキングマシンの枠体に取付けられた容器ホルダーを示す図面である。51は枠体であり、枠体51はネッキングマシン52の固定台53上に、ボルトあるいは溶接等の方法で固定されている。枠体51には、容器50を装着するために、容器50の外径より一回り大きい内径を有する、ホルダー54が嵌合されており、このホルダー54の内周面には、収納部56が形成されている。そして、この収納部56は、容器保持体57を装着するために、容器50胴部の半径方向外側にリング状に形成されている。さらに、収納部56には、エアーの供給管58が連結されている。容器保持体57は、ゴム、ウレタン等の弾性材料で製造されており、両端部には、Oリング57aが取付けられ、エアーが隙間から外部に漏洩しないように工夫されている。ホルダー54の底部には、固定台53より突出して設けられたピストン55が設けられ、容器50の成形が終了し、容器保持体56へのエアーの供給が停止されると、ピストン55の空圧による押出し作用により、容器50をホルダー54の外部に押し出す(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−19731号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような従来の容器ホルダーにあっては、以下に示す問題点があった。
(1)図6〜図8に示すように、容器保持体57にエアーを供給して、押圧した場合、図9(図6のX―X線拡大端面図)に示すように、容器保持体57が、容器50胴部外周に均等な圧力で接触しないため、容器50胴部に局部的に大きな押圧力(図9のZ矢視部)がかかり、容器50胴部に打痕、キズが付くという欠点がある。
(2)容器保持体57と、収納部56の天面の隙間59(図8の左右方向の矢印)からエアーが外部に漏洩し、容器ホルダーのグリップ力が低下するという欠点がある。
(3)容器保持体57が、収納部56内に固定されていないため、容器50が存在しない場合に、エアーを供給すると容器保持体57が抜け出るという欠点がある。
(4)容器保持体57のホルダー54の側面への押圧力が弱いため、加工時に容器が回転するという欠点がある。
この発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、容器胴部に打痕、キズが発生せず、又容器保持体と収納部の隙間からエアーが外部に漏洩せず、さらには、容器保持体が、収納部内に確実に固定され、又、加工時において、容器の回転を防止した容器ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、ホルダーの内周面に形成される収納部と、該収納部に内装される容器保持体と、該容器保持体によって保持される容器とから成り、(a)収納部には、容器胴部の半径方向外側に容器保持体が収納され(b)容器保持体は、エアーの供給により膨張する空洞部が形成されると共に、容器保持体を膨張せしめて、その内周面で容器胴部を押圧して、容器を保持し、(c)容器は、インパクト加工、しぼり加工又はしぼりしごき加工により口部、胴部及び底部が成形される有底筒状の容器であることを特徴とする容器ホルダーである。容器保持体がエアーによって膨張し、容器胴部外周に均一に接触するため、容器保持体の押圧力が容器胴部全周に均一にかかり、容器胴部に打痕、キズが付くのを防止することができる。
【0005】
請求項2記載の発明の解決手段は、容器保持体の開口部には、収納部からのエアーの漏洩を防止するリップ片が形成されたことを特徴とする請求項1記載の容器ホルダーである。リップ片の形成により、容器保持体と収納部の天面の隙間からエアーが外部に漏洩するのを防止することができる。エア―漏れがないので、容器保持体が収納部の天面及び側面を押圧する力が強く、容器の加工の際に、容器を保持すると共に容器の回転を阻止するグリップ力を有する。
【0006】
請求項3記載の発明の解決手段は、容器保持体には、固定リングが内装されていることを特徴とする容器ホルダーである。容器保持体は、固定リングにより収納部内に確実に固定されており、容器保持体が抜け落ちない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容器を保持する場合、容器胴部の全周に均一に保持力がかかるため、容器胴部に打痕、キズが付くのを防止する効果がある。又、容器保持体と、収納部の天面の隙間からエアーが外部に漏洩するのを防止できる。さらに、容器保持体が、収納部に固定されるので、エアーの供給時に容器保持体が抜け出るのを防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0009】
図1は、本発明の実施例を示す図面である。2は枠体であり、枠体2はネッキングマシン3の固定台4上に、ボルトあるいは溶接等の方法で固定されている。枠体2には、容器1を装着するための、容器1の外径より一回り大きい内径を有する、ホルダー5が嵌合されており、このホルダー5の内周面には、収納部6が形成されている。この収納部6は、容器保持体7を装着するために、容器1胴部の半径方向外側にリング状に形成されている。さらに、収納部6にはエアー供給管8が連結されている。なお、ホルダー5の底部には、固定台4より突出して設けられたピストン9が設けられ、口部の加工が終り容器保持体7へのエアーの供給が停止された後、このピストン9の押出し作用により、容器1はホルダー5の外部に押し出される。
【0010】
図3及び図4に示すように、容器保持体7は、リング状の収納部6に装着されている。この容器保持体7の素材は、ウレタン、ゴム等の弾性体である。
そして、容器保持体7の形状も、リング形状を呈している。外面の形状は、実施例に示すように、四角形状以外に円形状、楕円形状等であってもよい。容器保持体7は、エアー供給管8から連続している開口部10及びこの開口部10から通路11を経由して、空洞部12に続いている。空洞部12内には、中心にエアーの通路が設けられる固定リング13が内装されており、この固定リング13により、容器保持体7が収納部6から抜け落ちないように構成されている。
【0011】
本発明の特徴は、エアーが、容器保持体7の空洞部12内に供給され、容器保持体7が体積を膨張する点にある。すなわち、従来の容器保持体にあっては、エアーが容器保持体の片側端面を押圧し、その押圧力により反対面を容器胴部に押当てて、容器を固定するものであるため、容器保持体自体は膨張しない。したがって、容器胴部が均一に容器胴部を押圧しないという欠点があった。これに比し本発明は、容器保持体7が全体的にエアーによって膨張するため、図5に示すように、容器1胴部の外周に均一にエアー圧がかかる利点があり、保持される容器7胴部に打痕、キズが付かない。
【0012】
収納部6は、エアー供給管8に連結されているが、エアー供給システム(図示せず)によって収納部6に供給され、供給されるエアーは、図4に示すように、まず、容器保持体7の開口部10に供給される。そして、開口部10は膨張するため、開口部10の入口の両端に形成されたリップ片14が、収納部6の天面6aに強く当接される。したがって、供給されたエアーは、収納部6の天面6aと、収納部6の側面6bとの間に形成される隙間6cから外部に漏洩するのを防止することができる。又容器保持体7は、収納部6の側面6bに強く当接するので、同様に、容器保持体7と収納部6の側面6bの隙間からエアーが外部に漏洩しないと共に、容器1の回転を防止する。さらに、空洞部12に供給されたエアーは、容器保持体7の空洞部12に供給されると、容器7胴部に向かって半径方向に膨張し、容器7胴部の側面を強く押圧する。又空洞部12の容器7胴部側の肉厚、及び収納部6の側面6b側の肉厚は、1.5〜2.5mmと全体的に厚く形成されているので、容器保持体7が安定的に膨張する。又容器保持体7の材料の硬度は、ショアA50〜55°と柔らかいので、膨張・収縮が自由自在である。したがって、本発明に係る容器ホルダーは、容器の口部に施される各種の加工において、容器を保持し、かつ容器の回転を阻止するための十分なグリップ力を発揮する。
【0013】
本発明にかかる容器ホルダーは、容器1が、ネッキングマシン3の複数の成形工程を移動する場合に、図2に示す最初の成形工程である容器1の開口部のネッキング加工工程において、容器1が保持されるように、収納部6の容器保持体7の開口部10側から、最初にエアーが供給される。すなわち、容器保持体7は、図3に示す通常の形状から、図4に示す膨張した形状に変化し、容器1の保持が開始される。そして、 容器の最後の加工工程である、口部先端のカール加工工程が終了するまで、エアー供給管8から継続的にエアーが供給される。すべての成形が終了すると、エアーの供給が止まり、容器1はピストン9によって、底部が押圧されてホルダー5から外へ押し出される。なお、図1は、この発明に係わる容器ホルダーが、ネッキングマシンに取り付けられる実施例を示すものであるが、他の実施例として容器運送装置等に取付けて、利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明に係る容器ホルダーは、DI加工、インパクト加工等によって製造される容器を保持する容器ホルダーとして、広く適用することができる。又保持される容器は、金属容器以外に、ガラス瓶、樹脂容器であってもよく、その場合は、容器の素材、肉厚、容器外径等に応じて、エアー圧を任意に変えることにより、容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る容器ホルダーが、ネッキングマシンの枠体に取付けられた場合の実施例を示す断面図。
【図2】本発明に係る容器ホルダーが、ネッキングマシンの枠体に取付けられ、最初のネッキング工程において、容器が容器ホルダーで保持されている状態を示す実施例を示す断面図。
【図3】本発明に係る容器ホルダーにおいて、容器保持体が、収納部に収納され、エアーが供給されていない状態を示す拡大断面図。
【図4】本発明に係る容器ホルダーにおいて、容器保持体が、収納部に収納され、エアーが供給されている状態を示す拡大断面図。
【図5】本発明に係る容器ホルダーにおいて、容器胴部に、容器保持体が均等に当接している状態を示す拡大断面図。
【図6】従来の容器ホルダーが、ネッキングマシンの枠体に取付けられた場合の実施例を示す断面図。
【図7】従来の容器ホルダーにおいて、容器保持体が、収納部に収納され、エアーが供給されていない状態を示す拡大断面図。
【図8】従来の容器ホルダーにおいて、容器保持体が、収納部に収納され、エアーが供給されている状態を示す拡大断面図。
【図9】従来の容器ホルダーにおいて、容器胴部に、容器保持体が不均等に当接している状態を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0016】
1容器
5ホルダー
6収納部
7容器保持体
12空洞部
13固定リング
14リップ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダーの内周面に形成される収納部と、該収納部に装着される容器保持体と、該容器保持体によって保持される容器とから成り、
(a)前記収納部には、容器胴部の半径方向外側に容器保持体が収納され、
(b)前記容器保持体は、エアーの供給により膨張する空洞部が形成されると共に、該容器保持体を膨張せしめて、その内周面で容器胴部を押圧して、容器を保持し、
(c)前記容器は、インパクト加工、しぼり加工又はしぼりしごき加工により口部、胴部及び底部が成形される有底筒状の容器であることを特徴とする容器ホルダー。
【請求項2】
前記容器保持体の開口部には、収納部からのエアーの漏洩を防止するリップ片が形成されたことを特徴とする請求項1記載の容器ホルダー。
【請求項3】
前記容器保持体には、固定リングが内装されていることを特徴とする請求項1又は2記載の容器ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−126266(P2008−126266A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313969(P2006−313969)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)