説明

容器兼用注射器

【課題】薬液内の気泡を効果的に除去することができる容器兼用注射器を提供することを目的とする。
【解決手段】軸線Oを中心とする筒状をなす外筒10と、外筒10内の先端側に嵌入されるフロントストッパーと、基端側の嵌着孔61を介して外筒10の先端外周に外嵌され、該嵌着孔61の前方側にフロントストッパーが移入するバイパスチャンバー71を有する筒先50と、を備えた容器兼用注射器1において、バイパスチャンバー71の内径がフロントストッパーの外径よりも大きく形成されるとともに、バイパスチャンバー71の内周面73に、径方向内側に向かって突出するとともに軸線O方向に延びて、バイパスチャンバー71内に移入したフロントストッパーの外周面に密着するリブが、周方向に間隔をあけて複数設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を予め充填・保管しておき、使用時に包装から取り出して直ちに使用することが可能な容器兼用注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器兼用注射器は、予め薬液が充填されているため、医療機関において煩雑な操作をすることなく包装から取り出して直ちに使用できる。よって、利便性に優れていることから、医師や看護師等の医療業務に携わる者の作業軽減に大いに貢献し、このため多くの病医院で採用されている。
【0003】
従来、この容器兼用注射器としては、外筒と、該外筒内の前後端側に嵌入され、外筒内に充填された薬液を液密に封止するフロントストッパー及びエンドストッパーと、外筒の先端に外嵌され、フロントストッパーが入り込むバイパスチャンバー及びその先端の注射針を取り付けるためのルアー先が設けられた筒先と、外筒の後端に嵌着されたフィンガーグリップと、外筒の後端部から外筒内に挿入されてエンドストッパーに連結されたプランジャーロッドとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような容器兼用注射器を使用するには、プランジャーロッドによってエンドストッパーを押し込むことで、薬液と共にフロントストッパーを前方へ押し進める。そして、フロントストッパーが外筒から押し出されて筒先のバイパスチャンバー内に入り込むと、エンドストッパー間に密封されていた薬液における先端側の密封が解除される。これにより、当該薬液が外筒内からバイパスチャンバー内に流出し、該バイパスチャンバーの内周面に設けられたバイパス溝に沿ってルアー先の内面に誘導されて注射針へと誘導される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−111156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、薬液を注射器によって直接体内の必要な部位に薬液を注入する医療行為である注射においては、薬液中に混入した気泡が患者の体内に注入されるのを防止するため、注射の前段階としてプランジャーロッドを僅かに押し込むことによる気泡抜きの作業が行われる。この作業によって、上記容器兼用注射器においては、外筒内の気泡がバイパス溝を通過して注射針の先端から注射器外部に排出される。
【0007】
ここで、上記従来の容器兼用注射器では、該バイパス溝内の薬液の残留量を低減させることに主観を置いていたため、薬液や気泡が通過するバイパス溝の幅をできる限り小さくすることとしていた。
【0008】
しかしながら、容器兼用注射器の先端側を上方に向けて外筒内に残留する気泡を薬液の上面に集中させてから、プランジャーロッドを押し込むことによって気泡を外部に排出しようとすると、薬液の表面張力の影響から気泡よりも下方にある薬液が、上方に残存している一部の気泡に先立ってバイパス溝内に入り込む。これによって、薬液が気泡の通り道を塞いでしまうため、気泡の一部はバイパス溝内に分散して残留し、後から注射される薬液に混じって患者の体内に注入されてしまう懸念がある。
【0009】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、薬液内の気泡を効果的に除去することができる容器兼用注射器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る容器兼用注射器は、軸線に沿って延びる筒状をなす外筒と、前記外筒内の先端側に嵌入されるフロントストッパーと、前記外筒内の後端側に嵌入され、前記フロントストッパーとの間で薬液を封止するエンドストッパーと、基端側の嵌着孔を介して前記外筒の先端外周に外嵌され、該嵌着孔の先端側に前記フロントストッパーが移入するバイパスチャンバーが設けられるとともに、注射針を取り付けるためのルアー先が設けられた筒先と、前記外筒の後端側に嵌着されたフィンガーグリップと、外筒の後端側から該外筒内に挿入されて前記エンドストッパーに連結されるプランジャーロッドとを備えた容器兼用注射器において、前記バイパスチャンバーの内径が前記フロントストッパーの外径よりも大きく形成されるとともに 前記バイパスチャンバーにおける断面円形をなす内周面に、径方向内側に向かって突出するとともに該バイパスチャンバーの軸線方向全域にわたってに延びて、前記バイパスチャンバー内に移入した前記フロントストッパーの外周面に密着可能とされたリブが、周方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
このような特徴の容器兼用注射器において気泡抜きを行なう際には、容器兼用注射器の先端側を上方に向けた状態で該容器兼用注射器を保持する。これにより、薬液内の気泡は、該薬液の上面に集中する。
この状態でプランジャーロッドを押し込むことによりエンドストッパーとともにフロントストッパーを前進させると、外筒内に嵌入されていたフロントストッパーがバイパスチャンバーに移入する。
この際、バイパスチャンバーに形成されたリブがフロントストッパーに密着することでフロントストッパーがバイパスチャンバー内に支持されると、フロントストッパーの外周面とバイパスチャンバーの内周面との間には、径方向の寸法が周方向にわたって均一な薬液流通空間が形成される。
これによって、フロントストッパーの後端面に集中した気泡は、当該薬液流通空間に導入されることで薬液の表面張力の影響を受けることなく、ルアー先に案内されて外部に放出される。
なお、例えばバイパスチャンバーの内周面に薬液を流通させるための溝が形成されている場合には、当該溝に気泡が残留するおそれがあるが、本発明においては、バイパスチャンバーの内周面は断面円形とされており周方向にわたって滑らかに形成されているため、当該内周面に気泡が残留してしまうことはない。
また、リブがバイパスチャンバーの内周面の軸線方向全域にわたって形成されているため、フロントストッパーがバイパスチャンバーに完全に移入した際には、バイパスチャンバーの軸線方向全域にわたって薬液流通空間が形成される。これによって、より円滑に薬液及び気泡をルアー先に導くことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の容器兼用注射器によれば、バイパスチャンバーの内周面とフロントストッパーの外周面との間に周方向にわたって延在する薬液流通空間が形成されるため、当該薬液流通空間を介して薬液の表面張力の影響を受けることなく、気泡を外部に放出させることができる。これにより、薬液内の気泡を効果的に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る容器兼用注射器の縦断面図である。
【図2】図1におけるフロントストッパーの拡大図である。
【図3】図1における筒先の拡大図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】バイパスチャンバーにおける軸線に直交する断面図であって、該バイパスチャンバーにフロントストッパーが移入した状態を説明する図である。
【図6】第一変形例の容器兼用注射器における筒先の拡大図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】第二変形例の容器兼用注射器における筒先の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る容器兼用注射器1について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、容器兼用注射器1は、外筒10と、その先端側(図1における左側)に取り付けられた筒先50と、外筒10の後端側(図1における右側)の外周に嵌着されたフィンガーグリップ20と、外筒10内に充填された薬液Mを先端側から封止するフロントストッパー30及び後端側から封止するエンドストッパー40と、外筒10内に後端側から挿入されて先端部がエンドストッパー40に連結され、該エンドストッパー40を外筒10の軸線O方向に往復動させるプランジャーロッド25とを備えている。
【0016】
外筒10は、透明なガラスからなり軸線Oに沿って延びる円筒形状をなしており、その内部には薬液Mが充填され、その先端側がフロントストッパー30によって封止されるとともに、後端側がエンドストッパー40によって封止されている。
【0017】
外筒10の後端外周には、リング状突起11が設けられており、該リング状突起11がフィンガーグリップ20の円筒孔部に形成されたリング状溝21に嵌合することによって、フィンガーグリップ20と外筒10とが強固に固定されている。
なお、フィンガーグリップ20は、外筒10に別途取り付けられる構成の他、外筒10と一体に形成されたものであってもよい。
【0018】
フロントストッパー30は、詳しくは図2に示すように、軸線Oを中心とした略円柱形状をなし、薬液Mに対して耐食性を備える医療用ゴムから形成されている。
このフロントストッパー30の外周面31には、外周面31が全周にわたって径方向外側に突出する環状凸部32と、径方向内側に向かって環状に窪む環状凹部33とが、軸線O方向に交互に連続して形成されている。本実施形態のフロントストッパー30は、軸線O方向に離間した3つの環状凸部32を有しており、これら環状凸部32の間にそれぞれ形成された計2つの環状凹部33を有している。以下では、環状凸部32の外径をフロントストッパー30の外径と称する。
【0019】
このようなフロントストッパー30は、容器兼用注射器1の未使用時においては、外筒10内の先端側に位置するように該外筒10内に液密に嵌入されている。即ち、このフロントストッパー30は、その外径が外筒10の内径よりも大きく形成されており、外筒10内に嵌入されている際には該外筒10の内周面73から圧縮されることで本来の外径よりも縮径した状態とされている。
【0020】
エンドストッパー40は、図1に示すように、軸線Oを中心とした略円柱形状をなし、薬液Mに対して耐食性を備える医療用ゴムから形成されている。容器兼用注射器1の未使用時においては、このエンドストッパー40は、外筒10内の後端側に位置するように該外筒10内に液密に嵌入されている。
外筒10内におけるこのエンドストッパー40と上記フロントストッパー30との間には、患者に投与される薬液Mが封止されている。
【0021】
プランジャーロッド25は、図1に示すように、外筒10の後端側から該外筒10内に挿入されており、先端がエンドストッパー40に連結されている。
【0022】
筒先50は、詳しくは図3に示すように、適度な剛性を備えた透明な合成樹脂からなる外形多段円柱状をなしており、円筒形状をなす基端部60と、該基端部60の先端側に一段縮径するように結合された円筒部70と、該円筒部70のさらに先端側に円筒部70よりも小径に形成されたルアー先80とを備えている。
【0023】
上記基端部60の内側には、筒先50の後端側に開口する嵌着孔61が形成されており、該嵌着孔61の先端側、即ち、円筒部70の内側には、有底穴状のバイパスチャンバー71が形成されている。なお、このバイパスチャンバー71における後端側を向く面が、後述するフロントストッパー30が当接する底部72とされている。
【0024】
また、上記ルアー先80の内部には、軸線Oに沿って該ルアー先80を貫通する導入孔81が形成されている。即ち、この導入孔81は、その一端がバイパスチャンバー71の底部72中央に開口し、他端がルアー先80の先端に開口している。この導入孔81には、軸線Oに沿って先端側に延びる注射針が連通状態にして取り付けられている。
なお、容器兼用注射器1の未使用時においては、筒先50(ルアー先80)を覆うカバー2が筒先50の先端に取り付けられている。
【0025】
上記嵌着孔61は、外筒10に筒先50を取り付けるために形成された孔であって、その内径は外筒10の外径と略同一に形成されている。この嵌着孔61を外筒10先端に外嵌させることによって、筒先50が外筒10の先端側に取り付けられるようになっている。
【0026】
また、詳しくは図3に示すように、嵌着孔61の内周壁の前端部には軸線Oを中心としたリング状溝62が形成されている。また、外筒10先端外周にはリング状突起12が形成されており、筒先50を外筒10先端側に取り付けた際に、リング状突起12がリング状溝62に嵌り込むことによって、筒先50が外筒10に強固に固定一体化される。
【0027】
上記バイパスチャンバー71は、その内周面73の内径が嵌着孔61よりも一段小径とされた有底穴とされている。特に本実施形態においては、バイパスチャンバー71の内周面73の内径は、フロントストッパー30の外周面31の外径、即ち、フロントストッパー30が外筒10内に嵌入されていない状態における本来の外径よりも大きく形成されている。
【0028】
また、バイパスチャンバー71の内周面73には、図3及び図4に示すように、径方向内側に向かって突出するとともに、バイパスチャンバー71の軸線O方向全域にわたって直線状に延びる直線リブ(リブ)74が形成されている。この直線リブ74は軸線Oと平行に延びるとともに周方向に間隔をあけて複数配置されており、本実施形態においては、周方向に90°の間隔をあけて計4つの直線リブ74が形成されている。なお、直線リブ74は、少なくとも3つ以上が形成されていることが好ましく、8つ以内とされていることがより好ましい。また、これら複数の直線リブ74は、周方向に等間隔をあけて配置されていることが好ましい。
【0029】
バイパスチャンバー71の内周面73からの直線リブ74の高さ、即ち、直線リブ74の径方向の寸法は、0.05〜0.45[mm]に設定されていることが好ましい。また、該直線リブ74の周方向の幅は、0.3〜0.1[mm]に設定されていることが好ましい。
【0030】
また、バイパスチャンバー71の内周面73における該バイパスチャンバー71と嵌着孔61との境界付近には、軸線Oを中心として周方向に延びる円環状の環状溝75が形成されている。この環状溝75には、上記複数の直線リブ74の後端がそれぞれ接続されている。
【0031】
さらに、バイパスチャンバー71の底部72には、該底部72の中心に形成された導入孔81の開口から径方向外側に放射状に延びる複数の放射状溝76が形成されている。この放射状溝76の径方向外側の端部はバイパスチャンバー71の内周面73に接続されている。また、放射状溝76は、周方向に等間隔をあけて複数配置されており、本実施形態においては、周方向に90°の間隔をあけて計4つの放射状溝76が形成されている。
また、本実施形態の直線リブ74と放射状溝76とは、軸線O方向から見た際に周方向に45°ずれた位置関係とされている。
【0032】
ここで、外筒10の内径をD[mm]とした場合、フロントストッパー30の外径(環状凸部32の外径)は例えばD(+0.4〜+0.8)[mm]に設定されることが好ましく、環状凹部33の外径は例えばD(−0.1〜−0.6)[mm]に設定されることが好ましい。また、バイパスチャンバー71の内周面73の内径はD(+0.1〜+0.5)[mm]に設定されていることが好ましく、直線リブ74の内径、即ち、各直線リブ74の先端を通過する仮想円の直径はD(±0〜−0.4)[mm]に設定されていることが好ましい。
【0033】
以上のような構成の容器兼用注射器1を用いて患者に注射を行う際には、薬液M内に残留した気泡を除去する気泡抜きの作業を行う。この気泡抜きの際には、まず容器兼用注射器1のルアー先80に注射針を取り付け、先端側を上方に向けた状態で保持する。これにより、薬液M内の気泡は、該薬液Mの上部、即ち、フロントストッパー30の後端面付近に集中する。
【0034】
そして、この状態でプランジャーロッド25を押し込むと、当該押圧力が薬液Mを介してフロントストッパー30に伝達され、該フロントストッパー30が前進する。これによって、フロントストッパー30が外筒10の先端からバイパスチャンバー71へと移入する。
【0035】
このようにフロントストッパー30がバイパスチャンバー71内に移入した状態においては、図5に示すように、複数の直線リブ74の先端がフロントストッパー30の外周面31、即ち、環状凸部32に密着する。この際、フロントストッパー30の外径よりもバイパスチャンバー71の内径の方が大きく形成されているため、フロントストッパー30の外周面31がバイパスチャンバー71の内周面73に接触することはなく、該フロントストッパー30は複数の直線リブ74によってバイパスチャンバー71と同軸に支持された状態となる。
【0036】
これによって、フロントストッパー30の外周面31とバイパスチャンバー71の内周面73との間には、径方向の寸法が周方向にわたって略均一な薬液流通空間90が形成される。この薬液流通空間90は、バイパスチャンバー71の周方向における直線リブ74が形成されていない領域にわたって延在しており、即ち、隣り合う直線リブ74同士の間に周方向略90°の範囲にわたって計4つの薬液流通空間90が形成される。
【0037】
このような薬液流通空間90がフロントストッパー30の外周面31とバイパスチャンバー71の内周面73との間に形成されることによって、外筒10内において薬液Mの上部に集中させられていた気泡が、薬液流通空間90に極めて円滑に導入される。即ち、薬液流通空間90の後端が周方向に所定の範囲にわたって外筒10内に開口しているため、気泡が薬液Mの表面張力の影響を受けることなく容易に薬液M導入溝内に流入していく。
【0038】
このように薬液流通空間90内に導入された気泡は、バイパスチャンバー71の内周面73に沿って極自然に容器兼用注射器1の上方に向かって移動し、即ち、気泡を外部に放出するためにプランジャーロッド25をさらに押し込む動作を行わずとも、容易に容器兼用注射器1の先端側に気泡を移動させることができる。
そして、気泡は、バイパスチャンバー71の底部72に形成された導入孔81及び該導入孔81に連通する注射針を介して容器兼用注射器1の外部に放出される。
【0039】
その後、プランジャーロッド25をさらに押し込んでいくと、フロントストッパー30の先端がバイパスチャンバー71の底部72に当接する。この際、薬液M内に未だ残流している気泡は、薬液流通空間90、放射状溝76、導入孔81を介して外部に放出される。
【0040】
以上のような容器兼用注射器1においては、バイパスチャンバー71の内周面73とフロントストッパー30の外周面31との間に周方向にわたって延在する薬液流通空間90が形成されるため、当該薬液流通空間90を介して薬液Mの表面張力の影響を受けることなく、気泡を外部に放出させることができる。これにより、薬液M内の気泡を効果的に除去することが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態である容器兼用注射器1について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
【0042】
例えば、実施形態においては、バイパスチャンバー71の底部72に放射状溝76を形成した例について説明したが、例えば第一変形例として図6及び図7に示すように、バイパスチャンバー71の底部72に複数の直線リブ74の先端からそれぞれ連続して径方向に延びる放射状リブ78が形成されているものであってもよい。この放射状リブ78は、直線リブ74と同様に周方向に間隔をあけて複数形成されており、その径方向内側の端部は導入孔81の開口に接続されている。
【0043】
フロントストッパー30がバイパスチャンバー71に完全に移入した状態では、当該フロントストッパー30の先端が各放射状リブ78に当接し、隣り合う放射状リブ78の間には、図7に示すように、略扇状をなして導入孔81に接続される扇状空間91が形成される。この扇状空間91は、実施形態の放射状溝76に比べて流体の流通面積が大きいため、薬液M内に残留した気泡や注射時の薬液Mをより円滑に導入孔81へと導くことができる。
【0044】
さらに、実施形態においては、バイパスチャンバー71の内周面73に直線リブ74を形成した例について説明したが、これに限定されることはなく、例えば第二変形例として図8に示すように、バイパスチャンバー71の内周面73に、軸線O方向一方側に向かうにしたがって周方向に捩れる螺旋状をなす螺旋状リブ77を形成してもよい。この場合も実施形態と同様、隣り合う螺旋状リブ77の間に薬液流通空間90を形成することができるため、薬液M内の気泡をより円滑に外部に導くことができる。また、このような螺旋状リブ77の場合、気泡を軸線O方向のみならず周方向に流通させることになるため、気泡の流通速度を向上させることができ、螺旋状リブ77自体に気泡が付着して残留してしまうことを防止できる。
【0045】
なお、フロントストッパー30の形状、寸法は、外筒10内での摺動性を向上させるため、また、気泡を除去し易くするため、外筒10の内周面及びバイパスチャンバー71の内周面73に接する環状凸部32における径方向外側の先端の形状を容器兼用注射器1としての気密性を保持できる範囲で可能な限り小さい設計とすることが好ましい。
【0046】
また、上記環状凸部32の個数は、フロントストッパー30が外筒10内及びバイパスチャンバー71内において正しい姿勢を保持できるように、2〜5個に設定することが好ましい。
さらに、環状凹部33の外径は外筒10の内周面及びバイパスチャンバー71の内周面73に接触しない範囲でできる限り大きく設定することが好ましい。これにより、バイパスチャンバー71に移入した際に、環状凹部33内に残留する薬液Mの量を低減させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 容器兼用注射器
10 外筒
11 リング状突起
12 リング状突起
20 フィンガーグリップ
21 リング状溝
30 フロントストッパー
31 外周面
32 環状凸部
33 環状凹部
40 エンドストッパー
50 筒先
60 基端部
61 嵌着孔
62 リング状溝
70 円筒部
71 バイパスチャンバー
72 底部
73 内周面
74 直線リブ
75 環状溝
76 放射状溝
77 螺旋状リブ
78 放射状リブ
80 ルアー先
81 導入孔
90 薬液流通空間
91 扇状空間
M 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる筒状をなす外筒と、
前記外筒内の先端側に嵌入されるフロントストッパーと、
前記外筒内の後端側に嵌入され、前記フロントストッパーとの間で薬液を封止するエンドストッパーと、
基端側の嵌着孔を介して前記外筒の先端外周に外嵌され、該嵌着孔の先端側に前記フロントストッパーが移入するバイパスチャンバーが設けられるとともに、注射針を取り付けるためのルアー先が設けられた筒先と、
前記外筒の後端側に嵌着されたフィンガーグリップと、
外筒の後端側から該外筒内に挿入されて前記エンドストッパーに連結されるプランジャーロッドとを備えた容器兼用注射器において、
前記バイパスチャンバーの内径が前記フロントストッパーの外径よりも大きく形成されるとともに、
前記バイパスチャンバーにおける断面円形をなす内周面に、径方向内側に向かって突出するとともに該バイパスチャンバーの軸線方向全域にわたってに延びて、前記バイパスチャンバー内に移入した前記フロントストッパーの外周面に密着可能とされたリブが、周方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする容器兼用注射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−157640(P2012−157640A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21006(P2011−21006)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【特許番号】特許第4934226号(P4934226)
【特許公報発行日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(000122184)株式会社アルテ (28)
【Fターム(参考)】