説明

密封容器内の酸素量の測定方法及びこれに用いる密封容器のピアス装置

【課題】 本発明は蛍光式酸素濃度計の特徴を活かして密封容器内のヘッドスペース及び液体のそれぞれの酸素量を効率よく測定できる方法を提供する。
【解決手段】 中空針28をその内部空間28aが中空針28の先端を除いて外部からシールされた状態で容器2に突き刺して内部空間28aを容器2内のヘッドスペースに連通させ、その中空針28を介して蛍光式酸素濃度計10のプローブ11を容器2内に挿入し、プローブ11の蛍光物質を容器2内のヘッドスペース3に位置させてヘッドスペース3の酸素濃度を測定し、これに続いて蛍光物質が容器2内の液体4に浸るようにプローブ11をさらに挿入して液体4中の溶存酸素濃度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が詰められた密封容器内のヘッドスペース及び液体中の溶存酸素量を測定する方法及びこれに用いる容器のピアス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
缶飲料のように容器内に液体を密封する製品の製造工程では、内容液の品質を管理するために容器内のヘッドスペースの酸素量及び液体中の溶存酸素量を把握することが必要不可欠とされている。このような用途に使用される酸素量の測定装置としては、製造ラインから分岐されたサンプリングラインにヘッドスペース酸素測定装置と内容液溶存酸素量測定装置とを配置し、製造ラインからサンプリングラインに缶容器を適宜に取り出し、その缶容器に対してそれぞれの測定装置から針又はノズルを突き刺してヘッドスペースのガス及び内容液のサンプルを取り出し、それらのサンプルを分析して酸素量を測定する装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。その他にも、缶等の密封容器に針を突き刺してガス又は液体のサンプルを取り出す方法又は装置が種々提案されている(例えば特許文献2〜4参照)。サンプル中の酸素濃度の検出手段としては、サンプル中の酸素を電極間に導いて化学反応を生じさせ、電極間に流れる電流に基づいて酸素濃度を検出する電気化学的な酸素濃度計、例えばポーラログラフ式酸素濃度計が使用されている(特許文献3及び4を参照)。
【0003】
電気化学的な酸素濃度計とは異なる酸素濃度計としては、酸素の常磁性を利用した濃度計、及び蛍光物質を利用した濃度計も知られている。後者の濃度計は、蛍光物質の発する蛍光エネルギがその蛍光物質の周囲に存在する基底状態の酸素の励起エネルギとして消費されて蛍光が消光する現象を利用して、蛍光の強度と寿命とから酸素濃度を特定する濃度計である。この種の濃度計としては、プローブの先端に蛍光物質を配置し、光ファイバを介して蛍光物質に励起光を照射するとともにその励起光によって生じた蛍光を光ファイバにて後方の光電変換回路まで導くようにした濃度計が知られている(例えば特許文献5参照)。また、蛍光を利用した酸素濃度計の応用例としては、先端に蛍光酸素チップが設けられたライドガイドを試料水が詰められた培養容器内に挿入して試料水の生物学的酸素要求量を測定する装置が提案されている(特許文献6参照)。
【0004】
【特許文献1】特公平7−58244号公報
【特許文献2】特許第3600697号公報
【特許文献3】特開平1−113659号公報
【特許文献4】特開平4−176636号公報
【特許文献5】特開平10−132742号公報
【特許文献6】特開平11−242025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気化学的な酸素濃度計を利用した従来の密封容器用の酸素濃度測定装置では、酸素の反応を利用することから、測定までに約30秒程度の時間を要する。また、密封容器からガス又は内容液をサンプルとして取り出し、そのサンプル中の酸素を測定で消費するため、ヘッドスペース内のガス又は内容液のいずれか一方のサンプルを取り出すことによって密封容器内の状態が変化し、他方のサンプルに関して正しい測定を行うことができないおそれがある。従って、ヘッドスペースの酸素量の測定と、内容液の溶存酸素量の測定とを分けて行う必要があり、測定に手間がかかるとともに、測定装置もヘッドスペース用と内容液溶とで二重に設ける必要がある。十分な量のサンプルが取り出せないときには測定が不可能となる不都合もある。一方、蛍光を利用する酸素濃度計によれば、迅速かつ高精度の測定が可能であり、サンプルを消費することなく酸素濃度を測定できるといった利点がある。
【0006】
そこで、本発明は蛍光式酸素濃度計の特徴を活かして密封容器内のヘッドスペース及び液体のそれぞれの酸素量を効率よく測定できる方法及びその測定方法に適したピアス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の酸素量測定方法は、プローブ(11)の先端の蛍光物質から発せられる蛍光を検出し、その検出結果に基づいて前記蛍光物質の周囲の酸素濃度を測定する蛍光式酸素濃度計(10)を利用して、液体(4)が詰められた密封状態の容器(2)内の酸素量を測定する密封容器内の酸素量測定方法であって、中空針(28)をその内部空間が当該中空針の先端を除いて外部からシールされた状態で前記容器に突き刺して前記内部空間を前記容器内のヘッドスペースに連通させる工程と、前記中空針を介して前記プローブを前記容器内に挿入し、前記蛍光物質を前記容器内のヘッドスペース(3)に位置させて該ヘッドスペースの酸素濃度を測定する工程と、前記蛍光物質が前記容器内の液体に浸るように前記プローブをさらに挿入して前記液体中の溶存酸素濃度を測定する工程とを備えることにより、上述した課題を解決する。
【0008】
本発明の酸素量測定方法によれば、中空針を介してプローブ先端の蛍光物質をヘッドスペース及び液体に順次送り込むことにより、ヘッドスペース及び液体のそれぞれの酸素濃度を迅速に測定し、得られた酸素濃度をヘッドスペースの容積又は液体の体積とから酸素量を求めることができる。蛍光式酸素濃度計ではヘッドスペースのガス及び容器内の液体のいずれもサンプルとして容器外へ取り出す必要がなく、酸素濃度の測定にあたって酸素を消費することもないから、ヘッドスペース及び液体の酸素濃度を共通の酸素濃度計にて連続的に測定することができる。従って、測定効率に優れ、オペレータの手間も軽減され、酸素量の測定に必要な装置の構成も簡素化される。ヘッドスペースの容積が小さくても測定が可能であり、特に小容量の容器でも酸素量を高精度に測定することができる。
【0009】
本発明の酸素量測定方法の一形態においては、前記中空針を介して前記ヘッドスペース内の圧力を測定する工程と、容積一定のタンク(46)の圧力を測定する工程と、前記液体の酸素濃度の測定後に前記タンクと前記ヘッドスペースとを前記中空針を介して連通させて前記ヘッドスペースの圧力を測定する工程と、測定された各圧力と前記タンクの容積とから前記ヘッドスペースの容積を求める工程とをさらに備えてもよい。
【0010】
この形態によれば、ヘッドスペースの容積をVh、タンクの容積をVa、連通前のヘッドスペースの圧力をPh、連通前のタンクの圧力をPa、連通後のタンクの圧力をPahとしたときに、
Pah・(Va+Vh)=Ph・Vh+Pa・Va ……(1)
の関係が成立し、(1)式にてヘッドスペース容積Vhのみが未知となるため、(1)式の関係を利用してヘッドスペースの容積を求めることができる。そして、ヘッドスペースの容積と濃度とからヘッドスペースの酸素量を求めることができる。液体の溶存酸素量に関しては、定量充填工程における液体の充填量の規定値を液体の体積とし、あるいは容器の容積からヘッドスペースの容積を差し引いた値を液体の体積として、この体積と酸素濃度とから溶存酸素量を求めることができる。中空針を介してヘッドスペースの圧力を測定し、あるいは、中空針を介してタンクと液体とを連通させているので、酸素濃度の測定に引き続いてヘッドスペースの容積を直ちに求めることができる。従って、測定効率が高く、測定に要する手間が軽減され、測定に必要な装置の構成も簡素化される。
【0011】
本発明のピアス装置は、蛍光式酸素濃度計(10)のプローブ(11)が内部空間(28a)に挿通可能であり、かつ先端が密封容器(2)に対して突き刺し可能な中空針(28)と、前記中空針の内部空間を当該中空針の先端を除いて外部からシールするシール手段(25、26、29、44、47)と、前記中空針の内部空間の圧力を検出する容器内圧力検出手段(45)と、前記中空針の前記内部空間と接続される容積一定のタンク(46)と、前記タンクと前記中空針の前記内部空間との間の連通及び連通遮断状態を切り替えるタンク弁(47)と、前記中空針の前記内部空間に対して連通遮断状態にあるときの前記タンクの圧力を検出するタンク内圧力検出手段(45)と、を備えることにより、上述した課題を解決する。
【0012】
本発明のピアス装置によれば、シール手段にて中空針の内部空間を外部からシールしつつ中空針を容器に突き刺して容器のヘッドスペース部分に中空針の先端を挿入し、その中空針を介して容器内のヘッドスペース及び液体にプローブの先端の蛍光物質を順次配置することにより、ヘッドスペース及び液体の酸素濃度をそれぞれ測定することができる。タンクが中空針の内部空間に対して連通されていない状態でタンク内圧力及び中空針の内部空間の圧力をそれぞれ検出し、しかる後、タンクと中空針の内部空間とを連通させて中空針の内部空間の圧力を検出することにより、ヘッドスペース内に閉じ込められているガスの圧力、連通遮断状態におけるタンクの圧力、及びタンクとヘッドスペースとを連通させた状態におけるヘッドスペースの圧力をそれぞれ測定することができる。タンク容積は一定で既知であるため、これらの圧力の測定値とタンク容積とから上記の(1)式を利用してヘッドスペースの容積を求めることができる。
【0013】
本発明のピアス装置の一形態において、前記中空針の前記内部空間に圧力検出路(31、30、40A)が接続され、前記圧力検出路には第1の開閉弁(43)及び前記中空針に対して前記第1の開閉弁よりも遠方に位置する第2の開閉弁(44)が接続され、前記タンクは前記第1及び第2の開閉弁の間にて前記圧力検出路に接続され、前記タンク弁は前記圧力検出路と前記タンクとの間に配置され、前記第1及び第2の開閉弁間には前記容器内圧力検出手段及び前記タンク内圧力検出手段として共用される圧力計(45)が接続されてもよい。
【0014】
上記の形態によれば、第2の開閉弁及びタンク弁をそれぞれ閉じる一方で第1の開閉弁を開くことにより、中空針の内部空間から外部又はタンクへの圧力の排出を防止しつつヘッドスペースの圧力を圧力計にて測定することができる。また、第1の開閉弁を閉じる一方で、第2の開閉弁及びタンク弁を開くことにより第2の開閉弁及びタンク弁を介してタンク内の圧力を調整し、その圧力を圧力計にて検出することにより、連通遮断状態におけるタンク内圧力を圧力計にて測定することができる。さらに、第2の開閉弁を閉じる一方で第1の開閉弁及びタンク弁を開くことによりタンクと容器のヘッドスペースとを中空針の内部空間を介して連通させ、その連通状態におけるヘッドスペースの圧力を圧力計にて測定することができる。この形態において、前記中空針に対して前記第2の開閉弁のさらに遠方にガス供給源(41)を接続すれば、タンクへの圧力充填及びその圧力の測定を容易に行える。
【0015】
本発明のピアス装置の一形態において、前記中空針の前記内部空間には不活性ガスを導入するためのパージ流路(40B、36、35、30、31)がさらに接続されるとともに、前記パージ流路を開閉する弁機構(26)をピアス装置がさらに備えてもよい。この形態によれば、中空針を容器に突き刺す前に中空針の内部空間を不活性ガスで満たして酸素をパージ(追放)し、また、酸素濃度の測定時には弁機構にてパージ流路を閉じることにより、パージ流路からのヘッドスペース圧力の排出を防止することができる。これにより、中空針の内部空間の酸素が測定精度に与える影響を排除して酸素濃度を高精度に測定することができる。
【0016】
本発明のピアス装置の一形態において、前記中空針の前記内部空間には圧力検出路(31、30、40A)及び前記内部空間に不活性ガスを導入するためのパージ流路(40B、36、35、30、31)が接続され、前記圧力検出路には第1の開閉弁(43)及び前記中空針に対して前記第1の開閉弁よりも遠方に位置する第2の開閉弁(44)が接続され、前記タンクは前記第1及び第2の開閉弁の間にて前記圧力検出路に接続され、前記タンク弁は前記圧力検出路と前記タンクとの間に配置され、前記第1及び第2の開閉弁間には前記容器内圧力検出手段及び前記タンク内圧力検出手段として共用される圧力計(45)が接続され、前記中空針に対して前記第2の開閉弁のさらに遠方には不活性ガス供給源(41)が接続され、前記不活性ガス供給源はさらに前記弁機構を介して前記パージ流路にも接続され、前記パージ流路を開閉する弁機構(26)をピアス装置がさらに備えていてもよい。
【0017】
この形態によれば、上記の各形態に関して既に説明したように、パージ流路及び弁機構を利用して中空針の内部空間における酸素をパージするとともに、第1の開閉弁、第2の開閉弁及びタンク弁の切り替え操作により被連通状態におけるヘッドスペース圧力、タンク圧力、及び連通状態におけるヘッドスペース圧力をそれぞれ検出してヘッドスペースの容積を求めることができる。さらに、酸素のパージのためのガス供給源と、ヘッドスペースの容積測定のためのガス供給源とを別々に設ける必要がなく、ピアス装置の構成を簡素化し、かつその運用コストも低減することができる。
【0018】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
以上に説明したように、本発明の酸素量測定方法によれば、ヘッドスペースのガス及び容器内の液体のいずれもサンプルとして容器外へ取り出す必要がなく、酸素濃度の測定にあたって酸素を消費することもないから、ヘッドスペース及び液体の酸素濃度を共通の酸素濃度計にて連続的に測定することができる。従って、測定効率に優れ、オペレータの手間も軽減され、酸素量の測定に必要な装置の構成も簡素化される。ヘッドスペースの容積が小さくても測定が可能であり、特に小容量の容器でも酸素量を高精度に測定することができる。また、本発明のピアス装置によれば、シール手段にて中空針の内部空間を外部からシールしつつ中空針を容器に突き刺して容器のヘッドスペース部分に中空針の先端を挿入し、その中空針を介して容器内のヘッドスペース及び液体にプローブの先端の蛍光物質を順次配置することにより、本発明の酸素量測定方法を実施することができる。しかも、タンクが中空針の内部空間に対して連通されていない状態でタンク内圧力及び中空針の内部空間の圧力をそれぞれ検出し、しかる後、タンクと中空針の内部空間とを連通させて中空針の内部空間の圧力を検出することにより、ヘッドスペース内に閉じ込められているガスの圧力、連通遮断状態におけるタンクの圧力、及びタンクとヘッドスペースとを連通させた状態におけるヘッドスペースの圧力をそれぞれ測定し、これらの測定結果を利用してヘッドスペースの容積を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の一形態に係る測定方法で使用する酸素濃度測定装置の概略構成を示している。この酸素濃度測定装置1は、密封された容器2内に存在するヘッドスペース3及び液体4のそれぞれの酸素量を測定するためのものであって、蛍光式の酸素濃度計10と、その酸素濃度計10を容器2内の酸素濃度の測定に適応させるためのピアス装置20とを備えている。なお、図1では容器2として缶容器を想定している。
【0021】
酸素濃度計10はプローブ11と信号処理装置12とを備えている。プローブ11は、光ファイバケーブル13と、その光ファイバケーブル13の先端に設けられたセンサチップ14とを備えている。光ファイバケーブル13は、先端のセンサチップ14から信号処理装置12まで延びている。センサチップ14は特定波長の励起光(一例として紫外光)の照射に対応して蛍光を発生する蛍光物質を含んでいる。蛍光物質としては、例えばルテニウム金属錯体、多環式芳香族炭化水素等が用いられる。
【0022】
信号処理装置12は発光部15及び受光部16を備えている。発光部15は蛍光物質に対する励起光を光ファイバケーブル13に向かって射出する。受光部16は、光ファイバケーブル13を介して伝達されるセンサチップ14の蛍光を受光する。信号処理装置12は、発光部15から光ファイバ13にセンサチップ14の蛍光物質を励起させる波長の正弦波光を励起光として射出させる。また、信号処理装置12は受光部16が受光した蛍光を光電変換してその蛍光の強度に対応した強度信号を生成するとともに、発光部15から送り出した正弦波光と受光部16で受光した蛍光との位相差を検出して蛍光の消光時間に対応した遅延時間信号を生成する。センサチップ14の周囲に基底状態の酸素分子が存在する環境では、蛍光エネルギが酸素分子の励起に消費されて蛍光が消光するクエンチング現象が生じる。蛍光強度と蛍光の消光時間(遅延時間)とは酸素濃度と相関性を有しており、蛍光強度と蛍光の消光時間とが判れば、それらの値からセンサチップ14の周囲の酸素濃度を測定することができる。本形態の酸素濃度計10はこのような原理に基づいて酸素濃度(又は分圧)を測定する。
【0023】
信号処理装置12にて生成された強度信号及び遅延時間信号は測定制御装置50を介してデータ処理用のパーソナルコンピュータ(以下、PCと略称する。)51に送られる。測定制御装置50及びPC51の機能については後述する。
【0024】
ピアス装置20は、容器2を支持する支持台21と、支持台21に設けられた案内機構22と、案内機構22によって上下方向に位置調整可能に支持されたヘッドユニット23とを備えている。支持台21は容器2を鉛直方向に立てた状態で支持するように設けられている。但し、ヘッドスペースの上下方向の深さを確保するために、容器2を傾けた状態で支持できるように支持台21を構成してもよい。案内機構22は、上下方向に延びるガイドロッド22aと、そのガイドロッド22aに沿って上下方向に移動可能なスライダ22bとを備えている。スライダ22bにヘッドユニット23が取り付けられている。なお、スライダ22bは不図示の固定手段によりガイドロッド22a上の任意の位置に固定可能である。固定手段としてはクランプボルトその他の各種の手段を用いてよい。スライダ22bの上下方向の移動はオペレータが手動で行うようにしてもよいし、モータ、ガスシリンダ装置等のアクチュエータの動力によって行うようにしてもよい。
【0025】
ヘッドユニット23は、ヘッド24と、ヘッド24の下面側に設けられたシールリング25と、ヘッド24の上面側に設けられた弁機構26とを備えている。図2により詳しく示すように、ヘッド24は、概略円盤状のヘッド本体27と、そのヘッド本体27の中心線に沿って設けられた中空針28とを備えている。上述した案内機構22のスライダ22bはヘッド本体27と連結される。
【0026】
中空針28はヘッド本体27の下方に突出し、その先端(図において下端)は容器2の天面に突き刺すことができるようにナイフエッジ状に形成されている。その中空針28の先端の内周に中空針28の内部空間28aが開口する。シールリング25は中空針28の外周を全周に亘って取り囲むように設けられている。中空針28の上端には内部空間28aを覆うようにプローブガイド28bが設けられている。プローブ11は、そのプローブガイド28bの中心を貫いて中空針28の内部空間28aに挿通される。プローブガイド28bの下面側にはプローブ11の外周をシールするシールリング29が設けられている。ヘッド24には、ヘッド本体27の外周面から中空針28の内部空間28aに至るガス流路30が形成されている。さらに、ガス流路30には、ヘッド本体27の上面側の環状溝27a(図2)に開口する連通孔31が接続されている。
【0027】
弁機構26は、ヘッド本体27の環状溝27aに嵌め込まれたリング状の弁体32と、弁体32を上方に付勢するばね33と、弁体32を押し下げ駆動するアクチュエータ34(図1にのみ図示)とを備えている。弁体32の内周及び外周には環状溝27aの内周面及び外周面とそれぞれ密着するシールリング32a、32bが設けられている。これにより、弁体32とヘッド本体27との間にはガスチャンバ35が形成される。また、弁体32の下面には、弾性体からなるシール部材32cが連通孔31と位置を合わせて設けられている。さらに、ヘッド本体27には、ガスチャンバ35に連通するガス導入路36が形成されている。以上の弁機構26においては、アクチュエータ34によってヘッド本体27を押し込むことにより、弁体32のシール部材32cが連通孔31を塞いでガス導入路36と中空針28の内部空間28aとの連通が遮断される。アクチュエータ34によるヘッド本体27の押し込みを解除すると、ばね33によって弁体32が押し上げられてシール部材32cが連通孔31から離れ、それによりガス導入路36が中空針28の内部空間28aと連通する。なお、弁体32の中心部には円筒型のボス32dが設けられており、プローブ11はそのボス32dをも貫いて中空針28内に挿入される。
【0028】
図1に示したように、ヘッドユニット23のガス流路30及びガス導入路36は管路40A、40Bを介してガスボンベ41とそれぞれ接続されている。ガスボンベ41には酸素を含まない不活性ガス、一例として窒素ガスが蓄えられる。管路40A、40Bのそれぞれには手動式の開閉弁42A、42Bが設けられている。さらに、ガス流路30に接続される管路40Aには電磁式の第1の開閉弁43及び第2の開閉弁44が直列に接続されている。第2の開閉弁44は中空針28からみて第1の開閉弁43よりも遠方に位置している。開閉弁43、44の間には圧力計45及びアキュームタンク46が接続される。圧力計45は開閉弁43、44の間の圧力を検出して測定制御装置50に出力する。アキュームタンク46は容積一定の剛体タンクである。アキュームタンク46と管路40Aとの間にはさらに電磁式のタンク弁47が接続されている。ヘッドユニット23の近傍には温度計48が配置されている。温度計48はヘッドユニット23の近傍の温度を検出して測定制御装置50に出力する。なお、図2以下においては温度計48の図示を省略した。
【0029】
測定制御装置50は、信号処理装置12から出力される蛍光の強度信号及び遅延時間信号、圧力計45から出力される圧力信号、及び温度計48から出力される温度信号のそれぞれをPC51に読み取り可能な形式で出力するとともに、PC51から与えられる測定トリガー信号に従って、ピアス装置20の弁機構26、開閉弁43、44及び47を所定のシーケンスに従って開閉駆動する。PC51は、その記憶装置にインストールされたプログラムに従って動作することにより、信号処理装置12からの強度信号及び遅延時間信号に対応した酸素濃度(又は分圧)を演算する。このような機能を備えることにより、測定制御装置50及びPC51は酸素濃度計10の一部として機能する。このような蛍光式酸素濃度計10としては、市販されている種々の蛍光式酸素計を利用することができる。一例として、ドイツ国のプレセンス(PreSens)社が商標MicroxTX3を付して提供する蛍光式酸素濃度計及びそれに付随するアプリケーションプログラムを利用することができる。
【0030】
また、PC51は、圧力計45が検出する圧力を利用して容器2のヘッドスペース3の容積を求める機能、ヘッドスペース3の容積と酸素濃度とからヘッドスペース3に存在する酸素量を演算する機能、及び内容液4の体積と酸素濃度とから内容液4中の溶存酸素量を演算する機能を備えている。これらの機能に関しては以下に述べる測定手順において説明する。なお、ここでいう酸素量とは単位体積当りの酸素の質量を意味し、その単位は一例としてmg/Lである。
【0031】
次に、図2〜図7を参照して酸素濃度測定装置1による酸素濃度の測定手順を説明する。まず、測定開始前には、図2に示すようにヘッド24を容器2(図2では図示せず。)の上方に離した状態で、手動式の開閉弁42A、42B、及び管路40Aの開閉弁43を開き、その一方で開閉弁44及びタンク弁47を閉じる。この状態で弁機構26の弁体32を後退させて連通孔31を中空針28の内部空間28aと連通させる。これにより、管路40Bから連通孔31及びガス流路30を経て中空針28の内部空間28aまで不活性ガスを導くとともに、ガス流路30から圧力計45までの管路40Aにも不活性ガスを導入してそれらの経路内の酸素を不活性ガスでパージする。
【0032】
酸素のパージを十分に行った後、図3に示すように弁機構26の弁体32を押し込んで連通孔31を塞ぎ、中空針28の内部空間28aへの不活性ガスの供給を終了する。続いて、ヘッド24を容器2に向かって下降させて中空針28を容器2の天面に突き刺し、それにより容器2を穿孔して中空針28の内部空間28aをヘッドスペース3と連通させる。このときシールリング25を容器2に密着させて中空針28の外周を全周に亘ってシールすることにより、穿孔部分からの外気の侵入又はヘッドスペース3からのガス漏れを防ぐ。なお、穿孔時においてプローブ11の先端のセンサチップ14は中空針28内に位置しており、ヘッド24に対するプローブ11の貫通部分はシールリング29によりシールされている。開閉弁42A、42B、43、44、及びタンク弁47の状態は図2と同様である。容器2の穿孔により、圧力計45にはヘッドスペース3の圧力(中空針28の内部圧力に等しい)Phが導かれるので、この圧力PhをPC51に取り込んで記録する。また、測定開始にあたっては、温度計48が検出する温度もPC51に取り込んで記録する。
【0033】
容器2の穿孔後は、弁機構26、開閉弁42A、42B、43、44、及びタンク弁47を図3と同様の状態に維持しつつ、図4に示すようにプローブ11を下降させてセンサチップ14をヘッドスペース3に位置させる。この状態で酸素濃度計10を利用してヘッドスペース3の酸素濃度を測定する。なお、ヘッドスペース3における分圧を測定し、ヘッドスペース3の圧力Phと温度Tとを利用して酸素濃度を求めてもよい。
【0034】
ヘッドスペース3の酸素濃度の測定後、続いて図5に示すようにプローブ11をさらに下降させてセンサチップ14を内容液4に浸け、内容液4の酸素濃度を酸素濃度計10にて測定する。この場合もヘッドスペース3の圧力Phと温度Tとを利用して内容液4の酸素濃度を求めてもよい。なお、弁機構26、開閉弁42A、42B、43、44、及びタンク弁47は図3と同様の状態に維持する。
【0035】
内容液4の酸素濃度の測定後は、図6に示すように管路40Aの開閉弁43を閉じ、開閉弁44及びタンク弁47を開いてアキュームタンク46に不活性ガスを所定圧だけ蓄える。このとき圧力計45にはタンク46の圧力Paが導かれるので、その圧力PaをPC51に取り込んで記録する。次に、図7に示すように開閉弁44を閉じ、開閉弁43を開いてアキュームタンク46とヘッドスペース3とを連通させる。これにより、アキュームタンク46とヘッドスペース3の圧力とが等しくなるので、圧力計45でその圧力Pahを検出してPC51に取り込み、これを記録する。そして、先に記録されたヘッドスペース3の圧力Phと、アキュームタンク46に蓄えられた不活性ガスの圧力と、アキュームタンク46とヘッドスペース3とを連通させたときの圧力Pahと、アキュームタンク46の容積Vaとが上述した(1)式の関係を満たすことを利用して、ヘッドスペース3の容積VhをPC51により演算する。
【0036】
以上のようにして、ヘッドスペース3及び内容液4のそれぞれの酸素濃度、及びヘッドスペース3の容積、さらには温度を測定した後、PC51によりヘッドスペース3の酸素量及び内容液4の溶存酸素量をそれぞれ演算する。すなわち、ヘッドスペース3の酸素量に関しては、酸素濃度計10が検出したヘッドスペース3の酸素濃度と、ヘッドスペース3の容積Vhとから、単位体積当たりの酸素質量を求めることができる。内容液4の溶存酸素量に関しては、酸素濃度計10が検出した内容液4の酸素濃度と、内容液4の体積とから単位体積当たりの酸素質量を求めることができる。内容液4の体積に関しては、容器2への内容液4の充填工程において定量充填が実現されているものとみなし、その充填工程にて充填される規定量を内容液4の体積として使用すればよい。あるいは、容器2が内容物によって弾性変形しない等の理由から容器2の積が不変と考えて差し支えない場合には、容器2の容積からヘッドスペース3の容積を差し引いた値を内容液4の体積とみなしてもよい。
【0037】
以上のようにして求められたヘッドスペース3及び内容液4のそれぞれの酸素量はPC51によりグラフ化等の処理を受けてユーザーに提示される。得られた酸素量のデータの処理については適宜に定めてよい。
【0038】
以上の実施形態では、シールリング25、弁機構26、第2の開閉弁44及びタンク弁47が中空針28の内部空間28aをシールするシール手段として機能し、圧力計45が容器内圧力検出手段及びタンク内圧力検出手段として機能する。また、連通孔31、ガス流路30及び管路40Aの組み合わせによって圧力検出路が構成され、管路40B、ガス導入路36、ガスチャンバ35、ガス流路30及び連通孔31の組み合わせによってパージ流路が構成される。但し、圧力検出路及びパージ流路の構成は適宜に変更してよいことは勿論である。
【0039】
本発明は上述した形態に限らず、種々の形態にて実施してよい。例えば、開閉弁43、44、及びタンク弁47はオペレータが手動にて切り替え操作するものでもよい。図示の形態では、ヘッドスペース3の圧力Phとアキュームタンク46の圧力Paとを共通の圧力計45にて検出しているが、これらを別々の圧力検出手段にて検出してもよい。例えば中空針28の内部空間28aに圧力センサを埋め込んでヘッドスペース3内の圧力Phを検出する一方で、アキュームタンク46には別の圧力計を接続してタンク圧力Paを検出してもよい。ヘッド24内に中空針28の内部圧力を検出する圧力センサを配置し、ヘッド24のガス流路30にタンク弁47を介してアキュームタンク46を接続し、その接続経路とは別系統でアキュームタンク46の圧力を調整する経路を設けてもよい。圧力検出に関しては、要するに、中空針28が容器2に突き刺された状態で中空針28の内部空間28aとヘッドスペース3とに閉じ込められる圧力を検出手段と、アキュームタンク46内の圧力を検出する手段とが存在すればよい。ヘッドスペース3の容積及び容器2内の液体の体積が既知の場合には、ヘッドスペース3の容積を測定する工程を省略してもよい。酸素量の計測が一定室温に保たれた環境下で実施される場合には温度計48を省略してもよい。
【0040】
本発明において、測定対象の容器は缶容器に限らず、中空針を突き刺して穿孔できる限り、種々の容器を対象としてよい。例えばガラス壜等のボトル型容器であっても、その栓に中空針を突き刺すことにより本発明の測定方法を適用することができる。その他にも、樹脂製容器、紙製容器等の各種の密封容器内の酸素量を本発明によって測定することができる。上記の形態では酸素量を単位体積当りの酸素の質量として求めたが、容器のヘッドスペース及び容器内の液体に含まれる酸素の質量、あるいは体積そのものを酸素量として求める場合でも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一形態に係る酸素濃度測定装置の構成を示す図。
【図2】測定開始前の状態を示す図。
【図3】容器に穿孔する工程を示す図。
【図4】容器のヘッドスペースの酸素濃度を測定する工程を示す図。
【図5】容器の内容液の酸素濃度を測定する工程を示す図。
【図6】ヘッドスペースの容積の測定に備えてアキュームタンクに圧力を蓄えるときの状態を示す図。
【図7】アキュームタンクとヘッドスペースとを連通させて圧力を測定する状態を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1 酸素濃度測定装置
2 容器
3 ヘッドスペース
4 容器内の液体
10 蛍光式酸素濃度計
11 プローブ
12 信号処理装置
13 光ファイバケーブル
14 センサチップ
20 ピアス装置
21 支持台
22 案内機構
23 ヘッドユニット
24 ヘッド
25 シールリング
26 弁機構
28 中空針
28a 中空針の内部空間
29 シールリング
30 圧力検出路
31 ガス導入路
32 弁体
34 アクチュエータ
40A、40B 管路
41 ガスボンベ
42A、42B 手動式開閉弁
43、44、47 開閉弁
45 圧力計
46 アキュームタンク
48 温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブの先端の蛍光物質から発せられる蛍光を検出し、その検出結果に基づいて前記蛍光物質の周囲の酸素濃度を測定する蛍光式酸素濃度計を利用して、液体が詰められた密封状態の容器内の酸素量を測定する密封容器内の酸素量測定方法であって、
中空針をその内部空間が当該中空針の先端を除いて外部から閉じられた状態で前記容器に突き刺して前記内部空間を前記容器内のヘッドスペースに連通させる工程と、
前記中空針を介して前記プローブを前記容器内に挿入し、前記蛍光物質を前記容器内のヘッドスペースに位置させて該ヘッドスペースの酸素濃度を測定する工程と、
前記蛍光物質が前記容器内の液体に浸るように前記プローブをさらに挿入して前記液体中の溶存酸素濃度を測定する工程と、
を備えたことを特徴とする密封容器内の酸素量測定方法。
【請求項2】
前記中空針を介して前記ヘッドスペース内の圧力を測定する工程と、容積一定のタンクの圧力を測定する工程と、前記液体の酸素濃度の測定後に前記タンクと前記ヘッドスペースとを前記中空針を介して連通させて前記ヘッドスペースの圧力を測定する工程と、測定された各圧力と前記タンクの容積とから前記ヘッドスペースの容積を求める工程とをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の酸素量測定方法。
【請求項3】
蛍光式酸素濃度計のプローブが内部空間に挿通可能であり、かつ先端が密封容器に対して突き刺し可能な中空針と、
前記中空針の内部空間を当該中空針の先端を除いて外部からシールするシール手段と、 前記中空針の内部空間の圧力を検出する容器内圧力検出手段と、
前記中空針の前記内部空間と接続される容積一定のタンクと、
前記タンクと前記中空針の前記内部空間との間の連通及び連通遮断状態を切り替えるタンク弁と、
前記中空針の前記内部空間に対して連通遮断状態にあるときの前記タンクの圧力を検出するタンク内圧力検出手段と、
を備えたことを特徴とする容器のピアス装置。
【請求項4】
前記中空針の前記内部空間に圧力検出路が接続され、前記圧力検出路には第1の開閉弁及び前記中空針に対して前記第1の開閉弁よりも遠方に位置する第2の開閉弁が接続され、前記タンクは前記第1及び第2の開閉弁の間にて前記圧力検出路に接続され、前記タンク弁は前記圧力検出路と前記タンクとの間に配置され、前記第1及び第2の開閉弁間には前記容器内圧力検出手段及び前記タンク内圧力検出手段として共用される圧力計が接続されていることを特徴とする請求項3に記載のピアス装置。
【請求項5】
前記中空針に対して前記第2の開閉弁のさらに遠方にはガス供給源が接続されていることを特徴とする請求項4に記載のピアス装置。
【請求項6】
前記中空針の前記内部空間には不活性ガスを導入するためのパージ流路がさらに接続されるとともに、前記パージ流路を開閉する弁機構をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載のピアス装置。
【請求項7】
前記中空針の前記内部空間には圧力検出路及び前記内部空間に不活性ガスを導入するためのパージ流路が接続され、前記圧力検出路には第1の開閉弁及び前記中空針に対して前記第1の開閉弁よりも遠方に位置する第2の開閉弁が接続され、前記タンクは前記第1及び第2の開閉弁の間にて前記圧力検出路に接続され、前記タンク弁は前記圧力検出路と前記タンクとの間に配置され、前記第1及び第2の開閉弁間には前記容器内圧力検出手段及び前記タンク内圧力検出手段として共用される圧力計が接続され、前記中空針に対して前記第2の開閉弁のさらに遠方には不活性ガス供給源が接続され、前記不活性ガス供給源はさらに前記弁機構を介して前記パージ流路にも接続され、前記パージ流路を開閉する弁機構をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載のピアス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−198735(P2007−198735A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156084(P2005−156084)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000253503)麒麟麦酒株式会社 (247)
【Fターム(参考)】