説明

容器詰烏龍茶飲料

【課題】プロアントシアニジンを含有し、かつ風味の良好な容器詰烏龍茶飲料を提供すること。
【解決手段】リンゴ抽出物由来のプロアントシアニジンを0.01〜0.4質量%含有する、容器詰烏龍茶飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロアントシアニジンを含有する容器詰烏龍茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
プロアントシアニジンは、ブドウ種子等に多く含まれ、様々な生理作用を有することが知られている(特許文献1〜4)。
近年、プロアントシアニジンの生理作用に着目し、例えば、プロアントシアニジンを含有する飲料が提案されている(特許文献5〜8)。プロアントシアニジンの生理作用を効果的に得るには、有効量を継続して摂取することが必要であるが、これら文献に記載の飲料はいずれもプロアントシアニジンの配合量が少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−44472号公報
【特許文献2】特開2001−278792号公報
【特許文献3】国際公開第2005/082390号パンフレット
【特許文献4】特開2007−77122号公報
【特許文献5】特開2001−157567号公報
【特許文献6】特開2002−95450号公報
【特許文献7】特開2007−306872号公報
【特許文献8】特開2009−11204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、高濃度のプロアントシアニジンを含有する烏龍茶飲料を検討したところ、烏龍茶のアロマ感が不十分で、しかもプロアントシアニジン特有の渋味があるため、継続して摂取するには不向きであることが判明した。
したがって、本発明の課題は、高濃度のプロアントシアニジンを含有し、かつ風味の良好な容器詰烏龍茶飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は烏龍茶飲料へのプロアントシアニジンの配合技術について種々検討したところ、植物抽出物由来のプロアントシアニジンの中でリンゴ抽出物由来のプロアントシアニジンを選択し、それを烏龍茶抽出物と組み合わせることで、プロアントシアニジンを高濃度で含有するにも拘わらず、烏龍茶のアロマ感が豊富でかつ渋味が低減された容器詰烏龍茶飲料が得られることを見出した。更に、殺菌条件としてUHT殺菌を採用することで、より一層風味の改善された容器詰烏龍茶飲料が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、リンゴ抽出物由来のプロアントシアニジンを0.01〜0.4質量%含有する、容器詰烏龍茶飲料を提供することにある。
【0007】
本発明はまた、固形分中にプロアントシアニジンを30〜80質量%含有するリンゴポリフェノールと烏龍茶抽出物を配合し、プロアントシアニジンの含有量を0.01〜0.4質量%に調整する、容器詰烏龍茶飲料の製造方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高濃度のプロアントシアニジンを含有するにも拘わらず、烏龍茶のアロマ感が豊富でかつ渋味が低減された風味の良好な容器詰烏龍茶飲料が提供される。したがって、本発明の容器詰烏龍茶飲料は、長期に亘って継続して摂取するのに適しており、種々の生理効果を十分に期待できる。
また、本発明によれば、このような容器詰烏龍茶飲料を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の容器詰烏龍茶飲料は、リンゴ抽出物由来のプロアントシアニジンを含有することを特徴とするものである。これにより、烏龍茶のアロマ感が豊富でかつ渋味の低減された容器詰烏龍茶飲料とすることができる。このような効果が奏される要因は必ずしも明らかではないが、リンゴ抽出物中に含まれる成分がプロアントシアニジン本来の渋味を抑制する作用を有すると共に、烏龍茶抽出物由来の成分との間で風味悪化の影響を抑制する作用を有する成分が含まれているものと本発明者は推察している。
【0010】
本発明の容器詰烏龍茶飲料に用いられるプロアントシアニジンは、リンゴ抽出物に含まれるものであり、下記構造式で示されるものである。
【0011】
【化1】

【0012】
本発明の容器詰烏龍茶飲料中のプロアントシアニジンの含有量は0.01〜0.4質量%であるが、生理効果及び風味の観点から、0.05〜0.3質量%、更に0.1〜0.25質量%、特に0.15〜0.2質量%であることが好ましい。ここで、「プロアントシアニジンの含有量」は、後掲の実施例に記載の「ポーター法(庄司俊彦,外2名,果汁協会報、5月号,2004年,No.549)」により測定された値である。
【0013】
本発明の容器詰烏龍茶飲料中の総ポリフェノール量は、風味の観点から、0.1〜1.2質量%、更に0.15〜0.8質量%、特に0.2〜0.4質量%であることが好ましい。ここで、「総ポリフェノール量」とはリンゴポリフェノールの他に、烏龍茶ポリフェノールを含めたポリフェノール全体の総量を意味し、「総ポリフェノール量」は後掲の実施例に記載の方法により定量した値である。
また、総ポリフェノールに対するプロアントシアニジンの含有質量比(プロアントシアニジン/総ポリフェノール)は、風味の観点から、0.1〜1、更に0.3〜0.9、特に0.5〜0.8であることが好ましい。
【0014】
本発明の容器詰烏龍茶飲料は、固形分中にプロアントシアニジンを30〜80質量%含有するリンゴポリフェノールと、烏龍茶抽出物とを配合し、プロアントシアニジン及び総ポリフェノールの各濃度を上記範囲内に調整して得ることができる。これにより、烏龍茶のアロマ感が豊富でかつ渋味が低減された容器詰烏龍茶飲料を簡便に製造することができる。
【0015】
すなわち、本発明の製造方法においては、リンゴから抽出・精製されたプロアントシアニジン含有画分、すなわちリンゴポリフェノールを使用する。リンゴポリフェノールとしては、固形分中にプロアントシアニジンを30〜80質量%含有するものを使用するが、風味の観点から、固形分中にプロアントシアニジンを40〜75質量%、特に50〜70質量%含有するものが好ましい。これにより、プロアントシアニジンを容易に高濃度化することが可能であり、また烏龍茶のアロマ感を損なうことなく渋味を低減することができる。
【0016】
リンゴからの抽出及び精製方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
抽出方法としては、例えば、リンゴを洗浄した後、そのまま又は亜硫酸を添加しながら破砕、圧搾により果汁を得、遠心分離、濾過などにより清澄果汁を調製する方法が挙げられる。また、リンゴをアルコール類と混合して破砕し、そのまま浸漬し、圧搾、又は加熱還流しながら抽出し、次いでアルコールを溜去した後、遠心分離及び濾過、又はヘキサン、クロロホルム等の有機溶媒による分配及び濾過を行い、清澄抽出物を得てもよい。
【0017】
また、精製方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
先ず、ポリフェノールを選択的に吸着できる吸着剤、例えばスチレンジビニルベンゼン系の合成吸着樹脂、陰イオン交換樹脂などが充填されたカラムに上記の清澄果汁又は清澄抽出物を通液することによりポリフェノール成分を吸着させる。次いで、蒸留水によってカラムを洗浄した後、20〜100v/v%、好ましくは30〜60v/v%のアルコール水溶液をカラムに通液することによりポリフェノール成分を溶出させ、回収する。次いで、得られたポリフェノール溶液からアルコールを溜去して粗リンゴポリフェノールを得る。そして、粗リンゴポリフェノールを、酢酸メチルを液相として用いた固液抽出により、固形分中にプロアントシアニジンを30〜80質量%含有するリンゴポリフェノールを得ることができる。
【0018】
本発明においては、リンゴポリフェノールとして市販品を使用してもよく、例えば、アップルフェノン(アサヒフードアンドヘルス社製)が挙げられる。
【0019】
烏龍茶抽出物としては、例えば、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica及びそれらの雑種から得られる茶葉を半発酵させて得た烏龍茶葉に、抽出溶剤、必要により抽出助剤等を添加し、攪拌抽出、ニーダー抽出、ドリップ抽出、カラム抽出等の公知の抽出方法により製造したものを使用することができる。烏龍茶葉としては、武夷岩茶、鉄観音、水仙、烏龍、包種、色種等が挙げられ、中でも鉄観音、水仙、烏龍が好ましい。抽出溶剤としては、水、エタノール等の有機溶剤、水とエタノール等の有機溶剤水溶液等が挙げられ、中でも水が好ましい。
【0020】
烏龍茶葉からの抽出は、温度70〜100℃、更に好ましくは80〜95℃の水を、烏龍茶葉に対する質量比で5〜30倍、更に10〜20倍用いて行うことが好ましい。抽出時間は抽出方法により適宜選択可能であるが、1〜20分、更に2〜10分であることが好ましい。烏龍茶抽出物は、濾過等により夾雑物を除去してもよい。
また、必要により、烏龍茶抽出物を濃縮又は希釈して濃度調整してもよく、風味の観点から、ブリックス値として、その下限を0.1%、更に0.2%、更に0.3%、特に0.4%とすることが好ましく、他方上限を5%、更に4%、更に3%、特に2.5%とすることが好ましい。ここで、「ブリックス値」は、後掲の実施例に記載の「ブリックスの測定」に準じて測定された値である。
【0021】
本発明の容器詰烏龍茶飲料には、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、苦味抑制剤、ビタミン類、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、品質安定剤等の添加剤を単独又は併用して配合することができる。
【0022】
本発明の容器詰烏龍茶飲料のpH(25℃)は、風味の観点から、5〜7、更に5〜6.5、更に5〜6、特に5.5〜6であることが好ましい。
【0023】
本発明の容器詰烏龍茶飲料は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(PETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して提供することができる。
【0024】
本発明の容器詰烏龍茶飲料は、加熱殺菌処理することが好ましい。殺菌方法としては、適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた条件で行うことができる。その代表例として、レトルト殺菌、超高温短時間殺菌(UHT殺菌)が挙げられるが、風味の観点から、UHT殺菌が好ましい。なお、烏龍茶飲料を充填する容器が、例えば、金属缶の場合、烏龍茶飲料を容器に充填後、加熱殺菌することができる。一方、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法を採用できる。
【実施例】
【0025】
(1)プロアントシアニジンの測定
飲料中のプロアントシアニジン含有量は、ポーター法により測定した。試料溶液(0.2mL)を栓付き試験管に取り、n−ブタノール-塩酸混合液(95:5,v/v)を3mL、2%硫酸鉄アンモニウム水溶液(W/V)0.1mLを加え、よく攪拌した。次に、95℃沸騰温中で40分間加熱し、反応させた。冷却後、550nmの吸光度を測定し、同様に反応させた標準物質のプロシアジニンB2で換算して、プロアントシアニジン含有量を求めた。
【0026】
(2)総ポリフェノール量の測定
総ポリフェノール量は、酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として求めた(「緑茶ポリフェノール」飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNo,10、社団法人菓子総合技術センター)。具体的には、試料5mLを酒石酸鉄標準溶液5mLで発色させ、リン酸緩衝液で25mLに定溶し、540nmで吸光度を測定し、没食子酸エチルによる検量線から総ポリフェノール量を求めた。
酒石酸鉄標準液の調製:硫酸第一鉄・7水和物100mg、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)500mgを蒸留水で100mLとした。
リン酸緩衝液の調製:1/15Mリン酸水素二ナトリウム溶液と、1/15Mリン酸二水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整した。
【0027】
(3)ブリックスの測定
屈折率計(RX−5000α;ATAGO社製)を使用してブリックスを測定した。
【0028】
(4)風味の評価
各容器詰烏龍茶飲料の「烏龍茶のアロマ感」及び「渋味」について、パネラー5名により下記の基準で飲用試験を行った。その後、協議により最終スコアを決定した。
【0029】
(烏龍茶のアロマ感)
A:高い
B:やや高い
C:やや低い
D:低い
【0030】
(渋味)
A:渋味がほとんど感じられない
B:渋味が少ない
C:渋味が強い
D:渋味以外のえぐ味も感じられる
【0031】
製造例1
(烏龍茶抽出物の製造)
烏龍茶葉13.3kgを、重曹水でpHを8.5に調整した90℃の湯200L(茶葉に対して15倍)に添加した。次いで、ニーダー抽出(回転数13rpm/min、5分間)した後、フィルター(20メッシュ)及び遠心分離により、茶葉の残渣を除去し、これをイオン交換水で約5倍に希釈して烏龍茶抽出物を得た。烏龍茶抽出物のブリックスは0.5%であった。
【0032】
製造例2
(烏龍茶抽出物の製造)
イオン交換水で約1.3倍に希釈したこと以外は、製造例1と同様の操作により烏龍茶抽出物を得た。烏龍茶抽出物のブリックスは2.0%であった。
【0033】
実施例1
表1に示す割合の各成分を配合した後、レトルト殺菌して容器詰烏龍茶飲料を得た。得られた容器詰烏龍茶飲料の分析結果及び風味評価の結果を表1に示す。
【0034】
実施例2
表1に示す割合の各成分を配合した後、UHT殺菌して容器詰烏龍茶飲料を得た。得られた容器詰烏龍茶飲料の分析結果及び風味評価の結果を表1に示す。
【0035】
実施例3
ブリックスの異なる烏龍茶抽出物を配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰烏龍茶飲料を得た。得られた容器詰烏龍茶飲料の分析結果及び風味評価の結果を表1に示す。
【0036】
実施例4
ブリックスの異なる烏龍茶抽出物を配合したこと以外は、実施例2と同様の操作により容器詰烏龍茶飲料を得た。得られた容器詰烏龍茶飲料の分析結果及び風味評価の結果を表1に示す。
【0037】
比較例1
ブドウ種子抽出物由来のプロアントシアニジンを配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰烏龍茶飲料を得た。得られた容器詰烏龍茶飲料の分析結果及び風味評価の結果を表1に示す。
【0038】
比較例2
プロアントシアニジン試薬を配合したこと以外は、実施例1と同様の操作により容器詰烏龍茶飲料を得た。得られた容器詰烏龍茶飲料の分析結果及び風味評価の結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から、リンゴ抽出物由来のプロアントシアニジンを含有せしめることで、烏龍茶のアロマ感が豊かでかつ渋味の低減された風味の良好な容器詰烏龍茶飲料が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴ抽出物由来のプロアントシアニジンを0.01〜0.4質量%含有する、容器詰烏龍茶飲料。
【請求項2】
総ポリフェノールに対するプロアントシアニジンの含有質量比が0.1〜1である、請求項1記載の容器詰烏龍茶飲料。
【請求項3】
pHが5〜7である、請求項1又は2記載の容器詰烏龍茶飲料。
【請求項4】
UHT殺菌したものである、請求項1〜3のいずれか1項に容器詰烏龍茶飲料。
【請求項5】
固形分中にプロアントシアニジンを30〜80質量%含有するリンゴポリフェノールと烏龍茶抽出物を配合し、プロアントシアニジン含有量を0.01〜0.4質量%に調整する、容器詰烏龍茶飲料の製造方法。
【請求項6】
烏龍茶抽出物としてブリックスが0.1〜5%であるものを使用する、請求項5記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−72220(P2011−72220A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225000(P2009−225000)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】