容量式湿度センサ
【課題】検出容量素子と参照容量素子が基板上の同一面に形成され、参照容量素子も感湿膜を有する容量式湿度センサにおいて、感度を高めつつ体格を小型化する。
【解決手段】検出容量素子31と参照容量素子32において、検出用電極33a,33bと参照用電極34a,34bは、基板20上の同一面20aに配置され、同じ構成材料により同じ幅及び厚さを有して形成される。検出用感湿膜35aと参照用感湿膜35bは、同じ構成材料により同じ厚さを有して形成される。各容量素子31,32の0%RHでの容量値C1に対する100%RHでの容量値C2の比C2/C1を、容量値の湿度変化に対する傾きとすると、参照容量素子32の電極間隔drは検出容量素子31の電極間隔dm及び比C2/C1の最大値を示す間隔よりも狭く、且つ、検出容量素子31のほうが参照容量素子32よりも比C2/C1が大きくなるように、電極間隔dm,drが設定される。
【解決手段】検出容量素子31と参照容量素子32において、検出用電極33a,33bと参照用電極34a,34bは、基板20上の同一面20aに配置され、同じ構成材料により同じ幅及び厚さを有して形成される。検出用感湿膜35aと参照用感湿膜35bは、同じ構成材料により同じ厚さを有して形成される。各容量素子31,32の0%RHでの容量値C1に対する100%RHでの容量値C2の比C2/C1を、容量値の湿度変化に対する傾きとすると、参照容量素子32の電極間隔drは検出容量素子31の電極間隔dm及び比C2/C1の最大値を示す間隔よりも狭く、且つ、検出容量素子31のほうが参照容量素子32よりも比C2/C1が大きくなるように、電極間隔dm,drが設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通の基板に、周囲の湿度変化に応じて容量値が変化する検出容量素子と、容量値の湿度変化に対する傾きが検出容量素子と異なる参照容量素子と、が形成された容量式湿度センサに関する。特に検出容量素子と参照容量素子が基板上の同一面に形成され、検出容量素子だけでなく参照容量素子も感湿膜を有する容量式湿度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
共通の基板に、周囲の湿度変化に応じて容量値が変化する検出容量素子と、容量値の湿度変化に対する傾き(以下、単に傾きとも示す)が検出容量素子と異なる参照容量素子と、が形成された容量式湿度センサとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1において、検出容量素子(第1センサ素子)は、基板上の同一面において対向配置された一対の検出用電極(櫛歯状電極)と、該検出用電極を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する検出用感湿膜(感湿膜)と、を有している。参照容量素子(第2センサ素子)は、検出用電極の配置面(上記同一面)において対向配置された一対の参照用電極(櫛歯状電極)と、該参照用電極を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する参照用感湿膜(感湿膜)と、を有している。特許文献1では参照用感湿膜が検出用感湿膜と一体化されて1つの感湿膜をなしており、この感湿膜が基板上の同一面に配置された検出用電極と参照用電極とを一体的に覆っている。
【0004】
このように、感湿膜(参照用感湿膜)によって参照用電極が保護されているため、参照容量素子が感湿膜を有さない構成に較べて、高温多湿な環境下においても、参照用電極が劣化して参照容量素子の容量値が変動するのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−133191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容量式湿度センサでは、検出容量素子と参照容量素子との容量差が周知のCV変換回路により電圧値に変換され、この電圧値に基づいて雰囲気の相対湿度が検出される。このため、特許文献1の図2に示される検出容量素子の傾きと参照容量素子の傾きについて、これら傾きの差を大きくするほど、湿度変化に対する容量値の差の変化量が大きくなる。すなわち容量式湿度センサの感度を高めることができる。
【0007】
特許文献1では、参照容量素子にも感湿膜(参照用感湿膜)を設けているため、参照容量素子の容量値も相対湿度に応じて変化する。このため、容量式湿度センサの感度は、参照容量素子が感湿膜を有さない構成(特許文献1の図5)に較べて低くなる。したがって、感度の観点から、参照容量素子の傾き、換言すれば相対湿度0%のときの容量値C1に対する相対湿度100%のときの容量値C2の比C2/C1、をできるだけ小さくする(1に近づける)ことが好ましい。なお、検出容量素子の傾き(容量値の比C2/C1)をより大きくすることで感度を高めることも考えられるが、この場合、検出容量素子、ひいては容量式湿度センサの体格が増大してしまう。
【0008】
ところで、電極間隔と傾き(容量値の比C2/C1)とは、所定の電極間隔で傾き最大となり、この所定間隔までは電極間隔の増加にともなって傾きが増加し、所定間隔を越えると傾きが減少する関係を示す。なお、その詳細については、発明を実施する形態で説明する。
【0009】
感湿膜自体の比誘電率は湿度に応じて変化しないが、水分の吸着量により、水分を含む感湿膜全体の比誘電率が変化する。このため、電極間に形成される容量に対して感湿膜の影響が大きいほど、容量値の湿度変化に対する傾き(容量値の比C2/C1)は大きくなる。各容量素子(検出容量素子及び参照容量素子)の容量は、対向配置された一対の電極(検出用電極及び参照用電極)において、対向面間に形成される対向容量と、基板と対向する下面間及び該下面と反対の上面間をそれぞれ回り込んで形成されるフリンジ容量とにより決定される。この容量成分のうち、特に上面間を回り込むフリンジ容量は、一般的に電極の厚さ(対向面の高さ)よりも電極の幅(上面の長さ)のほうが広い、上面間を回りこむことで介在される感湿膜が多いため、感湿膜の影響を大きく受ける。上記したように、電極間隔の増加にともない、所定間隔まで傾きが増加するのは、電極間隔が狭いと対向容量の影響が大きく(換言すれば感湿膜の影響が小さく)、電極間隔の増加にともないフリンジ容量の影響が大きく(換言すれば感湿膜の影響が大きく)なるためである。
【0010】
特許文献1の図1では、参照容量素子の電極間隔を検出容量素子の電極間隔よりも広くしている。このため、検出容量素子の傾きと参照容量素子の傾きの差を大きくして感度を高めようとすると、上記した電極間隔と傾き(容量値の比C2/C1)との関係から、参照容量素子の電極間隔を、傾き(容量値の比C2/C1)が最大となる間隔よりも広く、且つ、検出容量素子の傾きとの差が大きくなるような間隔に設定しなければならない。したがって、参照容量素子、ひいては容量式湿度センサの体格を小型化するのが困難である。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑み、検出容量素子と参照容量素子が基板上の同一面に形成され、参照容量素子も感湿膜を有する容量式湿度センサにおいて、感度を高めつつ体格を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、
共通の基板(20)に、周囲の湿度変化に応じて容量値が変化する検出容量素子(31)と、容量値の湿度変化に対する傾きが検出容量素子(31)と異なる参照容量素子(32)と、が形成された容量式湿度センサであって、
検出容量素子(31)は、基板(20)上の同一面(20a)において対向配置された一対の検出用電極(33a,33b)と、該検出用電極(33a,33b)を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する検出用感湿膜(35a)と、を有し、
参照容量素子(32)は、検出用電極(33a,33b)の配置面(20a)において対向配置された一対の参照用電極(34a,34b)と、該参照用電極(34a,34b)を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する参照用感湿膜(35b)と、を有している。
【0013】
そして、検出用感湿膜(35a)と参照用感湿膜(35b)は、同じ構成材料により同じ厚さを有して形成されており、
検出用電極(33a,33b)と参照用電極(34a,34b)は、同じ構成材料により同じ幅及び同じ厚さを有して形成されるとともに、
各容量素子(31,32)の相対湿度0%での容量値(C1)に対する相対湿度100%での容量値(C2)の比(C2/C1)を前記傾きとすると、
参照容量素子(32)の電極間隔(dr)は、検出容量素子(31)の電極間隔(dm)及び容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔よりも狭く、且つ、容量値の比C2/C1は、検出容量素子(31)が参照容量素子(32)よりも大きい、との関係を満たして、電極間隔(dr,dm)が設定されていることを特徴とする。
【0014】
先ず、各容量素子について、容量値の比C2/C1を説明する。検出容量素子(31)の容量値の比(C2/C1)は、次式で示すことができる。
(数1)
C2/C1=(ε2・ε0・Sm/dm)/(ε1・ε0・Sm/dm)=ε2/ε1
なお、ε0は真空の誘電率、ε1は検出容量素子(31)を構成する誘電体の相対湿度0%のときの比誘電率、ε2は同誘電体の相対湿度100%のときの比誘電率、Smは検出用電極(33a,33b)間の対向面積である。
【0015】
一方参照容量素子(32)の容量値の比(C2/C1)は、次式で示すことができる。
(数2)
C2/C1=(ε4・ε0・Sr/dr)/(ε3・ε0・Sr/dr)=ε4/ε3
なお、ε3は参照容量素子(32)を構成する誘電体の相対湿度0%のときの比誘電率、ε4は同誘電体の相対湿度100%のときの比誘電率、Srは参照用電極(34a,34b)間の対向面積である。
【0016】
本発明では、検出用感湿膜(35a)と参照用感湿膜(35b)が同じ構成材料により同じ厚さを有して形成され、検出用電極(33a,33b)と参照用電極(34a,34b)が同じ構成材料により同じ幅及び同じ厚さを有して形成されている。これにより、数式1,2において、ε1=ε3、ε2=ε4となり、検出容量素子(31)と参照容量素子(32)とで、容量値の比C2/C1(傾き)と電極間隔との関係が共通(同じ)となる。したがって、お互いの電極間隔(dm,dr)により、容量値の比C2/C1の大小関係が決定される。
【0017】
そして、本発明では、検出容量素子(31)のほうが容量値の比C2/C1(傾き)が大きくなるように電極間隔(dm,dr)が設定されるため、容量式湿度センサの感度を高めることができる。また、参照容量素子(32)の電極間隔(dr)を、検出容量素子(31)の電極間隔(dm)及び容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔よりも狭くするため、参照容量素子(32)の体格、ひいては容量式湿度センサ(10)の体格を小型化することができる。
【0018】
このように本発明によれば、検出容量素子(31)と参照容量素子(32)が基板(20)上の同一面(20a)に形成され、参照容量素子(32)も感湿膜(35b)を有する容量式湿度センサ(10)において、感度を高めつつ従来よりも体格を小型化することができる。
【0019】
請求項2に記載のように、検出容量素子(31)の電極間隔(dm)を、容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔以下とすると良い。これによれば、検出容量素子(31)の体格を小型化し、ひいては容量式湿度センサ(10)の体格をより小型化することができる。
【0020】
より好ましくは、請求項3に記載のように、検出容量素子(31)の電極間隔(dm)を、容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔とすると良い。これによれば、検出容量素子(31)の傾きが最大となるため、検出容量素子(31)と参照容量素子(32)の傾きの差をより大きくすることができる。すなわち、容量式湿度センサ(10)の感度をより高めることができる。
【0021】
請求項4に記載のように、水分による腐食から各電極(33a,33b,34a,34b)を保護するための保護膜(36)が、各電極(33a,33b,34a,34b)を覆って配置され、
検出用感湿膜(35a)及び参照用感湿膜(35b)は、保護膜(36)上に形成されると良い。
【0022】
これによれば、参照用感湿膜(35b)と保護膜(36)とにより、参照用電極(34a,34b)の腐食を効果的に抑制することができる。また、検出用電極(33a,33b)についても、その腐食を効果的に抑制することができる。
【0023】
また、保護膜(36)を有さず、電極(33a,33b,34a,34b)に接して感湿膜(35a,35b)が配置される構成に較べて、電極間隔による傾き(容量値の比C2/C1)の変化幅を大きくすることができる。このため、検出容量素子(31)の傾きと参照容量素子(32)の傾きの差を大きくすることができる。
【0024】
請求項5に記載のように、参照容量素子(32)の電極間隔(dr)及び検出容量素子(31)の電極間隔(dm)を、保護膜(36)の厚さと電極(33a,33b,34a,34b)の厚さとの和以上とすることが好ましい。
【0025】
電極間隔(dr,dm)が狭いと、電極間の部分に対応して保護膜(36)に形成される溝部(36a)の開口幅が狭くなり、この溝部(36a)に位置する感湿膜(35a,35b)に吸着された水分が蒸発しにくい。このため、相対湿度の上昇時と低下時とで、同じ相対湿度でも容量値に差、すなわちヒステリシスが生じる。
【0026】
これに対し、本発明では、電極間隔(dr,dm)を保護膜(36)の厚さと電極(33a,33b,34a,34b)の厚さとの和以上とする。これにより、電極間の部分に対応して保護膜(36)に形成される溝部(36a)の開口幅を、溝部(36a)内に位置する感湿膜(35a,35b)に吸着された水分が蒸発するために十分な広さとすることができる。このため、上記ヒステリシスを低減することができる。
【0027】
請求項6に記載のように、検出用電極(33a,33b)及び参照用電極(34a,34b)は、それぞれ櫛歯形状をなしていることが好ましい。これによれば、一対の検出用電極(33a,33b)の対向面積、及び、一対の参照用電極(34a,34b)の対向面積を大きくすることができるため、容量湿度センサの感度をより高めることができる。
【0028】
請求項7に記載のように、検出用感湿膜(35a)と参照用感湿膜(35b)は、1つの感湿膜(35)として一体的に形成されても良い。これによれば、構成を簡素化することができる。また、1つの感湿膜(35)として基板(20)との接着面積が増加することとなるので、検出用感湿膜(35a)と参照用感湿膜(35b)とを別体とする構成に較べて、剥離しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の容量式湿度センサを備える湿度検出装置の概略構成を示す斜視図である。便宜上、保護ゲルを省略して図示している。
【図2】本実施形態に係る容量式湿度センサの概略構成を示す平面図である。便宜上、検出用電極、参照用電極、パッドに接続された配線を実線で図示している。また、保護ゲルを破線で示している。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。便宜上、電極の数を減らして図示している。また、パッドにボンディングワイヤが接続され、該パッドが保護ゲルで覆われた状態を示している。
【図4】相対湿度と容量値との関係を示す図である。
【図5】図2において、検出容量素子及び参照容量素子の周辺を拡大した平面図である。便宜上、パッドに接続された配線の一部を省略して図示している。図2同様、検出用電極及び参照用電極を実線で示している。また、感湿膜を破線で示している。
【図6】容量式湿度センサに構成された容量素子と回路チップに構成された処理回路の等価回路の一例を示す図である。
【図7】CV変換動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図8】電極間隔と容量値の湿度変化に対する傾き(容量値の比C2/C1)との関係を示す図である。
【図9】対向容量とフリンジ容量を説明するための断面図である。
【図10】電極間隔と保護膜に形成される溝部の形状との関係を示す断面図であり、(a)は電極間隔1.5μm、(b)は電極間隔3.0μmの場合をそれぞれ示している。
【図11】容量変化量のヒステリシスの大きさとの関係を示す図である。一例として、電極間隔1.5μmの場合を示している。
【図12】電極間隔とヒステリシスの大きさとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。また、形成範囲を明確化するため、図2の平面図において、感湿膜及びダム部にハッチングを施している。
【0031】
図1は、本実施形態の容量式湿度センサ10を備える湿度検出装置100である。この湿度検出装置100は、合成樹脂等を用いて有底角筒状に形成されたケース110と、該ケース110の底部内面に固定されたリードフレームのアイランド111,112と、アイランド111に搭載された容量式湿度センサ10と、アイランド112に搭載された回路チップ113と、一端がケース110の内部に露出し、他端がケース110外に延出されたリード114を備える。
【0032】
そして、容量式湿度センサ10と回路チップ113とが、ボンディングワイヤ115を介して電気的に接続され、回路チップ113とリード114とが、ボンディングワイヤ116を介して電気的に接続されている。また、図1において省略するが、ボンディングワイヤ115,116及びその接続部位(パッド)は、保護ゲル(図3に示す保護ゲル60)によって被覆されている。
【0033】
このように、本実施形態では、容量式湿度センサ10と、CV変換回路などが構成された回路チップ113とが、別チップとなっている。
【0034】
次に、容量式湿度センサ10の構成について説明する。
【0035】
容量式湿度センサ10は、所謂センサチップであり、図2及び図3に示すように、同一の基板20(半導体チップ)に、湿度検出部30、外部接続端子としてのパッド40、保護ゲル60の流動を抑制するダム部50を備える。なお、保護ゲル60は、パッド40にボンディングワイヤ115が接続された状態で、パッド40及びボンディングワイヤ115におけるパッド40との接続部分を被覆するように、基板20上に配置される。
【0036】
本実施形態では、基板20としてシリコン基板を採用しており、この基板20の一面側表層に、図3に示すように全面にわたって不純物の拡散層21が形成されている。より詳しくは、拡散層21がp導電型の拡散層21となっている。この拡散層21上には絶縁膜22が形成されており、絶縁膜22の一部位にコンタクトホール22aが形成されている。本実施形態では、絶縁膜22が、基板20側からシリコン酸化膜、BPSG膜の順に積層されてなる。
【0037】
湿度検出部30,パッド40,ダム部50は、この絶縁膜22上に形成されている。本実施形態では、絶縁膜22を含む基板20を基板とみなし、絶縁膜22における基板20と反対の面を、基板20の一面20aとする。
【0038】
湿度検出部30は、検出容量素子31と参照容量素子32を備える。検出容量素子31及び参照容量素子32は、ともに相対湿度の変化に応じてその容量値が変化するように構成されており、容量値の湿度変化に対する傾きが互いに異なる。図4に示すように、相対湿度0%での容量値、すなわち初期容量値は、検出容量素子31(容量Cm)のほうが参照容量素子32(容量Cr)よりも大きい。また、容量値の湿度変化に対する傾きは、検出容量素子31のほうが参照容量素子32よりも大きくなっている。
【0039】
図4に示すように、容量素子31,32の初期容量の差は2つの容量値のオフセットであり、容量値の差からオフセット値を引いた値の、湿度変化に対する変化量が、容量式湿度センサ10の感度である。このため、検出容量素子31及び参照容量素子32において、容量値の湿度変化に対する傾きの差を大きくするほど、感度を高めることができる。
【0040】
検出容量素子31は、基板20の一面20aにおいて、互いに対向して配置された一対の検出用電極33a,33bを有する。一方、参照容量素子32は、上記一面20aの検出用電極33a,33bとは異なる位置において、互いに対向して配置された一対の参照用電極34a,34bを有する。
【0041】
これら検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bの形状は特に限定されるものではない。本実施形態では、検出用電極33a,33bとして、検出用電極33aと検出用電極33bとが交互に配置されてなる櫛歯形状を採用している。このように櫛歯形状とすると、検出用電極33a,33bの配置面積を小さくしつつ、互いに対向する面積を大きくすることができる。これにより、周囲の湿度変化にともなって変化する検出用電極33a,33b間の静電容量の変化量が大きくなり、容量式湿度センサ10の感度が向上する。同様に、参照用電極34a,34bとして、参照用電極34aと参照用電極34bとが交互に配置されてなる櫛歯形状を採用している。
【0042】
また、図5に示すように、互いに対向する部分の電極長さは、検出用電極(33a,33b)のほうが参照用電極34a,34bよりも長くなっている。また、櫛歯の本数は、検出用電極33a,33bのほうが参照用電極34a,34bよりも多くなっている。これらにより、対をなす電極同士の対向面積は、検出用電極33a,33bのほうが参照用電極34a,34bよりも大きくなっている。そして、初期容量値は、検出容量素子31のほうが参照容量素子32よりも大きくなっている。
【0043】
また、検出用電極33a,33bの対向面間の距離、すなわち検出容量素子31の電極間隔dmと、参照用電極34a,34bの対向面間の距離、すなわち参照容量素子32の電極間隔drは、所定の条件を満たして設定されている。この電極間隔dm,drの設定条件が、本実施形態の主たる特徴部分である。その詳細については後述する。
【0044】
このように構成される検出用電極33a,33bと参照用電極34a,34bは、同じ構成材料により、同じ幅及び同じ厚さを有して形成されている。具体的には、アルミニウム等の水分により腐食する虞のある配線材料を、蒸着やスパッタリング等の手法によって基板20の一面20aにほぼ均一の厚さで堆積させる。そして、フォトリソグラフィ処理により、ほぼ同じ電極幅を有しつつ櫛歯形状にパターニングすることで形成されている。本実施形態では、後述するパッド40同様、アルミニウムを用いて検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bが形成されている。
【0045】
図3に示すように、検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34b上には保護膜36が形成されており、この保護膜36を介して感湿膜35が形成されている。また、感湿膜35として、参照用電極34a,34bを覆う参照用感湿膜35bが形成されている。
【0046】
保護膜36は、検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bが、水分により腐食するのを防ぐためのものである。本実施形態では、保護膜36として、プラズマCVD法により形成されるシリコン窒化膜を採用している。この保護膜36は、検出用電極33a,33b及び参照電極34a,34b上だけでなく、基板20の一面20aにおいて、パッド40を除く部分に形成されている。
【0047】
保護膜36上には、検出用電極33a,33b及び検出用電極33a,33b間を覆うように検出用感湿膜35aが形成されている。また、参照用電極34a,34b及び参照用電極34a,34b間を覆うように、参照用感湿膜35bが形成されている。これら感湿膜35a,35bは、同一材料によりほぼ同じ厚さを有して構成されている。
【0048】
本実施形態では、検出用電極33a,33bを覆う検出用感湿膜35aと、参照用電極34a,34bを覆う参照用感湿膜35bが、1つの感湿膜35として一体化されている。本実施形態では、感湿膜35の構成材料としてポリイミド系材料を採用しており、スピンコート法や印刷法にて前駆体(ポリアミド)を基板20の一面20a上に塗布後、加熱硬化(イミド化処理)することにより、ほぼ均一の厚さを有して形成されている。
【0049】
このように構成される湿度検出部30において、各容量素子31,32を構成する電極33a,33b,34a,34bは、配線37により、対応するパッド40と電気的に接続されている。本実施形態では、配線37のうち、湿度検出部30と反対の端部付近で保護膜36の開口部から露出された部分をパッド40としている。
【0050】
図2に示すように、検出容量素子31を構成する検出用電極33aは、配線37aにより、対応するパッド40aと電気的に接続されている。検出容量素子31を構成する検出用電極33b及び参照容量素子32を構成する参照用電極34bは、共通の配線37bにより、対応するパッド40bと電気的に接続されている。また、参照容量素子32を構成する参照用電極34aは、配線37cにより、対応するパッド40cと電気的に接続されている。
【0051】
これら配線37a〜37cは、基板20の一面20a、すなわち検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bと同一平面に形成されている。また、検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bと同じアルミニウムを用いて形成されており、これら配線37a〜37cも、保護膜36により被覆されている。
【0052】
本実施形態では、さらにパッド40として、上記拡散層21に電気的に接続されたパッド40dを有する。このパッド40dには、平面矩形状の基板20の縁部に沿って形成された配線37dが接続されており、配線37dのうち、図3に示すように保護膜36の開口部から露出された部分がパッド40dとなっている。配線37dも、基板20の一面20a、すなわち検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bと同一平面に形成されている。また、検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bと同じアルミニウムを用いて形成されており、上記した保護膜36により被覆されている。配線37dは、図3に示すように、絶縁膜22に形成されたコンタクトホール22aを埋めるように形成されており、拡散層21と電気的に接続されている。このため、パッド40dに定電位(例えばグランド電位)を印加することで、配線37dを通じて拡散層21を、電磁波に対するシールド層として機能させることができる。
【0053】
これらパッド40(40a〜40d)は、ボンディングワイヤ115が接続された状態で、保護ゲル60によって被覆される。保護ゲル60は、アルミニウムからなるパッド40が、水分により腐食するのを防ぐためのものであり、フッ素系ゲルなど耐水性を有する材料からなる。この保護ゲル60は、パッド40の周辺に、ディスペンサなどを用いて塗布し、その後硬化することで形成される。
【0054】
このため、塗布した時点では、保護ゲル60が流動性を有している。パッド40周辺に塗布された保護ゲル60が、湿度検出部30側に流動し、感湿膜35(35a,35b)に付着すると、感湿膜35の性質が変化してしまい、雰囲気湿度にかかる検出精度が低下しかねない。このため、基板20の一面20aにおいて湿度検出部30とパッド40の間には、パッド40周辺に塗布した保護ゲル60が、湿度検出部30側への流入し、感湿膜36に付着するのを抑制するためのダム部50が形成されている。
【0055】
このダム部50は、感湿膜35(35a,35b)と同一材料を用いて形成されている。このため、感湿膜35(35a,35b)と同一工程で形成することができる。本実施形態では、図2に示すように、基板20における平面矩形状の一面20aにおいて、矩形の1辺に沿う一端側に湿度検出部30が形成され、他端にパッド40が形成されている。そして、基板20の一面20aにおいて湿度検出部30の形成領域とパッド40の形成領域とを分割するように、平面矩形状の基板20の相対する一方の辺から他方の辺にわたって形成されている。このダム部50は、感湿膜35とほぼ同じ厚さを有している。
【0056】
次に、上記した容量式湿度センサ10の製造方法の一例について説明する。
【0057】
先ず、ウェハ状態のシリコンからなる基板20を準備し、熱酸化により一面にシリコン酸化膜を形成する。次いで、シリコン酸化膜を介して基板20の一面側表層に不純物をイオン注入し、拡散層21を形成した後、シリコン酸化膜上にBPSG膜を形成し、シリコン酸化膜とともに絶縁膜22とする。次いで、絶縁膜22の所定位置にコンタクトホール22aを形成した後、基板20の一面20a全域にアルミニウムを堆積させ、パターニングにより、各電極33a,33b,34a,34b、パッド40(40a〜40d)を含む配線37(37a〜37d)を形成する。このように、湿度検出部30を構成する電極33a,33b,34a,34bを、同一面上に同一材料を用いて同一の工程で形成する。
【0058】
次いで、基板20の一面20a全域に保護膜36としてのシリコン窒化膜を形成し、パターニングしてパッド40(40a〜40d)を露出させる。そして、例えばスピンコート法により基板20の一面20a上に前駆体を塗布し、硬化処理した後、パターニングすることで、感湿膜35(35a,35b)及びダム部50を形成する。このように、湿度検出部30を構成する感湿膜35と同一材料を用いて同一の工程で、ダム部50を形成する。
【0059】
次いで、基板20をダイシングし、チップ単位とする。これにより、容量式湿度センサ10を得ることができる。なお、得られた容量式湿度センサ10を、ケース110と一体成形されたアイランド111に搭載し、アイランド112に搭載した回路チップ113と、ボンディングワイヤ115により接続する。そして、パッド40周辺及びボンディングワイヤ115が覆われるように、ディスペンサなどを用いて保護ゲル60を塗布し、塗布した保護ゲル60を硬化させるなどして、湿度検出装置100を得ることができる。
【0060】
次に、容量式湿度センサ10が備える容量素子31,32及びその処理回路について説明する。
【0061】
図6に示されるように、雰囲気の相対湿度に応じて容量値が変化する検出容量素子31(容量Cm)と、同じく雰囲気の相対湿度に応じて容量値が変化する参照容量素子32(容量Cr)とは直列接続されている。一方、回路チップ113には、処理回路として、これら容量素子31,32の容量差を電圧値に変換するSC(スイッチドキャパシタ)回路120などが構成されている。
【0062】
SC回路120は、図6に示すように、例えば5Vの同一の振幅で且つ180度の位相差を有する矩形波である搬送波1及び搬送波2を容量Cm,Crに対してそれぞれ印加する発振回路121、例えば2.5Vのバイアス電圧を出力する基準電圧源122、容量Cm,Crの中点電位とバイアス電圧とを差動増幅する差動増幅回路123、所定容量を有するコンデンサ124、アナログスイッチ125、及び図示しないサンプルホールド回路などを備える。
【0063】
このように構成されたSC回路120で実行されるCV変換の一例を図7にタイミングチャートとして示す。図7に示すように、SC回路120で実行されるCV変換は、「リセット→サンプルホールド→搬送波切替→サンプルホールド」を一周期として繰り返し実行される。
【0064】
例えば時刻t1においてアナログスイッチ125がオンされると、コンデンサ124が放電される(リセット)。また、このコンデンサ124の放電と同時に、搬送波1が立ち上げられるとともに搬送波2が立ち下げられる。このとき、容量Cm>容量Crと、容量Cmの発振回路121側の検出用電極33a(図2参照)及び容量Crの発振回路121側の参照用電極34b(図2参照)それぞれに印加される電圧とに応じて、これら容量Cm及び容量Crが充電される。ちなみに、容量Cmの差動増幅回路123側の検出用電極33b及び容量Crの差動増幅回路123側の参照用電極34a(図2参照)の電荷量は、負の電荷が多い状態になる。
【0065】
次いで、例えば時刻t2においてアナログスイッチ125がオフされると、電極33b,34aと、コンデンサ124の差動増幅回路123の反転入力端子側の電極とによって閉回路が構成され、先の時刻t1から時刻t2までに蓄えられた電荷量は保存される。この状態にある例えば時刻t3において、SC回路120の出力電圧値Voがサンプリングされ、適宜の記憶保持手段に一時的に記憶される。
【0066】
次いで、例えば時刻t4において、搬送波1が立ち下げられると同時に搬送波2が立ち上げられる。このように搬送波が反転されると、電極33b,34aの電荷量は、正の電荷が多い状態になる。しかしながら、上記したように、電極33b,34aと、コンデンサ124の差動増幅回路123の反転入力端子側の電極とによって閉回路が構成されていることから、この閉回路にある電荷量は保存されている。このため、電極33b,34aの電荷の平衡状態から溢れた負の電荷が、コンデンサ124の差動増幅回路123の反転入力端子側の電極に移動する。この電荷の移動により、コンデンサ124の差動増幅回路123の出力端子側の電極には、正の電荷が蓄えられることになり、「蓄えられる電荷量=容量×電位差」の関係から、移動した電荷量に比例し、コンデンサ124の容量値に反比例した電圧値分だけ、SC回路120の出力電圧値Voが変動することになる。
【0067】
このように変動した出力電圧値VoがSC回路120の出力端子から出力される。そして、例えば時刻t6において、電荷の移動が終了し安定したところで、サンプリングされ、適宜の記憶保持手段に一時的に記憶される。そして、続く時刻t7から、この周期が同様に開始される。
【0068】
なお、最終的には、上記時刻t6においてサンプリングした電圧値から、上記時刻t3においてサンプリングした電圧値を差動演算した値に基づいて、雰囲気の相対湿度が検出される。
【0069】
このように、容量式湿度センサ10における検出容量素子31と参照容量素子32との容量差が、CV変換回路(SC回路120)により電圧値に変換され、この電圧値に基づいて雰囲気の相対湿度が検出される。このため、上記図4に示した検出容量素子31(容量Cm)の傾きと、参照容量素子32(容量Cr)の傾きについて、これら傾きの差を大きくするほど、湿度変化に対する容量差の変化量が大きくなる。すなわち、容量式湿度センサ10の感度を高めることができる。
【0070】
次に、容量式湿度センサ10の感度を高めつつ体格を小型化できる、電極間隔dm,drについて説明する。
【0071】
本実施形態では、参照容量素子32にも感湿膜35(参照用感湿膜35b)を設けており、参照容量素子32の容量値も相対湿度に応じて変化する。このため、容量式湿度センサ10の感度は、参照容量素子32が感湿膜35を有さない構成に較べて低くなる。したがって、感度の観点から、参照容量素子32の傾き、換言すれば相対湿度0%(以下、0%RHと示す)のときの容量値C1に対する相対湿度100%(以下、100%RHと示す)のときの容量値C2の比C2/C1、をできるだけ小さくする(1に近づける)ことが好ましい。なお、検出容量素子31の傾き(容量値の比C2/C1)をより大きくすることで感度を高めることも考えられるが、この場合、検出容量素子31、ひいては容量式湿度センサ10の体格が増大してしまう。
【0072】
ここで、検出容量素子31の傾き、すなわち容量値C2の比C2/C1は、次式で示すことができる。
(数3)
C2/C1=(ε2・ε0・Sm/dm)/(ε1・ε0・Sm/dm)=ε2/ε1
なお、ε0は真空の誘電率、ε1は検出容量素子31を構成する誘電体の0%RHのときの比誘電率、ε2は同誘電体の100%RHのときの比誘電率、Smは検出用電極33a,33b間の対向面積である。
【0073】
一方、参照容量素子32の傾き、すなわち容量値C2の比C2/C1は、次式で示すことができる。
(数4)
C2/C1=(ε4・ε0・Sr/dr)/(ε3・ε0・Sr/dr)=ε4/ε3
なお、ε3は参照容量素子32を構成する誘電体の0%RHのときの比誘電率、ε4は同誘電体の100%RHのときの比誘電率、Srは参照用電極34a,34b間の対向面積である。
【0074】
このように、検出容量素子31の傾きは、ε2/ε1で決定される。また、参照容量素子32の傾きは、ε4/ε3で決定される。上記したように、本実施形態では、検出用感湿膜35aと参照用感湿膜35bが同じ構成材料により同じ厚さを有して形成されている。また、検出用電極33a,33bと参照用電極34a,34bが同じ構成材料により同じ幅及び同じ厚さを有して形成されている。このため、上記した数式3,4において、ε1=ε3、ε2=ε4となり、検出容量素子31と参照容量素子32とにおいて、傾き(容量値の比C2/C1)と電極間隔との関係が共通(同じ)となる。したがって、お互いの電極間隔dm,drにより、傾きの大小関係が決定される。
【0075】
図8は、電極間隔と傾き(容量値の比C2/C1)との関係について、本発明者が検討したシミュレーション結果を示している。このシミュレーションにおいては、基板20を厚さ400μmのシリコン、絶縁膜22を厚さ0.525μm±0.0525μmの二酸化シリコン、対をなす電極を厚さ0.7μm±0.07μm、幅4μm±0.4μmのアルミニウム、保護膜36を厚さ1.6μm±0.16μmの窒化シリコン、感湿膜35を厚さ2μm±0.2μm、0%RHの比誘電率2.8、100%RHの比誘電率3.2のポリイミドとした。
【0076】
図8に示すように、傾き(容量値の比C2/C1)は、電極間隔8μmで最大となり、電極間隔8μm以下では、電極間隔の増加にともなって増加する。また、電極間隔が8μmを越えると電極間隔の増加にともなって減少する。電極間隔と傾きとの関係がこのような傾向を示すのは、以下の理由によるものと考えられる。図9は、容量を構成する対向容量とフリンジ容量を説明するための断面図であり、容量素子31,32のうち、検出容量素子31(容量Cm)側を例示している。なお、便宜上、フリンジ容量のうち、上面39側のみを示している。
【0077】
感湿膜35(検出用感湿膜35a)は、それ自体の比誘電率は相対湿度に応じて変化しないが、図9に示すように水分130の吸着量により、水分を含む全体の比誘電率が変化する。このため、検出用電極33a,33b間に形成される容量Cmに対して感湿膜35(35a)の影響が大きいほど、容量値の湿度変化に対する傾きは大きくなる。図9に示すように、検出容量素子31の容量は、対向配置された一対の検出用電極33a,33bにおいて、対向面38間に形成される対向容量と、基板20と対向する下面間及び該下面と反対の上面39間をそれぞれ回り込んで形成されるフリンジ容量とにより決定される。
【0078】
この容量成分のうち、図9に示すように、特に上面39間を回り込むフリンジ容量は、一般的に検出用電極33a,33bの厚さ(対向面38の高さ)よりも幅(上面39の長さ)のほうが広い、上面39間を回りこむことで介在される感湿膜35(35a)が多いため、感湿膜35(35a)の影響を大きく受ける。したがって、容量として、フリンジ容量の影響が大きくなると、傾き(容量値の比C2/C1)が大きくなる。上記したように、電極間隔dmの増加にともない、間隔8μmまで傾きが増加するのは、電極間隔dmが狭いと対向容量の影響が大きく(換言すれば感湿膜35の影響が小さく)、電極間隔dmの増加にともないフリンジ容量の影響が大きくなる(換言すれば感湿膜35の影響が大きくなる)ためであると考えられる。また、間隔8μmを越えると傾きが小さくなるのは、電極間隔dmが広くなり、上面39間でフリンジ容量を形成しにくくなるためであると考えられる。なお、この点については、参照容量素子32(容量Cr)でも同じである。
【0079】
これに対し、本実施形態では、参照容量素子32の電極間隔drを、検出容量素子31の電極間隔dm及び容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔8μmよりも狭く、且つ、検出容量素子31が参照容量素子32よりも容量値の比C2/C1が大きくなるように、電極間隔dm,drを設定している。具体的には、電極間隔dm,drを、ともに傾きが最大値を示す間隔8μmよりも狭い間隔としている。そして、参照容量素子32の電極間隔drを、検出容量素子31の電極間隔dmよりも狭い値としている。詳しくは、検出容量素子31の電極間隔dmを、フリンジ容量の影響が大きい間隔、具体的には7.5μmとしている。これにより、検出容量素子31の傾きは、1.065程度となっている。
一方、参照容量素子32の電極間隔drを、フリンジ容量の影響が小さい間隔としている。これにより、参照容量素子32の傾きは、1.035程度となっている。
【0080】
このように、検出容量素子31のほうが参照容量素子32よりも容量値の比C2/C1が大きくなるように電極間隔dm,drが設定されるため、容量式湿度センサ10の感度を高めることができる。
【0081】
また、参照容量素子32より検出容量素子31の容量値の比C2/C1が大きい範囲で、参照容量素子32の電極間隔drを、検出容量素子31の電極間隔dm及び容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔よりも狭くする。すなわち、参照容量素子32の電極間隔drを、フリンジ容量の影響が小さい間隔とする。したがって、参照容量素子32の体格、ひいては容量式湿度センサ10の体格を小型化することができる。
【0082】
このように本実施形態によれば、検出容量素子31と参照容量素子32が基板20上の同一面20aに形成され、参照容量素子32も感湿膜35(参照用感湿膜35b)を有する容量式湿度センサ10において、感度を高めつつ従来よりも体格を小型化することができる。
【0083】
特に本実施形態では、検出容量素子31の電極間隔dmを、容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔以下としている。このため、上記したように感度を高めつつ、検出容量素子31の体格を小型化し、ひいては容量式湿度センサ10の体格をより小型化することができる。
【0084】
なお、上記したように、電極間隔が傾きの最大を示す間隔(図8において8μm)を越えると、電極間隔の増加にともなって傾きが減少する。したがって、容量値の比C2/C1が最大となる電極間隔を越える範囲において、参照容量素子32の電極間隔drを、検出容量素子31の電極間隔dmよりも大きくすることで、検出容量素子31の傾きと参照容量素子32の傾きの差を大きくして感度を高めることも考えられる。しかしながら、この場合、参照容量素子32の電極間隔drを大きくしなければならず、参照容量素子32、ひいては容量式湿度センサ10の体格を小型化するのが困難である。
【0085】
また、本実施形態では、水分による腐食から各電極33a,33b,34a,34bを保護するための保護膜36が、検各電極33a,33b,34a,34bをそれぞれ覆って配置されている。このため、参照用感湿膜35bと保護膜36とにより、参照用電極34a,34bの腐食を効果的に抑制することができる。また、検出用電極33a,33bについても、その腐食を効果的に抑制することができる。その上で、検出用感湿膜35a及び参照用感湿膜35bは、保護膜36上に形成されている。このため、本実施形態では、対向容量が主として保護膜36を誘電体とするのに対し、上面39間のフリンジ容量が主として感湿膜35を誘電体とする。したがって、保護膜36を有さず、電極33a,33b,34a,34bに接して感湿膜35(35a,35b)が配置される構成に較べて、電極間隔による傾き(容量値の比C2/C1)の変化幅を大きくすることができる。これにより、検出容量素子31の傾きと参照容量素子32の傾きの差を大きくすることができる。
【0086】
ところで、電極間隔dmが狭いと、図10(a)に示すように、検出用電極33a,33b間の部分に対応して保護膜36に形成される溝部36aの開口幅が狭くなる。図10(a)では、電極間隔dmが1.5μmの場合のSEMにより確認された断面構造を示している。このように、溝部36aの開口幅が狭いと、溝部36a内に位置する感湿膜35(検出用感湿膜35a)に吸着された水分が蒸発しにくいため、図11に示すように、相対湿度の上昇時と低下時とで、同じ相対湿度でも容量値に差、すなわちヒステリシスが生じる。なお、図11では、電極間隔dmが1.5μmの結果を示している。そして、図11に破線矢印で示すヒステリシスの大きさは、図12に示すように、相対湿度の20%分の変化に相当する。
【0087】
なお、図12に示すように、電極間隔dmがより狭い1.0μmの場合のヒステリシス大きさは、相対湿度の43%分の変化に相当する。
【0088】
一方、電極間隔dmが広いと、図10(b)に示すように、検出用電極33a,33b間の部分に対応して保護膜36に形成される溝部36aの開口幅も広くなる。図10(b)では、電極間隔dmが3.0μmの場合のSEMにより確認された断面構造を示している。このように、溝部36aの開口幅が広いと、溝部36a内に位置する感湿膜35(検出用感湿膜35a)に吸着された水分が蒸発しやすくなり、上記ヒステリシスを低減することができる。図12に示すように、電極間隔dmが3.0μmの場合のヒステリシスの大きさは、相対湿度9%分程度の変化に相当する。なお、上記においては、電極間隔dmについて説明したが、電極間隔drについても同じである。
【0089】
本実施形態では、参照容量素子32の電極間隔dr及び検出容量素子31の電極間隔dmを、ともに保護膜36の厚さと電極33a,33b,34a,34bの厚さとの和以上としている。上記シミュレーションのパラメータで示したように、本実施形態では、対をなす電極を厚さを0.7μm±0.07μm、保護膜36の厚さを1.6μm±0.16μmとしている。そして、厚さの和の最大値2.57μmにマージンを加味した値3μm(図8の一点鎖線)未満とならないように、電極間隔dm,drを設定している。これにより、図10(b)に示したように、電極間の部分に対応して保護膜36に形成される溝部36aの開口幅を、溝部36a内に位置する感湿膜35(35a,35b)に吸着された水分が蒸発するために十分な広さとすることができる。このため、上記ヒステリシスを低減することができる。
【0090】
また、本実施形態では、検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bを、それぞれ櫛歯形状としている。これによれば、一対の検出用電極33a,33bの対向面積、及び、一対の参照用電極34a,34bの対向面積を大きくすることができるため、体格の増大を抑制しつつ容量式湿度センサ10の感度をより高めることができる。
【0091】
また、本実施形態では、検出用感湿膜35aと参照用感湿膜35bを、1つの感湿膜35として一体的に形成している。このため、構成を簡素化することができる。また、1つの感湿膜35として基板20との接着面積が増加することとなるので、検出用感湿膜35aと参照用感湿膜35bとを別体とする構成に較べて、感湿膜が剥離しにくくなる。特に、ダイシング時の剥離を抑制することができる。
【0092】
(変形例)
上記実施形態では、検出容量素子31の電極間隔dmを、容量値の比C2/C1(傾き)が最大を示す間隔とは異なる値とする例を示した。しかしながら、より好ましくは、電極間隔dmを、容量値の比C2/C1が最大を示す間隔(図8では8μm)とすると良い。これによれば、検出容量素子31の傾きが最大となるため、検出容量素子31と参照容量素子32の傾きの差をより大きくすることができる。すなわち、容量式湿度センサ10の感度をより高めることができる。
【0093】
また、参照容量素子32の電極間隔drについても、上記した4.5μmに限定されるものではない。例えば容量値の比C2/C1(傾き)が最大を示す間隔の1/2以下の間隔とすると、参照容量素子32の傾きがより小さくなり(1に近づき)、これにより感度を高めることができる。図8に示す例では、電極間隔drを4μm以下とすれば良い。また、上記したヒステリシスを低減できる範囲で、できる限り狭くしたほうが、検出容量素子31と参照容量素子32の傾きの差をより大きくすることができる。すなわち、容量式湿度センサ10の感度をより高めることができる。上記実施形態では、4.5μmの例を示したが、例えば電極間隔drを3μmとすると、感度をより高めることができる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0095】
検出用電極33a,33bと参照用電極34a,34bの本数は上記例に限定されるものではない。対をなす検出用電極33aと検出用電極33bとを、それぞれ少なくとも1本有すれば良い。また、対をなす参照用電極34aと参照用電極34bとを、それぞれ少なくとも1本有すれば良い。
【0096】
参照容量素子32の電極間隔drと検出容量素子31の電極間隔dmは、電極間隔drが電極間隔dm及び容量値の比C2/C1(傾き)の最大値を示す間隔よりも狭く、且つ、検出容量素子31のほうが参照容量素子32よりも容量値の比C2/C1が大きい、との関係を少なくとも満たして設定されれば良い。したがって、上記実施形態とは異なり、電極間隔dmを、傾き(容量値の比C2/C1)が最大を示す間隔よりも広い間隔としても良い。また、電極間隔dm,drを3μm未満としてもよい。さらには、電極間隔dm,drを、保護膜36と電極33a,33b,34a,34bの厚さとの和未満としてもよい。
【0097】
本実施形態では、容量式湿度センサ10の基板20が、拡散層21、該拡散層21に電気的に接続される配線37d及びパッド40dを有する例を示したが、これらを有さない構成としても良い。
【0098】
本実施形態では、回路チップ113が容量式湿度センサ10と別チップとして構成される例を示したが、回路チップ113の処理回路を、容量式湿度センサ10を構成する基板20に集積し、1チップ化しても良い。
【0099】
本実施形態では、検出用感湿膜35aと参照用感湿膜35bが、1つの感湿膜35として一体化されている例を示したが、分離された構成としても良い。
【0100】
本実施形態では、電極33a,33b,34a,34b上に保護膜36が配置され、この保護膜36上に感湿膜35(35a,35b)が配置される例を示した。しかしながら、保護膜36を有さず、電極33a,33b,34a,34b上に感湿膜35(35a,35b)が直接配置された構成としても良い。
【0101】
本実施形態では、感湿膜35と同一材料からなるダム部50の例を示したが、ダム部50の構成は上記例に限定されるものではない。また、ダム部50を有さない構成としても良い。
【符号の説明】
【0102】
10・・・容量式湿度センサ
20・・・基板
20a・・・一面
31・・・検出容量素子
32・・・参照容量素子
33a,33b・・・検出用電極
34a,34b・・・参照用電極
35・・・感湿膜
35a・・・検出用感湿膜
35b・・・参照用感湿膜
36・・・保護膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通の基板に、周囲の湿度変化に応じて容量値が変化する検出容量素子と、容量値の湿度変化に対する傾きが検出容量素子と異なる参照容量素子と、が形成された容量式湿度センサに関する。特に検出容量素子と参照容量素子が基板上の同一面に形成され、検出容量素子だけでなく参照容量素子も感湿膜を有する容量式湿度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
共通の基板に、周囲の湿度変化に応じて容量値が変化する検出容量素子と、容量値の湿度変化に対する傾き(以下、単に傾きとも示す)が検出容量素子と異なる参照容量素子と、が形成された容量式湿度センサとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1において、検出容量素子(第1センサ素子)は、基板上の同一面において対向配置された一対の検出用電極(櫛歯状電極)と、該検出用電極を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する検出用感湿膜(感湿膜)と、を有している。参照容量素子(第2センサ素子)は、検出用電極の配置面(上記同一面)において対向配置された一対の参照用電極(櫛歯状電極)と、該参照用電極を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する参照用感湿膜(感湿膜)と、を有している。特許文献1では参照用感湿膜が検出用感湿膜と一体化されて1つの感湿膜をなしており、この感湿膜が基板上の同一面に配置された検出用電極と参照用電極とを一体的に覆っている。
【0004】
このように、感湿膜(参照用感湿膜)によって参照用電極が保護されているため、参照容量素子が感湿膜を有さない構成に較べて、高温多湿な環境下においても、参照用電極が劣化して参照容量素子の容量値が変動するのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−133191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容量式湿度センサでは、検出容量素子と参照容量素子との容量差が周知のCV変換回路により電圧値に変換され、この電圧値に基づいて雰囲気の相対湿度が検出される。このため、特許文献1の図2に示される検出容量素子の傾きと参照容量素子の傾きについて、これら傾きの差を大きくするほど、湿度変化に対する容量値の差の変化量が大きくなる。すなわち容量式湿度センサの感度を高めることができる。
【0007】
特許文献1では、参照容量素子にも感湿膜(参照用感湿膜)を設けているため、参照容量素子の容量値も相対湿度に応じて変化する。このため、容量式湿度センサの感度は、参照容量素子が感湿膜を有さない構成(特許文献1の図5)に較べて低くなる。したがって、感度の観点から、参照容量素子の傾き、換言すれば相対湿度0%のときの容量値C1に対する相対湿度100%のときの容量値C2の比C2/C1、をできるだけ小さくする(1に近づける)ことが好ましい。なお、検出容量素子の傾き(容量値の比C2/C1)をより大きくすることで感度を高めることも考えられるが、この場合、検出容量素子、ひいては容量式湿度センサの体格が増大してしまう。
【0008】
ところで、電極間隔と傾き(容量値の比C2/C1)とは、所定の電極間隔で傾き最大となり、この所定間隔までは電極間隔の増加にともなって傾きが増加し、所定間隔を越えると傾きが減少する関係を示す。なお、その詳細については、発明を実施する形態で説明する。
【0009】
感湿膜自体の比誘電率は湿度に応じて変化しないが、水分の吸着量により、水分を含む感湿膜全体の比誘電率が変化する。このため、電極間に形成される容量に対して感湿膜の影響が大きいほど、容量値の湿度変化に対する傾き(容量値の比C2/C1)は大きくなる。各容量素子(検出容量素子及び参照容量素子)の容量は、対向配置された一対の電極(検出用電極及び参照用電極)において、対向面間に形成される対向容量と、基板と対向する下面間及び該下面と反対の上面間をそれぞれ回り込んで形成されるフリンジ容量とにより決定される。この容量成分のうち、特に上面間を回り込むフリンジ容量は、一般的に電極の厚さ(対向面の高さ)よりも電極の幅(上面の長さ)のほうが広い、上面間を回りこむことで介在される感湿膜が多いため、感湿膜の影響を大きく受ける。上記したように、電極間隔の増加にともない、所定間隔まで傾きが増加するのは、電極間隔が狭いと対向容量の影響が大きく(換言すれば感湿膜の影響が小さく)、電極間隔の増加にともないフリンジ容量の影響が大きく(換言すれば感湿膜の影響が大きく)なるためである。
【0010】
特許文献1の図1では、参照容量素子の電極間隔を検出容量素子の電極間隔よりも広くしている。このため、検出容量素子の傾きと参照容量素子の傾きの差を大きくして感度を高めようとすると、上記した電極間隔と傾き(容量値の比C2/C1)との関係から、参照容量素子の電極間隔を、傾き(容量値の比C2/C1)が最大となる間隔よりも広く、且つ、検出容量素子の傾きとの差が大きくなるような間隔に設定しなければならない。したがって、参照容量素子、ひいては容量式湿度センサの体格を小型化するのが困難である。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑み、検出容量素子と参照容量素子が基板上の同一面に形成され、参照容量素子も感湿膜を有する容量式湿度センサにおいて、感度を高めつつ体格を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、
共通の基板(20)に、周囲の湿度変化に応じて容量値が変化する検出容量素子(31)と、容量値の湿度変化に対する傾きが検出容量素子(31)と異なる参照容量素子(32)と、が形成された容量式湿度センサであって、
検出容量素子(31)は、基板(20)上の同一面(20a)において対向配置された一対の検出用電極(33a,33b)と、該検出用電極(33a,33b)を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する検出用感湿膜(35a)と、を有し、
参照容量素子(32)は、検出用電極(33a,33b)の配置面(20a)において対向配置された一対の参照用電極(34a,34b)と、該参照用電極(34a,34b)を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する参照用感湿膜(35b)と、を有している。
【0013】
そして、検出用感湿膜(35a)と参照用感湿膜(35b)は、同じ構成材料により同じ厚さを有して形成されており、
検出用電極(33a,33b)と参照用電極(34a,34b)は、同じ構成材料により同じ幅及び同じ厚さを有して形成されるとともに、
各容量素子(31,32)の相対湿度0%での容量値(C1)に対する相対湿度100%での容量値(C2)の比(C2/C1)を前記傾きとすると、
参照容量素子(32)の電極間隔(dr)は、検出容量素子(31)の電極間隔(dm)及び容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔よりも狭く、且つ、容量値の比C2/C1は、検出容量素子(31)が参照容量素子(32)よりも大きい、との関係を満たして、電極間隔(dr,dm)が設定されていることを特徴とする。
【0014】
先ず、各容量素子について、容量値の比C2/C1を説明する。検出容量素子(31)の容量値の比(C2/C1)は、次式で示すことができる。
(数1)
C2/C1=(ε2・ε0・Sm/dm)/(ε1・ε0・Sm/dm)=ε2/ε1
なお、ε0は真空の誘電率、ε1は検出容量素子(31)を構成する誘電体の相対湿度0%のときの比誘電率、ε2は同誘電体の相対湿度100%のときの比誘電率、Smは検出用電極(33a,33b)間の対向面積である。
【0015】
一方参照容量素子(32)の容量値の比(C2/C1)は、次式で示すことができる。
(数2)
C2/C1=(ε4・ε0・Sr/dr)/(ε3・ε0・Sr/dr)=ε4/ε3
なお、ε3は参照容量素子(32)を構成する誘電体の相対湿度0%のときの比誘電率、ε4は同誘電体の相対湿度100%のときの比誘電率、Srは参照用電極(34a,34b)間の対向面積である。
【0016】
本発明では、検出用感湿膜(35a)と参照用感湿膜(35b)が同じ構成材料により同じ厚さを有して形成され、検出用電極(33a,33b)と参照用電極(34a,34b)が同じ構成材料により同じ幅及び同じ厚さを有して形成されている。これにより、数式1,2において、ε1=ε3、ε2=ε4となり、検出容量素子(31)と参照容量素子(32)とで、容量値の比C2/C1(傾き)と電極間隔との関係が共通(同じ)となる。したがって、お互いの電極間隔(dm,dr)により、容量値の比C2/C1の大小関係が決定される。
【0017】
そして、本発明では、検出容量素子(31)のほうが容量値の比C2/C1(傾き)が大きくなるように電極間隔(dm,dr)が設定されるため、容量式湿度センサの感度を高めることができる。また、参照容量素子(32)の電極間隔(dr)を、検出容量素子(31)の電極間隔(dm)及び容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔よりも狭くするため、参照容量素子(32)の体格、ひいては容量式湿度センサ(10)の体格を小型化することができる。
【0018】
このように本発明によれば、検出容量素子(31)と参照容量素子(32)が基板(20)上の同一面(20a)に形成され、参照容量素子(32)も感湿膜(35b)を有する容量式湿度センサ(10)において、感度を高めつつ従来よりも体格を小型化することができる。
【0019】
請求項2に記載のように、検出容量素子(31)の電極間隔(dm)を、容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔以下とすると良い。これによれば、検出容量素子(31)の体格を小型化し、ひいては容量式湿度センサ(10)の体格をより小型化することができる。
【0020】
より好ましくは、請求項3に記載のように、検出容量素子(31)の電極間隔(dm)を、容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔とすると良い。これによれば、検出容量素子(31)の傾きが最大となるため、検出容量素子(31)と参照容量素子(32)の傾きの差をより大きくすることができる。すなわち、容量式湿度センサ(10)の感度をより高めることができる。
【0021】
請求項4に記載のように、水分による腐食から各電極(33a,33b,34a,34b)を保護するための保護膜(36)が、各電極(33a,33b,34a,34b)を覆って配置され、
検出用感湿膜(35a)及び参照用感湿膜(35b)は、保護膜(36)上に形成されると良い。
【0022】
これによれば、参照用感湿膜(35b)と保護膜(36)とにより、参照用電極(34a,34b)の腐食を効果的に抑制することができる。また、検出用電極(33a,33b)についても、その腐食を効果的に抑制することができる。
【0023】
また、保護膜(36)を有さず、電極(33a,33b,34a,34b)に接して感湿膜(35a,35b)が配置される構成に較べて、電極間隔による傾き(容量値の比C2/C1)の変化幅を大きくすることができる。このため、検出容量素子(31)の傾きと参照容量素子(32)の傾きの差を大きくすることができる。
【0024】
請求項5に記載のように、参照容量素子(32)の電極間隔(dr)及び検出容量素子(31)の電極間隔(dm)を、保護膜(36)の厚さと電極(33a,33b,34a,34b)の厚さとの和以上とすることが好ましい。
【0025】
電極間隔(dr,dm)が狭いと、電極間の部分に対応して保護膜(36)に形成される溝部(36a)の開口幅が狭くなり、この溝部(36a)に位置する感湿膜(35a,35b)に吸着された水分が蒸発しにくい。このため、相対湿度の上昇時と低下時とで、同じ相対湿度でも容量値に差、すなわちヒステリシスが生じる。
【0026】
これに対し、本発明では、電極間隔(dr,dm)を保護膜(36)の厚さと電極(33a,33b,34a,34b)の厚さとの和以上とする。これにより、電極間の部分に対応して保護膜(36)に形成される溝部(36a)の開口幅を、溝部(36a)内に位置する感湿膜(35a,35b)に吸着された水分が蒸発するために十分な広さとすることができる。このため、上記ヒステリシスを低減することができる。
【0027】
請求項6に記載のように、検出用電極(33a,33b)及び参照用電極(34a,34b)は、それぞれ櫛歯形状をなしていることが好ましい。これによれば、一対の検出用電極(33a,33b)の対向面積、及び、一対の参照用電極(34a,34b)の対向面積を大きくすることができるため、容量湿度センサの感度をより高めることができる。
【0028】
請求項7に記載のように、検出用感湿膜(35a)と参照用感湿膜(35b)は、1つの感湿膜(35)として一体的に形成されても良い。これによれば、構成を簡素化することができる。また、1つの感湿膜(35)として基板(20)との接着面積が増加することとなるので、検出用感湿膜(35a)と参照用感湿膜(35b)とを別体とする構成に較べて、剥離しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の容量式湿度センサを備える湿度検出装置の概略構成を示す斜視図である。便宜上、保護ゲルを省略して図示している。
【図2】本実施形態に係る容量式湿度センサの概略構成を示す平面図である。便宜上、検出用電極、参照用電極、パッドに接続された配線を実線で図示している。また、保護ゲルを破線で示している。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。便宜上、電極の数を減らして図示している。また、パッドにボンディングワイヤが接続され、該パッドが保護ゲルで覆われた状態を示している。
【図4】相対湿度と容量値との関係を示す図である。
【図5】図2において、検出容量素子及び参照容量素子の周辺を拡大した平面図である。便宜上、パッドに接続された配線の一部を省略して図示している。図2同様、検出用電極及び参照用電極を実線で示している。また、感湿膜を破線で示している。
【図6】容量式湿度センサに構成された容量素子と回路チップに構成された処理回路の等価回路の一例を示す図である。
【図7】CV変換動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図8】電極間隔と容量値の湿度変化に対する傾き(容量値の比C2/C1)との関係を示す図である。
【図9】対向容量とフリンジ容量を説明するための断面図である。
【図10】電極間隔と保護膜に形成される溝部の形状との関係を示す断面図であり、(a)は電極間隔1.5μm、(b)は電極間隔3.0μmの場合をそれぞれ示している。
【図11】容量変化量のヒステリシスの大きさとの関係を示す図である。一例として、電極間隔1.5μmの場合を示している。
【図12】電極間隔とヒステリシスの大きさとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。また、形成範囲を明確化するため、図2の平面図において、感湿膜及びダム部にハッチングを施している。
【0031】
図1は、本実施形態の容量式湿度センサ10を備える湿度検出装置100である。この湿度検出装置100は、合成樹脂等を用いて有底角筒状に形成されたケース110と、該ケース110の底部内面に固定されたリードフレームのアイランド111,112と、アイランド111に搭載された容量式湿度センサ10と、アイランド112に搭載された回路チップ113と、一端がケース110の内部に露出し、他端がケース110外に延出されたリード114を備える。
【0032】
そして、容量式湿度センサ10と回路チップ113とが、ボンディングワイヤ115を介して電気的に接続され、回路チップ113とリード114とが、ボンディングワイヤ116を介して電気的に接続されている。また、図1において省略するが、ボンディングワイヤ115,116及びその接続部位(パッド)は、保護ゲル(図3に示す保護ゲル60)によって被覆されている。
【0033】
このように、本実施形態では、容量式湿度センサ10と、CV変換回路などが構成された回路チップ113とが、別チップとなっている。
【0034】
次に、容量式湿度センサ10の構成について説明する。
【0035】
容量式湿度センサ10は、所謂センサチップであり、図2及び図3に示すように、同一の基板20(半導体チップ)に、湿度検出部30、外部接続端子としてのパッド40、保護ゲル60の流動を抑制するダム部50を備える。なお、保護ゲル60は、パッド40にボンディングワイヤ115が接続された状態で、パッド40及びボンディングワイヤ115におけるパッド40との接続部分を被覆するように、基板20上に配置される。
【0036】
本実施形態では、基板20としてシリコン基板を採用しており、この基板20の一面側表層に、図3に示すように全面にわたって不純物の拡散層21が形成されている。より詳しくは、拡散層21がp導電型の拡散層21となっている。この拡散層21上には絶縁膜22が形成されており、絶縁膜22の一部位にコンタクトホール22aが形成されている。本実施形態では、絶縁膜22が、基板20側からシリコン酸化膜、BPSG膜の順に積層されてなる。
【0037】
湿度検出部30,パッド40,ダム部50は、この絶縁膜22上に形成されている。本実施形態では、絶縁膜22を含む基板20を基板とみなし、絶縁膜22における基板20と反対の面を、基板20の一面20aとする。
【0038】
湿度検出部30は、検出容量素子31と参照容量素子32を備える。検出容量素子31及び参照容量素子32は、ともに相対湿度の変化に応じてその容量値が変化するように構成されており、容量値の湿度変化に対する傾きが互いに異なる。図4に示すように、相対湿度0%での容量値、すなわち初期容量値は、検出容量素子31(容量Cm)のほうが参照容量素子32(容量Cr)よりも大きい。また、容量値の湿度変化に対する傾きは、検出容量素子31のほうが参照容量素子32よりも大きくなっている。
【0039】
図4に示すように、容量素子31,32の初期容量の差は2つの容量値のオフセットであり、容量値の差からオフセット値を引いた値の、湿度変化に対する変化量が、容量式湿度センサ10の感度である。このため、検出容量素子31及び参照容量素子32において、容量値の湿度変化に対する傾きの差を大きくするほど、感度を高めることができる。
【0040】
検出容量素子31は、基板20の一面20aにおいて、互いに対向して配置された一対の検出用電極33a,33bを有する。一方、参照容量素子32は、上記一面20aの検出用電極33a,33bとは異なる位置において、互いに対向して配置された一対の参照用電極34a,34bを有する。
【0041】
これら検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bの形状は特に限定されるものではない。本実施形態では、検出用電極33a,33bとして、検出用電極33aと検出用電極33bとが交互に配置されてなる櫛歯形状を採用している。このように櫛歯形状とすると、検出用電極33a,33bの配置面積を小さくしつつ、互いに対向する面積を大きくすることができる。これにより、周囲の湿度変化にともなって変化する検出用電極33a,33b間の静電容量の変化量が大きくなり、容量式湿度センサ10の感度が向上する。同様に、参照用電極34a,34bとして、参照用電極34aと参照用電極34bとが交互に配置されてなる櫛歯形状を採用している。
【0042】
また、図5に示すように、互いに対向する部分の電極長さは、検出用電極(33a,33b)のほうが参照用電極34a,34bよりも長くなっている。また、櫛歯の本数は、検出用電極33a,33bのほうが参照用電極34a,34bよりも多くなっている。これらにより、対をなす電極同士の対向面積は、検出用電極33a,33bのほうが参照用電極34a,34bよりも大きくなっている。そして、初期容量値は、検出容量素子31のほうが参照容量素子32よりも大きくなっている。
【0043】
また、検出用電極33a,33bの対向面間の距離、すなわち検出容量素子31の電極間隔dmと、参照用電極34a,34bの対向面間の距離、すなわち参照容量素子32の電極間隔drは、所定の条件を満たして設定されている。この電極間隔dm,drの設定条件が、本実施形態の主たる特徴部分である。その詳細については後述する。
【0044】
このように構成される検出用電極33a,33bと参照用電極34a,34bは、同じ構成材料により、同じ幅及び同じ厚さを有して形成されている。具体的には、アルミニウム等の水分により腐食する虞のある配線材料を、蒸着やスパッタリング等の手法によって基板20の一面20aにほぼ均一の厚さで堆積させる。そして、フォトリソグラフィ処理により、ほぼ同じ電極幅を有しつつ櫛歯形状にパターニングすることで形成されている。本実施形態では、後述するパッド40同様、アルミニウムを用いて検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bが形成されている。
【0045】
図3に示すように、検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34b上には保護膜36が形成されており、この保護膜36を介して感湿膜35が形成されている。また、感湿膜35として、参照用電極34a,34bを覆う参照用感湿膜35bが形成されている。
【0046】
保護膜36は、検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bが、水分により腐食するのを防ぐためのものである。本実施形態では、保護膜36として、プラズマCVD法により形成されるシリコン窒化膜を採用している。この保護膜36は、検出用電極33a,33b及び参照電極34a,34b上だけでなく、基板20の一面20aにおいて、パッド40を除く部分に形成されている。
【0047】
保護膜36上には、検出用電極33a,33b及び検出用電極33a,33b間を覆うように検出用感湿膜35aが形成されている。また、参照用電極34a,34b及び参照用電極34a,34b間を覆うように、参照用感湿膜35bが形成されている。これら感湿膜35a,35bは、同一材料によりほぼ同じ厚さを有して構成されている。
【0048】
本実施形態では、検出用電極33a,33bを覆う検出用感湿膜35aと、参照用電極34a,34bを覆う参照用感湿膜35bが、1つの感湿膜35として一体化されている。本実施形態では、感湿膜35の構成材料としてポリイミド系材料を採用しており、スピンコート法や印刷法にて前駆体(ポリアミド)を基板20の一面20a上に塗布後、加熱硬化(イミド化処理)することにより、ほぼ均一の厚さを有して形成されている。
【0049】
このように構成される湿度検出部30において、各容量素子31,32を構成する電極33a,33b,34a,34bは、配線37により、対応するパッド40と電気的に接続されている。本実施形態では、配線37のうち、湿度検出部30と反対の端部付近で保護膜36の開口部から露出された部分をパッド40としている。
【0050】
図2に示すように、検出容量素子31を構成する検出用電極33aは、配線37aにより、対応するパッド40aと電気的に接続されている。検出容量素子31を構成する検出用電極33b及び参照容量素子32を構成する参照用電極34bは、共通の配線37bにより、対応するパッド40bと電気的に接続されている。また、参照容量素子32を構成する参照用電極34aは、配線37cにより、対応するパッド40cと電気的に接続されている。
【0051】
これら配線37a〜37cは、基板20の一面20a、すなわち検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bと同一平面に形成されている。また、検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bと同じアルミニウムを用いて形成されており、これら配線37a〜37cも、保護膜36により被覆されている。
【0052】
本実施形態では、さらにパッド40として、上記拡散層21に電気的に接続されたパッド40dを有する。このパッド40dには、平面矩形状の基板20の縁部に沿って形成された配線37dが接続されており、配線37dのうち、図3に示すように保護膜36の開口部から露出された部分がパッド40dとなっている。配線37dも、基板20の一面20a、すなわち検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bと同一平面に形成されている。また、検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bと同じアルミニウムを用いて形成されており、上記した保護膜36により被覆されている。配線37dは、図3に示すように、絶縁膜22に形成されたコンタクトホール22aを埋めるように形成されており、拡散層21と電気的に接続されている。このため、パッド40dに定電位(例えばグランド電位)を印加することで、配線37dを通じて拡散層21を、電磁波に対するシールド層として機能させることができる。
【0053】
これらパッド40(40a〜40d)は、ボンディングワイヤ115が接続された状態で、保護ゲル60によって被覆される。保護ゲル60は、アルミニウムからなるパッド40が、水分により腐食するのを防ぐためのものであり、フッ素系ゲルなど耐水性を有する材料からなる。この保護ゲル60は、パッド40の周辺に、ディスペンサなどを用いて塗布し、その後硬化することで形成される。
【0054】
このため、塗布した時点では、保護ゲル60が流動性を有している。パッド40周辺に塗布された保護ゲル60が、湿度検出部30側に流動し、感湿膜35(35a,35b)に付着すると、感湿膜35の性質が変化してしまい、雰囲気湿度にかかる検出精度が低下しかねない。このため、基板20の一面20aにおいて湿度検出部30とパッド40の間には、パッド40周辺に塗布した保護ゲル60が、湿度検出部30側への流入し、感湿膜36に付着するのを抑制するためのダム部50が形成されている。
【0055】
このダム部50は、感湿膜35(35a,35b)と同一材料を用いて形成されている。このため、感湿膜35(35a,35b)と同一工程で形成することができる。本実施形態では、図2に示すように、基板20における平面矩形状の一面20aにおいて、矩形の1辺に沿う一端側に湿度検出部30が形成され、他端にパッド40が形成されている。そして、基板20の一面20aにおいて湿度検出部30の形成領域とパッド40の形成領域とを分割するように、平面矩形状の基板20の相対する一方の辺から他方の辺にわたって形成されている。このダム部50は、感湿膜35とほぼ同じ厚さを有している。
【0056】
次に、上記した容量式湿度センサ10の製造方法の一例について説明する。
【0057】
先ず、ウェハ状態のシリコンからなる基板20を準備し、熱酸化により一面にシリコン酸化膜を形成する。次いで、シリコン酸化膜を介して基板20の一面側表層に不純物をイオン注入し、拡散層21を形成した後、シリコン酸化膜上にBPSG膜を形成し、シリコン酸化膜とともに絶縁膜22とする。次いで、絶縁膜22の所定位置にコンタクトホール22aを形成した後、基板20の一面20a全域にアルミニウムを堆積させ、パターニングにより、各電極33a,33b,34a,34b、パッド40(40a〜40d)を含む配線37(37a〜37d)を形成する。このように、湿度検出部30を構成する電極33a,33b,34a,34bを、同一面上に同一材料を用いて同一の工程で形成する。
【0058】
次いで、基板20の一面20a全域に保護膜36としてのシリコン窒化膜を形成し、パターニングしてパッド40(40a〜40d)を露出させる。そして、例えばスピンコート法により基板20の一面20a上に前駆体を塗布し、硬化処理した後、パターニングすることで、感湿膜35(35a,35b)及びダム部50を形成する。このように、湿度検出部30を構成する感湿膜35と同一材料を用いて同一の工程で、ダム部50を形成する。
【0059】
次いで、基板20をダイシングし、チップ単位とする。これにより、容量式湿度センサ10を得ることができる。なお、得られた容量式湿度センサ10を、ケース110と一体成形されたアイランド111に搭載し、アイランド112に搭載した回路チップ113と、ボンディングワイヤ115により接続する。そして、パッド40周辺及びボンディングワイヤ115が覆われるように、ディスペンサなどを用いて保護ゲル60を塗布し、塗布した保護ゲル60を硬化させるなどして、湿度検出装置100を得ることができる。
【0060】
次に、容量式湿度センサ10が備える容量素子31,32及びその処理回路について説明する。
【0061】
図6に示されるように、雰囲気の相対湿度に応じて容量値が変化する検出容量素子31(容量Cm)と、同じく雰囲気の相対湿度に応じて容量値が変化する参照容量素子32(容量Cr)とは直列接続されている。一方、回路チップ113には、処理回路として、これら容量素子31,32の容量差を電圧値に変換するSC(スイッチドキャパシタ)回路120などが構成されている。
【0062】
SC回路120は、図6に示すように、例えば5Vの同一の振幅で且つ180度の位相差を有する矩形波である搬送波1及び搬送波2を容量Cm,Crに対してそれぞれ印加する発振回路121、例えば2.5Vのバイアス電圧を出力する基準電圧源122、容量Cm,Crの中点電位とバイアス電圧とを差動増幅する差動増幅回路123、所定容量を有するコンデンサ124、アナログスイッチ125、及び図示しないサンプルホールド回路などを備える。
【0063】
このように構成されたSC回路120で実行されるCV変換の一例を図7にタイミングチャートとして示す。図7に示すように、SC回路120で実行されるCV変換は、「リセット→サンプルホールド→搬送波切替→サンプルホールド」を一周期として繰り返し実行される。
【0064】
例えば時刻t1においてアナログスイッチ125がオンされると、コンデンサ124が放電される(リセット)。また、このコンデンサ124の放電と同時に、搬送波1が立ち上げられるとともに搬送波2が立ち下げられる。このとき、容量Cm>容量Crと、容量Cmの発振回路121側の検出用電極33a(図2参照)及び容量Crの発振回路121側の参照用電極34b(図2参照)それぞれに印加される電圧とに応じて、これら容量Cm及び容量Crが充電される。ちなみに、容量Cmの差動増幅回路123側の検出用電極33b及び容量Crの差動増幅回路123側の参照用電極34a(図2参照)の電荷量は、負の電荷が多い状態になる。
【0065】
次いで、例えば時刻t2においてアナログスイッチ125がオフされると、電極33b,34aと、コンデンサ124の差動増幅回路123の反転入力端子側の電極とによって閉回路が構成され、先の時刻t1から時刻t2までに蓄えられた電荷量は保存される。この状態にある例えば時刻t3において、SC回路120の出力電圧値Voがサンプリングされ、適宜の記憶保持手段に一時的に記憶される。
【0066】
次いで、例えば時刻t4において、搬送波1が立ち下げられると同時に搬送波2が立ち上げられる。このように搬送波が反転されると、電極33b,34aの電荷量は、正の電荷が多い状態になる。しかしながら、上記したように、電極33b,34aと、コンデンサ124の差動増幅回路123の反転入力端子側の電極とによって閉回路が構成されていることから、この閉回路にある電荷量は保存されている。このため、電極33b,34aの電荷の平衡状態から溢れた負の電荷が、コンデンサ124の差動増幅回路123の反転入力端子側の電極に移動する。この電荷の移動により、コンデンサ124の差動増幅回路123の出力端子側の電極には、正の電荷が蓄えられることになり、「蓄えられる電荷量=容量×電位差」の関係から、移動した電荷量に比例し、コンデンサ124の容量値に反比例した電圧値分だけ、SC回路120の出力電圧値Voが変動することになる。
【0067】
このように変動した出力電圧値VoがSC回路120の出力端子から出力される。そして、例えば時刻t6において、電荷の移動が終了し安定したところで、サンプリングされ、適宜の記憶保持手段に一時的に記憶される。そして、続く時刻t7から、この周期が同様に開始される。
【0068】
なお、最終的には、上記時刻t6においてサンプリングした電圧値から、上記時刻t3においてサンプリングした電圧値を差動演算した値に基づいて、雰囲気の相対湿度が検出される。
【0069】
このように、容量式湿度センサ10における検出容量素子31と参照容量素子32との容量差が、CV変換回路(SC回路120)により電圧値に変換され、この電圧値に基づいて雰囲気の相対湿度が検出される。このため、上記図4に示した検出容量素子31(容量Cm)の傾きと、参照容量素子32(容量Cr)の傾きについて、これら傾きの差を大きくするほど、湿度変化に対する容量差の変化量が大きくなる。すなわち、容量式湿度センサ10の感度を高めることができる。
【0070】
次に、容量式湿度センサ10の感度を高めつつ体格を小型化できる、電極間隔dm,drについて説明する。
【0071】
本実施形態では、参照容量素子32にも感湿膜35(参照用感湿膜35b)を設けており、参照容量素子32の容量値も相対湿度に応じて変化する。このため、容量式湿度センサ10の感度は、参照容量素子32が感湿膜35を有さない構成に較べて低くなる。したがって、感度の観点から、参照容量素子32の傾き、換言すれば相対湿度0%(以下、0%RHと示す)のときの容量値C1に対する相対湿度100%(以下、100%RHと示す)のときの容量値C2の比C2/C1、をできるだけ小さくする(1に近づける)ことが好ましい。なお、検出容量素子31の傾き(容量値の比C2/C1)をより大きくすることで感度を高めることも考えられるが、この場合、検出容量素子31、ひいては容量式湿度センサ10の体格が増大してしまう。
【0072】
ここで、検出容量素子31の傾き、すなわち容量値C2の比C2/C1は、次式で示すことができる。
(数3)
C2/C1=(ε2・ε0・Sm/dm)/(ε1・ε0・Sm/dm)=ε2/ε1
なお、ε0は真空の誘電率、ε1は検出容量素子31を構成する誘電体の0%RHのときの比誘電率、ε2は同誘電体の100%RHのときの比誘電率、Smは検出用電極33a,33b間の対向面積である。
【0073】
一方、参照容量素子32の傾き、すなわち容量値C2の比C2/C1は、次式で示すことができる。
(数4)
C2/C1=(ε4・ε0・Sr/dr)/(ε3・ε0・Sr/dr)=ε4/ε3
なお、ε3は参照容量素子32を構成する誘電体の0%RHのときの比誘電率、ε4は同誘電体の100%RHのときの比誘電率、Srは参照用電極34a,34b間の対向面積である。
【0074】
このように、検出容量素子31の傾きは、ε2/ε1で決定される。また、参照容量素子32の傾きは、ε4/ε3で決定される。上記したように、本実施形態では、検出用感湿膜35aと参照用感湿膜35bが同じ構成材料により同じ厚さを有して形成されている。また、検出用電極33a,33bと参照用電極34a,34bが同じ構成材料により同じ幅及び同じ厚さを有して形成されている。このため、上記した数式3,4において、ε1=ε3、ε2=ε4となり、検出容量素子31と参照容量素子32とにおいて、傾き(容量値の比C2/C1)と電極間隔との関係が共通(同じ)となる。したがって、お互いの電極間隔dm,drにより、傾きの大小関係が決定される。
【0075】
図8は、電極間隔と傾き(容量値の比C2/C1)との関係について、本発明者が検討したシミュレーション結果を示している。このシミュレーションにおいては、基板20を厚さ400μmのシリコン、絶縁膜22を厚さ0.525μm±0.0525μmの二酸化シリコン、対をなす電極を厚さ0.7μm±0.07μm、幅4μm±0.4μmのアルミニウム、保護膜36を厚さ1.6μm±0.16μmの窒化シリコン、感湿膜35を厚さ2μm±0.2μm、0%RHの比誘電率2.8、100%RHの比誘電率3.2のポリイミドとした。
【0076】
図8に示すように、傾き(容量値の比C2/C1)は、電極間隔8μmで最大となり、電極間隔8μm以下では、電極間隔の増加にともなって増加する。また、電極間隔が8μmを越えると電極間隔の増加にともなって減少する。電極間隔と傾きとの関係がこのような傾向を示すのは、以下の理由によるものと考えられる。図9は、容量を構成する対向容量とフリンジ容量を説明するための断面図であり、容量素子31,32のうち、検出容量素子31(容量Cm)側を例示している。なお、便宜上、フリンジ容量のうち、上面39側のみを示している。
【0077】
感湿膜35(検出用感湿膜35a)は、それ自体の比誘電率は相対湿度に応じて変化しないが、図9に示すように水分130の吸着量により、水分を含む全体の比誘電率が変化する。このため、検出用電極33a,33b間に形成される容量Cmに対して感湿膜35(35a)の影響が大きいほど、容量値の湿度変化に対する傾きは大きくなる。図9に示すように、検出容量素子31の容量は、対向配置された一対の検出用電極33a,33bにおいて、対向面38間に形成される対向容量と、基板20と対向する下面間及び該下面と反対の上面39間をそれぞれ回り込んで形成されるフリンジ容量とにより決定される。
【0078】
この容量成分のうち、図9に示すように、特に上面39間を回り込むフリンジ容量は、一般的に検出用電極33a,33bの厚さ(対向面38の高さ)よりも幅(上面39の長さ)のほうが広い、上面39間を回りこむことで介在される感湿膜35(35a)が多いため、感湿膜35(35a)の影響を大きく受ける。したがって、容量として、フリンジ容量の影響が大きくなると、傾き(容量値の比C2/C1)が大きくなる。上記したように、電極間隔dmの増加にともない、間隔8μmまで傾きが増加するのは、電極間隔dmが狭いと対向容量の影響が大きく(換言すれば感湿膜35の影響が小さく)、電極間隔dmの増加にともないフリンジ容量の影響が大きくなる(換言すれば感湿膜35の影響が大きくなる)ためであると考えられる。また、間隔8μmを越えると傾きが小さくなるのは、電極間隔dmが広くなり、上面39間でフリンジ容量を形成しにくくなるためであると考えられる。なお、この点については、参照容量素子32(容量Cr)でも同じである。
【0079】
これに対し、本実施形態では、参照容量素子32の電極間隔drを、検出容量素子31の電極間隔dm及び容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔8μmよりも狭く、且つ、検出容量素子31が参照容量素子32よりも容量値の比C2/C1が大きくなるように、電極間隔dm,drを設定している。具体的には、電極間隔dm,drを、ともに傾きが最大値を示す間隔8μmよりも狭い間隔としている。そして、参照容量素子32の電極間隔drを、検出容量素子31の電極間隔dmよりも狭い値としている。詳しくは、検出容量素子31の電極間隔dmを、フリンジ容量の影響が大きい間隔、具体的には7.5μmとしている。これにより、検出容量素子31の傾きは、1.065程度となっている。
一方、参照容量素子32の電極間隔drを、フリンジ容量の影響が小さい間隔としている。これにより、参照容量素子32の傾きは、1.035程度となっている。
【0080】
このように、検出容量素子31のほうが参照容量素子32よりも容量値の比C2/C1が大きくなるように電極間隔dm,drが設定されるため、容量式湿度センサ10の感度を高めることができる。
【0081】
また、参照容量素子32より検出容量素子31の容量値の比C2/C1が大きい範囲で、参照容量素子32の電極間隔drを、検出容量素子31の電極間隔dm及び容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔よりも狭くする。すなわち、参照容量素子32の電極間隔drを、フリンジ容量の影響が小さい間隔とする。したがって、参照容量素子32の体格、ひいては容量式湿度センサ10の体格を小型化することができる。
【0082】
このように本実施形態によれば、検出容量素子31と参照容量素子32が基板20上の同一面20aに形成され、参照容量素子32も感湿膜35(参照用感湿膜35b)を有する容量式湿度センサ10において、感度を高めつつ従来よりも体格を小型化することができる。
【0083】
特に本実施形態では、検出容量素子31の電極間隔dmを、容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔以下としている。このため、上記したように感度を高めつつ、検出容量素子31の体格を小型化し、ひいては容量式湿度センサ10の体格をより小型化することができる。
【0084】
なお、上記したように、電極間隔が傾きの最大を示す間隔(図8において8μm)を越えると、電極間隔の増加にともなって傾きが減少する。したがって、容量値の比C2/C1が最大となる電極間隔を越える範囲において、参照容量素子32の電極間隔drを、検出容量素子31の電極間隔dmよりも大きくすることで、検出容量素子31の傾きと参照容量素子32の傾きの差を大きくして感度を高めることも考えられる。しかしながら、この場合、参照容量素子32の電極間隔drを大きくしなければならず、参照容量素子32、ひいては容量式湿度センサ10の体格を小型化するのが困難である。
【0085】
また、本実施形態では、水分による腐食から各電極33a,33b,34a,34bを保護するための保護膜36が、検各電極33a,33b,34a,34bをそれぞれ覆って配置されている。このため、参照用感湿膜35bと保護膜36とにより、参照用電極34a,34bの腐食を効果的に抑制することができる。また、検出用電極33a,33bについても、その腐食を効果的に抑制することができる。その上で、検出用感湿膜35a及び参照用感湿膜35bは、保護膜36上に形成されている。このため、本実施形態では、対向容量が主として保護膜36を誘電体とするのに対し、上面39間のフリンジ容量が主として感湿膜35を誘電体とする。したがって、保護膜36を有さず、電極33a,33b,34a,34bに接して感湿膜35(35a,35b)が配置される構成に較べて、電極間隔による傾き(容量値の比C2/C1)の変化幅を大きくすることができる。これにより、検出容量素子31の傾きと参照容量素子32の傾きの差を大きくすることができる。
【0086】
ところで、電極間隔dmが狭いと、図10(a)に示すように、検出用電極33a,33b間の部分に対応して保護膜36に形成される溝部36aの開口幅が狭くなる。図10(a)では、電極間隔dmが1.5μmの場合のSEMにより確認された断面構造を示している。このように、溝部36aの開口幅が狭いと、溝部36a内に位置する感湿膜35(検出用感湿膜35a)に吸着された水分が蒸発しにくいため、図11に示すように、相対湿度の上昇時と低下時とで、同じ相対湿度でも容量値に差、すなわちヒステリシスが生じる。なお、図11では、電極間隔dmが1.5μmの結果を示している。そして、図11に破線矢印で示すヒステリシスの大きさは、図12に示すように、相対湿度の20%分の変化に相当する。
【0087】
なお、図12に示すように、電極間隔dmがより狭い1.0μmの場合のヒステリシス大きさは、相対湿度の43%分の変化に相当する。
【0088】
一方、電極間隔dmが広いと、図10(b)に示すように、検出用電極33a,33b間の部分に対応して保護膜36に形成される溝部36aの開口幅も広くなる。図10(b)では、電極間隔dmが3.0μmの場合のSEMにより確認された断面構造を示している。このように、溝部36aの開口幅が広いと、溝部36a内に位置する感湿膜35(検出用感湿膜35a)に吸着された水分が蒸発しやすくなり、上記ヒステリシスを低減することができる。図12に示すように、電極間隔dmが3.0μmの場合のヒステリシスの大きさは、相対湿度9%分程度の変化に相当する。なお、上記においては、電極間隔dmについて説明したが、電極間隔drについても同じである。
【0089】
本実施形態では、参照容量素子32の電極間隔dr及び検出容量素子31の電極間隔dmを、ともに保護膜36の厚さと電極33a,33b,34a,34bの厚さとの和以上としている。上記シミュレーションのパラメータで示したように、本実施形態では、対をなす電極を厚さを0.7μm±0.07μm、保護膜36の厚さを1.6μm±0.16μmとしている。そして、厚さの和の最大値2.57μmにマージンを加味した値3μm(図8の一点鎖線)未満とならないように、電極間隔dm,drを設定している。これにより、図10(b)に示したように、電極間の部分に対応して保護膜36に形成される溝部36aの開口幅を、溝部36a内に位置する感湿膜35(35a,35b)に吸着された水分が蒸発するために十分な広さとすることができる。このため、上記ヒステリシスを低減することができる。
【0090】
また、本実施形態では、検出用電極33a,33b及び参照用電極34a,34bを、それぞれ櫛歯形状としている。これによれば、一対の検出用電極33a,33bの対向面積、及び、一対の参照用電極34a,34bの対向面積を大きくすることができるため、体格の増大を抑制しつつ容量式湿度センサ10の感度をより高めることができる。
【0091】
また、本実施形態では、検出用感湿膜35aと参照用感湿膜35bを、1つの感湿膜35として一体的に形成している。このため、構成を簡素化することができる。また、1つの感湿膜35として基板20との接着面積が増加することとなるので、検出用感湿膜35aと参照用感湿膜35bとを別体とする構成に較べて、感湿膜が剥離しにくくなる。特に、ダイシング時の剥離を抑制することができる。
【0092】
(変形例)
上記実施形態では、検出容量素子31の電極間隔dmを、容量値の比C2/C1(傾き)が最大を示す間隔とは異なる値とする例を示した。しかしながら、より好ましくは、電極間隔dmを、容量値の比C2/C1が最大を示す間隔(図8では8μm)とすると良い。これによれば、検出容量素子31の傾きが最大となるため、検出容量素子31と参照容量素子32の傾きの差をより大きくすることができる。すなわち、容量式湿度センサ10の感度をより高めることができる。
【0093】
また、参照容量素子32の電極間隔drについても、上記した4.5μmに限定されるものではない。例えば容量値の比C2/C1(傾き)が最大を示す間隔の1/2以下の間隔とすると、参照容量素子32の傾きがより小さくなり(1に近づき)、これにより感度を高めることができる。図8に示す例では、電極間隔drを4μm以下とすれば良い。また、上記したヒステリシスを低減できる範囲で、できる限り狭くしたほうが、検出容量素子31と参照容量素子32の傾きの差をより大きくすることができる。すなわち、容量式湿度センサ10の感度をより高めることができる。上記実施形態では、4.5μmの例を示したが、例えば電極間隔drを3μmとすると、感度をより高めることができる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0095】
検出用電極33a,33bと参照用電極34a,34bの本数は上記例に限定されるものではない。対をなす検出用電極33aと検出用電極33bとを、それぞれ少なくとも1本有すれば良い。また、対をなす参照用電極34aと参照用電極34bとを、それぞれ少なくとも1本有すれば良い。
【0096】
参照容量素子32の電極間隔drと検出容量素子31の電極間隔dmは、電極間隔drが電極間隔dm及び容量値の比C2/C1(傾き)の最大値を示す間隔よりも狭く、且つ、検出容量素子31のほうが参照容量素子32よりも容量値の比C2/C1が大きい、との関係を少なくとも満たして設定されれば良い。したがって、上記実施形態とは異なり、電極間隔dmを、傾き(容量値の比C2/C1)が最大を示す間隔よりも広い間隔としても良い。また、電極間隔dm,drを3μm未満としてもよい。さらには、電極間隔dm,drを、保護膜36と電極33a,33b,34a,34bの厚さとの和未満としてもよい。
【0097】
本実施形態では、容量式湿度センサ10の基板20が、拡散層21、該拡散層21に電気的に接続される配線37d及びパッド40dを有する例を示したが、これらを有さない構成としても良い。
【0098】
本実施形態では、回路チップ113が容量式湿度センサ10と別チップとして構成される例を示したが、回路チップ113の処理回路を、容量式湿度センサ10を構成する基板20に集積し、1チップ化しても良い。
【0099】
本実施形態では、検出用感湿膜35aと参照用感湿膜35bが、1つの感湿膜35として一体化されている例を示したが、分離された構成としても良い。
【0100】
本実施形態では、電極33a,33b,34a,34b上に保護膜36が配置され、この保護膜36上に感湿膜35(35a,35b)が配置される例を示した。しかしながら、保護膜36を有さず、電極33a,33b,34a,34b上に感湿膜35(35a,35b)が直接配置された構成としても良い。
【0101】
本実施形態では、感湿膜35と同一材料からなるダム部50の例を示したが、ダム部50の構成は上記例に限定されるものではない。また、ダム部50を有さない構成としても良い。
【符号の説明】
【0102】
10・・・容量式湿度センサ
20・・・基板
20a・・・一面
31・・・検出容量素子
32・・・参照容量素子
33a,33b・・・検出用電極
34a,34b・・・参照用電極
35・・・感湿膜
35a・・・検出用感湿膜
35b・・・参照用感湿膜
36・・・保護膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の基板(20)に、周囲の湿度変化に応じて容量値が変化する検出容量素子(31)と、容量値の湿度変化に対する傾きが前記検出容量素子(31)と異なる参照容量素子(32)と、が形成された容量式湿度センサであって、
前記検出容量素子(31)は、前記基板(20)上の同一面(20a)において対向配置された一対の検出用電極(33a,33b)と、該検出用電極(33a,33b)を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する検出用感湿膜(35a)と、を有し、
前記参照容量素子(32)は、前記検出用電極(33a,33b)の配置面(20a)において対向配置された一対の参照用電極(34a,34b)と、該参照用電極(34a,34b)を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する参照用感湿膜(35b)と、を有し、
前記検出用感湿膜(35a)と前記参照用感湿膜(35b)は、同じ構成材料により同じ厚さを有して形成されており、
前記検出用電極(33a,33b)と前記参照用電極(34a,34b)は、同じ構成材料により同じ幅及び同じ厚さを有して形成されるとともに、
各容量素子(31,32)の相対湿度0%での容量値(C1)に対する相対湿度100%での容量値(C2)の比(C2/C1)を前記傾きとすると、
前記参照容量素子(32)の電極間隔(dr)は、前記検出容量素子(31)の電極間隔(dm)及び容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔よりも狭く、且つ、容量値の比C2/C1は、前記検出容量素子(31)が前記参照容量素子(32)よりも大きい、との関係を満たして、前記電極間隔(dr,dm)が設定されていることを特徴とする容量式湿度センサ。
【請求項2】
前記検出容量素子(31)の電極間隔(dm)は、容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の容量式湿度センサ。
【請求項3】
前記検出容量素子(31)の電極間隔(dm)は、容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔とされていることを特徴とする請求項2に記載の容量式湿度センサ。
【請求項4】
水分による腐食から各電極(33a,33b,34a,34b)を保護するための保護膜(36)が、各電極(33a,33b,34a,34b)を覆って配置され、
前記検出用感湿膜(35a)及び前記参照用感湿膜(35b)は、前記保護膜(36)上に形成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の容量式湿度センサ。
【請求項5】
前記参照容量素子(32)の電極間隔(dr)及び前記検出容量素子(31)の電極間隔(dm)は、前記保護膜(36)の厚さと前記電極(33a,33b,34a,34b)の厚さとの和以上に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の容量式湿度センサ。
【請求項6】
前記検出用電極(33a,33b)及び前記参照用電極(34a,34b)は、それぞれ櫛歯形状をなしていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の容量式湿度センサ。
【請求項7】
前記検出用感湿膜(35a)と前記参照用感湿膜(35b)は、1つの感湿膜(35)として一体的に形成されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の容量式湿度センサ。
【請求項1】
共通の基板(20)に、周囲の湿度変化に応じて容量値が変化する検出容量素子(31)と、容量値の湿度変化に対する傾きが前記検出容量素子(31)と異なる参照容量素子(32)と、が形成された容量式湿度センサであって、
前記検出容量素子(31)は、前記基板(20)上の同一面(20a)において対向配置された一対の検出用電極(33a,33b)と、該検出用電極(33a,33b)を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する検出用感湿膜(35a)と、を有し、
前記参照容量素子(32)は、前記検出用電極(33a,33b)の配置面(20a)において対向配置された一対の参照用電極(34a,34b)と、該参照用電極(34a,34b)を覆って設けられ、水分の吸着により比誘電率が変化する参照用感湿膜(35b)と、を有し、
前記検出用感湿膜(35a)と前記参照用感湿膜(35b)は、同じ構成材料により同じ厚さを有して形成されており、
前記検出用電極(33a,33b)と前記参照用電極(34a,34b)は、同じ構成材料により同じ幅及び同じ厚さを有して形成されるとともに、
各容量素子(31,32)の相対湿度0%での容量値(C1)に対する相対湿度100%での容量値(C2)の比(C2/C1)を前記傾きとすると、
前記参照容量素子(32)の電極間隔(dr)は、前記検出容量素子(31)の電極間隔(dm)及び容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔よりも狭く、且つ、容量値の比C2/C1は、前記検出容量素子(31)が前記参照容量素子(32)よりも大きい、との関係を満たして、前記電極間隔(dr,dm)が設定されていることを特徴とする容量式湿度センサ。
【請求項2】
前記検出容量素子(31)の電極間隔(dm)は、容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の容量式湿度センサ。
【請求項3】
前記検出容量素子(31)の電極間隔(dm)は、容量値の比C2/C1の最大値を示す間隔とされていることを特徴とする請求項2に記載の容量式湿度センサ。
【請求項4】
水分による腐食から各電極(33a,33b,34a,34b)を保護するための保護膜(36)が、各電極(33a,33b,34a,34b)を覆って配置され、
前記検出用感湿膜(35a)及び前記参照用感湿膜(35b)は、前記保護膜(36)上に形成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の容量式湿度センサ。
【請求項5】
前記参照容量素子(32)の電極間隔(dr)及び前記検出容量素子(31)の電極間隔(dm)は、前記保護膜(36)の厚さと前記電極(33a,33b,34a,34b)の厚さとの和以上に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の容量式湿度センサ。
【請求項6】
前記検出用電極(33a,33b)及び前記参照用電極(34a,34b)は、それぞれ櫛歯形状をなしていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の容量式湿度センサ。
【請求項7】
前記検出用感湿膜(35a)と前記参照用感湿膜(35b)は、1つの感湿膜(35)として一体的に形成されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の容量式湿度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−247223(P2012−247223A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117195(P2011−117195)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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