説明

容器

【課題】ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器のガスバリア性を向上させる。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器であって、その内側および外側のうちの少なくとも一方の表面にアモルファスカーボン被膜が形成されるとともに、前記樹脂材料にダイヤモンド微粒子が配合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内容物を収容する容器として、従来から例えば下記特許文献1に示されるように、ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成され、かつその内側および外側のうちの少なくとも一方の表面に、アモルファスカーボン被膜を形成することによって、ガスバリア性を向上させたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−241985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記樹脂材料に代えて、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器では、ガスバリア性を向上させることに改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成されるとともに、ガスバリア性が向上された容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の容器は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器であって、その内側および外側のうちの少なくとも一方の表面にアモルファスカーボン被膜が形成されるとともに、前記樹脂材料にダイヤモンド微粒子が配合されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料に、ダイヤモンド微粒子が配合されているので、この容器の表面にアモルファスカーボン被膜を付着させ易くすることが可能になり、ガスバリア性を向上させることができる。
なお、ダイヤモンド微粒子は多数の官能基を具備しているので、このダイヤモンド微粒子を、アモルファスカーボン被膜を形成する容器の表面に露出させることによって、容器の表面にアモルファスカーボン被膜を付着させ易くすることができると考えられる。
【0008】
ここで、前記樹脂材料はポリエチレン樹脂を主成分としてもよい。
【0009】
この場合、前記樹脂材料がポリエチレン樹脂を主成分としているので、ガスバリア性を確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器のガスバリア性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る容器は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成されている。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、あるいはエチレンやプロピレンを主体とした共重合体を使用でき、またこれらのポリオレフィン系樹脂を主体としたブレンド材を採用してもよい。
さらに本実施形態では、前記樹脂材料にダイヤモンド微粒子が配合されている。この配合方法としては、ダイヤモンド微粒子を前記樹脂材料に直接添加したり、ダイヤモンド微粒子を溶解あるいは分散させた溶媒を前記樹脂材料に添加する方法などが考えられる。なお、前記溶媒の種類によっては、アモルファスカーボン被膜を容器の表面にさらに付着させ易くすることができる場合があり、例えばアクリル系の溶媒を採用することが好ましい。
さらに容器の表面にはダイヤモンド微粒子が露出している。
【0012】
そして、この容器の内側および外側のうちの少なくとも一方の表面にアモルファスカーボン被膜が形成されている。アモルファスカーボン被膜とは、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜と称されるものであり、例えば公知の化学気相成長法(CVD法)若しくは物理的気相成膜法(PVD法)等により形成される。なお、アモルファスカーボン被膜の厚さは例えば10nm〜100nmとなっている。
【0013】
以上説明したように、本実施形態による容器によれば、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料に、ダイヤモンド微粒子が配合されているので、この容器の表面にアモルファスカーボン被膜を付着させ易くすることが可能になり、ガスバリア性を向上させることができる。
なお、ダイヤモンド微粒子は多数の官能基を具備しているので、このダイヤモンド微粒子を、アモルファスカーボン被膜を形成する容器の表面に露出させることによって、容器の表面にアモルファスカーボン被膜を付着させ易くすることができると考えられる。
また、前記樹脂材料がポリエチレン樹脂を主成分としているので、ガスバリア性を確実に向上させることができる。
【0014】
次に、以上説明した作用効果の検証試験について説明する。
【0015】
従来例1として、ポリプロピレン樹脂を主成分とし、かつダイヤモンド微粒子が配合されていない樹脂材料で形成されるとともに、表面にアモルファスカーボン被膜が形成されてない容器を採用し、従来例2として、ポリエチレン樹脂を主成分とし、かつダイヤモンド微粒子が配合されていない樹脂材料で形成されるとともに、表面にアモルファスカーボン被膜が形成されてない容器を採用し、比較例1として、従来例1の容器の表面にアモルファスカーボン被膜を形成したものを採用し、比較例2として、従来例2の容器の表面にアモルファスカーボン被膜を形成したものを採用し、実施例1として、ポリプロピレン樹脂を主成分とし、かつダイヤモンド微粒子が配合された樹脂材料で形成されるとともに、表面にアモルファスカーボン被膜が形成された容器を採用し、実施例2として、ポリエチレン樹脂を主成分とし、かつダイヤモンド微粒子が配合された樹脂材料で形成されるとともに、表面にアモルファスカーボン被膜が形成された容器を採用した。
なお、これらの各容器は、射出成形によりカップ状に成形し、胴部の平均肉厚を0.98mm、底部の平均肉厚を1.5mmとした。また、アモルファスカーボン被膜は公知の方法で形成し、比較例1、2および実施例1、2では、この被膜の厚さを25〜30nmとした。さらに、ダイヤモンド微粒子として、Carbodeon社製の「uDiamond(登録商標) Molto」(粒径4nm〜6nm、含有率97wt%以上)を採用し、このダイヤモンド微粒子を前記樹脂材料に約1.5wt%配合した。
【0016】
そして試験は、空の前記各容器を、温度23℃、湿度55%RH、酸素分圧21%の環境に保たれたチャンバー(恒温室)内に置き、Mocon社製のOX−Tranを用いて、該容器内への酸素の透過流入量(cc/day)を測定した。この際、前記各容器内の湿度は90%RHとした。
比較例1および実施例1については、従来例1の測定結果を基準として、バリア改善率(BIF)を算出し、比較例2および実施例2については、従来例2の測定結果を基準として、バリア改善率(BIF)を算出した。
【0017】
以上の試験結果を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
表1より、実施例1、2の各容器では、比較例1、2および従来例1、2の各容器と比べてガスバリア性が向上され、特に、ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された実施例2の容器では、ガスバリア性を大きく向上できることが確認された。
【0020】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
前記容器としては、例えばボトル、カップ、チューブ等、種々の形態のものを採用することができる。
前記樹脂材料として、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする材質を示したが、これに限らず必要に応じて適宜変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器のガスバリア性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂材料で形成された容器であって、
その内側および外側のうちの少なくとも一方の表面にアモルファスカーボン被膜が形成されるとともに、前記樹脂材料にダイヤモンド微粒子が配合されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1記載の容器であって、
前記樹脂材料はポリエチレン樹脂を主成分とすることを特徴とする容器。

【公開番号】特開2012−229052(P2012−229052A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99907(P2011−99907)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】