説明

容器起立機能付き箱

【課題】プラスチックシート製の箱の内部に収容されていた容器を、その箱に差込み起立させる差込穴の開封補助線としてミシン目を形成するにあたり、差込穴の開口時には容易にミシン目を破断し、開封補助線に沿って開封できるようにする。
【解決手段】箱3の内部に収容されていた容器2a、2bを差込み起立させることができる差込穴4を該箱3に開口する開封補助線10Aが設けられているプラスチックシート製の容器起立機能付き箱3であって、開封補助線10Aとして、つなぎ部の長さがプラスチックシートの厚さ以下であるミシン目が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を収容する箱であって、その箱内に収容されていた容器を箱の壁面に差込み、起立させることのできる容器起立機能付き箱に関する。
【背景技術】
【0002】
二剤式毛髪化粧料として、例えば、酸化染料とアルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素等の酸化剤を含有する第2剤とからなる二剤形式の染毛剤が知られている。また、アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤からなる二剤形式のヘアブリーチも知られている。
【0003】
この二剤形式毛髪化粧料には種々の製品形態のものがあり、例えば、第1剤と第2剤をそれぞれ別個の容器に収容し、それらの容器を一つの包装用の箱に収容したものが知られている。
【0004】
二剤式毛髪化粧料では、使用時に第1剤と第2剤が混合される。両剤の混合方法としては、混合皿を使用する方法等もあるが、第2剤の容器内に第1剤を吐出し、そこで両剤を混合する方法が、別途混合皿を用意することが不要となるので好ましい。しかしながら、第1剤を収容する容器と第2剤を収容する容器は、通常、起立安定性に乏しく、第2剤の容器を手で保持しながら、第2剤の容器内に第1剤を吐出させることがなされている。
【0005】
一方、製品を収容する紙製の箱であって、その製品を差込み、起立させ、陳列できるようにする孔をその箱に開口するため、箱の壁面にミシン目を設けた陳列兼用包装箱が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、プラスチックシートから包装用の箱を作製できるように、プラスチックシートにミシン目を形成して折り曲げ加工を施す方法が提案されている(特許文献2)。透明又は半透明のプラスチックシート製の箱に製品を収容すると、箱の外側から中に収容されている製品の輪郭形状を確認することができるので好ましい。
【0007】
そこで、二剤式毛髪化粧料の容器を収容する箱をプラスチックシート製とし、箱から取り出した容器を差込み、起立させる差込穴をその箱に開口できるように、箱の表面に開封補助線を形成することが考えられる。
【0008】
【特許文献1】実公昭57−7615号公報
【特許文献2】特開昭64−40317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来、プラスチックシートの折り曲げ加工で用いられていたミシン目や、紙製の箱に開口用に形成されていたミシン目をプラスチックシートに形成しても、プラスチックシートは板紙に比して延性があるため、ミシン目部分を指で押し込んでもミシン目のつなぎ部が延びて破断されず、差込穴を開口することができない。
【0010】
これに対して、本発明は、プラスチックシート製の箱の内部に収容されていた容器を、その箱に差込み起立させる差込穴の開封補助線としてミシン目を形成するにあたり、差込穴の開口時には容易にミシン目を破断し、開封補助線に沿って開封できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、プラスチックシート製の箱に開口する差込穴の開封補助線としてミシン目を形成するにあたり、ミシン目のつなぎ部の長さをプラスチックシートの厚さ以下の微細なミシン目にすると、ミシン目部分を指で押し込むことによりミシン目が破断し、差込穴を開口できることを見出した。
【0012】
即ち、本発明は、箱の内部に収容されていた容器を差込み起立させることができる差込穴を該箱に開口する開封補助線が設けられているプラスチックシート製の容器起立機能付き箱であって、開封補助線として、つなぎ部の長さがプラスチックシートの厚さ以下であるミシン目が形成されている箱を提供し、特に、その開封性容易を向上させた態様として、抜き部の長さが1.0mm以上、つなぎ部の長さが0.2〜0.7mmのミシン目からなる開封開始部が、開封補助線に繋がるように設けられている態様を提供する。
【0013】
また、本発明は、互いに異なる剤を内容物とする2以上の容器が上述の箱に収容されている剤混合用製品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の容器起立機能付き箱はプラスチックシートから形成されているが、そこに差込穴の開封補助線として形成されたミシン目は、つなぎ部の長さがプラスチックシートの厚さ以下である。そのため、ミシン目部分を指で押し込むことによりミシン目を破断し、差込穴を開口することができる。
【0015】
特に、抜き部の長さが1.0mm以上、つなぎ部の長さが0.2〜0.7mmのミシン目からなる開封開始部を開封補助線に繋がるように形成すると、開封開始部を容易に開封することができ、この開封開始部の開封に連続して開封補助線を開封することが可能となる。したがって、開封補助線のミシン目を強くすることにより、製品の流通過程では開封補助線が不要に開封されないようにしつつ、差込穴の開封時には、開封開始部から開封することにより開封補助線を開封し、差込穴を開口することが可能となる。
【0016】
また、本発明の剤混合用製品によれば、互いに異なる剤を内容物とする2以上の容器が本発明の箱に収容されているので、箱から容器を取り出した後、差込穴を簡単に開口し、そこに一方の容器を差込み起立保持させることができる。したがって、他方の容器から起立保持させた容器に内容物を移すことにより、双方の剤の混合を手軽に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0018】
図1Aは、本発明の一実施例の毛髪化粧品の箱であって、差込穴の開口前の斜視図、図1Bは、その開口後の斜視図、図1Cは、差込穴に容器を差し込み、起立させた状態の斜視図である。図2は、この箱に形成されている開封補助線の説明図である。
【0019】
この毛髪化粧品1は、二剤式毛髪化粧料を構成する第1剤の容器2aと第2剤の容器2bを、これらの容器2a、2bの起立機能付き箱3に収容したものである。
【0020】
起立機能付き箱3は、好ましくは、厚さ0.2〜0.5mm、特に0.3〜0.4mmのポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の透明又は半透明のプラスチックシートから形成され、その表面には商品説明や任意の絵柄等が印刷されている。
【0021】
箱3の壁面には、容器2a、2bを該箱3から取り出した後、図1Cに示すように、一方の容器2a(2b)を差込穴4に差込み、起立させられるように、差込穴4を開口するための開封補助線10Aが形成されている。なお、第1剤の容器2aと第2剤の容器2bの外形が異なる場合であって、第2剤容器2bを染毛作業の際の混合吐出容器(アプリケーター)として使用する場合には、第2剤容器2bに第1剤の容器2aを加えるので、差込穴4の形状は、第2剤の容器2bを起立させられるように形成することが好ましい。
【0022】
開封補助線10Aは、図2に示すように、容器2aの外周形状のほぼ全周に沿った円弧状のミシン目から形成されている。ミシン目は、そのつなぎ部11の長さL1 が、このミシン目が形成されているプラスチックシートの厚さ以下であることを特徴としており、例えば、プラスチックシートが厚さ0.2〜0.5mmの場合、つなぎ部11の長さL1 は、0.1〜0.5mmとする。このようにつなぎ部11の長さを短くすることで、開封補助線10Aを指先で押し込むことによりつなぎ部11を破断し、開封することが可能となる。これに対して、つなぎ部11の長さL1 がプラスチックシートの厚さを超えると、開封補助線10Aを押し込んでも、つなぎ部11が延びて曲がるだけで破断せず、差込穴4を開口することができない。また、つなぎ部11の長さL1 を短くすることで、破断後のミシン目のバリが充分に小さくなり、そこに指先が触れても痛さを与えないものとなる。
【0023】
一方、ミシン目の抜き部12は、短すぎると開封補助線10Aの開封に強い力が必要となるので、プラスチックシートの厚さ以上とすることが好ましいが、長すぎると、開封補助線10Aが過度に開封し易くなり、毛髪化粧品1の流通時の外力により不要に開封するおそれが生じる。そこで、プラスチックシートが厚さ0.2〜0.5mmの場合、抜き部12の長さL2 は0.2mm以上とすることが好ましく、0.2〜1.0mmとすることがより好ましい。
【0024】
なお、このような微細なつなぎ部L1 と抜き部L2 からなるミシン目は、所謂、マイクロミシン刃を用いたミシン加工により形成することができる。
【0025】
この箱3には、開封補助線10Aに繋がるように開封開始部20が形成されている。開封開始部20は、開封補助線10Aを形成するミシン目に対し、つなぎ部21の長さL3は同程度であるが、抜き部22の長さL4 が長いミシン目からなり、開封補助線10Aから半円状に突出するように設けられている。この開封開始部20のミシン目としては、例えば、つなぎ部21の長さL3 を0.2〜0.7mm、抜き部22の長さL4 を1mm以上、特に5〜20mmとする。このように抜き部22の長いミシン目を使用することにより、開封開始部20を指先で押し込むことで、容易に開封開始部20を開封することが可能となる。開封開始部20の開封は、これに繋がる開封補助線10Aの開封を誘導する。したがって、開封開始部20を設けることにより、これを設けない場合に比して、開封補助線10Aのミシン目の強さを強く設定することができ、製品の流通過程で開封補助線10Aが不要に開封することを防止できる。
【0026】
なお、開封開始部20のミシン目で囲まれた領域23は、指先で押し込める程度の広さがあればよい。この領域23には、開封開始部20の視認性を向上させるため、エンボス加工又は押罫加工を施すことが好ましく、また印刷により開封開始部を表示してもよい。
【0027】
開封補助線10Aで囲まれた領域の開封開始部20と反対側の端部には折れ線30が形成されている。これにより、開封開始部20の視認性を相対的に向上させることができる。さらに差込穴4の開口後も開封補助線10Aで囲まれた領域が箱3の壁面から切り離されず、箱3の内側に折り込まれたフラップ5となるので、差込穴4に差し込まれた容器2a(2b)がフラップ5で差込穴4の縁部に押し付けられ、また容器2a(2b)の底部がフラップ5側に滑ることが防止され、容器2a(2b)の起立安定性を向上させることができる。特に、フラップ5の寸法を調整することにより、折り込まれたフラップ5が箱3の天面と底面との間にこれらの間隔を若干押し広げて嵌まり込むようにすると、容器2a(2b)の起立安定性をいっそう向上させることができる。また、差込穴4の開口時のゴミの発生を防止し、あるいは減らすことができる。
【0028】
本発明の箱は種々の態様をとることができる。
【0029】
例えば、図3の開封補助線10Bは、図2の円弧状の開封補助線10A上で、差込穴4の中心を回転中心として開封開始部20を約1/4回転させた位置に、長さ5〜20mmの長尺の抜き部13を形成したものである。この位置は、開封開始部20から始められた開封補助線10Bの開封の向きが、矢印のように大きく変わる部分である。したがって、ここに長尺の抜き部13を形成しておくことにより、開封補助線10Bの開封をよりスムーズに行うことが可能となる。
【0030】
図4の開封補助線10Cは、図3の開封補助線10Bに対してさらに長尺の抜き部13の形成箇所を増やしたものである。このように、シート材料や厚み等に応じて開封補助線の開封性を高めるため、適宜、適宜長尺の抜き部13を形成することができる。また長尺の抜き部間に前記つなぎ部を適宜設けることで、流通時の誤開封を防ぐことができる。
【0031】
図5の開封補助線10Dは、図4の開封補助線10Cにおいて、該開封補助線10Cに繋がる半円状に突出したミシン目からなる開封開始部20を省略したものである。このように半円状に突出した開封開始部20を省略しても、開封補助線10D上に長尺の抜き部13が形成されている場合には、そこを開封開始部として機能させることができる。したがって、開封補助線10D上の任意の場所を指で押し込むことにより、容易に開封補助線10Dを開封し、差込穴4を開口することが可能となる。
【0032】
本発明の剤混合用製品は、種々の実施例形態の箱に、互いに異なる剤を内容物とする2以上の容器を収容し、それらの剤の混合時に箱を利用できるようにしたものである。このような内容物としては、第1剤と第2剤からなる二剤式の毛髪化粧料、塗料、接着剤等をあげることができ、特に、好ましい例として二剤式毛髪化粧料をあげることができる。
【0033】
剤混合用製品の使用時には、剤混合用製品の箱から容器を取り出し、開封補助線に沿って切り裂くことにより箱の外壁に差込穴を開口し、開口した差込穴に取り出した容器の一方を起立保持させ、他方の容器の内容物を起立保持させた容器に入れ、双方の剤を混合する。こうして一つの箱に収容された二剤を手軽に混合することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の箱は、種々の容器の包装用の箱として使用することができ、特に、二剤式毛髪化粧料容器の箱として有用である。この他、本発明の箱は、箱に収容されていた容器を店頭等で陳列するための陳列兼用包装箱としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】本発明の一実施例の毛髪化粧品の箱であって、差込穴の開口前の斜視図である。
【図1B】図1Aの箱の、差込穴の開口後の斜視図である。
【図1C】図1Aの箱の差込穴に容器を差し込み、起立させた状態の斜視図である。
【図2】図1Aの箱の開封補助線の説明図である。
【図3】他の開封補助線の説明図である。
【図4】他の開封補助線の説明図である。
【図5】他の開封補助線の説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 毛髪化粧品
2a、2b 容器
3 箱
4 差込穴
5 フラップ
10A 開封補助線
11 ミシン目のつなぎ部
12 ミシン目の抜き部
13 ミシン目の長尺の抜き部
20 開封開始部
21 ミシン目のつなぎ部
22 ミシン目の抜き部
23 開封開始部で囲まれた領域
30 折れ線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱の内部に収容されていた容器を差込み起立させることができる差込穴を該箱に開口する開封補助線が設けられているプラスチックシート製の容器起立機能付き箱であって、開封補助線として、つなぎ部の長さがプラスチックシートの厚さ以下であるミシン目が形成されている箱。
【請求項2】
プラスチックシートの厚さが0.2〜0.5mm、ミシン目の抜き部の長さが0.2mm以上、つなぎ部の長さが0.1〜0.5mmである請求項1記載の箱。
【請求項3】
抜き部の長さが1.0mm以上のミシン目からなる開封開始部が、開封補助線に繋がるように設けられている請求項1又は2記載の箱。
【請求項4】
開封開始部のミシン目が、長さ0.2〜0.7mmのつなぎ部を有する請求項3記載の箱。
【請求項5】
互いに異なる剤を内容物とする2以上の容器が請求項1〜4のいずれかに記載の箱に収容されている剤混合用製品。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−8575(P2007−8575A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195528(P2005−195528)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(391018743)トーイン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】