説明

容器入り分離液状調味料

【課題】軽く振って油相を水相に分散させ、生野菜等の食材にかけて喫食した際に、水相に粉砕物として配合された前記野菜類そのものの風味がはっきりと認識でき、しかも、前記粉砕物が容器底部に沈殿し難く外観に優れた容器入り分離液状調味料を提供する。
【解決手段】野菜類の粉砕物が配合された水相(乳化相を除く)の上に、油相が積載された容器入り分離液状調味料であって、前記水相には、生換算した野菜類の粉砕物100部に対して生換算した卵黄0.05〜30部が加配され、前記水相の粘度が10〜300mPa・s、pHが2〜3.4であり、分離液状調味料が懸濁後分離するまでの時間が3分以内である容器入り分離液状調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水相に野菜類の粉砕物が配合された容器入り分離液状調味料に関し、より詳しくは、軽く振って油相を水相に分散させ、生野菜等の食材にかけて喫食した際に、水相に粉砕物として配合された前記野菜類そのものの風味がはっきりと認識でき、しかも、前記粉砕物が容器底部に沈殿し難く外観に優れた容器入り分離液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
香辛料や食酢で味付けした調味液にコク味を付与するためのサラダ油等を加えて、水相と油相とを分離状態とした容器入りの分離液状調味料が市販されている。この容器入り分離液状調味料は、軽く振って油相を水相に分散させた後、油相と水相とが分離する前に直ちに生野菜等の食材にかけて用いるが、分離液状調味料は、油相を水相に分散させたとしても、完全に安定な乳化状態となるわけではなく分離し易いものであることから、喫食の際には、油相と水相とが程よく分離した状態となる。そのため、喫食の際には調味された水相の味と、コク味付与のために加えた油相の味をそれぞれ直接味わうことができ、しかも、これらの味が程よく調和したバランスのよい味を楽しむことができる。
【0003】
ところで、タレ等の液状調味料に、すりおろしたニンジンを配合する場合がある。このように液状調味料にすりおろしたニンジン等を配合することにより、ニンジン等の風味を調味料に付与することができる。このような液状調味料としては、例えば、特開2000−262239号公報(特許文献1)には、ダイコンやニンジン等のおろしと当該おろしの沈殿を防止するためのα化澱粉等を配合した液状調味料が記載されている。このように、通常、すりおろした野菜を配合する液状調味料においては、すりおろし野菜の沈殿を防ぐために増粘材が配合されて増粘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−262239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、すりおろし野菜が配合され増粘材により増粘された従来の液状調味料に、サラダ油を加えて、水相と油相とを分離状態とした容器入りの分離液状調味料を製造した。しかしながら、当該分離液状調味料は、軽く振って生野菜にかけて喫食した場合、油のコクが強い一方、水相に配合されたすりおろし野菜の風味が弱く、全体として味のバランスが悪いものとなった。
【0006】
そこで、本発明者等は、油相と同時に食してもすりおろし野菜の風味をはっきりと認識できる分離液状調味料を得るため鋭意研究を行った結果、意外にも増粘材の配合せず水相粘度を低下させると、すりおろし野菜の風味がはっきり認識できることを見出したが、この場合、容器入り分離液状調味料を保管した際にすりおろし野菜が容器底部に沈殿して外観上好ましくないという問題が生じた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、軽く振って油相を水相に分散させ、生野菜等の食材にかけて喫食した際に、水相に粉砕物として配合された前記野菜類そのものの風味がはっきりと認識でき、しかも、前記粉砕物が容器底部に沈殿し難く外観に優れた容器入り分離液状調味料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、水相の粘度を低粘度に調整し、軽く振って使用する際に特定時間以内に分離するようにした分離液状調味料は、水相に配合された野菜類の粉砕物そのものの風味がはっきりと認識できるようになること、更に、卵黄を特定pH以下に調整した水相に配合した場合、当該卵黄は、水相と油相に分離する分離液状調味料の性質を損なわずに、低粘度の水相中における野菜類粉砕物の沈殿を防止する性質を有することを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、野菜類の粉砕物が配合された水相(乳化相を除く)の上に、油相が積載された容器入り分離液状調味料であって、前記水相には、生換算した野菜類の粉砕物100部に対して生換算した卵黄0.05〜30部が加配され、前記水相の粘度が10〜300mPa・s、pHが2〜3.4であり、以下の手順で測定される、分離液状調味料が懸濁後分離するまでの時間が3分以内である容器入り分離液状調味料である。
手順:
1.100mLメスフラスコに分離液状調味料70gを入れ1日間静置する。1日間静置後の水相と油相の界面の高さをaとする。
2.分離液状調味料を入れた前記メスフラスコを、垂直往復振とう式の振とう機で300r/min、振幅40mmの振とう条件で20秒間振とうし、分離液状調味料を懸濁状態とする。
3.振とう後、静置して、水相と懸濁相の界面が前記高さaの70%の高さとなるまでの時間を測定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の容器入り分離液状調味料は、水相に野菜類の粉砕物が配合された容器入り分離液状調味料であり、軽く振って油相を水相に分散させた後、食材にかけて喫食した際に、水相に配合された前記野菜類そのものの風味がはっきりと認識でき、その結果、コク味付与のために加えた油相の味と野菜類の風味が程よく調和したバランスのよい味を楽しむことができる。しかも、容器入り分離液状調味料として保管する場合には、前記野菜類の粉砕物が容器底部に沈殿し難く外観に優れた分離液状調味料となる。したがって、このような本発明の容器入り分離液状調味料を提供することで、容器入り分離液状調味料の更なる需要の拡大が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の容器入り分離液状調味料を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
本発明において、分離液状調味料とは、水相(乳化相を除く)の上に油相が積載された液状調味料をいい、具体例としては、生野菜にかけて使用するサラダ用の分離液状ドレッシングや、パスタ、肉等にかけて使用する分離液状ソース等が挙げられる。また、容器入り分離液状調味料とは、分離液状調味料が容器詰めされたものであり、これにより、保管が可能となるとともに、容器ごと振とうして分離液状調味料の油相を水相に分散させた後、生野菜等の様々な食材にかけて使用することができる。
【0013】
本発明の分離液状調味料の水相には、野菜類の粉砕物が配合されている。野菜類の粉砕物とは、野菜類に粉砕処理を施したものである。粉砕処理とは、食材を細かく砕く処理をいい、このような処理としては、マスコロイダー、コミットロール、サイレントカッター等の粉砕処理装置、裏ごし器、シノワ等の裏ごし処理装置、おろし金等を用いたすりおろし処理装置等を用いて行うことができる。これら粉砕処理は、常法に準じて行えばよく、粉砕処理の程度としては、野菜類の粉砕物の大きさが好ましくは3mm以下程度の大きさとなるように行えばよい。
【0014】
粉砕物とする野菜類としては、特に制限は無く、例えば、ニンジン、ダイコン、カブ、ゴボウ、ジャガイモ、玉ねぎ、リーキ、ニンニク、ショウガ、キャベツ、レタス、パセリ、バジル、シソ、ホウレンソウ、パプリカ、トマト、ナス、カボチャ等が挙げられる。なお、本発明で用いるこれら野菜類の粉砕物は乾燥品であってもよい。
【0015】
前記野菜類の粉砕物の配合量は、あまり少なくても野菜類の風味が充分に得られ難く、一方、あまり多すぎてもざらつき等が生じて口当たりが悪くなる場合があることから、水相に対して好ましくは生換算で0.1〜20%、より好ましくは0.5〜15%である。
【0016】
上述した野菜類の粉砕物が配合された本発明の分離液状調味料は、以下の手順で測定される、分離液状調味料が懸濁後分離するまでの時間が3分以内であるという特徴を有する。
【0017】
手順:
1.100mLメスフラスコに分離液状調味料70gを入れ1日間静置する。1日間静置後の水相と油相の界面の高さをaとする。
2.分離液状調味料を入れた前記メスフラスコを、垂直往復振とう式の振とう機(タイテック株式会社製「RECIPRO SHAKER SR−2W」)で300r/min、振幅40mmの振とう条件で20秒間振とうし、分離液状調味料を懸濁状態とする。
3.振とう後、静置して、水相と懸濁相の界面が前記高さaの70%の高さとなるまでの時間を測定する。なお、前記懸濁相とは、乳化相を意味する。また、水相と懸濁相の界面が前記高さaの70%の高さとなることは、懸濁状態とした後、水相の少なくとも70%が分離したことを意味する。
【0018】
前記条件を満たす本発明の分離液状調味料は、振とうにより懸濁しても短時間で油相と水相に分離する性質を有することを意味する。このような性質を有する本発明の分離液状調味料は、軽く振って油相を水相に分散させ、生野菜等の食材にかけて喫食した際に、水相に粉砕物として配合された前記野菜類そのものの風味がはっきりと認識できるものとなる。これに対し、振とうにより懸濁した後、前記短時間で油相と水相に分離しない分離液状調味料は、野菜類の風味をはっきりと認識し難いものとなる。
【0019】
振とうにより懸濁した後、短時間で油相と水相に分離する性質とするため、本発明の分離液状調味料の水相粘度は、10〜300mPa・sに調整されている。前記水相の粘度としては、粘度低いほど、振とうにより懸濁した後、より短時間で油相と水相に分離しやすくなり、水相に粉砕物として配合された野菜類の風味がよりはっきりと感じられることから、本発明の水相粘度は、好ましくは10〜200mPa・sである。これに対して、水相の粘度が前記範囲よりも高いと、振とうにより懸濁した後分離し難く野菜類粉砕物の風味を充分に認識できず好ましくない。なお、本発明の水相粘度は、野菜類の粉砕物により10mPa・s以上となる。
【0020】
水相の粘度を前記範囲に調整するには、増粘材の配合量を少量に止めることが好ましく増粘材を配合しないことがより好ましい。具体的には、増粘材の配合量は、水相に対して好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下であり、増粘材を配合しないことが特に好ましい。なお、前記増粘材としては、澱粉、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ゼラチン等が挙げられる。また、本発明における前記水相の粘度は、油相と分離した水相の粘度を、BH形粘度計で、品温20℃、回転数:20rpmの条件で、ローターNo.1を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した値である。
【0021】
次に、本発明の分離液状調味料の水相には、生換算した野菜類の粉砕物100部に対して生換算した卵黄0.05〜30部が配合され、水相のpHが2.5〜3.4に調整されている。
【0022】
卵黄は、元来乳化力を有するが、本発明においては、卵黄が特定pHに調整した水相に配合されることから、卵黄の乳化力が低減されている。このような乳化力が低減した卵黄が野菜類の粉砕物に対して特定量配合されることで、低粘度の水相中における野菜類粉砕物の沈殿を防止することができる。
【0023】
本発明における前記水相のpHに関し、pHが低いほど、振とうにより懸濁した後、より短時間で油相と水相に分離しやすくなり、水相に粉砕物として配合された野菜類の風味がよりはっきりと感じられることから、本発明の水相前記水相pHは、好ましくは2.5〜3.1である。これに対して、水相のpHが前記範囲よりも高いと、振とうにより懸濁した後分離し難く野菜類粉砕物の風味を充分に認識できず好ましくない。また、水相pHが前記範囲よりも低いと酸味が強くなりすぎて好ましくない。なお、本発明の前記水相pHは、油相と分離した水相のpHを、品温20℃においてpHメーター(MP225、メトラー・トレド社製)を用いて測定した値である。
【0024】
前記卵黄としては、液状調味料において一般的に用いているものを使用することができ、例えば、鶏卵を割卵し卵白と分離して得られた生卵黄、当該生卵黄に殺菌処理、冷凍処理、濾過処理、スプレードライ又はフリーズドライ等の乾燥処理、ホスフォリパーゼA1、ホスフォリパーゼA2、ホスフォリパーゼC、ホスフォリパーゼD又はプロテアーゼ等による酵素処理、酵母またはグルコースオキシダーゼ等による脱糖処理、超臨界二酸化炭素処理又は亜臨界二酸化炭素処理等の脱コレステロール処理、食塩又は糖類等の混合処理等の1種または2種以上の処理を施したものを使用することができる。また、卵黄としては、鶏卵を割卵して得られる全卵、もしくは卵黄と卵白とを任意の割合で混合したもの、又はこれらに上述の処理を施したものなどを用いてもよい。このように全卵、あるいは卵黄と卵白を混合したものを使用する場合、卵黄部分が本発明の卵黄に相当する。
【0025】
水相のpHを前記範囲に調整するには、食品に供される酸材を配合すればよく、このような酸材としては、例えば、酢酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸、あるいは前記有機酸を主成分として含有した食酢、柑橘果汁等の天然原料等が挙げられる。特に、食酢は、酢酸を主成分としたもので、安価でpHを効率よく下げることができることから好ましい。酸材の添加量としては、前記pHとなるように適宜調整すればよい。
【0026】
野菜類の粉砕物に対する卵黄の配合量は、あまり少なすぎても野菜類の粉砕物の沈殿防止効果が充分に得られ難く、一方、必要以上に多いと振とうにより懸濁後、短時間で油相と水相に分離する上述した条件を満たし難くなる。したがって、卵黄の配合量は、野菜類の粉砕物100部に対して生換算で好ましくは0.1〜30部、より好ましくは0.1〜20部である。
【0027】
また、上述した本発明の分離液状調味料の水相には調味原料が配合されるが、調味原料としては、一般的に使用されているものであれば特に制限はなく、例えば、食塩、砂糖、醤油、味噌、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、食酢、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
一方、本発明の油相としては、従来の分離液状調味料と同様に食用油脂から構成され液状とされたものである。食用油脂とは、トリアシルグリセロール又はジアシルグリセロールを主成分とする脂質のことである。本発明においては、従来の分離液状調味料で使用される種々の食用油脂を使用することができ、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ひまわり油、綿実油、ごま油、こめ油、パーム油、パームオレイン、オリーブ油、落花生油、やし油、しそ油、牛脂、ラード、魚油等の動植物油又はこれらの精製油、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素処理等を施して得られる油脂等が挙げられる。
【0029】
本発明における水相と油相の配合割合としては、分離液状調味料で調味する食材等により適宜調節すればよいが、調味された水相の味とコク味を付与する油相の味のバランスを考慮すると、分離液状調味料を100部とした時に、水相を5〜80部、油相を20〜95部とすることが好ましい。
【0030】
なお、本発明の容器入り分離液状調味料には、上述した水相原料である調味原料、野菜類の粉砕物、卵黄、増粘材、更に油相原料である食用油脂以外に本発明の効果を損なわない範囲で分離液状調味料に一般的に使用されている各種原料を適宜選択し配合させることが出来る。このような原料としては、例えば、澱粉分解物、デキストリン、デキストリンアルコール等の糖類、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤、並びにのり、しいたけ、ナッツ、ベーコン等の具材等が挙げられる。
【0031】
また、本発明で使用する容器としては、軽い振とうにより内容物が混合し易いものであれば特に限定するものではなく、具体的には、一般に液状調味料等に使用されるガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン等からなる透明の蓋付容器等が挙げられる。なお、容器の大きさは、片手で振とうし易いことから、内容量が1L以下のものが好ましい。
【0032】
上述した本発明の容器入り分離液状調味料は、従来の一般的な容器入り分離液状調味料の製造方法に準じて製することができる。例えば、一般的に分離液状調味料の原料として使用されている調味原料、清水等から本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択し、これらに野菜類の粉砕物、卵黄を加えて常法に準じて水相を調製した後、得られた水相及び油相である食用油脂を蓋付容器に充填して水相の上に油相を積載させ、次いで密栓することにより、容器入りの分離液状調味料を製することができる。
【0033】
次に、本発明を実施例、比較例及び試験例に基づき、更に説明する。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
下記の配合割合に準じ、本発明の容器入り分離液状調味料を製した。すなわち、まず、撹拌タンクに全水相原料を投入して均一に混合することにより、水相を調製した。そして、分離液状調味料の容量が250mLとなるように250mL容量の蓋付きPET容器に上記水相を充填した後に、残りの油相であるサラダ油を充填して水相の上に油相を積載させ、次いで密栓し、容器入り分離液状調味料を製した。
【0035】
なお、ニンジンピューレ及びタマネギピューレは、大きさ1mm以下のものを、ガーリックミンチは大きさ3mm以下のものを用いた。また、生換算した卵黄の配合量は、生換算した野菜の粉砕物(ニンジンピューレ、タマネギピューレ及びガーリックミンチ)100部に対して0.4部であった。また、得られた容器入り分離液状調味料の水相の粘度は60mPa・s、pHは2.9であった。
【0036】
<分離液状調味料の配合割合>
(油相原料)
サラダ油 60%
(水相原料)
ワインビネガー 20%
ニンジンピューレ 2%
タマネギピューレ 2%
ガーリックミンチ 1%
食塩 1%
生卵黄 0.02%
清水 残余
―――――――――――――――――
合計 100%
【0037】
[実施例2]
実施例1において、ニンジンピューレの配合量を7%に増やし、その増加分は清水の配合量を減らして補正した以外は同様にして容器入り分離液状調味料を製した。
【0038】
[実施例3]
実施例1において、α化澱粉を0.1%配合し、その増加分は清水の配合量を減らして補正した以外は同様にして容器入り分離液状調味料を製した。
【0039】
[実施例4]
実施例1において、生卵黄の配合量を0.005%に減らし、その減少分は清水の配合量を増やして補正した以外は同様にして容器入り分離液状調味料を製した。
【0040】
[比較例1]
実施例1において、生卵黄を配合せず、その減少分は清水の配合量を増やして補正した以外は同様にして容器入り分離液状調味料を製した。
【0041】
[比較例2]
比較例1において、α化澱粉を0.8%配合し、その増加分は清水の配合量を減らして補正した以外は同様にして容器入り分離液状調味料を製した。
【0042】
[比較例3]
実施例1において、生卵黄の配合量を0.001%に減らし、その減少分は清水の配合量を増やして補正した以外は同様にして容器入り分離液状調味料を製した。
【0043】
[試験例1]
実施例1乃至4、並びに比較例1乃至3の容器入り分離液状調味料について、[発明を実施するための形態]に記載されている方法で、水相の粘度、及び分離液状調味料が懸濁後分離するまでの時間を測定した。
【0044】
次に、実施例1乃至4、並びに比較例1乃至3の容器入り分離液状調味料について、1日間静置(20℃)した後、水相における野菜類粉砕物の沈殿状態を下記評価基準により評価した。更に、各容器入り分離液状調味料を上下に5回振って油相を水相に分散させた後、それぞれの調味料20gずつをカットレタス(3cm×3cmの大きさにカットしたもの)全体にいきわたるようにかけることにより野菜サラダを製し、これを喫食して分離液状調味料の野菜類粉砕物の風味について評価した。なお、いずれの分離液状調味料も水相pHは実施例1と略同じであった。結果を表1に示す。
【0045】
<沈殿状態の評価基準>
A:略水相全体に分散しており、外観が大変よい。
B:水相の2/3の高さより下方に分散しており、外観がよい。
C:水相の1/5の高さより下方に分散しており、やや外観が悪い。
D:容器底部に沈殿しており、外観が悪い。
【0046】
<分離液状調味料の野菜類粉砕物の風味の評価基準>
A:ニンジン、タマネギ及びガーリック風味を強く認識できる。
B:ニンジン、タマネギ及びガーリック風味を認識できる。
C:ニンジン、タマネギ及びガーリック風味がわずかに認識できる。
D:ニンジン、タマネギ及びガーリック風味を認識できない。
【0047】
【表1】

【0048】
表1より、振とうにより懸濁した後、分離するまでの時間が3分以内である実施例1乃至4、並びに比較例1及び3の分離液状調味料は、水相に粉砕物として配合された野菜類粉砕物の風味を認識できるのに対し、前記分離するまでの時間が3分を超える場合は、野菜類粉砕物の風味を認識できず好ましくないことが理解される。ここで、水相粘度に関し、水相粘度が10〜300mPa・sである実施例1乃至4、並びに比較例1及び3の分離液状調味料は、懸濁後分離するまでの時間が3分以内であったのに対し、水相粘度が前記範囲よりも高い比較例2は、懸濁後分離するまでの時間が3分を超えることが理解される。また、前記水相粘度としては、粘度が10〜200mPa・sである実施例1及び2は、懸濁後より短時間で分離し、水相に粉砕物として配合された野菜類粉砕物の風味を強く認識でき大変好ましかった。
【0049】
水相における野菜類粉砕物の沈殿状態に関しては、水相粘度が10〜300mPa・s、pHが2.5〜3.4であり、生換算した野菜類の粉砕物100部に対し生換算した卵黄0.05〜30部が配合された実施例1乃至4の分離液状調味料は、水相粘度が低いにもかかわらず、タマネギ粉砕物の沈殿が防止されて外観がよいのに対し、卵黄配合量が前記範囲よりも少ない比較例3及び卵黄を配合していない比較例1の分離液状調味料は、タマネギ粉砕物が沈殿して外観が悪かった。
【0050】
[試験例2]
実施例1において、水相のpHが、2.5、2.9、3.1、3.4及び3.8となるようにワインビネガーの配合量を変え、その減少分又は増加分は清水の配合量で補正した以外は同様にして5種類の容器入り分離液状調味料を製した。次に、これら5種類の容器入り分離液状調味料について[発明を実施するための形態]に記載されている方法で、分離液状調味料が懸濁後分離するまでの時間を測定した。また、これら5種類の容器入り分離液状調味料について、1日間静置(20℃)した後の水相の沈殿状態を試験例1と同様に評価した。更に、これら5種類の容器入り分離液状調味料を使用して野菜サラダを製し、これらを喫食して分離液状調味料の野菜類粉砕物の風味について試験例1と同様に評価した。なお、いずれの分離液状調味料も水相粘度は実施例1と略同じであった。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2より、水相pHが2.5〜3.4である2−1〜2−4の分離液状調味料は、懸濁後分離するまでの時間が3分以内であり、これらの分離液状調味料は、野菜類粉砕物の風味を認識でき好ましかったのに対し、pHが前記範囲よりも高い2−5の分離液状調味料は、懸濁後分離するまでの時間が3分を超え野菜類粉砕物の風味を充分に認識できず好ましくないことが理解される。また、前記水相pHとしては、pHが2.5〜3.1である2−1〜2−4の分離液状調味料は、懸濁後より短時間で分離し、水相に粉砕物として配合された野菜類粉砕物の風味を強く認識でき大変好ましかった。
【0053】
[実施例4]
下記の配合割合に準じ、本発明の容器入り分離液状調味料を製した。すなわち、まず、撹拌タンクに全水相原料を投入して均一に混合することにより、水相を調製した。そして、分離液状調味料の容量が250mLとなるように250mL容量の蓋付きPET容器に上記水相を充填した後に、残りの油相であるサラダ油を充填して水相の上に油相を積載させ、次いで密栓し、容器入り分離液状調味料を製した。
【0054】
なお、ダイコンおろしは、大きさ3mm以下のものを、ショウガミンチ及びシソミンチは大きさ3mm以下ものを用いた。また、生換算した卵黄の配合量は、生換算した野菜の粉砕物(ダイコンおろし、ショウガミンチ及びシソミンチ)100部に対して14部であった。また、得られた容器入り分離液状調味料の水相の粘度は160mPa・s、pHは2.7であった。
【0055】
<分離液状調味料の配合割合>
(油相原料)
サラダ油 50%
(水相原料)
穀物酢 30%
ダイコンおろし 0.5%
ショウガミンチ 0.1%
シソミンチ 0.1%
食塩 1%
チキンエキス 0.1%
生卵黄 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――
合計 100%
【0056】
得られた容器入り分離液状調味料は、1週間静置(20℃)した後、水相における野菜類粉砕物の沈殿状態を評価したところ、略水相全体に分散しており、外観が大変よかった。また、得られた容器入り分離液状調味料を上下に5回振って油相を水相に分散させた後、20gをカットレタス(3cm×3cmの大きさにカットしたもの)全体にいきわたるようにかけることにより野菜サラダを製した。得られた野菜サラダは、水相に粉砕物として配合されたダイコンおろし、ショウガミンチ及びシソミンチのそれぞれの野菜類風味がはっきりと認識でき大変好ましかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜類の粉砕物が配合された水相(乳化相を除く)の上に、油相が積載された容器入り分離液状調味料であって、前記水相には、生換算した野菜類の粉砕物100部に対し生換算した卵黄0.05〜30部が加配され、前記水相の粘度が10〜300mPa・s、pHが2.5〜3.4であり、以下の手順で測定される、分離液状調味料が懸濁後分離するまでの時間が3分以内であることを特徴とする容器入り分離液状調味料。

手順:
1.100mLメスフラスコに分離液状調味料70gを入れ1日間静置する。1日間静置後の水相と油相の界面の高さをaとする。
2.分離液状調味料を入れた前記メスフラスコを、垂直往復振とう式の振とう機で、300r/min、振幅40mmの振とう条件で20秒間振とうし、分離液状調味料を懸濁状態とする。
3.振とう後、静置して、水相と懸濁相の界面が前記高さaの70%の高さとなるまでの時間を測定する。