説明

容器詰コーヒーの製造方法

【課題】容器詰コーヒー飲用後の不快な残り香や後味を改善したそう快な後味を有する容器詰コーヒー及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】容器詰めコーヒーの製造に際して、飲料中に、乳脂肪1重量当たり、植物油脂を0.15〜2の割合で配合することにより、飲用後そう快な後味を有する容器詰めコーヒーを製造する。本発明においては、乳脂肪及び植物油脂に加えて、カテキン類を添加することにより、容器詰めコーヒーの後味の改善効果を更に高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲用後の不快な残り香や後味を改善した、そう快な後味を有する容器詰コーヒー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、その独特のコクや苦味、及び香味の嗜好から、古くから愛用されてきた飲み物であるが、近年は飲用や流通、販売の手軽さから容器詰め飲料としての利用が増大している。しかし、容器詰めのコーヒーにする場合には長期保存するために加熱殺菌する必要があり、その殺菌処理により香味バランスが崩れるという問題があった。特に常温流通の容器詰コーヒーについては比較的強い殺菌をおこなっていることから、元のコーヒー抽出液とは大きく香味が乖離しているというのが現状である。その香味変化のいくつかについては香料やエキス類の添加等によって改善がおこなわれている。
【0003】
一方、本発明の改善対象となる、コーヒー飲用後の不快な残り香や後味についても、特に容器詰コーヒーに強く感じる香味であることから加熱殺菌に由来することが予想されるものである。しかし本香味については未だその認識すら充分に共有化されておらず、改善の提案になっては全くなされていなかったというのが現状である。飲用後の不快な残り香とは、通常のレギュラーコーヒーを飲んだ後には殆ど感じず、容器詰めコーヒーを飲んだ後にのみ感じる残り香であって、個人差はあるもののある一定の消費者の方にとっては非常に不快に感じる、口腔内に張り付くような残り香である。
【0004】
近年、コーヒー飲料等を調製するに際して、コーヒー等の持つ渋味、苦味を除去或いは低減することによりその味覚の改善を図る方法が提案されている。例えば、コーヒー等の飲料に、プロタミン、その塩を添加して渋味や苦味を除去或いは低減する方法が(特開平6−153875号公報)、コーヒー飲料の調製に際して、焙煎されたコーヒー豆を圧搾して得たコーヒーオイルをエマルジョン化したものを添加し、コーヒーの苦味やロースト感を抑える方法が(特開2001−86933号公報)、コーヒー飲料等を調製するに際して、飲料に酵母エキスや蛋白加水分解物を添加して、その苦味やえぐみ等の嫌味を軽減する方法が(特開2002−281948号公報)開示されている。
【0005】
また、コーヒー等の苦味、渋味、えぐ味を有する飲食品に、α−結合ガラクトオリゴ糖を添加することにより、苦味や渋味、えぐ味を低減する方法が(特開2003−250486号公報)、グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム等の脱苦味剤に脂肪又は油、甘味剤、蛋白質及び乳化剤を含むクリームを用いて、コーヒーなどの飲料における苦味やロースト感を低減或いは遮断する方法が(特表2008−517589号公報)開示されている。このように、従来からコーヒー飲料等を調製するに際して、コーヒー等の苦味、渋味を除去或いは低減するこれら各種の方法が開示されているが、コーヒーの飲用後の不快な残り香や後味を積極的に改善した方法は開示されていない。
【0006】
一方で、コーヒーや紅茶或いはコーヒーや紅茶入り乳飲料等において、製造時の高温殺菌や長期間の保存或いは冬季の製品ウォーマーでの加熱に対して内溶液の安定性を保持するために、植物油脂と乳化剤からなる植物油脂組成物を添加したものが開示されている(特開2005−241933号公報)。具体的には、コーヒーや紅茶或いはコーヒーや紅茶入り乳飲料等の製造に際して、植物油脂と、乳化剤として蔗糖脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、或いはレシチンを配合した植物油脂組成物を用いて、製造時のレトルト殺菌やUHT殺菌、或いは長期間の保存或いは冬季の製品ウォーマーでの加熱に対して、内溶液の安定と良好な風味の保持を図るものであるが、この開示のものは、コーヒー飲用後の不快な残り香や後味を改善することを狙ったものではない。
【0007】
【特許文献1】特開平6−153875号公報。
【特許文献2】特開2001−86933号公報。
【特許文献3】特開2002−281948号公報。
【特許文献4】特開2003−250486号公報。
【特許文献5】特開2005−241933号公報。
【特許文献6】特表2008−517589号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、容器詰コーヒー飲用後の不快な残り香や後味を改善したそう快な後味を有する容器詰コーヒー及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
すなわち、従来から各種容器詰コーヒーが提供され、愛飲されているが、かかる容器詰コーヒーは、人によっては、飲用後の残り香や後味を不快と感じているという事実がある。不快な風味には、コーヒーのコゲ感、ロースト感を由来とする臭いや乳の粉っぽさや張り付くような臭いがある。一般に、乳脂肪が比較的少ないレギュラータイプのコーヒーでは残り香が強く、乳脂肪が多いカフェオレタイプのコーヒーでは、残り香は弱いが逆に乳劣化臭が強いものになる。そこで、このように容器詰コーヒーの後味に対して不快臭を感じる人或いはその他の容器詰めコーヒーの愛用者に対して、飲用後の不快な残り香や後味を改善することは、容器詰めコーヒーの更なる愛飲を図る上で重要な課題であり、本発明の課題は、容器詰コーヒー飲用後の不快な残り香や後味を改善し、そう快な後味を有する容器詰コーヒー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討する中で、容器詰めコーヒーの製造に際して、飲料中に、乳脂肪及び植物油脂を、特定の割合で配合することにより、飲料を飲用後、そう快な後味を有する容器詰めコーヒーを製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、容器詰めコーヒーの製造に際して、飲料中に、乳脂肪1重量当たり、植物油脂を0.15〜2の割合で配合することにより、飲用後そう快な後味を有する容器詰めコーヒーを製造する方法からなり、更に、本発明においては、乳脂肪及び植物油脂に加えて、カテキン類を添加することにより、容器詰めコーヒーの後味の改善効果を更に高めることからなる。
【0011】
すなわち具体的には本発明は、(1)容器詰めコーヒーの製造に際して、飲料中に、乳脂肪1重量当たり、植物油脂を0.15〜2の割合で配合することを特徴とする飲用後そう快な後味を有する容器詰めコーヒーの製造方法や、(2)乳脂肪及び植物油脂に加えて、カテキン類を添加することを特徴とする上記(1)記載の飲用後そう快な後味を有する容器詰めコーヒーの製造方法や、(3)上記(1)〜(2)のいずれか記載の容器詰めコーヒーの製造方法によって製造された飲用後そう快な後味を有する容器詰めコーヒーからなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、飲用後の残り香や後味を改善し、コーヒー飲用後の残り香や後味を不快と感じる人のみならず、容器詰めコーヒーの愛飲者も好む、そう快な後味を有する容器詰コーヒーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、容器詰コーヒーの製造に際して、飲料中に乳脂肪1重量あたり植物油脂を、0.15〜2、好ましくは0.3〜1の割合で配合し、飲用後不快な残り香を抑制した上で、そう快な後味を有する容器詰コーヒーを製造することよりなる。植物油脂量がこの範囲以下であると、本発明効果が十分でなく、これ以上だと、植物油脂の香味自体がコーヒーの風味に影響を与えることがある。
【0014】
ここで、本発明の容器詰コーヒーとは、公正規約上表示が許される「コーヒー」(内容量100gあたり生豆換算5g以上)、「コーヒー飲料」(同2.5g以上5g未満)、「コーヒー入り清涼飲料」(同1g以上2.5g未満)に該当するもの、いずれもが対象となるが、本発明の効果の面では「コーヒー」に分類されるものが特に好適対象となる。
【0015】
本発明において配合する植物油脂は、例えばナタネ油、綿実油、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、パーム油など食用とされるものであればいずれも使用できるが、風味等の観点により、ヤシ油を用いることが好ましい。また配合に際しては、飲料中での植物油脂の分離を防止するために既知の乳化剤、例えばショ糖脂肪酸エステル、有機酸グリセリンエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等と併用して乳化させることが必要であり、好ましくは予めそれらの乳化剤を用いて乳化させた製剤を使用する。
【0016】
一方、乳脂肪については、例えば生乳、牛乳、濃縮乳、練乳、全粉乳等いすれも使用可能であり、供給量の面などから牛乳や全粉乳が好ましく用いられる。
【0017】
更に、本発明の容器詰コーヒーについては、乳脂肪と植物油脂に加えてカテキン類を添加することにより、更に本発明の効果である、飲用後の残り香や後味の改善効果を高めることができる。ここでカテキン類とは緑茶等に含まれる非重合体のカテキン類を指し、使用にあたっては緑茶抽出物あるいはその精製物を使用することができる。例えば市販品の「サンフェノン」(太陽化学)、「ポリフェノン」(三井農林)などの一連の製剤が使用可能である。配合量は本発明を発揮する適正な量を配合すればよいが、例えば「サンフェノンBG−3」は飲料に対して0.0005〜0.01重量%程度配合すれば効果が示せる。
【0018】
本発明の容器詰コーヒーは、従来の方法によって製造することができる(具体的には「最新・ソフトドリンクス」(光琳)を参照)。すなわち、コーヒーの抽出液に対して、各原料を混合した上で所定のホモジナイズをおこなった後、金属容器等に充填してからレトルト殺菌するか、あるいはUHT殺菌してからPET容器等に充填することで製造できる。本発明の効果は加熱殺菌強度が強い方が顕著であるので、レトルト殺菌をおこなう缶入りの乳入りコーヒーに対しておこなうことが望ましい。
【0019】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
[植物油脂と乳脂肪の添加効果]
【0021】
(容器詰コーヒーの調製)
表1(試作処方:添加率重量%)の基本処方に対して、サンプル毎に表2(乳脂肪・植物油脂配合量)の植物油脂と乳脂肪を追加して、コーヒーを試作した。すなわち、コーヒー豆の10倍量の熱水で抽出したのち、それぞれ所定の原料を混合して調合液を調製した。この調合液をホモジナイズ処理に供してから、缶容器に充填した。この容器詰コーヒーを通常の条件でレトルト殺菌した。植物油脂は昭和農芸社製のものを使用した。その50重量%がヤシ油であり、残り重量50%が水と乳化剤からなる製剤である。表2中では植物油脂の含有率として記載した。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
(評価方法)
残り香と後味の改善の評価は熟練したパネリスト5名により評価をおこない、その結果を平均して5段階評価とした。−:効果なし;±:効果弱い;+:効果あり;++:効果強い;+++:効果非常に強い。
【0025】
(評価結果)
評価結果を、表3に示す。この結果より、乳脂肪1重量あたり植物油脂が0.19〜1の場合に対して残り香と後味の改善効果が見られた。また別途おこなった試作と保存試験により植物油脂が2重量以上になると加熱保存時の香味劣化が目立つことが確認された。よって乳脂肪1重量あたり植物油脂が0.15〜2の割合で添加した場合が好適範囲と考えられる。また、0.3〜1の割合で添加した場合がより好ましいことが明らかである。
【0026】
【表3】

【0027】
[カテキンの添加効果]
【0028】
(容器詰コーヒーの調製;評価)
実施例3の処方に対して表4の量のカテキン製剤を添加して実施例の容器詰コーヒーを調製し、その効果を確認した。なおカテキン製剤は、サンフェノンBG−3(太陽化学社製;カテキン含有率70重量%以上、ポリフェノール含有率80重量%以上)を使用した。残り香・後味の評価は実施例3をコントロールとしておこない、改善効果を3段階評価した。すなわち、±:同等;+:若干の効果有;++:効果有、である。
【0029】
【表4】

【0030】
(評価結果)
上記実施例の評価結果を表4に示す。表4に示されるように、0.0005重量%の添加で、更なる改善効果が認められた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器詰めコーヒーの製造に際して、飲料中に、乳脂肪1重量当たり、植物油脂を0.15〜2の割合で配合することを特徴とする飲用後そう快な後味を有する容器詰めコーヒーの製造方法。
【請求項2】
乳脂肪及び植物油脂に加えて、カテキン類を添加することを特徴とする請求項1記載の飲用後そう快な後味を有する容器詰めコーヒーの製造方法。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか記載の容器詰めコーヒーの製造方法によって製造された飲用後そう快な後味を有する容器詰めコーヒー。