説明

容器詰め飲料水の製法

【課題】加工コストの高くつく段ボール箱を使用する必要がなく、ウォーマー工程を無くせるようにするか、もしくは、少なくできるようにする容器詰め飲料水の製法を提供する。
【解決手段】容器詰めする環境よりも低温の水を採取する採取工程と、採取した水を容器に詰める充填工程と、水充填後の容器を密封する密封工程と、を備えた容器詰め飲料水の製法であって、充填工程の前に、採取した水を、冷熱を必要とする設備の冷却対象部に対して、間接接触による冷熱供給として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を採取する採取工程と、採取した水を容器に詰める充填工程と、水充填後の容器を密封する密封工程とを備えた容器詰め飲料水の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般的に、低温の水を採取して詰められた容器は、その外表面に結露水が発生し、その容器を段ボールなどの箱に詰めると、結露水を段ボールケースが吸水して軟化し、出荷搬送時に変形しやすくなる虞があった。
そこで、発生した結露水の吸水を防止するために、ダンボール箱の表面に易離解性防水・防湿塗工層を形成する方法(例えば、特許文献1参照)や、箱詰めする前に、容器表面に結露水が発生しないように、水充填後の容器を、温水などで一旦温める工程、いわゆるウォーマー工程を設ける方法(例えば、特許文献2参照)が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−51130号公報
【特許文献2】特開2000−313499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の段ボール箱の表面に易離解性防水・防湿塗工層を形成する方法は、段ボール箱の加工にコストがかかりすぎる欠点がある。
また、ウォーマー工程を設ける方法は、エネルギーの消失や、時間のロスや、内容物である飲料水の品質の低下を抑えるという面では、まだまだ改良の余地がある。
また、一般に容器としては、ペットボトル(PETボトル)が使用される場合が多いのであるが、より薄肉の樹脂材料を使用しようとしたときには、ウォーマー工程によって、容器が熱変形を起こす虞が多くなる。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、加工コストの高くつく段ボール箱を使用する必要がなく、また、ウォーマー工程を無くせるようにするか、もしくは、少なくできるようにする容器詰め飲料水の製法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、水を採取する採取工程と、前記採取工程で採取した水を昇温する主昇温工程と、昇温した水を容器に詰める充填工程と、水充填後の容器を密封する密封工程とを備え、前記主昇温工程は、前記採取工程で採取した水の冷熱を、冷熱を必要とする設備の冷却対象部に対して、間接接触により供給することにより、水が昇温されるものであるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記採取工程で採取した水は、容器に充填する前に、その水の冷熱を、冷熱を必要とする設備の冷却対象部に対して、間接接触により供給することにより、冷却対象部が放出する熱エネルギーで水は昇温され、充填工程時には採取工程の時より水温が上がる。
従って、充填工程と密封工程を経た容器は、結露の発生を抑制でき、加工にコストがかかる段ボール箱に容器を詰めることなく、また、エネルギーや時間のかかるウォーマー工程を無くすか、少なくできるようになる。
【0008】
更には、採取した水の冷熱を、冷熱を必要とする設備の冷却対象部に供給することによって、冷却対象部の冷却のために使用する電気エネルギーなどの消費を減少でき、省エネルギー化に役立つようになる。
【0009】
その上、採取した水の持つ冷熱を、間接接触により前記冷却対象部に供給することにより、その水に雑菌や不純物の混入を避けながら冷熱の授受だけを行って、後の充填工程での容器詰めを可能にできる。
よって、水質を変えることなく、安全な容器詰め飲料水を提供することができる。
【0010】
本発明の第2の特徴構成は、前記密封工程後で、出荷前の保管場所までの箇所における環境温度以上に、前記主昇温工程で水を昇温するものであることにある。
本発明の第2の特徴構成によれば、前記主昇温工程での水の昇温で、例えば前記密封工程後の容器の箱詰め時に、その環境温度以上に容器全体が昇温されているために、容器は結露することなく、従って、箱が安価な普通のダンボール箱であっても吸水による軟化現象の心配はなくなる。
また、例えば出荷前の保管場所においても、その環境温度以上に前記主昇温工程で水が昇温されることにより、結露のない状態で出荷でき、その結果、製品の商品価値を低下することなく引き渡しできる。
本発明の第3の特徴構成は、前記主昇温工程の後に、前記主昇温工程で不足する熱エネルギーを補足する追加加温工程が、前記主昇温工程より下流側に設けてあることにある。
本発明の第3の特徴構成によれば、前記主昇温工程で冷熱対象部との熱交換する熱量が十分でなく、採取した水の昇温が不足した場合であっても、容器は結露することなく、従って、箱が安価な普通のダンボール箱であっても吸水による軟化現象を起こすことを、確実に防止することができるようになる。
本発明の第4の特徴構成は、前記充填工程の前に、採取した水をろ過するろ過工程を有するところにある。
【0011】
本発明の第4の特徴構成によれば、採取した水のろ過により、混雑物の除去ができ、より純度の高い飲料水を容器詰めできる。
【0012】
本発明の第5の特徴構成は、前記間接接触による冷熱供給対象が空調装置の冷媒である点にある。
【0013】
本発明の第5の特徴構成によれば、採取した水の冷熱で空調装置の冷媒を冷却することにより、空調装置の冷媒の冷却効率を上げることができるばかりか、逆に、空調装置の放出する少ない熱エネルギーをも、採取した水の加温に利用でき、相互に合理的な熱エネルギーの利用が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態で説明する設備のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明の実施形態は、採取する低温の水、例えば、地中でミネラル分が溶解した地下水を採取して、含有するミネラル成分を壊さないためにもそのまま加熱殺菌を行わずにナチュラルミネラルウォーターとしてボトル詰めした製品を提供する技術に関するものである。
【0017】
前記容器詰め飲料水の製造工程としては、容器詰め時から出荷前の保管場所までの環境よりも低温の水としての地下水を採取する採取工程と、採取した水をPETボトル等の容器に詰める充填工程と、水充填後の容器をキャップ等で密封する密封工程と、密封した容器を箱詰めするパッキング工程とを備え、充填工程の前に、採取した水を、冷熱を必要とする設備の冷却対象部(例えば、空調装置の冷媒を冷却する放熱部)に対して、間接接触による冷熱供給として使用することで、採取した水が加温される主昇温工程を設けてある。
【0018】
尚、必要に応じて、充填工程の前に、水をろ過するろ過工程を設けてもよい。
また、前記密封工程とパッキング工程との間に、水充填容器がまだ室温より低ければ、水充填容器に蒸気などを吹き付けて加温するウォーマー工程を設けてもよい。
【0019】
次に、本実施形態を工程順に実現する設備の概要を、図1に示す。
工程順に、地下水を採取する前記採取工程で使用される井戸1、井戸1から採取した水を溜める井水タンク2、井水タンク2から取り出した水と空調装置13の冷媒配管の放熱部とを間接的に熱交換する水加温熱交換部3、水加温熱交換部3を通して加温された水をろ過する前記ろ過工程で使用されるフィルターユニット4を設け、フィルターユニット4を通った水は、PETボトルに水を詰める前記充填工程で使用される飲料水充填装置10に送られる。
【0020】
前記飲料水充填装置10には、PETボトルを殺菌して洗浄する容器殺菌洗浄装置5と、殺菌洗浄されたPETボトルにフィルターユニット4からの水を詰めるフィラー6と、水が詰められたボトルにキャップを取り付けて密封する前記密封工程に使用されるキャッパー7とを設けてある。
【0021】
前記フィラー6により水が充填されたボトルは、ラベラー8によりラベルを貼られ、その後、段ボール箱にボトルを詰める前記パッキング工程に使用されるケーサー9に送られて、製品として出荷されるようにしてある。
【0022】
前記キャッパー7へ供給されるキャップは、キャップ整列装置11からキャップ殺菌装置12を通った後、前記キャッパー7に送られるように構成してある。
【0023】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0024】
〈1〉 本発明の採取する対象の水としては、地下水の他に、山の湧き水や渓流水等の天然水を示すもので、そのまま飲用に使用することができる水を対象とするものである。
【0025】
〈2〉 前記冷熱を必要とする設備の冷却対象部としては、空調装置13の放熱部の他に、冷凍装置の放熱部や、コンプレッサーの排熱冷却部であったり、生産設備の冷却箇所や、例えば、PETボトルの金型の温度調整機等であっても良い。
【0026】
〈3〉 前記容器としては、PETボトルの他に、紙パックであったり、ガラス瓶、金属缶やポリエチレン容器等の他の素材の容器であっても良い。
【0027】
〈4〉 前記密封工程での密封は、容器によって異なるもので、例えば、樹脂キャップ、金属キャップ(ネジ式又は、王冠式)、ラミネートシートの熱融着による密封、金属缶の場合は、ネジ式のキャップや巻き締めをも含むものである。
【0028】
〈5〉 前記飲料水の製造方法の各工程でも示したように、ウォーマー工程を設けるために、キャッパー7とラベラー8との間に、加熱水蒸気により水充填ボトルを加温するウォーマーを設けてあっても良い。この場合も、水加温熱交換部3での熱交換により、ウォーマーで必要な熱量は少なくて省エネルギー化を可能にする。
【0029】
〈6〉 前記ウォーマー工程で示したように、主昇温工程の後に、主昇温工程で不足する熱エネルギーを補足する追加加温工程が、前記主昇温工程より下流側に設けてあればよく、例えば、前述のキャッパー7とラベラー8との間以外に、水加温交換部3とフィラー6との間に、水蒸気又は温水により水を間接加熱する加温装置を設けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 井戸
2 井水タンク
3 水加温熱交換部
4 フィルターユニット
5 容器殺菌洗浄装置
6 フィラー
7 キャッパー
8 ラベラー
9 ケーサー
10 飲料水充填装置
11 キャップ整列装置
12 キャップ殺菌装置
13 空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を採取する採取工程と、前記採取工程で採取した水を昇温する主昇温工程と、昇温した水を容器に詰める充填工程と、水充填後の容器を密封する密封工程とを備え、前記主昇温工程は、前記採取工程で採取した水の冷熱を、冷熱を必要とする設備の冷却対象部に対して、間接接触により供給することにより、水が昇温されるものである容器詰め飲料水の製法。
【請求項2】
前記密封工程後で、出荷前の保管場所までの箇所における環境温度以上に、前記主昇温工程で水を昇温するものである請求項1記載の容器詰め飲料水の製法。
【請求項3】
前記主昇温工程の後に、前記主昇温工程で不足する熱エネルギーを補足する追加加温工程が、前記主昇温工程より下流側に設けてある請求項1または2に記載の容器詰め飲料水の製法。
【請求項4】
前記充填工程の前に、採取した水をろ過するろ過工程を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の容器詰め飲料水の製法。
【請求項5】
前記間接接触による冷熱供給対象が空調装置の冷媒である請求項1から4のいずれか一項に記載の容器詰め飲料水の製法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−235130(P2010−235130A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83226(P2009−83226)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】