説明

容器詰めフルーツ加工品

【課題】保管後でも容器開封時にフルーツのフレッシュな香りが広がる容器詰めフルーツ加工品を提供する。
【解決手段】カットフルーツ3及び黒酢含有液4が容器詰めしてあり、前記黒酢含有液4の液面4aがカットフルーツの下端3aから上端3bまでの1/5〜4/5の高さである容器詰めフルーツ加工品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管後でも容器開封時にフルーツのフレッシュな香りが広がる容器詰めフルーツ加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リンゴ、パイナップル、メロン等をカットし、カップ容器等の包装容器に盛り付けられたカットフルーツが、コンビニエンスストアー、デパートの食料品売り場、スーパーマーケット等で広く市販されている。これらのフルーツは既に皮や種が除去され、また一口大にカットされていることから、開封後そのまま食べられるため、利便性が非常に高いものである。一方でカップ容器等に入った容器詰めカットフルーツは、皮を剥いたりカットすることで細胞が破壊され、フルーツにストレスがかかるため傷みやすく、店頭等での保管中に香りが悪くなってしまうものであった。
【0003】
カットフルーツの鮮度を保ち、保存性を高める方法として、特開2004−129625号公報(特許文献1)、特開2008−99674号公報(特許文献2)には、それぞれカットフルーツを保存液に浸漬した後、容器詰めする方法が記載されている。しかしながら、得られたカットフルーツは、保存液中に香りが逃げてしまったためか、フルーツのフレッシュな香りに乏しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−129625号公報
【特許文献2】特開2008−99674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、保管後でも容器開封時にフルーツのフレッシュな香りが広がる容器詰めフルーツ加工品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく使用原料等、様々な諸条件について鋭意研究を重ねた結果、カットフルーツ及び黒酢含有液を容器詰めし、前記黒酢含有液の液面をカットフルーツの下端から上端までの特定の高さとするならば、意外にも保管後であっても容器開封時にフルーツのフレッシュな香りが広がる容器詰めフルーツ加工品が得られることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)、カットフルーツ及び黒酢含有液が容器詰めされ、前記黒酢含有液の液面がカットフルーツの下端から上端までの1/5〜4/5の高さである容器詰めフルーツ加工品、
(2)、黒酢含有液にフルーツビネガーを含有している(1)記載の容器詰めフルーツ加工品、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特に、コンビニエンスストアー、デパートの食料品売り場、スーパーマーッケット等で製造後、数時間から数日間保管される容器詰めフルーツ加工品において、保管後でも容器開封時にフルーツのフレッシュな香りが広がる容器詰めフルーツ加工品を提供することができ、容器詰めフルーツ加工品の需要拡大に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の容器詰めカットフルーツ加工品の一実施例を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の容器詰めフルーツ加工品を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
本発明で用いるカットフルーツとは、生フルーツのカット品であればいずれのものでよく、このようなフルーツとしては、例えば、パイナップル、リンゴ、オレンジ類、グレープフルーツ、キウイフルーツ、モモ、イチゴ、ブドウ、メロン、梨、さくらんぼ、ライチ、マンゴー、パパイヤ等が挙げられる。前記フルーツのカット方法としては、容器詰めでき、また喫食しやすい程度の大きさに截断すれば特に限定するものではない。
【0012】
一方、本発明で用いる黒酢含有液とは、黒酢を含有する液状物である。黒酢含有液に含有している黒酢とは、製造過程における発酵及び熟成を経て、褐色又は黒褐色に着色された醸造酢であり、日本農林規格(平成20年10月16日農林水産省告示第1506号)において、原料として米(玄米のぬか層の全部を取り除いたものを除く。)、又はこれに小麦若しくは大麦を加えたもののみを使用し、かつ米の使用量が180g/L以上のものと定義されるものである。本発明で用いる黒酢は、前記定義に該当するもので、着色していない単なる醸造酢と異なり特有の香味を有するものであるが、中でも大麦を加えたものを用いると、容器開封時にフルーツらしい良好な香りが得られやすく好ましい。
【0013】
黒酢含有液における前記黒酢の含有量は、酸度(酢酸の量)が3.75g/100mlの黒酢に換算して、黒酢含有液に対して好ましくは0.5〜25%、より好ましくは1〜20%である。黒酢を前記含有量とすることにより、保管後でも容器開封時にフルーツのフレッシュな香りが広がる本発明の効果がより得られやすい。
【0014】
また、本発明の黒酢含有液は、さらにフルーツビネガーを含有すると、よりフルーツらしい良好な香りの容器詰めフルーツ加工品が得られるため好ましい。ここで、フルーツビネガーとは、前記日本農林規格において、醸造酢のうち、原料として1種又は2種以上のフルーツを使用したもので、その使用総量が醸造酢1L(リットル)につきフルーツの搾汁として300g以上のものと定義されるものである。前記フルーツビネガーの黒酢含有液に対する含有量は、酸度(酢酸の量)が3.75g/100mlのフルーツビネガーに換算して、黒酢含有液に対して好ましくは0.5〜25%、より好ましくは1〜20%である。
【0015】
本発明で用いる前記黒酢含有液には上述した黒酢及びフルーツビネガーの他に、例えば、果汁、乳製品、アルコール飲料、炭酸飲料、砂糖、水飴、蜂蜜等の糖類、スクラロース、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール、クチナシ色素等の着色料、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止材等を本明の効果を損なわない範囲で適宜選択し配合することができる。
【0016】
本発明の容器詰めフルーツ加工品は、上述したカットフルーツ及び黒酢含有液が容器詰めされ、前記黒酢含有液の液面がカットフルーツの下端から上端までの1/5〜4/5の高さであることを特徴とする。このような本発明の一実施例としては、図1に示すような容器詰めフルーツ加工品1が挙げられる。図中、符号2は容器、3はカットフルーツ、4は黒酢含有液を示している。また、前記黒酢含有液の液面がカットフルーツの下端から上端までの1/5〜4/5の高さであるとは、図1に示すように、容器詰めしたカットフルーツの下端3aから液状物の液面4aまでの高さをβ、容器詰めしたカットフルーツの下端3aから上端3bまでの高さをαとした時に、β/αが1/5〜4/5であることを意味する。
【0017】
本発明の容器詰めフルーツ加工品は、カットフルーツ及び黒酢含有液が容器詰めされ、黒酢含有液の液面が前記特定の高さである、つまり、保管中に特定量のカットフルーツが黒酢含有液に浸漬している状態であることにより、保管中に香りが悪くなることがなく、保管後でも容器開封時にフルーツのフレッシュな香りが広がる容器詰めフルーツ加工品とすることができる。このように本発明において保管後でも容器開封時にフルーツのフレッシュな香りが広がるのは、黒酢含有液に浸漬している状態のカットフルーツから黒酢含有液中にフルーツのエキスが染み出て黒酢含有液中で熟成して芳醇な香りが形成され、この芳醇な香りと液面上に露出した状態のカットフルーツから直接放出される香りが混ざり合った状態で絶えず容器内が満たされているためである。
【0018】
このように、黒酢含有液に浸漬しているカットフルーツと液面上に露出したカットフルーツのそれぞれが香りの形成に影響を与えているため、黒酢含有液の液面が前記範囲よりも低い場合や、黒酢含有液の液面が前記範囲よりも高い場合は、保管後でも容器開封時によりフルーツらしい良好な香りが広がる効果が得られ難い。前記黒酢含有液の液面の高さは、よりフルーツらしい良好な香りが得られ易い点からは、カットフルーツの下端から上端までの2/5〜4/5の高さであることが好ましい。
【0019】
本発明の容器詰めフルーツ加工品の保管温度としては、特に制限はないが、0〜15℃程度で保管するとフルーツらしい良好な香りが保たれやすく好ましい。また、本発明の容器詰めフルーツ加工品は、製造後6時間以上、更には12時間以上保管された場合であっても、フルーツの香りが悪くなることがなく、フルーツのフレッシュな香りを有するが、保存期間が長すぎると細菌等の増殖が懸念されることから、保存期間は72時間以下であることが好ましい。
【0020】
なお、上述した本発明の容器詰めフルーツ加工品には前記カットフルーツ及び黒酢含有液の他に、例えば、ゼリー、ナタデココ、杏仁豆腐、乳製品等を本明の効果を損なわない範囲で適宜選択し配合することができる。
【0021】
続いて、本発明の容器詰めフルーツ加工品の代表的な製造方法について説明する。まず、パイナップル、リンゴ、オレンジ、グレープフルーツ、キウイフルーツ等の皮や芯を除去し、5mm〜30mm程度に截断して一口大のカットフルーツを得る。次に、黒酢、フルーツビネガー、その他必要な材料を混合した黒酢含有液を調製し、前記カットフルーツと共にPET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)製等のカップ状の自立性容器等の包装容器に充填し、施蓋、あるいはトップシール等により容器詰めすることにより本発明の容器詰めフルーツ加工品が得られる。
【0022】
以下、本発明について、実施例、比較例、並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
本発明の容器詰めフルーツ加工品を製造した。つまり、まず、黒酢(大麦を加えたもの)、リンゴ酢、はちみつ、清水を下記配合割合で混合し、黒酢含有液を製造した。次に、皮及び芯を除去したパイナップル及びリンゴ、皮を除去したグレープフルーツ、オレンジ及びキウイフルーツをそれぞれ20mm角程度に截断した。続いて、得られた黒酢含有液60mlを蓋付きのポリプロピレン製自立性容器(300ml容量)に充填し、次いで、截断しておいたパイナップル30g、リンゴ20g、グレープフルーツ20g、オレンジ20g、キウイフルーツ20gを充填し施蓋して容器詰めした。得られたフルーツ加工品の黒酢含有液の液面はカットフルーツの下端から上端までの7/10の高さであった。
【0024】
<黒酢含有液の配合割合>
黒酢(大麦を加えたもの) 10%
リンゴ酢 5%
はちみつ 10%
清水 75%
―――――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0025】
[実施例2]
実施例1の容器詰めフルーツ加工品において、黒酢含有液の充填量を20mlとした以外は同様な方法で容器詰めフルーツ加工品を製造した。得られたフルーツ加工品の黒酢含有液の液面はカットフルーツの下端から上端までの2/5の高さであった。
【0026】
[比較例1]
実施例1の容器詰めフルーツ加工品において、黒酢含有液の充填量を80ml
とした以外は同様な方法で容器詰めフルーツ加工品を製造した。得られたフルーツ加工品の黒酢含有液の液面はカットフルーツの下端から上端までの9/10の高さであった。
【0027】
[比較例2]
実施例1の容器詰めフルーツ加工品において、黒酢含有液を充填しなかった以外は同様な方法で容器詰めフルーツ加工品を製造した。
【0028】
[試験例1]
本試験例では、容器詰めフルーツ加工品に充填した黒酢含有液の液面の高さの違いが、フルーツ加工品の香りに与える影響を調べるために試験を行った。つまり、実施例1及び2、並びに比較例1及び2の容器詰めフルーツ加工品を10℃で24時間保管し、容器開封時の香りについて訓練されたパネラーが評価を行った。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
<評価>
○:フルーツのフレッシュな香りが広がった
×:フルーツのフレッシュな香りが感じられなかった
【0031】
表1より、充填した黒酢含有液の液面の高さがカットフルーツの下端から上端までの1/5〜4/5の高さである実施例1及び2の容器詰めフルーツ加工品は、黒酢含有液の液面の高さが前記範囲よりも高かった比較例1の容器詰めフルーツ加工品、黒酢含有液を充填しなかった比較例2の容器詰めフルーツ加工品と比較し、保管後も容器開封時にフルーツのフレッシュな香りが広がる容器詰めフルーツ加工であることが理解される。
【0032】
[実施例3]
本発明の容器詰めフルーツ加工品を製造した。つまり、まず、皮及び芯を除去したパイナップル及びリンゴ、皮及び種を除去したメロン、皮を除去したキウイフルーツをそれぞれ20mm角程度に截断した。また、へたを除去したいちごを半割りにした。次に、実施例1と同様の黒酢含有液40mlを容器(実施例1と同じもの)に充填し、次いで、截断しておいたパイナップル30g、リンゴ20g、メロン20g、キウイフルーツ20g、いちご20gを充填し施蓋して容器詰めした。得られたフルーツ加工品の黒酢含有液の液面はカットフルーツの下端から上端までの1/2の高さであった。
【0033】
得られた容器詰めフルーツ加工品について、10℃で24時間、36時間、72時間保管し、それぞれ開封時の香りについて調べたところ、いずれもフルーツのフレッシュな香りが広がり、大変好ましいものであった。
【符号の説明】
【0034】
1 容器詰めカットフルーツ加工品
2 容器
3 カットフルーツ
3a カットフルーツの下端
3b カットフルーツの上端
4 黒酢含有液
4a 黒酢含有液の液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カットフルーツ及び黒酢含有液が容器詰めされ、前記黒酢含有液の液面がカットフルーツの下端から上端までの1/5〜4/5の高さであることを特徴とする容器詰めフルーツ加工品。
【請求項2】
黒酢含有液にフルーツビネガーを含有している請求項1記載の容器詰めフルーツ加工品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−200727(P2010−200727A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53218(P2009−53218)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】