容器損傷防止用部材及び容器輸送システム
【課題】輸送物に損傷を発生させず、また作業環境が良好となり配列や積載作業が容易になり、かつ、従来に比べて収納スペースが小さく、かつ作業性を向上可能な、容器損傷防止用部材及び該容器損傷防止用部材を使用した容器輸送システムを提供する。
【解決手段】第1及び第2の板材110、120と、第1及び第2の板材を折り畳み可能に連結する連結部121とを有し、格子状及び千鳥状の少なくとも一方にて配列された金属製容器1のそれぞれの間に上記第1及び第2の板材を挟んで配置される容器損傷防止用部材101を設ける。第1の板材は、複数行にて配列されている金属製容器の行間に配置され、第2の板材は、複数列にて配列されている金属製容器の列間に配置される。
【解決手段】第1及び第2の板材110、120と、第1及び第2の板材を折り畳み可能に連結する連結部121とを有し、格子状及び千鳥状の少なくとも一方にて配列された金属製容器1のそれぞれの間に上記第1及び第2の板材を挟んで配置される容器損傷防止用部材101を設ける。第1の板材は、複数行にて配列されている金属製容器の行間に配置され、第2の板材は、複数列にて配列されている金属製容器の列間に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器損傷防止用部材に関し、詳しくは例えば金属製容器を輸送するときに当該金属製容器に擦り傷や打痕等の損傷が生じるのを防止する容器損傷防止用部材に関する。また、本発明は、容器を輸送する際に、上記容器損傷防止用部材を用いる容器輸送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図17に示すような、JIS(日本工業規格)Z 1601に規定される200リットル用のドラム缶1には、その胴体部分2にて缶直径方向に凸状となった輪帯部3が全周にわたり、又、缶軸方向に沿って2箇所に形成されている。このようなドラム缶1を例えばトラックにて輸送する場合、図18に示すように、荷台の奥側より、例えば、車幅方向に4缶、車高方向に3缶ずつ、積み重ねながら合計約200缶が積み込まれる。尚、積み込みの際には、できるだけ多くのドラム缶1が積み込めるように、車長方向に隣接するドラム缶1同士では、図19に示すように輪帯部3同士が接触している。よって、輸送時におけるトラックの振動によりドラム缶1同士が擦れあい、特に輪帯部3における塗装が剥がれたり、傷がつくという現象が生じる。このような塗装の剥がれ等は、ドラム缶1の外観を悪くし、さらに錆を発生させる原因となるという問題がある。よって、塗装の剥がれ等を防止するため、従来、例えば麻袋等をドラム缶1にかぶせることで、輪帯部3同士が直接に接触するのを防止する方法が採られている。
【0003】
しかしながら、上述の、麻袋をかぶせる方法は、手間がかかり作業時間の短縮が困難であるとともに、麻袋等から発生する塵埃による作業環境の悪化、麻袋等の寿命が短いという問題がある。又、このような問題からコスト高となるという問題もある。
【0004】
このような問題を解決するために、本出願人は、輸送時において隣接するドラム缶同士の間に挟まれ輪帯部同士の当接を防止するスペーサを提案し、特許を得ている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3877907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のスペーサにより上述した問題は解消することができたが、上記スペーサについて敢えて難点を挙げるならば、若干嵩が張り、使用後の収納にスペースを要する点、及びスペーサを使用する際の作業性に未だ改良の余地がある点である。
【0007】
本発明は、容器の配列や積込時、及び特にその輸送時に、容器に損傷を発生させず、また作業環境が良好となり配列や積載作業が容易になり、かつ、従来に比べて収納スペースが小さく、かつ作業性を向上可能な、容器損傷防止用部材及び該容器損傷防止用部材を使用した容器輸送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様における容器損傷防止用部材は、中空で柱形状の金属製容器でその軸方向に直交する方向へ突出する突出部を外面に有する金属製容器を互いに近接して配列するときに使用され、上記軸方向に沿ってかつ上記突出部に接して配置される板状の容器損傷防止用部材であって、
上記軸方向に沿って配置されかつ上記金属製容器の配列に沿って延在する第1の板材と、
上記軸方向に沿って配置されかつ上記金属製容器同士間に挟まれる第2の板材と、
上記第1の板材及び上記第2の板材を折り畳み可能に連結する連結部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記第1の板材は、一枚の板材であり、上記軸方向における少なくとも1つの金属製容器の長さに等しい縦寸法を有し、上記第2の板材は、上記縦寸法を有する一枚又は複数枚の板材であり、上記連結部は、上記軸方向に沿って設けられ当該連結部を中心として第2の板材を回転可能に第1の板材へ連結し、第1の板材と第2の板材との折り畳みを可能としてもよい。
【0010】
また、上記金属製容器の配列が直線状になされその配列方向を行方向とし、行方向に配列された金属製容器を一組としたとき、上記行方向に直交する列方向に沿って複数行にわたり複数の組を格子状及び千鳥状の少なくとも一方にて配列した形態において、第1の板材と第2の板材とが折り畳まれていない状態で上記軸方向から見て、上記第1の板材と上記第2の板材とは、L字形、V字形、T字形、Y字形、十字形、又は櫛歯形状のいずれかにて配置してもよい。
【0011】
また、上記第1の板材及び上記第2の板材と上記突出部とが当接する箇所にて、上記第1の板材及び上記第2の板材に設けられ、上記突出部にて第1の板材及び第2の板材に生じる凹みを防止する補強部材をさらに備えることができる。
【0012】
また、上記金属製容器はドラム缶であり、該ドラム缶は胴体に対して天板及び地板が巻き締められたクローズ缶、胴体に対して天板が着脱可能なオープン缶、並びに、上記クローズ缶及び上記オープン缶において胴体に輪帯部を形成していないビーダーレス缶を含むことができる。
【0013】
また、複数の容器損傷防止用部材を配置する状態において、それぞれの第1の板材同士を接続し第1の板材同士を折り曲げ可能とする折曲部をさらに備えることができる。
【0014】
また、本発明の第2態様における容器輸送システムは、車輌の荷台に金属製容器を格子状及び千鳥状の少なくとも一方にて互いに近接して配列して金属製容器を輸送する容器輸送システムにおいて、
近接配列された金属製容器同士の間には、請求項1から6のいずれかに記載の容器損傷防止用部材を設け、
上記車輌には、上記荷台の天井に備わり、膨張して上記金属製容器をその軸方向に押圧するエアーバッグと、上記エアーバッグの膨張及び収縮を行うエアーバッグ作動装置とが備わる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1態様における容器損傷防止用部材は、近接する各金属製容器の間に挟まれることから、近接する金属製容器同士が直接に接触することを防止可能である。よって、金属製容器を配列するときや積込時、及び特に輸送時に、金属製容器に擦り傷や打痕等の損傷が発生するのを防止することができ、また、従来の麻袋とは異なり当該容器損傷防止用部材自体から塵埃が発生することはないので、良好な作業環境を維持することができる。
【0016】
さらに、当該容器損傷防止用部材は、板材にて構成され、かつ連結部を備えることで、第2の板材は、第1の板材に対して回転可能であり折り畳める構成を採っている。よって、従来に比べて嵩が張ることはなく、当該容器損傷防止用部材自体の持ち運びが容易となり、また使用しないときには、従来よりも収納スペースを小さくすることができる。一方、使用時には、第1の板材に対して第2の板材を広げることで、当該容器損傷防止用部材は、自立することができる。よって、自立状態にある容器損傷防止用部材に対して金属製容器を配列することができ、作業性を向上することができる。
【0017】
また、本発明の第2態様における容器輸送システムは、容器損傷防止用部材及びエアーバッグを用いることから、車輌で金属製容器を輸送する際において、上述したように、金属製容器の損傷防止、良好な作業環境の維持、省収納スペース化、及び作業性の向上を図ることができる。特に、損傷防止に関して、エアーバッグの使用により、金属製容器の軸方向及びその直交方向への金属製容器の移動を抑制することができ、容器損傷防止用部材との相乗効果にて損傷防止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における容器損傷防止用部材の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す容器損傷防止用部材の一変形例を示す斜視図である。
【図3】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図4】図1に示す容器損傷防止用部材の別の変形例を示す斜視図である。
【図5】図1に示す容器損傷防止用部材を折り畳む状態を説明するための斜視図である。
【図6】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図8】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図9】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図10】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図11】図1に示す容器損傷防止用部材の別の変形例を示す斜視図である。
【図12】図1に示す容器損傷防止用部材の変形例であって、補強部材を設けた例を示す斜視図である。
【図13】図1に示す容器損傷防止用部材を用いてドラム缶を積み込むときの状態を示す斜視図である。
【図14】図1に示す容器損傷防止用部材を用いてドラム缶を荷台に積み込むときの配列の一例を示す図である。
【図15】本発明の他の実施形態における容器輸送システムを説明するための斜視図である。
【図16】図15に示す容器輸送システムの変形例を説明するための斜視図である。
【図17】クローズ缶タイプのドラム缶の斜視図である。
【図18】従来のドラム缶輸送時の形態を示す図である。
【図19】従来のドラム缶輸送時において輪帯部同士が接触する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態である、容器損傷防止用部材及び該容器損傷防止用部材を用いた容器輸送システムについて、図を参照しながら以下に説明する。各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0020】
まず、容器損傷防止用部材について、その概略から説明する。
当該容器損傷防止用部材は、複数の金属製容器を互いに近接して配置した状態において、近接する金属製容器のそれぞれの間に挟まれる板状の部材である。このように金属製容器間に挟むことで、容器損傷防止用部材は、金属製容器同士が直接に接触するのを防止し、それによって、金属製容器に擦り傷や打痕等の損傷が発生するのを防止することができる。
【0021】
このような容器損傷防止用部材は、以下に説明するように金属製容器を輸送する際に用いることで大きな効果を奏するが、使用時期は輸送時に限定されず、例えば金属製容器を配列し単に保管する際に用いてもよい。
【0022】
また、容器損傷防止用部材により損傷防止が図られる金属製容器として、以下の説明では、容量200Lの鋼製ドラム缶(JIS Z 1601に規定のもの)を例に採るが、これに限定されるものではない。即ち、中空で柱形状の筒状体であり、その軸方向に対して直交する方向へ突出する突出部を外面に有する容器で、突出部が互いに接触することで外面に傷が付いたり、塗装がはげたり、打痕が生じたりするような容器が対象である。また、容器は金属製に限らない。また、その容量、形状、大きさも上記200Lの鋼製ドラム缶の場合に限定するものではなく、例えばペール缶(JIS Z 1620)及び18L缶(JIS Z 1602)等にも適用可能である。さらに、異種容器同士に対しても適用可能である。また、容量200Lの鋼製ドラム缶には、図17に示すような胴体部分2に天板4及び地板5が巻き締められたクローズ缶、胴体部分2に対して天板4が着脱可能であるオープン缶、さらに、クローズ缶及びオープン缶において、胴体部分2に輪帯部3を形成していないビーダーレス缶が含まれる。尚、これらのドラム缶において、上記突出部として、輪帯部3あるいは巻き締め部が相当する。
【0023】
容器損傷防止用部材について、より具体的に説明する。
容器損傷防止用部材は、金属製容器が配列された方向に延在し、金属製容器の突出部に接して配置される第1の板材と、配列された金属製容器同士間に挟まれる第2の板材と、第1の板材及び第2の板材を折り畳み可能に連結する連結部とを備える。尚、金属製容器の配置形態は、以下の説明では格子状及び千鳥状の少なくとも一方を例に採るが、これに限定されない。例えば円弧状に沿って少なくとも2つの容器が互いに近接して配置される場合でもよい。この場合、第1の板材は、容器の配列に沿って延在し、突出部に接して配置され、第2の板材は、配列された容器間に挟まれて配置される。また、一つの容器Aに対して、他の二つの容器B及び容器Cが近接するような配置であってもよい。このとき、容器Aと容器Bとの間に第1の板材が挟まれ、容器Aと容器Cとの間に第2の板材が挟まれる。
【0024】
図1に示す、一例としての容器損傷防止用部材101は、1枚の第1の板材110と、3枚の第2の板材120とを備えた櫛歯状の形態を有する。尚、図1では、車輌の一例としてのトラックの荷台に、車幅方向(行方向)53に4缶の鋼製ドラム缶1を配列し、この配列を鋼製ドラム缶1の軸方向51に3段、及び車幅方向に直交する車長方向(列方向)54に複数行に配置する形態を例に採り、この形態の一行一段分に適用可能な、櫛歯状の容器損傷防止用部材101を図示している。
【0025】
第1の板材110は、本実施形態では「プラダンシート」や「プラベニヤ」等の商品名で市販されているプラスチック製段ボールを用いて作製される。このようなプラスチック段ボールは、通常の紙製の段ボールと同様に中空構造を有し、例えばポリプロピレン樹脂にて成型されている。このような第1の板材110は、鋼製ドラム缶1の軸方向51に沿って平行又はほぼ平行に配置され、車幅方向53に沿って延在し、かつドラム缶1における突出部(輪帯部3又は巻き締め部分)に接するように配置される。また、第1の板材110は、鋼製ドラム缶1の軸方向51における、少なくとも1缶分の長さに等しい縦寸法111を有する。尚、縦寸法111は、ドラム缶1の積み重ね段数、例えば2段、3段等、に対応した寸法を採ることができる。但し、上述したビーダーレス缶では、天板4及び地板5と胴体部分2との巻き締め部分(チャイム部)が缶直径方向において最大径部となることから、上記のように最低限、1缶分の長さに等しい寸法が必要となる。また、図1に示す損傷防止用部材101では、第1の板材110の縦寸法111は890mmであり、第1の板材110は車幅方向53に沿ってドラム缶1の複数列分にわたって延在することから、車幅方向53における長さは2200mmである。
【0026】
また、第1の板材110の板厚は、ドラム缶1の損傷防止の観点から適宜選択可能である。また、第1の板材110の材質も、ポリプロピレン樹脂に限定されず、ポリプロピレン樹脂にカーボンを混入させた導電性樹脂や、ポリカーボネート等であってもよい。また、プラスチック段ボールは、中空構造を形成するために表裏板間にリブを有する。第1の板材110において、上記リブは、軸方向51あるいは車幅方向53のいずれに配向させてもよいが、図示するように第1の板材110は軸方向51に立設されることから強度上の観点から、本実施形態では、軸方向51にリブを配向させている。
【0027】
第2の板材120は、本実施形態では上述した第1の板材110と同一の材料にて製作され、軸方向51に沿って平行又はほぼ平行に配置され、軸方向51における、少なくとも1缶分の長さに等しい縦寸法111を有する。当該損傷防止用部材101の使用時において、本実施形態では、第2の板材120は、第1の板材110から車長方向54へ延在し、連結部121にて第1の板材110に連結される。
【0028】
本実施形態では、容器損傷防止用部材101はドラム缶1に適用されドラム缶1が円形であることから、車幅方向53において隣接するドラム缶1同士は、容器損傷防止用部材101を設けなければ、車長方向54においてドラム缶1の半径に相当する箇所で互いに接触することになる。したがって本実施形態では、第2の板材120の幅寸法122は、ドラム缶1の半径を超えドラム缶1の直径未満の長さとしている。具体的には直径の約8割〜9割程度の長さに設定している。しかしながら、第2の板材120の幅寸法122は、容器損傷防止用部材101を適用する容器の形状に対応して設定する必要があることは、上述の説明から明らかである。
【0029】
また、車幅方向53における第2の板材120同士の間隔(配置ピッチ)は、ドラム缶1の直径よりも僅かに大きい寸法に設定している。
また、第2の板材120の縦寸法111は、第1の板材110の縦寸法111に対応して伸縮させる。また、第2の板材120の使用材料について、第1の板材110における上述の説明が適用される。
さらに、本実施形態では、第2の板材120は、第1の板材110に対して第2の板材120を連結する連結部121を有する。
【0030】
連結部121は、軸方向51に沿って設けられ、連結部121を中心として回転方向52へ第2の板材120を揺動さらに回転可能とする部分である。
連結部121の形態として、本実施形態では、粘着テープ、例えばいわゆるガムテープ、を使用しているが、これに限定されない。例えば、図2に示すように、第1の板材110と第2の板材120とは、熱溶着されて一体的に形成してもよく、この形態では熱溶着された部分が連結部121に相当する。尚、図2では、熱溶着による連結部121を明示するため、第2の板材120の一部を折り曲げたように図示している。しかしながら、熱溶着方法によっては、単に溶着線にて連結部121を形成可能である。また、図3に示すように、例えば樹脂製の蝶番を複数個用いることもできる。この形態では、蝶番が連結部121に相当する。さらに、図4に示すように、例えば第1の板材110に凹部を、第2の板材120に凸部を設けて、連結部121をはめ込み式とし、第1の板材110と第2の板材120とは熱溶着等により接合することもできる。尚、この形態においても、第2の板材120は、第1の板材110に対して回転方向52に回転可能となるよう、上記凸部には切り込み等を施す。
【0031】
尚、図1及び図2では、連結部121は、軸方向51に沿って縦寸法111にわたり延在する場合を図示しているが、図3に示す場合のように、不連続にて形成してもよい。また、本実施形態では、第2の板材120が連結部121を有するように構成しているが、これに限定されない。例えば図3に示す形態を例に採ると、蝶番にてなる連結部121は、第1の板材110に備えることもでき、第1の板材110及び第2の板材120のいずれにも属さず独立して設けても良い。
【0032】
このように連結部121を設けることで、図5に示すように、第2の板材120は、第1の板材110側へ折り畳むことができる。尚、図5では、第2の板材120は、反時計方向へ回転した場合を示しているが、回転方向は問わない。また、全ての第2の板材120を同方向へ回転させているが、それぞれの第2の板材120で異ならせても良い。
【0033】
連結部121を有することで、第2の板材120を折り畳んだ状態では、容器損傷防止用部材101は、第1の板材110及び第2の板材120の2枚分の板厚となり、コンパクト化が可能となる。よって、容器損傷防止用部材101の搬送、持ち運びが容易になり、また、使用しないときの収納スペースを小さくすることができる。
【0034】
以上説明したように構成される容器損傷防止用部材101によれば、第1の板材110及び第2の板材120としてプラスチック段ボール材を使用したことから、軽量化が図られるとともに、耐衝撃性、耐圧性、耐久性、耐水性、耐カビ性を奏することができる。さらに、近接する各ドラム缶1の間に第1の板材110及び第2の板材120が挟まれることから、近接するドラム缶1同士が直接に接触することを防止できる。よって、ドラム缶1の配列や積込、荷下ろしの際、及び特に輸送時に、ドラム缶1に擦り傷や打痕等の損傷が発生するのを防止することができる。また、従来の麻袋とは異なり当該容器損傷防止用部材自体から塵埃が発生することはないので、良好な作業環境を維持可能である。
【0035】
さらに、上述のように、持ち運びの容易さ、及び省収納スペース化を図ることもでき、一方、使用時には、第1の板材110に対して第2の板材120を広げることで、当該容器損傷防止用部材101は、自立することができる。よって、自立状態にある容器損傷防止用部材101に対してドラム缶1を配列することができ、荷作業における作業性を従来よりも向上することができる。
【0036】
尚、第1の板材110及び第2の板材120は、プラスチック段ボールの使用に限定されない。また、第1の板材110と第2の板材120とで使用する材料を変更してもよい。
【0037】
さらにまた、図1に示す櫛歯状の形態にてなる容器損傷防止用部材101は、車幅方向53のような一行に4缶のドラム缶1を、複数行に渡り、また、複数段に渡り積載していく場合には便利であるが、容器損傷防止用部材101の形態は、これに限定されない。即ち、例えば図6から図9に示すような形態を採ることもできる。図6に示す容器損傷防止用部材102は、一枚の第1の板材110と、一枚の第2の板材120とを有し、第1の板材110及び第2の板材120を広げた状態で軸方向51から見て、L字形あるいはV字形に配置した形態である。図7に示す容器損傷防止用部材103は、一枚の第1の板材110と、一枚の第2の板材120とを有し、第1の板材110に対して第2の板材120を広げた状態で軸方向51から見て、T字形に配置した形態である。図8に示す容器損傷防止用部材104は、一枚の第1の板材110と、2枚の第2の板材120とを有し、第1の板材110に対して第2の板材120を広げた状態で軸方向51から見て、Y字形に配置した形態である。図9に示す容器損傷防止用部材105は、一枚の第1の板材110と、2枚の第2の板材120とを有し、第1の板材110に対して第2の板材120を広げた状態で軸方向51から見て、十字形に配置した形態である。さらにまた、図6に示すL、V字形の容器損傷防止用部材102、又は図8に示すY字形の容器損傷防止用部材104を組み合わせて、図10に示すように、軸方向51から見て蛇腹形を構成することもできる。
このような容器損傷防止用部材102〜105のいずれにおいても、第1の板材110及び第2の板材120は、隣接するドラム缶1同士の間に挟まれて配置される。
【0038】
容器損傷防止用部材102〜105は、容器損傷防止用部材101における上述の効果を奏することができるとともに、さらに、種々の金属製容器の配置、配列に対して対応することができる。
【0039】
さらにまた、複数の容器損傷防止用部材102〜105が使用される場合、さらには複数の容器損傷防止用部材101が使用される場合においても、各容器損傷防止用部材における第1の板材110同士を折曲部にて接続してもよい。例えば図11に示すように、折曲部112は、軸方向51に沿って延在し第1の板材110同士を接続する部分であり、第1の板材110同士を折り曲げ可能とする。
【0040】
折曲部112の形態としては、上述した連結部121と同様に、粘着テープ、溶着、蝶番等の形態を採用することができる。尚、図11では、2つの第1の板材110を接続する場合で折曲部112は一箇所のみの形態を図示するが、3つ以上の第1の板材110を接続する場合で複数の折曲部112が存在する形態を採ることもできる。
【0041】
また、図11では、折曲部112は軸方向51に沿って設置した形態を示すが、軸方向51における例えば1段目の第1の板材110と、2段目の第1の板材110とに対して、車幅方向53に沿って折曲部112を設置してもよい。
【0042】
このように、第1の板材110同士間に折曲部111を設けることで、容器損傷防止用部材101等について、さらに持ち運びの容易さ、及び省収納スペース化を図ることができ、作業性も向上することができる。
【0043】
さらにまた、上述した容器損傷防止用部材101〜105について、以下に説明する補強部材を設けることもできる。即ち、例えばドラム缶1においては、輪帯部3が直径方向において最大径部分であり、また、ビーダーレス缶においては天板4及び地板5における巻き締め部が最大径部分となる。よって、容器損傷防止用部材101〜105を、同種の金属製容器、例えばドラム缶1に対して繰り返して使用した場合、第1の板材110及び第2の板材120において、ドラム缶1の突出部に相当し最大径部分である輪帯部3同士が当接する部分は、次第に凹みが発生し、使用開始当初の耐衝撃性、耐圧性等の性能の低下が懸念される。
【0044】
そこで、図12に示すように、第1の板材110及び第2の板材120の、表面及び裏面の少なくとも一方において、最大径部分が接触する部分には、第1の板材110及び第2の板材120の凹みを防止する補強部材130を設けることができる。補強部材130としては、例えばゴム材のような弾性部材、あるいは例えば不織布のような布材等が相当し、例えば貼付することで第1の板材110及び第2の板材120に設置可能である。
【0045】
補強部材130を設けることで、第1の板材110及び第2の板材120における凹みの発生を低減することができ、容器損傷防止用部材101〜105の耐用期間を延ばすことができる。
尚、図12では、補強部材130は、上記最大径部分が接触する部分を超えて設けた場合を図示するが、上述のように補強部材130は、最低限、最大径部分が接触する部分に設ければ良い。
【0046】
実施形態2:
次に、上述した容器損傷防止用部材101〜105を用いた容器輸送システムについて説明する。
ここでは、車輌の一例であるトラックの荷台にドラム缶1を積載する容器輸送システムを例に採る。また、車輌201の荷台210へのドラム缶1の積載形態としては、図13に示すようにドラム缶1を格子状に積載する場合、あるいは図14に示すように、千鳥状62に積載する場合、及び格子状61と千鳥状62とを組み合わせて積載する場合がある。さらに、図15及び図16に示すように、車輌201は、エアーバッグ221と、エアーバッグ作動装置222とを備える。また、荷台210の天井211は、鉛直方向(ドラム缶1の軸方向51にも相当)に昇降可能な構造である。
【0047】
エアーバッグ221は、本実施形態では、荷台210の天井211に、車長方向54に沿って延在し、図15に示すように、車幅方向53においてドラム缶1の配置に対応して4列にて配置されている。また、エアーバッグ221は、膨張時には、天井側は平坦であり、ドラム缶側に円弧状に凸となるように調整されている。尚、このようなエアーバッグ221の配置形態は、荷台210に積載する金属製容器の形態及び車幅方向53における数によって決定され、図15に示す形態に限定されない。例えば図16に示すように、エアーバッグ221は、車幅方向53において両側及び中央部の3列に配置してもよい。この場合、中央部に位置するエアーバッグ221は、両側に位置するエアーバッグ221に比べて、車幅方向53に幅広である。また、左右2缶ずつに対応して、2列にて配置することもできる。
【0048】
エアーバッグ作動装置222は、エアーバッグ221の膨張及び収縮を行う装置であり、圧縮エアー供給源からエアーバッグ221までの配管も含む。圧縮エアー供給源の一例としてブロワーが利用でき、例えば1〜50kPa程度の圧力にてエアーバッグ221を膨張させる。このエアー圧は、エアーバッグ221の材質(強度特性)、トラックの天井211の強度から適宜設定され、例えば数kPaが好ましい。本実施形態では、約3〜4kPaの圧力でエアーバッグ221を膨張させている。尚、出願人が行った、エアーバッグ221を5kPaの圧力で膨張させた状態での約800kmの輸送実験では、約200本のドラム缶1に傷や塗装剥がれは一切見られなかった。
【0049】
本実施形態における容器輸送システムでは、積載され、車幅方向53、車長方向54等に隣接するドラム缶1同士の間には、上述した容器損傷防止用部材101等が配置される。また、図15に示すように、車幅方向53に位置する荷台210の左右の側壁212には、ドラム缶1の巻き締め部、及び輪帯部3が接触する箇所に、緩衝材213が車長方向54(図15では紙面に垂直な方向)に沿って取り付けられている。
【0050】
このように構成された容器輸送システムにおけるドラム缶1の積み込み手順について説明する。
荷台210に1段目のドラム缶1を配列するに当たり、まず、図1に示す容器損傷防止用部材101について、第2の板材120を折り畳んだ状態で荷台210に持ち込み、各第2の板材120を広げ、荷台210の床面に容器損傷防止用部材101を軸方向51に自立させる。
【0051】
次に、車幅方向53において容器損傷防止用部材101の両端の2箇所にそれぞれドラム缶1を配置し、容器損傷防止用部材101を所定位置にセットする。その後、容器損傷防止用部材101の中央の2箇所にそれぞれドラム缶1を第2の板材120を挟んで配置する。
【0052】
次に、2段目用として、第2の板材120を折り畳んだ状態で容器損傷防止用部材101を荷台210に持ち込み、1段目の容器損傷防止用部材101の上に各第2の板材120を広げてセットする。1段目の場合と同様に、車幅方向53において容器損傷防止用部材101の両端の2箇所にそれぞれドラム缶1を1段目のドラム缶1上に積み上げ、2段目の容器損傷防止用部材101を所定位置にセットする。その後、2段目の容器損傷防止用部材101の中央の2箇所にそれぞれドラム缶1を第2の板材120を挟んで配置する。図13は、このような状態を図示している。
【0053】
3段目についても、2段目と同様に作業を行う。
このようにして、トラックの荷台210に、車幅方向53に4缶ずつ、3段にて一行分の積み込みがなされる。そして、車長方向54に沿って複数行に4缶ずつ配置して格子状61に配列したり、あるいは、4、3、4、3、…と千鳥状62に配列したり、あるいは図14に示すように、格子状61と千鳥状62とを組み合わせて配列する。
【0054】
全ドラム缶1の積み込みが終了後、荷台210の天井211を降下させる。降下後、エアーバッグ作動装置222にてエアーバッグ221を膨張させ、ドラム缶1の固定化を図る。
【0055】
説明したような容器輸送システムによれば、容器損傷防止用部材101によって、荷作業時及び輸送時に、車幅方向53及び車長方向54にドラム缶1が直接に接触することはなくなる。さらに、エアーバッグ221によるドラム缶1の固定化との相乗効果により、ドラム缶1の損傷をさらに防止することができる。
【0056】
上述した、ドラム缶1の積み込み手順の説明から明らかとなるように、容器損傷防止用部材101は、複数の容器損傷防止用部材101によって予め仕切られた空間を作成しその空間へ容器を配置していくという形態に使用される物ではない。そもそもトラックの荷台210のような場所に対しては、そのような形態での使用方法を採ることはできない。よって容器損傷防止用部材101は、上述した容器損傷防止の作用をするとともに、容器の配置、配列と同時に使用して、容器を配列する際の目安や案内の作用をも行うものであり、作業効率を向上させ、作業者への負担も軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば金属製容器を輸送するときに当該金属製容器に擦り傷や打痕等の損傷が生じるのを防止する容器損傷防止用部材に適用可能であり、また、容器を輸送する際に、上記容器損傷防止用部材を用いる容器輸送システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…ドラム缶、
101〜105…容器損傷防止用部材、110…第1の板材、111…縦寸法、
112…折曲部、120…第2の板材、121…連結部、130…補強部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器損傷防止用部材に関し、詳しくは例えば金属製容器を輸送するときに当該金属製容器に擦り傷や打痕等の損傷が生じるのを防止する容器損傷防止用部材に関する。また、本発明は、容器を輸送する際に、上記容器損傷防止用部材を用いる容器輸送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図17に示すような、JIS(日本工業規格)Z 1601に規定される200リットル用のドラム缶1には、その胴体部分2にて缶直径方向に凸状となった輪帯部3が全周にわたり、又、缶軸方向に沿って2箇所に形成されている。このようなドラム缶1を例えばトラックにて輸送する場合、図18に示すように、荷台の奥側より、例えば、車幅方向に4缶、車高方向に3缶ずつ、積み重ねながら合計約200缶が積み込まれる。尚、積み込みの際には、できるだけ多くのドラム缶1が積み込めるように、車長方向に隣接するドラム缶1同士では、図19に示すように輪帯部3同士が接触している。よって、輸送時におけるトラックの振動によりドラム缶1同士が擦れあい、特に輪帯部3における塗装が剥がれたり、傷がつくという現象が生じる。このような塗装の剥がれ等は、ドラム缶1の外観を悪くし、さらに錆を発生させる原因となるという問題がある。よって、塗装の剥がれ等を防止するため、従来、例えば麻袋等をドラム缶1にかぶせることで、輪帯部3同士が直接に接触するのを防止する方法が採られている。
【0003】
しかしながら、上述の、麻袋をかぶせる方法は、手間がかかり作業時間の短縮が困難であるとともに、麻袋等から発生する塵埃による作業環境の悪化、麻袋等の寿命が短いという問題がある。又、このような問題からコスト高となるという問題もある。
【0004】
このような問題を解決するために、本出願人は、輸送時において隣接するドラム缶同士の間に挟まれ輪帯部同士の当接を防止するスペーサを提案し、特許を得ている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3877907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のスペーサにより上述した問題は解消することができたが、上記スペーサについて敢えて難点を挙げるならば、若干嵩が張り、使用後の収納にスペースを要する点、及びスペーサを使用する際の作業性に未だ改良の余地がある点である。
【0007】
本発明は、容器の配列や積込時、及び特にその輸送時に、容器に損傷を発生させず、また作業環境が良好となり配列や積載作業が容易になり、かつ、従来に比べて収納スペースが小さく、かつ作業性を向上可能な、容器損傷防止用部材及び該容器損傷防止用部材を使用した容器輸送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様における容器損傷防止用部材は、中空で柱形状の金属製容器でその軸方向に直交する方向へ突出する突出部を外面に有する金属製容器を互いに近接して配列するときに使用され、上記軸方向に沿ってかつ上記突出部に接して配置される板状の容器損傷防止用部材であって、
上記軸方向に沿って配置されかつ上記金属製容器の配列に沿って延在する第1の板材と、
上記軸方向に沿って配置されかつ上記金属製容器同士間に挟まれる第2の板材と、
上記第1の板材及び上記第2の板材を折り畳み可能に連結する連結部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記第1の板材は、一枚の板材であり、上記軸方向における少なくとも1つの金属製容器の長さに等しい縦寸法を有し、上記第2の板材は、上記縦寸法を有する一枚又は複数枚の板材であり、上記連結部は、上記軸方向に沿って設けられ当該連結部を中心として第2の板材を回転可能に第1の板材へ連結し、第1の板材と第2の板材との折り畳みを可能としてもよい。
【0010】
また、上記金属製容器の配列が直線状になされその配列方向を行方向とし、行方向に配列された金属製容器を一組としたとき、上記行方向に直交する列方向に沿って複数行にわたり複数の組を格子状及び千鳥状の少なくとも一方にて配列した形態において、第1の板材と第2の板材とが折り畳まれていない状態で上記軸方向から見て、上記第1の板材と上記第2の板材とは、L字形、V字形、T字形、Y字形、十字形、又は櫛歯形状のいずれかにて配置してもよい。
【0011】
また、上記第1の板材及び上記第2の板材と上記突出部とが当接する箇所にて、上記第1の板材及び上記第2の板材に設けられ、上記突出部にて第1の板材及び第2の板材に生じる凹みを防止する補強部材をさらに備えることができる。
【0012】
また、上記金属製容器はドラム缶であり、該ドラム缶は胴体に対して天板及び地板が巻き締められたクローズ缶、胴体に対して天板が着脱可能なオープン缶、並びに、上記クローズ缶及び上記オープン缶において胴体に輪帯部を形成していないビーダーレス缶を含むことができる。
【0013】
また、複数の容器損傷防止用部材を配置する状態において、それぞれの第1の板材同士を接続し第1の板材同士を折り曲げ可能とする折曲部をさらに備えることができる。
【0014】
また、本発明の第2態様における容器輸送システムは、車輌の荷台に金属製容器を格子状及び千鳥状の少なくとも一方にて互いに近接して配列して金属製容器を輸送する容器輸送システムにおいて、
近接配列された金属製容器同士の間には、請求項1から6のいずれかに記載の容器損傷防止用部材を設け、
上記車輌には、上記荷台の天井に備わり、膨張して上記金属製容器をその軸方向に押圧するエアーバッグと、上記エアーバッグの膨張及び収縮を行うエアーバッグ作動装置とが備わる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1態様における容器損傷防止用部材は、近接する各金属製容器の間に挟まれることから、近接する金属製容器同士が直接に接触することを防止可能である。よって、金属製容器を配列するときや積込時、及び特に輸送時に、金属製容器に擦り傷や打痕等の損傷が発生するのを防止することができ、また、従来の麻袋とは異なり当該容器損傷防止用部材自体から塵埃が発生することはないので、良好な作業環境を維持することができる。
【0016】
さらに、当該容器損傷防止用部材は、板材にて構成され、かつ連結部を備えることで、第2の板材は、第1の板材に対して回転可能であり折り畳める構成を採っている。よって、従来に比べて嵩が張ることはなく、当該容器損傷防止用部材自体の持ち運びが容易となり、また使用しないときには、従来よりも収納スペースを小さくすることができる。一方、使用時には、第1の板材に対して第2の板材を広げることで、当該容器損傷防止用部材は、自立することができる。よって、自立状態にある容器損傷防止用部材に対して金属製容器を配列することができ、作業性を向上することができる。
【0017】
また、本発明の第2態様における容器輸送システムは、容器損傷防止用部材及びエアーバッグを用いることから、車輌で金属製容器を輸送する際において、上述したように、金属製容器の損傷防止、良好な作業環境の維持、省収納スペース化、及び作業性の向上を図ることができる。特に、損傷防止に関して、エアーバッグの使用により、金属製容器の軸方向及びその直交方向への金属製容器の移動を抑制することができ、容器損傷防止用部材との相乗効果にて損傷防止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における容器損傷防止用部材の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す容器損傷防止用部材の一変形例を示す斜視図である。
【図3】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図4】図1に示す容器損傷防止用部材の別の変形例を示す斜視図である。
【図5】図1に示す容器損傷防止用部材を折り畳む状態を説明するための斜視図である。
【図6】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図8】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図9】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図10】図1に示す容器損傷防止用部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図11】図1に示す容器損傷防止用部材の別の変形例を示す斜視図である。
【図12】図1に示す容器損傷防止用部材の変形例であって、補強部材を設けた例を示す斜視図である。
【図13】図1に示す容器損傷防止用部材を用いてドラム缶を積み込むときの状態を示す斜視図である。
【図14】図1に示す容器損傷防止用部材を用いてドラム缶を荷台に積み込むときの配列の一例を示す図である。
【図15】本発明の他の実施形態における容器輸送システムを説明するための斜視図である。
【図16】図15に示す容器輸送システムの変形例を説明するための斜視図である。
【図17】クローズ缶タイプのドラム缶の斜視図である。
【図18】従来のドラム缶輸送時の形態を示す図である。
【図19】従来のドラム缶輸送時において輪帯部同士が接触する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態である、容器損傷防止用部材及び該容器損傷防止用部材を用いた容器輸送システムについて、図を参照しながら以下に説明する。各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0020】
まず、容器損傷防止用部材について、その概略から説明する。
当該容器損傷防止用部材は、複数の金属製容器を互いに近接して配置した状態において、近接する金属製容器のそれぞれの間に挟まれる板状の部材である。このように金属製容器間に挟むことで、容器損傷防止用部材は、金属製容器同士が直接に接触するのを防止し、それによって、金属製容器に擦り傷や打痕等の損傷が発生するのを防止することができる。
【0021】
このような容器損傷防止用部材は、以下に説明するように金属製容器を輸送する際に用いることで大きな効果を奏するが、使用時期は輸送時に限定されず、例えば金属製容器を配列し単に保管する際に用いてもよい。
【0022】
また、容器損傷防止用部材により損傷防止が図られる金属製容器として、以下の説明では、容量200Lの鋼製ドラム缶(JIS Z 1601に規定のもの)を例に採るが、これに限定されるものではない。即ち、中空で柱形状の筒状体であり、その軸方向に対して直交する方向へ突出する突出部を外面に有する容器で、突出部が互いに接触することで外面に傷が付いたり、塗装がはげたり、打痕が生じたりするような容器が対象である。また、容器は金属製に限らない。また、その容量、形状、大きさも上記200Lの鋼製ドラム缶の場合に限定するものではなく、例えばペール缶(JIS Z 1620)及び18L缶(JIS Z 1602)等にも適用可能である。さらに、異種容器同士に対しても適用可能である。また、容量200Lの鋼製ドラム缶には、図17に示すような胴体部分2に天板4及び地板5が巻き締められたクローズ缶、胴体部分2に対して天板4が着脱可能であるオープン缶、さらに、クローズ缶及びオープン缶において、胴体部分2に輪帯部3を形成していないビーダーレス缶が含まれる。尚、これらのドラム缶において、上記突出部として、輪帯部3あるいは巻き締め部が相当する。
【0023】
容器損傷防止用部材について、より具体的に説明する。
容器損傷防止用部材は、金属製容器が配列された方向に延在し、金属製容器の突出部に接して配置される第1の板材と、配列された金属製容器同士間に挟まれる第2の板材と、第1の板材及び第2の板材を折り畳み可能に連結する連結部とを備える。尚、金属製容器の配置形態は、以下の説明では格子状及び千鳥状の少なくとも一方を例に採るが、これに限定されない。例えば円弧状に沿って少なくとも2つの容器が互いに近接して配置される場合でもよい。この場合、第1の板材は、容器の配列に沿って延在し、突出部に接して配置され、第2の板材は、配列された容器間に挟まれて配置される。また、一つの容器Aに対して、他の二つの容器B及び容器Cが近接するような配置であってもよい。このとき、容器Aと容器Bとの間に第1の板材が挟まれ、容器Aと容器Cとの間に第2の板材が挟まれる。
【0024】
図1に示す、一例としての容器損傷防止用部材101は、1枚の第1の板材110と、3枚の第2の板材120とを備えた櫛歯状の形態を有する。尚、図1では、車輌の一例としてのトラックの荷台に、車幅方向(行方向)53に4缶の鋼製ドラム缶1を配列し、この配列を鋼製ドラム缶1の軸方向51に3段、及び車幅方向に直交する車長方向(列方向)54に複数行に配置する形態を例に採り、この形態の一行一段分に適用可能な、櫛歯状の容器損傷防止用部材101を図示している。
【0025】
第1の板材110は、本実施形態では「プラダンシート」や「プラベニヤ」等の商品名で市販されているプラスチック製段ボールを用いて作製される。このようなプラスチック段ボールは、通常の紙製の段ボールと同様に中空構造を有し、例えばポリプロピレン樹脂にて成型されている。このような第1の板材110は、鋼製ドラム缶1の軸方向51に沿って平行又はほぼ平行に配置され、車幅方向53に沿って延在し、かつドラム缶1における突出部(輪帯部3又は巻き締め部分)に接するように配置される。また、第1の板材110は、鋼製ドラム缶1の軸方向51における、少なくとも1缶分の長さに等しい縦寸法111を有する。尚、縦寸法111は、ドラム缶1の積み重ね段数、例えば2段、3段等、に対応した寸法を採ることができる。但し、上述したビーダーレス缶では、天板4及び地板5と胴体部分2との巻き締め部分(チャイム部)が缶直径方向において最大径部となることから、上記のように最低限、1缶分の長さに等しい寸法が必要となる。また、図1に示す損傷防止用部材101では、第1の板材110の縦寸法111は890mmであり、第1の板材110は車幅方向53に沿ってドラム缶1の複数列分にわたって延在することから、車幅方向53における長さは2200mmである。
【0026】
また、第1の板材110の板厚は、ドラム缶1の損傷防止の観点から適宜選択可能である。また、第1の板材110の材質も、ポリプロピレン樹脂に限定されず、ポリプロピレン樹脂にカーボンを混入させた導電性樹脂や、ポリカーボネート等であってもよい。また、プラスチック段ボールは、中空構造を形成するために表裏板間にリブを有する。第1の板材110において、上記リブは、軸方向51あるいは車幅方向53のいずれに配向させてもよいが、図示するように第1の板材110は軸方向51に立設されることから強度上の観点から、本実施形態では、軸方向51にリブを配向させている。
【0027】
第2の板材120は、本実施形態では上述した第1の板材110と同一の材料にて製作され、軸方向51に沿って平行又はほぼ平行に配置され、軸方向51における、少なくとも1缶分の長さに等しい縦寸法111を有する。当該損傷防止用部材101の使用時において、本実施形態では、第2の板材120は、第1の板材110から車長方向54へ延在し、連結部121にて第1の板材110に連結される。
【0028】
本実施形態では、容器損傷防止用部材101はドラム缶1に適用されドラム缶1が円形であることから、車幅方向53において隣接するドラム缶1同士は、容器損傷防止用部材101を設けなければ、車長方向54においてドラム缶1の半径に相当する箇所で互いに接触することになる。したがって本実施形態では、第2の板材120の幅寸法122は、ドラム缶1の半径を超えドラム缶1の直径未満の長さとしている。具体的には直径の約8割〜9割程度の長さに設定している。しかしながら、第2の板材120の幅寸法122は、容器損傷防止用部材101を適用する容器の形状に対応して設定する必要があることは、上述の説明から明らかである。
【0029】
また、車幅方向53における第2の板材120同士の間隔(配置ピッチ)は、ドラム缶1の直径よりも僅かに大きい寸法に設定している。
また、第2の板材120の縦寸法111は、第1の板材110の縦寸法111に対応して伸縮させる。また、第2の板材120の使用材料について、第1の板材110における上述の説明が適用される。
さらに、本実施形態では、第2の板材120は、第1の板材110に対して第2の板材120を連結する連結部121を有する。
【0030】
連結部121は、軸方向51に沿って設けられ、連結部121を中心として回転方向52へ第2の板材120を揺動さらに回転可能とする部分である。
連結部121の形態として、本実施形態では、粘着テープ、例えばいわゆるガムテープ、を使用しているが、これに限定されない。例えば、図2に示すように、第1の板材110と第2の板材120とは、熱溶着されて一体的に形成してもよく、この形態では熱溶着された部分が連結部121に相当する。尚、図2では、熱溶着による連結部121を明示するため、第2の板材120の一部を折り曲げたように図示している。しかしながら、熱溶着方法によっては、単に溶着線にて連結部121を形成可能である。また、図3に示すように、例えば樹脂製の蝶番を複数個用いることもできる。この形態では、蝶番が連結部121に相当する。さらに、図4に示すように、例えば第1の板材110に凹部を、第2の板材120に凸部を設けて、連結部121をはめ込み式とし、第1の板材110と第2の板材120とは熱溶着等により接合することもできる。尚、この形態においても、第2の板材120は、第1の板材110に対して回転方向52に回転可能となるよう、上記凸部には切り込み等を施す。
【0031】
尚、図1及び図2では、連結部121は、軸方向51に沿って縦寸法111にわたり延在する場合を図示しているが、図3に示す場合のように、不連続にて形成してもよい。また、本実施形態では、第2の板材120が連結部121を有するように構成しているが、これに限定されない。例えば図3に示す形態を例に採ると、蝶番にてなる連結部121は、第1の板材110に備えることもでき、第1の板材110及び第2の板材120のいずれにも属さず独立して設けても良い。
【0032】
このように連結部121を設けることで、図5に示すように、第2の板材120は、第1の板材110側へ折り畳むことができる。尚、図5では、第2の板材120は、反時計方向へ回転した場合を示しているが、回転方向は問わない。また、全ての第2の板材120を同方向へ回転させているが、それぞれの第2の板材120で異ならせても良い。
【0033】
連結部121を有することで、第2の板材120を折り畳んだ状態では、容器損傷防止用部材101は、第1の板材110及び第2の板材120の2枚分の板厚となり、コンパクト化が可能となる。よって、容器損傷防止用部材101の搬送、持ち運びが容易になり、また、使用しないときの収納スペースを小さくすることができる。
【0034】
以上説明したように構成される容器損傷防止用部材101によれば、第1の板材110及び第2の板材120としてプラスチック段ボール材を使用したことから、軽量化が図られるとともに、耐衝撃性、耐圧性、耐久性、耐水性、耐カビ性を奏することができる。さらに、近接する各ドラム缶1の間に第1の板材110及び第2の板材120が挟まれることから、近接するドラム缶1同士が直接に接触することを防止できる。よって、ドラム缶1の配列や積込、荷下ろしの際、及び特に輸送時に、ドラム缶1に擦り傷や打痕等の損傷が発生するのを防止することができる。また、従来の麻袋とは異なり当該容器損傷防止用部材自体から塵埃が発生することはないので、良好な作業環境を維持可能である。
【0035】
さらに、上述のように、持ち運びの容易さ、及び省収納スペース化を図ることもでき、一方、使用時には、第1の板材110に対して第2の板材120を広げることで、当該容器損傷防止用部材101は、自立することができる。よって、自立状態にある容器損傷防止用部材101に対してドラム缶1を配列することができ、荷作業における作業性を従来よりも向上することができる。
【0036】
尚、第1の板材110及び第2の板材120は、プラスチック段ボールの使用に限定されない。また、第1の板材110と第2の板材120とで使用する材料を変更してもよい。
【0037】
さらにまた、図1に示す櫛歯状の形態にてなる容器損傷防止用部材101は、車幅方向53のような一行に4缶のドラム缶1を、複数行に渡り、また、複数段に渡り積載していく場合には便利であるが、容器損傷防止用部材101の形態は、これに限定されない。即ち、例えば図6から図9に示すような形態を採ることもできる。図6に示す容器損傷防止用部材102は、一枚の第1の板材110と、一枚の第2の板材120とを有し、第1の板材110及び第2の板材120を広げた状態で軸方向51から見て、L字形あるいはV字形に配置した形態である。図7に示す容器損傷防止用部材103は、一枚の第1の板材110と、一枚の第2の板材120とを有し、第1の板材110に対して第2の板材120を広げた状態で軸方向51から見て、T字形に配置した形態である。図8に示す容器損傷防止用部材104は、一枚の第1の板材110と、2枚の第2の板材120とを有し、第1の板材110に対して第2の板材120を広げた状態で軸方向51から見て、Y字形に配置した形態である。図9に示す容器損傷防止用部材105は、一枚の第1の板材110と、2枚の第2の板材120とを有し、第1の板材110に対して第2の板材120を広げた状態で軸方向51から見て、十字形に配置した形態である。さらにまた、図6に示すL、V字形の容器損傷防止用部材102、又は図8に示すY字形の容器損傷防止用部材104を組み合わせて、図10に示すように、軸方向51から見て蛇腹形を構成することもできる。
このような容器損傷防止用部材102〜105のいずれにおいても、第1の板材110及び第2の板材120は、隣接するドラム缶1同士の間に挟まれて配置される。
【0038】
容器損傷防止用部材102〜105は、容器損傷防止用部材101における上述の効果を奏することができるとともに、さらに、種々の金属製容器の配置、配列に対して対応することができる。
【0039】
さらにまた、複数の容器損傷防止用部材102〜105が使用される場合、さらには複数の容器損傷防止用部材101が使用される場合においても、各容器損傷防止用部材における第1の板材110同士を折曲部にて接続してもよい。例えば図11に示すように、折曲部112は、軸方向51に沿って延在し第1の板材110同士を接続する部分であり、第1の板材110同士を折り曲げ可能とする。
【0040】
折曲部112の形態としては、上述した連結部121と同様に、粘着テープ、溶着、蝶番等の形態を採用することができる。尚、図11では、2つの第1の板材110を接続する場合で折曲部112は一箇所のみの形態を図示するが、3つ以上の第1の板材110を接続する場合で複数の折曲部112が存在する形態を採ることもできる。
【0041】
また、図11では、折曲部112は軸方向51に沿って設置した形態を示すが、軸方向51における例えば1段目の第1の板材110と、2段目の第1の板材110とに対して、車幅方向53に沿って折曲部112を設置してもよい。
【0042】
このように、第1の板材110同士間に折曲部111を設けることで、容器損傷防止用部材101等について、さらに持ち運びの容易さ、及び省収納スペース化を図ることができ、作業性も向上することができる。
【0043】
さらにまた、上述した容器損傷防止用部材101〜105について、以下に説明する補強部材を設けることもできる。即ち、例えばドラム缶1においては、輪帯部3が直径方向において最大径部分であり、また、ビーダーレス缶においては天板4及び地板5における巻き締め部が最大径部分となる。よって、容器損傷防止用部材101〜105を、同種の金属製容器、例えばドラム缶1に対して繰り返して使用した場合、第1の板材110及び第2の板材120において、ドラム缶1の突出部に相当し最大径部分である輪帯部3同士が当接する部分は、次第に凹みが発生し、使用開始当初の耐衝撃性、耐圧性等の性能の低下が懸念される。
【0044】
そこで、図12に示すように、第1の板材110及び第2の板材120の、表面及び裏面の少なくとも一方において、最大径部分が接触する部分には、第1の板材110及び第2の板材120の凹みを防止する補強部材130を設けることができる。補強部材130としては、例えばゴム材のような弾性部材、あるいは例えば不織布のような布材等が相当し、例えば貼付することで第1の板材110及び第2の板材120に設置可能である。
【0045】
補強部材130を設けることで、第1の板材110及び第2の板材120における凹みの発生を低減することができ、容器損傷防止用部材101〜105の耐用期間を延ばすことができる。
尚、図12では、補強部材130は、上記最大径部分が接触する部分を超えて設けた場合を図示するが、上述のように補強部材130は、最低限、最大径部分が接触する部分に設ければ良い。
【0046】
実施形態2:
次に、上述した容器損傷防止用部材101〜105を用いた容器輸送システムについて説明する。
ここでは、車輌の一例であるトラックの荷台にドラム缶1を積載する容器輸送システムを例に採る。また、車輌201の荷台210へのドラム缶1の積載形態としては、図13に示すようにドラム缶1を格子状に積載する場合、あるいは図14に示すように、千鳥状62に積載する場合、及び格子状61と千鳥状62とを組み合わせて積載する場合がある。さらに、図15及び図16に示すように、車輌201は、エアーバッグ221と、エアーバッグ作動装置222とを備える。また、荷台210の天井211は、鉛直方向(ドラム缶1の軸方向51にも相当)に昇降可能な構造である。
【0047】
エアーバッグ221は、本実施形態では、荷台210の天井211に、車長方向54に沿って延在し、図15に示すように、車幅方向53においてドラム缶1の配置に対応して4列にて配置されている。また、エアーバッグ221は、膨張時には、天井側は平坦であり、ドラム缶側に円弧状に凸となるように調整されている。尚、このようなエアーバッグ221の配置形態は、荷台210に積載する金属製容器の形態及び車幅方向53における数によって決定され、図15に示す形態に限定されない。例えば図16に示すように、エアーバッグ221は、車幅方向53において両側及び中央部の3列に配置してもよい。この場合、中央部に位置するエアーバッグ221は、両側に位置するエアーバッグ221に比べて、車幅方向53に幅広である。また、左右2缶ずつに対応して、2列にて配置することもできる。
【0048】
エアーバッグ作動装置222は、エアーバッグ221の膨張及び収縮を行う装置であり、圧縮エアー供給源からエアーバッグ221までの配管も含む。圧縮エアー供給源の一例としてブロワーが利用でき、例えば1〜50kPa程度の圧力にてエアーバッグ221を膨張させる。このエアー圧は、エアーバッグ221の材質(強度特性)、トラックの天井211の強度から適宜設定され、例えば数kPaが好ましい。本実施形態では、約3〜4kPaの圧力でエアーバッグ221を膨張させている。尚、出願人が行った、エアーバッグ221を5kPaの圧力で膨張させた状態での約800kmの輸送実験では、約200本のドラム缶1に傷や塗装剥がれは一切見られなかった。
【0049】
本実施形態における容器輸送システムでは、積載され、車幅方向53、車長方向54等に隣接するドラム缶1同士の間には、上述した容器損傷防止用部材101等が配置される。また、図15に示すように、車幅方向53に位置する荷台210の左右の側壁212には、ドラム缶1の巻き締め部、及び輪帯部3が接触する箇所に、緩衝材213が車長方向54(図15では紙面に垂直な方向)に沿って取り付けられている。
【0050】
このように構成された容器輸送システムにおけるドラム缶1の積み込み手順について説明する。
荷台210に1段目のドラム缶1を配列するに当たり、まず、図1に示す容器損傷防止用部材101について、第2の板材120を折り畳んだ状態で荷台210に持ち込み、各第2の板材120を広げ、荷台210の床面に容器損傷防止用部材101を軸方向51に自立させる。
【0051】
次に、車幅方向53において容器損傷防止用部材101の両端の2箇所にそれぞれドラム缶1を配置し、容器損傷防止用部材101を所定位置にセットする。その後、容器損傷防止用部材101の中央の2箇所にそれぞれドラム缶1を第2の板材120を挟んで配置する。
【0052】
次に、2段目用として、第2の板材120を折り畳んだ状態で容器損傷防止用部材101を荷台210に持ち込み、1段目の容器損傷防止用部材101の上に各第2の板材120を広げてセットする。1段目の場合と同様に、車幅方向53において容器損傷防止用部材101の両端の2箇所にそれぞれドラム缶1を1段目のドラム缶1上に積み上げ、2段目の容器損傷防止用部材101を所定位置にセットする。その後、2段目の容器損傷防止用部材101の中央の2箇所にそれぞれドラム缶1を第2の板材120を挟んで配置する。図13は、このような状態を図示している。
【0053】
3段目についても、2段目と同様に作業を行う。
このようにして、トラックの荷台210に、車幅方向53に4缶ずつ、3段にて一行分の積み込みがなされる。そして、車長方向54に沿って複数行に4缶ずつ配置して格子状61に配列したり、あるいは、4、3、4、3、…と千鳥状62に配列したり、あるいは図14に示すように、格子状61と千鳥状62とを組み合わせて配列する。
【0054】
全ドラム缶1の積み込みが終了後、荷台210の天井211を降下させる。降下後、エアーバッグ作動装置222にてエアーバッグ221を膨張させ、ドラム缶1の固定化を図る。
【0055】
説明したような容器輸送システムによれば、容器損傷防止用部材101によって、荷作業時及び輸送時に、車幅方向53及び車長方向54にドラム缶1が直接に接触することはなくなる。さらに、エアーバッグ221によるドラム缶1の固定化との相乗効果により、ドラム缶1の損傷をさらに防止することができる。
【0056】
上述した、ドラム缶1の積み込み手順の説明から明らかとなるように、容器損傷防止用部材101は、複数の容器損傷防止用部材101によって予め仕切られた空間を作成しその空間へ容器を配置していくという形態に使用される物ではない。そもそもトラックの荷台210のような場所に対しては、そのような形態での使用方法を採ることはできない。よって容器損傷防止用部材101は、上述した容器損傷防止の作用をするとともに、容器の配置、配列と同時に使用して、容器を配列する際の目安や案内の作用をも行うものであり、作業効率を向上させ、作業者への負担も軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば金属製容器を輸送するときに当該金属製容器に擦り傷や打痕等の損傷が生じるのを防止する容器損傷防止用部材に適用可能であり、また、容器を輸送する際に、上記容器損傷防止用部材を用いる容器輸送システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…ドラム缶、
101〜105…容器損傷防止用部材、110…第1の板材、111…縦寸法、
112…折曲部、120…第2の板材、121…連結部、130…補強部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空で柱形状の金属製容器でその軸方向(51)に直交する方向へ突出する突出部を外面に有する金属製容器(1)を互いに近接して配列するときに使用され、上記軸方向に沿ってかつ上記突出部に接して配置される板状の容器損傷防止用部材であって、
上記軸方向に沿って配置されかつ上記金属製容器の配列に沿って延在する第1の板材(110)と、
上記軸方向に沿って配置されかつ上記金属製容器同士間に挟まれる第2の板材(120)と、
上記第1の板材及び上記第2の板材を折り畳み可能に連結する連結部(121)と、
を備えたことを特徴とする容器損傷防止用部材。
【請求項2】
上記第1の板材は、一枚の板材であり、上記軸方向における少なくとも1つの金属製容器の長さに等しい縦寸法(111)を有し、上記第2の板材は、上記縦寸法を有する一枚又は複数枚の板材であり、上記連結部は、上記軸方向に沿って設けられ当該連結部を中心として第2の板材を回転可能に第1の板材へ連結し、第1の板材と第2の板材との折り畳みを可能とする、請求項1に記載の容器損傷防止用部材。
【請求項3】
上記金属製容器の配列が直線状になされその配列方向を行方向(53)とし、行方向に配列された金属製容器を一組としたとき、上記行方向に直交する列方向(54)に沿って複数行にわたり複数の組を格子状及び千鳥状の少なくとも一方にて配列した形態において、第1の板材と第2の板材とが折り畳まれていない状態で上記軸方向から見て、上記第1の板材と上記第2の板材とは、L字形、V字形、T字形、Y字形、十字形、又は櫛歯形状のいずれかにて配置される、請求項1又は2に記載の容器損傷防止用部材。
【請求項4】
上記第1の板材及び上記第2の板材と上記突出部とが当接する箇所にて、上記第1の板材及び上記第2の板材に設けられ、上記突出部にて第1の板材及び第2の板材に生じる凹みを防止する補強部材(130)をさらに備えた、請求項1から3のいずれかに記載の容器損傷防止用部材。
【請求項5】
上記金属製容器はドラム缶であり、該ドラム缶は胴体(2)に対して天板(4)及び地板(5)が巻き締められたクローズ缶、胴体に対して天板が着脱可能なオープン缶、並びに、上記クローズ缶及び上記オープン缶において胴体に輪帯部(3)を形成していないビーダーレス缶を含む、請求項1から4のいずれかに記載の容器損傷防止用部材。
【請求項6】
複数の容器損傷防止用部材を配置する状態において、それぞれの第1の板材同士を接続し第1の板材同士を折り曲げ可能とする折曲部(112)をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の容器損傷防止用部材。
【請求項7】
車輌の荷台に金属製容器を格子状及び千鳥状の少なくとも一方にて互いに近接して配列して金属製容器を輸送する容器輸送システムにおいて、
近接配列された金属製容器同士の間には、請求項1から6のいずれかに記載の容器損傷防止用部材(101)を設け、
上記車輌には、上記荷台の天井(211)に備わり、膨張して上記金属製容器をその軸方向に押圧するエアーバッグ(221)と、上記エアーバッグの膨張及び収縮を行うエアーバッグ作動装置(222)とが備わる、
ことを特徴とする容器輸送システム。
【請求項1】
中空で柱形状の金属製容器でその軸方向(51)に直交する方向へ突出する突出部を外面に有する金属製容器(1)を互いに近接して配列するときに使用され、上記軸方向に沿ってかつ上記突出部に接して配置される板状の容器損傷防止用部材であって、
上記軸方向に沿って配置されかつ上記金属製容器の配列に沿って延在する第1の板材(110)と、
上記軸方向に沿って配置されかつ上記金属製容器同士間に挟まれる第2の板材(120)と、
上記第1の板材及び上記第2の板材を折り畳み可能に連結する連結部(121)と、
を備えたことを特徴とする容器損傷防止用部材。
【請求項2】
上記第1の板材は、一枚の板材であり、上記軸方向における少なくとも1つの金属製容器の長さに等しい縦寸法(111)を有し、上記第2の板材は、上記縦寸法を有する一枚又は複数枚の板材であり、上記連結部は、上記軸方向に沿って設けられ当該連結部を中心として第2の板材を回転可能に第1の板材へ連結し、第1の板材と第2の板材との折り畳みを可能とする、請求項1に記載の容器損傷防止用部材。
【請求項3】
上記金属製容器の配列が直線状になされその配列方向を行方向(53)とし、行方向に配列された金属製容器を一組としたとき、上記行方向に直交する列方向(54)に沿って複数行にわたり複数の組を格子状及び千鳥状の少なくとも一方にて配列した形態において、第1の板材と第2の板材とが折り畳まれていない状態で上記軸方向から見て、上記第1の板材と上記第2の板材とは、L字形、V字形、T字形、Y字形、十字形、又は櫛歯形状のいずれかにて配置される、請求項1又は2に記載の容器損傷防止用部材。
【請求項4】
上記第1の板材及び上記第2の板材と上記突出部とが当接する箇所にて、上記第1の板材及び上記第2の板材に設けられ、上記突出部にて第1の板材及び第2の板材に生じる凹みを防止する補強部材(130)をさらに備えた、請求項1から3のいずれかに記載の容器損傷防止用部材。
【請求項5】
上記金属製容器はドラム缶であり、該ドラム缶は胴体(2)に対して天板(4)及び地板(5)が巻き締められたクローズ缶、胴体に対して天板が着脱可能なオープン缶、並びに、上記クローズ缶及び上記オープン缶において胴体に輪帯部(3)を形成していないビーダーレス缶を含む、請求項1から4のいずれかに記載の容器損傷防止用部材。
【請求項6】
複数の容器損傷防止用部材を配置する状態において、それぞれの第1の板材同士を接続し第1の板材同士を折り曲げ可能とする折曲部(112)をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の容器損傷防止用部材。
【請求項7】
車輌の荷台に金属製容器を格子状及び千鳥状の少なくとも一方にて互いに近接して配列して金属製容器を輸送する容器輸送システムにおいて、
近接配列された金属製容器同士の間には、請求項1から6のいずれかに記載の容器損傷防止用部材(101)を設け、
上記車輌には、上記荷台の天井(211)に備わり、膨張して上記金属製容器をその軸方向に押圧するエアーバッグ(221)と、上記エアーバッグの膨張及び収縮を行うエアーバッグ作動装置(222)とが備わる、
ことを特徴とする容器輸送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図6】
【図7】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−35866(P2012−35866A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177588(P2010−177588)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(391018019)JFEコンテイナー株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(391018019)JFEコンテイナー株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
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