説明

密着型露光装置

【課題】 フォトマスクと基板の密着性の高い密着型露光装置を提供する。
【解決手段】
基板2の外側周囲に枠体3が装着され、吸着口56により吸着固定される。枠体3によりフォトマスクと基板の密着性が向上する。また枠体3は一体であるため、吸着によって確実に固定が可能であり、また取り付け取り外しを簡単に行え、更に自動化も用意である。枠体3の裏面には流通溝30が形成され、枠体30と基板2との間に生じる隙間35の吸引を行い、フォトマスク1と基板2の密着を確実に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、密着型露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストなどの感光材料を塗布した基板の表面に所定のパターンを露光装置により感光焼き付けし、その後エッチング工程により基板上にパターンを形成するフォトリソグラフィ法が種々の分野で広く応用されており、プリント配線基板も近年露光装置を用いて製造されている。
この露光装置において、露光の際にパターン原画が描かれたフォトマスクとプリント基板との密着性を高めるため、両者の間を真空に引いて密着させる真空密着方法が広く採用されており、この方法による露光装置を密着型露光装置と称している。しかし、密着型露光装置において、フォトマスクとプリント基板とを完全に均一に密着させることは難しい問題があった。フォトマスクはガラス製か或いは露光すべき回路等を描いたフォトマスクフィルムを貼着したガラス又は樹脂板から成るが、真空圧により該フォトマスクがプリント配線基板に接触する際に、プリント配線基板に接触しないフォトマスクの周縁部に撓みが生じて、その結果プリント配線基板とフォトマスクの接触が不良になる部分が生じることがある。この接触不良は露光時の解像不良となる。
この問題を防止するため、従来から基板の周囲に複数のスペーサ片をテープなどで貼着する方法や、或いは吸引孔に足を差し込んで固定する(文献1)等の方法で配置し、このスペーサ片によりフォトマスクの歪みを抑制することが行われている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−42543
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数のスペーサ片をテープで貼り付けたり、或いは吸引孔に差し込む作業が複雑であり、取り付け、取り外しに多大の手間が掛かる問題があった。特にスペーサは基板の厚さや大きさに応じて交換する必要があり、その度に交換作業を時間をかけて行う必要があった。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、プリント配線基板を載置するプラテンと、露光すべきパターンが描かれ、プリント配線基板に接触して該パターンを露光するためのフォトマスクと、前記フォトマスクとプリント配線基板との間をシールする装置と、前記フォトマスクとプリント配線基板との間を吸引する吸引装置と、を備えた密着型露光装置において、前記プリント配線基板を囲む形状をなし、プリント配線基板とほぼ同厚の枠体と、該枠体を前記プラテン上に着脱可能に固定する吸着装置と、を備えたことを特徴とする。
上記構成において、枠体によりフォトマスクがプリント配線基板に密着する際に歪むことがなく、フォトマスクとプリント配線基板の密着性が向上し、良好な露光を行うことができる。また、枠体は、一体的な1つの部材であるから、取り付け取り外しが簡単で、自動搬送や自動交換が可能になる。更に枠体は吸着装置により着脱可能に固定されるから、取り付け、交換などが更に簡単に行える。
枠体の厚さは、プリント配線基板の厚さと同じ、或いは0〜+0.1mm程度若干厚くする。条件によっては基板に対して−0.2〜+0.2mmとすることも可能である。
前記枠体を基板周囲に装着した場合、枠体の内側のスペースの吸引が阻害される場合がある。そのため、前記プラテンと接触する枠体の裏面側に枠体の内側と外側とを連通する流通溝を形成し、枠体の内側のスペースの吸引を効果的に行えるように構成することが望ましい。なお該流通溝はプラテン側に設けても良い。
なお枠体を形成できない時は、プリント配線基板の両脇に載置される平板とするように構成することも可能である。この場合、前記プラテン上に載置され、且つ前記プリント配線基板をその上に載置するベース板と、該ベース板上に載置されるプリント配線基板の両脇に置かれるプリント配線基板とほぼ同厚の1対の平板と、該ベース板を前記プラテン上に着脱可能に固定する吸着装置と、を備えることを特徴とする。
この構成においても、平板はベース板と一体に吸着装置により着脱可能に固定されるから、取り付け、交換などが簡単に行える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の密着型露光装置によれば、フォトマスクとプリント配線基板の密着性が向上し、良好な露光を行うことができる。また枠体は一体的な1つの部材であるから、取り付け取り外しが簡単で、自動搬送や自動交換が可能になり、更に吸着により着脱可能に確実に固定されるから、取り付け、交換などが更に簡単に行える、等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はプリント配線基板を製造するための密着型露光装置であり、フォトレジストを施されたプリント配線基板2はプラテン20上に載置され、移動機構21によりXYZ及びθ方向に移動可能になっている。
【0008】
回路パターンが描かれたフォトマスク1は基板2の上方に基板2に対向するようにフォトマスク支持装置10に支持されており、基板2をフォトマスク1に接近させ、フォトマスク1と基板2の間を吸引して密着させ、露光光源90からの露光によりフォトマスク1の回路パターンを基板2に焼き付けるようなっている。
【0009】
フォトマスク1はガラスマスクになっており、回路パターンを直接描いてあるか或いは回路パターンを描いたフィルムマスクを貼着してある。
【0010】
なお、CCDカメラ91はフォトマスク1と基板2の位置合わせのために用いられる。
また制御装置99は装置全体を制御している。
【0011】
なお、プラテン20を移動させるのではなくフォトマスク支持装置10を移動させることも可能であり、更に両者を移動させるように構成することも可能である。
【0012】
図2に示すように、プラテン20上の基板2を載置する部分の周囲にはパッキン4が装着されている。このパッキン4は基板2を載置する部分の周囲に配置されており、フォトマスク1と基板2の間の空間をシールして、図3に示すシール空間40を形成するようになっている。
該シールされたシール空間40は吸引路50と吸引ポンプ51を備えた吸引装置5により吸引されるように構成されている。
【0013】
吸引路50はプラテン20に形成され、図3に示すようにプラテン20の表面上、パッキン4の内側に開口する吸引口52を有している。該吸引口52と吸引路50及び吸引ポンプ51により、パッキン4によりシールされるシール空間40を吸引し、フォトマスク1をプリント配線基板2上に密着させるように構成されている。
【0014】
基板2の外側周囲には更に枠体3が装着されるようになっている。枠体3は板状の枠であり、その内側に所定の隙間35を空けてプリント配線基板2を納める大きさを有している。枠体3の厚さは、前記したようにほぼプリント配線基板2と同じか、0〜+0.2mmの範囲で若干厚くする。また、枠体3の材質は、プリント基板と同等以上の硬さを有する材質とし、加工性、運搬性を等の点からステンレス材が好ましい。また、プリント基板が厚く、枠体3が厚い場合は、アクリル、PET、塩ビなどの樹脂等を用いて軽量化を図ることも可能である。
【0015】
図2と図3に示すように、プラテン20には吸着路55と吸着口56が更に形成され、基板2と枠体3の吸着固定を行うようになっている。即ち、枠体3はプラテン20上に載置され、その下側に開口する吸着口56と吸着路55を介して吸引装置5の吸引により脱着可能にプラテン20上に吸着されるように構成されている。吸着口56は図2に示すように枠体3のほぼ枠形状全面に相当する位置に配設され、吸着固定を確実に行えるようになっている。
またプリント配線基板2も同様に吸着口56と吸着路55を介して吸引装置5の吸引によりプラテン20上に吸着される。
吸引路50と吸着路55は別回路になっており、個別に吸引が可能である。吸引ポンプ51は共通に用いても良いし、個別のポンプを装着しても良い。
枠体3は一体であるため、上記のような吸着によっても確実に固定が可能である。
【0016】
枠体3の裏面、プラテン20側の面には流通溝30が形成されており、枠体30と基板2との間に生じる隙間35の吸引を効果的に行えるようになっている。
本発明のように枠体3で基板2を囲った場合、図4と図5に示すように、フォトマスク1と基板2が密着した時に、隙間35は閉鎖空間となり吸引口52からの吸引ができない状態になる。そのため、流通溝30により枠体1の内側(隙間35)と外側を連通させ、隙間35の吸引を確実に行い、フォトマスク1と基板2の密着を確実に行えるように構成されている。
図2に示すようにこの実施形態では流通溝30は、4カ所に設けられているが、必要に応じて増減可能である。
また流通溝30はプラテン20側に形成しても良い。
【0017】
なお、枠体3の大きさと厚さはプリント配線基板2に応じて変更すればよい。また、枠体3の装着と交換は、プリント配線基板2を搬送する搬送ハンドにより行うことも可能である。また、専用の搬送装置を設けても良いし、更に人手により行っても良い。
いずれの場合にも、枠体3は一体であり、またプラテン20上に載置して、吸引装置5の吸引により吸着する構成であるため、装着と交換は容易である。
【0018】
動作を説明する。
プラテン20上に吸着された枠体3の中に、搬送ハンド(図示せず)などによりプリント配線基板2を載置し、吸着固定する。
制御装置99は移動機構21によりフォトマスク1とプリント配線基板2の位置合わせなどの所定の処理を終了すると、移動機構21を制御してプラテン20を上方に移動させて、フォトマスク1と基板2とを接近させ、両者が密着する位置で停止する。
【0019】
移動機構21の移動を停止したら、制御装置99は吸引ポンプ51を制御して吸引を開始する。この吸引によりフォトマスク1と基板2の間のシール空間40は負圧状態となり、また流通溝30により隙間35も吸引も確実に行え、フォトマスク1は基板2に確実に密着する。
この際、プリント配線基板2に接触しないフォトマスク1の周縁部は、プリント配線基板2とほぼ同厚の枠体3に接触し、そのためフォトマスク1に撓みが生じることがなく、その結果プリント配線基板2とフォトマスク1の密着は良好に行われる。
【0020】
フォトマスク1と基板2が密着したら、露光光源90から露光光を照射してフォトマスク1の回路パターンを基板2に焼き付けて、露光を終了し次の工程に移動する。
【0021】
図4と図5に他の実施形態を示す。
この実施形態は、枠体3を形成できない場合に用いられる。
ベース板7はプラテン20上に載置されるように構成され、その両脇にスペーサ70を1対貼着固定してある。このスペーサ70間にプリント配線基板2を載置するようになっている。
ベース板7のプリント配線基板2載置部分には吸着孔71が複数設けられており、前記プラテン20上に開口する吸着口56と連通して、プリント配線基板2の吸着を行うようになっている。
ベース板7自体も枠体3の場合と同様に、吸着口56を介して吸引装置5により吸着される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態を示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態を示す側面図。
【図4】本発明の一実施形態の動作説明図。
【図5】図4の部分拡大図。
【図6】本発明の他の実施形態を示す平面図。
【図7】本発明の他の実施形態を示す側面図。
【符号の説明】
【0023】
1:フォトマスク、2:基板、3:保持装置、4:パッキン、5:吸引装置、7:ベース板7、10:フォトマスク支持装置、20:プラテン、21:移動機構、30:流通溝、35:隙間、40:シール空間、50:吸引路、51:吸引ポンプ、52:吸引口、55:吸着路、56:吸着口、70:スペーサ、71:吸着孔、90:露光光源、91:CCDカメラ、99:制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板を載置するプラテンと、露光すべきパターンが描かれ、プリント配線基板に接触して該パターンを露光するためのフォトマスクと、前記フォトマスクとプリント配線基板との間をシールする装置と、前記フォトマスクとプリント配線基板との間を吸引する吸引装置と、を備えた密着型露光装置において、
前記プリント配線基板を囲む形状をなし、プリント配線基板とほぼ同厚の枠体と、
該枠体を前記プラテン上に着脱可能に固定する吸着装置と、
を備えたことを特徴とする密着型露光装置。
【請求項2】
前記プラテンと接触する枠体の面に形成され、枠体の内側と外側とを連通する流通溝を、更に有する、
請求項1の密着型露光装置。
【請求項3】
前記枠体と接触するプラテンの面に形成され、枠体の内側と外側とを連通する流通溝を、更に有する、
請求項1の密着型露光装置。
【請求項4】
プリント配線基板を載置するプラテンと、露光すべきパターンが描かれ、プリント配線基板に接触して該パターンを露光するためのフォトマスクと、前記フォトマスクとプリント配線基板との間をシールする装置と、前記フォトマスクとプリント配線基板との間を吸引する吸引装置と、を備えた密着型露光装置において、
前記プラテン上に載置され、且つ前記プリント配線基板をその上に載置するベース板と、
該ベース板上に載置されるプリント配線基板の両脇に置かれるプリント配線基板とほぼ同厚の1対の平板と、
該ベース板を前記プラテン上に着脱可能に固定する吸着装置と、
を備えたことを特徴とする密着型露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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