説明

容器

【課題】液体および容器本体の種類や状態に依らず、内部の液体の残量を正確に検知することができる容器を提供する。
【解決手段】内部に液体Aを収容する容器本体2と、該容器本体2の壁面の液体Aの液面より下方に配置され、液体Aの液圧によって弾性変形させられる弾性変形部3と、該弾性変形部3に取り付けられ、該弾性変形部3の弾性変形により変位させられる変位部材4と、該変位部材4の変位量を検出する検出部5とを備える容器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や生体試料など滅菌性の保持された液体を収容して外部に供給する液体バッグにおいて、内部の液体の残量を知りたいときには、内部の液体に非接触で外部から液体の残量を検知しなければならない。このような検知方法として、透光性材料で構成された容器を用いて容器内を透過してきた光の強度や有無を複数の位置で検出し、液面の位置から液体の残量を検知する装置および方法が知られている。例えば、特許文献1では、タンパク質溶液のような透明または透明に近い溶液の液面位置を高速回転中に高い精度で検出する溶液遠心濃縮装置および方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−7595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透過光の強度は、容器の材質や汚れの付着、また、液体の色や濁度、液面の反射率など、様々な外的要因に容易に影響され変化する。そのため、試料ごとに測定条件を調節する必要があるが、多くの要因に左右されるため測定条件を正確に決定することは難しい。その結果、試料ごとに測定の誤差が生じやすく、精度良く安定して液面位置または残液量を検知するのが困難である。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、液体および容器の種類や状態に依らず、内部の液体の残量を正確に検知することができる容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、内部に液体を収容する容器本体と、該容器本体の壁面の前記液体の液面より下方に配置され、前記液体の液圧によって弾性変形させられる弾性変形部と、該弾性変形部に取り付けられ、該弾性変形部の弾性変形により変位させられる変位部材と、該変位部材の変位量を検出する検出部とを備える容器を提供する。
【0007】
本発明によれば、容器本体内の液体の液圧により、弾性変形部は容器本体の外方に押圧されて弾性変形させられ、この弾性変形にしたがって変位部材の位置が変化する。この場合に、弾性変形部を押圧する液圧は、弾性変形部から液体の液面までの距離、すなわち、容器内に残存する液体の量(残液量)によって決まる。したがって、検出部によって検出された変位部材の変位量から残液量を検知することができる。
【0008】
このように、本発明によれば、容器本体内の残液量がその液圧に基づいて検知されるので、容器本体および液体の性質や状態など、残液量以外の外的な要因に左右されることなく、残液量を精度良く安定して検知することができる。
また、弾性変形部を容器本体の壁面に配置して容器本体の外方の方向に弾性変形させられる構成にすることで、容器本体の外部から液体に非接触で残液量を検知することができる。これにより、生体試料や輸液などの滅菌的に扱われる液体であっても残液量を安全に検知することができる。
【0009】
上記発明においては、前記弾性変形部が、前記容器本体の前記壁面から外方に片持ち梁状に延び、先端が閉塞された筒状に形成され、前記液体の圧力に応じて前記変位部材を鉛直方向に変位させることとしてもよい。
弾性変形部は、内部が液体によって満たされて液体の液圧により容器本体の外方へ押圧され、液面位置が高いときは、液圧が大きいため水平方向に伸長させられるが、液面位置が下がると、液圧が小さくなって重力により下方に撓まされる。これにしたがって変位部材が鉛直方向に変位する。
【0010】
このようにすることで、弾性変形部を簡易に構成することができ、また、弾性変形部の変形を目視でも容易に認識することができる。また、容器本体の壁面から離れた位置において弾性変形部が変形させられるので、検出部を容器本体の外部に設けることにより、容器本体および弾性変形部のみをディスポーザブルとして用いてこれらのみを交換することが可能になる。
【0011】
また、上記発明においては、前記弾性変形部が、前記変位部材の周囲に形成された円環状のダイアフラム状に形成され、前記液体の圧力に応じて前記変位部材を前記壁面の厚さ方向に変位させることとしてもよい。
【0012】
弾性変形部は、残液量が多いときは容器の外方へ、残液量が減少すると容器本体の内方へ弾性変形させられ、これにしたがって変位部材が容器本体の外方または内方へ変位させられる。このようにすることで、弾性変形部の変形から液圧がより高い感度で検出され、残液量を精度良く検知することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記検出部が、前記変位部材が変位させられる領域に検出光を照射する発光部と、前記検出光または該検出光の反射光を受光する受光部とを備えることとしてもよい。
例えば、残液量の減少により変位部材が変位させられると、それまで通過していた検出光の光路が変位部材によって遮られて検出光が反射され、受光部により検出光が検出されなくなる。
このようにすることで、残液量が所定の量まで減少したことを検知することができ、また、検出部を容器本体から離れた位置に配置することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記検出部が、前記弾性変形部が弾性変形させられたときに前記変位部材に接触させられる位置に配置され、圧力を検出する圧力センサであることとしてもよい。
このようにすることで、液体により弾性変形させられた弾性変形部の弾性復元力が変位部材を介して圧力センサにより検出され、検出された圧力の大きさ、または、変位部材の圧力センサへの接触の有無に基づいて、残液量を検知することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記弾性変形部および変位部材が、鉛直方向に間隔を空けて複数設けられていることとしてもよい。
このようにすることで、残液量を複数の段階で検知することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液体および容器本体の種類や状態に依らず、内部の液体の残量を正確に検知することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る容器1について、図1〜図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る容器1は、図1に示されるように、液体Aを収容する容器本体2と、該容器本体2壁面の底面近傍に配置された弾性変形部3と、該弾性変形部3に設けられた変位部材4と、該変位部材4の変位量を検出する検出部5とを備えている。
【0018】
容器本体2は、例えば、柔軟な材質で形成され懸架して使用される液体バッグであり、底面に設けられた排出口2aにはチューブ2bが接続されている。
弾性変形部3は、容器本体2の壁面から片持ち梁状に延び、先端が閉塞された円筒形状を有している。弾性変形部3内部は、容器本体2内と連通しており、容器本体2内に液体Aが入っているときには液体Aによって満たされている。
変位部材4は、弾性変形部3の先端に設けられ、弾性変形部3よりも大きな径を有している。これにより、弾性変形部3の先端に重りとして配置され、容器本体2内に液体Aが満たされることで弾性変形部3の変形量を増加させることができる。
【0019】
弾性変形部3は、液体Aの残量が多いときは液体Aの液圧により外方へ押圧されて水平方向に伸長させられる。また、排出口2aから液体Aを排出して液体Aの残量が減少すると、弾性変形部3は、内部の液圧が低下して重力により先端の変位部材4を下方に向けて撓まされて変形させられる。この弾性変形部3の変形にしたがって変位部材4が鉛直方向に変位させられるようになっている。
【0020】
検出部5は、透過式光センサであり、検出光Lを水平方向に出射する発光部5aと、被検出部を透過した検出光Lを受光する受光部5bとを備えている。発光部5aおよび受光部5bは、容器本体2の壁面から離れた位置において、変位部材4を水平方向に挟んで対向して配置されている。
【0021】
弾性変形部3が伸長している場合、検出光Lは、変位部材4によって遮断され受光部5bによって検出されない。弾性変形部3が撓んで変位部材4が下方に変位させられると、検出光Lは受光部5bまで透過して検出されるようになっている。
【0022】
このように構成された容器1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る容器1を用いるには、容器本体2内に収容された液体Aを排出口2aから排出し、液体Aの残量が所定の量まで減少すると、それまで変位部材4によって遮られていた検出光Lを受光部5bが受光して容器本体2内が所定の残液量になったことが検知される。
【0023】
このように、本実施形態によれば、容器本体2内の液体Aの残量が、液体Aの液圧に基づいて検知される。すなわち、容器本体2および液体Aの種類や性質、状態などの試料によって変化する外的な要因に依らずに残液量が検知されるので、安定して精度良く残液量を検知することができる。また、検出部5を容器本体2から離れた位置に配置することで、液体Aに非接触で残液量を検知することができると同時に、容器本体2および弾性変形部3のみディスポーザブルとして使用してこれらのみを交換することができる。
【0024】
また、弾性変形部3を容器本体2壁面から外部に突出させその撓みによる変位を検出する構成にすることで、弾性変形部3aの形状から目視でも残液量を検知あるいは推察することができる。これにより、例えば、遮光が必要な溶液、あるいは、外部を覆われた容器など、容器本体2内の液体Aを目視で確認できない場合においても、その残液量を容易に目測することができる。
【0025】
上記実施形態においては、弾性変形部が容器本体の壁面から外方に片持ち梁状に延びた筒状に形成され、変位部材の鉛直方向の変位を検出することとした。これに代えて、図2および図3に示されるように、弾性変形部が変位部材の周囲に形成された円環状のダイアフラム状に形成され、変位部材の壁面の厚さ方向の変位を検出することとしてもよい。
【0026】
弾性変形部3は、例えば、薄膜で形成され、中央部が容器本体2の内方に窪んだフランジ形状であり、容器本体2の壁面の厚さ方向に弾性伸縮可能である。変位部材4は、弾性変形部3の中央部に設けられ、容器本体2の外方に突出した突起であり、例えば、円錐台形状を有している。弾性変形部3が液体Aの液圧によって伸縮させられると、それにしたがって変位部材4が容器本体2の壁面の厚さ方向に変位させられる。
また、発光部5aおよび受光部5bは、変位部材4を鉛直方向に挟んでそれぞれ下方と上方に配置され、発光部5aは検出光Lを鉛直方向上方に出射する。
【0027】
このようにすることで、残液量が多いときは、図3(a)に示されるように、変位部材4により検出光Lの光路が遮断されて受光部5bにより検出光Lが検出されない。そして、液体Aを排出して残液量が少なくなると、図3(b)に示されるように、弾性変形部3の弾性復元力により変位部材4が容器本体2の内方向に移動し、検出光Lが受光部5bまで透過して検出される。これにより、液体Aが所定の残量まで減少したことを検知することができる。
【0028】
また、上記実施形態においては、受光部が、変位部材に対して発光部と同一の側に配置され、変位部材によって反射された反射光を検出することとしてもよい。
【0029】
また、上記実施形態においては、検出部として透過式光センサを用いたが、これに代えて、変位部材により押圧される圧力を検出する圧力センサを用いてもよい。
圧力センサは、例えば、図4に示されるように、オンオフ動作するスイッチ5cである。スイッチ5cは、残液量が多いときは、図4(a)に示されるように、変位部材4により押圧されてオンであり、残液量が所定の量まで減少すると、図4(b)に示されるように、変位部材4が離れてオフになる。このようにスイッチ5cのオンとオフの動作から残液量を検知することができる。
【0030】
また、上記実施形態においては、残液量が検知されたときに検出部がそれを報知することとしてもよい。
例えば、受光部5bが検出光Lを受光したとき、または、スイッチ5cがオフになったときに、図示しないランプを点灯させたり、あるいは、警告音を発するようにする。このようにすることで、容器1から離れた位置からでも所定の残液量まで減少したことを知ることができる。
【0031】
また、上記実施形態においては、弾性変形部および変位部材が、鉛直方向に間隔をあけて複数設けられることとしてもよい。
このようにすることで、容器本体2内の残液量を複数の段階で検知することができる。
【0032】
また、上記実施形態においては、容器本体内から液体を排出し所定の残液量まで減少したことを検知することとしたが、これに代えて、容器本体内に液体を給液し、所定の量まで収容されたことを検知することとしてもよい。
【0033】
さらに、上記実施形態において、容器本体2に収量可能な液体Aとしては、特に制限はないが、血液や生体試料などを含む液体等も好適に収容でき、また前述のようなタンパク質を含有する溶液のほか、昨今、再生医療分野等においても有用な、脂肪由来細胞を含むような溶液も、好適に収量可能である。
【0034】
前記脂肪由来細胞には、血管内皮細胞、線維芽細胞、造血幹細胞、血球系の細胞、脂肪由来幹細胞などが含まれる。ここで、幹細胞は、細胞治療などの目的で、脂肪組織から採取される細胞であり、多分化能、自己再生能を有する細胞を指す。
また、用いられる脂肪組織としては、ヒト由来の皮下脂肪組織、内臓脂肪組織、白色脂肪組織、褐色脂肪組織等でよく、ヒト等の脂肪部位をハサミ等の鋭利な器具で採取されたもの、脂肪吸引等の方法によって採取されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る容器を示す全体構成図である。
【図2】図1の容器の変形例を示す図である。
【図3】図2の容器の弾性変形部、変位部材および検出部の構成ならびに(a)残液量が多いとき、(b)残液量が少ないときの動作を説明する図である。
【図4】図2の容器の検出部の変形例であり、弾性変形部、変位部材および検出部の(a)残液量が多いとき、(b)残液量が少ないときの動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0036】
1 容器
2 容器本体
3 弾性変形部
4 変位部材
5 検出部
5a 発光部
5b 受光部
5c スイッチ
A 液体
L 検出光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を収容する容器本体と、
該容器本体の壁面の前記液体の液面より下方に配置され、前記液体の液圧によって弾性変形させられる弾性変形部と、
該弾性変形部に取り付けられ、該弾性変形部の弾性変形により変位させられる変位部材と、
該変位部材の変位量を検出する検出部とを備える容器。
【請求項2】
前記弾性変形部が、前記容器本体の前記壁面から外方に片持ち梁状に延び、先端が閉塞された筒状に形成され、前記液体の液圧によって前記変位部材を鉛直方向に変位させる請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記弾性変形部が、前記変位部材の周囲に形成された円環状のダイアフラム状に形成され、前記液体の液圧によって前記変位部材を前記壁面の厚さ方向に変位させる請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記検出部が、前記変位部材の変位させられる領域に検出光を照射する発光部と、前記検出光または該検出光の反射光を受光する受光部とを備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の容器。
【請求項5】
前記検出部が、前記弾性変形部が弾性変形させられたときに前記変位部材に接触させられる位置に配置され、圧力を検出する圧力センサである請求項1から請求項3のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
前記弾性変形部および変位部材が、鉛直方向に間隔を空けて複数設けられている請求項1から請求項5のいずれかに記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−89831(P2010−89831A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264025(P2008−264025)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】