説明

容器分離装置

【課題】凍結環境においてラックに保持されているチューブをチューブ毎に分離するために、小型化が可能で、しかも氷結により接着しているチューブ同士を分離することができる容器分離装置を提供する。
【解決手段】容器分離装置は、ピンの長さが異なる押上ピンP1,P2と、ラック101に保持された各チューブTの真上に配置されている対向部C1,C2が設けられた上押え部材130とを備える。押上ピンP1が押し上げる一方側チューブTの真上に位置する対向部C1は、押上ピンP2が押し上げる他方側チューブTの真上に位置する対向部C2と他方側チューブTとが非当接状態にあるときに、一方側チューブTに当接可能な位置にある。各押上ピンP1,P2がラック101に対して上昇する過程において、氷結してできた氷109により他方側チューブT2に接着している一方側チューブT1が、対向部C1と当接することにより、チューブT2から分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の容器を保持しているラックに対して該容器を相対的に押し上げることにより、容器をラックから分離する容器分離装置に関する。そして、前記容器は、例えば、創薬用試料を収容するために使用される創薬用のマイクロチューブである。
【背景技術】
【0002】
容器分離装置が、複数の容器である創薬用のマイクロチューブ(以下、「チューブ」という。)を、上下方向に抜差し可能に保持しているラックを保持するラック保持部材と、ラック保持部材に保持されたラックに保持されている各チューブをラックに対して相対的に押し上げる複数の押上ピンを有するピン支持体とを備えるものは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−298442号公報(段落0021−0032、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラックに保持された状態の複数のチューブが、水が凍結する冷凍環境、例えば冷凍用保管庫内の環境で保管される場合、チューブの外面に付着している水の凍結により、接触状態でラックに保持されているチューブがラックに接着することがある。
一方、ラックに保持されているチューブが、前記冷凍環境において、ピッキング装置により、1つのチューブ毎にラックから抜き出されることがある。この場合、該ピッキング装置によるピッキング作業を効率よく行うためには、各チューブはラックから分離されていることが望ましい。
【0005】
そこで、ラックにおけるチューブの配列方向である行方向および列方向で隣接するチューブ同士が氷結により接着していない場合には、押上ピンにより、すべてのチューブを一斉に押し上げることで、氷結によりラックに接着しているチューブを、チューブ毎にラックから分離することができる。
【0006】
また、各チューブは、密度が高い密集状態でラックに保持されていることから、行方向および列方向で隣接するチューブ同士の間隔は極めて狭くなっている。このため、この狭い間隔で隣接するチューブ同士が氷結により接着することがある。そして、この隣接するチューブ同士が氷結により接着している場合にも、その接着力がチューブとラックとの間の氷結による接着力よりも小さいときには、行方向および列方向で隣接するチューブ同士を押上ピンで押し上げる時期を異ならせることにより、該チューブ同士を分離することができる。
【0007】
しかしながら、隣接するチューブ同士の氷結による接着力が、チューブとラックとの間の氷結による接着力よりも大きいときには、接着しているチューブ同士を押上ピンにより押し上げる時期を異ならせたとしても、該チューブ同士のうちで、遅い時期に押し上げられるチューブが、早い時期に押し上げられたチューブと氷結により接着したまま、一緒に上昇することがあり、チューブ同士が分離されず、ラックに収容されているチューブがチューブ毎に分離されないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の課題を解決するものであって、本発明の目的は、凍結環境においてラックに保持されているチューブをチューブ毎に分離するために、小型化をすることができるとともに、氷結により接着しているチューブ同士を分離することができる容器分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、水平方向で所定の配列方向に並べられている複数である所定数の容器を上下方向に抜差し可能に保持するラックを分離作業位置に保持するラック保持部材と、前記分離作業位置にある前記ラックに保持されている前記各容器を前記ラックに対して相対的に押し上げる前記所定数の押上ピンを有するピン保有部材と、前記押上ピンを前記ラックに対して相対的に上昇させる駆動部材とを備え、前記駆動部材の駆動により前記押上ピンが前記ラックに対して相対的に上昇する相対的上昇過程において、前記押上ピンにより前記ラックに対して相対的に押し上げられた前記容器が前記ラックから分離される容器分離装置において、前記分離作業位置にある前記ラックの前記各容器の真上に配置されている前記所定数の対向部が設けられた対向部材を備え、前記各押上ピンについて、1つの前記押上ピンを第1押上ピンとし、前記第1押上ピンに前記配列方向で隣接するすべての前記押上ピンを1つ毎に第2押上ピンとするとき、前記ピン保有部材が、前記相対的上昇過程において、前記第1押上ピンおよび前記第2押上ピンのうちの、一方の押上ピンが他方の押上ピンよりも遅い時期に前記容器を相対的に押し上げることを可能とする押上構造を有し、前記一方の押上ピンが押し上げる前記容器を一方側容器とし、前記他方の押上ピンが押し上げる前記容器を他方側容器とするとき、前記相対的上昇過程において、前記一方側容器の真上に位置する前記対向部である一方側対向部が、前記他方側容器の真上に位置する前記対向部である他方側対向部と前記他方側容器とが非当接状態にあるときに、前記一方側容器に当接可能な位置にあり、前記相対的上昇過程において、前記他方側容器に氷結により接着している前記一方側容器が、前記一方側対向部との当接により前記他方側容器から分離されることを特徴とする容器分離装置ことにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記他方側対向部が、前記他方の押上ピンにより押し上げられつつある前記他方側容器が進入する凹部または孔により構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の構成に加えて、前記押上構造が、ピンの長さが異なる複数の種類の前記押上ピンから構成され、前記一方の押上ピンと前記他方の押上ピンとが、互いに異なる種類の前記ピンにより構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記対向部材が、前記分離作業位置にある前記ラックを上方から押圧して上方への移動を阻止する上押え部材であることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
そこで、本発明の容器分離装置は、水平方向で所定の配列方向に並べられている複数である所定数の容器を上下方向に抜差し可能に保持するラックを分離作業位置に保持するラック保持部材と、分離作業位置にあるラックに保持されている各容器をラックに対して相対的に押し上げる所定数の押上ピンを有するピン保有部材と、押上ピンをラックに対して相対的に上昇させる駆動部材とを備え、駆動部材の駆動により押上ピンがラックに対して相対的に上昇する相対的上昇過程において、押上ピンによりラックに対して相対的に押し上げられた容器がラックから分離されることにより、容器とラックとが、係合構造Eと氷結による接着との少なくとも一方に起因して結合状態にある場合にも、ラックに対して相対的に上昇する押上ピンにより、容器をラックから分離することができるばかりでなく、以下のような本発明に特有の効果を奏する。
【0014】
すなわち、請求項1に係る本発明の容器分離装置によれば、各押上ピンについて、1つの押上ピンを第1押上ピンとし、第1押上ピンに配列方向で隣接するすべての押上ピンを1つ毎に第2押上ピンとするとき、ピン保有部材が、前記相対的上昇過程において、第1押上ピンおよび第2押上ピンのうちの、一方の押上ピンが他方の押上ピンよりも遅い時期に容器を相対的に押し上げることにより、所定数の押上ピンは、該所定数よりも小さい数毎に押上時期を異ならせて、所定数の容器を順次押し上げるので、所定数の容器を一斉に押し上げる場合に比べて、押上ピンを相対的に上昇させるための駆動部材の駆動力を小さくすることができるため、駆動部材を小型化することができ、ひいては容器分離装置を小型化することができる。
【0015】
さらに、容器分離装置は、分離作業位置にあるラックの各容器の真上に配置されている所定数の対向部が設けられた対向部材を備え、各押上ピンについて、1つの押上ピンを第1押上ピンとし、第1押上ピンに配列方向で隣接するすべての押上ピンを1つ毎に第2押上ピンとするとき、ピン保有部材が、前記相対的上昇過程において、第1押上ピンおよび第2押上ピンのうちの、一方の押上ピンが他方の押上ピンよりも遅い時期に容器を相対的に押し上げることを可能とする押上構造を有し、一方の押上ピンが押し上げる前記容器を一方側容器とし、他方の押上ピンが押し上げる前記容器を他方側容器とするとき、相対的上昇過程において、一方側容器の真上に位置する対向部である一方側対向部が、他方側容器の真上に位置する対向部である他方側対向部と他方側容器とが非当接状態にあるときに、一方側容器に当接可能な位置にあり、相対的上昇過程において、他方側容器に氷結により接着している一方側容器が、一方側対向部との当接により他方側容器から分離されることにより、一方側容器を押し上げる一方の押上ピンよりも早い時期に他方側容器を押し上げる他方の押上ピンが、他方側容器を押し上げるときに、氷結により他方側容器と接着している一方側容器が他方側容器と一緒に上昇した場合に、他方側対向部が他方側容器と当接していないために該他方側容器の上昇が許容される一方で、一方側対向部が一方側容器に当接するために一方側容器の上昇が一方側対向部により阻止されるので、一方側容器と他方側容器との氷結による接着での結合状態が解除されて、他方側容器から一方側容器が分離されることから、氷結により接着している容器同士を分離することができ、ひいては凍結環境においてラックに保持されているチューブをチューブ毎に分離することができる。
【0016】
請求項2に係る本発明の容器分離装置によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
他方側対向部が、他方の押上ピンにより押し上げられつつある他方側容器が進入する凹部または孔により構成されていることにより、対向部材に凹部または孔を形成することで、他方側対向部および一方側対向部を簡単に設けることができるので、対向部が設けられた対向部材の構造が簡素化されて、容器分離装置のコストを削減することができる。
【0017】
請求項3に係る本発明の容器分離装置によれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
ピン保有部材が有する前記押上構造が、ピンの長さが異なる複数の種類の押圧ピンから構成され、一方の押上ピンと他方の押上ピンとが、互いに異なる種類のピンにより構成されていることにより、容器を押し上げる押上時期を異ならせるための押上構造を、ピンの長さを異ならせることで、容易に構成することができる。
【0018】
請求項4に係る本発明の容器分離装置によれば、請求項1から請求項3のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
対向部材が、分離作業位置にあるラックを上方から押圧して上方への移動を阻止する上押え部材であることにより、上押さえ部材が対向部材を兼ねるので、容器分離装置の構造が簡素化されるとともに、部品点数が削減されて、容器分離装置を小型化することができ、また容器分離装置のコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例である容器分離装置の正面図。
【図2】図1のII矢視図。
【図3】図1のIII矢視での容器分離装置の下押え部材を省略したときの図。
【図4】図1の容器分離装置において、ラックが分離作業位置にあるときの要部の正面図であり、一部が図3のIV−IV線での断面で示される図。
【図5】図4の断面部分の拡大図に相当し、第2種押上ピンがチューブの下端部に当接したときの断面図。
【図6】第1種押上ピンがチューブの下端部に当接したときの、図5と同様の断面図。
【図7】氷結により接着したチューブが対向当接部に当接したときの、図5と同様の断面図。
【図8】氷結により接着したチューブが分離されたときの、図5と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の容器分離装置は、水平方向で所定の配列方向に並べられている複数である所定数の容器を上下方向に抜差し可能に保持するラックを分離作業位置に保持するラック保持部材と、前記分離作業位置にある前記ラックに保持されている前記各容器を前記ラックに対して相対的に押し上げる前記所定数の押上ピンを有するピン保有部材と、前記押上ピンを前記ラックに対して相対的に上昇させる駆動部材とを備え、前記駆動部材の駆動により前記押上ピンが前記ラックに対して相対的に上昇する相対的上昇過程において、前記押上ピンにより前記ラックに対して相対的に押し上げられた前記容器が前記ラックから分離され、前記分離作業位置にある前記ラックの前記各容器の真上に配置されている前記所定数の対向部が設けられた対向部材を備え、前記各押上ピンについて、1つの前記押上ピンを第1押上ピンとし、前記第1押上ピンに前記配列方向で隣接するすべての前記押上ピンを1つ毎に第2押上ピンとするとき、前記ピン保有部材が、前記相対的上昇過程において、前記第1押上ピンおよび前記第2押上ピンのうちの、一方の押上ピンが他方の押上ピンよりも遅い時期に前記容器を相対的に押し上げることを可能とする押上構造を有し、前記一方の押上ピンが押し上げる前記容器を一方側容器とし、前記他方の押上ピンが押し上げる前記容器を他方側容器とするとき、前記相対的上昇過程において、前記一方側容器の真上に位置する前記対向部である一方側対向部が、前記他方側容器の真上に位置する前記対向部である他方側対向部と前記他方側容器とが非当接状態にあるときに、前記一方側容器に当接可能な位置にあり、前記相対的上昇過程において、前記他方側容器に氷結により接着している前記一方側容器が、前記一方側対向部との当接により前記他方側容器から分離されることにより、凍結環境においてラックに保持されているチューブをチューブ毎に分離するために、小型化をすることができるとともに、氷結により接着しているチューブ同士を分離することができるものであれば、その具体的な態様はいかなるものであっても構わない。
【0021】
1つの部材が別の部材に対して相対的に移動(昇降を含む。)する旨の表現は、前記1つの部材および前記別の部材の少なくとも一方の部材が移動することを意味する。同様に、1つの部材が別の部材に対して相対的に押し上げられる旨の表現は、前記別の部材の動きを基準としたときに前記1つの部材が相対的に押し上げられることを意味する。
容器は、例えば創薬用のマイクロチューブであるが、創薬用以外のチューブであってもよいし、チューブ以外の容器であってもよい。
また、容器は、押上ピンにより押し上げられて、発明の作用および効果が奏される容器であれば、いかなる形状のものであってもよい。
押上ピンは、容器の押上が可能である限り、いかなる形状のものでもよい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を、図1〜図8を参照して説明する。
図1に示される本発明の実施例である容器分離装置100は、水が凍結する冷凍環境、例えば冷凍用の保管庫(図示されず)内の環境において、冷凍保管されている複数の容器としてのマイクロチューブT(以下、「チューブT」という。)が保管用のラック101に保持されている状態で、該チューブTの外面に付着している水の凍結(すなわち、氷結)により、チューブTとラック101とが接着した場合、およびチューブT同士が接着した場合に、前記冷凍環境において、チューブTをラック101から分離し、またチューブT同士を分離するために使用される。
【0023】
図1,図2を参照すると、容器分離装置100は、複数である所定数のチューブTを上下方向に抜差し可能に保持しているラック101を分離作業位置(図4に示される位置である。)に保持するラック保持部材Hと、分離作業位置にあるラック101に保持されている各チューブTをラック101に対して相対的に押し上げる前記所定数の押上ピンPを有するピン保有部材140と、上下方向に相対的に移動可能な各押上ピンPを駆動する昇降用駆動部材145と、ラック保持部材Hを駆動するラック保持用駆動部材Aと、ラック保持部材Hおよび各駆動部材145,139を支持する機体150と各駆動部材145,139を制御する制御盤160とを備える。
【0024】
なお、説明の便宜上、図1,図2に示されるように、ラック101に対してチューブTが相対的に押し上げられる方向に平行な方向を上下方向とする。本実施例では、上下方向は鉛直方向であり、上下方向に直交する平面上での方向である水平方向のうちで、互いに直交する方向を、図示されているように、前後方向および左右方向であるとする。
また、平面視は、上下方向から見ることを意味する。
【0025】
着脱可能なキャップTaを有するチューブTは、創薬、すなわち、医学、生物工学および薬学などにおいて、薬剤の発見や開発のプロセスで、創薬用試料を封入状態で収容するために使用される筒状の、ここでは円筒状の容器である。本実施例では、1つのラック101に収容される前記所定数のチューブTは同一の形状である。
【0026】
ラック101は、SBS(Society for Biomolecular Screening)規格に準拠したラック101であり、平面視で矩形状の側壁105〜108(図3も参照)の内側が、隔壁により行方向および列方向に格子状に区画されて形成された複数の挿入部102(図4,図5参照)を有する。本実施例では、行方向に複数としての8の挿入部102、列方向に複数としての12の挿入部102が設けられ、各挿入部102に1つのチューブTが挿入されて保持されている。
そして、ラック101の側壁105〜108は、平面視で列方向に長い長方形であり、列方向に延びている1対の第1側壁105,106と、該第1側壁105,106よりも短い長さで行方向に延びている1対の第2側壁107,108とから構成される。
【0027】
このため、創薬用試料が収容されている前記所定数のチューブTは、ラック101に、所定の配列方向としての、互いに交差する(本実施例では、互いに直交する)第1,第2方向としての行方向および列方向にそれぞれ並べられている。本実施例では、行方向は前後方向であり、列方向は左右方向である。
前記所定数のチューブTは、前記冷凍環境において冷凍保管されているときに、チューブTの外面に付着した水の氷結が生じた場合に、行方向および列方向で隣接するチューブT同士が該氷結よりできた氷109(図5参照)により互いに接着し得る程度の間隔を行方向および列方向で形成している状態(図5参照)で、ラック101に保持されている。
【0028】
図4を参照すると、挿入部102に上下方向に直立状態で保持される各チューブTは、図4の拡大部分に示されるように、ラック101に対してチューブTを抜差し可能とする係合構造Eにより、ラック101に結合状態で保持されている。
係合構造Eは、挿入部102に設けられたラック側係合部102e(本実施例では、環状凸部)と、チューブTに設けられた容器側係合部Te(本実施例では、環状凹部)とから構成されており、係合部102e,Te同士の係合が、凹凸係合により行われる凹凸係合構造である。別の例として、係合構造Eは、係合部同士の係合が摩擦(例えば、弾性力を利用した圧入)により行われる摩擦係合構造であってもよい。
【0029】
各チューブTは、前記冷凍環境で冷凍保管されているときに、チューブTの外面に付着した水の氷結が生じた場合に、チューブTと挿入部102とが氷結より互いに接着し得る状態でラック101に保持されている。
また、ラック101に保持された状態の各チューブTは、上下方向で同じ位置にある。したがって、各チューブTの上端部であるキャップTaの位置は同じであり、各チューブTの下端部Tbの位置も同じである。
【0030】
図1〜図4を参照すると、ラック保持部材Hは、押上ピンPによるチューブTの分離作業が行われるための予め設定されたラック101の位置である分離作業位置(図4参照)を設定する。
ラック保持部材Hは、ラック101を水平方向で位置決めする水平方向用の位置決め部材であるラック載置部材110と、ラック載置部材110に載置されることにより前後方向および左右方向に位置決めされたラック101を上下方向で位置決めする上下方向用の位置決め部材であるラック押え部材120,130とを有する。
ラック載置部材110は、前後方向に離隔して機体150の枠状の支持部材151(図3参照)に固定されて設けられた1対の載置台111,112から構成される。各載置台111,112は、該載置台111,112に載置されたラック101を水平方向で位置決めするための複数の位置決め部113を有する。
【0031】
ピン保有部材140は、ラック101に保持されている各チューブTを上方に押し上げる前記所定数の押上ピンPと、上下方向に固定された状態で各押上ピンPを支持するピン支持体141とを有する。
機体150の支持部材152に支持されている昇降用駆動部材145は、上下方向での位置を検出する位置センサ(図示されず)からの信号が入力される制御盤160(図1参照)により制御されるアクチュエータ(図示されず。例えば、電動モータ)と、ピン支持体141に結合されるとともに該アクチュエータにより駆動されて上昇および下降する作動ロッド146とを有する。昇降用駆動部材145は、ピン支持体141を上下方向に駆動することにより、該ピン支持体141と一体の各押上ピンPを一斉に上下方向に移動させる。
【0032】
図3〜図5を参照すると、ピン支持体141には、ラック101の挿入部102と同数の押上ピンPが、分離作業位置を占めるラック101(または、ラック載置部材110により位置決めされたラック101)における各チューブTの配列状態と同じ配列状態で配置されている。
具体的には、前記所定数の押上ピンPは、ラック101における前記所定数のチューブTのそれぞれの真下に上下方向で対向して、行方向および列方向に、チューブTと同様に配置されている。したがって、上下方向で互いに対向するチューブTおよび押上ピンPは、平面視で重なる位置にある(図3参照)。
押上ピンPは、上下方向でチューブTの下端部Tbに下方から当接する当接部Peを有する。
【0033】
前記所定数の押上ピンPは、ピン支持体141に支持されている状態で、各押上ピンPの先端である当接部Peの上下方向での位置が異なる複数の種類、本実施例では2種類の押上ピンPである第1種押上ピンP1および第2種押上ピンP2から構成される。第2種押上ピンP2は、第1種押上ピンP1よりもピンの長さが長い(または、ピンの高さが高い)ピンである。
なお、図3においては、分かりやすさの観点から、第2種押上ピンP2にクロスハッチングが施され、また繁雑性を避けるため、チューブTの一部が示されている。
そして、前記所定数の押上ピンPは、第1種押上ピンP1および第2種押上ピンP2が、行方向および列方向に1つずつ交互に配置され、したがって第1種押上ピンP1が行方向および列方向に一つ置きに配置され、第2種押上ピンP2も行方向および列方向に一つ置きに配置されているピン配置構造としての押上構造を有する。
【0034】
図3,図5を参照すると、前記所定数の押上ピンPのこの押上構造により、各押上ピンPについて(すなわち、前記所定数の押上ピンPの1つずつについて)、1つの押上ピンPを第1押上ピンPaとし、第1押上ピンPaに行方向および列方向で隣接するすべての押上ピンPを1つ毎に第2押上ピンPbとするとき、各押上ピンPがラック101に対して相対的に上昇する相対的上昇過程で、第1押上ピンPaおよび第2押上ピンPbのうちの、一方側容器としての一方側チューブTを押し上げる一方の押上ピンPとしての第1種押上ピンP1は、他方の押上ピンPとしての第2種押上ピンP2よりも遅い時期に他方側容器としての他方側チューブTをラック101に対して相対的に押し上げる。
【0035】
ここで、第1押上ピンPaおよび第2押上ピンPbは、互いに異なる種類のピンにより構成されている。本実施例では、第1押上ピンPaが第1種押上ピンP1(または、第2種押上ピンP2)である場合、第2押上ピンPbは第2種押上ピンP2(または、第1種押上ピンP1)である。図3,図5には、第1押上ピンPaが第2種押上ピンP2であり、第2押上ピンPbが第1種押上ピンP1である場合が例示されている。
また、一方側チューブTは、一方の押上ピンPが押し上げるチューブTであり、他方側チューブTは、他方の押上ピンPが押し上げるチューブTである。
【0036】
図1,図2を参照すると、上下方向でのラック101の移動を阻止するラック押え部材120,130は、ラック載置部材110に載置されたラック101の下方および上方にそれぞれ配置されて、ラック101を下方および下方からそれぞれ押圧する下押え部材120および上押え部材130とを有する。
【0037】
ラック保持用駆動部材Aは、下押え部材120を駆動して上下方向に移動させる下押え駆動部材としての昇降用駆動部材145と、上押え部材130を駆動して左右方向に移動させる上押え駆動部材139とから構成される。
アクチュエータ(図示されず。例えば、電動モータである。)を有する上押え駆動部材139は、上押え部材130を、分離作業位置(図4参照)にあるラック101の真上の位置である押え位置(図1に実線で示される。)と、チューブTの分離作業が終了した後に移載機(図示されず)によりラック載置部材110から移載されるラック101と干渉しない位置である退避位置(図1に二点鎖線で示される。)との間で移動させる。
【0038】
図1〜図5を参照すると、ラック載置部材110に載置されたラック101の真下で、かつピン支持体141の真上に配置されている下押え部材120は、フローティング構造により、ピン支持体141に上下方向に移動可能に支持されている。このフローティング構造は、下押え部材120とピン支持体141との間に配置された弾性部材としての圧縮コイルばね127と、ピン支持体141に上下方向に挿通可能に案内される案内ロッド128とを有する1対の弾性支持部材126により構成される。
【0039】
下押え部材120は、昇降用駆動部材145により駆動されて上昇したときに、ラック載置部材110に載置されているラック101の下当接部である下面103(図4,図5参照)に下方から当接して、該ラック101を上方に押圧する下押え部121を有する。
また、下押え部材120には、各押上ピンPが1つずつ挿通される前記所定数の挿通孔122が設けられている。各挿通孔122の孔径は、ラック101に結合状態で保持された各チューブTにおいて、ラック101から僅かに下方に突出している下端部Tb(図4における部分拡大図、図5参照)が収容される大きさである。
【0040】
容器分離装置100の初期状態(図1に示される状態である。)で、ラック載置部材110に載置されているラック101から上下方向で離隔している下押え部材120は、昇降用駆動部材145により駆動されて押上ピンP(したがって、ピン支持体141)と一体に上昇して下押え部121においてラック101の下面103に当接する。その後、押上ピンPがさらに上昇するとき、下押え部材120は、下面103との当接状態を維持しつつ、ラック101をラック載置部材110から上方に離隔させて、ラック101の3つの側壁105〜107を、上押え部材130の上押え部135,136,137に当接させる(図4参照)。
そして、ラック101の上当接部である側壁105〜107と上押え部135,136,137とが上下方向で当接することにより、下押え部材120および上押え部材130により、上下方向でラック101が位置決めされて、ラック101が分離作業位置を占める。
【0041】
上押え部材130は、上押え駆動部材139に連結される基部131と、ラック101の側壁105〜107に上下方向で当接可能な上押え部135,136,137とを有する。
上押え部材130の基部131は、上押え部材130が押え位置を占めるときに、ラック載置部材110に載置されたラック101の真上に位置する下面132を有する。基部131は、機体150の支持部材153に固定された案内部材157に左右方向に移動可能に案内される連結部材158を介して上押え駆動部材139に連結されている。
そして、基部131と、該基部131から下方に向かって延出している上押え部135〜137とは、上押え部材130の移動方向で退避位置から押え位置に向かう方向である進出方向に向かって開放している開口134を有する収容室133(図2,図4,図5参照)を形成する。
【0042】
上押え部135〜137は、ラック載置部材110に載置されたラック101の1対の第1側壁105,106に、それぞれ列方向で全長に渡って当接する1対の第1上押え部135,136と、ラック101の1つの第2側壁107に、行方向で全長に渡って当接する第2上押え部137とから構成される。第2上押え部137は、上押え部材130において、その移動方向で押え位置から退避位置に向かう方向である後退方向側に位置する。これら上押え部135〜137は、分離作業位置にあるラック101の両第1側壁105,106および第2側壁107を、それぞれ上方から押圧することにより、ラック101の上方への移動を阻止する。
【0043】
開口134(図2,図4参照)は、容器分離装置100によるチューブTの分離作業が開始される前に、上押え部材130が退避位置から押え位置まで移動する過程において、ラック載置部材110に載置されているラック101に保持されたすべてのチューブTが通過して収容室133に入ることを許容し、容器分離装置100によるチューブTの分離作業が終了したときに、上押え部材130が押え位置から退避位置まで移動する過程において、ラック載置部材110に載置されているラック101に保持されたすべてのチューブTが収容室133から出ることを許容する出入口を構成する。
【0044】
ラック101に保持されているすべてのチューブTが収容室133に収容されていることにより、係合構造E(図4参照)により挿入部102に結合され、または氷結により挿入部102に接着されている各チューブTが、押上ピンPにより押し上げられることで、係合構造Eによる結合状態および氷結による接着状体が解除されて、各チューブTが挿入部102から上下方向で分離された際に、分離されたチューブTが挿入部102から飛び出すことが防止される。
【0045】
図3〜図5を参照すると、上押え部材130は、収容室133の天井壁を構成する基部131に、ラック保持部材Hに保持されているラック101の各チューブTの真上に各チューブTに上下方向で対向して配置されている前記所定数の対向部Cが設けられた対向部材である。
具体的には、基部131の平面状の下面132に形成されている前記所定数の対向部Cは、押上ピンPの種類と同数の種類、本実施例では2種類の対向部Cである第1種対向部としての対向当接部C1と、第2種対向部としての凹部C2とから構成される。
対向当接部C1は、第1種押上ピンP1により押し上げられるチューブTに対向する。凹部C2は、第2種押上ピンP2により押し上げられるチューブTに対向し、第2種押上ピンP2により押し上げられたチューブTが対向当接部C1よりも上方位置まで移動することを許容する。
【0046】
対向当接部C1は、凹部C2以外の下面132の部分により構成される当接面である。チューブTが収容される収容空間138(図5参照)を形成する凹部C2は、下面132から上方に向かって凹んでおり、チューブTの外径よりも大きな内径と、第1種押上ピンP1の当接部と第2種押上ピンP2の当接部との高さ位置の差(ここでは、両ピンP1,P2のピンの長さの差)以上の上下方向長さ(または、深さ)とを有する。
【0047】
前記所定数の対向部Cを構成する対向当接部C1および凹部C2は、基部131において、分離作業位置を占めるラック101(または、ラック載置部材110により位置決めされたラック101)における各チューブTの配列状態と同じ配列状態で配置されている。このため、前記所定数の対向部Cは、対向当接部C1および凹部C2が、行方向および列方向に1つずつ交互に配置され、したがって対向当接部C1が行方向および列方向に一つ置きに配置され、凹部C2も行方向および列方向に一つ置きに配置されている。
【0048】
具体的には、対向当接部C1および凹部C2の全体は、ラック101におけるすべてのチューブTのそれぞれの真上に上下方向で対向して、行方向および列方向に、チューブTと同様に配置される。さらに、対向当接部C1は、上下方向で互いに対向するチューブTおよび第1種押上ピンP1と平面視で重なる位置にあり、凹部C2は、上下方向で互いに対向するチューブTおよび第2種押上ピンP2と平面視で重なる位置にある(図3参照)。
【0049】
このため、すべての対向当接部C1およびすべての凹部C2は、各対向当接部C1および各凹部C2について(すなわち、基部131に設けられたすべての対向当接部C1およびすべての凹部C2の1つずつについて)、第1種,第2種押上ピンP1,P2がラック101に対して相対的に上昇する過程である相対的上昇過程において、前記一方の押上ピンP(本実施例では、第1種押上ピンP1)の真上に位置する対向部Cである一方側対向部としての対向当接部C1は、前記他方の押上ピンP(本実施例では、第2種押上ピンP2)の真上に位置する対向部Cである他方側対向部としての凹部C2とチューブTとが非当接状態にあるときに、前記一方側対向部としての対向当接部C1と当接する位置にあるように配置されている。
【0050】
図1,2,図4〜図8を参照して、容器分離装置100の動作について説明する。
図1,図2に示される初期状態では、ラック101はラック載置部材110に載置されていて、下押え部材120は該ラック101の下方に離隔している。また、上押え部材130は、駆動部材139により駆動されて後退位置から押え位置に至るまでの過程において開口134を通じて収容室133に収容された各チューブTを囲む押え位置において、ラック101から上方に離隔している。各押上ピンPは、その当接部Pe(図5参照)が下押え部材120の挿通孔122内に収容された位置にある。
【0051】
この初期状態から、駆動部材145により駆動されたピン支持体141が上昇すると、各押上ピンPは、ピン支持体141および下押え部材120と一体に、一斉に上昇して、下押え部121がラック載置部材110に載置されたラック101の下面103に下方から当接する。
その後、駆動部材145の駆動により、ピン支持体141、各押上ピンPおよび下押え部材120が一体にさらに上昇すると、図4に示されるように、ラック101の各側壁105〜107が上押え部材130の上押え部135〜137(図1,図2も参照)に当接して、ラック101は、下方で下押え部121に当接し、上方で上押え部135〜137に当接した状態で、分離作業位置に位置決めされる。
【0052】
ラック101が分離作業位置を占める状態で、駆動部材145により駆動された各押上ピンPがピン支持体141とともにさらに上昇すると、図5に示されるように、第2種押上ピンP2がチューブTの下端部Tbに当接し、さらに押上ピンPが上昇することで、図6に示されるように、第2種押上ピンP2がチューブTを押し上げて、チューブTと挿入部102とが係合構造E(図4も参照)による結合状態および氷結での接着による結合状態にある場合には、氷結による結合状態が解除されて、すなわちチューブTが挿入部102から上下方向で分離されて、チューブTが第2種押上ピンP2により押し上げられる。
このとき、下押え部121は、ばね127(図4参照)が弾性変形することにより発生する弾性力でラック101を上方に押圧している。
【0053】
第2種押上ピンP2によりチューブTが押し上げられる際に、列方向および行方向でチューブT1,T2同士が氷結によりできた氷109(図5,図6参照)により接着状態にあり、その接着力がチューブT1と挿入部102との氷結による接着力よりも大きいために、図6に示されるように、列方向および行方向でチューブTに隣接していて、第1種押上ピンP1により押し上げられるべき少なくとも1つの一方側チューブTとしてのチューブT1が、他方側チューブTとしてのチューブT2と一緒に上昇することがある。なお、図6には、列方向で隣接するチューブT1,T2同士が氷結により接着している例が示されている。
【0054】
そして、第2種押上ピンP2がチューブTをラック101から分離した後に、図6に示されるように、第1種押上ピンP1が、第2種押上ピンP2とチューブTの当接よりも遅い時期にチューブTと当接する。
その後、ピン支持体141が、ラック載置部材110、下押え部材120および上押え部材130に対して相対的に上昇することで、押上ピンPがチューブTをラック101に対して相対的に押し上げることにより、図7に示されるように、第1種押上ピンP1がチューブTを押し上げて、チューブTと挿入部102とが係合構造Eによる結合状態および氷結での接着による結合状態にある場合には、該結合状態が解除されて、すなわちチューブTが挿入部102から上下方向で分離されて、チューブTが第2種押上ピンP2により押し上げられる。このとき、第1種押上ピンP1に対向する位置にあるものの既に上昇しているチューブT1については、該チューブT1に対向する第1種押上ピンP1は、チューブT1を押し上げることなく空動作を行うことになる。
そして、この相対的上昇過程で、チューブT2と一緒に上昇したチューブT1が対向当接部C1に当接する(図7に示される状態である。)。
【0055】
そして、駆動部材145により駆動された各押上ピンPがピン支持体141とともにさらに上昇すると、図8に示されるように、第2種押上ピンP2により押し上げられたチューブT2は、凹部C2に当接することなく(すなわち、非当接状態で)、凹部C2内に下方から進入する一方、チューブT1が対向当接部C1に当接して、上昇が阻止されるために、チューブT2から分離される。
そして、ピン支持体141、したがって押上ピンPが、予め設定された上限位置まで上昇したことが前記位置センサにより検出されたとき、駆動部材145が停止し、ピン支持体141および押上ピンPが停止する。
【0056】
このようにして、各チューブTが、ラック101に保持された状態でチューブT毎に分離され後、駆動部材145により駆動されて押上ピンP、ピン支持体141が下降し、さらに下押え部材120もピン支持体141とともに下降して、容器分離装置100が初期状態(図1参照)になる。その後、上押え部材130が押え位置から退避位置に移動する。
次いで、保管庫内での前記冷凍環境において、分離されたチューブTは、前記ピッキング装置により、チューブT毎にラック101から抜き出される。
【0057】
次に、前述のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
容器分離装置100において、駆動部材145の駆動により駆動された押上ピンPが、分離作業位置にあるラック101に対して相対的に上昇する相対的上昇過程において、押上ピンPによりラック101に対して相対的に押し上げられたチューブTがラック101から分離されることにより、チューブTとラック101とが、係合構造Eと氷結による接着との少なくとも一方に起因して結合状態にある場合にも、ラック101に対して相対的に上昇する押上ピンPにより、チューブTをラック101から分離することができる。
【0058】
そして、各押上ピンPについて、1つの押上ピンPを第1押上ピンPaとし、第1押上ピンPaに配列方向で隣接するすべての押上ピンPを1つ毎に第2押上ピンPbとするとき、ピン保有部材140が、前記相対的上昇過程において、第1押上ピンPaおよび第2押上ピンPbのうちの、一方の押上ピンPとしての、第1種押上ピンP1が他方の押上ピンPとしての第2種押上ピンP2よりも遅い時期にチューブTを相対的に押し上げる。
この構成により、所定数の押上ピンPは、該所定数よりも小さい数毎に、ここでは該所定数の1/2の数毎に、押上時期を異ならせて、所定数のチューブTを順次押し上げるので、所定数のチューブTを一斉に押し上げる場合に比べて、押上ピンPを相対的に上昇させるための駆動部材145の駆動力を小さくすることができるため、駆動部材145を小型化することができ、ひいては容器分離装置100を小型化することができる。
【0059】
さらに、容器分離装置100は、分離作業位置にあるラック101の各チューブTの真上に配置されている所定数の対向部Cが設けられた基部131を有する上押え部材130を備え、各押上ピンPについて、1つの押上ピンPを第1押上ピンPaとし、第1押上ピンPaに配列方向で隣接するすべての押上ピンPを1つ毎に第2押上ピンPbとするとき、ピン保有部材140が、前記相対的上昇過程において、第1押上ピンPaおよび第2押上ピンPbのうちの、第1種押上ピンP1が第2種押上ピンP2よりも遅い時期にチューブTを相対的に押し上げることを可能とする押上構造を有し、第1種押上ピンP1が押し上げるチューブTを一方側チューブTとし、第2種押上ピンP2が押し上げるチューブTを他方側チューブTとするとき、前記相対的上昇過程において、一方側チューブTの真上に位置する対向部Cである一方側対向部としての対向当接部C1が、他方側チューブTの真上に位置する対向部Cである他方側対向部Cとしての凹部C2と他方側チューブTとが非当接状態にあるときに、一方側チューブTに当接可能な位置にあり、前記相対的上昇過程において、氷結してできた氷により他方側チューブT2に接着している一方側チューブT1が、対向当接部C1との当接によりチューブT2から分離される。
この構成により、一方側チューブTを押し上げる第1種押上ピンP1よりも早い時期に他方側チューブTを押し上げる第2種押上ピンP2が、他方側チューブTを押し上げるときに、氷結により他方側チューブT2と接着しているチューブT1がチューブT2と一緒に上昇した場合に、対向当接部C1がチューブT2と当接していないために該チューブT2の上昇が許容される一方で、対向当接部C1がチューブT1に当接するためにチューブT1の上昇が対向当接部C1により阻止されるので、チューブT1とチューブT2との氷結による接着での結合状態が解除されて、チューブT2からチューブT1が分離されることから、氷結により接着しているチューブT1,T2同士を分離することができ、ひいては凍結環境においてラック101に保持されているチューブTをチューブT毎に分離することができる。
【0060】
第2種押上ピンP2により押し上げられるチューブTと対向する他方側対向部Cが、第2種押上ピンP2により押し上げられつつあるチューブTが進入する凹部C2により構成されていることにより、対向部材基部131に凹部C2を形成することで、他方側対向部Cおよび第1種押上ピンP1により押し上げられるチューブTと対向する一方側対向部Cである対向当接部C1を簡単に設けることができるので、対向部Cが設けられた基部131の構造が簡素化されて、容器分離装置100のコストを削減することができる。
【0061】
ピン保有部材140が有する前記押上構造が、ピンの長さが異なる2種類の押上ピンPである第1種,第2種押上ピンP1,P2から構成されることにより、チューブTを押し上げる押上時期を異ならせるための押上構造を、押上ピンPの長さを異ならせることで、容易に構成することができる。
【0062】
対向部Cが、分離作業位置にあるラック101を上方から押圧して上方への移動を阻止する上押え部材130の基部131に設けられることにより、上押え部材130が対向部Cが設けられる部材を兼ねるので、容器分離装置100の構造が簡素化されるとともに、部品点数が削減されて、容器分離装置100を小型化することができ、また容器分離装置100のコストを削減することができる。
【0063】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
前記所定数のチューブTが、1つのラック101に、行方向のみ、または列方向のみに並んで保持されていてもよい。
上押え部材120と、対向部Cが設けられる対向部材が別個の部材により構成されてもよい。
行方向および列方向で隣接するチューブT同士の間隔が、氷結によるチューブT同士の接着が、行方向のみ、または列方向のみで発生するような間隔に設定されるなど、氷結によるチューブT同士の接着が、行方向のみ、または列方向のみで発生するように、前記所定数のチューブTが1つのラック101に保持されていてもよい。
押上ピンPの種類は3以上であってもよく、それに対応して、対向部Cの種類が3以上であってもよい。この場合、互いに上下方向長さが異なる2以上の凹部C2が設けられる。
【0064】
ピン保有部材140が有する前記押上構造は、第1種押上ピンおよび第2種押上ピンのそれぞれのピンの長さが同じであり、ピン保持体が、第1種押上ピンを支持する第1ピン支持体と、第2種押上ピンを支持する第2ピン支持体とを有する構造であってもよい。この場合、第1種押上ピンによるチューブTの押上時期が第2種押上ピンによるチューブTの押上時期よりも遅くなるように、該第1,第2ピン支持体が駆動される。
【0065】
第2種対向部は、凹部C2でなく、孔であってもよい。
対向当接部C1は、下面132から下方に向かって突出する凸部により構成されてもよい。
チューブTをラック101に保持するための係合構造Eが設けられていなくてもよい。
ピン支持体および押上ピンが機体150に対して固定され、昇降用駆動部材により、ラック載置部材および上押え部材が上下方向に駆動されてもよい。また、昇降用駆動部材により、ピン支持体および押上ピンとともに、ラック載置部材および上押え部材が上下方向に駆動されてもよい。
1つのラック101に、少なくとも氷結によるチューブT同士の接着が生じる前記所定数のチューブTが保持されていればよい。
【符号の説明】
【0066】
100・・・容器分離装置
101・・・ラック
109・・・氷
110・・・ラック載置部材
120・・・下押え部材
130・・・上押え部材
131・・・基部
140・・・ピン保有部材
141・・・ピン支持体
T ・・・チューブ
P ・・・押上ピン
P1・・・第1種押上ピン
P2・・・第2種押上ピン
Pa・・・第1押上ピン
Pb・・・第2押上ピン
C ・・・対向部
C1・・・対向当接部
C2・・・凹部
H ・・・ラック保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向で所定の配列方向に並べられている複数である所定数の容器を上下方向に抜差し可能に保持するラックを分離作業位置に保持するラック保持部材と、前記分離作業位置にある前記ラックに保持されている前記各容器を前記ラックに対して相対的に押し上げる前記所定数の押上ピンを有するピン保有部材と、前記押上ピンを前記ラックに対して相対的に上昇させる駆動部材とを備え、前記駆動部材の駆動により前記押上ピンが前記ラックに対して相対的に上昇する相対的上昇過程において、前記押上ピンにより前記ラックに対して相対的に押し上げられた前記容器が前記ラックから分離される容器分離装置において、
前記分離作業位置にある前記ラックの前記各容器の真上に配置されている前記所定数の対向部が設けられた対向部材を備え、
前記各押上ピンについて、1つの前記押上ピンを第1押上ピンとし、前記第1押上ピンに前記配列方向で隣接するすべての前記押上ピンを1つ毎に第2押上ピンとするとき、前記ピン保有部材が、前記相対的上昇過程において、前記第1押上ピンおよび前記第2押上ピンのうちの、一方の押上ピンが他方の押上ピンよりも遅い時期に前記容器を相対的に押し上げることを可能とする押上構造を有し、
前記一方の押上ピンが押し上げる前記容器を一方側容器とし、前記他方の押上ピンが押し上げる前記容器を他方側容器とするとき、前記相対的上昇過程において、前記一方側容器の真上に位置する前記対向部である一方側対向部が、前記他方側容器の真上に位置する前記対向部である他方側対向部と前記他方側容器とが非当接状態にあるときに、前記一方側容器に当接可能な位置にあり、
前記相対的上昇過程において、前記他方側容器に氷結により接着している前記一方側容器が、前記一方側対向部との当接により前記他方側容器から分離されることを特徴とする容器分離装置。
【請求項2】
前記他方側対向部が、前記他方の押上ピンにより押し上げられつつある前記他方側容器が進入する凹部または孔により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の切離し装置。
【請求項3】
前記押上構造が、ピンの長さが異なる複数の種類の前記押上ピンから構成され、
前記一方の押上ピンと前記他方の押上ピンとが、互いに異なる種類の前記押上ピンにより構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の容器分離装置。
【請求項4】
前記対向部材が、前記分離作業位置にある前記ラックを上方から押圧して上方への移動を阻止する上押え部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の容器分離装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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