説明

容器

【課題】使用できる内容物の種類が限定されず、しかも、使いやすい容器を提供する。
【解決手段】ペースト状化粧料2を収容する容器本体1と、この容器本体1の上面開口を着脱自在に蓋する蓋体4と、上記容器本体1内のペースト状化粧料2上に載置する中蓋5とを備えている。そして、この中蓋5を上記容器本体1の内周面に沿う方向に回動自在に構成し、上記中蓋5に、その中央部から外周面に向かって延びる切欠き部13を穿設し、この切欠き部13から、ペースト状化粧料2を掬い上げて切欠き部13を経由し中蓋5上に送る下向き傾斜板14を突設し、上記中蓋5に、それ自体を上記周方向に回動させる摘まみ部12を設けるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状化粧料,自動車用ワックス等の各種のペースト状内容物を適量取り出すことのできる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、柔らかい内容物(例えば、クリーム状,ペースト状等の内容物)を収容する容器として、その内容物を適量取り出すため、図11に示すように、内容物21を収容する容器本体22と、この容器本体22の上部外周面に着脱自在に螺合する蓋部材(図示せず)と、上記容器本体22の内周面に摺動可能に嵌合する中蓋23とを備え、この中蓋23の中央に一対の押出孔23aを穿設するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この容器では、使用時に、蓋部材を取り外し、内容物21上に載置した中蓋23の一部分(図11では、上記両押出孔23aの一方を閉鎖するようにして、この一方の押出孔22a)を指で押さえて中蓋23を押し下げ、これに伴い内容物21に圧力を加えて他方の押出孔23aから内容物21を中蓋23上に押し出し、この押し出た内容物21を指で掬い取るようにしている。
【特許文献1】特開2004−175403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の容器では、使用時に、中蓋23の一部分を強い力で押さえ付けて中蓋23全体を下降させなければならず、これにより、内容物21に大きな負担を与えてしまい、容器本体22内に収容できる内容物21の種類が限定されるという問題や、中蓋23を強い力で押さえ付けなければならないため、作業が厳しいという問題がある。しかも、強く押さえ付けすぎると、内容物21が中蓋23上に押し出されすぎてしまい、適量掬い取れない等、使い勝手が悪いという問題もある。しかも、内容物21上に水が少し溜まると、中蓋23を強い力で押さえ付けただけでは、上記水を押出孔23aから押し出すことができず、上記水で内容物21が薄まったり、変質したりするという問題もある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、収容できる内容物の種類が限定されず、しかも、使い勝手がよい容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の容器は、ペースト状内容物を収容する容器本体と、この容器本体の上面開口を着脱自在に蓋する蓋体と、上記容器本体内のペースト状内容物上に載置する中蓋とを備え、この中蓋を上記容器本体の内周面に沿う方向に回動自在に構成し、上記中蓋に、その中央部から外周面に向かって延びる切欠き部を穿設し、この切欠き部から、ペースト状内容物を掬い上げて切欠き部を経由し中蓋上に送る掬い上げ具を突設し、上記中蓋に、それ自体を上記周方向に回動させる回動操作具を設けたという構成をとる。
【発明の効果】
【0006】
すなわち、本発明の容器は、ペースト状内容物を収容する容器本体と、この容器本体の上面開口を着脱自在に蓋する蓋体と、上記容器本体内のペースト状内容物上に載置する中蓋とを備えており、この中蓋を上記容器本体の内周面に沿う方向に回動自在に構成し、上記中蓋に、その中央部から外周面に向かって延びる切欠き部を穿設し、この切欠き部から、ペースト状内容物を掬い上げて切欠き部を経由し中蓋上に送る掬い上げ具を突設し、上記中蓋に、それ自体を上記周方向に回動させる回動操作具を設けている。したがって、本発明の容器では、使用時に、上記中蓋の回動操作具を手指で回動操作して(すなわち、回動操作具を手指で所定の方向に回動させて)、上記中蓋自体を上記所定方向に回動させると、この回動に伴って、上記中蓋に設けた掬い上げ具も回動し、この回動の際に、上記掬い上げ具でペースト状内容物を掬い上げ、この掬い上げたペースト状内容物を切欠き部を通して上方に移動させ中蓋上に送る。このとき、上記回動の角度を適正に設定することにより、適量のペースト状内容物を中蓋上に掬い上げることができる。そして、この中蓋上に掬い上げたペースト状内容物を手指に移し取って化粧等することを行う。
【0007】
このように、本発明の容器では、上記中蓋を回動操作することにより、適量のペースト状内容物を上記中蓋上に掬い上げることができる。しかも、上記回動時に、上記中蓋に設けた掬い上げ具で柔らかいペースト状内容物を掬い上げるだけであり、小さな力で掬い上げることができる。したがって、この掬い上げ時に、ペースト状内容物に大きな負担を与えることがなく、容器本体に収容できるペースト状内容物の種類が限定されない。しかも、上記中蓋の回動操作具を手指で回動操作するのに、小さな力で行えるため、上記中蓋をゆっくりと回動操作することができ、これにより、正確に所定の角度だけ回動させて適量のペースト状内容物を掬い上げることができ、使い勝手がよい。しかも、ペースト状内容物上に水が少し溜まっても、上記回動時に、ペースト状内容物と一緒に水を中蓋上に掬い上げることができ、上記水でペースト状内容物が薄まったり、変質したりするのを防ぐことができる。なお、本発明において、「ペースト状内容物」とは、クリーム状,ゲル状の内容物を含む意味であり、内容物としては、化粧料,車用(例えば、自動車用)ワックス,医薬品,食料品等、各種のものがあげられる。
【0008】
また、上記掬い上げ具が、上記切欠き部の相対向する両側面の一方から下向きに延びるとともに上記両側面の他方に向かって傾斜する下向き傾斜板で構成され、この下向き傾斜板の下端部が上記切欠き部の下面開口より下側に位置していると、上記下向き傾斜板でペースト状内容物を確実に掬い上げ、切欠き部の相対向する両側面間を通して中蓋上に送ることができる。
【0009】
また、上記中蓋の外周面が、外側に向かって下り傾斜状に傾斜する傾斜面に形成され、この傾斜面の下端縁が上記容器本体の内周面に回動自在に当接していると、容器本体の内周面と中蓋の外周面との間に隙間がなく、上記両周面の間からペースト状内容物が漏れ出すことがない。
【0010】
また、上記中蓋の外周面にねじ部が形成され、上記容器本体の内周面に、上記ねじ部にら合するねじ部が形成されていると、上記回動時に上記中蓋が容器本体および蓋体の軸心方向に沿って下降し、傾くことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0012】
図1および図2は本発明の容器の一実施の形態を示している。この実施の形態では、容器として、化粧料容器を用いている。これらの図において、1は有底円筒体からなる容器本体であり、内部にペースト状化粧料(ペースト状内容物)2が収容されている。この容器本体1には、その周側壁の上部外周面にねじ部1aが形成されており、上記周側壁の中間高さ位置よりやや下側部分の外周面から円環状のスカート部3が突設されている。4は有天円筒体からなる蓋体であり、その内周面に、上記ねじ部1aにら合するねじ部4aが形成されている。この蓋体4は、閉蓋状態では、上記スカート部3の上面に回り止め状に当接している。
【0013】
5は上記容器本体1の上面開口から出し入れ自在な中蓋であり、図3〜図7に示すように、円盤状体からなる蓋本体11と、この蓋本体11の上面に立設される2個の摘まみ部(回動操作具)12とを備えている。上記蓋本体11には、その中央部から外周面近傍にまで延びる1条の切欠き部13が穿設されており、この切欠き部13の相対向する両側面(図3では、前後両側面)のうち、一方の側面(図3では、後側面)に、他方の側面13bの方に向かって(図3では、前側に向かって)下り傾斜状に傾斜する下向き傾斜板(掬い上げ具)14が突設されている。この下向き傾斜板14は、その下端部が上記切欠き部13の下面開口13a(図6参照)より下側まで延びており、上記中蓋5を、上記容器本体1内に収容したペースト状化粧料2上に載置した状態では、上記下向き傾斜板14の下部がペースト状化粧料2内に入り込むようにしている(図2参照)。また、上記他方の側面13b(図3では、前側面)は、上記一方の側面から遠ざかる方向に向かって(図3では、前側に向かって)下り傾斜状に(上記下向き傾斜板14の傾斜角度と同じ角度で)傾斜している。
【0014】
上記中蓋5は、その外周面5aが、外側に向かって下り傾斜状に傾斜する傾斜面に形成されており、この傾斜面の下端縁が上記容器本体1の内周面に、この内周面に沿う方向に回動自在に当接している。また、上記中蓋5には、その下面に、その外周縁から内側に向かって上り傾斜状に傾斜する傾斜面と、水平な天井面とからなる円錐台形状の凹部5bが形成されている。また、上記両摘まみ部12は、上記蓋本体11の中央部から外周縁部にまで延びる一対の平板体からなり、それぞれ相対峙する状態で(すなわち、1列に並ぶようにして)立設されている。
【0015】
上記構成において、使用時には、開蓋状態にしたのち、中蓋5の両摘まみ部12を手指で持ちながら、所定の方向に(この実施の形態では、半時計回り方向に)所定の角度だけ回動操作することを行う(図8参照)。これにより、上記中蓋5およびこれに設けた下向き傾斜板14も上記所定方向に所定角度だけ回動し、この回動の際に、上記下向き傾斜板14でペースト状化粧料2を掬い上げ切欠き部13間を通して上方に移動させ中蓋5上に送る(図9参照)。このとき、上記回動させる角度を適宜設定することにより、適量のペースト状化粧料2を中蓋5上に掬い上げることができる。そして、この中蓋5上に掬い上げたペースト状化粧料2を手指に移し取り化粧等することを行う。
【0016】
このように、上記実施の形態では、中蓋5を回動操作することにより、適量のペースト状化粧料2を中蓋5上に掬い上げることができる。しかも、上記回動時に、中蓋5に設けた下向き傾斜板14でペースト状化粧料2を掬い上げるだけであり、小さな力で掬い上げることができる。したがって、この掬い上げ時に、ペースト状化粧料2に大きな負担を与えることがない。しかも、上記中蓋5の摘まみ部12を手指で回動操作するのに、小さな力で行えるため、上記中蓋5をゆっくりと回動操作することができ、これにより、正確に所定角度だけ回動させて適量のペースト状化粧料2を掬い上げることができる。しかも、ペースト状化粧料2上に水が少し溜まっていても、上記回動時に、ペースト状化粧料2と一緒に水を中蓋5上に掬い上げることができ、水でペースト状化粧料2が薄まったり、変質したりするのを防ぐことができる。しかも、中蓋5がペースト状化粧料2上に載置されているため、ペースト状化粧料2の上面に雑菌等が付着しない。しかも、ペースト状化粧料2を使い果たしたのちは、上記中蓋5を、ペースト状化粧料2を収容した他の容器本体1にセットして使用することもできる。
【0017】
図10は上記容器本体1および中蓋5の変形例を示している。この例では、上記中蓋5の外周面5aが円筒形状に形成されており、この円筒形状の外周面にねじ部16が形成されている。また、上記容器本体1の内周面に、上記中蓋5のねじ部16にら合するねじ部17が形成されている。それ以外の部分は、上記実施の形態に用いた容器本体1および中蓋5と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。これら容器本体1および中蓋5を用いた場合にも、上記実施の形態と同様の作用・効果を奏する。しかも、回動操作時に上記中蓋5が容器本体1および中蓋5の軸心方向に沿って降下するため、傾くことがない。
【0018】
なお、上記実施の形態および変形例では、上記中蓋5の蓋本体11に1条の切欠き部13を穿設しているが、これに限定するものではなく、上記蓋本体11の中央部から外周面に向かって放射状に延びる複数条の切欠き部13を穿設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の容器の一実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】上記容器の断面図である。
【図3】中蓋の平面図である。
【図4】上記中蓋の側面図である。
【図5】上記中蓋の要部の側面図である。
【図6】上記中蓋の断面図である。
【図7】上記中蓋の要部の断面図である。
【図8】上記容器の作用を示す断面図である。
【図9】上記容器の作用を示す斜視図である。
【図10】容器本体および中蓋の変形例を示す断面図である。
【図11】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 容器本体
2 ペースト状化粧料
4 蓋体
5 中蓋
12 摘まみ部
13 切欠き部
14 下向き傾斜板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状内容物を収容する容器本体と、この容器本体の上面開口を着脱自在に蓋する蓋体と、上記容器本体内のペースト状内容物上に載置する中蓋とを備え、この中蓋を上記容器本体の内周面に沿う方向に回動自在に構成し、上記中蓋に、その中央部から外周面に向かって延びる切欠き部を穿設し、この切欠き部から、ペースト状内容物を掬い上げて切欠き部を経由し中蓋上に送る掬い上げ具を突設し、上記中蓋に、それ自体を上記周方向に回動させる回動操作具を設けたことを特徴とする容器。
【請求項2】
上記掬い上げ具が、上記切欠き部の相対向する両側面の一方から下向きに延びるとともに上記両側面の他方に向かって傾斜する下向き傾斜板で構成され、この下向き傾斜板の下端部が上記切欠き部の下面開口より下側に位置している請求項1記載の容器。
【請求項3】
上記中蓋の外周面が、外側に向かって下り傾斜状に傾斜する傾斜面に形成され、この傾斜面の下端縁が上記容器本体の内周面に回動自在に当接している請求項1または2記載の容器。
【請求項4】
上記中蓋の外周面にねじ部が形成され、上記容器本体の内周面に、上記ねじ部にら合するねじ部が形成されている請求項1または2記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−240640(P2006−240640A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55935(P2005−55935)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】