説明

容器入り二層ゼリー及びその製造方法

【課題】上方から見た場合も側面からみた場合も視覚的に楽しめる容器入り二層ゼリー、及び、そのような容器入り二層ゼリーを、簡単な方法で、安定して得ることができる、容器入り二層ゼリーの製造方法を提供すること。
【解決手段】上層のゲルの表面形状が、ゼリー容器の内底面の形状と略同一形状であることを特徴とする容器入り二層ゼリー、及び該容器入りニ層ゼリーの製造方法であって、第1のゼリー液を、ゼリー容器に充填した後ゲル化して、上層となる第1のゲルを得た後、該第1のゲルより比重が大である第2のゼリー液を、該ゼリー容器に投入し、該第2のゼリー液で該第1のゲルを押し上げて、該第2のゼリー液を、該第1のゲルの下方に充填した後ゲル化して、下層のゲルとする際に、該第2のゼリー液がゲル化する前に、該第1のゲルを上下反転させる工程を含むことを特徴とする容器入り二層ゼリーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚的にも楽しめる容器入り二層ゼリー、及びそのような容器入り二層ゼリーを、簡単な方法で、安定して得ることができる、容器入り二層ゼリーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリーは水分含量が高いため、滑らかで清涼感のある食感を有し、特にデザートとして夏季における人気は大変高い。また、各種ピューレやクリームを混合することで、色や風味、透明感のあるゲルからムース状の不透明なゲルまで様々なバリエーションを生み出すことができるため視覚的に楽しめる点でも人気が高い。
しかし、ゼリーは、液状のゼリー液をゼリー容器に流し込み、ゲル化させることから、その外観は均一の色や風味となることから、外観上の変化に乏しいものであった。
【0003】
そこで、ゼリー液をゲル化させた後にその表面に果実、チョコレート、あるいはクラッシュしたゼリー等の食品素材を積置する方法により表面にアクセントをつける方法がよく行われるが、これらの方法では、安定した形状は得られず、また、ゼリー表面は滑らかであるため、表面に積置されたそれらの素材はゼリーの保管時や輸送中のわずかな傾きによりゼリー表面を滑り、偏ってしまい商品価値を損ねてしまう問題があった。
そのため、これらの食品素材を使用しないでゼリーの外観上のバラエティを得るために、2種のゼリー液を順次流し込んでゲル化させた二層ゼリー(例えば特許文献1〜2参照)や、ゼリー液にソーダ水を使用して泡を混入させたソーダゼリー(例えば特許文献3〜4参照)が考案されているが、これらのゼリーも、ゼリー表面及び界面が平面になることから、外観上の変化は乏しいものであり、また、食品素材を表面に積置した場合の保管時や輸送中の問題はそのままであった。
【0004】
ところで、本発明者らは、視覚的に楽しめる二層ゼリーとして、上層のゲルと下層のゲルとの界面が、ゼリー容器の内底面と略同一形状であり、該ゼリー容器の内底面が平面ではないことを特徴とする容器入り二層ゼリー、及び該容器入りニ層ゼリーの製造方法であって、第1のゼリー液を、ゼリー容器に充填した後ゲル化して、上層となる第1のゲルを得た後、該第1のゲルより比重が大である第2のゼリー液を、該ゼリー容器に投入し、該第2のゼリー液で該第1のゲルを押し上げて、該第2のゼリー液を、該第1のゲルの下方に充填した後ゲル化して、下層のゲルとする容器入りニ層ゼリーの製造方法について出願している(特願2005−107519)。
しかし、この製造方法によって得られる容器入りニ層ゼリーでは、上層のゲルと下層のゲルの界面は視覚上曲面とすることができるため、側面から見た場合の視覚上の変化を得ることができるが、上層のゲルの表面は平面状のままであり、上方から見た場合の視覚上の変化が得られない点、及び食品素材を表面に積置した場合の保管時や輸送中の問題はそのままであった。
【0005】
【特許文献1】特開昭48−72362号公報
【特許文献2】特開昭61−128846号公報
【特許文献3】特開昭63−2540号公報
【特許文献4】特開昭63−94944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、上方から見た場合も側面からみた場合も視覚的に楽しめる容器入り二層ゼリー、及び、そのような容器入り二層ゼリーを、簡単な方法で、安定して得ることができる、容器入り二層ゼリーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、従来の発想とは全く異なり、容器入り二層ゼリー製造の際に、ゼリー容器の内底面を利用して上層のゲルを製造し、さらに、その内底面を上層のゲルの表面とすることで上記問題を解決可能なことを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、上層のゲルの表面形状が、ゼリー容器の内底面の形状と略同一形状であることを特徴とする容器入り二層ゼリーを提供することで、上記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、上記容器入りニ層ゼリーの製造方法であって、第1のゼリー液を、ゼリー容器に充填した後ゲル化して、上層となる第1のゲルを得た後、該第1のゲルより比重が大である第2のゼリー液を、該ゼリー容器に投入し、該第2のゼリー液で該第1のゲルを押し上げて、該第2のゼリー液を、該第1のゲルの下方に充填した後ゲル化して、下層のゲルとする際に、該第2のゼリー液がゲル化する前に、該第1のゲルを上下反転させる工程を含むことを特徴とする容器入り二層ゼリーの製造方法を提供することで、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の容器入り二層ゼリーは、下層のゼリーに上層のゲルが浮かんだような形状であり、上方から見た場合にも側面から見た場合にも視覚的に楽しめるものである。また、食品素材を上層ゲルの表面に積置した場合、保管時や輸送中に容器を傾けても、上記食品素材が表面を滑り、偏ることで商品価値を損ねてしまうという問題がない。
また、本発明の容器入り二層ゼリーの製造方法によれば、上方から見た場合にも側面から見た場合にも視覚的に楽しめる二層ゼリーを簡単に、安定して得ることができ、また、ゼリー容器を変えることで様々なバリエーションの容器入り二層ゼリーを製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の容器入り二層ゼリー及びその製造方法について詳述する。
本発明におけるゼリーとは、ゲル化剤やゲル化素材を使用して得られたゲルのことであり、各種の呈味や呈色成分を含有した、例えば、ゼリー、ムース、ババロア、パンナコッタ、プディング、羊羹、外郎、にこごり、ヨーグルトなどを含むものである。
【0012】
また、本発明における二層ゼリーとは、呈味や呈色の異なる2種のゲルからなるものであって、下層のゲルに上層のゲルが浮かんだような形状であり、一方のゼリーの中にもう一方のゼリーの小片が複数個分散しているものについては含まれない。
また、本発明において、下層のゲルとは、ゼリー容器の内底面に接しているゲルのことを指し、上層のゲルとは、もう一方のゲルを指す。
【0013】
本発明の二層ゼリーに使用する原料については通常のゼリー製造に使用するものであればよく、水、牛乳、煉乳、果汁、クリーム、ソーダ水などの水性原料と、寒天、カラギーナン、ファーセルラン、タマリンド種子多糖類、タラガム、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、プルラン、ジェランガム、アラビアガム、ゼラチン、澱粉などのゲル化剤や全卵、卵白などのゲル化素材を主原料とし、さらに必要により、乳化剤、酸化防止剤、糖類及び糖アルコール、澱粉、小麦粉、無機塩及び有機酸塩、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材全般、着香料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、pH調整剤などその他成分を適宜使用することができる。
【0014】
本発明の二層ゼリーに使用するゼリー容器は、通常のゼリー製造に使用するもの(容積
40〜1000cm3程度)であればよいが、該ゼリー容器の内底面の形状が上層のゲルの表面形状となるため、それを想定して選定することが必要である。
【0015】
ここで、ゼリー容器の内底面とは、ゼリー容器の内側における、最深部を含む底面の一部又は全部のことであり、さらに側面と底面の境界が明瞭でない場合は一部側面の下方を含むものとする。
【0016】
なお、通常のゼリー容器は、容器を保存する際の省スペース化の要請から、あるいは、容器から剥がして使用するゼリーの場合のいわゆる型抜き性の面から、必ず開口部に向かって外傾したテーパーが設けられている。
本発明では、このテーパーのない容器をゼリー容器として使用することも可能であるが、迅速に安定して容器入り二層ゼリーを製造するためには、テーパー(開口部に向かって外傾している)を有するゼリー容器を使用することが好ましい。さらには、逆テーパー(開口部に向かって内傾している)を有する容器を使用することも可能であるが、その場合、二層ゼリーの最上面が逆テーパー部より下方となるようにゼリー容量を決定することが好ましい。
【0017】
また、以下に述べる本発明の二層ゼリーの製造方法を採る場合、容器中で反転させる工程が必要であることから、上記ゼリー容器は、なるべく深さの大であるゼリー容器を使用することが好ましく、さらには、最小の内径が容器深さよりも小であることが好ましい。
【0018】
上記ゼリー容器の素材は、通常のゼリー製造に使用するものであればよく、ガラス、プラスティック、陶器、シリコ−ン、ゴム、紙、竹、金属など、特に限定なく使用することが可能であるが、ゼリー容器を通してゲル色調を楽しむことが可能な点で、ガラス、プラスティックなどの透明性の高い素材を使用することが好ましい。また、ゲルが熱凝固性のものである場合には、耐熱性の高い素材を使用するのはもちろんである。
【0019】
本発明に使用するゼリー容器は、ゼリー容器の内底面が一個の平面から構成されるものであってもよいが、視覚的に変化のある外観の二層ゼリーを得るためには、内底面は曲面であることが好ましい。
上記曲面とは、一個の平面から構成されるものではないという意味であり、例えば平面に突起や凹面が存在するものや、複数の平面から構成される形状のものも含むものである。
【0020】
これは、内底面が一個の平面から構成されたゼリー容器を使用すると、上層のゲルの表面が平面となり、上方から見た場合に面白みに欠けるのに対し、例えば内底面がわん状、球面状、波状、円錐状、角錐状などの曲面である容器を使用すると、二層ゼリーを上方から見た場合に、上層のゲルの表面がわん状、球面状、波状、円錐状、角錐状などの形状を呈して見えるため、きわめて視覚的に優れた外観のゼリーを得ることができる。
【0021】
また、内底面が曲面であるゼリー容器を使用すると、以下に述べる本発明の容器入り二層ゼリーの製造方法において、製造が特に容易であることからも好ましい。
【0022】
さらに、上方から見て面白い外観を求める場合は、例えば底面に文字や絵画が刻印された型を使用することで、上層のゲルの表面に文字や絵画が浮かぶなど極めて面白く斬新な外観の二層ゼリーを得ることができる。
【0023】
なお、ゼリー容器の内底面は、ゼリー容器の内底面自体の形状を指してもよいし、非食性の物質、例えば比重の極めて重たい金属による図柄や文字状に成形した金属を底面に置く場合や、可食性のものであっても、ゲルには付着しないが内底面に付着しやすい固形物やペースト状物質等(マジパン、フラワーペースト、カラメル)を内底面に置く場合は、その表面を含めて内底面とする。
【0024】
本発明の容器入り二層ゼリーは、上層のゲルの比重が下層のゲルの比重より小であることが、製造時の安定性が良好な点及び保存時の層構造の安定性が良好な点で好ましい。
上層のゲルの比重が下層のゲルの比重より小とする方法としては、下層のゼリー液に上層のゼリー液よりも多量の糖など、水溶性物質を溶解させて比重を大とする方法、上層のゼリー液に水よりも比重の軽い油脂を含有する食品素材、例えば生クリームや濃縮乳などを使用する方法、上層のゼリー液に気相を含有させるなどして上層のゼリーの比重を小とする方法などがあげられ、その1種又は2種以上の方法を組み合わせて使用することができる。
【0025】
上層のゲルと下層のゲルとの比重差は、0.03以上あることが好ましく、より好ましくは0.07以上、さらに好ましくは0.1〜1.0である。
【0026】
本発明の二層ゼリーは、上層のゲルと下層のゲルの容積比が、好ましくは前者:後者=60:40〜10:90、より好ましくは45:55〜15:85である。上層のゲルの容積が60%を超えると、以下に述べる、本発明の容器入り二層ゼリーの製造方法において、容器内で反転上昇させることが極めて困難になり好ましくない。また、上層のゲルの容積が10%未満であると、別個の層として認識しにくいことに加え、以下に述べる、本発明の容器入り二層ゼリーの製造方法において、安定した形状の二層ゼリーを得ることが困難になってしまうおそれがあり好ましくない。
【0027】
本発明の容器入り二層ゼリーを得るためには、上層のゲルを製造した後、下層のゲルを製造する際に、該上層のゲルを上下反転すればよく、そのため、得られる該上層のゲルの表面形状は、内底面をそのまま模写したかたちで生成するものである。
すなわち、第1のゼリー液を、ゼリー容器に充填した後ゲル化して、上層となる第1のゲルを得た後、該第1のゲルより比重が大である第2のゼリー液を、該ゼリー容器に投入し、該第2のゼリー液で該第1のゲルを押し上げて、該第2のゼリー液を、該第1のゲルの下方に充填した後ゲル化して、下層のゲルとする際に、該第1のゲルを上下反転させる工程を含むものである。
【0028】
従って、従来の二層ゼリーの製造と同様、2回のゼリー液の充填により、表面のデコレーションまで同時に行うことができ、さらに、上層のゲルは下層のゲルの中に一部が沈んだ形となって固着しているため、保管中や輸送中でも上層のゲルが動くことがない。さらに、従来の二層ゼリーの製造方法のように、第2のゼリー液をゲル化させる際に慎重な扱いをしなくとも、上層のゲルが、第2のゼリー液に浮いた形となって、共振を抑えられるため、少々の振動ではゼリー容器からあふれることはない。
【0029】
本発明の容器入り二層ゼリーの具体的な製造方法としては、例えば下記(i)及び(ii)の方法をあげることができる。
(i)第1のゼリー液を、ゼリー容器に充填した後ゲル化して、上層となる第1のゲルを得た後、該第1のゲルより比重が大である第2のゼリー液を、該ゼリー容器中の第1のゲルの上面に投入し、該第2のゼリー液と該第1のゲルとの比重差により、該第2のゼリー液を、該第1のゲルと上記ゼリー容器の内壁面との間隙を通して該第1のゲルの下方に移行させ、該第2のゼリー液で該第1のゲルを押し上げて、該第2のゼリー液を、該第1のゲルの下方に充填した後ゲル化して、下層のゲルとする際に、第2のゼリー液がゲル化する前に、第1のゲルを上下反転させる工程を含むことにより、本発明の容器入り二層ゼリーを得る方法。
【0030】
(ii)第1のゼリー液を、ゼリー容器に充填した後ゲル化して、上層となる第1のゲルを得た後、該第1のゲルを貫通する注入口(断面積0.001〜1cm2程度の注入口)を該第1のゲルの上方に設け、該第1のゲルより比重が大である第2のゼリー液を、該注入口を通じて、該第1のゲルの下方に投入し、該第2のゼリー液で該第1のゲルを押し上げて、該第2のゼリー液を、該第1のゲルの下方に充填した後ゲル化して、下層のゲルとする際に、該第2のゼリー液がゲル化する前に、該第1のゲルを上下反転させる工程を含むことにより、本発明の容器入り二層ゼリーを得る方法。
【0031】
なお、ゼリー液の比重と該ゼリー液をゲル化して得られたゲルの比重は、略同一であり、ゼリー液の比重差はそのままゲルの比重差となる。
また、ゼリー液の容積と該ゼリー液をゲル化して得られたゲルの容積は、略同一であり、ゼリー液の容積比はそのままゲルの容積比となる。
【0032】
さらに、本発明の容器入り二層ゼリーの製造方法における、上記第1のゲルを上下反転させる工程について述べる。
本発明の容器入り二層ゼリーの製造方法において、ゼリー容器として、外傾したテーパー(好ましくは、1°〜50°:鉛直面に対する傾斜角度)が設けられている通常のゼリー容器を使用した場合、第2のゼリー液を第1のゲルの下方に投入し、該第2のゼリー液で該第1のゲルを押し上げる際に、軽く振揺することで、簡単に上下反転させることができる。特にテーパーの大きいゼリー容器や、上に述べたような内底面が曲面である容器を使用した場合は振揺せずとも自然に反転させることができる。
【0033】
これは、このような容器を使用した場合、第1のゲルは、ゲル化した際に断面積が上方にいくほど大きく、重心が上方に片よっているため、第2のゼリー液を投入して、押し上げられた際に転覆するがごとく上下反転するためである。特にわん状や球面状であると、回転半径が小さく容器の角に制限されることなく反転可能であることから、より容易に反転させることができ、特に好ましい。
【0034】
なお、テーパーのない容器や、逆テーパーのついた特殊な容器を使用した場合には、第1のゲルが第2のゼリー液を上昇させた後、該第2のゼリー液がゲル化する前に、例えば、ふたをして傾けたり、軽く振揺したり、軽くつつくなどの方法で反転させればよい。
【0035】
ここで、第1のゼリー液に使用するゲル化剤やゲル化素材、及び第2のゼリー液に使用するゲル化剤やゲル化素材は、求める食感により適宜選択可能であるが、第2のゼリー液に、全卵、卵白などの加熱凝固性のゲル化剤やゲル化素材を使用する場合は、そのゲル化の際に第1のゲルが溶解しないことが必要であるため、第1のゼリー液に使用するゲル化剤やゲル化素材として、熱不可逆性のゲル化剤を選定するか、第2のゼリー液のゲル化温度を第1のゲルの融解温度未満に設定することが必要である。
【0036】
本発明の容器入り二層ゼリーの製造方法としては、上記2種の方法の中でも、上記(i)の方法が、最も簡単に安定して生産が可能な点で最も好ましい。そして、この方法においては、第2のゼリー液を第1のゲルとゼリー容器との間隙を通して下方に移行させる方法が、ゼリー液の比重差を利用する方法であるため、特に加圧などの機械的な作用を要せずとも製造可能な点で特に好ましい。
【0037】
ここで、第1のゼリー液と第2のゼリー液との比重はどちらが小であっても製造可能であるが、特に密閉、反転する必要がなくそのままの状態で製造可能な点で、第1のゼリー液の比重の方が小であること(すなわち第2のゼリー液の比重の方が大であること)が好ましい。もちろん、先に述べたように、第1のゼリー液の比重が小であると、このように製造が容易であることに加え、保存安定性も良好である。
【0038】
なお、第2のゼリー液の比重の方が小である場合は、第2のゼリー液を投入後、ゼリー容器の開口部を密閉して反転静置することで、第2のゼリー液を第1のゲルとゼリー容器の内壁面との間隙を通して下方(ただし反転時の状態では第1のゲルの上方になる)に移行させた後、ゲル化することで、同様の効果を得ることができる。ただし、この方法では、上記第1のゲルを上下反転させる工程が困難であるため、用いない方が好ましい。
【0039】
上記(i)の方法では一見、第1のゲルとゼリー容器の内壁面との間隙を通して第2のゼリー液を第1のゲルの下方に移行させるのは困難であるように感じられるが、先に述べたとおり、ゼリー液は固化する際に収縮すること、及び通常のゼリー容器は、上方に向かって外傾したテーパーが設けられているため、第2のゼリー液が少量でも第1のゲルの下方に廻り込めば、あとは、両者の比重差によって自然に第1のゲルが上方に浮上し、これによってさらに第1のゲルとゼリー容器の内壁面との間隙は増すことで、さらに第2のゼリー液の下方への移動速度が加速するため、全く問題なく簡単に安定して二層ゼリーを得ることができる。
【0040】
第1のゲルがゼリー容器と密着して剥れにくい場合には、ゼリー容器を軽く振揺することで第2のゼリー液の移動を起こすことができる。また、それでも第2のゲルの移動が起こらない場合は、ゼリー容器を軽く湯煎などの方法で加熱して、内壁面に接した部分の第1のゲルを溶解することで第2のゼリー液の移動を起こすことができる。
【0041】
本発明の容器入り二層ゼリーの製造方法で、上記第1のゼリー液に使用するゲル化剤は冷却により凝固するものであることが好ましく、特に、カラギーナン、寒天及びジェランガムの中から選ばれる1種又は2種以上を使用したものである場合、得られる第1のゲルは収縮しやすく、また離水性が高いため、ゼリー容器の内壁面から剥れやすい点で好ましい。
【0042】
特に上記(i)の製造方法を採った場合、第1のゲルとゼリー容器の内壁面との間隙を生じやすく、下層のゲル化剤に短い時間で固まるようなゲル化剤を用いた場合でも、また、第2のゼリー液を下方に移行させながらゲル化しても、短い時間で第2のゼリー液を完全に下方に移行することが可能なので、第2のゼリー液が移行途中で固まってしまったり、第2のゼリー液の移行時間が掛かり過ぎてしまうこともない点で好ましい。
【0043】
本発明の二層ゼリーの製造方法で、上記第1のゼリー液に使用するゲル化剤の添加量は 、求めるゲル硬さにより適宜選択できるが、0.001〜1質量%であることが、ゼリー容器の内壁面から剥れやすいゲルを製造可能な点で好ましい。
【0044】
本発明の容器入り二層ゼリーの製造方法で、上記第2のゼリー液に使用するゲル化剤は冷却することで凝固するものであることが好ましく、特にゼラチン、HMペクチン及びLMペクチンの中から選ばれる1種又は2種以上を使用したものである場合、固化速度が遅く、深度の冷却をしないと固化しないため、時間に余裕があり、第1のゲルとゼリー容器の内壁面との間隙が少ない場合でも、また、第2のゼリー液を下方に移行させながら冷却しても、第2のゼリー液が移行途中で固まってしまったりすることがない点で好ましい。
【0045】
本発明の容器入り二層ゼリーの製造方法で、上記第2のゼリー液に使用するゲル化剤の添加量は、求めるゲル硬さにより適宜選択できるが、0.001〜1質量%であることが、第2のゼリー液の粘度が低いため第1のゲルの下方に移動させるのが容易である点で好ましい。
【0046】
本発明の容器入り二層ゼリーは、この二層だけで、上方から見た場合も、側面から見た場合も、視覚上十分変化のあるものであるが、さらに上面や下面に第三あるいはそれ以上の層のゲル層を積層してもよい。
【0047】
また、各ゲル層には果実、ナッツ、チョコチップ、クッキークラムなどの固形物を含ませてもよく、さらに、また二層ゼリーの上面にカラメルやピューレなどのソース類、ホイップドクリームやカスタードクリームなどのクリーム類、果実やチョコレート、クラッシュしたゼリーなどの固形物を積置してもよい。これらのトッピングを施すことで、水菓子でありながら、プリンアラモード、クリームソーダ、クリームパフェに似せた形態とすることができ、また、その場合、表面が平面でないため、それらの固形物が保管時や輸送中に表面を滑り、偏ってしまい商品価値を損ねてしまう問題がない点できわめて好ましい。
【0048】
本発明の容器入り二層ゼリーは、そのままカップチルドデザートとして、また、ゼリー容器から外して皿に載せてディッシュチルドデザートとして、また、ゲルが溶解しない程度に加温して温製デザートとすることもでき、また、トヨ型などの大きな型で製造してからスライスしてもよく、洋菓子、惣菜分野に広く使用することができる。
【実施例】
【0049】
〔実施例1〕
牛乳45質量部及び生クリーム44質量部を混合し、カラギーナン0.5質量部及び寒天0.5質量部をグラニュー糖10質量部中に分散したものを加えて80℃に加熱して完全に溶解し、これを50℃まで冷却して、ゲル化剤としてカラギーナンと寒天を併せて1.0質量部含有し、比重が0.88である第1のゼリー液を得た。
この第1のゼリー液30gを、開口部が直径50mm、全高が75mmで、内底面が半径25mmの球面であり、外傾したテーパー(下方から上方に向かって0°〜15°に連続変化する曲面状:鉛直面に対する傾斜角度)を有し、カップ容積150mlの足付きゼリー容器(PS66-150ダイアナカップ:株式会社東光製)に充填し、5℃の冷蔵庫で2時間冷却し、ゲル化させ、上層となる第1のゲルを形成させた。なお、ゼリー容器を100°傾けたところ、このゲルは容器から抜け、滑り落ちたことから、この第1のゲルは、収縮性が高く、また離水性の高いゲルであることが確認された。
【0050】
次いで、水51.9質量部、砂糖30質量部及び赤色色素0.000005質量部を混合して80℃まで加熱した後、ここに粉ゼラチン2質量部を水10質量部に3時間浸漬したものを添加、溶解させ、これを50℃まで冷却した後、ここに濃縮ストロベリー果汁4質量部、ストロベリーリキュール2質量部及びストロベリーフレーバー0.1質量部を添加混合して、ゲル化剤としてゼラチンを2質量部含有し、比重が1.10である第2のゼリー液を得た。
【0051】
ここで冷蔵庫より、先ほど製造した第1のゲルを形成してなるゼリー容器を取り出し、該第1のゲルの上面に、上記第2のゼリー液を80g流し込み、第1のゲルを押上げた後、軽く振揺し、第1のゲルを反転させ、再び5℃の冷蔵庫で3時間冷却し、該第2のゼリー液をゲル化させ、本発明の容器入り二層ゼリーを得た。
なお、第2のゼリー液は、第1のゲルの表面に少量残し、第1のゲルの下方に移行していた。
【0052】
得られた二層ゼリーの上層のゲルと下層のゲルの容積比は32:68であり、上層のゲルの上面は半径25mmの球面を形成しており、ゼリー容器の内底面の形状をそのままコピーしてなるものであり、あたかも、燈色の飲料の中にディディッシャーですくったクリームが浮いているかのような、クリームソーダ様の、面白い外観を有するものであった。
【0053】
〔実施例2〕
第1のゼリー液にカラメル色素を0.0001質量部添加したものとし、さらに、ゼリー容器を、開口部が直径66mm、全高が55mmで、内底面が直径30mmの平面であり、外傾したテーパー(20°:鉛直面に対する傾斜角度)を有し、カップ容積90mlのゼリー容器(エリーナM-EL-H6655デザートカップ;株式会社シンギ製)に変更した以外は、実施例1の配合、製法で、実施例2の二層ゼリーを得た。
得られた二層ゼリーの、上層のゲルの表面は台形状をしており、ゼリー容器の内底面の形状をそのままコピーしてなるものであり、上面から見るとプリンアラモードのような、面白い外観を有するものであった。
【0054】
〔実施例3〕
水66.8質量部、燈色色素0.000005質量部及びオレンジフレーバー0.1質量部を混合して80℃まで加熱した後、ここにカラギーナン0.5質量部及び寒天0.5質量部をグラニュー糖15質量部中に分散したものを加えて80℃に加熱して完全に溶解し、これを50℃まで冷却して、ゲル化剤としてカラギーナンと寒天を併せて1.0質量部含有し、比重が1.02である第1のゼリー液を得た。
【0055】
開口部が直径76mm、全高が70mmで、内底面が直径50mmの平面であり、外傾したテーパー(10°:鉛直面に対する傾斜角度)を有し、カップ容積185mlのゼリー容器(PS76-185スタンダードカップ:株式会社東光製)の底面に、マジパンで造形したバラの花を圧着させた後、第1のゼリー液を30g充填し、5℃の冷蔵庫で2時間冷却し、ゲル化させ、上層となる第1のゲルを形成させた。なお、ゼリー容器を100°傾けたところ、このゲルは容器から抜け、滑り落ちたことから、この第1のゲルは、収縮性が高く、また離水性の高いゲルであることが確認された。
【0056】
次いで、水51.9重量部、砂糖30重量部、赤色色素0.000005重量部を80℃まで加熱した後、ここに粉ゼラチン2重量部を水10重量部に3時間浸漬したものを添加、溶解させ、これを50℃まで冷却した後、ここに濃縮ストロベリー果汁4重量部、ストロベリーリキュール2重量部、オレンジフレーバー0.1重量部を添加混合し、ゲル化剤としてゼラチンを2重量部含有し、比重が1.10である第2のゼリー液を得た。
ここで冷蔵庫より、先ほど製造した第1のゲル層を形成してなるゼリー容器を取り出し、第1のゲル化層の上面に、上記第2のゼリー液を50g流し込み、第1のゲルを押上げた後、軽く振揺し、第1のゲルを反転させ、再び5℃の冷蔵庫で3時間冷却し、該第2のゼリー液をゲル化させ、本発明の容器入り二層ゼリーを得た。
なお、第2のゼリー液は、第1のゲルの表面に少量残し、第1のゲルの下方に移行していた。
【0057】
得られた二層ゼリーの上層のゲルと下層のゲルの容積比は39:61であり、上層のゲルの表面はバラの図柄を形成しており、ゼリー容器の内底面の形状をそのままコピーしてなるものであり、上面から見ると表面にバラの花の柄が刻まれたゼリーが浮いているかのような、面白い外観を有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上層のゲルの表面形状が、ゼリー容器の内底面の形状と略同一形状であることを特徴とする容器入り二層ゼリー。
【請求項2】
上記ゼリー容器が、開口部に向かって外傾している請求項1記載の容器入り二層ゼリー。
【請求項3】
上記ゼリー容器の内底面が、曲面である請求項1又は2記載の容器入り二層ゼリー。
【請求項4】
上記上層のゲルの比重が、上記下層のゲルの比重より小であり、且つ該上層ゲルと該下層ゲルの容積比(前者:後者)が60:40〜10:90である、請求項1〜3の何れかに記載の容器入り二層ゼリー。
【請求項5】
上記上層のゲルに使用するゲル化剤が、カラギーナン、寒天及びジェランガムの中から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜4の何れかに記載の容器入り二層ゼリー。
【請求項6】
上記下層のゲルに使用するゲル化剤が、ゼラチン、HMペクチン及びLMペクチンの中から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜5の何れかに記載の容器入り二層ゼリー。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の容器入りニ層ゼリーの製造方法であって、第1のゼリー液を、ゼリー容器に充填した後ゲル化して、上層となる第1のゲルを得た後、該第1のゲルより比重が大である第2のゼリー液を、該ゼリー容器に投入し、該第2のゼリー液で該第1のゲルを押し上げて、該第2のゼリー液を、該第1のゲルの下方に充填した後ゲル化して、下層のゲルとする際に、該第2のゼリー液がゲル化する前に、該第1のゲルを上下反転させる工程を含むことを特徴とする容器入り二層ゼリーの製造方法。
【請求項8】
上記第2のゼリー液を上記第1のゲルの上面に投入し、該第2のゼリー液と該第1のゲルとの比重差により、該第2のゼリー液を、該第1のゲルと上記ゼリー容器の内壁面との間隙を通して該第1のゲルの下方に移行させる、請求項7記載の容器入り二層ゼリーの製造方法。