説明

容器入食品の製造方法

【課題】 ゲル化物中に液状物を大小の塊状に封入した容器入食品を提供する。
【解決手段】 容器20に冷却原料液11を充填した後に,加温ゲル化剤溶液を充填して,ゲル化開始温度以下としたゲル化物溶液12を形成する。その後にゲル化物溶液12に対して,その上部からノズルを用いて液状物13を加圧充填する。ゲル化物溶液12の未ゲル化部位に液状物13が選択的に入って該未ゲル化部位に残留することによって,容器20の全体に大小適宜の独立し又は連続した液状物を封入分布させることができる。コーヒーゼリーにクリーム,ヨーグルト中に液状のジャムソースのように,ゲル化物10と液状物13の味覚を同時に味わう嗜好性に優れた商品とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えばコーヒーゼリー,プリンの如くにゲル化物とクリーム,カラメル等の液状物の双方を充填した容器入食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種コーヒーゼリー,プリン等は,例えばゲル化物とクリーム,カラメル等を容器中に複層に配置したものとされており,出願人は,ゲル化物の溶液に,例えばクリーム等のトッピングを供給するについて,該トッピングをゲル化物溶液に対して雨垂れ状に断続滴下して,その混濁を防止してこれらの境界を明確に確保するようにした提案を行っている(特許文献1)。
【0003】
一方,ゲル化物と液状物又は泡状物の双方を容器充填した食品として,食生活の多様化に伴い,新規な外観を呈する食品への嗜好性を高める目的で,容器底部に,クリーム,ホイップクリーム,ムース,メレンゲ等の比重の軽い食品を塊状に配置し,該容器上部にこれを覆うようにゼリー等の比重の重いゲル化した食品を配置した容器入食品が提案されており,これによれば底部に逆テーパーの凹陥部を配置した容器を用いて,クリーム等を先行充填して凹陥部のアンカー作用によってこれを容器底部に固定し,次いで容器内壁面に沿ってゼリー溶液を静かに後続充填し,先行充填物を囲み込んで盛上げ状とするようにしたものとされている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特願2005−254824号
【特許文献2】特開平7−264988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように,例えばコーヒーゼリー等の容器入食品は完成度の高いものとなっているが,その形態がありふれているために,市場への訴求力が乏しくなる傾向もあり,一方では,後者の如くに,容器中でゲル化物と液状乃至泡状物を分離配置することによって,市場への訴求力を高める容器入食品の提案もなされているが,後者のものにあって,例えばそれ自体の保形性を期待し得ない,液状クリーム等を用いた場合,上記製造方法によってこれを容器底部に塊状に配置することには困難が予想される上,特殊容器を必要とすること,ゲル化物溶液の充填に特殊措置を必要とすること等,生産上の煩雑さが予想される。
【0006】
一方,例えばコーヒーゼリーにはクリームといったように,容器入食品のゲル化物とともに使用するトッピング等添加物は,その組合せが一般に定着しているものが多く,従ってゲル化食品に泡状物を配置することも可能であるが,該定着した組合せに従って液状物を用いることも,市場の訴求力を高める上で有効である。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,ゲル状物と液状物の双方を容器充填して,市場に対する訴求力を確保するとともに嗜好性に優れた新規な容器入食品の製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に沿って,本発明は,容器にゲル化物をなす冷却原料液とこれをゲル化するゲル化剤液を同時又は順次に先行充填してその容器内ゲル化を開始進行する一方,これに液状物を加圧して後続充填し,容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液(ゲル化進行物といってもよい)の未ゲル化部位に液状物を浸透供給して,これらゲル化物溶液と液状物を容器内にランダムに分布配置した後に容器の密封と冷却を行うようにして,例えばコーヒーゼリーと液状のクリーム,果汁ゼリーに液状の果汁ソース乃至クリーム,ヨーグルトと液状のジャムソース,プリンと液状のカラメルの如くに,ゲル化物と液状物を配置して,ストローで吸引飲食してゲル化物と液状物の味覚を同時に味わい得るようにした容器入食品を製造し得るようにしたものであって,即ち,請求項1に記載の発明を,ゲル化物と液状物の双方を容器に充填してストローによる吸引飲食用とした食品の製造方法であって,容器に先行充填した容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液に対して液状物を加圧して後続充填することによって,該ゲル化物溶液の未ゲル化部位に液状物を浸透供給してゲル化物溶液と液状物を容器内にランダムに分布配置した後,シール蓋により容器を密封し且つ冷却することを特徴とする容器入食品の製造方法としたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は,容器入食品のゲル化物と液状物をゲル化物中に液状物を塊状に封入配置したものとするように,これを,ゲル化物と液状物の双方を容器に充填してストローによる吸引飲食用とした食品の製造方法であって,容器に先行充填した容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液に対して液状物を加圧して後続充填することによって,該液状物をゲル化物溶液の未ゲル化部位に対して独立又は連続した大小適宜の塊状に封入配置した後,シール蓋により容器を密封し且つ冷却することを特徴とする容器入食品の製造方法としたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は,容器入食品のゲル化物と液状物を混在配置(混合配置といってもよい)したものとするように,これを,ゲル化物と液状物の双方を容器に充填してストローによる吸引飲食用とした食品の製造方法であって,容器に先行充填した容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液に対して液状物を加圧して後続充填することによって,該ゲル化物溶液をその未ゲル化部位で破断分離して該ゲル化物溶液と液状物を混在配置した後,シール蓋により容器を密封し且つ冷却することを特徴とする容器入食品の製造方法としたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は,容器入食品のゲル化物と液状物を上記封入配置と混在配置の双方の配置を備えるものとするように,これを,ゲル化物と液状物の双方を容器に充填してストローによる吸引飲食用とした食品の製造方法であって,容器に先行充填した容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液に対して液状物を加圧して後続充填することによって,該液状物をゲル化物溶液の未ゲル化部位に対して大小適宜の塊状に封入配置し且つ該ゲル化物溶液をその未ゲル化部位で破断分離して該ゲル化物溶液と液状物を混在配置した後,シール蓋により容器を密封し且つ冷却することを特徴とする容器入食品の製造方法としたものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は,上記液状物の後続充填は,ノズルを容器の底部に挿入して行い,またノズルでゲル化物溶液の上部から行うことが可能であるが,後者とすることにより挿入を避け,容器入食品の量産と衛生確保をなし得るものとするように,これを,上記液状物の後続充填を,上記容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液に対して,その上部からノズルを用いて行うことを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の容器入食品の製造方法としたものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は,上記ゲル化物溶液を,冷却した原料液と,例えば50±10℃程度の低温としたゲル化剤液を容器充填することによって,容器内ゲル化を有効且つ適切に行うものとするように,これを,上記ゲル化進行中のゲル化物溶液を,冷却原料液と低温ゲル化剤液を同時又は順次に容器充填して容器内でこれらのゲル化を開始することによって形成することを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載の容器入食品の製造方法としたものである。
【0014】
請求項7に記載の発明は,上記液状物を,冷却して充填することによって,該液状物が,ゲル化物溶液の未ゲル化部位のゲル化を促進して,ゲル化物と液状物の配置を可及的簡易にして確実になし得るものとするように,これを,上記後続充填する液状物を,冷却した液状物とすることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載の容器入食品の製造方法としたものである。
【0015】
請求項8に記載の発明は,上記液状物が底部や中間部に集中することなく,これをゲル化物中に可及的均一に分散して配置を可及的簡易にして確実になし得るものとするように,これを,上記ゲル化物溶液の原料液とゲル化剤液及び液状物の比重を可及的に同等とすることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7に記載の容器入食品の製造方法としたものである。
【0016】
請求項9に記載の発明は,上記ストローによる吸引飲食に際して,ゲル化物と液状物の同時の味覚を味わうに適した容器入食品とするように,これを,上記容器に先行充填する冷却原料液とゲル化剤液の充填量を85±10wt%,加圧して後続充填する液状物の充填量を15±10wt%とすることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7又は8に記載の容器入食品の製造方法としたものである。
【0017】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,容器にゲル化物の冷却原料液とこれをゲル化するゲル化剤液を同時又は順次に先行充填してその容器内ゲル化を開始進行する一方,これに液状物を加圧して後続充填し,容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液(ゲル化進行物といってもよい)の未ゲル化部位に液状物を浸透供給して,これらゲル化物溶液と液状物を容器内にランダムに分布配置した後に容器の密封と冷却を行うようにして,例えばコーヒーゼリーと液状のクリーム,果汁ゼリーに液状の果汁ソース乃至クリーム,ヨーグルトと液状のジャムソース,プリンと液状のカラメルの如くに,ゲル化物と液状物を配置して,ストローで吸引飲食してゲル化物と液状物の味覚を同時に味わい得るようにして,市場への訴求力を確保するとともに嗜好性に優れた容器入食品の製造方法を提供することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明は,容器入食品のゲル化物と液状物をゲル化物中に液状物を塊状に封入配置することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は,容器入食品のゲル化物と液状物を混在配置することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は,容器入食品のゲル化物と液状物を上記封入配置と混在配置の双方の配置を備えることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は,上記液状物の後続充填を,ノズルでゲル化物溶液の上部から行うことによって,ゲル化物溶液へのノズルの挿入を避け,容器入食品の量産と衛生確保をなし得るものとすることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は,上記ゲル化物溶液を,冷却した原料液と,例えば50±10℃程度の低温としたゲル化剤液を容器充填することによって,容器内ゲル化を有効且つ適切に行うものとすることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明は,上記液状物を,冷却して充填することによって,該液状物が,ゲル化物溶液の未ゲル化部位のゲル化を促進して,ゲル化物と液状物の配置を可及的簡易にして確実になし得るものとすることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は,上記液状物が底部や中間部に集中することなく,これをゲル化物中に可及的均一に分散して配置を可及的簡易にして確実になし得るものとすることができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は,上記ストローによる吸引飲食に際して,ゲル化物と液状物の同時の味覚を味わうに適した容器入食品とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明を更に具体的に説明すれば,Aは容器入食品であり,該容器入食品Aは,ゲル化物10と液状物13の双方を容器に充填してストロー22による吸引飲食用としたものとしてあり,本例にあって該容器入食品Aは,例えばゲル化物10をコーヒーゼリー乃至フルーツゼリーとし,液状物13,本例にあっては該液状物をクリームとした,合成樹脂製容器を用いたチルド食品としてあり,このときコーヒーゼリー乃至フルーツゼリーは,例えばストロー吸引に適した粘度の,ゼリー強度をやや低下した軟質のものとすることによって,ストロー22による吸引飲食用としたものとしてある。
【0028】
従って,該容器入食品Aをストロー22で吸引することによって,コーヒーゼリー乃至フルーツゼリーとクリームとを同時又は個別に,それぞれの味覚を味わいながら飲食し得るようにして,これによって,従来のクリームを組み合わせた容器入のコーヒーゼリー乃至フルーツゼリーにない,吸引で崩れてツルっとしたゼリー感と,幾分粘度のある液状のクリーム感,上記外周の混和したコーヒーミルク乃至フルーツミルク感等の食感を賞味し得るものとしてある。
【0029】
本例のストロー22は,これを太径の容器差込管23と細径の吸引管24とを伸縮自在にスライド嵌合することによって,吸引方向中間位置でストロー管の断面積を縮小変化して,可及的容易に,この種ゲル化した食品を吸引し得るようにしてある。このように吸引方向中間位置で断面積を縮小変化することによって,ゲル化した吸引流体の流速を加速し吸引流体の流れにおける乱れを減少して,ストロー管内での吸引力のロスを解消乃至減少して,ストロー管内の抵抗増加を解消乃至抑制し,その結果,例えば容器差込管の内径を8mm程度としたとき,従来の,細径の容器差込管と太径の吸引管を用いたストローに対して,その吸引力を10%乃至それ以上減少することによって,吸引飲食を容易に行い得るものとしてある。これは従来のストローが,吸引方向中間位置の断面積拡大変化に起因する吸引流体の流速の減少によって,吸引圧の増加,流れの乱流化,ストロー管内部の抵抗増加,吸引力のロス(圧力損失)を招くために,このロス分に応じて吸引力が大きくなって,この種ゲル化した食品の吸引飲食に不適当となるところ,本例のストロー22にはこのようなロスが生じないためと認められる。
【0030】
このような容器入食品Aを,その製造方法によって説明すれば,該容器入食品Aは,これを,容器20に先行充填した容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液12に対して液状物13を加圧して後続充填することによって,該ゲル化物溶液12の未ゲル化部位に液状物13を浸透供給してゲル化物溶液12と液状物13を容器20内にランダムに分布配置した後,シール蓋21により容器20を密封し且つ冷却するものとしてある。このとき,該容器入食品Aのゲル化物10と液状物13は,容器20内において,ゲル化物10中に液状物13を独立又は連続した大小適宜の塊状に封入配置した形態のものとし,ゲル化物10と液状物13を混在配置した形態のものとし,また上記封入配置と混在配置の双方の形態のものとすることができ,上記封入配置の形態にあっては,上記ゲル化物溶液に対する液状物の加圧した後続充填によって,該液状物13をゲル化物溶液12の未ゲル化部位に対して独立又は連続した大小適宜の塊状に封入配置した後,上記シール蓋21により容器20を密封し且つ冷却するものとし,混在配置の形態にあっては,同じく上記ゲル化物溶液12に対する液状物13の加圧した後続充填によって,該ゲル化物溶液12をその未ゲル化部位で破断分離して該ゲル化物溶液12と液状物13を混在配置した後,同様にシール蓋21により容器20を密封し且つ冷却するものとし,また封入配置と混在配置の双方の形態にあっては,上記ゲル化物溶液12に対する液状物13の加圧した後続充填によって,該液状物13をゲル化物溶液12の未ゲル化部位に対して大小適宜の塊状に封入配置し且つ該ゲル化物溶液12をその未ゲル化部位で破断分離して該ゲル化物溶液12と液状物13を混在配置した後,シール蓋21により容器20を密封し且つ冷却するものとしてある。即ち,該容器入食品Aの製造は,これを,容器入食品Aの容器20に対して上記ゲル化進行中のゲル化物10,本例にあってコーヒーゼリー乃至フルーツゼリーの先行充填,その直後の液状物13,本例にあってはクリームの後続充填を行うことによって,原料充填とこれによる封入配置乃至混在配置を一連工程で行うものとしてあり,該先行及び後続の原料充填工程後に,常法に従ってシール蓋22による容器密封及び冷却の工程を経ることによって完成品とするようにしてある。
【0031】
上記ゲル化物溶液12の先行充填は,これをゲル化進行中のものとすることによって,その未ゲル化部位に,後続充填の液状物13を浸透配置して,その上記封入配置乃至混在配置を行うようにしてあり,このとき容器20に先行充填したゲル化進行中のゲル化物溶液12に対する液状物13の後続充填は,該ゲル化物溶液12のゲル化が完了する以前の未ゲル化部位が残存している状態で行うものとしてあり,これによって加圧した後続充填の液状物13を該未ゲル化部位に対して浸透供給するものとしてある。
【0032】
ゲル化進行中のゲル化物溶液12は,例えば冷却した原料液とゲル化剤液を予め混合して形成したゲル化物溶液12を容器20に予め先行充填することによっても可能であるが,本例にあっては,冷却原料液11と低温ゲル化剤液を同時又は順次に容器充填して容器20内でこれらのゲル化を開始することによって形成するものとしてあり,このとき該先行充填は,これを,例えば5±3℃以下に冷却した冷却原料液11と,ゲル化剤をその融点で溶解して凝固点以上の,例えば50±10℃の低温とした低温ゲル化剤液を同時又は順次,本例にあっては順次に容器充填して容器20内でこれらのゲル化を開始するものとしてある。即ち,冷却原料液11と低温ゲル化剤液とを容器充填することによって,これらを混合し,その混合液,即ちゲル化物溶液12の温度を,寒天,カラギーナン等のゲル化剤の種類に応じて,例えば35〜40℃程度の凝固点,即ちゲル化剤に合せたゲル化開始温度乃至それ以下の温度に低下させて,該ゲル化物溶液12のゲル化のスタートとその,例えば緩やかな進行を行うようにしてあり,こうすることにより,容器に先行充填したゲル化物溶液12における未ゲル化部位を確保するものとしてある。
【0033】
冷却原料液11と低温ゲル化剤液は,例えばその同時又は順次の充填後に撹拌してその混合とこれによるゲル化の開始及び進行を行うことも可能であるが,上記順次の充填を行う本例にあっては,冷却原料液11に対して量的に多い低温ゲル化剤液を強制混合して上記ゲル化開始乃至それ以下に温度低下を行うように,例えば該低温ゲル化剤液の全量を,冷却原料液11を充填した容器に対して一気に落し込み供給してゲル化物溶液12を形成するようにしてあり,該落下供給による強制混合は,定量の低温ゲル化剤液を太径バルブ,例えば数cmのノズルを開放供給するように,これを行えばよい。
【0034】
本例にあって該後続充填は,これを,該ゲル化進行中のゲル化物溶液12に対して,その上部からノズル(図示省略)を用いて加圧充填して行なうものとしてあり,これによって液状物13が容器20の,例えば底部又は底部近傍からゲル化進行中のゲル化物溶液12を撹拌するように,その充填を行う,好ましい形態のものとしてある。該後続充填は,ノズルを容器20の底部に挿入して加圧充填することも可能であるが,該挿入を避けて,ゲル化物溶液12上に配置したノズルから加圧充填するのが,製品の量産とその衛生確保の面から推奨される。このときノズルは細管,例えば直径5〜6mm程度の細管ノズルを用いて,数秒間で40〜50gを一気に加圧充填するようにすることによって,該ノズルから容器に供給される液状物13が,ゲル化物溶液12の底部に確実に到達するとともに,該ゲル化物溶液12を上向きにかき混ぜるようにして,その上記封入配置乃至混在配置に有効且つ適切な撹拌作用を発揮し,該ゲル化物溶液12を混合しながら,その未ゲル化部位に浸透し,全体に亘って液状物の分布を可及的均一に行うものとすることができる。
【0035】
容器20に先行充填したゲル化進行中のゲル化物溶液12に対してその直後に上記後続充填する液状物13は,本例にあって,これを,冷却した液状物とする,好ましい形態のものとしてある。即ち該液状物13は,これを上記ゲル化剤の凝固点以下の温度,例えば5〜10℃程度に冷却した冷却液状物として後続充填するものとしてあり,これによって,該液状物13は上記ゲル化進行中のゲル化物溶液12における未ゲル化部位に選択的に入り込み,該未ゲル化部位を冷却してそのゲル化を行なうようにしてある。
【0036】
本例の製造方法にあって,上記ゲル化物溶液12の冷却原料液11とゲル化剤液及び液状物13は,その比重を,例えば1.03乃至1.05とする如くに,可及的に同等とするものとして,好ましい形態のものとしてある。即ち,上記ゲル化物溶液12の冷却原料液11と低温ゲル化剤液の比重を可及的に同等とすることによって,上記同時又は順次の充填に際して,その有効な強制混合を行うとともに容器20の全体に亘って可及的に均一なゲル化のスタートとその進行を行い,比重差によって生じる原料液11とゲル化剤液の混合不良と未ゲル化部位の偏在を防止することができる。また液状物13の比重を,これら冷却原料液11,低温ゲル化剤液と可及的に同等とすることによって,上記ゲル化物溶液12に対してノズル,本例にあっては特に細管ノズルを用いた加圧充填によって,該液状物13を容器20の全体に亘るように可及的均一に分布させて,比重差によって生じるゲル化物10の下方や上方への偏在を防止することができ,それぞれ製品不良の要因を解消することができる。
【0037】
このように製造した容器入食品Aにおいては,上記冷却原料液11と低温ゲル化剤液の強制混合,液状物13の上記ノズル充填によって,容器内にゲル化物10と液状物13をランダムに分布配置したものとすることができる。ゲル化物10と液状物13の配置形態は,ゲル化物溶液12のゲル化進行の状態,即ち,ゲル化剤液の濃度,原料液11と該ゲル化剤液の充填比率,その充填温度,充填後のゲル化物溶液の液温,同時又は順次の充填のノズル径などの具体的な充填条件,後続充填の状態,即ち,液状物13の液温,充填量,充填の加圧力,充填ノズルの径などの具体的な充填条件によって,そのランダムな分布配置を上記各形態のものとすることができる。即ち,ゲル化物溶液13におけるゲル化進行を比較的高度として後続充填を比較的緩やかに行うと,未ゲル化部位に,冷却した液状物13が選択的にスムーズに浸透して,該未ゲル化部位に入り込んで残留するとともに,該未ゲル化部位を閉塞するようにゲル化して,その入り込んだ液状物13を留置するように取込み封止する結果,ゲル化物溶液に液状物13を上記独立又は連続した大小適宜の塊状に封入配置することができ,その容器密封と冷却によって,ゲル化物10中に液状物13を該塊状に封入配置した容器入食品Aとすることができる。一方,ゲル化進行を比較的低度として後続充填を比較的急激に行うと,未ゲル化部位に冷却した液状物13が同じく選択的に浸透して,該未ゲル化部位でゲル化物溶液12を破断するようになり,逆にゲル化物10が大小適宜の塊状に分離し,該ゲル化物10を分離した状態にゲル化するとともに該ゲル化物10の間に液状物13が入り込んで,その間を埋める結果,ゲル化物溶液12と液状物13を混在配置することができ,同じくその容器密封と冷却によってゲル化物10と液状物13を混在配置した容器入食品Aとすることができる。また,ゲル化物溶液12のゲル化進行程度及び後続充填の強さ程度によっては,上記ゲル化物溶液12中への液状物13の浸透が,上記封入配置と混在配置の双方となり,同じくその容器密封と冷却によって,これら双方が配置した容器入食品Aとすることができる。従って,これらゲル化進行と後続充填の条件をコントロールすることによって,容器入食品Aのゲル化物10と液状物13の配置を,上記封入配置,混在配置,これら双方の形態のものとすることができる。
【0038】
このとき上記容器20に先行充填する冷却原料液11とゲル化剤液の充填量を85±10wt%,加圧して後続充填する液状物13の充填量を15±10wt%とするのが,一連の工程によって容器入食品Aの製造を行なうについて,ゲル化物10と液状物13の比率をバランスのよいものとして,その食味と食感を良好に確保したものとすることができて好ましい。このとき先行充填する冷却原料液11とゲル化剤液の充填量を85±5wt%,加圧して後続充填する液状物の充填量を15±5wt%とするのが,ゲル化物10に液状物13としてクリームを用いた場合に,その食味と食感を向上し得て更に好ましい。
【0039】
本例の製造方法による容器入食品Aにおいては,上記冷却原料液11と低温ゲル化剤液の強制混合,液状物13の上記ノズル充填によって,ゲル化物10と液状物13の分布がランダムになされて,上記封入配置乃至混在配置の形態のものとなし得る。このときゲル化物10はそのゲル化した色調を,また液状物13はその色調を,例えばコーヒーゼリーにあっては濃茶色の色調,クリームにあっては白色の色調を呈するも,ゲル化物10と液状物13の境界部分でこれらの色調が部分的に混合することも多く,このとき混合によって,これらゲル化物10と液状物13によってまだらのマーブル状の色調,例えばコーヒーゼリーの濃茶色とクリームの白色がまだらの濃淡を呈することによるマーブル状の色調を呈するものとなり易い。また混在配置の形態のものにあっては,液状物13がゲル化物10と混色した色調,例えばコーヒーゼリーの濃茶色とクリームの白色が合さって,該クリーム部分がやや淡茶色乃至薄茶の色調を呈することもある。これは,ゲル化物溶液12に対する液状物10の後続充填によって,未ゲル化部分がクリームに混合するためと見られる。
【0040】
容器入食品のゲル化物と液状物は,上記以外に,寒天と黒蜜,豆腐とだし汁等の各種のものとすることができる。これを含めて,本発明の実施に当って,ゲル化物溶液,その容器に対する先行充填,液状物,その加圧した後続充填,シール蓋による容器密封,冷却,必要に応じて用いる冷却原料液,低温ゲル化剤液,冷却した液状物,これらの比重,充填量等,容器入食品の製造法における具体的方法,条件,工程等は,上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【実施例1】
【0041】
コーヒー抽出液に果糖ブドウ糖液等を混合して,例えば比重を1.03乃至1.05,液温を5℃とした冷却原料液と,果糖ブドウ糖液にゲル化剤等を混合溶解して,例えば比重を原料液と略等しい1.03乃至1.05とし,液温を50℃とした低温ゲル化剤液と,牛乳に分離クリーム等を混合し,例えば比重を上記原料液及びゲル化剤液と略等しい1.03乃至1.05とし,液温を5℃とした液状のクリームを形成した。250ccの透明容器に冷却原料液10〜20部を供給充填し,続いて低温ゲル化剤液50〜70部を容器に一気に落し込み状に充填して,冷却原料液と低温ゲル化剤液を強制混合し,液温を,例えば35±2℃としてゲル化進行中のゲル化物溶液を形成した。該ゲル化物溶液の入った容器にノズルを用いて,液状のクリーム15〜25部を加圧充填した。その後,容器にシール蓋を溶着して該容器を密閉し且つ10℃以下に急冷して2時間冷蔵保管して,容器入りのクリーム封入コーヒーゼリーとした。濃褐色のコーヒーゼリー中に大小適宜の白色液状のクリーム部分が,容器の底部から上方に向けて独立し又は連続して塊状に封止配置されて分布し,液状のクリームの外周がコーヒーゼリーと部分的に混合して封入された,全体としてマーブル模様を呈するものであり,例えばクラッシュゼリーのように崩したゼリーに見られる離水現象は確認されなかった。トラック輸送に相当するように,振動板上に容器を載置して,該容器に上下方向及び横方向の振動を140分間付与した後に,容器中のコーヒーゼリーの崩れを観察したところ,崩れ,離水が多少見られたが,コーヒーゼリーと液状クリームの混濁は殆ど見られず,製造後の輸送に耐え得ることが確認された。ストローで吸引飲食したところ,ストロー先端位置に応じて,ツルっとしたコーヒーゼリーの食感とクリーミーにして粘度のあるクリームの食感の双方を個別に吸引賞味できるとともに外周の混和部分ではこれらの混和した食感を同時に吸引賞味できるものとなし得た。
【実施例2】
【0042】
ゲル化物溶液の冷却原料液を,コーヒー抽出液に代えて,すりおろしりんごを加えたりんごジュースを用いるとともに,これに加糖ブドウ糖液,果実酢等を混合した以外,実施例1と同様に,容器入りのクリーム封入フルーツゼリーを形成した。淡黄色のフルーツゼリー中に大小の白色液状のクリーム部分が,同様に封入されたマーブル模様を呈するものであり,同様に離水現象がなく,トラック輸送に耐えられるものであった。ストローで吸引飲食したところ,りんごジュース,すりおろしりんご,果実酢の複合した軽い酸味を呈するフルーツゼリーの食感と同じくクリームの食感の双方を個別に賞味でき,また同時に吸引賞味できるものとなし得た。
【実施例3】
【0043】
上記ゲル化物溶液の液温を,例えば40±2℃とした以外,実施例1と同様とした。濃褐色のコーヒーゼリーと淡茶色の液状のクリームが,全体に亘って混在配置して分布し,同じく全体としてマーブル模様を呈するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】容器入食品のモデル外観図である。
【図2】液状物の分布状態を示すモデル断面図である。
【図3】容器入食品の製造段階を示すモデル工程図である。
【図4】他の例に係る容器入食品のモデル外観図である。
【図5】液状物の分布状態を示すモデル断面図である。
【図6】容器入食品の製造段階を示すモデル工程図である。
【符号の説明】
【0045】
A 容器入食品
10 ゲル化物
11 冷却原料液
12 ゲル化物溶液
13 液状物
20 容器
21 シール蓋
22 ストロー
23 太径容器差込管
24 細径吸引管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化物と液状物の双方を容器に充填してストローによる吸引飲食用とした食品の製造方法であって,容器に先行充填した容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液に対して液状物を加圧して後続充填することによって,該ゲル化物溶液の未ゲル化部位に液状物を浸透供給してゲル化物溶液と液状物を容器内にランダムに分布配置した後,シール蓋により容器を密封し且つ冷却することを特徴とする容器入食品の製造方法。
【請求項2】
ゲル化物と液状物の双方を容器に充填してストローによる吸引飲食用とした食品の製造方法であって,容器に先行充填した容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液に対して液状物を加圧して後続充填することによって,該液状物をゲル化物溶液の未ゲル化部位に対して独立又は連続した大小適宜の塊状に封入配置した後,シール蓋により容器を密封し且つ冷却することを特徴とする容器入食品の製造方法。
【請求項3】
ゲル化物と液状物の双方を容器に充填してストローによる吸引飲食用とした食品の製造方法であって,容器に先行充填した容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液に対して液状物を加圧して後続充填することによって,該ゲル化物溶液をその未ゲル化部位で破断分離して該ゲル化物溶液と液状物を混在配置した後,シール蓋により容器を密封し且つ冷却することを特徴とする容器入食品の製造方法。
【請求項4】
ゲル化物と液状物の双方を容器に充填してストローによる吸引飲食用とした食品の製造方法であって,容器に先行充填した容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液に対して液状物を加圧して後続充填することによって,該液状物をゲル化物溶液の未ゲル化部位に対して大小適宜の塊状に封入配置し且つ該ゲル化物溶液をその未ゲル化部位で破断分離して該ゲル化物溶液と液状物を混在配置した後,シール蓋により容器を密封し且つ冷却することを特徴とする容器入食品の製造方法。
【請求項5】
上記液状物の後続充填を,上記容器内ゲル化進行中のゲル化物溶液に対して,その上部からノズルを用いて行うことを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の容器入食品の製造方法。
【請求項6】
上記ゲル化進行中のゲル化物溶液を,冷却原料液と低温ゲル化剤液を同時又は順次に容器充填して容器内でこれらのゲル化を開始することによって形成することを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載の容器入食品の製造方法。
【請求項7】
上記後続充填する液状物を,冷却した液状物とすることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載の容器入食品の製造方法。
【請求項8】
上記ゲル化物溶液の原料液とゲル化剤液及び液状物の比重を可及的に同等とすることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7に記載の容器入食品の製造方法。
【請求項9】
上記容器に先行充填する冷却原料液とゲル化剤液の充填量を85±10wt%,加圧して後続充填する液状物の充填量を15±10wt%とすることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7又は8に記載の容器入食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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