説明

容量式物体検出装置

電界検出を用いる、準静電検出法として知られるクロスキャパシタ検出法と称されうる物体検出システム(50)及び方法が開示される。このシステム(50)は、少なくとも1つの電極装置(30)を備え、各電極装置(30)は1つの電界検出受信電極(32)と2つの電界検出送信電極(34,36)とを備える。一方の電界検出送信電極(36)は、他方の電界検出送信電極(34)が駆動される交番電圧(120)に比較して少なくとも部分的に逆位相部、例えば反転信号を有する交番電圧(130)によって駆動される。これは、電界検出受信電極(32)に誘導された電流の変化を検出することによって行われる物体検出の空間精度を改善する。1つの構成例においては、2つの電界検出送信電極(34,36)は前記電界検出受信電極(32)を取囲むように配置された環状リング形状をしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界検出を用いた物体又は特徴検出に関する。電界検出法は準静電(quasi-electrostatic)検出法としても知られており、クロスキャパシタ検出法と称することもできる。本発明は特に指紋検出に適したものであるが、それに限定されることはない。
【背景技術】
【0002】
物体検出のために用いられる検出技術は準静電検出法としても知られているキャパシタ検出法及び電界検出法を含む。3−D空間の物体を検出するために電界検出法を使用することは長年にわたって知られており、例えば近接センサにおいて用いられている。現実的には、ナソメニュー・ペタジーフィッシュ(gnathomenu petersii fish)は物体を検出するために電界検出法を用いる。その非常に単純な形態のキャパシタ検出法では、ただ1つの電極を用い、その電極の負荷キャパシタンスの測定が行われる。この負荷キャパシタンスは電極とその電極まわりのアースされた全ての物体との間のキャパシタンスの総和によって決定される。これは近接センサにおいて行われていることである。クロスキャパシタ検出法とも称される電界検出法は2つの電極を用い、2つの電極間の固有キャパシタンスを効率的に測定する。電界発生装置に接続された電極が電界検出送信電極であるとみなし、測定装置に接続された電極が電界検出受信電極であるとみなすことができる。第1(送信)電極は交番電圧の印加によって活性化(excited)される。それによって電極間の容量結合(すなわち電界線(electric field lines)の効果)による第2(受信)電極に変位電流が誘導される。電極の近く(すなわち電界線の中)に物体が置かれていると、電界線の一部が物体によって終止され、キャパシタ電流が減少する。この電流が監視されていれば、物体の存在が検出されうる。
【0003】
米国特許第6025726号明細書は、特にコンピュータ用及び他の用途用のユーザ入力装置として電界検出装置の使用を開示している。この電界検出装置は意図された用途に応じてユーザの指、手、又は全身の位置を検出する。
【0004】
米国特許第6025726号明細書に開示されているような装置は物体の位置が検出される場合の精度及び感度に関して制限される。達成できる精度は、いくつかの用途、例えば指紋の個々の隆起線の位置を別々に検出することが必要とされる指紋検出に対して望まれ、又は要求される精度に比較して望ましくないほどに制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、電界検出を利用し、従来装置によってもたらされるよりも、より局部化された位置検出を可能とする物体検出装置を提供することが望ましいことを理解した。このことが、理想化された受信電極からの距離rに応じて電界検出出力がいかに低下するかの見地から感度面についての、従来装置の根本的制限の分析に導かせた。実行された評価によれば、送信及び受信電極の背後のアース面の存在下で、従来装置は最高で電界検出出力が1/rで低下するという感度特性しか得られないことを示している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の面において、本発明は、準静電検出法としても知られ、クロスキャパシタ検出法と称されうる、電界検出を用いる物体又は特徴検出システムを提供するものである。このシステムは少なくとも1つの電極装置を備え、各電極装置は1つの電界検出受信電極と少なくとも2つの電界検出送信電極とを備える。一方の(又は、3つ以上の電界検出送信電極を備える場合は、1つ又はそれ以上の)電界検出送信電極は、他方の電界検出送信電極を駆動する交番電圧に比較して少なくとも部分的に逆位相部、例えば反転信号又は逆極性を有することを特徴とする他の形の信号を有する交番電圧によって駆動される。
【0007】
このことは、物体の存在又は特徴による電界検出受信電極に誘導される電流の変化を検出する時、実行された物体検出の空間精度を改善する。
【0008】
好ましい装置においては、電界検出受信電極が立方体(solid)又はブロック形状をしており(環状リング形状と対照的に)、電界検出送信電極が環状リングの形をしており、第1電界検出送信電極が電界検出受信電極を取囲むように配置(positioned)され、第2電界検出送信電極が第1電界検出送信電極を取囲むように配置され(さらに、1つ又は2つ以上のさらなる電界検出送信電極を備える場合は、さらなる電界検出送信電極は各先行する電界検出送信電極を取囲むように配置され)る。
【0009】
1つの実施態様においては、2つの電界検出受信電極が、ほぼ円形状をした電界検出受信電極をほぼ取囲むように配置されたほぼ環状リングの形をしている。
【0010】
他の面によれば、本発明は上述の項目を用意する、従ってそれらを用いることを含む、物体を検出する方法を提供するものである。
【0011】
特に本発明は、少なくとも1つの電極装置を用意することを含む。その場合、各電極装置は1つの電界検出受信電極と少なくとも2つの電界検出送信電極とを備える。この方法ではさらに、一方の(又は、3つ以上の電界検出送信電極を備える場合は、1つ又はそれ以上の)電界検出送信電極は、他方の電界検出送信電極を駆動する交番電圧に比較して少なくとも部分的に逆位相部、例えば反転信号又は逆極性を有することを特徴とする他の形の信号を有する交番電圧によって駆動される。
【0012】
さらなる本発明の考え方は特許請求の範囲に記載されている通りである。
【0013】
上述の構成及び方法は従来装置に比較して局部化位置検出の拡大発展を提供するものである。好ましい例においては、電界検出出力が1/r12をもって低下するほどに増大された局部化を達成しうる、改善された感度特性を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0015】
まず従来の電界検出装置の基本的動作の概略を説明する。図1は、電界検出送信電極2、電界検出受信電極4、交番電圧源6、及び電流検出回路8を備えた従来の電界検出システム1(スケール不定)を示すものである。
【0016】
交番電圧源6は電界検出送信電極2及び電流検出回路8に接続されている。電流検出回路8は電界検出受信電極4に単独に接続されている。
【0017】
動作に際して、電界検出送信電極2に交番電圧が印加された時、電界線(electric field lines)が発生され、その代表的な電界線11,12,13が電界検出受信電極4を通過する。電界線11,12,13は小さな交番電流を誘導し、その誘導電流が電流検出回路8によって検出される(電流検出回路8は、次に詳述するように、電界によって誘導される電流の位相に合わせるために、交番電圧からのタップオフ信号を用いる)。
【0018】
物体10が2つの電極2,4の近くに位置している時、物体はその電界線(図1に示されている状況では、電界線11,12)を終結させ、他の電界線が物体10によって占有された空間以外の所を通過する。このようにして、電界検出受信電極4の出力電流が減少する。従って、電流検出回路8によって測定される電流レベルは、2つの電極2,4の近くに物体が存在することを示す指標(measure)として用いることができる。
【0019】
図2は従来の電流検出回路8の機能モジュールを示すブロック図である。電流検出回路8は、増幅器20、乗算器22、及びローパスフィルタ24を備えている。これらの機能モジュールは適当な形態で、例えば米国特許第6025726号明細書に開示されている回路設計を用いて構成することができる。同明細書の開示内容は参照によってここに含まれる。
【0020】
動作時には、電界検出受信電極4に誘導された変位電流26が増幅器20によって増幅されると共に、乗算器22によって電圧信号27と乗算され、この電圧信号27は電界検出送信電極2に印加される電圧であって、図示されていない移相モジュールによってタップオフ(tapped-off)され且つ移送されている。タップオフ電圧は変位電流26の位相と同じ位相になるように移相される。かくして、増幅器20が理想的なものであると仮定すれば、すなわち変位電流に26に対する付加的な位相ずれを生じないものとすれば、タップオフ電圧の位相は90°ずらされる。もし、増幅器20が変位電流26に対して事実上、付加的な位相ずれを生じないものとすれば、タップオフ電圧の位相はこれを適応させるために必要とされるように調節される。
【0021】
乗算器22の出力はローパスフィルタ24を通して出力信号28として出力される。出力信号28は、電界検出送信電極2によって発生された電界によって電界検出受信電極4に誘導された電流の大きさ(measure)である。この大きさは電界検出電極2,4の近くに位置する物体10に応じて変化する。出力信号28は必要に応じて外部電子装置(図示せず)によって処理される。
【0022】
図3は本発明の第1実施例による物体検出システムの電極装置30(スケール不定)を示すものである。電極装置30は、電界検出受信電極32、内側電界検出送信電極34、及び外側電界検出送信電極36を備えている。電界検出受信電極32はほぼ円形形状を持っている(すなわち、円内を満たした形状をしている)。内側電界検出送信電極34は電界検出受信電極32を取囲むほぼ円形リング状をしている。外側電界検出送信電極36は内側電界検出送信電極34を取囲むほぼ円形リング状をしている。かくして2つの送信電極34,36は互いに同心関係にあり、電界検出受信電極32との関係においても同様である。
【0023】
これらの電極はそれぞれ次に説明するように制御回路部分とは独立して接続できるように引出線又は接触部を備える。電界検出受信電極32は受信電極コンタクト39を備えている。内側電界検出送信電極34は内側送信電極コンタクト37を備えている。外側電界検出送信電極36は外側送信電極コンタクト38を備えている。電界検出送信電極34,36はそれぞれの円形リング形状に中断部が形成されており、装置からコンタクト37,38,39の引出線導出を可能にしている。その代わりに他のコンタクト装置も使用可能である。例えば、ホールを介して用いるコンタクトを作ることもできる(その場合、完全な円形リングが形成されうる)。
【0024】
分かりやすくするために図3のスケールは正しくは描かれていない。特にそれら相互間の間隔及びコンタクトの幅に比較して電極の相対サイズは正しくない。これらの部材のサイズは、製造能力、及び検出されるべき物体の典型的なサイズを含む、幾つかのファクタに応じて当業者によって選択される。
【0025】
この実施例では、装置は指紋検出のために用いられるように構成されている。この実施例で用いられるサイズは次の通りである。すなわち、
電界検出受信電極32の半径:40μm
内側電界検出送信電極34の内側半径:60μm
内側電界検出送信電極34の外側半径:73μm
外側電界検出送信電極36の内側半径:93μm
外側電界検出送信電極36の外側半径:101μm
各電極間の環状間隙:20μm及び19μm
コンタクトの幅:20μm
【0026】
図4は図3のX1−X2線に沿って見た電極装置30の断面を示すものである。図3の説明から分かり又図示されているように、断面X1−X2に沿って内側電界検出送信電極34の2つの部分、及び外側電界検出送信電極36の2つの部分が存在している。図4の断面図には、電界検出電極32,34,36の下方に備えられたアース板40も示されている。
【0027】
電界検出電極32,34,36及びアース板40は適当な方法で作ることができる。ここでは、それらはガラス板(図示せず)の上面に電界検出電極32,34,36を配置することによって形成されている。同じガラス板の下面にアース板40が配置される。
【0028】
図5は本発明の第1実施例による物体検出装置50を示すものである。既に述べたものと同じ部材には同じ参照符号が用いられている。物体検出装置50はそれぞれ上述のタイプ及び形状を有する複数の電極装置を備えている。すなわち物体検出装置50は、図3及び4に示されているように、電界検出受信電極32、内側電界検出送信電極34、及び外側電界検出送信電極36を備えている。各電極装置はマトリクス状に構成されている。分かりやすくするために、図5にはただ1つの電極装置30しか示されていない。分かりやすくするためにさらに、電界検出受信電極32の一部しか示されておらず、又、内側電界検出送信電極34及び外側電界検出送信電極36の2つの環状部(図4を参照して上述したように)のそれぞれの一方しか示されていない(すなわち、図示されている部分は、図3のX1−X2線に沿う全体図というよりは、図3のX1−X3線に沿う断面図に対応する)。
【0029】
図5に示されているように、ガラス板52は電極装置30の上方に位置している。検出されるべき物体はガラス板52上に、すなわち、その近くに位置している。図5に示されている例では、ガラス板52に指先が押圧されている。電極装置30の近くでガラス板52に対して押圧された指先の指紋外形の一つの隆起線が図5に示されている。ガラス板52に指先全体を押圧する時の指の持ち主の力によって、指紋(図示せず)の他の隆起線がガラス板52上の他の位置で、すなわち、電極装置のマトリクスの他の電極装置に対応する位置で、ガラス板52に対して同時に押圧される。
【0030】
電界検出受信電極32及び内側電界検出送信電極34は交番電圧源6及び電流検出回路8に、図1及び2を参照して既に述べたと同様にして結合される。
【0031】
交番電圧源6は外側電界検出送信電極36にも結合されているが、ここではインバータ回路56を通しているのが相違する。
【0032】
図4を参照して述べたアース板40に対応するアース板も電極装置30の下方に含まれるが、それは図を分かりやすくするために図5には示されていない。このアース板は位置定位の最善のシャープネスを達成するために好ましいものであるが、望むなら省略してもよい。
【0033】
物体検出システム50の動作について図6を参照して説明する。図6は内側及び外側の電界検出送信電極に供給される異なる交番電圧を特性的に示すものである。
【0034】
図6は交番電圧源6によって出力されて内側電界検出送信電極34に直接供給される交番電圧V34のプロット120を示すものである。この実施例では交番電圧は+/−10Vで周波数100kHzの双極性矩形波である。図には交番電圧V34のサイクルの正極性部122及び負極性部124が示されている。
【0035】
インバータ回路56は交番電圧源6によって発生された交番電圧を反転し、その反転された電圧を外側電界検出送信電極36に供給する。図6はこの反転された電圧V36のプロット130を示している。図6には反転された電圧V36のサイクルの負極性部132及び正極性部134が示されている。
【0036】
このようにして、今や内側及び外側の電界検出送信電極を考慮してみると、内側電界検出送信電極34が交番電圧V34のサイクルの正極性部122によって駆動される時、外側電界検出送信電極36が反転された電圧V36のサイクルの負極性部132によって駆動されるのは明らかである。同様に、内側電界検出送信電極34が交番電圧V34のサイクルの負極性部124によって駆動される時、外側電界検出送信電極36が反転された電圧V36のサイクルの正極性部134によって駆動される。換言すれば、2つの送信電極は互いに相対的に逆極性の交番電圧で駆動される。これは逆位相動作と称することができる。
【0037】
図1及び2を参照して説明したように、交番電圧V34を印加することによる内側電界検出送信電極34によって生成される電界は、指紋隆起線54によって変形された、電界検出受信電極32から出力される電流26を生成する。これは増幅器20に入力され、乗算器22によってタップオフされた電圧V34の移相信号27と乗算され、次にローパスフィルタ24を通すことにより、出力信号28を出力する。
【0038】
しかしながら、ここで、反転された電圧V36の印加による外側電界検出送信電極36によって生成される電界も又、指紋隆起線54によって修正された電界検出受信電極32から出力される電流26を生成する。かくして、物体検出システム50の動作中、この電流26も増幅器20に入力され、乗算器22によってタップオフされた電圧V34の移相信号27と乗算され、次にローパスフィルタ24を通すことにより、出力信号28を出力する。
【0039】
内側電界検出送信電極34によって生成される電流26は、乗算器22によって乗算された時、出力信号28を正極性変換させる。
【0040】
しかしながら、外側電界検出送信電極36に印加される電圧は内側電界検出送信電極34に印加される電圧に比べて反転されている。かくして、乗算器26によって乗算された時、外側電界検出送信電極36によってなされる電流26への変換は正極性ではなく、負極性である。かくして、その効果は外側電界検出送信電極36の変換のために内側電界検出送信電極34による変換を修正することである。この修正はあらゆる出力信号28の、電界検出受信電極32の位置に関する、検出される物体、ここでは指紋隆起線54の位置への依存性を改善するように行われる。
【0041】
かくして、反転電圧で駆動される付加的な電界検出送信電極36を備えることの効果は(図1に示されている従来装置に比べて)、内側電界検出送信電極34によってもたらされた電界による電流検出回路8の検出出力28が付加的な外側電界検出送信電極36によってもたらされる電界によって修正されるので、高い位置検出を提供することである。
【0042】
この効果は、静電気相互作用が距離と共に低下するという特性を使用している。受信電極のすぐ上方では、内側送信が全ての方向中で最も近いので、電位(又は電界強度)はこの電極の電圧によって支配される。しかしながら、中心から遠くの方へ動くと、内側電極からの電位(又は電界強度)は外側送信電極からの(負極性の)寄与分より早く減少する。なぜなら、後者の方が大きいからである。これは、正味の信号(ネットシグナル)が他の場合より早く低下することを意味する。中心から(両電極の後方へ)さらに遠ざかると、内側及び外側の両電極からの寄与分はゼロになり、全ての(正味)信号はゼロに低下する。そのため、内側及び外側電極からの寄与分の適当なバランスによって、感度特性が変化させられる。
【0043】
今やこれらの装置によって提供される位置精度の拡張が、電界検出電極32,34,36の平面に対して平行な「x−y」平面における位置(すなわち、x,y及びzが直交軸であるとして、平面からの固定「z」距離)に関して、さらなる考慮されている。
【0044】
数学モデルを使用することによって、電界検出受信電極に対する物体の位置の関数としての理論的正規化信号(すなわち、物体の存在による出力28の変化)が理想化された放射方向に対称な装置に対して計算される。より詳細には、それぞれ内側及び外側電界検出送信電極を有する2つの環状同心リングを有する円形の電界検出受信電極が考慮される。
【0045】
図7は物体位置に対するそのような正規化信号の理論的計算結果例を示すものである。物体位置は相対ユニットで定義されている。計算は次のような理想化された条件に対して行われた。
・円形電界検出受信電極の半径=内側電界検出送信電極の内側半径=1
・内側電界検出送信電極の外側半径=外側電界検出送信電極の内側半径=1.5
・外側電界検出送信電極の外側半径=2
【0046】
寸法の与えられた組に関し、2つの電界検出送信電極に印加される2つの電圧の異なる相対振幅に関して、物体位置に対する正規化信号に対して異なる結果が得られている。(上述の例においては、内側及び外側の電界検出送信電極の両方に同じ振幅の電圧が印加される(例えば図6参照)けれども、これは必ずしも必要という訳ではなく、他の実施例では、要求どおりに、インバータ回路56の一部として、又は全てのシステムのどこかに備えられた適当な回路を用いて異なる振幅が印加される)。図7は、図中に示したように電圧比V36/V34(厳密に言えば、振幅の比)=0.65、0.72、及び0.75に基づく3つの異なる計算の結果を示すものである。
【0047】
応答曲線はV36/V34の値を減少する(例えば、V36/V34=0.65にする)ことによって平坦になる。すなわち、事実上、内側電界検出送信電極が支配し、応答は従来の単一送信電極装置に戻ってしまう。
【0048】
結果として、V36/V34の値を増大する((例えば、V36/V34=0.75にする)応答曲線はよりシャープであるが、負側への落ち込みを呈する。すなわち結局、外側電界検出送信電極が支配する。
【0049】
かくして、最適応答は(この例では)、V36/V34=0.72において達せられる。すなわち、この値に対する曲線は距離と共にシャープに低下するが、負側への落ち込みを伴うことはない。実際、V36/V34=0.72に対する曲線は1/r12に対応し、従来装置を超える非常に改良された位置精度を提供する。
【0050】
このように2つの電界検出送信電極に印加される相対電圧振幅を最適化するか、又は他に選択することによって異なる応答特性が達成され、又は試みられる。従って、代替的に、これは種々の電界検出電極の寸法を最適化するか、又は他に選択することによっても達成される。他の代替案として、電極寸法と電圧との組合せて選択するか変化させることが可能である。
【0051】
この実施例では、複数の電極装置30がマトリクス状に構成されている。各電極装置30からの出力28は実行される物体検出動作、ここでは指紋検出及び分析によるさらなる制御及び処理回路(図示せず)によって適当な態様で組み合わせて処理される。
【0052】
上述の装置の一つの利点は、検出電極に対して直接置かれることを必要とする物体なしに検出が行われることである。例えば、図5を参照して、電界検出電極32,34,36から分離されうるガラス板52に対して指先が押圧される。かくして、これらの電極を物理的損傷及び腐食被害から保護することができる。
【0053】
上記実施例では、種々の電極の寸法は説明した通りである。他の用途に対する要求に従い他の寸法を用いることもできる。例えば電界検出受信電極、内側電界検出送信電極、及び外側電界検出送信電極は互いに全て異なる半径とすることができ、又は任意の2つを同じ半径としたり、3つを全て同じとしたりすることができる。又、絶対的な寸法は上述のものに比較して異なるものでありうる。
【0054】
上記実施例では、内側電界検出送信電極及び外側電界検出送信電極は中心に配置あされた円形の電界検出受信電極を取囲む同心リングの形をしていた。しかし、同心状に構成された、リング形状以外の形状とすることもできる。言い換えれば、受信電極は所望のブロック形状(円形とは異なる形状であることを意味する)、例えば正方形、矩形、三角形、不規則形状等でありうる。その場合、送信電極は受信電極を取囲む所望の環状形状であり、外側送信電極はそれ自体受信電極を取囲む内側送信電極を取囲む環状形状である。
【0055】
他の可能性は、電界検出受信電極、第1電界検出送信電極、及び第2電界検出送信電極が備えられ、しかし適当な構成構造での構成、すなわち必ずしも同心構成ではない構成とすることである。その場合、任意の適当な電極構造を採用することができる。そして第2電界検出送信電極に供給される駆動電圧は、第1電界検出送信電極に供給される駆動電圧に比較して逆極性または逆位相の、いくらか(又は完全に)反転される。
【0056】
上述の実施例では、第1又は従来の電界検出送信電極に加えて1つの付加的な電界検出送信電極が設けられる。他の実施例では、従来型の第1電界検出送信電極からの出力の位置検出効果をさらに変えるために、さらに付加的な電界検出送信電極を備えることができる。これらのさらなる付加的な電界検出送信電極は、第1電界検出送信電極に供給される駆動電圧に比較して逆極性または逆位相の、いくらか(又は完全に)反転された駆動電圧で駆動されうる。環状構成の場合、これらのさらなる電界検出送信電極は環状形状の形でありうる。例えば、第1及び第2電界検出送信電極が環状リングである場合、それらの付加的な電界検出送信電極は、好ましくは環状リングでありうる。又、これらの可能性の幾つかのために、1つ又はそれ以上の電界検出送信電極は、第1電界検出送信電極に供給される駆動電圧として同じ駆動電圧で駆動されうる。
【0057】
上述の実施例では、駆動電圧の形は図6を参照して説明されている。他の実施例では、他の値及び形状の少なくとも一方が用いられうる。例えば、電界検出送信電極の一方又は両方のために他の振幅を用いることができる。同様に、他の周波数を用いることができる。上記実施例では波形は矩形波である。他の交番波形、例えば正弦波交流を用いることもできる。
【0058】
上記実施例では、第2電界検出送信電極に供給される駆動電圧は第1電界検出送信電極に供給される駆動電圧に比較して逆極性または逆位相の、いくらか(又は完全に)反転される。上記実施例では、これは、第2電界検出送信電極に供給される駆動電圧の反転形の複写である第1電界検出送信電極に供給される駆動電圧の交番サイクルの各振動の意味においてである。しかしながら、これらの駆動電圧が両電極に同時に供給される必要はない。ローパスフィルタ24は積算時定数を持っている。より一般的な可能性はその時定数内で両送信電極が基準信号27に対して正しい(位相及び逆位相)関係を有する等しい時間で駆動されることである。この点をさらに説明すると、他の可能性は同じ位相ではあるが、他の電極が付加的な位相遅延時間でのスイッチングによって駆動される時、基準信号の位相が変えられるように両電極が繰り返して駆動されることである。
【0059】
上記実施例では、電界検出受信電極に誘導される変位電流を検出するために電流検出回路28が用いられている。しかしながら、そのために他の適当な回路又は装置を用いることもできる。1つの可能性は、本出願人の継続中の特許出願、すなわち米国特許出願第10/153261号(出願人のリファレンス番号PHGB010089)の要旨を形成するタイプの電流検出回路を用いることである。その要旨は参照によってここに取り込まれる。
【0060】
上記実施例では指紋検出及び分析システムの一部として物体検出システムが用いられている。しかしながら、本発明はそのような用途に限定されるものではなく、独立の物体検出システムとして、又は物体検出を含む他のプロセス若しくはシステムの一部として用いることもできる。
【0061】
さらに、用語「物体」は完全に検出されることを必要とする独立の物体に限定されることはなく、むしろこの用語は個々に分析されるか検出される大きな検出対称、例えば前記の主実施例で述べたような、指先の指紋の1つ又はそれ以上の隆起線の特徴又はエレメントを包含する。他の可能性は、与えられた物体の特別な特徴を検出することによって与えられた物体の方向を推論できることである。
【0062】
物体検出システムは、ユーザ入力又は相互作用手段を提供するために、ディスプレイ装置又はシステムの内部に又はそれらと共に組み込まれる。例えば、物体検出システムは例えば米国特許第5130829号明細書に開示されている液晶ディスプレイ装置の線に沿って構成され動作するアクティブマトリクス液晶ディスプレイ装置の内部に組み込むことができる。同米国特許明細書の内容は参照によってここに取り込まれる。その場合、参照によってここに取り込まれた継続中の米国特許出願第10/153261号の要旨を形成するタイプの上述の電流検出回路は特別な利点をもって用いることができる。
【0063】
当業者にとっては、本願の開示事項を読取ることにより、他の変形及び修正が可能であることは明らかであろう。そのような変形及び修正は均等理論及び当業者に知られている他の特徴、及びここで既に述べた特徴の代わりに又はそれに加えて使用可能な他の特徴を必要とするかもしれない。
【0064】
特許請求の範囲はこの出願において特徴の特定の組合せを明確化したものであるが、本発明の開示範囲は、いずれかの請求項で現に請求されたものと同一の発明に関するものであるか否か、及び本発明と同じ技術的課題のいずれか又は全てを軽減するか否かを、新規な特徴又はここに明示的に、又は暗示的に、又はその一般化のいずれかとして開示された特徴の新規な組合せを包含するものと理解されるべきである。
【0065】
別々の実施例の文脈において説明された特徴は単一実施例に組合せて用いることができる。逆に、簡潔さのために単一実施例の文脈において説明された種々の特徴は別々に、又はいくつかの適当な二次的組合せで提供することもできる。本出願人は、本願又はそこから引き出されたさらなる出願の手続き進行中に、ここに新たな特許請求の範囲はそのような特徴又はそのような特徴の組合せ又はそれらの両方に特化されうるという注意を与えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来の電界検出システム(スケール不定)の説明図である。
【図2】図1のシステムにおける従来の電流検出回路の機能モジュールを示すブロック図である。
【図3】物体検出システムの電極装置(シケール不定)を示す横断面図である。
【図4】図3の電極装置をX1−X2線に沿って見た構成図である。
【図5】物体検出システムを示すブロック図である。
【図6】ある一定の電界検出システムに印加される異なる交番電圧を示す波形図である。
【図7】電界検出電極の理想化放射対称構成に対する理論正規化信号を電界検出受信電極に対する物体の位置の関数として示す、物体応答曲線の計算結果を示す線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界検出受信電極(32)として構成された第1電極、
第1電界検出送信電極(34)として構成された第2電極、及び
第2電界検出送信電極(36)として構成された第3電極、
を有する電界検出電極装置(30)と、
前記第1電界検出送信電極(34)に第1交番電圧(120)を供給し、前記第2電界検出送信電極(36)に、前記第1交番電圧(120)に比較して少なくとも部分的に逆位相部を有する第2交番電圧(130)を供給するように構成された駆動回路(6,56)と、
前記第1及び第2電界検出送信電極がそれぞれ前記第1及び第2交番電圧によって駆動された時、前記両送信電極によって発生された電界中に置かれた物体(54)による誘導電流の変化を検出するために、前記両送信電極によって発生された電界によって前記電界検出受信電極(32)に誘導された電流を処理するように設けられた検出回路(8)と、
を備えた物体検出システム。
【請求項2】
前記第2交番電圧(130)が前記第1交番電圧(120)の反転形状である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2電界検出送信電極がそれぞれほぼ環状リング形状をしており、前記第1電界検出送信電極(34)が前記電界検出受信電極(32)をほぼ取囲むように配置され、前記第2電界検出送信電極(36)が前記第1電界検出送信電極(34)をほぼ取囲むように配置されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電界検出受信電極(32)がほぼブロック形状をしており、前記第1及び第2電界検出送信電極がそれぞれほぼ環状に形成され、前記第1電界検出送信電極(34)が前記電界検出受信電極(32)をほぼ取囲むように配置され、前記第2電界検出送信電極(36)が前記第1電界検出送信電極(34)をほぼ取囲むように配置されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記電界検出受信電極(32)がほぼ円形状をしており、前記第1及び第2電界検出送信電極がそれぞれほぼ環状リング形状をしており、前記第1電界検出送信電極(34)が前記電界検出受信電極(32)をほぼ取囲むように配置され、前記第2電界検出送信電極(36)が前記第1電界検出送信電極(34)をほぼ取囲むように配置されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
前記電界検出電極装置(30)が、さらなる電界検出送信電極として構成された1つ又はそれ以上のさらなる電極をさらに備えている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記電界検出電極装置(30)に沿ってマトリクス状に構成された1つ又はそれ以上のさらなる電界検出電極装置と、対応する検出回路と、をさらに備えている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
電界検出受信電極(32)として構成された第1電極、
第1電界検出送信電極(34)として構成された第2電極、及び
第2電界検出送信電極(36)として構成された第3電極、
を有する電界検出電極装置(30)を用意し、
前記第1電界検出送信電極(34)に第1交番電圧(120)を供給すると共に、前記第2電界検出送信電極(36)に、前記第1交番電圧(120)に比較して少なくとも部分的に逆位相部を有する第2交番電圧(130)を供給し、
前記第1及び第2電界検出送信電極がそれぞれ前記第1及び第2交番電圧によって駆動された時、前記両送信電極によって発生された電界によって前記電界検出受信電極(32)に誘導された電流を処理し、さらに
前記電界中に置かれた物体(54)による誘導電流の変化を検出する、
物体を検出する方法。
【請求項9】
前記第2交番電圧(130)が前記第1交番電圧(120)の反転形である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2電界検出送信電極がそれぞれほぼ環状リング形状をしており、前記第1電界検出送信電極(34)が前記電界検出受信電極(32)をほぼ取囲むように配置され、前記第2電界検出送信電極(36)が前記第1電界検出送信電極(34)をほぼ取囲むように配置されている、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記電界検出受信電極(32)がほぼブロック形状をしており、前記第1及び第2電界検出送信電極がそれぞれほぼ環状に形成され、前記第1電界検出送信電極(34)が前記電界検出受信電極(32)をほぼ取囲むように配置され、前記第2電界検出送信電極(36)が前記第1電界検出送信電極(34)をほぼ取囲むように配置されている、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記電界検出受信電極(32)がほぼ円形状をしており、前記第1及び第2電界検出送信電極がそれぞれほぼ環状リング状形状をしており、前記第1電界検出送信電極(34)が前記電界検出受信電極(32)をほぼ取囲むように配置され、前記第2電界検出送信電極(36)が前記第1電界検出送信電極(34)をほぼ取囲むように配置されている、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項13】
前記電界検出電極装置(30)が、さらなる電界検出送信電極として構成された1つ又はそれ以上のさらなる電極をさらに備えている、請求項8ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記電界検出電極装置(30)に沿ってマトリクス状に構成された1つ又はそれ以上のさらなる電界検出電極装置と、対応する検出回路と、をさらに備えている、請求項8ないし13のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−505785(P2006−505785A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550881(P2004−550881)
【出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004823
【国際公開番号】WO2004/044827
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】