説明

容量劣化を低減しサイクル寿命を改善した充電可能なアルカリ・マンガン電池

【課題】 50回のディープ放電・充電サイクルの後、0.100Ah/MnO以上の放電キャパシティを有する充電可能な電気化学電池を提供する。
【解決手段】 本発明の充電可能な電気化学電池は、二酸化マンガン製のカソードと、亜鉛製のアノードと、水酸化ポタシウムの電解質とを有する。本発明のカソードは、サイクル寿命と蓄積放電容量を増加させるための添加化合物を含有する。この添加化合物は、少なくともストロンチウム化合物と、バリウム化合物と/またはカルシウム化合物とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化マンガン(MnO)の正電極材料と、水酸化ポタシウム(KOH)の電解質材料と、亜鉛(Zn)の負電極材料を有する充電可能なアルカリ電池、特にサイクル寿命を改善し、累積的性能を改善する添加物を含有する電池(バッテリ)のカソードの成分組成に関する。
【背景技術】
【0002】
一次と二次(充電可能)の二酸化マンガンベースのアルカリ電池は公知である。このアルカリ電池は、活性材料として二酸化マンガンを含有する正電極と、活性材料として亜鉛を含有する負電極と、電解質として水酸化ポタシウムの水溶液と、前記正電極と負電極との間のセパレータとを有する。
【0003】
正電極におけるMnOの充電問題を解決するために、亜鉛電極に制約を課すことにより電池の放電容量を制限する電池が開発されている。MnO製のカソードの再充電の問題により、これらの電池は、ディープ放電に対し、キャパシティ・フェード(容量劣化)を受け、その結果、各放電・充電サイクルの後で利用できる放電時間が連続して減少することになる。電池のエンドユーザは、この放電時間の減少を使用できなくなったものと判断し、電池をまだ使用できるにもかかわらず廃棄する傾向にある。容量劣化が発生することは、二酸化マンガンの電極が完全には再利用可能でないことの証である。このような容量劣化を改善するめに、様々なアプローチが採られている。例えば、様々な添加剤を正電極と負電極に含有させている。
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許第3,337,568号明細書
【特許文献2】国際公開パンフレット第93/12551号
【特許文献3】米国特許第5,300,371号明細書
【特許文献4】米国特許第6,361,899号明細書
【特許文献5】米国特許出願第2005/0164076号明細書
【特許文献6】米国特許第5,272,020号明細書
【0005】
特許文献1は、チタンを添加した電解質の二酸化マンガンを生成する方法を開示する。このようなチタンを添加したMnOは、充電可能な二酸化マンガン/亜鉛電池で使用すると有効である。
【0006】
特許文献2は、一次と二次のアルカリ二酸化マンガン電池の改良を開示する。この電池は、MnOの正電極材料の3%−25%のバリウム化合物を含有する。
【0007】
特許文献3は、サイクル寿命と性能を改善した充電可能なアルカリ・二酸化マンガン電池を教示する。この電池は、有機バインダと銀化合物とバリウム化合物が、MnOの正電極に添加されている。
【0008】
特許文献4は、正電極組成への添加剤の組成範囲を開示する。この添加剤は、第1添加剤と第2添加剤からなる。この第1添加剤は、バリウム化合物とストロンチウム化合物からなるグループから選択される。第2添加剤は、チタン化合物、ランタン化合物、セリウム化合物、イットリウム亜鉛化合物、カルシウム化合物、すず化合物、マグネシウム化合物からなるグループから選択される。
【0009】
特許文献5は、ハイドロスコピクの添加剤(例えば、バリウムまたはストロンチウムの酸化物(oxide)、水酸化物(hydroxide)、水和物(hydrate))を含有するカソードのペレットをより効率的に処理する疎水性の添加剤の使用を教示する。このようなハイドロスコピック添加剤は、電池の性能を向上させる。例えば電池の累積的放電容量を増やし、サイクル寿命を伸ばす。
【0010】
上記のいずれの文献も、電池性能の向上とサイクル寿命の向上をさせる様々なアプローチを開示するが、充電可能なアルカリ電池は、依然として容量劣化を示し、サイクルの回数が増加するにつれて、使用できる容量が減少する。10−15mA/cmの放電の低いレートに対し中程度レートにおいて、容量劣化は、依然として顕著である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、全体的性能とサイクル寿命が改善されるような充電可能なアルカリ電池のカソード成分組成を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様の充電可能な電気化学電池は、二酸化マンガン製のカソードと、セパレータと、アノードと、アルカリ水溶液の電解質とを有し、前記カソードは、ストロンチウム化合物を、カソードの重量の4.50%−16.10%含有し、前記電気化学電池は、50回のディープ放電・充電サイクルの後、少なくとも0.100Ah/gMnOの放電容量を有する。
【0013】
本発明の他の態様の充電可能な電気化学電池は、二酸化マンガン製のカソードと、セパレータと、アノードと、アルカリ水溶液の電解質とを有し、前記カソードは、ストロンチウム化合物を、カソードの重量の4.50%−16.10%含有し、バリウム化合物を、カソードの重量の有意量以上で1.00%以下含有する。
【0014】
本発明の他の態様の二酸化マンガン製のカソードと、セパレータと、アノードと、アルカリ水溶液の電解質とを有する充電可能な電気化学電池の累積放電容量を向上させる方法は、前記カソードに、ストロンチウム化合物を、カソードの重量の4.50%−16.10%添加する。このストロンチウムが、50回のディープ放電・充電サイクルの後の放電容量を増加させる。
【0015】
本発明は、少なくともストロンチウム化合物を正電極に有する二酸化マンガン−亜鉛の充電可能なアルカリ電池を提供する。本発明の電池は、初期放電において高い放電容量(discharge capacity)を示し、連続した放電・充電サイクルの後の容量劣化(capacity fade)を改善し、長いサイクル寿命(放電・充電サイクルの回数が増える)を示す。これにより、エンドユーザは、電池の利用可能な放電時間が長くなったと感じる。本発明の電池は、50回のディープ放電・充電サイクルの後の放電容量は、少なくとも0.100Ah/gMnOである。
【0016】
本発明の一実施例によれば、本発明は、ストロンチウム・ベースの化合物と、選択的事項としてバリウム・ベースの化合物とを含有する二酸化マンガン製のカソードを有する電池を提供する。バリウム化合物と/またはストロンチウム化合物とは、バリウムと/またはストロンチウムの酸化物、水酸化物、水和物の形態を採る。バリウム・ベースと/またはストロンチウム・ベースの化合物の効果は、カルシウム化合物を添加することにより、さらに改善される。カルシウム化合物は、カルシウムの酸化物、水酸化物、脂肪酸(例、カルシウム・ステアリン酸)を含む。このカルシウム化合物は、単独であるいは他の化合物(例、Coathylene(登録商標)のようなポリエチレン化合物)と一緒に、添加される。これにより触媒の処理を促進させる。以下本明細書と特許請求の範囲と要約書において「%」表示は、特に断らない限り、「重量%」表示である。
【0017】
この化合物は、カソードの4.5%−20.0%、好ましくは5.5%−17.5%、より好ましくは7.15%−17.5%、さらに好ましくは7.15%−9.75%存在する。
【0018】
ストロンチウム化合物は、カソードの4.50%−16.10%、好ましくは5.0%−13.60%、より好ましくは5.75%−11.85%で、さらに好ましくは5.75%−8.35%で、最も好ましくは5.75%−6.75%存在する。このストロンチウム化合物は、酸化ストロンチウムあるいは水酸化ストロンチウムの形態であり、これには、酸化ストロンチウムの水和物と水酸化ストロンチウムの水和物を含む。
【0019】
バリウム化合物は、カソードの有意量以上で1.0%以下存在する。このバリウム化合物は、カソードの0.1%−1.0%存在する。さらにバリウム化合物は、カソードの0.5%−1.0%存在する。さらにバリウム化合物は、カソードの0.75%−1.0%存在する。さらに好ましくはバリウム化合物は、カソードの1.0%存在する。バリウム化合物は、それがある場合、酸化バリウムまたは水酸化バリウムとして提供され、これには酸化バリウムの水和物と水酸化バリウムの水和物を含む。
【0020】
カルシウム化合物は、それがある場合、酸化カルシウム、水酸化カルシウムまたはカルシウム脂肪酸の形態である。このカルシウム化合物は、カソードの有意量以上5%以下含有する。好ましくは、0.1%−1.25%で、より好ましくは0.25%−1.25%で、さらに好ましくは0.25%−0.4%である。一実施例によれば、カルシウム化合物は、酸化カルシウムとして、カソードの0.1%−0.5%、より好ましくは0.2%−0.3%、より好ましくは0.25%含む。この実施例においては、酸化カルシウムは、カソードの処理特性を向上させる化合物が添加される。この化合物は、ポリエチレン化合物、好ましくはCoathylene(登録商標)である。このカソードの処理特性を向上させる化合物は、好ましくはカソードの0.1−0.2%、より好ましくは0.15%含有する。本発明の他の実施例においては、カルシウム化合物は、カルシウム・ステアリン酸として、カソードの0.1%−0.75%含む。より好ましくは0.25%−0.5%、さらに好ましくは0.4%含む。この実施例においては、カルシウム化合物は、カソードの処理能力を向上させるポリエチレン化合物が添加されない。その理由は、カルシウム・ステアリン酸そのものが、この機能を提供するからである。
【0021】
この電池の二酸化マンガン・カソードは、0.1%−5%の水素再結合触媒を含有する。このような触媒は、銀、酸化銀、他の公知の銀化合物、好ましくは銀のグループI化合物を含む。別の構成として、水素再結合触媒は、金属水素化合物、TiNiを含有してもよい。
【0022】
この電池の一回の放電容量は、50回のディープ放電・充電サイクルの後、少なくとも0.100Ah/gMnO、好ましくは少なくとも0.104Ah/gMnO、より好ましくは少なくとも0.114Ah/gMnO、さらに好ましくは少なくとも0.121Ah/gMnOを有する。この電池の累積放電容量は、50回のディープ放電・充電サイクルの後は、少なくとも41.00Ah、好ましくは少なくとも49.00Ah、より好ましくは少なくとも52.00Ah、さらに好ましくは少なくとも53.00Ahである。
【0023】
負電極と正電極がそれぞれ電池の負端子と正端子に接続され、適宜のセパレータにより分離された構造の電池は、ボビン電池、螺旋巻回電池、平面電池、ボタン電池、コイン電池である。
【実施例】
【0024】
図1は、アルカリ充電可能電池10の断面図である。このアルカリ充電可能電池10は次の部品を含む。すなわち、円筒状内側空間を形成するスティール製容器12と、前記スティール製容器12内に収納された複数の円筒状中空ペレット16により形成されるカソード14と、前記カソード14の内側に配置されたアノード・ジェルからなるアノード18と、アノード18とカソード14とを分離する円筒状セパレータ20とを有する。アノードとカソードの間のイオン導電性は、アルカリ充電可能電池10内に所定量添加された水酸化ポタシウムの電解質により得られる。
【0025】
スティール製容器12は底部で閉じられており、正端子として機能する円筒状中央突起部22を有する。スティール製容器12の上部端部は、封止組立体により気密にシールされている。この封止組立体は、薄い金属シート製の負極キャップ24と、前記負極キャップ24に取り付けられ、アノードとの電気的接触を与えるアノード・ジェルに入り込んだ集電具26と、負極キャップ24をスティール製容器12から電気的に絶縁し、カソード構造とアノード構造のそれぞれの上に形成されるガス空間を分離するプラスチック製トップ28とを有する。
【0026】
円筒状セパレータ20が、正電極と負電極との間に配置される。円筒状セパレータ20は、アノードをカソードから機械的に分離し、電解質の貯蔵体として機能する。円筒状セパレータ20は、通常複雑でフレキシブルな構造体であり、亜鉛デンドライト(zinc dendrites)は透過しないが、イオンは透過し、ガス(例、過剰充電状態、スタンバイ状態あるいは過剰放電状態で電池内に発生する水素ガスまたは酸素ガス)を透過する。円筒状セパレータ20は、2枚の層30,32を含む。内側吸収層30は、電解質に濡れ性で繊維性シート材料製であり、外側イオン透過層32は、デンドライトと小さな粒子が浸透できない膜である。内側吸収層30は、例えば、電池ロース繊維、Rayon(登録商標)、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニールアルコール繊維から形成される。内側吸収層30の好ましい材料は、不織のポリアミド(例、フルデンベルグ・グレード(Freudenberug grade)FS2213)である。外側イオン透過層32は、例えば電池ロース、セロファン(Cellophane(登録商標)、放射グラフティッド・ポリエチレン、ポリプロピレン等である。外側イオン透過層32は、比較的薄いセロファン(Cellophane(登録商標)の膜が好ましい。
【0027】
電池の底部部分の封止(シーリング)は、絶縁ワッシャ33を用いて達成される。図1に示すように、この絶縁ワッシャ33は、円筒状中空ペレット16を挿入する前にスティール製容器12の底部部分に当てて配置される。その後、円筒状セパレータ20が挿入され、その底部エッジが絶縁ワッシャ33に当たる。円筒状セパレータ20の底部と絶縁ワッシャ33との間の接触ゾーンは、所定量の熱可塑特性のシール剤を塗布することによりシールされる。適宜のシール剤は、エポキシ、ホットメタル接着剤、アスファルトあるいは他の類似の材料である。このシール剤は、適宜の加熱工具を用いて形成される。この工具は、カソードの円筒状キャビティ内に深く挿入され、接触ゾーンに所定量のシール剤を分布する。シール剤は、固化した後、凹形状を有し、小さな高さと幅を有し、図1では凹状形状34で示す。
【0028】
円筒状セパレータ20とシールの底部の正確な形状は、本発明に必須の事項ではない。シール剤とそのシール方法の他の実施例は、特許文献6に開示されている。
【0029】
カソード材料として酸化マンガンを用いる電池の適宜の活性材料は、電気的あるいは化学的に合成した二酸化マンガンであり、この二酸化マンガンは、4価のマンガンを90%以上含み、低い原子価の酸化物を少量含む。二酸化マンガンの粉末は、添加剤と共に混合され、カソード材料を形成する。このプロセスは、特許文献3に開示されている。電池の性質によっては、正電極は、ペレットの形態にモールドされて、容器内に挿入され、その後再圧縮してもよい。選択的事項として、正電極は、容器内に直接モールドして形成してもよく、あるいは平面状電池、ボタン電池、コイン電池に使用されるような正電極としてロールで形成したり、キャスティングで形成してもよい。
【0030】
亜鉛製の負電極は、粉末の金属亜鉛、または亜鉛合金、選択的事項として適宜のジェル剤を含む酸化亜鉛を含む。ジェル剤は、カーボキシメチル・セルロース、ポリアクリル酸、スターチあるいはその派生物を含む。電池内の亜鉛酸塩のモビリティは、負電極混合物への添加剤を用いることにより、減らすことができる。この添加剤は、例えばマグネシウム化合物、バリウム化合物、カルシウム化合物(通常のその酸化物あるいは水酸化物あるいはそれらの混合物)を1%から30%含有する。これに関しては特許文献3に開示されている。
【0031】
電解質は、通常4Nから12Nの水酸化ポタシウムのアルカリ溶液である。電解質は、溶解した酸化亜鉛(ZnO)のような添加物を含み、負電極内での活性亜鉛のガス化を押さえ、損傷を与えることなく電池の過充電ができるようにする。ZnOを選択的に電池内に予備質量として含んでもよい。
【0032】
上で議論したように、カソード材料への様々な添加剤が、充電可能な電池の容量劣化を押さえ、サイクル寿命を増加させ、これにより累積的放電容量を増加させることがわかってきた。この主な添加剤は、バリウム化合物、ストロンチウム化合物、カルシウム化合物であり、その添加量は、カソードの0.1%から20.0%の範囲である。バリウム化合物、ストロンチウム化合物、カルシウム化合物は、電池の中で、例えば水酸化物、酸化物、水和物の形態で存在するのが好ましい。
【0033】
様々な添加化合物の量は、電池のサイズに依存して変わる。例えば厚い電極層を有する「D」サイズの電池は、「AA」サイズの電池よりもより多くの添加剤を含む必要がある。一般的に、添加剤の量は、カソードの電極層の厚さの増加割合に応じて増加する。例えば4mmのカソード電極の厚さでは、2mmのカソード電極の厚さの添加剤の量の2倍の量の添加剤を必要とする。
【0034】
本発明の電池は、他の添加剤を含有してもよい。その目的は、二酸化マンガンの導電性と正電極の構造的完全性を高めるため、あるいは電極の水素再結合を高めるためである。この添加剤の一例は、特許文献3と5に開示されている。例えば二酸化マンガン製の電極は、少なくとも1種類の添加剤、例えばグラファイト、カーボン・ブラック、無機バインダ、有機バインダ(例、Coathylene(登録商標))、または少なくとも1種類の酸化銀(I)を含む添加剤を含んでもよい。
【0035】
以下の一例は、当業者が本発明の原理および利点を理解するために示すものである。これらの実施例は、特許請求の範囲を限定するためのものではない。
【0036】
実験例1
「AA」サイズの充電可能なアルカリ電池を特許文献3に開示した方法で用意した。但し様々な添加剤を正電極材料と組み合わせた。この実験例においては、4個の従来技術(Prior Art 1-4 )のカソード組成と本発明の5個のテスト・グループ(Test #1-5)のカソード組成と比較した。
【0037】
テーブル1aに示すように、従来の電池の添加剤は、BaSOとBaSO/CaOの組み合わせを含む。Prior Art 1は、現在市販されている充電可能なアルカリ電池の通常の組成として選択したものであり、特許文献2に基づく。最適の全体的AAの組成は、表3に示すように、5%BaSOであり、これはPrior Art 1である。Prior Art 2と3の実験例は、特許文献4に基づいて行ったものであり、2種類の添加剤を加えることがより良好な性能が得られることを教示する。Prior Art 2の実験例の組成はBaSOを第1添加剤としてCaOを第2添加剤として用いた特許文献4の実験例3からモデル化したものである。本明細書で一貫した方式の全ての組成の実験例を示すために、特許文献4の実験例3の「EMDへ添加された%」の表現は、「カソードへ添加された%」に変換した。こうするために、実験例3の組成のEMD量を数学的に決定しなければならない。EMDの量の決定方法は当業者に公知であり、実験例3では、79.5%で計算された。このEMD容量においては、カソードに添加された%は次式に基づいて計算された。
カソードに添加された%=EMDに添加された%×0.795
【0038】
それ故に、特許文献4の実験例3のカソードに添加された%は、5%のBaSOと1%のCaOであった。これらの添加剤レベルは、Prior Art 2で用いられた。Prior Art 3の実験例は、より多量のBaSOと少量のCaOで、この発明のTest#4、#5、#9と同一の全添加量レベルを模擬した。Prior Art 4は、再び特許文献2に基づく。AAサイズの電池に対する最適の10オームの結果は、15%のBaSOの添加剤で30回のサイクル・テストで達成された。それ故に15%BaSOレベルは、Prior Art 4で採用した。
【0039】
比較対照のTestグループは、バリウム・水和物(Ba(OH)*8HO)、ストロンチウム・水和物(Sr(OH)*8HO)と酸化カルシウム(Cao)の混合物を含み、その量は表1aの下部分に示した通りである。バリウムまたはストロンチウムの水和物添加物を含む比較対照のTestグループは、カソード・ペレット圧縮特性を改善するために、0.15%のコーチレン(Coathylene(登録商標))HA1681添加剤を有する。これは、特許文献5に開示されている。全てのケースにおいて、添加剤は、活性の電解質二酸化マンガン(active electrolytic manganese dioxide (EMD))材料の一部を置換するが、全電池材料の容積は一定レベルに維持され、アノード・キャパシティも同様に一定レベルに維持されるよう行われた。その結果、理論的な「1個の電子(one-electron)」のカソード・キャパシティ(308mAh/gMnO)は、添加剤の量を増やすことにより、減少し、アノード・キャパシティのカソード・キャパシティに対するキャパシティ・バランス(バランス=アノードAh/カソードAh)は、表1aに示すよう増加した。
【0040】
各グループから選ばれたテスト電池の様々なセット(組)に対し、サイクル・テストを実行した。このテストは、10オームの負荷抵抗に0.9Vのカットオフ電圧まで連続的に電流を流し、その後、12時間1.75Vまで再充電した。これが、1回の完全ディープ放電・充電サイクルである。10オームの負荷は、90−150mAの中間放電レートあるいは約10−15mA/cmを表し、充電可能なアルカリ電池の容量劣化となる傾向がある。この12時間1.75Vの再充電方式は、特許文献5に開示された新たな充電アルゴリズムで達成することのできる性能を模擬する。このテスト電池は、ディープ放電・充電サイクルを50回以上テストした。
【0041】
テーブル1aは、実験例1のカソードの添加剤成分を示し、テーブル1bは、25回目の放電と50回目の放電におけるテスト電池の平均的個別放電キャパシティと、25回のサイクルと50回のサイクルで得られた累積的放電キャパシティとを示す。用語「累積的放電キャパシティ」とは、テストされたサイクル数にわたって行われた個々の放電キャパシティの和を意味する。この得られたデータは、各グループにおけるテスト毎の4個の電池の平均を表す。
テーブル1a:実験例1のカソードに対する添加剤成分
【表1】


テーブル1b:50回のディープ放電・充電サイクルのサイクル性能

【0042】
表1a、1bから分かるように、比較対照テストtest#1-5の電池は、従来技術で製造された電池よりも大幅に性能が向上している。25回目のサイクルの放電キャパシティは、Prior Art 1の対象標準よりも最大68%良く、最良のPrior Artよりも46%良い。25回のサイクルにわたる累積的な全サービス・キャパシティは、Prior Art 1よりも最大30%良好であり、最良のPrior Artよりも25%良好である。50回目のサイクルにおける個別放電キャパシティは、Prior Art 1の対象標準よりも最大115%良好であり、最良のPrior Artよりも71%良好である。50回のサイクルにわたる累積的な全サービス・キャパシティは、Prior Art 1の対象標準よりも最大51%良好であり、最良のPrior Artよりも38%良好である。
【0043】
Test#3のカソードは、ストロンチウム化合物のみを含有し(即ち、バリウム化合物またはカルシウム化合物は含有しない)、従来技術のグループ#2、#3に対し大幅に改善した性能を示すが、特許文献4の教示にも関わらず、性能向上のために第2の添加剤の利用を必要とする。この第2の添加剤は、性能改善のために、チタン化合物、ランタン化合物、セリウム化合物、イットリウム化合物、亜鉛化合物、カルシウム化合物、すず化合物、マグネシウム化合物を含むグループから選択されたものである。
【0044】
Test#5のカソードは、ストロンチウム化合物とバリウム化合物の混合物のみを含有する。すなわち、カルシウムの化合物は含有しないが、カルシウムの化合物を含有するTest#4よりは若干低い性能を示すが、バリウム化合物とカルシウム化合物の混合物を含み、ストロンチウムの化合物を全く含まないTest#1よりも良好な性能を示す。Test#2は、バリウム化合物、バリウム化合物、ストロンチウム化合物、カルシウム化合物の混合物を含有するが、バリウム化合物とカルシウム化合物の混合物のみのTest#1よりも良好な性能を示す。それ故に、ストロンチウム化合物の存在はより重要である。その理由は、ストロンチウム化合物は、バリウム化合物またはカルシウム化合物あるいはその混合物よりも良好な性能を示すからである。
【0045】
実験例2
AAサイズの充電可能なアルカリ電池を用意し、実験例1と同様にテストした。但し、添加剤の全添加量は、7.9%と9.75%に増加した。これは、テーブル2aに示す通りである。
【0046】
テーブル2aは、25回目と50回目の放電に関するテスト電池の平均個別放電キャパシティと、25回のサイクルの50回のサイクルで得られた累積的放電キャパシティを示す。用語「累積的放電キャパシティ」とは、テストされた回数のサイクルにわたって個々の放電キャパシティの全てを加算した放電キャパシティを意味する。与えられたデータは、各グループにおけるテスト毎の4個の電池の平均を表す。
テーブル2a:実験例2のカソードの添加剤成分


テーブル2b:50回のディープ放電・充電サイクルにわたるサイクル性能

【0047】
テーブル2a、2bから分かるように、添加剤レベルは増加したが、比較対照テストTest#6-8の電池は、従来技術で製造された電池よりも大幅に性能が向上している。25回目のサイクルの放電キャパシティは、Prior Art 1の対象標準よりも最大77%良く、最良のPrior Artよりも55%良い。25回のサイクルにわたる累積的放電キャパシティは、Prior Art 1の対象標準よりも最大33%良好であり、最良のPrior Artよりも28%良好である。50回目のサイクルにおける個々の放電キャパシティは、Prior Art 1の対象標準よりも最大109%良好であり、最良のPrior Artよりも71%良好である。50回のサイクルにわたる累積的放電キャパシティは、Prior Art 1の対象標準よりも最大52%良好であり、最良のPrior Artよりも39%良好である。

【0048】
実験例3
実験例1、2の全ての添加剤レベルは、従来技術に対し性能が改善されているために、AAサイズの充電可能なアルカリ電池を準備し、実験例1と同様にテストを行った。但し、添加剤の全添加量は、7.4%から20%に増加した(テーブル3a)。この一連のテストにおいては、カルシウム・ステアリン酸がコーチレン(Coathylene(登録商標))の代わりに用いられた。これは、特許文献5に開示されたカソード・ペレット圧縮特性を改善するためである。
テーブル3a:実験例3のカソードの添加剤成分

【0049】
テーブル3aから分かるように、添加剤レベルが増加すると、カソード・キャパシティはそれに応じて減少するが、アノード・キャパシティは一定のままである。これにより、電池のバランス(比率)が増加する。Prior Art 1の電池に比較して、カソード・キャパシティは、test#9は、6%減少し、test#10は7%減少し、test#11は11%減少し、test#12とtest#13は16%減少し、test#14は21%減少し、test#15は26%減少し、test#16は30%減少した。
【0050】
テーブル3bは、1回目と25回目と50回目の放電に関するテスト電池の平均個別放電キャパシティと、25回のサイクルの50回のサイクルで得られた累積的放電キャパシティを示す。用語「累積的放電キャパシティ」とは、テストされた回数のサイクルにわたって個々の放電キャパシティの全てを加算した放電キャパシティを意味する。与えられたデータは、各グループにおけるテスト毎の4個の電池の平均を表す。
【0051】
テーブル3bから分かるように、第1回目のサイクル放電キャパシティは、理論的カソード・キャパシティの傾向に従う。より低い理論的カソード・キャパシティは、より低い第1回目のの放電キャパシティとなる。
テーブル3b:50回のディープ放電・充電サイクルにおけるサイクル性能

【0052】
サイクル回数が増加するにつれて、低い初期カソードのテスト・グループはキャッチアップし、良好な性能を提供する。例えばPrior Art1の対象標準に比較すると、test#14は、サイクル1で19%低いキャパシティを示すが、サイクル25では22%良好なキャパシティを示し、サイクル50では57%の良好なキャパシティを示す。累積的放電キャパシティ試験においては、このtest#14は、25回のサイクルでは、Prior Art1の対象標準よりも7%低いが、50回のサイクルでは13%良好である。約25%低い理論的カソード・キャパシティのカソードが達成されたとすると、これらのカソードの有効利用は、遙かに良く、容量劣化は遙かに低い。高い添加剤レベルにおける低い容量劣化の特性は、電池の設計に応用され、高い初期キャパシティが必要とされないが、低い容量劣化が好ましいような電池の設計に利用される。
【0053】
容量劣化特性は、test#15、#16に対しては非常に良好であり、サイクル50の放電キャパシティは、Prior Art1の対象標準よりも良好であるが、50回のサイクルの累積放電キャパシティでは、全サービス・キャパシティの利点が見いだせない。それ故に、全添加剤の上限は17.5%であった。
【0054】
テーブル3cは、添加剤レベルが高いテスト・グループの容量劣化が低い状態を示す。この放電キャパシティは、活性MnO1グラム(g)当たりのキャパシティ(Ah/gMnO)に変換される。この表記は、様々なテスト・グループは、異なるMnOキャパシティを有することを考慮に入れたもので、第1のサイクル放電キャパシティは、多かれ少なかれ等価である。しかし、サイクルが進むにつれて、全てのテスト・グループの活性MnOの単位グラム当たりの正規化したキャパシティは、どの従来技術の対象標準よりも遙かに良好となる。
テーブル3c:50回のディープ放電・充電サイクルにわたる正規化したサイクル性能

【0055】
Test#12、#13は、ストロンチウム化合物とバリウム化合物とカルシウム化合物の混合物と、ストロンチウム化合物とカルシウム化合物の混合物でバリウム化合物を含まない、全添加剤レベルが12.25%における比較を示す。この添加剤が高いレベルにおいては、バリウムのないtest#13は、バリウム化合物を有するtest#14よりも、50回のサイクルにわたって良好な性能を示す。このことは、添加剤のレベルが高いところでは、バリウム化合物は、良好な性能を得るためには、必要ないことを示している。
【0056】
テーブル3cは、Test#9から#16の全ての組成は、特定のMnOマス・ベースで遙かに改善された効率を示す。これは、全添加量が20%では、絶対キャパシティ値(テーブル3bで与えられる)は、最良の従来組成よりも低い。それゆえに、さらなる添加剤は、この添加量以上では実際的な利点はない。
【0057】
上記したように、本発明は上記の目的を達成するために十分適用可能であり、且つ本発明の構造に特有な他の利点と共に本発明を説明した。
【0058】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例による電池の断面図。
【符号の説明】
【0060】
10 充電可能アルカリ電池
12 スティール製容器
14 カソード
16 円筒状中空ペレット
18 アノード
20 円筒状セパレータ
22 円筒状中央突起部
24 負極キャップ
26 集電具
28 プラスチック製トップ
30 内側吸収層
32 外側イオン透過層
33 絶縁ワッシャ
34 凹状形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化マンガン製のカソードと、セパレータと、アノードと、アルカリ水溶液の電解質とを有する充電可能な電気化学電池において、
前記カソードは、ストロンチウム化合物を、カソードの4.50%−16.10%含有し、バリウム化合物を、カソードの0%を超え1.0%未満含有し、
前記ストロンチウム化合物は、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウムまたはその水和物からなり、
前記バリウム化合物は、酸化バリウム、水酸化バリウムまたはその水和物からなり、
前記電気化学電池は、50回のディープ放電・充電サイクルの後0.100Ah/gMnO以上の放電容量を有する
ことを特徴とする充電可能な電気化学電池。
【請求項2】
前記電気化学電池は、50回のディープ放電・充電サイクルの後0.104Ah/gMnO以上の放電容量を有する
ことを特徴とする請求項1記載の電気化学電池。
【請求項3】
前記電気化学電池は、50回のディープ放電・充電サイクルの後0.114Ah/gMnO以上の放電容量を有する
ことを特徴とする請求項2記載の電気化学電池。
【請求項4】
前記電気化学電池は、50回のディープ放電・充電サイクルの後0.121Ah/gMnO以上の放電容量を有する
ことを特徴とする請求項3記載の電気化学電池。
【請求項5】
前記カソードは、さらにカルシウム化合物を含有し、
前記カルシウム化合物は、酸化カルシウムと、水酸化カルシウムと、カルシウムステアリン酸塩からなるグループから選択される
ことを特徴とする請求項1記載の電気化学電池。
【請求項6】
前記カルシウム化合物は、酸化カルシウムであり、前記カソードの0.1%−0.5%含有し、
前記カソードの0.1%−0.2%ポリエチレン化合物を有する
ことを特徴とする請求項5記載の電気化学電池。
【請求項7】
前記カルシウム化合物は、前記カソードの0.25%−1.25%含有する
ことを特徴とする請求項5記載の電気化学電池。
【請求項8】
前記カルシウム化合物は、カルシウムステアリン酸塩であり、前記カソードの0.25%−1.25%含有する
ことを特徴とする請求項7記載の電気化学電池。
【請求項9】
前記ストロンチウム化合物は、前記カソードの0.25%−1.25%含有する
ことを特徴とする請求項1記載の電気化学電池。
【請求項10】
前記カソードは、銀、酸化銀、銀のグループI化合物、金属水素化合物、水素再結合触媒を0.1%−5%含有する
ことを特徴とする請求項1記載の電気化学電池。

【図1】
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【公表番号】特表2009−517805(P2009−517805A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541562(P2008−541562)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001930
【国際公開番号】WO2007/059627
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508150979)ピュアー エナジー ビジョンズ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】