説明

容易に拡張可能な伝送ストリーム・エンコーダ

【課題】 コンポーネント信号の供給源に結合された複数のFIFOバッファ(12〜16)を含む伝送ストリーム・エンコーダを開示する。
【解決手段】 FIFOバッファのそれぞれはコンポーネント信号データを作成するためのデータ出力端子を有する。パケタイザ(30)はコンポーネント信号データを受信するためのデータ入力端子を有し、パケット・ストリームを作成する。データ・バス(20)は、FIFOバッファのデータ出力端子とパケタイザのデータ入力端子へ共通に結合される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大多数の供給源からのデータを1つのパケット・ストリームに統合できる、供給源の個数が容易に拡張可能な伝送ストリーム・エンコーダに関する。
【0002】なお、本明細書の記述は本件出願の優先権の基礎たる米国特許出願第08/442,430号(1995年5月16日出願)の明細書の記載に基づくものであって、当該米国特許出願の番号を参照することによって当該米国特許出願の明細書の記載内容が本明細書の一部分を構成するものとする。
【0003】
【従来の技術】現在の高品位テレビおよび衛星放送システムでは、プログラムは、動画を表わすビデオ信号と、1つまたはそれ以上のオーディオ信号(ステレオまたは多国語機能用)と、1つまたはそれ以上のデータ信号(クローズド・キャプション、および/または対話型コンピュータ・プログラム・コードおよび/またはデータ)の組み合せを含む。特定の例として、Grand Alliance(グランド・アライアンス)コンソーシアムが提案しているシステムでは、ビデオ信号コンポーネント、2つのオーディオ信号コンポーネントおよび4つの補助データ信号コンポーネントを含むプログラムを提供している。連続したデータ・パケットのストリームが形成され、それぞれのパケットにはコンポーネント信号の1つからのデータが含まれる。この方法では、7種類のコンポーネント信号が1つのパケット・ストリームに時分割多重化されて、伝送リンク上に放送される。
【0004】遠隔地でパケット・ストリームに含まれるデータを受信処理して、7種類のコンポーネント信号を再現する。ビデオ信号コンポーネントで表現される画像は表示画面上に表示され、オーディオ信号コンポーネントで表現される音声はスピーカから再現される。補助データ・コンポーネント信号は、遠隔地で適切な回路により処理され、意図したように使用される。たとえば、補助データ・コンポーネント信号の1つがクローズド・キャプション情報を表わす場合、クローズド・キャプション画像を表わすビデオ信号が生成され、この画像信号はビデオ信号コンポーネントを表わす画像信号と組み合され、組み合された画像信号で表現される画像は表示画面上に表示される。
【0005】7つのコンポーネント信号を組み合せるために使用する装置は、伝送ストリーム・エンコーダと呼ばれる。国際標準化機構ISO/IEC JTC1/SC29/WG11発行の、1993年9月の「MPEG−2システム試案(ISO/IEC/JTC1/SC29/WG21/N0531)」と題する、動画および関連オーディオの符号化試案では、伝送ストリーム・エンコーダのブロック図が示されている。このブロック図には、7種類のデジタル・データ信号コンポーネントを表わすデータを一時的に緩衝し、7つの信号コンポーネントのうちの選択した1つを表わすデータを作成するための、入力先入れ先出し(FIFO)バッファおよびデータ・セレクタを含む。このデータはパケタイザ(packetizer:パケット化部)に供給される。スケジューラは、信号コンポーネントのどれを次のパケット・スロットへ入れるか、後述する優先順位方式または固定時間スロット方式のいずれかを使って選択する。選択した信号コンポーネントからのデータを含むパケットを形成するには、スケジューラは、データ・セレクタを調整して、選択した信号コンポーネントの入力FIFOの出力端子をパケタイザへ結合し、この入力FIFOを調整してパケットに入れるべきデータを作成する。得られたパケットは伝送リンク上へ送信する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述の試案に図示されている伝送ストリーム・エンコーダの問題点は、伝送されるパケット・ストリーム内に組み合せることのできる信号数が前述の7種類に制限されていることである。将来の発展において、これら7種類の信号コンポーネントより多くを送信パケット・ストリームへ伝送する必要が出てくるものと思われる。しかしながら試案のシステムは拡張困難である。追加の信号コンポーネントそれぞれに対してFIFOを追加せねばならず、またデータ・セレクタを再設計して追加の入力端子を含める必要があり、追加のコンポーネントを選択し追加コンポーネントのFIFOの出力をパケタイザへ結合するための回路も同様に拡張しなければならない。
【0007】本発明において望まれるものは、複雑な再設計を必要とせずに、さらなる信号コンポーネントのために拡張できる伝送ストリーム・エンコーダである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の原理によれば、伝送ストリーム・エンコーダはコンポーネント信号供給源に結合した複数バッファ(例:FIFOバッファ)を含む。バッファのそれぞれは、コンポーネント信号データを作成するためのデータ出力端子を有する。パケタイザは、コンポーネント信号データを受信するためのデータ入力端子を有し、パケット・ストリームを作成する。データ・バスはFIFOバッファのデータ出力端子およびパケタイザのデータ入力端子へ共通に結合される。
【0009】本発明による伝送ストリーム・エンコーダは、データ・バスへさらに、(FIFO)バッファを取り付けることにより、なんらの大規模な再設計を必要とせずに、多数のコンポーネント信号に対応できるように容易に拡張される。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は、本発明による伝送ストリーム・エンコーダのブロック図である。図1において、図示した信号線は、単一または多数ビットのデジタル信号線を表わす。他の信号、たとえばクロックや制御信号と、他の要素たとえばクロック生成器や同期回路は、図面を簡略化するために図示していない。図示していないがデジタル・システム設計の当業者には、どのような信号が必要とされ、どのように信号を生成してシステム内の適切な場所に分配するかは理解されよう。
【0011】図1において、1つまたはそれ以上のプログラム供給源(図示せず)は、対応する複数の入力端子5にそれぞれ結合された、複数のN個のデジタル信号コンポーネントを作成する。プログラム供給源は、たとえばMPEGエンコーダ等のデータ圧縮ネットワークを含み得る。第1、第2および第3の信号コンポーネントは、それぞれ入力端子2、4および6に結合される。N番目の信号コンポーネントは入力端子Nに結合される。図1において、信号コンポーネントはHDTVまたは衛星TVプログラムを表わす。入力端子2、4および6に結合された第1、第2および第3の信号コンポーネントは、ビデオ信号V、オーディオ信号Aおよびクローズド・キャプション情報信号CCをそれぞれ表わしている。このようなプログラム供給源、その動作、および、これらが作成するビデオ、オーディオ、デジタルデータ信号は周知であるから、詳細にわたる説明は行なわない。
【0012】複数の入力端子5は、それぞれ対応する複数のFIFOバッファ10のデータ入力端子DIへ結合してある。入力端子2、4、6およびNは、それぞれFIFOバッファ12、14、16および1Nのそれぞれのデータ入力端子DIへ結合される。FIFOバッファ12、14、16および1Nのデータ出力端子DOそれぞれは、共通にデータ・バス20へ結合される。データ・バス20は、パケタイザ30のデータ入力端子へも結合される。パケタイザ30の出力端子は出力端子15へ結合される。出力端子15は、パケット・ストリームを処理し、これを遠隔地へ放送するための伝送リンク(図示せず)ヘ結合する。伝送リンクとその動作は周知であり、詳細にわたる説明は行なわない。伝送リンクは、符号化、スペクトル整形および変調器ネットワーク等の送信処理ネットワークを含むことがある。
【0013】スケジューラ・コントローラ50は、レディ信号入力端子Rと、識別子信号IDおよびイネーブル信号Eの出力端子を含む。複数のFIFOバッファ10のそれぞれのレディ出力端子Rは、それぞれスケジューラ・コントローラ50のレディ入力端子Rへ共通に結合される。スケジューラ・コントローラ50の識別子出力端子IDは、複数のFIFOバッファ10のそれぞれの識別子入力端子IDそれぞれに共通に結合され、スケジューラ・コントローラ50のイネーブル出力端子Eは、複数のFIFOバッファ10のそれぞれのイネーブル入力端子Eそれぞれに共通に結合される。レディR、識別子IDおよびイネーブルE端子を共に結合する信号線は、制御バス22を形成し、これがデータ・バス20と連係して動作する。パケタイザ30の開始信号出力端子Sは、スケジューラ・コントローラ50の開始信号入力端子に結合される。メモリ70はスケジューラ・コントローラ50に結合される。
【0014】ユーザ入力端子25は、コンピュータ端末(図示せず)等のユーザ入力の供給源へ結合でき、マイクロプロセッサ(μP)60の入力ポートに結合される。μP60は、スケジューラ・コントローラ50の制御入力端子Cに結合する制御出力ポートを有する。1つの実施例において、スケジューラ・コントローラ50は周知の様態で、スタンドアロン型制御装置として製作することができる。この実施例では、スケジューラ・コントローラ50は、直接メモリ70へ結合し、μP60から制御情報だけを受信するそれ自身のプロセッサを含み、メモリ70への情報の格納と情報の取り出しを制御する。第2の実施例において、スケジューラ・コントローラ50は、μP60のシステム・バス(図示せず)に結合したI/Oアダプタとして動作する。この実施例では、スケジューラ・コントローラ50はμP60で実行するプログラムの制御下で動作する。メモリ70は、図1R>1の破線で図示したように、μP60のシステム・バス(図示せず)に結合され、μP60がメモリ70への情報格納および情報取り出しを制御する。
【0015】動作において、パケタイザ30は、直列のパケットのストリームを作成する。それぞれのパケットは、コンポーネント信号の1つからのデータを含むか、または、パケットが形成される時点でそのコンポーネントのFIFOに十分なデータがない場合には、ヌル・パケットを含む。パケット・ストリームは、パケット・スロットの連続したグループに分割され、それぞれのグループは所定数のパケット・スロットを有する。スケジューラ・コントローラ50は、どの信号コンポーネントがそれぞれのパケット・スロットに挿入されるかを制御する。以下で詳細に説明するように、スケジューラ・コントローラ50は、一組の許容できる信号コンポーネントのリストを含み、それぞれのパケット・スロットにリスト1つづつある。リストの組は、スケジューラ・コントローラ50に付属するメモリ内に格納される。スケジューラ・コントローラ50がμP60のI/Oアダプタとして動作する場合、リストの組はμP60内のRAM(図示せず)に格納され、それ以外の場合には、スケジューラ・コントローラ50は、このリストの組を含むために自分自身のメモリを含む。どこに格納されるかとは無関係に、このリストの組の内容は、周知の方法で、ユーザ入力端子25からμP60を経由しての入力により保持される。
【0016】それぞれのFIFOバッファ10は、所定のユニークなアドレスまたは識別値を有しており、スケジューラ・コントローラ50は、前述の許容できる信号コンポーネントのリストの一部として、それぞれのFIFOバッファ10の識別値をリスト内に保持する。パケット・スロットを埋める時間になったら、そのパケット・スロットについて許容できる信号コンポーネントのリストを検討する。スケジューラ・コントローラ50は、第1の信号コンポーネントのFIFOバッファ10に対する所定のユニークな識別値を含む識別信号をID信号線上に置く。識別信号は、全てのFIFOバッファ10のID入力端子により共通に受信される。あるFIFOバッファ10のID入力端子により受信した識別信号がそれ自体の識別値と一致した場合、レディ出力端子RにFIFO内にパケットを埋める十分なデータがあるかどうかを表わすレディ信号を生成する。それ以外の場合では識別信号を無視し、FIFOバッファ10は休止状態である。
【0017】スケジューラ・コントローラ50は、レディ入力端子Rでレディ信号を受信する。レディ信号が、パケットを構成するだけの十分なデータがアドレスしたFIFOバッファ10にないことを表わす場合、リスト内の許容できる信号コンポーネントの次のエントリがアドレスされ、この次のエントリ中の所定のユニークな識別値を有する識別信号が識別信号線に置かれ、レディ信号が同様に分析される。パケットを形成するのに十分なデータを有するFIFOバッファ10が見つかるまで、またはリスト内にエントリがなくなるまで、この処理を繰り返す。
【0018】パケタイザ30は、開始出力端子Sに開始信号を生成してパケット・スロットの開始時刻を示す。パケットを形成するのに十分なデータを有するFIFOバッファ10が見つかった場合、開始信号がスケジューラ・コントローラ50で受信された時点で、イネーブル信号がイネーブル出力端子Eに作成される。アドレスされたFIFOバッファ10はイネーブル信号に応答し、他のアドレスされていないFIFOバッファ10はこれを無視して休止状態を続ける。イネーブル信号に応答して、そのFIFOバッファ10のデータ出力端子DOがイネーブルとなり、FIFOバッファ10からのデータはデータ・バス20に供給される。パケタイザ30は、データ・バス20からのこのデータを受信してそのデータを含むパケットを生成する。パケタイザがパケットを生成している間に、スケジューラ・コントローラ50は、複数のFIFOバッファ10を検査して、次のパケット・スロットの内容を決定する。しかし、リスト上のFIFOバッファ10のどれもがパケットを埋めるのに十分なデータを有していない場合、そのパケット・スロットに対してヌル・パケットが作成される。
【0019】図2は、図1に図示した伝送ストリーム・エンコーダで使用するFIFOバッファ10のさらに詳細なブロック図である。図2において、信号線は単一のまたは複数ビットのデジタル信号を表わす。他の要素および信号、たとえば同期用および/または刻時用は、図面を簡略化するために図示していない。デジタル回路設計の当業者には、どのような要素と信号が必要で、図示した要素をどのように設計し相互接続するかは理解されよう。
【0020】図2において、FIFOバッファ10のデータ入力端子DIはFIFO102の入力端子に結合される。FIFO102の出力端子OはFIFOバッファ10のデータ出力端子DOに結合される。識別子入力端子IDはアドレス比較器104のアドレス入力端子に結合される。アドレス比較器104の第1の出力端子はバッファ/ドライバ106のイネーブル入力端子に結合され、アドレス比較器104の第2の出力端子は2入力ANDゲート108の第1の入力端子に結合される。FIFO102のフル出力端子Fはバッファ/ドライバ106のデータ入力端子に結合される。バッファ/ドライバ106のデータ出力端子はFIFOバッファ10のレディ出力端子Rに結合される。FIFOバッファ10のイネーブル入力端子EはANDゲート108の第2の入力端子に結合される。ANDゲート108の出力端子はFIFO102の出力イネーブル入力端子に結合される。
【0021】動作において、アドレス比較器104は、制御バス22経由で(図1の)スケジューラ・コントローラ50のID出力端子からの識別信号を受信する。周知の方法で、受信した識別信号をアドレス比較器104内においてこのFIFOバッファ10に割り当てた所定のユニークな識別値と比較する。受信した識別信号がこのFIFOバッファ10の識別値と同一の場合、アドレス比較器104の第1と第2の出力端子における信号は、FIFOバッファ10がアドレスされることを表わす第1の状態である。それ以外では、アドレス比較器104の第1と第2の出力信号における信号は、第2の状態を有し、このFIFOバッファがアドレスされていないことを表わす。デジタル回路設計の当業者には、データ・バスの物理的または論理的配置とは無関係に、他のFIFOバッファ10に割り当てた識別子と互いに異なる識別子であれば、それぞれのFIFOバッファ10にどんな識別子でも予め割り当てておけることが理解されよう。
【0022】FIFO102は、入力端子Iでデータを受信し、周知の方法で内部にこれを一時的に格納する。フル出力端子Fの信号は、これも周知の方法で、FIFO102に現在格納されているデータ量の指標を与える。(図1の)パケタイザ30がパケットを形成するのに十分なデータがFIFO102にある場合、フル出力端子Fの信号は第1の状態を有し、それ以外の場合第2の状態を有する。スケジューラ・コントローラ50がFIFOバッファ10をアドレスさせる場合、アドレス比較器104からのバッファ/ドライバ106のイネーブル入力端子の信号により、バッファ/ドライバ106は、FIFO102のフル出力端子Fからの信号をFIFOバッファ10のレディ出力端子Rに渡すことになる。FIFOバッファ10がアドレスされない場合、バッファ/ドライバ106のイネーブル入力端子の信号により、バッファ/ドライバ106は、出力端子を高インピーダンス状態とし、基本的に制御バス22からFIFOバッファ10を切り放す。この方法で、アドレスされたFIFOバッファ10だけが制御バス22のレディ信号線Rに信号を置くことができる。
【0023】FIFO102は、イネーブル入力端子Eにおける適切な信号によりイネーブルになると、内部に現在格納しているデータをデータ出力端子Oに作成する。FIFOバッファ10がアドレスされるとき、アドレス比較器からANDゲート108の第1の入力端子への信号は、論理値「1」信号である。これにより、ANDゲート108は、FIFOバッファ10のイネーブル入力端子Eからの第2の入力端子の信号を出力端子に渡し、さらに、FIFO102のイネーブル入力端子Eへ渡すことになる。FIFOバッファ10がアドレスされないとき、アドレス比較器104からの信号は論理値「0」信号である。これにより、ANDゲート108は、出力端子に信号論理値「0」信号を作成し、FIFO102の出力端子Oをディスエーブルにする。この方法で、(図1の)スケジューラ・コントローラ50によりイネーブルになったときに、アドレスされたFIFOバッファ10のみが自分のデータ出力端子DOにデータを作成する。
【0024】どのような信号を次のパケットに挿入するか選択するため、スケジューラで用いるテクニックは、優先順位方式と固定時間スロット方式の複合である。図3R>3は、パケット・スロットにコンポーネント信号を表わすデータを割り当てるため、スケジューラ・コントローラ50において保持される前述した一組のテーブルを表わすメモリ配置図である。図3において、(図1の)パケタイザ30で作成されたパケット・ストリーム110の一部が図面の上部に図示してある。図示された部分のパケット・ストリーム110において、それぞれのパケットは四角により表現してある。パケット・ストリーム110は、それぞれが決まった所定数Mのパケット・スロット、すなわちスロット1、スロット2、スロット3からスロットMを含むグループに分割される。このパケット・スロットのグループはパケット・ストリーム110内で連続的に反復する。つまり、図示したスロットMの直後のパケットは次のグループのスロット1である。
【0025】サービス・テーブル130は、放送システムで放送されるコンポーネント信号のそれぞれに対するエントリを含む。それぞれのエントリはコンポーネント信号の内容と識別子IDを含む。図示したサービス・テーブル130では、第1のエントリVIDEO 1 が第1のプログラムのビデオコンポーネントを表わし、識別子1を有する。第2のエントリAUDIO 1 は第1のプログラムのオーディオコンポーネントを表わして識別子2を有し、第3のエントリCLOSEDCAPTION 1 は第1のプログラムのクローズド・キャプション情報を表わして識別子3を有する。同様に、サービス・テーブル130の第4、第5および第6のエントリ(VIDEO 2 、AUDIO 2 、CLOSED CAPTION 2)は、それぞれ第2のプログラムのビデオ、オーディオおよびクローズド・キャプション情報を表わし、識別子4、5および6を有する。最後に、エントリには放送システム自体で生成されるコンポーネント信号が提供される。たとえば、識別子N−1を有するエントリはプログラム刻時基準信号を運ぶ信号コンポーネントと暗号化鍵とを表わし、識別子Nを有するエントリは各種システム・テーブル(たとえばサービス・テーブル)を運ぶ信号コンポーネントを表わす。
【0026】図1と図2を再び参照すると、図示した実施例では、サービス・テーブル130内のそれぞれのエントリの識別子は、関連するコンポーネント信号を運ぶFIFOバッファ10に予め割り当てた識別番号を参照する。つまり、識別子1(VIDEO 1 )を有するエントリは、図示した実施例において予め割り当てた識別番号「1」を有するいちばん上のFIFOバッファ12に結合したビデオ信号コンポーネントVを参照し、識別子2(AUDIO 1 )を有するエントリは、予め割り当てた識別番号「2」を有するFIFOバッファ14に結合したオーディオ信号コンポーネントAを参照し、識別子3(CLOSED CAPTION 1)を有するエントリは、予め割り当てた識別番号「3」を有するFIFOバッファ16に結合したクローズド・キャプション信号コンポーネントCCを参照する。識別子4、5および6を有するエントリも同様に、第2のプログラム供給源(図示せず)からのビデオ、オーディオおよびクローズド・キャプション信号コンポーネントを参照する。
【0027】パケットストリーム110内のそれぞれのパケット・スロットは、これに関連する優先順位リストを有する。図3では、複数の優先順位リスト120でこれを図示してあり、それぞれがそれぞれのパケット・スロットに関連しており、そして、関連するパケット・スロットの直下に図示してある。優先順位リストとパケット・スロットとの関連は、それぞれの優先順位リストとこれに関連するパケット・スロットの間の矢印で示してある。つまり、優先順位リスト1 122はパケット・スロット1に関連し、優先順位リスト2 124はパケット・スロット2に関連し、優先順位リスト3 126はスロット3に、また優先順位リストM129はパケット・スロットMに関連する。それぞれの優先順位リストは、それぞれが四角で表わされる複数のエントリを含む。それぞれのエントリの内容は、サービス・テーブル130に含まれているコンポーネント信号を表わす識別子(ID)である。
【0028】たとえば、優先順位リスト1 122の第1のエントリID1は、第1のプログラム供給源からのビデオ信号コンポーネントVを表わす識別子「1」を含む。図3において、これは、優先順位リスト1 122の第1のエントリID1とサービス・テーブル130の第1のエントリVIDEO 1 との間の矢印で示してある。優先順位リスト1 122の第2のエントリID2は、第2のプログラム供給源(図1には図示せず)のビデオ信号コンポーネント(これも図示せず)を表わす識別子「4」を含む。これは、図3において、優先順位リスト1 122の第2のエントリID2とサービス・テーブル130の第4のエントリVIDEO 2 の間の矢印で表わしている。優先順位リスト1 122のさらなるエントリ(ID3...)は、たとえば、放送される他のビデオ信号コンポーネント全てについての識別子を同様に含む。
【0029】同様に、優先順位リスト2 124は、たとえばオーディオ・コンポーネント信号の全てを識別するエントリを含む。つまり、優先順位リスト2 124の第1のエントリID1は第1のプログラム供給源からのオーディオ信号コンポーネントAを表わす値2を有し(優先順位リスト2 124のID1からサービス・テーブル130内の第2のエントリAUDIO 1 への矢印で表わしてある)、第2のエントリID2は第2のプログラム供給源からのオーディオ信号コンポーネントを表わす値5を有し(優先順位リスト2 124のID2からサービス・テーブル130の第2のエントリAUDIO 2 への矢印で表わしてある)、と言うように続く。優先順位リスト3は、たとえば、優先順位リスト1と同様のビデオ・コンポーネント信号を識別するエントリを含み、優先順位リストで別の位置を有するビデオ信号コンポーネントによるものでありうる。次の優先順位リスト(図示していない)は、たとえば、クローズド・キャプション・コンポーネント信号の全てを識別するエントリを含み、これにさらに別のビデオ信号コンポーネント優先順位リストが続く。最後の優先順位リストMは、たとえば、PCRおよびスクランブル鍵コンポーネント信号N−1とテーブル信号コンポーネントを識別するエントリを含むことがある。
【0030】グループ内のパケット・リスト数とそれぞれのパケット・リストについて関連する優先順位リストへのコンポーネント信号の割り当ては、それぞれのコンポーネント信号のそれぞれのデータ速度を考慮することで最もよく行なえる。つまり、高いデータ速度を有するコンポーネント信号(たとえばビデオ信号コンポーネント)は1つ以上の優先順位リストに割り当てるのでグループ内の1つ以上のパケット・スロットに割り当てられるが、低いデータ速度を有するコンポーネント信号(たとえばオーディオ信号コンポーネント)は1つだけの優先順位リストに割り当てられる。どのようにして、コンポーネント信号を優先順位リストに割り当ててシステムのデータ伝送効率を最適化し、同時にパケット・ストリーム内にヌル・パケットが挿入される確率を最小限に抑えるかは、デジタル・データ送信の当業者には理解されよう。
【0031】動作において、パケット・スロットが発生すると、(図1の)スケジューラ・コントローラ50はそのパケット・スロットについて優先順位リストを検討する。スケジューラ・コントローラ50は、その優先順位リストの第1のエントリから識別子を抽出し、制御バス22のID信号線にその識別子を表わす識別信号を置く。アドレスされたFIFOバッファ10は、(図2の)FIFO102のフル出力端子Fからの信号を制御バス22のレディ信号線に送出することで応答する。アドレスされたFIFOバッファ10がパケットを形成するのに十分なデータを有することをレディ信号が表わしていれば、スケジューラ・コントローラ50は、パケタイザ30からの開始信号を待ち、開始信号を受信すると、制御バス22のイネーブル信号線にイネーブル信号を生成する。イネーブル信号に応答し、アドレスされたFIFOバッファ10がそのパケット・スロットにデータを作成し、全て前述したように、データはデータ・バス20を経由してパケタイザ30へ送信される。
【0032】一方、アドレスされたFIFOバッファ10がパケットを形成するのに十分なデータを有していないことをレディ信号が示す場合、スケジューラ・コントローラ50は、優先順位リスト120の次のエントリからそのパケット・スロットに対する識別子を抽出して、その識別子を表わす信号を制御バス22のID信号線に置き、新たにアドレスされたFIFOバッファ10からのレディ信号を待つ。アドレスされたFIFOバッファ10の1つが、パケットを形成するのに十分なデータを有することを表わすレディ信号を受信するか、または、優先順位リスト内の最後のエントリを処理するまで、これを繰り返し、最後のエントリの場合には、ヌル・パケットがパケット・スロットに送出される。さらに、同じ手順を次のパケット・スロットに対する優先順位リストで行なう。
【0033】入力FIFOバッファをパケタイザへ結合するためにデータ・バスを使用する伝送ストリーム・エンコーダは、エンコーダへさらなるFIFOバッファを容易に追加するのに必要な柔軟性を提供する。新たなFIFOバッファは、制御バスおよびデータ・バスへ結合され、すでにバス上にあるFIFOバッファの識別子とは異なる識別子が割り当てられる。さらに、本発明による伝送ストリーム・エンコーダにおいては、多数のFIFOバッファをパケタイザに接続することができるので、多数のコンポーネント信号を伝送リンク上に送信することができる。
【0034】コンポーネント信号をパケット・スロットへ割り当てる複合方式は、大きな柔軟性を提供する。これによって、放送業者は、必要とするスループットをそれぞれのコンポーネント信号に提供すると同時に、送信されるヌル・パケットの数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による伝送ストリーム・エンコーダのブロック図である。
【図2】図1の伝送ストリーム・エンコーダで使用するFIFOバッファのさらに詳細なブロック図である。
【図3】パケット・スロットをコンポーネント信号に割り当てるためのスケジューラ・コントローラにおいて、保持される一組のテーブルを示すメモリ配置図である。
【符号の説明】
5 入力端子
10 FIFOバッファ
20 データ・バス
22 制御バス
30 パケタイザ
50 スケジューラ・コントローラ
60 マイクロプロセッサ
70 メモリ
102 FIFO
104 アドレス比較器
106 バッファ/ドライバ
108 2入力ANDゲート
110 パケット・ストリーム
120 優先順位リスト
130 サービス・テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンポーネント信号のそれぞれの供給源に結合され、それぞれがコンポーネント信号データを作成するためのデータ出力端子を有する複数のバッファと、コンポーネント信号データを受信するためのデータ入力端子を有し、パケット・ストリームを作成するためのパケタイザと、前記複数のバッファの前記それぞれのデータ出力端子と前記パケタイザの前記データ入力端子へ共通に結合され、前記バッファから前記パケタイザへ出力データを運ぶためのデータ・バスとを備える伝送ストリーム・エンコーダ。
【請求項2】 前記複数のバッファに結合され、前記複数のバッファの1つを選択してデータ出力端子にコンポーネント信号データを前記パケタイザへ供給し、パケットを作成するためのスケジューラ・コントローラをさらに含む請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】 前記バッファがFIFOバッファであり、前記複数のバッファのそれぞれ1つは、前記複数のFIFOバッファの1つがパケットを作成するのに十分なデータを含むかどうかを表わすフル信号を作成するためのさらなる出力端子を有し、前記スケジューラ・コントローラは、前記複数のバッファの1つを選択し、前記複数のバッファからのそれぞれのフル信号に応答して、前記バッファのデータ出力端子にコンポーネント信号データを作成することを含む請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】 前記複数のバッファのそれぞれ1つは、所定のユニークな値で識別され、識別信号を受信するための識別入力端子を有し、前記所定のユニークな値を有する識別信号に応答して前記フル信号を作成し、前記スケジューラ・コントローラは、前記複数のバッファの前記それぞれの識別入力端子に結合した識別出力端子を有し、前記選択したバッファの前記所定のユニークな値を有する識別信号を作成することを含む請求項3に記載のエンコーダ。
【請求項5】 前記パケット回路はパケット・スロットのはじまりを表わす開始信号を作成する出力端子を有し、前記複数のバッファのそれぞれ1つは入力端子を有し、これでイネーブル信号を受信し、これにより前記バッファのデータ出力端子にコンポーネント信号データを作成し、前記スケジューラ・コントローラは前記開始信号に応答して、前記選択したバッファに対してイネーブル信号を作成することを含む請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項6】 前記複数のバッファのそれぞれは、所定のユニークな値で識別され、識別信号を受信するためのさらなる入力端子を有し、前記所定のユニークな値を有する識別信号および前記イネーブル信号の両方に応じて、前記バッファのデータ出力端子にコンポーネント信号データを作成し、前記スケジューラ・コントローラは、前記複数のバッファのそれぞれの識別信号入力端子に結合した識別信号出力端子を有し、前記選択したバッファの前記所定のユニークな値を有する識別信号を作成することを含む請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】 前記複数のバッファのそれぞれ1つは、前記複数のバッファの1つがパケットを作成するのに十分なデータを含むかどうかを表わすフル信号を作成するためのさらなる出力端子を有し、前記スケジューラ・コントローラは、前記複数のバッファの前記1つを選択し、前記複数のバッファからの前記それぞれのフル信号に応答して、前記バッファのデータ出力端子にコンポーネント信号データを作成することを含む請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項8】 それぞれのバッファは、所定のユニークな値で識別され、識別信号を受信するための識別入力端子を有し、前記所定のユニークな値を有する識別信号に応答して前記フル信号を作成し、前記所定のユニークな値を有する識別信号と前記イネーブル信号の両方に応答して、前記バッファのデータ出力端子にコンポーネント信号データを作成し、前記スケジューラ・コントローラは、前記複数のバッファの前記それぞれの識別入力端子に結合した識別出力端子を有し、前記選択したバッファの前記値を有する識別信号を作成することを含む請求項7に記載のエンコーダ。
【請求項9】 前記スケジューラ・コントローラへ結合され、前記複数のバッファの前記1つを選択して前記パケタイザへコンポーネント信号データを供給するときに、前記スケジューラ・コントローラの動作を制御するために用いられるユーザ情報の供給源をさらに含む請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項10】 前記ユーザ情報の供給源はマイクロプロセッサを含む請求項9に記載のエンコーダ。
【請求項11】 前記スケジューラ・コントローラは、前記マイクロプロセッサと独立して動作し、前記メモリへ直接結合されることを含む請求項10に記載のエンコーダ。
【請求項12】 前記スケジューラ・コントローラは、システム・バスにより前記マイクロプロセッサに結合され、前記マイクロプロセッサの制御下でI/Oアダプタとして動作し、前記メモリは、前記システム・バスを介して前記マイクロプロセッサへ結合されることを含む請求項10に記載のエンコーダ。
【請求項13】 前記ユーザ情報を表わすデータを格納するためのメモリをさらに含み、前記スケジューラ・コントローラは、前記複数のバッファの前記1つを選択して前記パケタイザへコンポーネント信号データを供給するとき、以前に格納したユーザ情報を表わすデータを取り出すことを含む請求項9に記載のエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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